食品公害 ビタミンCで自衛を
異物代謝に特効 添加物も“追い出す”
「食品添加物が怖い」という声をよく聞く。「疑わしいものは使うべきでない」と、具体的に名をあげて使用禁止をめざす運動を展開している消費者団体もある。しかし保存、着色など添加物が果たしている役割も大きく、怖いからすぐやめるというわけにもいかない事情もあるようだ。では「どうすればよいのか」の問いに、1つの対策を示しているのが、吉田昭・名大農学部教授(栄養化学)だ。吉田教授は、現在行っている実験から「ビタミンCは、これまで言われていた以上の異物代謝機能があり、体内の汚染物質を排出させる。食品添加物に対しても同じような効果を発揮するはずだ」という。何かと不安の多い80年代。決め手とはいえないまでも、せめて、救世主・ビタミンCをたっぷり摂取して、自衛したいものだ。これは野菜ぎらいなどの偏食家は、生き残るのが大変だという警告でもある。現在、使用が認められている食品添加物は334種。保存、着色、味付けなど、さまざまな機能のために使われている。特に近年、パック食品が増えているため、保存剤としての食品添加物は、なくてはならぬものになっている。
しかし、この中のいくつかについて、発ガン性など有害な副作用があると指摘している学者もある。ハム・ソーセージの発色剤が原因とされるニトロソアミン、食パンのイーストフードの成分・臭素酸カリウムなどもその一例だ。
政府は、有害性がないということで認可しているわけだが、小山宏・名城大農学部教授(食品化学)らは「それは“今のところ”というただし書き付きです」という。皮膚にひどい炎症を起こし、死者も出たカネミ油症のPCBでも、それ以前は「絶対安全」のお墨付きで使われていた。発ガン剤のAF2やチクロもそうだった。
「科学は日進月歩ですから、将来のことはわかりませんが“今のところ”は、PCBのような札付きはありません。いろいろな実験による有害性の報告もありますが、禁止するには、なかなか難しい問題が多いようです」(同教授)という。やはり不安だ。
この不安に答えたのが、吉田教授の研究だ。PCBをエサの中に入れてネズミに食べさせると、尿中のビタミンCがすごく増えることを突き止めた。ネズミは人間とちがい、ブドウ糖からビタミンCを体内で作る能力を持っている。つまり、異物の代謝にビタミンCが何かの働きをしていることが予想できた。
これを人間で実験できないため、同じようにビタミンCの自家製造能力を持たないモルモットで同様の実験をした。
乳離れ直後の若いモルモットのエサに(1)PCBとわずかなビタミンCをまぜた(2)PCBと多量のビタミンCをまぜた(3)多量のビタミンCだけまぜた──の3種類のエサで、3匹を飼育した。グラフ(江原注:割愛)のように、ビタミンCを多量に与えたものと、そうでないものでは、体重の増え方に、大きな差の出ることがはっきりした。
この実験は、ビタミンCがPCBの被害を軽減する効果を持つことを示している。このほか、カドミウムを添加したエサについても、ビタミンCと鉄分の補給で、貧血症状が軽くなるという結果も出た。
愛媛大学など別のグループの実験だと、動脈硬化に関係の深い血しょうコレステロールも、ビタミンCの補給によって減少するという報告が出ている。
吉田教授は「食品添加物や環境汚染物質など、体内に入るほとんどの異物に、ビタミンCは同じ働きをしてくれるはずだ」という。野菜ぎらいはご注意 大人、日に50−70ミリグラムが必要
それでは、われわれ日本人のビタミンC摂取量は十分だろうか。厚生省が毎年行っている国民栄養調査の結果をみると、平均的には、必要量といわれる大人1日50−70ミリグラム(学者によって差がある)は、軽く超えている。しかし、この調査はミカンや冬野菜が多量に出回る11月に行われるので、年間を通じてみた場合は、かなり割り引いて考えねばならない。また低所得層ほどビタミンC摂取量が減る傾向なのも心配だ。
さらに、調理、加工などにより、摂取量全量が必ずしも有効に働くとは限らないことも注意しておく必要がある。
吉田教授は「学界では1日10グラム以上といった大量投与論さえ出始めている。それほどでなくても、野菜ぎらい、果物ぎらなど偏食タイプの人は、十分に注意することです」と忠告している。
別表(江原注:割愛)は、ビタミンCの含有量が多い主な食品だが、ミカンなどは豊作のおかげで値段も安い。「どんなに忙しい朝でも、チーズ、ミカンぐらいは食べましょう」(財団法人・日本食生活協会発行『ゆたかな食生活への道』から)という呼びかけに、ちょっと耳を傾けもよいのではなかろうか。(中日新聞 1980/01/11)ビタミンC剤売れて売れて 「ガンに効く」の新説で
健康食品ブームに乗ってビタミンC製剤の売れ行きが好調だ。1年ほど前「ビタミンCはガンや風邪に効く」との新説が紹介されたのをきっかけに爆発的に売れ出し、倍々ゲームふうの伸びよう。ことしの売り上げは初の100億円を突破しそうな勢いだ。
ビタミンC製剤市場は典型的な寡占市場。シェア(市場占有率)は大きい方から武田薬品工業(ハイシーS)50%、エーザイ(ユベラC)20%、塩野義製薬(シナール)5%。残りの25%を十数社で分け合っている。
これまではしみ、そばかすなど色素沈着予防を主に宣伝していたため、肌が気になる若い女性が買うだけで、年間売り上げも2、30億円止まりだった。
そこに登場したのが新学説。しかも提唱者がノーベル化学賞(1954年)、平和賞(1962年)を受賞した米国のL・ポーリング博士とあってガン恐怖症世代の中年層がまず飛びついた。昨年6月には博士が来日、日本記者クラブなどでビタミンCの効用を分かりやすく講演したこともあって、学説はまたたく間にお茶の間の話題に。
ビタミンCに詳しい佐賀大学農学部村田晃教授も「ビタミンCには免疫増強作用があり、風邪などに効く。健康人なら1日500ミリグラムで十分」と説明する。(日本経済新聞 1982/10/09)高血圧などに効く魚の脂肪酸 大量抽出に成功
安い供給にメド 東北大などの研究グループ
魚を食べると摂取される脂肪酸の一種で、動脈硬化や高血圧症などへの効用が注目されているEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などを高純度で大量に抽出する技術が東北大と宮城県の共同研発グループの手で開発された。これまでは実験室レベルで回収率10%程度だったが、これによって90%以上に高め、魚嫌いの高血圧患者の治療薬として、安く供給できるめどが立った、と期待されている。
新しい抽出技術を開発したのは、東北大工学部化学工学科の斎藤正三郎教授(53)の教室の新井邦夫助教授(42)らと、宮城県工業技術センターの鈴木康夫技師(34)らの共同研究グループ。
EPA、DHAなどは、イワシ、サバなどの魚油の中に少量含まれ、人間の血液中の血小板凝集を抑え、血管を拡張させる働きがある。しかし、取り出す方法は、魚油の濃縮とろ過などの工程を何度も繰り返す実験室レベルのもので、純度、回収率ともに低く、価格も50ミリグラムでEPAが8万円以上、DHAも1万5000円以上と高価だった。
今回、開発された技術は、液化炭酸ガスを使った「超臨界ガス抽出法」と、「尿素付加法」を組み合わせたもので、固形尿素の槽に、魚油入りのガス液を通過させることによって、これまで10%前後とされていた回収率を90%以上に高めることに成功した。研究グループは、来年春を目標に県内の水産加工業界との連携で、魚油を原料としたプラントシステム作りを急いでいる。
これらの脂肪酸はこれまで、供給量が少なく、純度も低かったため、実際の医療現場では、高血圧などの患者に、かん油などを与えたり、魚の摂取量を増やすなどしていた。高純度のものを安価に供給できるようになれば、十分な臨床データが得られ、医薬品として活用できるという。<超臨界ガス抽出法> 高温、高圧で液化した炭酸ガスなどに、分離したい物質を含む原料を溶け込ませ、圧力や温度を変えることで、目的の物質を分離させる。
<尿素付加法> 尿素が特定の物質とだけ結晶体を作る性質を利用、目的の物質を濃縮させる。(朝日新聞 1985/04/20)
野菜や緑茶などのビタミンC、発がん物質抑制 遺伝研の黒田教授
新鮮な野菜、果物、緑茶などに含まれるビタミンCが発がん物質の細胞への作用を数分の1にも抑えることを、このほど国立遺伝学研究所(静岡県三島市)の黒田行昭教授が動物細胞による実験で確かめ、30日から秋田市で開かれる日本環境変異原学会で発表する。
黒田教授は、チャイニーズハムスターの肺からとったV79細胞という培養細胞を使い、これに細胞のデオキシリボ核酸(DNA)に突然変異を起こさせる発がん物質、エチル・メタンサルフォネート(EMS)とビタミンCを種々の濃度で加えて、突然変異の様子を見た。
すると、たとえば1ミリリットルあたり1000分の1グラムのEMSだけを加えた例では、突然変異を起こす率が1万個の細胞のうち約9個だったのが、ビタミンCを1ミリリットルあたり1万分の1グラム加えると、1万個の細胞のうち2.5個と4分の1近くに減少、EMSの作用が抑えられることがわかった。他の濃度でも傾向は同様だった。
さらに、細胞に対するEMSの毒性も見たところ、細胞の半数が死んでしまう濃度(半数致死濃度)がEMSだけなら1ミリリットルあたり約1万分の5グラムだが、ビタミンCを1ミリリットルあたり1万分の1グラム加えると半数致死濃度は1ミリリットルあたり約1万分の9グラムで、毒性が半分に薄められることもわかった。
この仕組みについて黒田教授は(1)ビタミンCがEMSの一部を壊すなどして発がん活性を抑える(2)ビタミンCがEMSによって壊されたDNAを修復する働きがある──などの可能性をあげ、詳しい機能の解明はさらに進めたい、という。
この研究結果については、国立がんセンターの佐藤茂秋生化学部長は「直接発がん物質そのものの働きを抑えることが示されたのは初めてと思う。がんの予防薬などに使えるかどうかは、さらに研究が進まなければわからない」と話している。(朝日新聞 1985/09/22)血栓防ぐ細菌を発見 青魚腸内から分離 相模中央化学研
イワシやサバなどの青魚にたくさん含まれている脂肪酸の一種、エイコサペンタエン酸(EPA)は血栓が出来るのを妨げるので、心筋こうそくや脳こうそくの予防に効果があるとして注目されているが、青魚の腸内にはEPAを生産する新種の細菌がいることを財団法人相模中央化学研究所(神奈川県相模原市、近藤聖所長)のグループが突き止め、29日発表した。
EPAが注目されたのは、デンマークの学者たちが約10年前、EPAの多い青魚を主食とするグリーンランドのエスキモーには、心筋こうそくや脳こうそくが少ないと発表してから。その後の研究で、EPAには実際に血栓が出来るのを防いだり、動脈硬化を予防したりする働きがあることがわかった。
相模中研の矢沢一良研究員らは、フグ毒がフグ自らではなく、その腸内細菌がつくることがわかったことにヒントを得て、青魚の腸内細菌の中にはEPAをつくるものがいるのではないかと考えた。そしてサバ、アジ、サンマ、イワシなどの腸から約7000種類の細菌を分離して調べた結果、EPAをつくる細菌は112種類もいた。大部分は新種だった。
このうちサバから分離した、最も生産能力の大きな菌は、ふつうの培養液でも約30分に1回という速さで分裂し、培養液1リットル当たり100ミリグラムのEPAをつくる。しかも、EPAと同じような脂肪酸は他にはつくらないので、分離・精製も容易だという。今後、東ソー(旧・東洋曹達)と協力して工業化を目ざす計画だ。(朝日新聞 1988/03/29)血中ビタミン多いとがん死の確率低い スイスのゲイ博士ら発表
血液の中に含まれるビタミンの量が多いほど、がんで死亡する確率が低いことが、約3000人の追跡調査の結果分かり、スイスの製薬会社ホフマン・ラ・ロッシュのフレッド・ゲイ博士らが13日、京都で開かれている国際フリーラジカル学会で発表した。
ゲイ博士らは、スイスのバーゼル市に住む30代後半から50代後半の健康な男性2975人から血液を採った。
7年後にこれらの人を追跡調査したところ、9%に当たる268人が亡くなり、うち102人ががんで死んでいた。
生きている人と死んだ人のビタミンの量を比べたところ、ビタミンAが少ない人は、多い人よりも胃がんになる率が6倍高く、ベータカロチンでは約3倍、ビタミンEでは2.5倍の差となっていた。(朝日新聞 1988/04/13)お茶や高麗ニンジン 腸内細菌に作用成分 善玉増やし悪玉抑え
がん予防の可能性も 民間研究所員ら突き止める
大腸内に住みついている細菌に働きかけて体に良い作用をする細菌を増やし、悪い細菌の増殖を抑える成分が、お茶や高麗(こうらい)ニンジンに含まれている、と太陽化学総合研究所(三重県四日市市)の金武祚(キム・ムジョウ)研究開発部長、安龍濬(アン・ヨンジュン)研究員と東大農学部の光岡知足教授(実験動物学)が2日から新潟市で開かれる日本農芸化学会で発表する。有効成分の一部は分離・精製されており、がん予防薬につながる可能性もある、と注目されている。
実験方法は、まず粉末にしたお茶をアルコールに浸し、成分を取り出した。この成分を0.1%含んだ培養液中で、整腸剤などに使われている腸内細菌の一種、ビヒズス菌を育てたところ、2日後には乳酸をどんどん生産し、強い酸性(水素イオン濃度5以下)になった。しかし、この成分を入れなかった場合は、ほぼ中性で、ビヒズス菌が増殖しないことが分かった。
一方、発がん物質を生産しているとされる腸内細菌・クロストリジウム菌を培養している寒天の上に、この成分10ミリグラムを含んだろ紙を置いて2日後に観察したところ、ろ紙を中心に直径10ミリ余の円内で、クロストリジウム菌が繁殖しなかった。
金さんたちは、善玉・ビヒズス菌の増殖を助け、悪玉・クロストリジウム菌の増殖を抑える成分を探した結果、ポリフェノールといわれる物質の一種であることを突き止めた。
高麗ニンジンでも、ほぼ同じような結果になり、ビヒズス菌の増殖を助ける物質は、ニンジン粉末を水に浸して取り出した中に見つかった。これらの成分は、いずれも大腸菌など他の腸内細菌には影響を与えないことも確認している。
金さんたちが、お茶に目をつけたのは、お茶をよく飲む静岡の一部地域で消化器がんが少ない、という疫学的な調査があり、大腸がんの原因の1つとして、悪玉の腸内細菌が問題になっているからだ。
腸内細菌は100種以上あり、ほとんどが酸素があると死んでしまう嫌気性菌。栄養、免疫、発がんなどと深い関係がある、とされている。(朝日新聞 1989/03/27)悪性リンパ腫の83%根治 8薬品を集中投与
保健衛生大の平野教授発表
悪性リンパ腫(しゅ)の化学療法を研究している平野正美・藤田学園保健衛生大教授(53)らのグループは、8種類の薬を短期間に集中投与する療法で、80%以上もの患者が根治したと2日、名古屋市千種区の吹上ホールで開かれた「第5回名古屋癌(がん)治療国際シンポジウム」で発表、内外の研究者の注目を集めた。
悪性リンパ腫は、全身のリンパ系に生じるがんの総称。最近は抗がん剤の発達により、薬で治すことが可能になってきた。しかし、抗がん剤の多くは、骨髄の造血作用を低下させる副作用があるうえ、投与を続けるとがん細胞に耐性ができて効き目が悪くなるため、いかに副作用を抑えながら、効果的に治療するかが課題になっている。
平野教授は、7種類の抗がん剤を、副作用のあるアドレアマイシンなど4種と、副作用のないオンコビンなど3種に分類。1週間単位で両グループの薬を交代させながら2種類ずつ使っていく方法を考えた。効き目の強いアドレアマイシンとオンコビンを両グループの柱にして組み合わせを変えていき、12週間で治療を終える。常用する経口のホルモン剤を含め、8種類の薬を使うことになる。
平野教授らは、同大学病院の患者に2年前から投与を始め、16歳から81歳までの24人の臨床データを得た。この結果、24人のうち22人のがん細胞が完全治率60%を超える治療法も開発されているが、平野教授らの成果は、それを上回る。
平野教授らはこのシステムを、8種類の薬の頭文字を取って「CAMBO-VIP」(カンボジアの高官)と名付けた。愛知県内の主要病院の多くが、共同研究の形でこのシステムを取り入れている。副作用なく意義深い
太田和雄・愛知県がんセンター名誉総長の話 悪性リンパ腫の場合、数種類の薬を併用するのが常識だが、薬を2つのグループに分けて併用パターンを毎週変えていく点が今回の研究の眼目。副作用を防ぎながら大量投与できるのは、実に意義深く、臨床データの素晴らしさに感心する。(中日新聞 1989/10/03)
マウスも腹八分目が長生き 平均寿命122週、満腹は74週
格言を裏付け? 東海大グループが発表
いつもお腹いっぱい食べられる“満腹”マウスに比べ、食事を8割に制限された“腹八分目”マウスの方が長生きする──。こんな研究結果を東海大医学部微生物学教室の橋本一男教授、田爪正気講師のグループがまとめ、12日公表した。両者のマウスの間では、免疫機能や腸内細菌にも差が見られ、「腹八分目は長命のもと」との格言を科学的に解明する手掛かりになりそうだ。
田爪講師らは食事の制限と老化との関係に注目し、この実験を実施した。生後5週間で特定の病気を持たない普通のマウス200匹を用い、半数は食べ放題飲み放題とし、残り半数は食事の量をその80%に制限した。無菌マウス100匹についても同様の実験を行った。
この結果、平均寿命は、普通の満腹マウスが74週だったのに比べ、腹八分目マウスは122週と長かった。無菌の場合も満腹マウスが90週、腹八分目マウスが110週と差が出た。また、生後20週ぐらいを境に、免疫機能の点で腹八分目マウスの方が満腹マウスより優れていることもわかった。
さらに、腹八分目マウスの場合、無菌マウスよりも普通のマウスの方が長命だったことから、腸内の細菌に注目。生後約2年の腹八分目マウスと満腹マウスを比較したところ、満腹マウスにない2種類の細菌が腹八分目マウスには存在した。
これらの結果について田爪講師は「長寿がエサによるものか、細菌に関係しているかはまだわからない。食事制限されたマウスの方が良く動くので、運動が関係しているかも知れない」と話している。(毎日新聞 1990/01/13)お茶が効きます 発ガン抑制 動物実験で半減
【ニューヨーク26日=共同】ニューヨークで開かれている米化学学会で、米国の研究者が「発がん物質と日本の緑茶を一緒に飲ませたマウスは、発がん物質だけのグループに比べ、がんの発生率が50%以下になる」という実験結果を発表する。
発表するのは、ニュージャージー州ラトガーズ大のアラン・コーニー博士。博士らは雌のマウスに強い発がん物質であるニトロソ化合物(NDEA)を8週間、経口投与し続けた。投与が終わって25週間後、マウスの90%以上は胃、肺がんに侵されていた。
ところが別のグループに、投与と並行して水代わりに緑茶を飲ませたところ、がん発生率は42−44%減った。NDEA投与後も緑茶を飲ませ続けたグループの効果は発生率が37−40%になった。
この結果について、たばこによる発がんに対する緑茶の効用を発表している米国健康財団の研究者、ファン・ラン・チュン氏は「米国人より多くたばこを吸う日本人が、米国人より発がん率が低いのは、緑茶の効果かもしれない」と語る。藤木博太・国立がんセンター研究所がん予防研究部長の話 がんセンターでは1987年から茶タンニンの主成分EGCGで制がん効果を確かめてきたが、コーニー博士の研究は普通にいれた緑茶を飲ませ、効果を明らかにした点で意味深い。(共同)(朝日新聞 1991/08/28)
薬用ニンジンにがん転移抑制効果 大阪大教授ら発見
滋養強壮などで知られる薬用ニンジンの成分に、がんの転移を抑える働きのあることが大阪大薬学部の北川勲教授(生薬学)と大阪府立成人病センター研究所の明渡均所長らの研究で分かった。今月末に福岡市で開かれる日本薬学会で発表される。
がんが転移する時には、元のがんから離れたがん細胞が腹膜や血管の壁を通り抜け、血液などに乗って体内を移動、別の臓器にくっついて増殖すると考えられている。そこで、がん細胞が腹膜などを通り抜けられないようにすれば、転移を防ぐことも可能になる。
北川教授らは、ラットの腹膜の細胞を培養液の入ったシャーレの底に敷き詰め、その上にがん細胞を置いた。このままでは、がん細胞は腹膜細胞の間を通り抜け、腹膜を通りやすいがん細胞ほどラットの体内で転移しやすいことがこの実験で確かめられた。
次にジンセノサイドという薬用ニンジンの主成分を培養液に加えた。十数種類あるジンセノサイドのうち5種類を調べたところ、2種類でがん細胞の通り抜けを抑える働きがみられた。
ジンセノサイドが人間に効き目があったとしても、毎日ニンジンをおなかいっぱい食べても転移を予防するには足りないという。(朝日新聞 1992/03/11)舌がんに独自の温熱療法 15人中10人が完治
名大口腔外科開発
名古屋大学医学部口腔外科(金田敏郎教授)が、舌がんなどの治療法として開発し、臨床応用している独自の温熱療法「インプラント・ヒーティング・システム」(磁場誘導組織内加温法、略称・IHS)で、これまでに15人の患者のうち10人が完治した。この中には手術や放射線療法との併用をせずに治ったケースが4例含まれている。この成果は16日から名古屋市熱田区の名古屋国際会議場で開く日本口腔科学会総会で報告される。
IHSは、鉄と白金との合金で作った特殊な針(直径1.8ミリ、長さ10−25ミリ)を口の中の患部に埋め込み、誘導コイルkと発信器で作った高周波の磁場を針の周囲にめぐらせることで、針から発する43度の熱でがん細胞を殺す方法。1回の治療時間は45分。もともと同学部脳神経外科が行っていた療法に工夫を加え、3年前から臨床応用を始めた。
口腔外科の藤内祝講師によると、これまでIHS療法を用いたのは、舌がんや口腔底(下の歯ぐきの付け根)がんの患者15人。最初の4例は、それまでに別の療法を受けたあと再発した患者ばかりで、がん細胞の消失率は50%だった。
しかし、その後の患者はいずれも初めて治療を受けた人で、3−6回のIHS療法を施した結果、11人のうち10人のがん細胞が100%消失した。10人の中には手術との併用患者が6人いるが、他の4人はIHSと抗がん剤投与の組み合わせ治療だけだった。
金田教授は「針を刺したり抜いたりすることで、がんが転移しやすくなる可能性があるなど、まだ課題はあるが、口の形態と機能を保存するということでは、最も優れた療法だと思う」と話している。(中日新聞 1992/04/15)麦飯でコレステロール低下 国立健康・栄養研発表
動脈硬化の防止に“復権”の価値あり!?
麦飯を食べると、血液中のコレステロールが下がり、動脈硬化の改善や予防に役立つことを国立健康・栄養研究所の池上幸江研究室長らが突き止め、9日、岡山県倉敷市で開かれた日本栄養・食糧学会で発表した。成人病の元凶の1つともいえる動脈硬化を防ぎ、長くなった寿命を全うするため食卓に麦飯を復活させてみる価値がありそうだ。
池上室長らは、血液中のコレステロールや中性脂肪の高い高脂血症の男性20人(平均41歳)に、精白米と大麦を半分ずつ混ぜた麦飯(1食200グラム)を1日2回、2週間食べさせた。
その結果、麦飯を食べる前は血液100cc当たりコレステロールが平均278ミリグラムだったが、摂取後は251ミリグラムまで下がった(正常値240−130ミリグラム)。さらにこの後、日常の精白米食を2週間食べた後でも平均値は257ミリグラムと、低下効果が持続していた。また、コレステロール値が310ミリグラム以上の重症患者ほど、麦飯による低下作用が大きかった。
中性脂肪も、麦飯を食べる前は血液100cc当たり平均252ミリグラムだったのが、麦飯後には218ミリグラムまで下がった(正常値130−36ミリグラム)。
大麦は精白米に比べ、食物繊維が10倍以上含まれ、血糖値を下げる効果のあることも既に分かっている。
池上室長は「麦飯がコレステロールなどを低下させる詳しい仕組みはまだ明らかでないが、米中心の日本人の食生活を大幅に変えることなく、動脈硬化は予防できる。米に麦を2割程度混ぜるだけでも効果はあるだろう」と話している。(中日新聞 1992/05/10)免疫細胞 磁場で活性化 「がん治療など応用可」
北大など学会発表
病原菌など体内に入ってきた異物に対する免疫反応の先陣役となる細胞が、低周波の磁場によって活性化を促進されることを北大工学部の村林俊・助教授(生体工学)と北海道赤十字血液センターのグループが見つけ、このほど東京で開かれた日本ME学会で発表した。がんや感染症の治療に応用できるのではないかと、同グループはいっている。
免疫に関係する白血球の一種である単球は、インタフェロンを加えて培養すると活性化するが、ここに毎秒50回のパルス磁場(最大4.4ミリテスラ)を約9時間かけたところ、活性化の度合いが3−4割上がった。さらに、インタフェロンだけでは全く活性化しなかった単球が磁場処理によって活性化した例もあった。
その理由について村林助教授は、単球細胞内へのカルシウムイオンの流入が磁場をかけると早まり、量も増えたほか、カルシウムイオンを除去すると磁場の効果が見られなくなったことなどを指摘。「磁場をかけることによって細胞のカルシウム取り込みに変化が起き、活性化が促進されたのでは」と分析している。
同助教授らは、患者の血液を一度体外で何らかの処理をして患者に戻す体外免疫療法の確立を目指しており、「磁場処理もこの療法に活用できるのでは」と話している。(朝日新聞 1992/05/13)赤潮の色素に強力抗がん作用 約17倍の効果
京都府医大 合成に成功
赤潮を引き起こすプランクトンの赤黄色素「ペリジニン」に、がん細胞の増殖を強く抑制する作用のあることが、京都府医大生化学教室の西野輔翼助教授らの共同研究で明らかになった。
天然色素にはニンジンなどに含まれるベータカロチンなど、抗がん作用を持つものの存在が知られているが“赤潮色素”の構造を参考に合成した化合物は、従来の抗がん剤の約17倍の効果を持つことが分かった。
研究グループは将来的に臨床応用を目指している。
西野助教授らは3年前から、緑黄色野菜に含まれるフラボノイドなど、さまざまな天然色素の抗がん作用を調査。海水中に浮遊する植物プランクトンの色素ベリジニンに、がん細胞の分裂を抑える効果があることを発見し、より効果の高い関連化合物の合成にも成功した。
子宮がん細胞を使った実験では、ベリジニン関連化合物で処理したグループは未処理のグループと比べ、細胞増殖が強力に抑えられた。
がん細胞の半数が致死する濃度は、現在広く用いられている抗がん剤「5−フルオロウラシル」の約17分の1で、胃がん細胞などに対してもほぼ同様の効果を得た。
ベリジニン関連化合物の抗がん作用について、西野助教授は「分裂の準備段階にあるがん細胞に働き掛け、成長の進行を止めるため」と説明している。(中日新聞 1992/05/27)がん細胞だけ壊す物質合成 米カリフォルニア大教授が成功
がん細胞を選択的にやっつける物質の合成に米・カリフォルニア大サンディエゴ校教授で、スクリプス研究所化学部長のニコラウ博士のグループが成功、22日付の米科学誌「サイエンス」に発表した。
この物質は、1970年代に、土壌細菌が作る毒素として発見された。しかしそれ自身は正常細胞も病気の細胞も一緒に殺してしまい、薬としては使えなかった。
同教授らは、4種類あった毒素のうち、ダイナマシンAと呼ばれる物質を合成、その化学構造を少し変えたところ、それががん細胞に強力に作用した。
まだマウスでの実験を始めたばかりだが、白血病の実験では、「99個がん細胞を破壊しても、正常細胞は1個しか破壊しない」というほど、がん細胞にだけ作用するという。
その理由はまだ分かっていないが、がん細胞の中に入り込むと、化学的に反応性の強いラジカルを発生、それががん細胞のデオキシリボ核酸(DNA)を細切れにしてしまうらしい。
臨床試験に移るには少なくともあと2年はかかるというが、がん研究者であるジョンズ・ホプキンス医科大のバート・ボーゲルスタイン教授は「今までにない、有望な物質のグループのようだ」といっている。(ワシントン=大塚隆)(朝日新聞 1992/05/29)アトピー性皮膚炎 漢方入浴剤で症状が改善
副作用心配なし 富山医薬大が開発
アトピー性皮膚炎のかゆみなどの症状に、漢方生薬から煎(せん)じた入浴剤が効果的なことが、富山医科薬科大医学部皮膚科学教室の研究によって分かった。生薬は国内でも簡単に手に入り、副作用の心配はほとんどないのが特徴。従来のステロイド剤(副じん皮質ホルモン)との併用でさらに効果が上がることも明らかになり、15日と16日に東京で開かれる第9回和漢医薬学会大会で発表する。将来は家庭薬としての製品化も考えられている。
研究スタッフは同教室の諸橋正昭教授(51)、関大輔講師(37)、豊田雅彦医員(28)の3人。
アトピー性皮膚炎の患者の皮膚は、健康な人と比べて表皮の脂が少ない。そのために表皮細胞が水分を保つ力も小さくなり、かさかさになってかゆみが生じる。関講師らは、中国で古くから漢方薬に使われている地黄(アカヤジオウの根)と当帰(トウキの根)に、表皮の脂を合成する作用を促す性質がある点に着目。生薬の成分を直接皮膚に付ける方法として入浴剤を思いついた。
細かく刻んだ地黄と当帰それぞれ2グラムを600ccの熱湯で30分煎じ、抽出液を約200リットルの湯に薄めて外来患者55人に使った。6週間たって皮膚を分析したところ、表皮の水分量は健康な人の値10−30%にほとんど近付いた。また皮膚から水分を吸収する速さ、表皮に保つ時間とも改善され、吸収力は平均で治療前の2倍に上がった。
効果が見られたのは、全体の75%にあたる41人。55人のうち40人は同時にステロイド剤を塗っていたが、有効率は83%と併用していない患者より高かった。ステロイド剤は長期間使うと副作用が大きいため、関講師は「最初のころは併用して、徐々にステロイド剤を減らしていけば効果的」と話している。軽、中度には効果的
アトピー性皮膚炎の漢方療法に詳しい三田哲郎名古屋大学医学部助手(皮膚科学)の話 従来、患者の皮膚の水分を保つため、コメの発酵エキスやニンニクエキスが有効との報告はあり、それらを使った入浴剤も製品化されている。今回の研究も水分を保とうとする点では共通しており、入浴剤ができれば軽度や中度の患者には効果的だろう。しかし、地黄や当帰などの成分が入っている漢方薬をそのまま服用すれば効くというわけではない。専門家による製品化を待つべきだ。(中日新聞 1992/08/14)
がん転移抑制にも緑茶の成分が効果?
静岡県立大などの研究者確認
緑茶の成分に、がん細胞がほかの細胞に接着するのを妨げる働きがあることを、静岡県立大食品栄養科学部の伊勢村護教授と東北大抗酸菌病研究所内科のグループが突き止めた。この成分ががんの転移抑制にもひと役買っている可能性を示している。今月末から大阪市で開かれる日本癌(がん)学会総会で発表される。
緑茶にがんの予防効果がありそうだという見方は、住民が緑茶をよく飲む静岡県内の町では、胃がんによる死亡率が全国平均の30%以下というデータなどから注目されるようになった。その後、緑茶の渋みのもとになっているタンニン酸には、実際にがんの発生を抑える働きがあることが動物実験で確かめられた。
伊勢村さんらは、タンニン酸が、がんの転移を抑えられるかどうかを調べた。転移は、がん細胞が血液によって他の組織に運ばれ、血管の一番内側にある内皮細胞に接着、そこから血管をくぐり抜けて組織に入り込むことで起きる。
そこで、ウシの動脈の内皮細胞を培養し、ネズミの肺がん細胞と、タンニン酸の主成分であるカテキンを一緒に加えて、がん細胞が内皮細胞に接着する様子をみた。
その結果、5種類のカテキンのうち、エピガロカテキンガレートが84%、エピカテキンガレートが67%も接着を妨げた。
伊勢村さんは「この結果からすぐにカテキンに転移を抑える働きがあるとはいえないが、動物実験で確かめられれば、転移を抑える薬の設計などに役立つと思う」といっている。(朝日新聞 1992/09/07)カロチノイドのがん抑制 45種で効用裏付け
ニンジンやカボチャなどの緑黄色野菜に含まれるカロチノイドという色素の多くが、発がんを抑える力を秘めていることが、小塚睦夫・京都薬科大教授と徳田春邦・京都府立医大助手らの研究で分かった。発がんを抑えるカロチノイドは数種が知られていたが、これだけ幅広く調べられたのは初めてという。
カロチノイドは緑黄色野菜や海藻類に多く含まれ、600種類以上が知られている。小塚教授らは、野菜や魚肉などから抽出した45種類のカロチノイドが、がんの原因となるウイルスの活動を抑えるかどうか調べた。強弱の差はあったが、45種類すべてが効力を示した。
そのうちレタス、ミカン、ホヤなどから抽出した5種類は、ニンジンなどに含まれる代表的なカロチノイドのβカロチンよりも強い抑制作用を持っていた。今後、動物実験でも発がんを抑えるかどうか確認する。
この成果は、29日から大阪市で開かれる日本癌(がん)学会総会で発表されるが、小塚教授は「緑黄色野菜はがんを防ぐといわれており、この結果が1つの裏付けとなるのではないか」と言っている。(朝日新聞 1992/09/09)白血球でがん破壊 野菜汁が防衛力強める
帝京大・山崎教授らが成果
キャベツ、ホウレンソウなどの野菜汁が、がん細胞を破壊する白血球の働きを高めることが、帝京大学薬学部の山崎正利教授らの研究で明らかになった。マウスに静脈注射したところ、その効果はインターフェロンなどの抗がん剤とほぼ同程度だったという。この成果は29日から大阪で開かれる日本がん学会で発表される。
ビタミン、β(ベータ)カロチンを含む野菜にがんの予防効果があることは知られていたが、白血球の生体防御機構を増強する働きがあることを突き止めたのは世界で初めてという。
山崎教授らはキャベツ、ホウレンソウ、タマネギなどをジューサーにかけたあと、遠心分離機にかけて上澄み液のPH(水素イオン濃度)などを調整するという特殊な処理を施し、マウスの静脈に注射。白血球が作るTNF(しゅよう壊死因子)というがんを破壊するタンパクがマウスの血液中にどれだけ増加したかを調べた。
その結果、野菜汁3マイクロリットルでインターフェロンなどの抗がん剤と同程度の効果があることが分かった。人間に臨床応用するとすれば、摂取量は6ミリリットルの少量で効果が現れるという。マウスに飲ませた場合は、効果はあるものの注射ほどではなかった。
山崎教授は「野菜汁にはがん細胞を破壊する白血球の免疫監視機構を増強する働きがある。将来は、野菜から抽出した有効成分で、安価で大量に抗がん剤を生産できる可能性がある」と話している。(中日新聞 1992/09/16)免疫療法だけでがんの再発防止 化学療法と併用せず
大阪府立母子保健医センターが確認
免疫療法を施しただけで、がんの再発防止に効果があることを大阪府立母子保健総合医療センターの林昭企画調査部長らが確かめ、29日から大阪市内で開かれる日本癌(がん)学会で発表する。
抗がん剤を投与する化学療法や放射線でがん細胞を死滅させる方法は免疫力を低下させてしまうため、これを補う免疫療法の併用が有効と従来考えられてきた。林部長らの単独免疫療法は、この通説と違う方法だけに注目を集めそうだ。
林部長は、免疫療法を化学療法や放射線療法と一緒に行うことは双方の効果を打ち消すだけと考えた。
そこで18年前から順次、白血病や大腸がんなどの患者7人を対象に、いったん手術や化学療法などで治療した後、本人や家族らの了解を得て単独免疫療法を試みた。結核菌から作った免疫機能を促進させる細菌製剤を使用し、最初の1カ月は1週間に1回、0.1−0.2ミリグラムずつを皮膚内に注射した。その後は月1回、同様に注射し続けた。
この結果、3人は15年以上生存、1人は1年半前から治療を始め、現在も普通どおりの生活をしている。1年半から数カ月で死亡した3人のうち、糖尿病などを併発したため免疫療法を一時中断した例を除く2人は、細菌製剤を投与しても、免疫作用が活発にならない患者だった。効かない人もいる
豊島久真男・日本癌学会会長(大阪大微生物病研究所所長)の話 免疫療法は効く人と効かない人がいる。患者を識別して効く人に使えば、免疫療法も意味があることを示した臨床成績だ。免疫療法を見直すきっかけになると思う。将来、化学療法などが進歩しても免疫療法は必要だろう。(中日新聞 1992/09/28)
白血病にビタミンAが効果 大学病院などで試験的に使用
副作用もなく安心 悪い細胞を正常に
ビタミンAが、白血病のなかでも一番治療が難しいタイプに劇的に効くことが分かり、血液内科の専門家がいる大学病院や大病院で試験的に使われ、成果をあげている。これまでの抗がん剤のように、患者が副作用で苦しむこともない。製薬会社も新薬の承認申請をするため、もっか臨床試験中である。東京女子医大の溝口秀昭・血液内科主任教授にその威力を尋ねた。ビタミンAが不足するとがんになりやすいといわれてきたが、ある型の白血病に画期的な効果をあげるのは、ビタミンAそのものではない。ビタミンAが体内に入って変化したレチノイン酸の一種、「全トランス型レチノイン酸」(ATRA)というものである。
上海医科大学のグループが、ATRAを使った治療で「急性全骨髄球性白血病」23症例の96%が完全に寛解(かんかい)したと、初めて専門誌に報告したのは1988年のことだった。「最初は素直に信じられなかった」と溝口教授は話す。中国の研究陣は2年後、日中血液シンポジウム(名古屋市)で成果を披露。これに続き、フランス、米国でも相次いで同じ成果を確認した。80%超す完全寛解
日本でも厚生省の共同研究班(班長・大野竜三浜松医科大教授)が試み、1次研究で82%、2次で88%の完全寛解を得た。これまでせいぜい30%の完全寛解があれば、有望な新薬といわれてきただけにATRAのすごさが分かる。
日本の白血病の死亡率(1989年)は10万人中4.8人で年々増加傾向にある。白血病には急性と慢性があり、急性は、さらにリンパ性と骨髄性に大別されるが、ATRAが効くのは、骨髄性のうち1割強を占める「急性前骨髄球性白血病」に限られている。
白血病は“血液のがん”といわれるが、血液をつくる工場の骨髄で異常細胞がどんどん増えて、正常の赤血球、白血球、血小板の生産が激減するために貧血、感染、発熱、出血などが起きる病気。
化学療法では、抗がん剤を数種類組み合わせて、異常細胞を殺してしまうが、完全に殺せなくとも、正常の血球をつくる力が異常細胞の増殖を上回ると症状も軽く、落ちついてくる。この状態を「寛解」と呼ぶ。
しかし「この寛解に至るまでの治療が大変。大量の抗がん剤で、異常細胞だけでなく正常なものまで殺してしまい、出血など白血病の症状がさらに悪化し、亡くなるケースさえ出てくる。寛解まで医者は神経を張りつめています」と溝口教授。
ところが、この薬を飲むと、通常、数日で重症の出血は消え、約1カ月でスーッと寛解に至る。「生理の出血が止まらずやってきた若い患者に使ったところ、ビタミン剤を処方しているような感じで、患者は白血病と分からないまま寛解でしたよ」
寛解段階で治療をやめるとまた異常細胞が増えてくるので、さらに従来の抗がん剤を使って2年間ぐらいの維持療法を続けるが、少量月1回程度ですみ、患者を苦しめることは少ない。抗がん剤とは異質
教授はATRAを「悪い子を排除しないで、良い子に変えてしまう見事な教育者」とたとえる。悪い細胞を殺さず正常の細胞に変えてしまう作用があり、これまでの抗がん剤とは全く質的に違った画期的な薬だ。この働きを「分化誘導療法」と呼ぶが、教授にやさしく説いてもらう。
白血病の異常細胞というのは全く別の細胞になるのではなく、赤ちゃん細胞のまま成熟できないでいるのだと分かってきた。細胞にはもともと、ATRAを受け入れる受容体があるのだが、このタイプの白血病の異常細胞は受容体の感度が鈍いために成熟が妨げられている。そこでATRAを補充してやれば、スムーズに正常な血球をつくるようになるわけだ。
ATRAはもともと体内にある物質で、これまで日本で試みてきた分化誘導療法では、同じレチノイン酸でも体内にない種類を使っていたため、うまくいかなかったのだという。
溝口教授は「ATRAの発見をきっかけに研究者の間で分化誘導を起こす物質の洗い直しが行われ、タイプの異なる白血病や、他のがんにも効くものが見つかる可能性が出てきた」とみている。(中日新聞 1993/06/19)ストレスは万病のもと 免疫機能が低下、NK細胞も減少
聖マリアンヌ難病治療センター 星恵子助教授に聞く
ストレスが、がんや感染症、免疫性疾患など多くの発生に深くかかわっていることが解明されてきている。過度なストレスは、脳の神経系に影響を与えて免疫機能を低下させるほか、がんを抑えるNK細胞を減少させるというのだ。星恵子・聖マリアンヌ医科大難病治療研究センター助教授は「ストレスこそ万病のもと。ため込まずに解消する工夫を」と勧める。
星助教授は2年前、ローマで国際電話をしたとき、相手の声が聞こえず、不安になった。急いで帰国し、突発性難聴と診断された。治療を始めたが、原因は知らぬ間にため込んでいたストレスと分かった。その体験をきっかけに書いた『ストレスと免疫』(講談社)は、ストレスと病気の関係を分かりやすく解説した本としていま話題だ。
ストレスが関与した病気で、見た目にはっきりしているのは円形脱毛症。過敏性大腸炎や胃かいよう、ぜんそくなどもストレスと深い関係にあることはよく知られている。中でもいま関心の的は、がん免疫との関係だ。
「1986年にフィリピンで誘拐された若王子信行さんが、解放から1年10カ月後に大腸がんで不幸にも亡くなられたとき、極度のストレスが、がんを誘発させたというイメージを多くの人が持ったはず。最近の実験では、がん細胞をやっつけるNK細胞が、精神的、肉体的どちらのストレスによっても減少することが分かってきています」と星助教授。
NK細胞とはナチュラル・キラー細胞の略。リンパ球の一種で、ビールスに取りつかれた細胞はもちろん、体にとっての異物であるがん細胞もやっつけるのがその役目。だが、ストレスが加わるとNK細胞の数が減ってしまうことが、確かめられている。図(※江原注:割愛)はその1つで、学生の最大のストレス・卒業試験中は数が少なかったNK細胞が、試験が終わってほっとした2週間後には明らかに増加。肉体的なストレスをみる実験では、70分間休みなしに走らされた後のNK細胞は、逆に軒並み減った。
「ストレスによってNK細胞の減少が長引けば、自然治癒力が低下し、がんの芽を抑え切れなくなったり、感染しやすくなることは十分考えられます」と星助教授。ちなみに、急激なダイエットもNK細胞を減らすという報告がある。
ストレスが加わると、リンパ球のT細胞を育てる胸腺(せん)が委縮するなど、免疫系にマイナスに働くことは前から知られていた。最近では、ストレスが神経系、内分泌系、免疫系に影響を与える仕組みも知られてきた。ストレスが神経系に加わると、その刺激はホルモンを介して脳の視床下部から下垂体、副腎(じん)皮質へと伝わり、免疫を抑制する物質コルチゾールを出すため、感染しやすくなる。
また、免疫系の細胞から出て神経系に影響を与える物質サイトカインや、炎症を抑えるインターロイキンなどの多様な働きもある。ふだんはシーソーのようにバランスを取り合っているヘルパーT細胞とサプレッサーT細胞も、ストレスで比率が一方に傾くと、自己免疫疾患を起こしやすくなるという。
星助教授は「まさに病は気(ストレス)から。日本人の三大死因であるがん、心臓、脳血管系の病気との関係も明らか。私の専門であるリューマチや膠原(こうげん)病でも、発病のきっかけや進行にストレスが関係している例は多い」。
ストレスが抵抗力を落とす仕組みがさらに解明されれば「過労死」も説明しやすくなるという学者もいる。問題はストレスの適量が、人によって異なること。「だれにも共通する解決策は、悩みを話せる相手が身近にいること。打ち明けられる人がいなければ、風邪と同じで、専門の医師に相談することを勧めたい」と星助教授は話している。(中日新聞 1993/07/31)ベータカロチン、がん予防に効果 米がん研が発表
緑黄色野菜に多く含まれるベータカロチンに、がんの予防効果があるかどうかを調べていた米国立がん研究所は、ベータカロチンとビタミンEなどを連続投与したところ、胃がんによる死亡率は、連続投与を受けなかった者より21%低かった、と発表した。
緑黄色野菜を多く食べる人にがんが少ないことは、これまで疫学調査で判明しているが、人の体内でビタミンAに変わる色素で、有害な活性酸素を取り除く性質があるベータカロチンのがん予防効果が、実際の投与で確認されたのは初めて。(共同)(朝日新聞 1993/09/22)乳がんや前立腺がん抑制 大豆、野菜が効果
国立がんセンター共同研究
女性の乳がんや男性の前立腺(せん)がんなど性別に特有のがんが欧米人と比べて日本人に少ないのは、大豆や野菜を多く採る食事によってホルモンのバランスがうまく保たれているためとの調査結果が、国立がんセンターとフィンランド・ヘルシンキ大の共同研究でまとまった。5日から仙台市で開かれる日本がん学会で発表される。
日本人は米国の白人と比べ、前立腺がんは8分の1、乳がんは4分の1、卵巣がんは3分の1と死亡率がいずれもはるかに少ない。この理由について渡辺昌・同センター疫学部長は、食物繊維が腸内で分解されてできる「イソフラボノイド」と呼ばれるホルモン類似物質が関係しているとみて調べた。
調査は、渡辺部長らが長野県内の4地域で、200世帯の住民を対象に血液中のイソフラボノイド濃度を精密に分析し、食事の内容と照合。ヘルシンキ大はヘルシンキ周辺の一般の住民と国内の菜食主義者のグループを対象に調査した。
双方を比べると、長野の住民はイソフラボノイド濃度が一般のフィンランド人の約40倍、菜食主義者グループとでも7倍以上高く、日本側の方が大豆製品をたくさん食べていることが分かった。
イソフラボノイドは豆腐や納豆の原料となる大豆のほかニンニク、キノコなどの成分が腸で分解されてできる物質で、化学構造が特に性ホルモンとよく似ている。
乳がんは閉経後に増えるなど、性別に特有のがんは性ホルモン分泌の異常が大きな要因と考えられている。
渡辺部長によると、イソフラボノイドは性ホルモンの働きを抑える役目をしており、その結果ホルモンのバランスを保ち発がんを抑えるらしい。(中日新聞 1993/10/05)インターフェロン産生能力 2倍に高める菌 京の漬物の中に
陽進堂など発見
京都パストゥール研究所(岸田綱太郎所長)と製薬企業の陽進堂(富山市、下村健三社長、0764・51・8083)は5日、京都の漬物の中からインターフェロンαの産生能力を高める乳酸菌を発見したと発表した。この菌を錠剤にして10人に投与したところ、産生能力が2週間で約2倍になったという。インターフェロンはガンやウイルス感染に対する抵抗力と関係があり、陽進堂ではこの菌の錠剤を11月に健康食品として売り出すことにしている。
発見した菌はラブレ菌と呼ばれる。大根に似た「すぐき」という野菜の漬物から分離された。
同研究所は健康な10人にラブレ菌の錠剤を4週間投与し、採血してインターフェロンの産生能力を調べた。採取した血液をウイルスで刺激してどの程度インターフェロンが産生されるかを測定したところ、2週間目には平均2倍になっていたという。またインターフェロンにより誘導される2-5A酵素やナチュラルキラー細胞の活性も上昇したとしている。これらはウイルスやガン細胞を攻撃する働きがある。
陽進堂ではラブレ菌の錠剤を11月から健康食品として販売し、今後はパストゥール研究所と共同で医薬品としての開発も進める考え。同研究所の岸田所長は「ただちにガンの予防薬になるとは言えないが、インターフェロンの産生能力を高めることで健康を保つという程度に考えてもらえれば」と話している。(日経産業新聞 1993/10/06)遺伝子投与 ガン治療で成果 細胞消失・縮小も
中国のハルビン医科大チーム
【ニューヨーク22日=西山彰彦】中国のハルビン医科大学の研究チームは22日、米国のサンディエゴ市で開いていた国際ガン遺伝子治療会場で、免疫力を高める働きがあるインターロイキン−2(IL-2)の遺伝子をガン患者に投与する遺伝子治療の効果を確認したと発表した。余命3カ月前後の末期の肺ガン患者10人にIL-2遺伝子を投与したところ、6人は胸膜に浸潤していたガン細胞が消失し、その後実施した放射線治療により病巣部のガンも縮小したという。
中国の遺伝子治療の結果が公表されたのは初めて。日本では遺伝子治療のガイドラインがまとまっているが、実施した例はなく、先進医療分野で中国の先行ぶりを示した。
遺伝子治療は病気を治療する効果がある遺伝子を外部から体内に投与する先進医療。米国では90年に重症の免疫不全症の少女に対して初めて実施された。ハルビン医科大学の研究チームは93年1月に10人の肺ガン患者の血液から採取した白血球の一種(TIL)にIL-2の遺伝子を組み込んで、遺伝子を組み込んだTILを患者の体内に戻した。
この結果、10人中6人は肺から胸膜に転移していたガン細胞が完全に消失、2人は部分的に消えた。その後、この8人に放射線療法を実施、全員の肺ガンが縮小し始めたという。
米国の国立衛生研究所(NIH)でもIL-2遺伝子を使ったガンの遺伝子治療を始めているが、ハルビン医科大学のように治療効果を発表していない。(日本経済新聞 1993/11/24)がんにはやっぱりビタミン 活性酸素の発生抑制
金沢の医師 動物実験
ビタミンA、Eなどががんの原因の1つとされる活性酸素の発生を抑える様子を、石川県済生会金沢病院副院長の川浦幸光医師(消化器外科)が動物実験で電波の動きによってとらえた。ビタミンAの基となる物質で、緑黄色野菜に含まれるベータカロチンなどにがんの予防効果があるとする疫学調査結果を裏付けるデータといえる。この実験結果は来春の日本消化器病学会で発表する。
実験は、発がん剤によってがんを発生させたラットの肝臓を使用。この肝臓に、活性酸素を発生させる薬物を投与し、同時にビタミンA、C、Eを与えた場合と与えない場合とでそれぞれ発生した活性酸素量を比較した。活性酸素量の発生量は、電子の量に反応する電子スピン共鳴吸収波(ESR波)で測定した。活性酸素は酸素イオンが通常よりも1つ多い電子を持った状態で、活性酸素の量が多ければESR波は大きく振れる。
測定の結果、活性酸素を発生させる薬物だけを投与した場合、ESR波が大きく波打ったのに対し、この薬物とビタミンAを同時に与えた場合は波があまり動かなかった。ビタミンC、Eについても同じ傾向の結果が出た。
ビタミンAについては、ビタミンAを構成する一単位であるベータカロチンががん予防に効果があるという疫学調査結果がある。最近では米国立がん研究所が、中国河南省の住民2万9000人余りを対象にベータカロチンやビタミンEなどの連続投与試験をしたところ、がんによる死亡率が13%低下したという結果が出ている。
川浦医師は「今回の実験結果は、このような疫学調査結果と符合するものだ」と説明している。(中日新聞 1993/11/28)ガマの油に抗がん作用? ヒトの白血病細胞の一種を破壊
昭和大グループ
強心作用のある「ガマの油」に、ヒトの白血病細胞の一種を自滅させる作用をもつ成分が含まれていることを、昭和大薬学部の中谷一泰教授のグループが見つけた。29日から開かれる日本薬学会で発表する。
この成分はブファリンと呼ばれ、ガマガエルが攻撃を受けたときなどに出す分泌物のセンソに含まれている。このセンソが「ガマの油」の材料になる。
ブファリンを、HL60白血病細胞と呼ばれるヒトの白血病細胞の一種の培養液に加えると、細胞の核が分裂を始め、最終的には細胞そのものがばらばらに壊れるのが観察された。ある時間がたつと細胞が自動的に死ぬ現象は「アポトーシス」と呼ばれ、がん細胞にも起こることが最近わかって注目されている。
ブファリンは、マウスやラットの白血病細胞にはアポトーシスを起こさず、ヒトの正常な白血球にも影響を及ぼさない。中谷教授は「細胞の表面にあるたんぱく質とブファリンとの結びつきやすさによって、アポトーシスが起こるかどうかが決まるため」と説明する。
中谷教授は2年前、ブファリンにがん細胞を正常化する働きがあることも見つけている。中谷教授と共同研究をしている同学部の吉田武美教授は、健康人の血液からブファリンと同じ働きをする物質を発見している。白血病に詳しい東大医科学研究所の中畑龍俊教授は「白血病細胞にもいろいろある。ブファリンがすべてのタイプの白血病細胞にアポトーシスを引き起こすとなれば、有望な抗がん剤として期待できるのではないか」と話している。(朝日新聞 1994/03/08)ベトナムニンジンでストレス退散 胃かいようやうつ病予防も
富山医薬大教授ら 効能を発見
心理的ストレスにベトナム原産の薬用ニンジンが効くことを、富山医科薬科大和漢薬研究所の渡辺裕司教授(薬理学)の研究グループが突き止めた。この「ベトナムニンジン」は現地では疲労回復やのどの薬として一般に出回っており、広く普及すればストレス社会への福音となりそう。研究結果は29日から東京で開かれる日本薬学会で発表される。
心理的ストレスになると痛みに対する感覚が鈍る「ストレス鎮痛」が起こる。
ピンセットでマウスの尾をはさむと、通常1.25秒で反応するが、ストレスをかけた後は反応時間は2.6秒に延びた。これが、ベトナムニンジンを事前に投与したマウスでは、ストレスをかけても1.75秒で反応した。
また、ストレスは睡眠薬によって睡眠時間が長くなる作用を持つが、同ニンジンを与えると睡眠時間は通常レベルに抑えられ、渡辺教授は「ストレスが招く胃かいようやうつ病、不眠症を予防する効果が期待できる」と話している。
ベトナムニンジンについては、広島大医学部総合薬学科のグループが成分分析研究を進めているが、同大医学部の山崎和男教授(天然物化学)は「ベトナムニンジンは現地でのどの痛みや疲労回復、強壮の薬として錠剤にして飲まれているが、ストレスに効くことが分かったのは非常に面白い」と話している。(中日新聞 1994/03/10)京漬物から発見の乳酸菌 今春、米で発売
陽進堂「免疫力高める」
京都の伝統的な漬物の成分から作った商品が米国に登場する。京都パストゥール研究所と製薬会社の陽進堂(富山市)は、京漬物「すぐき」の中から発見した乳酸菌「ラブレ菌」を米国で発表。同研究所によれば、この乳酸菌は免疫力を高めてウイルス感染を防ぐ効果があるインターフェロンを作り出す能力を高める働きがあるという。陽進堂はこの乳酸菌を利用した商品を日本で昨年11月に発売したばかりで、早速、全米でもこれを栄養食品として今春から売り出す。
新商品は米ゼネラル・ニュートリション・カンパニーズ(GNC)が経営する健康食品店などのルートで販売する。価格はカプセル状の錠剤で、30錠入りで20−30ドルになる予定。(ロサンゼルス支局)(日本経済新聞 1994/03/15)ニンジンの葉の乾燥粉末 人工こう門の消臭効果
ニンジンの葉の乾燥粉末を飲むと、直腸がんなどの手術を受けて人工こう門(ストーマ)を持つ患者にも、かなりの消臭効果がみられることが国立病院ストーマ共同研究会の調査で確かめられた。ストーマからもれるにおいの悩みが減れば、患者の活動範囲が広がると期待でき、研究会で利用法の検討を続けている。
調査はストーマ患者98人に粉末を毎食後飲んでもらい、臭気の変化を調べた。7人は調査の途中で服用をやめたが、残る91人では1週間後で74%、2週間後で83%に消臭効果が表れた。
乾燥粉末を提供した和光農場(北海道名寄市)の佐久間和夫代表は「直腸がんだった父もこれを服用して効果があった。お湯で飲んでもいいし、みそ汁などに入れてもかまわない」と話す。まだ消臭のメカニズムは不明だが、市販もしている。国立療養所帯広病院では患者の食事に採り入れ始めた。
研発会の責任者を務める佐々木廸郎・国立札幌病院外科医長は「驚くほど、おならや便がにおわなくなるのは確かだ。さらに適切な使用量や使った場合の腸内細菌の変化の様子などを検討したい」と話している。(朝日新聞 1994/06/19)急性前骨髄球性白血病に活性型ビタミンA効く
浜松医科大教授 名古屋のシンポで報告へ
急性骨髄性白血病の一種、急性前骨髄球性白血病の治療に活性型ビタミンAを用いたら、9割の患者から完全に症状が消えたことが確かめられた。化学療法で効果がない患者や、再発患者に用いた研究では、すでに成果が認められていたが、未治療患者の治療に用いた研究は初めて。医療費がかなり軽減されることも分かった。浜松医科大の大野竜三教授が16日始まった名古屋癌(がん)治療国際シンポジウムで報告する。
大野教授が昨年まで班長を務めた厚生省のがん研究助成金白血病治療研究班と日本成人白血病研究グループ(JALSG)の1992年1月から93年7月にかけての研究。初めて治療を受ける患者に、オール・トランス・レチノイン酸(ATRA)と呼ばれる活性型ビタミンAを投与した。
錠剤で、通常の必要摂取量の約100倍を1日3回に分けて飲むだけ。症状が進んで白血球が増えている場合には、抗がん剤を投与する化学療法と併用した。
この療法で治療した109人の患者のうち97人(89%)から完全に症状が消え、うち25人はATRAだけで改善された。78%は再発しないで2年以上生存している。
年齢別でみると、40歳未満(49人)で98%、40代から60代(52人)で85%、70歳以上(8人)の63%から完全に症状が消えた。
副作用も、皮膚に発疹が出たり、唇や口の中が乾いたりするぐらいで、ほとんどないという。
また、今年に入ってJALSGのメンバー、全国45施設の計76例について医療費を調べた。従来の化学療法では2カ月で420万円だったのに対し、ATRAを用いた療法では290万円代と少なかった。
急性前骨髄球性白血病は、急性骨髄性白血病の15%を占め、発病患者は1年に約500人といわれている。重い出血症状や発熱を伴うのが特徴で、通常の輸血だけでなく血小板輸血も必要となり、治療代は高額になる。(朝日新聞 1994/09/16)がん予防には野菜が効果的 キャベツ・ハクサイ・レタス…
新たな抑制物質発見 岐大の森教授ら 安全な「新薬」に展望
キャベツやハクサイなどふだん口にしている野菜類の多くに、効果的な発がん抑制作用を持つ成分があることを岐阜大医学部第一病理学教室の森秀樹教授と田中卓二助教授が突き止めた。これまで知られているビタミン類や食物繊維、カロチン類とは、まったく別の成分で「夢の新薬」として期待される安全ながんの予防薬開発に展望を切り開く研究として国際的にも注目されている。19日から名古屋市で開かれる第53回日本がん学会総会で発表される。
森教授らは、がんを予防するため、天然に広く存在し、人体に安全な化学成分の発見に取り組んできた。これまでにもコーヒー豆などに含まれているクロロゲン酸に、大腸発がん抑制作用があることを証明している。
今回、明らかにした成分は、日本人の食生活の中で、摂取量が多いアブラナ科の野菜などに含まれるプロトカテク酸とインドール−3−カルビノール、カニやエビが持っている色素の一種アスタキサンチン。
さらに、生命維持に必要な微量元素類でも、既に抗がん効果が通説になっているカルシウムのほかに、マグネシウムにも大腸発がん抑制効果があることを確認した。いずれも世界で初の実証。
プロトカテク酸の実験では、ラットに1000ppm(100万分の1)濃度の同酸を投与。約10カ月後、大腸発がん物質だけを与えたラットが、80%の発がん率だったのに対し、同酸を投与したラットでは30%と著しい抑制効果を上げた。肝臓や胃がんの誘発物質を使った実験でも、同様の結果が出た。
インドール−3−カルビノールは、子宮がんが自然発生しやすいラットで2年間、1000ppmずつ実験投与し、自然発生率38%に対し、14%の実績。アスタキサンチンは、マウスのぼうこうがん発生モデルで、がん誘発物質投与だけの場合は発生率42%、アスタキサンチン投与では同18%。微量元素のマグネシウムでは、ラットの大腸がん発生モデルで、500ppmの水酸化マグネシウム投与で、がん発生率53%に対し同10%の結果を得た。
これまで知られているビタミン、食物繊維類などに加えて、発がん抑制作用のある天然化学物質が、次々に発見されたことは、将来的に、各種の有効成分を調合した安全ながん予防薬の開発の可能性を示している。
森教授は「野菜類では、今後もいろいろな天然抗がん成分が見つかるだろう。こうした基礎データを積み上げ、抑制メカニズムや相互作用問題が解決されれば、特定がんの予防薬開発も夢ではない」と話している。素晴らしい業績
伊東信行・日本がん学会会長(名古屋市立大学長)の話 発がん物質を安全かつ、効果的に抑える化学物質を探す化学予防研究は今、がん研究で最も重要な分野。森教授らが見いだした各種成分は、実験データもしっかりしており、素晴らしい業績だ。
<アブラナ科植物> 十字花植物とも呼ばれる。キャベツ、ハクサイ、カブ、カリフラワー、レタス、ブロッコリー、カラシナ、ミズナなど多くの野菜がこの科に属する。(中日新聞 1994/10/12)
酒を毎日飲み続けると大腸がんの危険率増す?
お酒を毎日飲んでいる人は、そうでない人に比べて大腸がんになる危険率が2倍高いことが、国立がんセンター研究所の山口直人・がん臨床情報研究室長たちの疫学調査でわかった。
1979−90年に長野県南佐久郡で健康診断を受けた約2300人の中から、大腸がんと診断された103人と、年齢や検診歴などの似た健康な506人を選んで飲酒の習慣を調べ、がんにかかる危険率をコンピュータではじき出した。
その結果、「毎日飲む」人は、「時々飲む」人や「全く飲まない」人に比べて大腸がんになる危険率は2倍だった。厚生省によると、人口10万人あたりの大腸がん患者数は27.7人(1985年)とされている。
「毎日飲む」人では、飲酒歴が20−40年の人の危険率は3.4倍、40年以上の人は4.2倍となり、飲酒歴の長さに比例して危険率が高かった。1日の飲酒量と危険率には関連は見られなかったが、「時々飲む」人の危険率は「全く飲まない」人より低かった。
山口さんは「お酒の量より、むしろ毎日飲み続けることが影響しているようだ」と話している。(朝日新聞 1994/10/31)牛乳タンパク がん細胞増殖を抑制 免疫力も高める
岐阜県保健環境研など確認
岐阜県保健環境研究所と同県工業技術センターは11日、牛乳に含まれるタンパク質の主成分「カゼイン」が免疫力を高め、老化やストレスによる免疫低下やがん細胞の増殖を抑える効果があることがマウス実験で明らかになった、と発表した。
同研究所などによると、これまで血圧を下げたりカルシウムの吸収を促進する効果が分かっていたカゼインに新たに免疫力を確認したのは初めてという。
実験はマウスをカゼイン分解物の水溶液と、普通の水だけを摂取した2群に分け、異物のヒツジの赤血球を投与。その後、ひ臓と血液を採取し、赤血球に対する抗体量を比較した。その結果、カゼイン摂取群の方が約2倍の数値を記録した。
狭いゲージに入れるなどしてストレスを与えたマウスの実験でも、水摂取群が血清中抗体量を減らしたのに対しカゼイン摂取群では増えた。また、老化したマウスにカゼインを摂取させたところ抗体量の大幅な回復がみられた。がん細胞を移植したマウスの腫瘍(しゅよう)重量の比較でもカゼイン摂取群でがん細胞増殖の抑制が確認された。(日本経済新聞 1994/11/12)緑茶を10杯以上飲む人 心臓病など少ない傾向
緑茶を毎日10杯以上飲んでいる人は、3杯以下の人に比べ、心臓病や糖尿病が少なく、がんで死ぬ場合も長生きする──埼玉県立がんセンター研究所疫学部の今井一枝専門研究員らが、同県のある町の40歳以上の住民について緑茶の飲用習慣などを調べた結果、こんな傾向がわかった。
1986−90年にその町に在住が確認された40歳以上の8553人の中で、昨年までにがんで亡くなった199人と、検診で血液検査を受けていた男性1371人を調べた。
がんで死亡した人を、毎日飲むお茶の量が湯飲み3杯以下、4−9杯、10杯以上──の3つに分けると、平均死亡年齢が、3杯以下の男性は66歳なのに、4−9杯は68歳、10杯以上の男性は70歳と、お茶を多く飲んでいる人ほど高かった。女性でも3杯以下は68歳だが、10杯以上は74歳だった。
血液検査を受けていた男性をお茶の飲量別に分けると、10杯以上の人は、心臓病の有病率が、3杯以下の人の半分以下だった。糖尿病の有病率も10杯以上の人は3杯以下の人より3割ほど少なかった。
血液検査の結果も、10杯以上の人は心臓病や高血圧などにつながるコレステロールや中性脂肪の平均値が低く、GOTやGPT、血清フェリチンなどの肝臓機能の異常を見る検査値の平均も低かった。
今井さんは「詳しいメカニズムは分からないが、緑茶には、がんだけでなく、心臓病や肝臓病などの予防作用もあるようだ」と話している。(朝日新聞 1994/11/13)がん細胞が自滅 アンチセンスRNA使う 京大グループ
京都大学の内田温士教授らの研究グループは、細胞の中である種のたんぱく質ができる過程をアンチセンスRNA(リボ核酸)を使って邪魔することによって、がん細胞を自滅に追い込めることを明らかにした。細胞が熱せられた時にできる熱ショックたんぱく質(HSP)の生産を抑えたところ、白血病の細胞が死に始め、増殖を抑制できた。がん細胞はとどまることなく増殖を続けるのが特徴だが、自滅に導いた点が注目される。白血病をはじめとするがんの新しい治療法につながりそうだ。
細胞は生体の中で不要になった時に自然に死んでなくなるよう、自滅機構が組み込まれている。こうした計画的な細胞死は「アポトーシス」と呼ばれ、細胞生物学の分野で注目されている。内田教授らは熱ショックたんぱく質の1つである「HSP70」の生産を抑制したところ、がん細胞がアポトーシスを引き起こすことを見つけた。
HSP70を作りだす遺伝子の指令をブロックするアンチセンスRNAを人工的に合成し、白血病の細胞に取り込ませた。すると最高100時間にわたって約80%の細胞の増殖が抑えられ、増殖しなくなった細胞を観察すると、アポトーシスに陥って死んでいることがわかった。
HSPは細胞に熱が加わった時にできて、細胞を助けるたんぱく質。様々ながん細胞の中でも作り出されており、がん細胞の増殖に関係していると考えられてきた。実験結果からは、HSP70ががん細胞内でアポトーシスが起きるのを抑制し、増殖を助ける役割を演じていると推定できる。
通常のアンチセンスRNAは分子が大きく細胞内へ入れるのが難しいが、HSP70の場合は比較的小さく簡単に入れることができるという。(日本経済新聞 1994/11/19)がんには「心理療法」が効く 免疫力を高める
「日本自律訓練学会」で症例報告
がんの治療法として免疫力を高める「心理療法」が注目されている。このほど東京都内で開かれた「日本自律訓練学会」で、末期の肺がん患者に効果があったという症例が報告された。海外では、がんと心、免疫力の関係を解明する研究が進んでおり、がんにかかりやすい性格まで指摘されている。発表したのは筑波大心理学研究科の田中輝美さんと、国立精神神経センター心身医学研究部の川村則行医師。
主婦、A子さん(33)は92年12月に、末期の肺がんと診断された。手術は無理で、半年の命とみられていた。翌93年2月から主治医になった川村医師は、化学療法に加え、心理療法を施した。3月中ごろ、副作用がひどくなったため抗がん剤の投与を中止、心理療法1本に切り替えた。同年6月からは田中さんが加わり、A子さん自身でリラックスできる状態をつくれるよう、自律訓練法を指導した。
この過程で、がんの進行度をみる腫瘍(しゅよう)マーカーの検査値は、増えるどころか減少傾向を示し、同年9月には退院。以後、1年以上たっているが、現在は自宅で療養、2カ月に1度、通院しカウンセリングを受けている。
がんの心理療法を研究している川村医師によると、A子さんは自己主張しないで、何でも周りに会わせて生きてきた人。一見、協調性があって問題がないようにみえるが、実はストレスをため込みやすい性格という。
川村医師は、入院時に1回約2時間のカウンセリングを週1回から3回、約3カ月間続け、他人の言葉や表情、期待などに左右されないで自律性のある生き方を身につけるよう指導した。田中さんは、A子さんが自分の感情を抑えてしまう性格を自覚していないので、まず、それに気づかせ、つらかったことや、悲しかった場面を思い描き、感情を表に出せるようにする訓練をした。
川村医師は、A子さんは相手に過剰適応せず、無理をしないで人に接しられるようになったことで、ストレスがたまらず、免疫力が高まったとみている。
性格とがん死亡率の関係に関しては、約1300人を4つの性格に分類して15年間追跡したアイゼンク・ロンドン大名誉教授の研究がある。
それによると、自律性がある人たちのがん死亡率は0.6%だったのに比べ、自律性のない、引きこもる性格の群は約46%。自律性のないタイプの人に行動療法を行ったところ、15年後の死亡率は4%に減少したという結果が出ている。
川村医師は「日本のこの分野の研究は欧米に比べて20年は遅れており、末期の患者しか十分に対応できないのが現状。好結果につながる例は少ないと思う。がんの初期段階から心理療法をやって、長期追跡する研究が望まれる」と話している。<自律訓練法> ドイツの精神科医シュルツが1932年に創唱した自己催眠的な精神療法。手足が重い、手足が温かい、心臓がゆっくり打っている……などの順序で自己暗示、全身の緊張を弛緩(しかん)させる。心身症、神経症、ストレス解消などに用いられている。(中日新聞 1994/11/27)
「抗がん剤 別のがん誘発」 不使用者の2倍も
患者844人を調査 大阪大講師
胃がん手術前後に抗がん剤を投与した患者が将来、別の種類のがんになる確率は、投与しなかった患者に比べて約2倍も高いことが、大阪大医学部の藤本二郎講師(外科)などの調査で分かった。横浜市で開催中の日本消化器外科学会で24日午後発表される。抗がん剤投与のリスクの度合いを臨床的に明らかにしたのは初めてで、抗がん剤を大量投与している現状に一石を投じそうだ。
調査は阪大医学部付属病院第2外科で1963年から81年までに胃がんの切除手術を受けた患者のうち、根治度の高い(がん細胞を取り除いた)患者844例が対象。333例は手術前か手術後に抗がん剤を投与する補助化学療法を受け、511例はこれを受けていなかった。
藤本講師は抗がん剤による2次発がんのリスクを知るため、手術後5年以上経て胃がん以外のがんになった人数を調べた。5年以内に別のがんになったり、5年以降に胃がんになった人は、2次発がんではなく再発だった可能性があるため、除外した。
その結果、5年以上経て肝がん、肺がん、白血病などを2次発がんした率は、補助化学療法群が6.3%(21例)と、抗がん剤を使わなかった群の3.3%(17例)のほぼ2倍も高かった。特に、複数の抗がん剤を投与した患者は8%(175例中14例)も発がんした。投与が手術前でも後でも、発がんのリスクは変わらなかった。
藤本講師は「抗がん剤の投与で発がんのリスクが高まることが証明された。単独では発がん性の低い薬剤でも、併用するとリスクが高くなる。早期胃がんで手術の根治度が高い場合は、投与はかえって逆効果になる」と分析している。投与有害とはいえぬ
西満正・癌研究会付属病院名誉院長の話 2次発がんが増えたからといって、直ちに抗がん剤投与が有害だということにはならない。胃がんの場合、早期はともかく、中期では補助化学療法が有効であると考えられている。(毎日新聞 1995/02/24)
前がん状態を抑制 べータカロチン 摂取量多い人に少ない慢性萎縮性胃炎
緑黄色野菜に含まれる「ベータカロチン」が、胃がん予防の“有望株”であることが分かってきた。国立がんセンター研究所支所(千葉県柏市)臨床疫学研究部の津金昌一郎部長らは、胃がんの「発生母地」(前がん状態)と考えられる「慢性萎縮性胃炎」との関連に着目。ベータカロチンを多く摂取する人ほど慢性萎縮性胃炎が少ないことを突き止めた。胃がん予防につながる研究成果として注目される。
慢性萎縮性胃炎とは、胃粘膜が萎縮して薄くなった状態。胃かいようと違って痛みなどの自覚症状はほとんどないが、胃がんになるリスクは正常な胃粘膜の人の6倍近いともいわれる。内視鏡(胃カメラ)を使わなくても、胃粘膜から出る胃液ペプシンの基になる物質「ペプシノーゲン」の血中濃度を調べれば分かる。
津金部長らは、東京や岩手など全国5地区で計634人を無作為抽出。食生活の聞き取り調査に加えて、血液検査でペプシノーゲン値のほかベータカロチンやビタミン類など各種の微量栄養素の量を調べた。
調査は緑黄色野菜のうち、ニンジンなど黄色野菜に限って調べた。結果は、黄色野菜をほとんど食べない人の26%が慢性萎縮性胃炎だったのに対し、ほぼ毎日食べる人は9%と少なかった。
さらに、ベータカロチンの血中濃度が高い人ほど同胃炎が少なかった。濃度によって4ランクに分けると、最低のグループに比べると、最高のグループの人が同胃炎になっている確率は40%だった。
津金部長は、ベータカロチンによって慢性萎縮性胃炎が起こりにくくなり、その結果、胃がんを予防できる可能性がある、とみて「今後さらに疫学研究や実験型臨床試験などをして、ベータカロチン摂取と胃がん発病との関連を明らかにする必要がある」と話している。<ベータカロチン> 多くの植物に含まれる黄色い色素。緑黄色野菜や果物では、ニンジン、パセリ、シソの葉、ホウレンソウ、ニラ、マンゴーなどに特に豊富。胃がんや肺がん、心臓病などの予防効果が期待される栄養素として、最近、注目を集めている。(中日新聞 1995/05/09)
“百寿”は食が決め手 琉球大医学部が調査
長寿の決め手はバランスの良い食生活──。沖縄県の100歳以上の長寿者(百寿者)を対象に琉球大医学部栄養学教室が摂取食品調査を行ったところ、1日平均18.5品目の食物を食べていることがわかり、20日、岐阜市で開かれた「第49回日本栄養・食糧学会」で、同教室の安里龍講師が発表した。百寿者個々の摂取食品調査は初めて。
沖縄は、百寿者が約230人もいる長寿県。調査は、その中でも健康な百寿者21人(男4人、女17人)を対象に、1日3回、3週間で摂取した食品の品目や頻度を、介護者に記入してもらう方法で行った。
その結果、1日に摂取する食品数の平均は18.5品目。摂取頻度の高い食物は、米、沖縄豆腐、卵、みそ、そうめん、わかめ、黒砂糖、白糖、にがうり、たまねぎ、にんじん、キャベツなどで、野菜類はほぼ毎回の食事に出ていた。(読売新聞 1995/05/21)HIV感染乳児の下痢にビタミンAが効果
南アの大学教授が報告
エイズウイルス(HIV)に感染した乳児にビタミンA(VA)を投与すると、死因にもなる下痢症状が軽減することが、南アフリカ・ナタル大学のアンナ・クートソーディス教授(小児科)らの調査でわかった。8日発行の米公衆衛生学会誌に報告された。
同教授らは、HIVに感染した母親から生まれた乳児118人と、HIVに感染したことが判明した乳児85人を、約半数ずつ2つの群に、計4群に分け、正常児、HIV感染児とも、片方の群にだけVAを1−15カ月間投与した。
この結果、HIV感染児のうち、VAを投与した群は、投与しない群に比べて下痢症状の現れる率が半分近くに減少。非感染児では両群で差はなかった。ただし、VAの作用機序ははっきりしていない。(ワシントン=北島重司)(朝日新聞 1995/08/16)納豆のビタミンK2が大腿骨けい部骨折防ぐ?
納豆の消費量が多い地域ほど、足の付け根の「大腿骨けい部」を骨折する女性が少ない──こんな調査結果を東大医学部老年病学教室の金木正夫医師らがまとめた。
大腿骨けい部骨折の大半は、中高年の女性に多い骨粗しょう症が原因とされている。骨折した人は、骨の形成をうながすビタミンK2の血液中の濃度が低いことも知られている。
そこで金木さんらは、ビタミンK2が通常の食品の何百倍も多く含まれている納豆に着目。都道府県別の患者数の推計と、県庁所在地の一世帯あたりの納豆の消費金額を比べた。その結果、男性では明らかな差はなかったが、女性では納豆の消費金額が多い地域の方が骨折が少なかった。
さらに、納豆を食べる習慣がないロンドンの女性10人と、半数以上が週に2回以上食べている東京の女性49人、9割以上が週に1回未満しか食べない広島の女性25人で、ビタミンK2の濃度を比較した。それによると、東京の女性はロンドンの女性の約15倍、広島の女性の約5倍も濃度が高かった。
金木さんは「大腿骨けい部骨折の頻度は国内では関西を中心に西に多く、英国人より日本人が少ないことが知られていた。納豆のビタミンK2が予防に役立っている可能性がある」と話している。(朝日新聞 1995/08/27)緑茶1日10杯でがん予防 喫煙者では効果が相殺
日本癌学会で発表
緑茶を多量に飲めば飲むほどがんの予防に効果があることを、埼玉県立がんセンター研究所疫学部の今井一枝研究員と菅謙司研究員、中地敬主任研究員が疫学調査で確認し、京都市で開かれている日本癌(がん)学会で4日、発表した。
予防効果は1日10杯以上で特に目立った。日本人に身近な緑茶が、飲む量を増やすだけでがん抑制に有効となれば、理想的な予防策になりそうだ。
研究グループは埼玉県内の中央部の町の住民8552人を対象に1986年から9年間、生活習慣などを追跡調査。この間、男女計384人ががんにかかり、うち262人が死亡した。
がん患者の384人について、1日に飲む緑茶の量とがんになった年齢を調べたところ、女性では3杯以下の人たちの平均罹患(りかん)年齢が65歳、4−9杯が67歳なのに対し、10杯以上は74歳で、がんにかかる年齢が大幅に遅くなった。また、79歳までにがんになる確率は、それぞれ21%、20%、10%で、多量に飲む人ほどがんにかかりにくい傾向があった。
一方、男性では当初、多量摂取の人と少量の人との間に統計的に意味のある差が出なかった。研究グループは、緑茶を多量に飲む男性には大量喫煙者が多いため、緑茶の効果がたばこの害で相殺されるのではないかとみて、非喫煙男性に限って解析してみた。
すると、79歳までにがんにかかる確率は、4−9杯の人たちが33%なのに対し、10杯以上では21%で、女性と同様、緑茶の効果が認められた。
人間の場合、発がん物質で遺伝子が傷を受けてからがんが発生するまでには10年以上の期間を要する。研究グループは、緑茶の中の発がん抑制成分がこの時期に作用し、発がんを遅らせるとみている。(中日新聞 1995/10/05)アトピーにはツバキ油が効果的
アトピー性皮膚炎の患者が、ツバキ油で皮膚の手入れをすると、かゆみ、湿疹(しっしん)が改善することが、東邦大学付属大橋病院の岸田勝講師(小児科)らの研究で確かめられた。研究チームは、生後3カ月から6歳までの子供の患者15人に、朝と夜の2回、湿疹の出ている部分に、ツバキ油を塗ってもらった。平均4.2カ月たった段階で、同病院が、湿疹部の発疹、かゆみなどの状態を点数化した「湿疹スコアー」(40点満点)で比較した。
この結果、使用前の10.2点(平均値)から使用後には4.2点(同)に症状が改善した。特に顔や首などの症状は著しく改善した。また、患者の母親に「しっとり感」「かゆみ」などを10段階で尋ねたところ、「しっとり感」は2.8から5.0に向上し、「かゆみ」も5.3から3.2にに改善した。(朝日新聞 1995/10/15)「アトピー症状」抑制成分を発見 熱帯植物から抽出
日大薬学部教授
熱帯地方の野生植物「シジュウム」の葉にアトピー性皮膚炎などのかゆみや湿疹(しっしん)を抑える成分が含まれていることが、日本大学薬学部の北中進教授(生薬学)の研究で分かった。シジュウムの葉で作った入浴剤を使ったり、お茶を飲んだアトピーの患者らから「症状が改善した」という声もあり、薬学会などで注目を集めそうだ。
アレルギー性疾患は、主に卵、牛乳、大豆などの食べ物やダニなどが引き金になる「アレルゲン」(抗原)に対する免疫グロブリンE抗体が、肥満細胞の表面でアレルゲンと結合することで起こる化学伝達物質(ヒスタミン)の遊離によって引き起こされることが知られている。
北中教授は、このヒスタミンの遊離に着目。シジュウムの葉を有機溶剤で抽出し、その液を濃縮させてエキスにした。これをラットの肥満細胞を使って実験した結果、ヒスタミンの遊離を強く抑制することが分かった。
北中教授はこれらの結果から「アトピー性皮膚炎に限らず、ヒスタミンが関与する気管支ぜんそく、花粉症、アレルギー性鼻炎などアレルギー性疾患について症状を改善する作用が期待される」と話す。
これとは別にシジュウムの葉を乾燥させて作った入浴剤を使ったり、お茶を飲んだアトピー患者ら50人以上を駿河台日本大学病院(東京都千代田区)皮膚科科長の馬場俊一医師が診察したところ「皮膚がきれいになった」「かゆみが少なくなった」など症状の改善がみられたという。
馬場医師は「入浴などでかぶれたり、症状がかえって悪くなったという人は今のところいない。現在の治療に併用することで症状の改善に役立ちそうだという感触を得ている」とした上で「かゆみなどが取れたのはヒスタミンの遊離抑制作用だけなのか、さらに患者を注意深く診ていきたい」と話している。(中日新聞 1995/12/24)リウマチ「腸内細菌」一因 ワクチン開発に道
愛知医大で究明
愛知医科大第2病理学教室(青木重久教授)は、同大整形外科教室(丹羽滋郎教授)と共同で、リウマチ患者の腸内細菌に対する抗体価(血清中)を健康人と比較した結果、リウマチ患者が健康人に比べて平均値で約2倍も高いことを突き止めた。不明だったリウマチの原因の1つが腸内細菌であることが分かったことによって、リウマチに対する効果的な治療法とワクチンの開発に道を切り開くものと期待される。
抗体は、細菌など病気の原因となる抗原を攻撃し、体を守る働きを持つ物質。
青木教授は、人間の腸内にある細菌の中から、他の腸内菌と共通の抗原を持つ「大腸菌O−14株」を選び、ウサギ78羽に1か月に1回、1年間投与し、免疫をつくる研究をした。
その結果、抗体価を高く示したウサギほど関節リウマチ発症率が高いことが分かった。解剖の結果、人間と同じリウマチの炎症を引き起こしていることも確認できた。
このため、リウマチ患者の血液などを採取し、抗体価を健康人と比べたところ、健康人は60人全員が正常値の範囲内だったのに対し、リウマチ患者では、83人のうち血清で40%、関節液で65%が正常値を上回るなどの結果を得た。
リウマチ患者が腸内細菌に対する高い抗体価を示したことは、大腸菌などの腸内細菌が共通に持つ物質が発症原因に重要なかかわりを持つ証明となった。塩川優一・順天堂大名誉教授の話 分子生物学的手法で、腸内細菌共通抗原がリウマチの原因であることを突き止めたことは、世界的に評価される研究だ。(読売新聞 1996/01/03)
βカロチン錠剤のがん予防効果に疑問
ベータカロチン錠剤が肺がんを防ぐかどうかは疑問で、喫煙者では逆に肺がんの危険を増やす恐れがある──米国立がん研究所がこんな研究結果を発表した。
ベータカロチンは緑黄色野菜や果物などに含まれ、発がん物質からDNAを守る働きがあるとされる。
同研究所のリチャード・クラウスナー博士によると、12年間にわたる2万2000人の男性医師を対象にした調査で、半数にベータカロチン錠剤、半数に偽薬を与えたところ、がんや心臓病の発生率で両者の間に差がなかった。
また、喫煙者やアスベストを吸い込んだ1万8000人を対象にした調査では、ベータカロチン錠剤を与えた人は偽薬を与えた人より、肺がん発生率が28%、死亡率は17%高くなった。
クラウスナー博士は、天然のベータカロチンががんや心臓病を防ぐことを否定するものではないと強調している。(朝日新聞 1996/01/24)心筋こうそくにも食物繊維 予防効果
米博士ら医師会誌に発表
【ワシントン13日=北島重司】野菜や穀物に含まれる食物繊維を多く食べる人は、少ない人に比べ心筋こうそくを起こす確率が半分近くに減ると、米ハーバード大のエリック・リム博士らが14日付の米医師会誌に発表した。食物繊維は大腸がんや肥満などの予防効果がすでに報告されており、今回の成果も成人病対策などに重要な資料になりそうだ。
リム博士らは、1986年時点で米国に住んでいた43歳から75歳の医師や歯科医、薬剤師ら医療に従事する男性約4万3700人を対象に、食物繊維の摂取量と心筋こうそくの関係を6年間にわたって追跡調査した。
6年間に心筋こうそくを起こした734人(うち229人死亡)について、食物繊維の平均摂取量が最も少ない1日12.4グラムから最も多い28.9グラムまでの5段階で比較。年齢の影響を考慮した結果、心筋こうそく発生率は食物繊維摂取が最も少ないグループで1%だったのに対し、摂取量が最も多いグループでは0.59%だった。特に、死亡に至る心筋こうそくでは、摂取量が最低のグループの1%に対して最高のグループは0.45%と半分以下になった。
また、食物繊維の摂取を野菜、果物、穀物に分けて分析した結果では、穀物の食物繊維が最も効果が大きかった。効果裏付ける研究
中村治雄・防衛医大教授(内科・脂質代謝)の話 食物繊維にはコレステロールを排出する作用があり、心筋こうそくの予防にも役立つと考えられてきた。また野菜には、血液を固まりやすくするアミノ酸の一種を減らす作用があることも分かってきた。今回の研究は、実際にこれらの作用があることを裏付けたという点で評価できる。(朝日新聞 1996/02/14)
ビタミンC がん細胞の転移抑制 動物実験で立証 広島県立大
広島県立大学生物資源学部の三羽信比古教授らは大量のビタミンC(アスコルビン酸)をがん細胞に与えると転移が起きにくくなることを動物実験で確かめた。がん細胞内の有害な酵素の働きが弱まり、転移する能力が下がるという。ネズミを使った実験では転移を通常の3−4割に抑制できた。3月27日から金沢市で開かれる日本薬学会で発表する。
ビタミンCはそのままの形では細胞に入りにくいので、リン酸基をつけるなど一部の構造を変えた「Asc2P」と呼ぶ物質を合成した。この物質は細胞に吸収されてビタミンCに変わり、細胞内のビタミンCの濃度が通常の40倍近くにまで高まる。
ヒトの線維肉腫(しゅ)がん細胞を培養してAsc2Pを加えたところ、がん細胞の転移能力を示す浸潤能が1−2割に減少した。メラノーマ(悪性黒色腫)ができたネズミに注射すると、メラノーマの転移は通常の3−4割に減った。
がん細胞はMMPという酵素を合成し、この酵素が周囲の細胞間を埋めている物質を溶かすことによって、他の場所に転移するための通り道を作る。三羽教授によると、ビタミンCはがん細胞に作用して、この酵素を合成する遺伝子が働かないようにしている。がん細胞の運動能力を失わせる作用もあるという。
ビタミンCは正常な細胞に対して害が少なく、三羽教授は「転移抑制剤として有望だ」と話している。研究は富山医科薬科大学、昭和電工と共同で実施した。(日本経済新聞 1996/02/26)ビタミンCでガン治療 細胞に侵入転移や増殖抑える
ビタミンCをがん細胞に取り込ませ、がんをやっつけようという研究が進んでいる。
大量のビタミンC投与でがんを治す試みは以前からあったが、ビタミンCは服用しても細胞内にまで入りにくいために期待されたほどの効果は上がっていない。最新の手法は、ビタミンCに手を加え細胞に取り込ませやすくして利用する。がんの治療薬として再デビューする可能性がでてきた。
ビタミンCが細胞に取り込まれないのは、油に溶けにくいからだ。細胞を囲む細胞壁は実は油の一種でできている。
ビタミンCに別の物質をくっつけてやり、油に溶けるようにすると細胞膜をするりと通り抜ける。広島県立大学生物資源学部の三羽信比古教授は、そうやって改造したビタミンCによるがん治療を試みている。
油溶性になったビタミンCをおなかの中にがん(腹水がん)があるネズミに投与したところ、ネズミの寿命は、投与しない場合の2.5−2.8倍に延びた。がんが縮小したネズミもいたという。
ビタミンCにはがんの転移を抑える作用もあるらしい。三羽教授らが富山医科薬科大学などと共同で実施した実験では、ネズミのメラノーマ(悪性黒色しゅ)というがん細胞に大量のビタミンCを取り込ませると、がんの転移をある程度防げることがわかった。がん細胞がつくる特殊な酵素の合成をビタミンCが妨げ、がんが勢力を拡大するのを防ぐ。「ビタミンCを利用してがんを治療できる可能性がみえてきた」と三羽教授は話す。
ビタミンCを別の治療法と組み合わせる試みもある。大阪市立大学の蔭山勝弘講師らは、培養したがん細胞にビタミンCを取り込ませ、セ氏42度に温度を上げると殺傷効果が上がることを確認した。がん細胞にビタミンCを取り込ませた後、マイクロ波を照射してやっつける温熱療法が考えられるという。
ビタミンCと呼ぶ物質の正体は「アスコルビン酸」。新鮮な野菜や果実、緑茶などに多く含まれている。生体内に生じる有害な物質を捕らえて消したり、細胞の分化や増殖を制御するなどさまざまな作用を持つ。重要な物質だが、人間やサルなど霊長類は体内で合成できないため、食物から摂取しなくてはならない。
ビタミンCの能力を利用してがんを治療する試みは以前からあった。米国のノーベル賞学者、ポーリング博士らはがん患者にビタミンCを大量に投与してがん細胞にダメージを与えるという治療法を考案、提唱した。ビタミンC治療法は、ひところブームになったが、劇的な効果は表れなかった。
現在では、ビタミンCをそのまま与えても、壊れやすいうえに細胞内に入りにくい欠点があって、効果は期待できないと考えられている。ビタミンCをせっせと食べてもがんが治せるわけではないのだ。
首尾よくがん細胞内に潜入させられれば、効果がある。そこを狙った研究が活発になってきたわけだ。
食べるビタミンCでは、治療より予防効果の方が期待できる。がんを引き起こすもとにもなる有害な「フリーラジカル」を減少させる効果があり、がんを「初期消火」できるからだ。紫外線がもたらす遺伝子の傷もビタミンCによって抑えられることも知られており、皮膚がんの予防につながるとされる。
現代人は喫煙、食品添加物、ストレスなどでビタミンCが不足しがち。「ビタミンCは1日1.5グラム程度とった方が良い」と専門家は言う。一度に大量に取り過ぎても悪影響がでるので、少しずつ何回にも分けて摂取することが大切だ。(日本経済新聞 1996/03/30)「胃炎防止に緑茶効く」 おいしくて副作用の心配なし
四日市の食品会社とがんセンターが確認
胃炎や胃かいようの隠れた原因として最近注目されている細菌、ヘリコバクター・ピロリの除菌に、緑茶が有効なことが、食品会社「太陽化学」(四日市市)の総合研究所と国立がんセンターの共同研究で詳細に確認された。同社は「抗生物質には副作用があるが、緑茶なら安全に菌を減らして、胃かいようの予防や再発防止に役立つ」としている。
除菌に効果があるのは、緑茶に含まれるポリフェノールという成分。今回、ポリフェノールのうち、特に緑茶に多い物質エピガロカテキンガレート(EGCG)がもっとも効果が強いことが分かった。この物質が200ppm含まれる溶液中では菌がすべて死滅した。
同研究所によると、飲むお茶には、200ppmほどのポリフェノール、60ppmほどのEGCGが含まれているという。
さらに、国立がんセンターで、菌を胃に持っている患者7人に、緑茶ポリフェノールを1日600ミリグラム(カプセル4個か抹茶ゼリー3個)ずつ、4週間続けて摂取してもらったところ、うち4人で菌がなくなったり、減ったりした。
斉藤大三・国立がんセンター中央病院細菌免疫検査室医長は「600ミリグラムはお茶10杯ほどに相当する。抗生物質で除菌した胃かいよう患者が、再発防止のために、お茶を飲んだり、緑茶から抽出したポリフェノールを取ったりするのは効果があるはずだ」と話している。
研究結果は、30日から京都市で開かれている日本農芸化学会大会で31日、発表される。<ヘリコバクター・ピロリ> 胃の粘膜にすみつく長さ約3ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)の細菌。胃かいよう患者のほとんどの胃に生息している。この菌を除菌すると再発が抑えられることから、胃かいようや胃炎と密接に関係しているとみられる。(朝日新聞 1996/03/31)
コンブなどに含まれる多糖類「フコイダン」 がん細胞“自殺”に追い込む
宝酒造など共同研究 薬品へ合成も可能に
コンブなどに含まれる「フコイダン」という多糖類に、無限に増殖するがん細胞を“自殺”に追い込む働きがあることが、宝酒造(本社・京都市)と第三セクターの糖鎖工学研究所(青森県弘前市)の共同研究で明らかになった。
研究グループは、独自の方法でフコイダンの構造を解析し、そのうち活性がある物質を「U−フコイダン」と命名。胃がん、結腸がん、白血病など、活発に増殖しているがん細胞で、自殺を引き起こすことを確認した。1リットルあたり1グラムの濃度で、2日間培養した結果、約10万個のがん細胞がほとんど消滅した。
細胞の自殺は「アポトーシス」といわれ、細胞表面の受容体からシグナルが送られて自殺機構が働く。病気による細胞死とは異なり、核が断片化されて細胞は消滅する。
フコイダンはコンブ、ワカメ、ヒジキなど褐藻(かっそう)類に含まれ、抗がん作用のほか、コレステロール低下、受精阻害などの作用が知られている。分子量が大きく複雑な物質であるため、純粋なフコイダンを得るのが難しかった。
宝酒造バイオ研究所では「U−フコイダンの構造もほぼ明らかになっており、どの部分が細胞の表面にある受容体に作用するのかが分かれば、薬品として合成することも可能だ」と話している。(中日新聞 1996/07/02)水虫たむしに緑茶ぶろ 茶がら利用 症状が改善
看護学会で発表
緑茶の出がらしで寝たきり状態のお年寄りの体をふいたら、水虫やたむしの症状が軽くなった──国立静岡病院(静岡市)の看護婦さんらが、お茶どころらしい水虫・たむしの退治法を考え、11日から岡山市で開催中の日本看護学会看護総合分科会で発表した。
発表したのは同病院の看護婦、加藤由紀子さん(26)。緑茶に含まれるカテキンという成分が、白癬(はくせん)菌という水虫やたむしの原因となるカビの一種をやっつける作用があると論文で知り、看護への応用を思い立った。
同病院の食事で使った緑茶の出がらし約250グラムを8リットルのお湯(90度)に10分間浸して茶の成分を抽出。これまで水虫・たむしの薬を使っても症状があまり改善しなかった寝たきり状態の6人に対し、昨年5月から、このお湯のふろに毎週1回入れ、週に2回はこのお湯で体をふいた。
その結果、早い人で1週間、遅い人で7週間で白癬菌が検出されなくなり、途中で退院して効果が確認できない1人を除き、全員が症状も改善された。
加藤さんは「簡単な方法なので、水虫に悩む人は茶がらをストッキングなどに入れて、自宅のふろでも試してみては」と話している。(朝日新聞 1996/07/13)胃かいようの原因 がんとも関係
ピロリ菌退治、緑茶が効きます 渋味成分カテキン作用
静岡県のチーム研究
胃、十二指腸潰瘍(かいよう)の原因で、胃がんと密接な関係があると考えられている細菌「ヘリコバクター・ピロリ」(ピロリ菌)の除菌に、緑茶の渋味成分「カテキン」が有効という研究成果を、茶どころ静岡県にある県西部浜松医療センター(浜松市富塚町、室久敏三郎院長)消化器科などの共同研究チームがまとめた。ピロリ菌の研究は、国立がんセンター(東京都)などが胃がんとの関連を調べるなど、消化器内科では今一番ホットなテーマ。緑茶の効用が見直されるとともに、抗生物質だけに頼らない治療法として注目される。(東海本社報道部・小原栄二)研究グループは、同医療センターの室久院長、山田正美・消化器科医長、静岡県立短期大学部の原田昇教授(外科学)、小国伊太郎教授(食品化学)、三井農林食品総合研究所=静岡県藤枝市=の原征彦所長ら。
グループは大井川沿いの緑茶生産地、同県榛原郡川根地区の胃がん死亡率が県内で最も低く、特に同郡中川根町の男性は全国値の5分の1という小国教授の疫学調査に着目。胃がんと関係があるというピロリ菌に対してお茶が有効ではないかと考え、昨年から研究を始めた。
実験では、緑茶に含まれる4種類のカテキンを溶かした寒天の上で、ピロリ菌を培養。その結果、2種類のカテキン(エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート)が数日でピロリ菌を死滅させ、抗ピロリ菌作用があることが分かった。
臨床では、同医療センターのピロリ菌保菌患者28人に、三井農林食品総合研究所が緑茶から抽出した4種類のカテキン粉末を入れたカプセル(100ミリグラム)を服用してもらい、胃内ピロリ菌の活性変化を調べた。この結果、1日7カプセルずつ1カ月間の服用で、4人の患者が完全に除菌され、残り半数もピロリ菌の活性が下がった。
これに似た研究結果は今年3月に、国立がんセンターと太陽化学(三重県四日市市)の共同研究グループも農芸化学会で発表している。むし歯予防のために菓子の原料にする緑茶から抽出した生理活性物質、ポリフェノール食品を、ピロリ菌保有患者7人に経口投与したところ、4人に除菌効果が見られたという。
抗生物質によるピロリ菌除菌は、投与した患者の9割の除菌を目指している。山田医長は「カテキンによる除菌も、理論上は、もう少し効果があってもいいと思う。さらに投与方法などの改良に取り組んでいる」という。現在得られているカテキンの抗ピロリ菌作用と臨床データを、秋に横浜市で開かれるアジア太平洋消化器病学会で発表する予定だ。
一方、同研究グループは18日から、中川根町民に協力を求め、ピロリ菌感染状況の疫学調査を始める。「お茶をよく飲み、胃がんが少ないこの地域で、ピロリ菌の感染自体が低いことが裏付けられれば、発がんにピロリ菌が関係していることの傍証にもなる」と山田医長。
調査は、検診を受ける50、60代の町民約300人の血清抗体を調べ、同医療センターでの検診者の数値と比較する。前がん状態といわれる胃の委縮度との関係も調べる計画だ。
ピロリ菌と胃がんの関係については、国立がんセンターが中心になり、全国300の医療機関で、ピロリ菌に感染しながらかいようなどの病変がない約5000人を対象とした大規模な臨床試験が昨年から行われている。
ピロリ菌を取り除く治療をしたグループと、しないグループに分け、その後9年間にわたって、前がん状態の有無などの追跡調査を行う。
ピロリ菌感染症の診断と治療に詳しい自治医科大消化器内科の木村健教授は「カテキンのような生薬だけで、すべてのピロリ菌感染を治療できるとは思わないが、治療のヒントにはなる。将来的にはワクチン開発が治療の決め手になると思う」と話している。(中日新聞 1996/07/14)生野菜は増加傾向の口腔がん“予防薬”
発病危険度が半減 愛知県がん研など調査
舌がん、咽頭(いんとう)がんなど日本人男性に増え続けている口腔(こうくう)がんになる危険性は、生野菜や果物を多く食べることで半分に減らせることが30日までに愛知県がんセンター研究所(名古屋市千種区)などの調査で分かった。酒やたばこが口腔がんの危険因子なのは知られているが、予防効果のある食べ物が明らかになったのは日本で初めて。愛煙家、左党のお父さんたちの注目を集めそうだ。病原性大腸菌O157の影響で消費が落ちている野菜農家にも朗報となりそう。
調査を担当したのは同研究所疫学部の嶽崎(たけざき)俊郎研究員(40)はじめ、愛知県がんセンターの研究所、病院の共同グループ。
1988年から6年間、同病院で診察した口腔がん患者266人、非がん患者3万6527人に食生活などを質問。口腔がん患者と非がん患者の食事を比べ、予防に効果的な食べ物を調べる「症例対照研究」に取り組んだ。
回答は集計し性別、年齢、飲酒、喫煙歴などを調整して分析した。その結果、生野菜を時々食べる、またはほとんど食べない人が口腔がんになる危険度を1とした場合、週に3、4回食べる人は0.6、毎日食べる人は0.5と半減することを突き止めた。
果物についても、時々食べるか、ほとんど食べない人の危険度を1とすると、週3、4回食べる人は0.7、毎日食べる人だと0.5で、やはり半分に減っていた。ただし同じ野菜でも加熱した食事では、予防効果はみられなかったという。
厚生省によると、日本の口腔がん死者は平成6年、全国で男性292人、女性141人の433人。男性は戦後、ほぼ一貫して増え続け、10年前に比べ約60%多くなっている。
働き盛りの年代が用心しなければならないがんの1つで、今回の調査ではたばこを吸い、日本酒を週4日以上(1日に2合以上)飲む人の危険度は酒、たばこともやらない人の6.2倍という結果も出た。
嶽崎研究員は「これまで舌がんについて同様の小規模な研究結果が出たことはあるが、口腔がん全般に有効なのが分かった。飲酒、喫煙がやめられない人は生野菜、果物を積極的に食事に取り入れてみては」と話している。(中日新聞 1996/08/30)遺伝子直接注入 がん細胞が消失
米博士ら 新治療法
【ワシントン28日共同】「がん抑制遺伝子」と呼ばれる遺伝子を、肺の進行がん患者の患部に注入する新しい遺伝子治療により、がん細胞が消失するなどの治療効果があることを、米テキサス大のジャック・ロス博士らの研究グループが確認した。米医学誌ネイチャー・メディシン9月号に発表する。
乳、大腸がんなど、ほかの進行、早期がんへの応用が期待されている。
多くのがん患者の場合、「P53」というタンパク質を作る遺伝子が欠損していることがこれまでの研究で分かっていた。この遺伝子が正常な場合は細胞ががん化するのを妨げる働きがあり、がん抑制遺伝子と呼ばれている。
同博士らは、ほかの治療方法では効果がなかった9人の肺の進行がん患者の患部に、ウイルスを遺伝子の運び屋(ベクター)にしてP53の正常遺伝子を注入する治療を1日1回、5日間続けた。
経過観察期間をおいて調べた結果、9人のうち、1人はがん細胞が完全に消失、2人は約半分以上縮小、3人は縮小はしていなかったものの進行が止まるなど、6人ではっきりとした効果を確認できた、という。
がんの遺伝子治療はこれまで、体を守る免疫細胞にがん細胞を破壊する働きがあるタンパク質の遺伝子を注入して免疫細胞の攻撃力を強めるなど、がん細胞を直接攻撃する方法ではなく、患者の免疫機能を高める方法が主流だったが、目立った治療効果を示す報告は少なかった。(中日新聞 1996/08/30)ユリ科植物から抗がん物質分離 10−100倍強力作用 東京薬大
ユリ科植物の球根から分離、精製した新物質に、現在の抗がん剤よりはるかに強力な抗がん作用があることを東京薬科大薬用植物学研究室の三巻祥浩講師と指田豊教授らが実験で突き止め、12日横浜市で開かれた日本癌(がん)学会で発表した。
全く新しい構造の物質のため、抗がん剤開発の突破口になりそうだ。米国立がん研究所もこの発見に注目して、動物実験を進めている。
三巻講師らは、ユリ科植物が漢方生薬に活用されているのをヒントに、50種以上のユリ科植物から約400種類の物質を分離して、生理作用を調べた。このうち、南アフリカ原産の観賞用植物、オーニソガラムの球根の主成分として取れたコレスタン配糖体が、最も強い抗がん作用を示した。
この物質はコレステロールに糖と有機酸が結合した形をしており、ごく微量でヒト白血病培養細胞の増殖を抑えた。がん細胞を殺す作用は、現在使われているシスプラチンなどの抗がん剤より10−100倍も強かった。また、現在の薬剤が効かなくなったようながん細胞にも有効だった。
正常細胞にはあまり害を与えず、がん細胞だけを倒す選択的な作用が目立ち、計60種類のがん細胞のどれにも効果があった。
さらに白血病のマウスに約0.3マイクログラム(1マイクログラムは1000分の1ミリグラム)を1回注射しただけで寿命が平均60%延び、ラットに移植した肝臓がんの増殖も抑制した。研究グループは特許を出願している。
指田教授は「植物成分でこれだけすごい抗がん作用はない。薬にするには、人体への毒性をきちんと見る必要があるが、これまでと全く違うタイプの物質なので、期待している」と話している。(中日新聞 1996/10/12)抗がん剤副作用、漢方薬が効く!下痢抑制に効果
岐阜市民病院で突き止める
岐阜市民病院(岐阜市鹿島町)は抗がん割による肺がん治療で患者に副作用として表れる重い下痢症状の軽減に、漢方薬の「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」が有効であることを突き止めた。9日からギリシャで開かれる世界肺がん学会で発表する。
下痢の副作用があった場合、脱水症状がショック死につながることもあるため、これまでは患者への抗がん剤投与を途中で中断せざるを得なかった。同病院は「安全にがん治療を継続できる方法が見つかった」としている。
同病院呼吸器科の沢祥幸副部長(39)によると、抗がん剤による肺がん治療では、2年前に開発された塩酸イリノテカンと、従来の抗がん剤を併用する方法が用いられているが、重い下痢や白血球減少の副作用が表れる。白血球減少を押さえる方法は既に確立されていたが、下痢に対する有効手段がなかった。
7種の生薬からなる半夏瀉心湯は、保険適用が認められている下痢止めの漢方薬。動物実験ではすでに肺がん治療での下痢止めに有効との結果が出ていた。沢副部長は「患者の了解を得て、29人に投与した結果、半数以上の下痢症状が軽減された」と話している。(中日新聞 1996/11/09)アトピー患者に朗報 漢方薬入浴剤が効果
ステロイド使用量 併用で5分の1に
名古屋の医師研究『副作用少なく』
アトピー性皮膚炎の治療に漢方薬の入浴剤を併用することで、長期間投薬後の弊害が懸念されるステロイド(副じん皮質ホルモン)剤の使用量を従来の5分の1程度に抑えられることが、名古屋市千種区高見2の小児科医、吉田政己さん(50)の研究で分かった。ステロイド剤の副作用を少なくすることにもつながり、患者たちにとっても朗報だ。27日から福岡市で開かれる第33回日本小児アレルギー学会で報告する。
漢方薬による入浴療法は、富山医科薬科大医学部の皮膚科教室が1992年の和漢医薬学会大会で発表した。吉田さんは小児科医の立場から、乳幼児の治療に応用できる点に着目。同教室の研究結果を基に、20種類以上の生薬を組み合わせて研究を続けた。
その結果、保湿作用がある当帰(トウキの根)と地黄(カイケイジオウの根)に、炎症を抑える茵陳蒿(いんちんこう=カワラヨモギの幼苗)を配合した場合、皮膚の乾燥やかゆみに対して最も高い効果を示すことが分かり、昨年初めから治療に使ってきた。
ことし3月には、この3種類を3グラムずつせんじた入浴剤で初診患者46人(3カ月−33歳)に毎日15分以上2週間入浴してもらい、軟こう薬で5分の1に薄めたステロイド剤を同時に使って、その効果を調査した。
皮膚のかゆみについては70%が「減った」「やや減った」と回答。同様に乾燥は74%、皮膚の赤みは77%に改善傾向がみられ80%の患者が入浴療法の継続を希望した。入浴剤を併用すると、ステロイド剤を5分の1に薄めても通常の治療とほぼ同じ程度の効果があることが分かった。
ステロイド剤はアトピー性皮膚炎治療の特効薬とされ、炎症を抑えるのに効果が大きいが、長期間使用してから投薬を中止した後に、症状が急激に悪化するリバウンド現象が問題視されてきた。
吉田さんは「最近はステロイド剤を長期間使わなければならないような重症患者が増えており、リバウンドが心配。同剤の使用量を減らしながら症状をコントロールしていく治療法の1つとして普及していけば」と話している。
問い合わせは、よしだこどもクリニック=052(751)4151=へ。有力な手段と期待
あじま診療所(名古屋市北区)所長でアレルギーネットワーク愛知代表の近藤知己医師の話 入浴療法そのものが根本的な治療とは思わないが、ステロイド剤の使用量を減らしていくための有力な手段の1つとして期待できる。ダニの駆除をはじめとしたアレルギー原因物質の除去や食事療法などと組み合わせていけば効果的だろう。
<アトピー性皮膚炎> 主に乳幼児期に皮膚の乾燥、かゆみ、汗の排せつ障害、皮脂分泌などの障害がみられるアレルギー性疾患。多くは成人するまでに治るが、老齢期までどの年齢でも起こりうる。(中日新聞 1996/11/25)
抗がん剤効かないケース 事前試験で9割判定 がん医ら調査
個々の患者に抗がん剤が効くかどうかは事前の試験でほぼ予測でき、激しい副作用で患者を苦しめるだけの無用な投与を避けることができると、制癌(がん)剤適応研究会(近藤達平会長)が調査で明らかにした。まとめ役の谷村弘・和歌山県立医大教授は「抗がん剤は2、3割程度の有効性で認可されており、もともと効果は限られている。患者もがんも千差万別なのに、がんなら一律に抗がん剤というのはもうやめるべきだ」と話している。研究会はがん治療医らが作っており、6日の世話人会で調査結果が報告される。
効果を判定するのは「感受性試験」と呼ばれる試験で、患者から取ったがん細胞を培養して、抗がん剤を使った場合と使わなかった場合を比べる。薬によって違うが、24時間から2週間で判定できる。
研究会が会員施設を対象に調べたところ、試験結果と実際の効果について、23施設から1101症例が集まった。胃がん、大腸がん、乳がん、肺がんなど各種のがんで、フルオロウラシルやシスプラチンなど、広く使われている抗がん剤の成績が含まれている。
それによると、感受性試験で有効と予想されたのは461例(42%)、無効予想は640例(58%)だった。実際の結果は有効が260例(24%)、無効が841例(76%)。試験で無効と予想されたものは、93%にあたる595例が実際の治療でも効果がなかった。有効と無効をあわせると、全体の74%が結果と一致した。
谷村教授は「感受性試験で無効と出た場合には、抗がん剤以外の放射線や免疫療法などを探る方がいい」と話す。この試験は各地のがんセンターや大病院など約90の施設でできるという。
和歌山県立医大のデータで試算すると、無効予想の患者への抗がん剤をやめた場合、胃がんだけで全国で4億円程度の薬剤費節減にもつながるという。(朝日新聞 1997/03/05)DHAで不整脈予防 マグロの目玉に豊富
微量で効果、臨床試験へ 東邦大教授ら
健康ブームとなっている魚の不飽和脂肪酸ドコサヘキサエン酸(DHA)とビタミンCを結合させた新物質が心臓の不整脈を防ぐことを、東邦大薬学部(千葉県船橋市)の百瀬弥寿徳教授と大学院生の陳福士さんらが動物実験で見つけた。不整脈の治療、予防薬として有望視して、臨床試験を検討している。
DHAが微量で効く薬になる可能性を示す成果で、特に不整脈予防薬はこれまで少なかっただけに注目される。26日から東京で開かれる日本薬学会で発表する。
DHAはマグロやカツオの目の後ろの部分に多く含まれている。研究グループは、DHAをよく摂取する人々の間で虚血性心疾患が少ないという疫学データを手掛かりに、不整脈への効果を探った。
DHAそのままでは水に溶けないため、相模中央化学研究所(神奈川県相模原市)の矢沢一良主任研究員らがビタミンCを結合させて合成した新物質の効果を調べた。新物質はともに健康食品として定評のあるDHAとビタミンCからなり、副作用がなく、水に溶けて安定で使いやすい。
野生植物トリカブトの毒性成分のアコニチンを注射すると、激しい心室細動などの不整脈が起こり、ラットは通常30分以内に死ぬが、この新物質を注射したところ、不整脈の発作は見られなかった。
15分前に新物質を注射してからアコニチンを投与しても、不整脈は発生せずにラットは生き続け、不整脈の予防にも使えることが分かった。
この薬理効果は体重1キロ当たり1ミリグラムの微量の投与で現れた。また有害なカルシウムが心臓の細胞に多量に流入するのを防いで、不整脈を抑えるという仕組みも確かめた。
百瀬教授は「不整脈の治療と予防の両方にかなり効く。安全な薬として期待できる。臨床試験をして、実用化したい」と話している。(中日新聞 1997/03/21)ビタミンCでピロリ菌100分の1に減少 レモン1500個分
胃がんなどとの関連も疑われている細菌「ヘリコバクター・ピロリ」が、ビタミンCの投与で大幅に減少することが国立国際医療センター研究所の研究で分かった。ピロリ菌を感染させたスナネズミに、体重1キロ当たり1000ミリグラムのビタミンCを3日間経口投与。その結果、投与しないネズミに比べて、胃内のピロリ菌が100分の1に減少した。
しかし、投与したビタミンCは、体重60キロの人に換算すると60グラム、レモン約1500個に含まれる量に当たり、このままでは人には応用できないという。(東京新聞 1997/04/08)アレルギーにビタミン有効 副作用ない予防薬に
徳島文理大チーム解明
レバーなどに多く含まれるビタミンB6が、アレルギー反応の原因となる体内の酵素の働きを抑えることを徳島文理大健康科学研究所(徳島市)の勝沼信彦所長らの研究チームが、動物実験で解明した。
花粉症などアレルギー全般に効果があるとみられ、副作用のない新たな予防薬の開発が期待されている。8月に米国で開かれる国際生化学学会で発表する。
アレルギーは、体内に入ってきた異物(抗原)に対してリンパ球がつくる抗体が結合する抗原抗体反応の1つ。この抗体が皮膚の炎症などの原因となるが、勝沼所長らはビタミンB6が抗体をつくらせる酵素「カテプシンB」の働きを邪魔することを突き止めた。
体内に花粉などの抗原が入ると、まず食細胞(マクロファージ)が取り込んでリンパ球に異物の情報を伝える。この伝達信号の役目をするのが酵素だが、B6はこの酵素と結合してしまい、情報伝達をさせない。
実験では、マウスの腹腔(ふくくう)内に卵アレルギーを起こす量の卵白のタンパクとB6を一緒に投与、アレルギー症状が起きないことを確かめた。
アレルギーの治療は抗ヒスタミン剤が一般的だが、眠気などの副作用がある。通常の食品に含まれるB6は副作用の心配がなく、皮膚病の治療に使われている。
勝沼所長は「服用過多による毒性がない水溶性ビタミンのB6にアレルギー性疾患の抑止効果が見つかったことは、非常に重要な発見」と話している。(中日新聞 1997/05/23)青汁でダイオキシン退治? 九大系研究班報告
葉緑素結合か、体外排出しやすく
青汁やホウレンソウといった葉緑素の多い食品を取ると、油症の最大原因物質とみられる五塩化ジベンゾフランやダイオキシンなどの難分解性有機塩素化合物が体外に排出されやすくなることが、全国油症治療研究班の実験でわかった。
実験したのは、九大油症治療研究班に所属する福岡県保健環境研究所(同県太宰府市)のグループ。青汁のもとになる植物「ケール」やホウレンソウ、青じそなどの粉末をネズミに与えた。便と一緒に排出されるダイオキシン類の量を調べたところ、植物粉末を食べたネズミは、普通のえさで飼育したネズミより4−3倍多く排出したという。
同研究所の飯田隆雄・生活化学課長は「これらの植物に多く含まれる葉緑素がダイオキシン類と結合し、便に混ざりやすくなったためではないか」という。
一度体に入ったダイオキシン類は、代謝で腸内に排出しても再吸収されてしまい、なかなか減らない。排出効率を上げるものとして米ぬか繊維が唯一実用化されているが、きな粉をまずくしたような味で飲みにくいのが難点だった。(中日新聞 1997/06/07)南米の薬草「ステビア」 O157殺菌に効果
東北大教授ら確認
深刻な集団食中毒を起こしたO157を含む病原性大腸菌の殺菌に、南米原産の植物の抽出液が効果的なことを、東北大学農学部の神尾好是教授(微生物学)らのグループが突き止め27日、都内で開かれた日本細菌学会関東支部総会で発表した。
O157治療薬の抗生物質ホスホマイシンには、耐性菌の出現も報告されているだけに、注目を集めそうだ。
この植物はパラグアイ原産のステビアで、インディオが昔から薬草や甘味料として利用していたキク科の多年草。
神尾教授らはO157とO26、O114の3種類計7株の病原性大腸菌について、それぞれの溶解液にステビアを煮出して作った抽出液をさまざまな濃度で混合。37度で2時間置いた後の菌の数とベロ毒素の量を測定した。
その結果、抽出液の濃度が20%以上で殺菌効果が見られ、50%では最も殺菌効果のあった株で菌の数は100万分の1、比較的耐性があった株でも1000分の1に減少した。また、ベロ毒素は、耐性の有無にかかわらずどの株でもほぼ同等に減少、20%以上の濃度で検出限界以下となった。(中日新聞 1997/06/28)O157対策「菌には菌を」 広島大の川上教授が研究
殺菌能力が強い物質『ケフィーア』用いて
広島大生物生産学部の川上英之教授(食品衛生学)は、乳酸発酵を促す物質「ケフィーア」で病原性大腸菌O157を退治する研究を続けている。これまでの実験で、O157に対する殺菌能力が強いことが分かり、有効成分の解明を急いでいる。
ケフィーアは、1センチ前後の白い粒で、20種類前後の乳酸菌が含まれている。牛乳に入れると発酵し、ヨーグルト状の飲み物になり、黒海とカスピ海の間に位置するカフカス(コーカサス)地方で愛飲されている。
川上教授は「菌で菌を殺す」発想で4月から研究に着手。2つのタイプのO157について、それぞれ1ミリリットル当たり70、7000、7万、700万、7億個の5種類のサンプルを作製。10ミリリットルのケフィーアと混合し、零度、30度、37度で経過観察した。
その結果、37度で、7万個以下の3種類は1時間以内に死滅し、700万、7億個の2種類も5時間以内に菌が絶滅した。30度でも同様の結論を得たが、零度ではほとんど死ななかった。
腸内温度と同じ37度で菌がよく死んだことから、O157退治にケフィーアは有望とみている。今後、消化液の影響も調べる。
O157が作るベロ毒素は、赤血球を溶かしたり、体内に尿毒素を残したりして、時には人を死に至らしめるが、ケフィーアにはベロ毒素に対する解毒作用もあるとみている。
川上教授は「研究は始まったばかりだが、今回の実験は、食中毒防止へ一筋の光になると思う。今後の研究でO157を死滅させる成分が特定できれば、医薬品に応用できると期待している」と話している。(中日新聞 1997/07/22)もずく/梅干し/お茶/納豆/ワイン
伝統食品が持つ優れた抗菌作用 O157にも“効果”
ピロリ菌、水虫にも 公開セミナーで発表
東京・渋谷の青学会館でこのほど「食品のもつ抗菌作用について」の公開セミナーが開かれ、納豆、梅干し、お茶などの伝統食品が持つ抗菌、殺菌作用について専門家が発表した。特に病原性大腸菌O157への効果を中心に検証した興味深い実験結果が次々と報告された。(野村 由美子)「食事には梅干しを必ず食べ、食後にはお茶を飲み、夕食時にはワインを飲んで病原菌から身を守ろう」−。発表者から、こんな発言が出るほど、さまざまな伝統食品がO157や大腸菌の発育を阻害するという実験結果が出た。
島根大学生物資源科学部との共同研究を続けた海産物のきむらやの矢倉美代さんは「味付け糸もずくや、その調味液をO157と合わせ37度で培養すると、1グラム当たり100万個あったO157が、糸もずくでは9時間後に、調味液でも24時間後に菌が全く検出されなくなった」と発言。
また梅エキスを1cc当たり5ミリグラムの濃度に溶かした水溶液にはO157の発育を阻止する作用があることを、東京薬科大学の宮崎利夫名誉教授が指摘した。
宮崎教授によると梅の持つ「酸っぱさ」を中和すると阻止効果はなくなるといい「市販の梅干しでも1日1、2個食べれば予防効果があるのでは。ただ添加物を毎日口にするという別の問題が出てきますが」と付け加えている。
また、日本茶や紅茶などのお茶についても、昭和大学の島村忠勝教授が「1万個のO157が通常の濃さのお茶1ccによって5時間で消滅する」と発言。これはお茶の渋みの成分であるカテキンが作用しており、この結果、胃の中でO157をやっつけられるのではと期待できる。基本的には薄くても十分効果があるとされ、島村教授は「1つ注意してほしいのはその前に牛乳を飲むと、栄養分が高すぎて、カテキンの効果が及ばない。予防にお茶を使うなら、牛乳を飲むのは食後数時間たってからの方がいいのでは」とアドバイスした。
納豆についても倉敷芸術科学大の須見洋行教授は、長野県衛生公害研究所が8月に行った試験で、納豆の抽出液に、3万個あったO157を40個弱に減らす抗菌効果があったという結果を報告した。
そのほか梅肉エキスやワインに、院内感染で問題となっている黄色ブドウ球菌(MRSA)の増殖を抑制する効果があることも報告された。
またワインメーカー、メルシャン酒類技術センターの佐藤充克さんによると、ワインには胃かいようの原因菌とされるピロリ菌を殺菌する効果があり、米国の研究では100万個の菌を15分以内に殺菌したという。
さらに梅肉エキス水溶液の実験で、1cc当たり1.25ミリグラムの濃度でコレラ菌の発育を阻止することや、お茶や梅肉エキスには水虫を引き起こす白癬(せん)菌に効くことも報告された。
専門家によると悔、お茶、ワインなどは通常食べている量や濃さで十分予防効果があるといい、伝統食品を利用した先人の知恵の確かさが科学的に実証された格好だ。このセミナーの問い合わせは日本工業技術振興協会=電03(3238)5300。(中日新聞 1997/08/29)緑茶を飲んで胃がん細胞退治!?
カテキン(渋味成分)の破壊効果を実証
三重大のグループ 25日、日本癌学会で発表
緑茶の渋味成分「カテキン」が人間の胃がん細胞を破壊して死滅させることを、三重大医療技術短期大学部の樋廻(ひばさみ)博重教授(生化学)らの研究グループが明らかにした。今後、抗がん剤への応用も期待される。研究結果は、25日から国立京都国際会館(京都市左京区)で開かれる「日本癌(がん)学会」で発表される。
研究メンバーは、樋廻教授のほか、生物資源学部の小宮孝志教授(農産物利用学)と阿知和弓子博士(同)。
カテキンは、胃かいようの原因で、胃がんとの関係が指摘されるピロリ菌の除菌に有効とされ、発がんを抑制する効果があると言われてきたが、今回、胃がん細胞そのものを破壊することが分かった。
樋廻教授らは、培養した人の胃がん細胞に、緑茶から抽出したカテキンを添加したところ、細胞核のDNA(デオキシリボ核酸)がフラグメンテーション(断片化)を引き起こし、プログラム細胞死(アポトーシス)させることに成功した。実験の結果、カテキンの中でも、主成分のエピガロカテキンガレートが最も有効だった。
胃がん細胞への効き目は、せん茶とほぼ同濃度の1リットル当たり0.05グラムの抽出量で、完全に死滅できたという。
これまでカテキンについては、がんを発症させたネズミなどの動物を使って延命効果をみる実験が行われてきたが、顕著に効くというデータは得られていないという。
今回の研究は、緑茶の産地、静岡県中川根町の男性の胃がん死亡率が全国の5分の1だったことから、研究グループが緑茶の成分に着目した。三井農林食品総合研究所(静岡県藤枝市)が緑茶から抽出したカテキンを使い、昨年12月から実験を繰り返していた。
樋廻教授は「胃の中に緑茶カテキンができるだけ長い間存在するよう、緑茶をたくさん飲めば、予防になるのではないか」と話している。<アポトーシス> 細胞内の遺伝子に組み込まれたプログラムによって、細胞が自然に死ぬこと。これまでに、コンブやワカメに含まれる多糖類の「フコイダン」が、がん細胞にアポトーシスを起こすことが知られている。(中日新聞 1997/09/23)
胃がんとピロリ菌 因果関係を解明
愛知県がんセンターと信大医学部
直接には発がん作用なく 発生補助と発育促進
世界的な関心を集めているヘリコバクター・ピロリが胃がんに及ぼす影響を調べている愛知県がんセンター研究所と信州大学医学部は、ピロリ菌そのものに発がん作用はなく、がん発生の補助とがん発育促進の2つの作用を持っていることをスナネズミを使った動物実験で解明。25日、国立京都国際会館で開かれる日本癌(がん)学会で発表する。世界保健機関(WHO)の下部組織で、発がん性を評価する国際がん研究機関(IARC)が1994年、ピロリ菌は胃がんの原因の1つと認定したが、状況証拠だけで因果関係が判明しておらず、大きな注目を集めるものとみられる。
ピロリ菌と胃がんの関係を解明したのは、愛知県がんセンター研究所の立松正衛・病理学第一部長を中心としたグループと信州大医学部第一外科の杉山敦講師、川崎誠治教授、臨床検査医学教室の勝山努教授らのグループ。
立松部長と病理第一部の山本昌美技官、清水伸幸研修生らはヒトのヘリコバクター・ピロリに感染するスナネズミに発がん物質のニトロソ化合物を投与して腺(せん)胃がんを誘発する実験モデルを確立。この実験モデルを使い杉山講師らの信州大グループと共同で、ピロリ菌と胃がんとの関係を調べた。
実験は2種類。実験Iはピロリ菌に感染させたA、B群と感染させないC、D群に分け、感染1週間後から発がん物質のニトロソ化合物(MNU)水溶液を投与。40週後に解剖した。この結果、MNUの濃度が10ppmのA群では19匹中6匹、3ppmのB群では20匹中1匹に腺がんが発生。ピロリ菌に感染していないC、D群でがんの発生はなかった。
実験IIはA−D群にMNU水溶液を投与した後、11週目にA、B群にピロリ菌を感染させ、40週後に解剖した。この結果、MNUの濃度が30ppmのA群で18匹中5匹、10ppmのB群で19匹中1匹に腺がんが発生。感染していないC、D群でがんは認められなかった。
立松部長は「実験Iでピロリ菌にがん発生の補助作用、実験IIでがんの発育促進作用があることが分かった。実験中にピロリ感染が消えるのではないかと心配したが感染は実験終了まで続いた。またピロリ感染だけの群でのがん発生もなかった」という。上西紀夫・東大教授(消化器外科)の話 注目されているピロリ菌と胃がんの因果関係を初めて動物実験で具体的に明らかにしたものだ。日本人のピロリ菌感染率は高い。除菌との関係など、さらに研究を発展させてもらいたい。
<ヘリコバクター・ピロリ> 胃の出口付近の粘膜に住む細菌。強酸の胃の中には細菌はいないと考えられていたが、1983年にオーストラリアのJ・R・ワーレン、B・マーシャルが発見。胃かいよう、胃がんとの関連で世界中の研究対象になっている。(中日新聞 1997/09/25)
リンパ球強化 がん攻撃 延命や再発防止に効果
新治療法を開発 京都のパストゥール研
がん患者のリンパ球だけを取り出して免疫にかかわる生理活性物質インターフェロンを投与し、リンパ球ががん細胞を攻撃する力を強めてから体内に戻す治療法をルイ・パストゥール医学研究センター(京都市左京区)の研究グループが開発した。
副作用がほとんどなく、末期がん患者の延命や、手術を受けた患者の再発防止に好成績を挙げており、京都市で開かれている日本癌(がん)学会で26日発表する。
がんや肝炎の治療に使われるインターフェロンは、発熱やうつ状態になるなどの副作用が報告されているが、この治療法は投与量が50分の1程度で済むため、副作用がほとんどなく、在宅のまま治療できるのも特徴という。
同センターの藤田哲也所長によると、治療はまず、成分献血用の装置を使って患者の血液からリンパ球約50億個だけを点滴バッグに取り出し、他は体内に戻す。リンパ球のナチュラルキラー(NK)細胞はがん細胞を攻撃、増殖を抑える働きがあり、このNK細胞を活性化させるインターフェロンαを注入してから患者の静脈内に入れる。
これまで治療を受けた患者77人に副作用はなく、がんの進行抑制や再発予防、苦痛緩和などの効果がみられた。2カ月の余命と診断された膵臓(すいぞう)がん末期の名古屋市の男性(41)は1年2カ月以上通院し、がんの進行が抑えられた上、痛みもなく明らかな延命効果があったという。
藤田所長は「これまでと概念が違う画期的な治療法。今後、長期的なデータで効果を確認していきたい」と話している。(中日新聞 1997/09/26)『ウーロン茶』 肝臓がん抑制に効果
ダイエットに効果があるとされるウ一口ン茶が肝臓がんの元になる「前がん病変」の発生を抑える可能性がある、という動物実験のデータが27日まで京都市で開かれた日本癌(がん)学会で発表された。
ウ一口ン茶で今後、減量とがん予防の一石二鳥の効果が証明されれば、手軽な健康食品としてさらに人気を集めそうだ。
実験は石川隆俊・東京大医学部教授(病理学)とサントリー基礎研究所(大阪府島本町)の共同研究グループがラットで実施した。
強力な肝臓の発がん物質「DEN」を投与するグループと投与しないグループに分けた。さらに15匹ずつで、飲料をウーロン茶、緑茶を濃度別に各2群、水道水1群に分けた。
DEN投与から19週間後に肝臓を摘出、スライスして1平方センチ当たりの前がん病変を数えたところ、水道水群の平均4.7に対し、ウ一口ン茶群は同2.1と半分以下。胃がんを抑える効果があるとされる緑茶群では濃度でばらつきがあるが、やはり効果が見られた。(中日スポーツ 1997/09/28)ビタミンCやE、心臓病を予防か
脂肪たっぷりの食事をする前にビタミンCやEを取れば、心臓病の危険を抑えられる、という最新の研究成果を、米メリーランド大医学部の研究チームが米医師会誌に発表した。悪玉コレステロールによって血流が滞るのを、ある程度、両ビタミンがじゃまするからだという。
20人を3群に分けた。「高カロリー食」「低カロリー食」「高カロリー食+ビタミンC、E」を取ってもらった。高カロリー食の人たちは食事後の血流が遅くなった。これに対し、低カロリー食と高カロリー食+ビタミンの人たちは正常だった。
高カロリー食に含まれる悪玉コレステロールは、血液中に有害な活性酸素を増やすため、動脈硬化や心臓病を引き起こす恐れがある。ビタミンCとEは、こうした活性酸素の働きを一定程度、阻害すると、研究チームはみている。
ただ、ビタミンさえ取れば脂肪に富む食事を続けても大丈夫というわけではない。論文の中で同チームは「心臓病を防ぐには、低カロリー食と適度なビタミン摂取が大切だ」とくぎを刺している。(ロイター)(朝日新聞 1997/12/07)長寿型遺伝子見つけた 成人病予防に手掛かり
岐阜県バイオ研と名大院生グループ
世界一長寿な日本人の細胞内の遺伝子の多くに、共通の特徴があることが、岐阜県可児郡御嵩町の県バイオ国際研究所の田中雅嗣・副部長と名古屋大学大学院生らのグループの研究で分かった。17日発行の権威ある英国の医学誌「ランセット」に掲載される。
研究では、この型の人は病気になりにくく、欧米人にはほとんど例がないことも判明。遺伝子異常が病気の原因になることは分かっていたが、老化のメカニズムにまで迫るのは初めて。老化判断の検査システムを確立できる可能性もあり、注目されそうだ。
田中副部長らは、名古屋市に住む105歳の双子姉妹の、姉成田きんさんら100歳以上の日本人37人について、歯ブラシでほおの内側の粘膜を採取するなどしてミトコンドリア遺伝子を採集。DNAを構成している1万6569個の塩基を調べたところ、5178番目に特徴があることがわかった。
この塩基にはアデニン(A)型とシトシン(C)型があり、37人のうち、きんさんを含む62%がA型だった。同じA型は、愛知県内の一般献血者では45%しかなかったため研究グループは「A型は長寿タイプ」とみている。
また、名大病院の患者338人を調べたところ45歳未満はA型、C型がほぼ同数だったが、45歳以上はC型が206人でA型132人の約2倍だったため「A型は年をとっても病気になりにくい」と判断した。アルツハイマー病に絞ると、65歳以下の患者の8割以上がC型だった。「A型の方がC型より発症時期が遅い。老化の速度が違うのではないか」と推測している。
田中副部長は「成人病予防や治療法を開発する手掛かりにしたい。日本人の45%がA型というのも大きな特徴。長寿国であるのと関連している可能性がある」と話している。<ミトコンドリア遺伝子> 太古に独立して生きていた生物「ミトコンドリア」が起源のDNA(デオキシリボ核酸)。心臓や筋肉を収縮させたり、神経が情報を伝達させるのに必要なエネルギーをつくり出す。独自の遺伝情報を持ち、核遺伝子が父母の両方から伝わるのに対し、母親そっくりのDNAが遺伝するのが特徴。このため、きんさんの妹の蟹江ぎんさんも確実にA型という。(中日新聞 1998/01/17)
O157に効く 消毒・抗菌剤 岐阜の会社開発
母乳の成分に着目、合成
食品衛生関連の民間会社・総合食品衛生試験所(岐阜市南鶉、三輪則之社長)は病原性大腸菌O157や、院内感染源のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に効く新たな消毒・抗菌剤を開発したと9日、発表した。母乳に含むタンパク質の抗菌作用に着目して人工合成に成功、人体や環境に優しいのが特徴という。特許申請中で、全国初の商品化を今秋、目指す。
このタンパク質は、自然界では、ほ乳類の母乳に含まれる「ラクトフェリン」。人工合成したこのタンパク質で消毒・抗菌効果を試すと、O157などに以前から使う塩素系消毒剤と同じ程度だった。現状での価格は塩素系の約10倍だが、大量合成ができる可能性を持ち、コスト減を図る。
昨年9月から、岐阜県や岐阜市の援助を受け、愛知医科大学や豊橋技術大学などと共同研究した。今後、岐阜市内の給食センターや病院で実験を進める。厚生省食品課によると、ラクトフェリンは、食品添加物として認められていて、粉ミルクには栄養補給のため、牛乳から採取したラクトフェリンが入っている。同課は「消毒剤としての人工合は初耳」とする。抗生物質より安全
愛知医科大学の吉川和宏講師(免疫学)の話 人体内にもあり、人体や環境への影響は少ない。家畜や養殖魚の消毒にも使えば、抗生物質より安全だろう。(中日新聞 1998/03/10)
ジャガイモ食べ コレラを予防? 米・マウス実験で効果
コレラ菌の毒素の一部を遺伝子操作でジャガイモに作らせ、マウスに食べさせてみたら感染しても下痢が緩和されるという実験に、米ロマリンダ大医学部の新川武さんやウィリアム・ラングリッジさんらが成功し、米科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー3月号に発表した。ジャガイモを軟らかく煮ても、効果の半分が残るという。コレラは今も途上国などで年間500万人が感染し、20万人の死者が出るといい、簡単なワクチンへの足がかりになると期待されている。
コレラ菌が出す毒素の分子は、小腸粘膜に吸着するB鎖と呼ばれる部分と、水様性の激しい下痢を起こさせるA鎖がある。研究グループは、B鎖の遺伝子だけをジャガイモの中に組み込んだ。マウスに生で食べさせたところ、血液や腸内にコレラ毒素へ対抗する抗体を確認できた。次にこのジャガイモを、時間を置いて3グラムずつマウスに食べさせ、その後にコレラ毒素を腸に注射したところ、下痢の量は普通のジャガイモを食べたマウスの半分以下にまで減った。林英生・筑波大教授(微生物学)の話 ワクチンはどこでも手に入り、安定した品質で安い価格であることが理想で、その意味で意義がある。ただし、実際に人間に有効であるかどうかは、検討が必要だ。(朝日新聞 1998/03/12)
マイタケ がん縮小 抗がん剤の副作用弱める効果も
神戸薬科大学が研究
食用のキノコ「マイタケ」に含まれる成分が、人間のがん組織を縮小させる効果のあることが31日までに、初めて臨床試験で確認された。乳がん、肺がんの7割、肝臓がんの半分の患者の腫瘍(しゅよう)が小さくなったほか、抗がん剤の副作用を弱める働きも認められたという。研究した神戸薬科大学教授らが1日、日本薬学会で発表する。
カロリーゼロで、食物繊維やミネラルなどを豊富に含むことから「健康食品」として人気を集めているキノコ。その中でサルノコシカケ科の「マイタケ」が、がんを縮小させる働きを持っていることが、かなりはっきり確認された。
研究を進めてきたのは、神戸薬科大学の難波宏彰教授(55)のグループ。25〜65歳の男女がん患者約190人に対し、新潟産のマイタケ粉末にビタミンCをまぜた錠剤を1日計1〜3グラム、またはマイタケから抽出した多糖体液体1回2〓を、1日1〜2回の割合で、それぞれ3か月から2年にわたって投与、効果を調べた。
その結果、乳がんや肺がんの患者の7割、肝臓がんの5割の患者の腫瘍部が小さくなっていることが確認された。脳腫瘍や白血病患者には、あまり効果がみられなかったものの、がんの種類を問わず、抗がん剤による食欲不振やおう吐、下痢といった副作用を弱める働きがあることも分かった。シイタケなど36種類の食用キノコで実験したが、効果があったのはマイタケだけだったという。
難波教授らは昨年、マイタケから抽出した「MDフラクション」(多糖体ベータグルカン)を使って動物実験を行い、その結果9割近くにがん抑制力が認められ、その作用は既に医薬品となっているシイタケ抽出物などを上回っていたことを突き止めていた。
「マイタケの作用は、エキスが直接がん細胞を殺すわけでなく、人間や動物の免疫作用を活性化させて、その力を借りてがんの増殖を抑える」と難波教授は分析。動物実験段階では「事例が少なく、何とも言えない」としていた。
今回、人間に対する臨床データで効果が裏付けられ、「末期がん患者の延命効果もあるようだ」と難波教授。マイタケそのものについては、どのくらい食べれば効果があるのか明らかにされていないが、がん細胞に対する免疫を高めることは確かなようだ。<マイタケ(舞茸)> サルノコシカケ科のキノコ。秋に大木の根元などに生える。傘が重なり合ったような形で、大きさは60センチ近くになる。名称の由来は全体が舞っている姿に見えるからという説と、美味で希少のため発見すると思わず踊りだすから、という説がある。96年の国内生産額は249億円。(スポーツ報知 1998/04/01)
マウスのがん消滅 米グループ新薬で成功
血管形成阻害し、抑制
米ボストン子供病院の研究グループが、マウスを使った新薬の実験でさまざまな種類のがんを完全に消滅させるのに成功した。米国立がん研究所は4日、「動物実験の結果に勇気づけられている」と発表、新薬の効果を人間で確かめる臨床試験の準備を急いでいることを明らかにした。
新薬は、同病院のJ・フォークマン博士らが発見した血管新生阻害物質のアンジオスタチンとエンドスタチン。同グループは「動物実験で成功しても人間では失敗した薬は多い」と慎重だが、新薬の権利を取得している医薬品会社の株価が高騰するなど期待が高まっている。
フォークマン博士は、がん組織ができると、がんに栄養を供給する血管も形成される現象を発見したことで知られる。同博士はこの発見後、血管形成を阻害することで、がん組織を「兵橿攻め」にして成長を抑える研究に取り組んできた。
アンジオスタチンとエンドスタチンはタンパク質の一種で、血管の新生を阻害する効果がある。マウスを使った実験で両タンパク質とも、がん組織を縮小させる効果があることを発見、専門誌などに発表していた。
最近になって両タンパク質を同時に投与する実験を行ったところ、白血病を含むさまざまながんを完全に消滅させることに成功したという。
現時点では両タンパク質の大量製造設備がないため、臨床試験開始は来年になる見通しだ。(ワシントン=共同)(日本経済新聞 1998/05/07)床ずれ治った 漢方薬が効果 長野のグループ成功
手術でも治らぬ4人 全員が完治
手術でも治らないほどの重症の褥瘡(じょくそう=床ずれ)の治療に、江戸後期の医師華岡青洲(1760−1835)がつくった休力増進や傷に効く漢方薬「帰耆建中湯(きぎけんちゅうとう)」が成果を挙げている。長野県茅野市の公立諏訪中央病院東洋医学センターが4年前から床ずれ治療に取り入れ、他病院で治すことのできなかった4人の患者全員の完治に成功。23日に熊本市で開かれる日本東洋医学会学術総会で報告する。
報告するのは同センター長の長坂和彦医師らの研究グループ。帰耆建中湯が食欲増進のほか、潰瘍(かいよう)治療に効果があるとされていることに着目、同病院の分院に入院した重症の床ずれに悩む寝たきり患者に服用させた。
このうち5年前に脳梗塞(こうそく)で寝たきりになった80代男性は、でん部に直径4センチ、深さ8センチの床ずれが骨にまで達する重症だった。別の病院で2度の外科手術をしたが治らず、分院で1996年8月からこの薬を服用させたところ、半年で完治した。また、床ずれのため大学病院などを転院してきた60代女性も、直径7センチ、深さ5センチの傷が8カ月で治った。
帰耆建中湯の原料は漢方で多用される薬ばかりのため安価で、治療を受けた患者の自己負担額は1週間で300円ほど。西洋医学の治療薬の10分の1程度という。
研究グループば、帰耆建中湯の効果を裏付けるため、薬を服用した患者の傷口付近の体温変化をサーモグラフィーで測定。薬の服用によって、患者の褥瘡の周辺の体温が上がっていることが分かり、「帰耆建中湯が傷口の周りの血行をよくし、新陳代謝を促したり、抗菌力を高めていると考えられる」と分析している。副作用もなく安価 自然治癒力高める
寺沢捷年・富山医科薬科大和漢診療学教室教授の話 帰耆建中湯は胃腸の働きをよくし、病気になりにくい体づくりを助ける漢方薬。副作用がほとんどなく、しかも安価にできるのも特徴。高齢社会が進む中、人間の持つ自然治癒力を高めるこうした漢方薬の役割は今後ますます大きくなっていくだろう。(中日新聞 1998/05/13)
ミカンの成分に発がん抑制効果
農水省果樹試験場発表
かんきつ類から2種類の新しい発がん抑制物質を世界で初めて発見したと農水省果樹試験場が13日、発表した。うち1種類は日本の温州ミカンに多く含まれるベータ・クリプトキサンチンで、発がん抑制作用が特に強く、健康食品としてミカンの見直しにつながる成分という。発見したのは、果樹試験場カンキツ部(静岡県清水市)の矢野昌充室長と京都府立医大の西野輔翼教授、京大農学部、近畿大生物理工学部の共同研究グループ。
研究グループは、かんきつ類が発がん予防によいとの疫学データを手掛かりに、どの成分が効いているかを調べた。その結果、ミカン1個に1−2ミリグラム含まれ黄色のもとになっているベータ・クリプトキサンチンに強い発がん抑制作用があることを見つけた。
作用の程度は、同じ色素のカロチノイドの一種で、がん抑制物質として知られるベータ・カロチンより5倍も強かった。マウスの実験でも、皮膚がんを抑えることを確かめた。毎日ミカンを1、2個食べるだけで、がん予防の効果を期待できるほどだった。
研究グループは、この物質を合成する酵素の遺伝子を分離したほか、安価に大量精製する方法も開発した。この物質が多く含まれるのはミカンだけ。果樹試験場はベータ・クリプトキサンチン含有量がより高いミカンの品種改良にも乗り出した。
もう1つ新たに見つかったがん抑制物質は、ナツミカンやハッサク、グレープフルーツの果皮に含まれるオーラプテン。果肉にはほとんどないが、がんの一因となる活性酸素が体内で作られるのを防ぐ働きがあり、発がん抑制の仕組み研究に役立ちそうだ。
西野教授は「全く新しい物質で、作用の仕方も興味深い。動物実験では低い濃度で効果があった。がんを予防する食品添加剤などに有望だ」と話している。(中日新聞 1998/05/14)乳酸菌飲料はO157に効く
名古屋市立大など研究で判明
乳酸菌飲料が、病原性大腸菌「O157」に対し強い殺菌作用を持つことが、名古屋市立大薬学部(同市瑞穂区)と愛知ヨーク(愛知県小牧市)の共同グループの研究で分かり、山口県下関市で4日開かれる日本食品化学学会で発表する。
一昨年、愛知県内で食中毒を引き起こしたO157の菌株から1億個を試験管内に入れ、同社の乳酸菌飲料に浸した。
その結果、菌数は4時間後に1000分の1、7時間後には数万分の1まで減っていた。加熱して製品中の乳酸菌を死滅させたケースでも、ほぼ同じ減少傾向をたどり、乳酸菌自身ではなく、乳酸菌によってできた乳酸が殺菌作用を持つことが分かった。
また、製品に水酸化ナトリウムを混ぜて中性にした場合、O157の数はいったん増加し、その後、乳酸菌が乳酸をつくるにつれ、O157の数も減り始めたといい、酸性の環境が必要なことも示された。
名市大の池沢宏郎教授(微生物薬品学)は「人の体は複雑で、今回の結果から乳酸菌飲料を飲むことで即、体内の乳酸が大きく増えるとは断定できないが、食中毒予防などの効果はある程度は期待できるのではないか」としている。(中日新聞 1998/06/03)ピロリ菌単独で胃がん発生 大分医大確認
胃炎やかいようの原因とされるヘリコバクターピロリ薗が、ほかの発がん物質なしに、単独で胃がんを発生させることを大分医大第2内科のグループが動物実験で初めて確認し、20日、東京都内で開かれた日本胃癌(がん)学会のシンポジウムで発表した。
胃がんで亡くなる日本人は年間約5万人で、男女合わせると現在もがんの死亡で最も多い。一方、日本人の中高年の約7割がピロリ菌に感染しているといわれるだけに、今後の研究が注目される。
研究グループの本田昇司医師によると、実験はスナネズミ25匹の胃にピロリ菌を投与し、96週間にわたって観察。この間、一定期間ごとに数匹ずつ解剖して胃の組織を調べたところ、48週までは発がんは見られなかったが、72週の時点で調べた5匹中2匹に胃がんが見つかった。ピロリ菌を与えないスナネズミに、がんは発生しなかった。
シンポジウムでは、スナネズミを使った同様の実験で、27匹中10匹に胃がんが発生した武田薬品工業グループ、56匹中1匹に発生した吉富製薬グループの研究結果も報告、ピロリ菌が胃がんの原因の1つである疑いが強まった。
ピロリ薗は胃などの粘膜にすみつく細菌。この菌が出すアンモニアや毒素が粘膜を刺激して胃かいようなどの原因になると推定されている。感染者の中でも実際にがんにかかる人はごく一部で、発がんにどのように関与して分かっていない。(日本経済新聞 1998/06/21)緑茶/納豆/食酢/乳酸菌 O157に効果あり
あくまで補助的手段ですが…
病原性大腸菌O157の予防効果があるとされる食品類についての研究発表が、相次いでいる。緑茶と納豆、最近は食酢と乳酸菌製剤にも効果があるという学会報告があった。しかし、専門家らは「有効としても、それだけに頼るのは危険」と指摘。これらの予防法はあくまで補助的手段であり、加熱や消毒、手洗いなどが欠かせないという。
今月初め、東京で乳酸菌製剤によるO157の予防効果についての研究結果を発表したのは、東海大医学部の古賀泰裕教授らのグループ。
乳酸菌製剤を与えてからO157を経口感染させたマウスと、そのままO157を感染させたマウスとで、感染後の死亡率とO157が出すベロ毒素が血清中にどのくらいあるかを比較。その結果、「乳酸菌製剤を与えることによりベロ毒素が腸管から吸収されるのを阻止し、高い生存率につながった」という。
4月には名古屋大のグループが、日本農芸化学会で食酢の抗菌効果を発表した。O157を接種したハンバーグに穀物酢を加え、生焼け状態にして1日放置したところ、1グラム当たりの菌数は20個以下にとどまったという。穀物酢を加えない場合は1グラム当たり1200万個に増加した。
2年前、大阪・堺市を中心にO157の大規模な被害が発生して以来、予防法の研究が盛んだ。これまでに、お茶や納豆などが有効という研究結果が発表されている。
お茶の場合、渋みの成分のカテキンにO157を殺菌するうえ、ベロ毒素も解毒する作用があるという。納豆は、納豆菌に含まれるジピコリン酸などの働きによって増殖を抑え、死滅させるという。
梅干しや、青梅の搾り汁を煮詰めて作る梅肉エキスにも抗菌作用があるとされる。
乳酸菌製剤に関しては、厚生省のO157治療マニュアルでも「投与については国内外において有効であるとの報告が行われている」と紹介しているが、「予防効果の有無はコメントできない」(同省結核感染症課)と慎重だ。
また、これらの研究はいずれも実験にとどまり、実際に人間の腸の中で効果があるのかはまだ不明。国立感染症研究所細菌部長の渡辺治雄さんも「例えば、乳酸菌の腸への定着度合いは人によって違い、1日何度も飲む必要があるとなると実用的かどうか疑問。乳酸菌製剤を飲めば何を食べても大丈夫と、注意を怠る方が心配だ」と指摘する。
今年、O157に感染して症状が出た人は404人、昨年同期より3割以上少ない。油断せず、流行を抑え込みたいところだ。
渡辺さんによると、O157予防の基本は、(1)手や調理器具はよく洗い、生肉などがついた包丁、まな板類は熱湯消毒(2)食材は75度で1分以上加熱(3)調理前後の食品は、室温に長時間放置しない──などだ。「これらをしっかり守ったうえで、乳酸菌製剤などは補助的な予防手段と考えた方がいい」と話している。(読売新聞 1998/07/11)がん化遺伝子 抑制遺伝子を阻害
相互の関与、東大が確認
これまで独立に働くと考えられていた細胞のがん化遺伝子とがん抑制遺伝子が相互に関与していることを平井久丸・東京大学医学部助教授らが見つけた。白血病の原因遺伝子が抑制遺伝子の機能を直接損ねていた。がん化の仕組みの解明や新たな治療薬の開発に役立つとみられる。
白血病の発症の約3割では「Evi1」と呼ばれる遺伝子が原因とされ、白血病以外に卵巣がんや腎(じん)がんでも関与があるとされるが、その仕組みは分かっていなかった。
平井助教授らが試験管レベルで実験したところ、細胞の増殖を抑えるがん抑制遺伝子であるTGFβと呼ばれる因子の働きを阻害していることがわかった。TGFβは作用する際に信号伝達物質を出すが、Evi1遺伝子が作るたんぱく質がこの信号伝達物質とくっついてTGFβの機能を止めてしまうという。その結果細胞が増殖を繰り返しがんが発生する。
細胞にはがん化を促す因子とがん化を抑制する因子があり、それぞれ数多く見つかっている。従来両者は別の仕組みで独立に機能するとされていた。直接の関与が確認されたのは初めてという。
研究成果は英科学誌「ネイチャー」の最新号に掲載された。(日本経済新聞 1998/07/06)がんの新免疫療法 慈恵医大が臨床試験 来年から
細胞融合し胎内に
東京慈恵会医科大学の大野典也教授らは、免疫の力を利用した新たながん治療法の臨床試験を来年から始める。患者から免疫に関与する細胞とがん細胞を取り出し、融合させたうえで体内に戻す。この細胞がワクチンとして働き、がん細胞を攻撃する。体内から取り出した細胞を加工して元に戻す「細胞療法」は米国で臨床試験が相次いでおり、国内でも追随する動きが広がりそうだ。
新療法の基本技術は米ハーバード大学のダナ・ファーバーがん研究所で開発された。免疫が働くきっかけをつくる樹状細胞とがん細胞を患者から採取し、体外で融合させる。融合細胞を体内に戻すと、採取したのと同じ種類のがん細胞を攻撃するTリンパ球が活性化し、がんを殺す仕組み。
大野教授らがマウスを使って実験したところ、肺がん、肝がん、脳しゅようで効果があり、がん組織がほとんど消えたという。初期段階のがんには特に効果が高いとしている。
学内の倫理委員会に申請を出す準備をしており、承認を得た上で早ければ来年初めから臨床試験を始めたいとしている。がんの免疫療法はこれまでもあったが、がん細胞だけに効く選択性や効率性を高めた手法が注目を集めている。(日本経済新聞 1998/07/20)C型肝炎ウイルス抑える物質 生命研発見 進化工学を応用
工業技術院生命工学工業技術研究所は、「進化工学」とよばれる手法を用いてC型肝炎ウイルスの増殖を妨げる物質を見つけることに成功した。試験管内で生命の進化に似せた化学反応を進め、化合物の中からウイルスを退治する能力のあるものだけを選びだした。改良すれば抗ウイルス剤として利用できる可能性があるという。
進化工学というのは数多くの生体物質から与えられた条件に最も適したものを選びだす手法。研究ではリボ核酸(RNA)と呼ぶ生体物質を100兆種類以上作成、C型肝炎ウイルスのたんぱく質に結合するものだけを選抜した。同様の操作で選抜を11回繰り返し、ウイルスたんぱく質に強く結合する3種類の物質を見つけた。
これらの物質が結合すると、C型肝炎ウイルスのたんぱく質の活性は10分の1以下に抑え込まれ、ウイルスは増殖できなくなるという。同じ方法でエイズウイルスのたんぱく質の働きを抑えるRNAも見つけた。ただ、RNAは人間の体内では酵素の働きで分解されてしまうので、薬としで使うには分子構造を変えるなど工夫が必要という。(日本経済新聞 1998/07/20)生命の源はRNA!? たんぱく質の合成能力確認
東大・渡辺教授ら
生物の遺伝情報を持つリボ核酸(RNA)という有機分子がたんぱく質の合成もできることを、東京大学の渡辺公綱教授らのグループが突き止めた。生命はRNAを起源物質として誕生したとする仮説を裏付ける強力な証拠と注目されそうだ。
成果は31日発行の米科学誌「サイエンス」に掲載される。
研究グループは生物のたんばく質合成工場であるリボソームと呼ばれる小さな細胞器官に着目、大腸菌を使ってこの器官からRNAだけを抽出した。このRNAは2904個の遺伝情報を持つ分子で、アミノ酸を組み立ててたんぱく質に仕上げていく機能があることを実験で確認した。
生物の大半は遺伝情報をデオキシリボ核酸(DNA)に保管、DNAからRNAを経由してたんぱく質を作っているが、約40億年前の地球ではRNAが先に生まれ、DNAは後からできたという仮説が有力視されている。ただRNAが先か、たんぱく質が先かは議論が分かれていた。(日本経済新聞 1998/07/31)発酵豆乳が乳がん抑制 ラット実験で半減
国立がんセンター確認
発酵豆乳の中のイソフラボン化合物が、乳がんの発生を抑えることを国立がんセンター研究所の若林敬二部長らがラットの実験で確かめ、31日に仙台市で開かれた日本がん予防研究会で発表した。
大豆中のゲニステインやダイゼインなどのイソフラボン化合物には、発がんや更年期障害などの抑制作用があるとされ、大豆製品をよく食べる地域では乳がんの死亡率が低いことも知られている。
若林部長らは発がん剤で乳がんを発症するラットを使い調べた。普通のえさで21週間飼育したラットには1匹当たり2.6個の乳がんができたのに対し、えさに10%の濃度で発酵豆乳を混ぜると、1.3個に半減した。
発酵豆乳の代わりに、イソフラボン化合物を豆乳に含まれるのとほぼ同量の0.02%、その倍の0.04%混ぜた場合も、それぞれ2.2個、1.5個、抑制効果があった。しかし、発酵豆乳ほどの効果ではなく、豆乳中の別の成分も関与している可能性がある。
発酵豆乳はビフィズス菌で豆乳を発酵させたもので、ヤクルトが開発した。イソフラボン化合物は腸内細菌で分解されて小腸から吸収されるが、細菌の多くは大腸に存在するため、吸収効率が悪い。発酵豆乳中ではビフィズス菌が既に分解されているため、吸収効率が上がるらしい。(中日新聞 1998/08/01)朝鮮ニンジン がんに薬効 転移抑制
朝鮮ニンジンに多く含まれる薬効成分「サポニン」が、体内で血中に吸収されると、がんの転移を防ぐ効能があることが、富山医科薬科大和漢薬研究所の済木(さいき)育夫教授(病態生化学)と、民間研究機関「一都生命科学研究所」(東京都府中市)の長谷川秀夫研究員の共同研究でわかった。この成分でがん細胞を死滅させることも実験で裏付けられ、朝鮮ニンジンの薬効作用が解明できたとしている。
済木教授らによると、がんの転移を防ぐのは、「M1」と呼ばれるサポニンの代謝産物。朝鮮ニンジンを食べると、主要成分のサポニンは、体内で腸内細菌の分泌酵素によって「M1」に変化して吸収される。この「M1」を実験動物に投与したところ、がん細胞が体内の別の場所に転移する数が大幅に減った。
また、M1をがん細胞にかけると、増殖せず、「アポトーシス」と呼ばれる自発的な死に追い込まれることも確認された。(読売新聞 1998/08/06)プロビタミンC 血管細胞老化、遅らせる効果
広島県立大グループが発見
ビタミンCの構造の一部を変えたプロビタミンC(ビタミンC前駆体)という物質が、人の血管細胞の老化を大幅に遅らせる効果があることを、広島県立大の三羽信比古教授(遺伝子制御工学)らのグループが発見した。口から飲む老化防止剤への応用が期待されている。研究成果は7日発行の米国の学術誌「ライフサイエンス」に掲載された。
人の染色体の両端には、テロメアと呼ばれる特殊な塩基配列のDNAがあり、染色体を細胞核につなぐ「留め金」の働きをしている。細胞が分裂を繰り返すと留め金がすり減り、やがて分裂できなくなったり、がん細胞をつくるため、テロメアは細胞の老化やがん発生のかぎを握るといわれている。三羽教授は広島大医学部の桧山英三講師や化学メーカーの昭和電工(本社・東京)との共同研究で、プロビタミンCの一種のAsc2Pと呼ばれる物質を人の静脈血管の内皮細胞に投与したところ、吸収されてビタミンCに変わり、細胞内のビタミンCの濃度が大幅に高まり、テロメアがすり減る速度を平均で73%も遅くできることがわかった。
三羽教授らは、テロメアが減る原因の1つが細胞内のフリーラジカル(活性酸素)であると指摘。プロビタミンCから変化したビタミンCが、細胞内のフリーラジカルの量を47%も減らす働きをすることから、細胞の寿命を延長させる効果があるとみている。寿命延長の夢広がる
ビタミンCに詳しい大阪市立大の蔭山勝弘助教授(放射線生物学)の話 私の研究でも、ビタミンCを応用すると、がん細胞を殺傷する効果があることがわかっているが、血管細胞の寿命をプロビタミンCが延長する効果が明らかになったことは、人の寿命の延長という夢に向けて注目される。今後は臨床面への応用の準備が課題だ。(東京新聞 1998/08/11)
生薬「エゾウコギ」を解明
胃かいようの予防ラット実験で実証 発病率は半分
滋養強壮に効く生薬として古くから使われているエゾウコギの成分「リンパザイム」が、ストレス性胃かいようの予防に効果があることが11日までに、三重大医学部生化学講座の藤川隆彦、吉里秀両助手のグループと札幌市の医薬品開発会社「植物核酸開発」の共同研究で分かった。研究では神経系を介して作用するメカニズムも解明、9月3日から米国サンフランシスコで開かれる国際成長ホルモン学会で発表する。
エゾウコギはウコギ科の落葉低木で、北海道や中国東北部、ロシアに自生している。古くはアイヌ民族が強精や神経痛の薬として使ったといわれ、現在も漢方薬として利用されるほか、ロシアでは宇宙飛行士やスポーツ選手が飲用しているという。
今回の研究では、エゾウコギの葉と茎から抽出した成分「リンパザイム」500ミリグラムを2週間、経口で飲ませたラットと、生理食塩水だけを飲ませたラットを用意し、それぞれ胸までぬるま湯に浸すストレスを与えた。
その結果、食塩水のグループが100%胃かいようになったのに対し、リンパザイムを飲んでいたグループの発病率は42.6%に抑えられ、かいようもすべて小さかった。
リンパザイムを投与すると、脳と脳下垂体で成長ホルモンとプロラクチン(乳せん刺激ホルモン)などの遺伝子が活性化し、ホルモンが合成分泌された。これらのホルモンが脳細胞に作用して、胃酸を発生させる神経系を抑制し、その反対の働きをする交感神経を活発にして、胃かいようを抑えているというメカニズムも分かった。
研究成果について、同講座の中島邦夫教授は「生薬の神秘が分子生物学の技法で解明された。国際的にも注目度が高く、今後こういった研究が増えるのでは」と話している。(中日新聞 1998/08/12)老化遺伝子を特定 活性酸素が影響 東海大が動物実験
生物の老化に関与する遺伝子を東海大学医学部の石井直明助教授らが動物実験で突き止め、13日発行の英科学誌「ネイチャー」に発表した。この遺伝子が異常になると、活性酸素の影響を受けやすくなり、老化が早まった。活性酸素と老化の関係は以前から指摘されていたが、遺伝子レベルで仕組みを明らかにしたのは初めてという。老化現象の解明や早老症、筋肉が衰える筋疾患などの治療に役立つ可能性がある。
石井助教授らは代表的な実験動物である線虫を使い、遺伝子を特定した。この遺伝子は細胞が酸素を消費してエネルギーを作り出す過程で重要な役割をしており、機能が低下すると、活性酸素の量が増えたり活性酸素に対する抵抗力が落ちたりして、老化に伴う様々な症状が現れるという。
石井助教授は「活性酸素のように老化を促進する要因と抑制する仕組みのバランスで生物の寿命が決まる」と話している。<活性酸素> 他の分子と反応しやすい状態になった酸素で、老化に加え多くの病気との関連が疑われている。人間が呼吸で取り込んだ酸素のうち数%は活性酸素として体内に残るとされるが、体内にはビタミンや様々な酵素が活性酸素を分解する仕組みもある。(日本経済新聞 1998/08/13)
広島県立大・昭和電工など、ビタミンC使い細胞の寿命延長
──新薬開発に道
広島県立大学と広島大学、昭和電工の共同研究グループは血管細胞内のビタミンC濃度を高めることにより細胞の寿命を延ばすことに成功した。細胞の老化に伴い短くなる「テロメア」という特殊なDNA(デオキシリボ核酸)の短縮化をビタミンCが抑制することで細胞が長生きできるようになるとみている。心臓病などの予防・治療薬開発に役立ちそうだ。
広島県立大学の三羽信比古教授らの共同研究グループは、細胞に吸収されて細胞内でビタミンCに変わる「Asc2P」と呼ぶビタミンCの前駆体を開発。培養した人間の血管内皮細胞にこの物質を加えたところ、通常なら約1億3000万倍(分裂回数27回)に増えると死んでしまう細胞が約2兆2000億倍(同41回)まで増えることを突き止めた。
染色体の一部を構成するテロメアは細胞が分裂するたびに150塩基対ずつ短くなり、全体の長さが7000塩基対になると細胞が死ぬことが知られており、細胞の寿命を決める「時計」のような役割を果たしていると考えられている。「Asc2P」を加えると、テロメアの短縮速度は遅くなり、1回の分裂で41塩基対ずつしか短くならず、細胞の老化スピードが約7割減速することがわかった。
「Asc2P」を投与すると、細胞内のビタミンC濃度は細胞外の67−120倍に高まり、細胞内でテロメアを傷つける働きをしているフリーラジカルという化学物質の量を約53%抑制することもわかった。共同研究グループは細胞内でできたビタミンCがフリーラジカルの発生を抑えて細胞の寿命延長に貢献したとみている。
ネズミを使った動物実験でも「Asc2P」を投与すると4時間後に血液中のビタミンC濃度が約3倍に増え、通常のビタミンCを飲むより効果が2−3倍長く続くことを確認しており、「Asc2P」が「内臓の機能低下を防ぐ老化防止剤などに応用できるのではないか」と三羽教授は期待している。(日経産業新聞 1998/08/19)花粉症 寄生虫で発症率倍増 通説覆す調査結果
国際学会で報告
寄生虫の1つ、「ブタ回虫」に感染すると、感染していない場合に比べスギ花粉症の発症率が倍増することが、科学技術庁の「スギ花粉症克服に向けた総合研究」の調査で判明、千葉市で28日まで開かれた国際寄生虫学会で報告された。
従来、免疫学では寄生虫に感染するとアレルギー疾患になりにくくなるとされてきたが、その通説を覆す結果で、アレルギーが起きる仕組みをめぐる論議にも一石を投じそうだ。
調査は科技庁の科学技術振興調整費に基づき、東京慈恵医大の渡辺直煕(なおひろ)助教授(熱帯医学)、遠藤朝彦医師(耳鼻咽喉科)、宮崎医大の名和行文教授(寄生虫学)らが共同で行った。
調査対象は九州南部の養豚が盛んな地域で、住民の約4人に1人がブタ回虫の幼虫に感染していた。遠藤医師らは今年3月、住民222人を対象に、ブタ回虫感染の有無と、スギ花粉症などアレルギー疾患の発症率を調べた。
その結果、感染していた47人のうち、32%(15人)がスギ花粉症と診断されだのに対し、感染していない175人では、花粉症患者は15%(27人)にとどまった。また、感染者の53%がダニによるアレルギー性鼻炎と診断されたが、非感染者は21%。いずれのアレルギー疾患とも、ブタ回虫感染との相関関係が浮き彫りにされた。
国内の寄生虫病感染者は、公衆衛生の普及とともに激減、その一方で、花粉症などのアレルギー患者は、80年代以降に急増している。アレルギーは、花粉などの異物が体に入った時、免疫反応として作り出されるIgE(免疫グロブリンE)と呼ばれる抗体が、自分の体を攻撃して引き起こされるが、IgEはもともとは寄生虫を排除する免疫系と考えられてきた。
調査結果を発表した渡辺助教授は「ブタ回虫が人体に入ると、リンパ球が寄生虫を攻撃するIgE抗体を大量に作る。その際、アレルギーを起こす他のIgE抗休も作られ、アレルギーを悪化させるのでは」と分析している。
IgE抗体の作用に詳しい谷口克千葉大医学部教授(免疫学)は「通説とは正反対の結果で、面白いと患う。今後、免疫作用の解明が必要だ」と話している。<ブタ回虫> 成虫は全長20−30センチで、ブタの小腸に寄生する。人間には感染しないとされていたが、名和教授が2年前、世界で初めて九州南部での流行を報告した。ブタの便の虫卵が経口感染するが、人体では全長1ミリ以下の幼虫のまま死んでしまう。まれに肝障害や肺炎を起こす。人から人へは感染しない。(読売新聞 1998/08/30)
がん転移8割を抑制 化学阻害剤を開発
動物実験で成果 横浜市立教授あす発表
横浜市立大木原生物学研究所細胞生物学部門(宮崎香教授)は、同大医学部第2外科(島田紘教授)と共同研究で開発した、転移を促進する酵素の産生を遺伝子レベルで抑える化学合成転移阻害剤が、大腸がんの転移を8割近く抑制することを動物実験で突き止めた。がん転移はがん治療上大きな壁になっているだけに、今後のがん転移阻害剤実現の道を切り開くものとして期待される。この研究成果は、あす11日、名古屋市の愛知県がんセンターで開かれる名古屋癌(がん)治療国際シンポジウムで発表される。
これまでの研究で、がん転移は、がん細胞がたんぱく分解酵素(プロテアーゼ)を分泌して周辺の組織を破壊し、血管やリンパ節に入り込むことが分かっており、がん転移を防ぐには、プロテアーゼの働きを阻害することが重要となる。
宮崎教授らは、がん転移のメカニズムと転移を促進する酵素の研究に取り組んでいる中で、大腸がんが分泌するプロテアーゼの1つである酵素・マトリライシンを見つけ、マトリライシンの機能を阻害する酵素の開発に取り組み、化学合成転移阻害剤の開発に成功。化学合成転移阻害剤が、実際に生体でがん転移を阻害するかどうかを確かめるため、マウスを使って調べた。
大腸がんは高率で肝臓に転移するため、ヒトの大腸がん細胞をマウスに注入し、化学合成転移阻害剤を使った実験群と、使わなかったコントロール群に分け、30日後に転移肝臓がんの発生状況をみた。
その結果、実験群では平均12個の小さな転移がんができていたが、コントロール群では平均55個発生しており、この化学合成転移阻害剤が、8割近く大腸がんの転移を阻害していることが分かった。上田龍三・名古屋市立大医学部第2内科教授の話 「転移促進酵素の産生を遺伝子レベルで抑制してがん転移を高率に阻害することが分かったことは、近い将来、がん転移を阻止する薬剤開発の手掛かりとなるだけに、意義深い研究だ」(読売新聞 1998/09/10)
緑茶1日10杯飲めば、がん予防薬の効果アップ
緑茶の渋みの成分エピガロカテキンガレート(EGCG)にがん予防薬の効果をアップさせる力があることが埼玉県立がんセンター研究所(埼玉県伊奈町)の菅沼雅美研究員らのグループの研究で分かった。効果が期待できる量は1日10杯程度という。1日、横浜市で開かれた日本癌(がん)学会で発表された。緑茶の抗がん効果については米国では既に臨床試験が行われており、身近な食品のがん予防効果に注目が集まっている。
菅沼研究員らはEGCGががん予防薬に与える相乗効果を調べるため、試験管の中でヒトの肺がん細胞を縮小させる効果を調べた。その結果、大腸がんの予防剤の抗炎症剤スリンダックでは約14−20倍、乳がんの予防薬タモキシフェンでは約2倍に効果がアップした。EGCGががん細胞の表面に膜を作り、予防薬の吸収を促進する効果があるために薬の効き目が強化されるという。
実際に緑茶を飲んでいる人がどれくらいがんになりにくかったか、などの疫学的なデータはないものの、菅沼研究員は「これまでは健康な人への手軽ながん予防法として知られていたが、(治療後再発の恐れのある)がんのハイリスクグループへの治療の応用も期待できる」と話している。(中日スポーツ 1998/10/02)ヒ素の投与で白血病消えた
米の研究機関、中国伝統療法を追認
【ワシントン4日共同】治療困難な急性白血病の再発患者に、毒物のヒ素を投与して症状を消すのに成功したと、米スローン・ケターリング記念がんセンターが4日、米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに発表した。
もともと中国の医師らが伝統薬からヒントを得て開発した治療法で、西洋医学の検査技術で効果を確認した。
同がんセンターのレイモンド・ワレル博士らは急性前骨髄球性白血病の再発患者12人に、ヒ素投与を試みた。同白血病は出血傾向が強く、治療成績が悪い。9−75歳の12人は、薬や骨髄移植のかいもなく再発していた。
ヒ素投与は1日1回、点滴で実施。血液と骨髄の検査で症状に改善が見え始めるまで投与を続けた。
その結果、途中で亡くなった1人を除く11人から完全に症状が消えた。
詳細な検査で白血病の兆候が残っていた3人はその後再発したが、残る8人は3−6週間ごとに繰り返すヒ素投与を受けながら、最長で10カ月症状の消えた状態を保っている。
ヒ素は同白血病の原因になるがん細胞を殺す作用があり、同がんセンターは患者数を増やして本格的な臨床試験を始めた。(中日新聞 1998/11/05)糖尿病の神経障害 特定酵素が発症抑制
動物実験で100%効果 名大・中村助教授
名古屋大医学部第3内科の中村二郎助教授は、特定の酵素阻害剤が神経障害を100%抑える効果のあることを動物実験で確認し、名古屋市で開かれている「第13回日本糖尿病合併症学会」(会長・堀田饒教授)で、きょう4日発表する。神経障害は糖尿病の三大合併症の1つだけに今後、有力な治療薬として期待される。
糖尿性神経障害は、プロテインキナーゼC(PKC)という酵素が活性されることによって血管が障害を受け、血流が悪化することによって起きる。
今回の実験では、神経障害に対する効果の分かっていなかったPKC阻害剤を使い、糖尿病ラットに1日1回、5ミリグラムの薬剤を4週間経口投与した実験群と投与しない群に分け、刺激に対する神経伝達のスピードを測定した。
その結果、非投与群は神経伝達のスピードが正常の30%もダウンし、実験群では100%変化がなく正常だった。このことから、このPKC阻害剤にはPKCの働きを特異的に阻害し、神経障害の発症を抑制する効果のあることが分かった。
糖尿病は潜在患者も含めると約3000万人と言われ、いまや“国民病”になっている。手足のしびれなどの神経障害は、糖尿病の合併症の中でも最も頻度が高く、治療上大きな課題になっている。坂本信夫・中部労災病院長(糖尿病学)の話 「今回の実験結果で、糖尿病性神経障害に効果的な薬剤が見つかったことは大きな意義がある」(読売新聞 1998/12/04)
インフルエンザ感染 緑茶成分が抑制
昭和大、うがい薬などに
昭和大学医学部の島村忠勝教授らは、緑茶成分であるカテキンにインフルエンザウイルスの感染を抑える効果があることを確認した。カテキンがウイルス表面にある突起にくっついて、ウイルスが細胞に感染するのを妨げるという。ウイルスの型によらず効果があり、うがい薬などに利用できそうだという。
研究チームは培養細胞を使った実験で、通常のお茶の4分の1の薄さの液をウイルスに加えたところ、感染力はほとんどなくなった。Aソ連型、A香港型、B型などすべての種類のウイルスに効いたという。さらにマウス、ブタにカテキンを含む液を噴霧したり人間のうがい液として使用したところ感染予防の効果が認められた。
インフルエンザウイルスは細胞に感染する際、ウイルス表面にある突起で細胞表面に付着する。カテキンがこの突起に先に結合するという。
カテキンは茶の渋み成分で、赤ワインの成分として有名になったポリフェノールの一種。緑茶に多く含まれる。(日本経済新聞 1998/12/07)ウーロン茶の茶柱 アレルギー疾患に効果
エキス使い新商品 メナード化粧品発表
日本メナード化粧品(本社名古屋市)は9日、ウ一口ン茶の茶柱が花粉症などのアレルギー疾患の症状改善に効果があるとする研究結果を発表した。
同社は1991年から、茶柱の研究に着手。緑茶、紅茶、ウ一口ン茶の葉と茎のアレルギー抑制効果をラットを使って実験したところ、ウ一口ン茶の茎部分のエキスが抗アレルギー剤「ケトチフェン」と同程度の効果を持つことが分かった。
94年から約1年間、藤田保健衛生大学医学部との共同研究で、愛知県内6病院57人のアレルギー症患者に臨床試験を実施。実際の症状に改善効果が認められ、副作用がないことも確認されたという。
ウ一口ン茶が最も効果があり次いで緑茶、紅茶の順で、どのお茶も葉より茎のアレルギー抑制作用が強かったという。
同社は、ウ一口ン茶の茶柱から抽出したエキスを使ったタブレット型の健康食品を来年2月に発売する。100度の高温で1時間程度かけて茶柱から抽出したエキス入りで、120粒、3500円の予定。
新商品の問い合わせは同社フリーダイヤル=O120(164)601。(中日新聞 1998/12/10)緑茶でうがい 効果的 インフルエンザ予防
渋み成分、高い殺菌力
インフルエンザの季節がやってきた。人込みを避け、手洗いやうがい、十分な休養と栄養──が予防の基本だが、島村忠勝・昭和大教授(細菌学)は、お茶の渋み成分であるカテキンの働きに注目した予防法を提唱している。
インフルエンザウイルスは、鼻やのどなどの粘膜細胞に付着し、細胞内で増殖することで感染する。この時、ウイルスは表面にある突起(スパイク)部分で細胞とくっつくが、カテキンはスパイクに覆いかぶさり、ウイルスと細胞の結合を妨げる作用がある。
「ウイルスに対してワクチンの予防接種と同様なメカニズムで働く」と島村教授は説明する。そのうえインフルエンザウイルスの型が異なると、効果のないワクチンに対し、カテキンは型に関係なく効くという。低濃度でも即効力
カテキンは、抗酸化作用が注目され赤ワインブームを呼んだポリフェノールの一種。ウ一口ン茶や、紅茶、日本茶などにも含まれているが、特に緑茶は、カテキンの中で最強の殺菌力の「エピガロカテキンガレート(EGCg)」の割合が最も多い。
コレラ菌の専門家である島村教授がカテキンの抗菌効果に注目し出したのは88年。コレラ菌の活発な運動を数秒間で止めて固めてしまうことを発見してからだ。
家庭で飲む濃度(約2%)を4分の1に薄めたお茶をインフルエンザウイルスと5秒間混ぜた後に培養細胞上に加える実験を試みたところ、瞬時にウイルスの感染力を100%抑えた。「この効果は、実験では、ある種の抗インフルエンザ剤の100倍に相当する。低濃度で即効力があるのがカテキンの特長」(島村教授)だ。動物実験でも実証
同様にブタなどの動物実験でも、カテキンを与えたら、感染の予防効果を証明。人間に対しても、同じ職場の300人をお茶でうがいするグループと、しないグループに分け、抗体のでき方を調べたところ、お茶でうがいをしたグループの方が、インフルエンザにかかりにくいとの結果が出た。
お茶どころ静岡県の榛原町立坂部小学校では、89年から子どもたちがお茶の水筒を持参。体育の後、給食の前、掃除の後など毎日3−5回うがいをしている。
インフルエンザが大流行した今年2月の欠席率は2.9%。町内の他校の3分の1ほどだった。山本光江教頭は「お茶だけの効果かどうかは即断できないにしても、児童の健康には役立っているでしょう」と話す。
島村教授が勧めるうがいの仕方は──
(1)帰宅時やのどの調子がおかしい時などに心がける(回数は多くなくてもよい)
(2)ぬるま湯ぐらいにやけどしない程度に冷ましたもので、のどの奥までガラガラする(通常より2、3倍程度にうすめた濃さでも効果がある)
(3)出がらしは使わない。カテキンが多く溶け出している1、2杯目までのものにする
(4)うがいだけでなく、緑茶を飲む習慣を付けることで、粘膜に潤いを与え、抵抗力を強める
(5)感染してしまった後でも、緑茶うがいは、症状の悪化や周囲への感染防止効果もある。コレラ患者に投与
力テキンの効能はインフルエンザだけではない。前代未聞の集団食中毒騒ぎを起こした病原性大腸菌O(オー)157や、院内感染の原因菌で知られるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の殺菌効果も確認されている。
「抗生物質に匹敵する優れもの」として実際、発展途上国ではコレラ感染者にお茶を投与する方法が実施されている。また薬剤のような耐性ができないことから、MRSAに効かなくなった抗生物質と併用することで、薬効が復活するといった実験結果もあり、臨床への応用が期待されている。
古来、お茶は薬だったことを考えると、効能もうなずける。生活の知恵として、きょうからでも、副作用の心配もない“緑茶療法”を加えてみてはいかが。(田村 良彦)(読売新聞 1998/12/21)
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