| BACK | HOME | NEXT |


軍隊は国民を守らない

大田昌秀氏に聞く




2004年8月13日(中日新聞)

戦争体験者に聞く−大田昌秀・社民党参院議員(79)
軍隊は国民を守らない


まもなく、59回目の「終戦記念日」がやってくる。戦争の風化が指摘される中、国会でも戦後生まれの衆参両院議員が722人中447人と、61.91%を占める。戦争放棄をうたった憲法の改正に向けた動きも進んでおり、戦争の悲惨さと戦争で得た教訓は語り継がれているのだろうか。「老壮青」各世代の国会議員に聞いた。(聞き手 佐藤育男)


■終戦記念日に思うこと

──今年も「8月15日」がめぐってくるが。

「毎年、(沖縄慰霊の日を迎える)6月になると気分が悪くなって、11月まではものすごく憂鬱(ゆううつ)になるんです。というのも、自分の戦争体験がある。私は8月15日にはまだ戦場にいて、敗残兵狩りがあって生きていけるかどうか分からない状態だった。9月7日に沖縄戦が(最終的に)終結したが、私が戦場から出て捕虜になったのは10月23日でしたから」


──戦争体験者としての役割は。

「軍隊は国民の生命・財産を守るものと考えられているが、そうではない。軍隊は軍隊を守るものでしかない。女性や子ども、お年寄りは軍隊に守られる対象ではなく、現実は軍がこの人たちを壕(ごう)から追い出したり、赤ちゃんが泣いたら敵に見つかると母親に絞め殺させた。水や食べ物を奪い合い、敗残兵同士で殺し合いもした。そういう戦争の実態を見た者として、絶対に戦争はいけないと訴えることだ」


──国会も戦後生まれの議員が6割を超えた。

「小泉純一郎首相は有事法制をつくる時、『備えあれば憂いなし』と言った。戦争になれば超法規的になってしまうのに、法律をつくれば、いかにもそれが機能するような議論ばかりしている。この人たちは、戦争のことを何も知らないんだと思う。この間、石破茂防衛庁長官に『戦前はいくつの有事法制があったか』と聞いたが、知らなかった。300以上もあったんです。でも、国民の生命・財産が守れたかというと、そうではない。日本は無条件降伏したんです」


──やはり、戦争の風化は進んでいると。

「はい。(次世代に)伝わっていないし、伝えづらい。明らかに世代間ギャップがある。イラク戦争にしても、テレビでバーチャル(仮想現実)な形で表現され、ドロドロとした血が出る生身の戦争ということが受け止められない。ゲーム感覚だ。人間は体験によって初めて理解できるが、戦争は体験できないのだから追体験するしかない。ところが、テレビも書籍も状況をまともに映し出すわけでもない。若者に、まじめに戦争のことを知れといっても無理だ」


■憲法に思うこと

──「憲法9条」をどう評価する。

「私は、憲法9条は絶対に守るべき、非常に大事なものだと思っている。戦後、沖縄は復帰するまで27年間、憲法が適用されない唯一の地域だった。沖縄と本土の交流が許されなかったので、密航船で憲法のコピーがもたらされると鉛筆で書き写した。戦前の国家主義的な教育ではなく、人間としての教育をしている。こんな憲法ができたのかと感動した。この憲法は、だれが何と言っても絶対に変えるべきじゃない。この憲法があれば、まがりなりにも戦争は防げる気がする」


──野党・民主党も含めて、憲法改正の動きが急速に進んでいる。

「非常に危険な情勢だと見ています。幸いにも、民主党の若手の一部が、この問題を真剣にとらえようとグループをつくった。非常に期待している。安保条約があったから日本の繁栄があったというが、憲法があったからこそ、韓国のように朝鮮戦争やベトナム戦争に出ていかずに抑えが利いた。この枠が外されてしまうと、歯止めが利かなくなる可能性が強い」


■自衛隊に思うこと

──創設50年の自衛隊をどう見ている。

「大震災などの国家非常時でも、それなりの装備を持った人たちを訓練しておけば対応できる。自衛隊でなければやれない、ということはない。自衛隊は戦争をすることが職業。(憲法で)戦争はしないといいながら、戦争をする集団を持つというのはおかしな話だ」


──自衛隊のあるべき姿とは。

「自衛隊が海外に出て戦争をするということは、戦後日本の方針を根底から崩すことになるので賛成できない。国民の生命・財産を守るという備えは当然必要だが、海上保安庁や警察力をもっと強化するなど、武力を用いなくてもいい仕組みをつくればいい」


──「いつか来た道」といわれるが、自衛隊は昔の軍隊と違うのでは。

「甘いと思いますね。今は平気に見えても、有事になったら戒厳令なんか平気でやりますよ。戒厳令が敷かれたら、軍隊が司法、立法、行政の3権を取り上げますから、シビリアンコントロール(文民統制)なんか絶対に利かなくなる」


大田昌秀
おおた・まさひで 師範学校在学中、鉄血勤皇隊に動員され、沖縄戦を体験。早大卒後、米シラキュース大大学院に留学。琉球大教授を経て、沖縄県知事となり、沖縄戦戦没者を弔う「平和の礎(いしじ)」を設置。


line.gif

参議院会議録情報 第156回国会 外交防衛委員会

第19号 平成15年7月25日


大田昌秀君 社民党の大田でございます。

 お疲れでしょうが、最後ですのでよろしくお願いいたします。

 まず、総理にお伺いいたしますが、先ほどもお話がありましたけれども、去る二十三日の党首討論で、イラクの非戦闘地域は一体どこかとの質問に対して、総理は、そんなことが私に分かるわけがないでしょうという趣旨の答弁をなさいました。

 お忘れかもしれませんが、総理は、去る六月二十四日の衆議院本会議で、我が党の同僚議員が戦闘地域と非戦闘地域との区別について質問したのに対し、政府としては、自ら現地の状況を幅広く調査するとともに、諸外国から、諸外国等から得た情報を総合的に分析することにより、本法案に基づく活動の区域をいわゆる非戦闘地域の要件を満たすように設定することは可能であると考えているとお答えになりました。

 そこで、お伺いしたいんですが、非戦闘地域はイラクの戦況によって決まるのでなくて、政府が主体的に設定することができるとお考えですか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) これはよく調査して判断しなきゃいかぬと思っております。

 先日、私には分かるわけないと言ったのは、これは率直に言ったわけであって、私が調査するわけでありませんし、私が調査してもそれは専門家じゃないから正確にならないんでしょう。やっぱり専門家がよく判断して、状況を見極めて非戦闘地域かどうかということを事前に十分調査の上で、派遣する場合はそういう地域に派遣しなきゃならぬと思っております。

大田昌秀君 せんだっての審議の際に、総理を始め防衛庁長官、戦争を知らない世代ということを伺いましたけれども、実は私は戦争世代でございまして、戦争の実態というのは嫌というほど知っているつもりでございます。戦争の世紀と言われた二十世紀の苦い体験を踏まえ、二十一世紀こそは戦争という大量殺りくのない、平和で人権が尊重される、民主主義が普遍的価値として世界じゅうに共有される世紀にしたいと常々考えております。

 そのためには、まず、我が日本の外交はどうあるべきかについて慎重に吟味する必要があると思っております。既に多くの外交専門家や国際問題を研究している学者、研究者などから様々な提言がなされていますが、私は、差し当たって何をすべきか、私なりに二つの点について意見を申し述べたいと思います。

 まず第一に、米英などの軍隊によるイラク占領を自衛隊を派遣して支援するのをやめるべきだと思います。

 私たちは米軍の占領下で二十七年間、憲法の適用もなしに生活した苦い体験から、外国の軍隊による占領が被占領下の人々にいかに過酷な非人道的犠牲を強いるかを知り過ぎるほど知っているからであります。大規模な戦闘は終結したとはいえ、イラクでは今も散発的な戦闘が続いているのですから、そんな危険なところへ自衛隊を派遣し、万が一にも武力行使をする事態になれば、戦後半世紀以上も一人の外国人をも殺害したことのない自衛隊の誇るべき歴史に大きな汚点を残すことにもなりかねません。

 改めて申し上げるまでもなく、我が国は国是として、憲法によって交戦権を否定し、国際的な紛争を武力によって解決することはせず、平和的に解決していく道を指し示しています。ですから、あくまでもその国是を守り、貫き通すべきだと思います。

 第二に、米英軍などのイラク占領への軍事的及び財政的支援を差し控えるべきだと考えます。

 食糧や医療、教育面での我が国独自の支援は財政事情の許す限りやるべきだと思いますが、いわゆる戦費の分担金としての支出はなすべきではないと考えます。せんだって外務大臣は、その考えはないとおっしゃいました。(発言する者あり)

委員長(松村龍二君) 静粛にお願いします。良識の参議院の府でございますので、粛々と議事を進めてまいりたいと思っておりますので、特に静粛にお願いします。

 続けて御質問をお願いします。

大田昌秀君 日米安保条約を結んでいる以上、一方の当事者である米軍をあらゆる面で支援するのは当然といった考え方があることはよく知っております。

 しかし、米軍への支援について言えば、既に我が国は、一千万坪とも言われる在日米軍基地に土地を提供しているだけでなく、毎年六千数百億円もの巨額の駐留経費を乏しい国民の税金の中から支払っています。特に沖縄の場合、在日米軍専用施設の七五%を負担しているだけではなく、二十九か所の海域、海の部分ですね、水域、沖縄の空域の四〇%に相当する二十か所の空域までも提供させられているのです。ですから、安保条約に基づく支援措置は十分過ぎるほど講じていると言っても決して過言ではないと思います。

 米国は、このたびのイラク攻撃で予想以上に戦費や駐留費がかさんでいるとして、戦費のおよそ八割を同盟国が負担することを期待しているようですが、この点について、総理はどのような対応をお考えでございますか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 大田議員が知事として沖縄においていろいろ御苦労されたことはよく承知しております。そういう実際の沖縄県の行政の最高責任者としての経験から、米軍との在り方について見識を持っておられることについてもよく私は承知しております。

 そういう中での御発言だと思っておりますが、日本も今まで、戦後一度も交戦、外国と交戦したことはない、また内戦もない。そして、死者を、自衛隊におきましてもそういう戦争による死者を出したこともない。これは正に誇り得るべきことだと思っております。

 日米安保条約を結んで米軍に基地を提供すると戦争に巻き込まれるという議論もありましたけれども、現実はそうでなかったと。むしろ、米軍と安全保障条約、米国と安全保障条約を結んだことによって、今日まで日本の平和と繁栄と独立が確保されたと、我々はそう思っております。もちろん、そういう意見に対して違う意見があるのも承知しております。

 米軍と協力するからこれが戦争につながるかというと、それは時と場合によって違ってくる。イラクにおきましても、私は、米軍と協力する場合があっても、これは非戦闘地域であると、イラクの復興支援活動なんだという大きな枠がはまっておりますから、そういう点については十分配慮しながらこれからも自衛隊の活動については考えていかなきゃならないと思っております。

大田昌秀君 自衛隊法では、その第三条で、自衛隊の任務について、「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」と決めています。また、自衛隊員は、自衛隊法施則、施行規則の第三十九条、一般の服務の宣誓の規定に則して、「我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、」「国民の負託にこたえる」と宣誓した上で入隊しています。

 しかし、本イラク特措法案が成立すれば、政府は、一種の交戦規則とでも言うべきものを作って、自衛隊が武器を携帯してイラクに派遣するとすれば、そのことは自衛隊員に、憲法を始め自衛隊法及びこの宣誓を破れと言うに等しいものではないかと考えます。

 一般に、自衛隊員は命じられれば危険も顧みず国民の負託にこたえる責務があると言われるのですが、それはあくまで日本が外国から侵略されたり武力攻撃を受けたときに危険を顧みないで国民の負託にこたえるという意味であって、海外で米英軍の支援活動をするために、自衛隊員が命を顧みないで果たさねばならぬ責務というのを負っているわけでございますか。防衛庁長官。

国務大臣(石破茂君) これは委員も自衛隊法の仕組みをよく御存じの上での御質問だと思いますが、これ、仮にこの法律が成立をいたしたといたしますと、これはPKOと同じように、本来的任務、付随的任務とございますが、この付随的任務ということに相なります。これはPKOなんかと同じ系列に入るわけでございます。

 それから、自衛官の宣誓に反するではないかというお話ですが、この中にも「法令を遵守し、」というふうになっております。この法律が仮に可決、成立ということになりますと、これも日本国の国会の御審議を経て決定された法律でございますので、自衛官の宣誓に何ら反するものではございません。

大田昌秀君 せんだっても、連合審査のときに総理と防衛庁長官について、このイラク法案とのかかわりで決意をお伺いしたわけですが、総理は私の質問を誤解されたのか、ちょっと私の納得のいかない御答弁がございましたので、お許しをいただいて改めてお伺いしますけれども、このたびの法案が国会で審議されている過程で、私のところに知人や未知の多くの方々から、絶対にこの法案を通しちゃいけないと抗議の要請が随分ありました。それらの中で私が非常に胸を打たれたのは、この法律を通すなら真っ先に総理大臣と防衛庁長官、外務大臣、官房長官のお子さんたちを自衛隊の一員として真っ先にイラクに派遣すべきだという抗議の手紙が来たことでありました。

 なぜ、こういう手紙が来るかという、まあこの種の手紙は沖縄の新聞にも大分出ておりましたけれども、なぜこういう手紙が来るかというのを考えてみますと、実はこのイラク法案の審議の過程で、殺す側の論理ばかりが議論の中心になっていて、殺される側の一般住民、一般国民の問題がほとんど議論にならないという、ならなかったということが一つあるのではないかというふうに考えるわけです。

 せんだっても申し上げましたが、アメリカの良識派の上院議員ロバート・C・バイドという議員は、イラクの国の人口の過半数が十五歳以下の子供たちで占められているという事実を指摘しまして、このような国に対して軍事攻撃を行うのは何らの大義もないということを言っておられるわけです。私は、日本の政治家やお偉方からこの種の言葉が出てこないのが残念でならないというふうに思っているわけです。

 大正時代の著名な言論人の長谷川如是閑が「戦争絶滅受合法案」というエッセイを書いておりますが、その中でデンマークのフリッツ・ホルムという陸軍大将が、戦争を絶滅させること受合法案というものを起草して、これを各国に配布したことを紹介しております。

 ちなみに、その同法律の内容は、まず最初にこう述べています。戦争行為の開始後又は宣戦布告の効力を生じたる後、十時間以内に次の処置を取るべきこと。すなわち、次の各項に該当する者を最下級の兵卒として召集し、できるだけ早くこれを最前線に送り、敵の砲火の下に実戦に従わしむべし。一、国家の元首。ただし、男子で、君主たると大統領たるとを問わず。二、国家の元首の男性の親族にして十六歳に達せる者。三、総理大臣及び各国務大臣並びに次官。四、国民によって選出されたる立法府の男性の代議士。ただし、戦争に反対の投票をなしたる者はこれを除く。上記の有資格者は、戦争継続中、兵卒として召集さるべきものにして、本人の年齢、健康状態等をしんしゃくすべからず。ただし、健康状態については、召集後、軍医官の検査を受けしむべし。

 ここで大事な点は、上記の有資格者の妻、娘、姉妹等は、戦争継続中、看護婦又は使役婦として召集し、最も砲火に接近したる野戦病院に勤務せしむべしと、こういう法案の内容になっているわけです。

 そこで、一言申し上げますが、去る沖縄戦で、沖縄には十二の男子中等校と九つの女学校があって、ほとんどすべて十代の若者たちだったわけですが、これが何らの法的根拠もなしに戦場に送られて、今申し上げたように野戦病院の従軍看護婦としてとか、あるいは学生隊というのは銃を持たされて、戦争の仕方も知らないのに第一線に送られたわけです。個人的で失礼ですが、私も一学徒兵として一丁の銃と二個の手りゅう弾を持って戦場に出されました。同級生百二十五名いましたが、生き残ったのは三十名余りでしかありません。

 そういった点から考えますと、戦時中、司令官とかお偉方はごうの奥に入って一歩も外に出てこない、そして弱い立場の人々だけが第一線に送られて大変な犠牲になったわけです。

 ですから、失礼な言い方をお許しいただきますと、戦争を知らない防衛庁長官とか、そういう方は、是非戦争の実態がいかなるものかということをお考えいただいて、今回のイラク法案についてもお考えいただきたいと思います。

 ありがとうございました。終わります。


出典:国会会議録
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/156/0059/15607250059019a.html



btn_back.gif  btn_home.gif  btn_next.gif

| BACK | HOME | NEXT |