原子力発電【放射能】

[1993-1996]



45万人が放射能汚染 ウラルの軍事工場事故 ロシア閣議報告
【モスクワ28日伊藤嘉英】ロシア・ウラル地方のチェリャビンスクにある軍事用プルトニウム生産工場による過去の放射能汚染で、45万人が影響を受け、うち5万人はかなりの放射能を浴びたことが、27日明らかになった。
ロシア政府の「チェルノブイリとその他の放射能事故での住民の保護と被害地域の回復国家委員会」のボズニャク議長が同日の閣議に報告した。「ウラルの核惨事」と呼ばれた放射能汚染の被害状況を当局が公式に発表したのは初めて。
この工場は1948年に建設された「マヤック」で、軍事目的のためソ連時代には秘密にされていた。ボズニャク議長によると、49年から56年までの間に管理不手際から核廃棄物の放射能が漏れた。さらに、57年には爆発事故が起き、チェリャビンスク州のほか、クルガン州、スベルドロフスク州にも放射能汚染が広がった。
これまでの流出放射能の量は10億キュリーに達し、これは86年に起きたチェルノブイリ原発事故の実に20倍だという。(中日新聞 1993/01/28)

捨てた原子炉は17基 ロシアの高官が明かす
【ロンドン5日=尾関章】旧ソ連が北極海に原子炉を捨てていた問題で、ノルウェーのオスロで開かれていた核廃棄物海洋投棄の専門家会議最終日の5日、ロシア政府核廃棄物海洋投棄委員会の委員が記者会見で、捨てた原子炉は全部で17基であることを明らかにした。さらに、ロシア環境省高官は、ロシアがいまも原子力潜水艦や原子力砕氷船から炉の冷却水を放出していることを認めた。
原子炉投棄については、会議の中で環境省高官が、原子炉7基を北極海に捨てたと報告していたが、7基は使用済みの燃料ごとで、ほかに燃料なしに海に沈められた炉が10基あったとしている。投棄場所はノルウェー寄りのバレンツ海ではなく、それより東のカラ海だという。(朝日新聞 1993/02/06)

チェルノブイリ汚染地域 子の甲状腺障害は10倍
非汚染地と比較 信州大調査
チェルノブイリ原発事故で汚染された地域の子どもたちの甲状腺(せん)にしこりができる障害は、汚染されていない地域の子らに比べて10倍あることが、信州大医学部第2外科の菅谷(すげのや)昭講師、飯田太数授らのグループの調査でわかった。汚染地域と非汚染地域を比較することで、事故の影響がはっきりしたとしている。
事故の汚染地域では、子どもの甲状腺に、がんなどの異常が発生し、事故で放出された放射性物質の影響が大きいと考えられている。
しかし、汚染地域は内陸部にあり、甲状腺ホルモンの材料になるヨウ素を多く含む海草などの摂取量が少ない。このため、甲状腺がはれる症状をもつ住民も多く、放射性物質の影響なのかはっきりしないとの意見もあった。
菅谷さんらは、民間の日本チェルノブイリ連帯基金(本部・長野県松本市)の協力で1991年から5回、ベラルーシを訪れた。そして汚染地域のチェチェルスク市の子ども888人と、非汚染地域のボブルイスク市の子ども521人を調べた。
甲状腺がはれている子どもの割合は、非汚染地域が75.6%で、汚染地域の54.3%を上回っていた。これは、汚染地域では事故後、政府の指示でヨウ素を積極的にとるようになったためらしいことがわかった。
その中で、はれが大きい子ども約300人ずつの甲状腺を超音波で詳しく検査した。その結果、しこりがある子どもの割合は汚染地域が11.4%で、非汚染地域の1.2%の約10倍になった。血中の甲状腺ホルモンの量は、どちらの地域でも正常範囲内だった。
菅谷さんは「汚染地域の子どもたちの甲状腺は、ヨウ素が不足していたところへ、事故で放射性ヨウ素が取り込まれ、障害を受けた可能性が大きい」と指摘。「しこりががんになったり、これからしこりが生じたりする可能性もあるので、長期間、追跡調査する必要がある」という。(朝日新聞 1993/03/10)

核軍事施設の周辺 親の被ばくと子の白血病に相関の可能性
英グループ調査
軍事核施設の周辺で白血病などにかかる子どもは、核関連の職場で働く親をもっていることが多いと、英国の帝国がん研究基金のE・ローマンさんらのグループが、6日付の英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルに発表した。結論を下すにはもっと大規模の調査が必要としているが、親の被ばくと子の病気が関連する可能性を示す結果になっている。
軍事核施設が近くにあるウエストバークシャーとノースハンプシャーの両地方で、1972−89年に白血病か悪性リンパ腫(ホジキン病を除く)にかかった4歳までの子54人を調べた。
うち約9%の子は、両親か片親が核関連の職場で働いていた。−方、同じ地域でこれらの病気にかかっていない324人の子を調べたら、親が核関連の職場で働いていた割合は約4%だった。
父親の何人かについては、母親が子を身ごもる前からの外部被ばく線量が記録されていたが、線量と子の発病との関係ははっきりつかめなかった。親が放射性物質を体内に取り込んだための影響がありうるとする一方、ほかの化学物質の影響なども捨てきれないとしている。
英国では3年前、セラフィールド核燃料再処理施設で働く父親の被ばくと、子の白血病との関連を指摘する論文が出たことがある。(ロンドン=尾関章)

放射線医学総合研究所の丸山隆司・特別研究官の話 数字としては事実でも、農薬や他の化学物質などの影響も考えられ、親の被ばくと子どもの白血病などの因果関係をいうのは、まだ難しいと思う。(朝日新聞 1993/03/10)

日本海に放射性物質 ロシアが投棄認める 昨年まで
【モスクワ24日共同】ヤブロコフ・ロシア大統領環境問題担当顧問はこのほどエリツィン大統領に提出した調査報告書で、旧ソ連とロシアが1959年から92年にかけて、日本海やオホーツク海、北太平洋、北極海の一部であるバレンツ海に、原子力潜水艦や同砕氷船の老朽原子炉など放射性廃棄物を海上投棄していた事実を認めた。
環境保護団体、グリーンピースのロシア支部が24日明らかにした。
旧ソ連、ロシア海軍などによる放射性廃棄物の海上投棄は、これまでもグリーンピースなどがその事実を指摘していたが、政府当局者がこれを認めたのは初めて。
顧問が提出した報告書によると、液体の放射性廃棄物は日本海など極東地域では9カ所、バレンツ海など北極海域では5カ所で投棄された。固型の放射性廃棄物は極東地域では4カ所、北極海域では8カ所で投棄された。具体的な投棄場所には触れていないが、59年から92年までに投棄された放射性物質の総量は極東地域の場合、液体が1万2300キュリー、固型が6200キュリーと指摘している。
報告書は、昨年まで海上投棄が続いた理由として、旧ソ連、ロシアに陸上の放射性廃棄物保管、再処理施設のないことを挙げている。(中日新聞 1993/03/25)

旧ソ連の放射性廃棄物 日本近海にも大量投棄 ロシア政府報告書
原子炉2基・船38隻 86・87年中心 計10ヵ所指定し
【ロンドン1日=尾関章】旧ソ連が日本に近い極東海域で続けていた放射性廃棄物投棄の全体像が、国際環境保護団体グリーンピースの入手したロシア政府の報告書で明らかになった。それによると、日本付近では、原子炉2基を捨てたほか、膨大な量の放射性廃棄物が捨てられた。しかも、投棄は、最近の80年代後半になって最も盛んになっていた。
報告書は、ロシア政府の放射性物質海洋投棄問題委員会(委員長=A・ヤブロコフ大統領顧問(環境保健問題担当)が今年2月に大統額に報告した。旧ソ連時代の1959−91年に、北極海や極東海域などで日常化された海洋投棄の実態を調査、分析している。
報告書によると、日本海を含む極東海域には、水深1,100−3,700メートルの計10カ所の投棄海域が指定され、放射能にして合計で約685兆ベクレルもの大量の放射性物質が捨てられた、と見積もられている。
原子炉2基は1978年に、日本海の第10海域に捨てられた。その量は、31立方メートル、放射能で1兆7000億ベクレルだった。
極東海域の投棄内訳は、原子炉の冷却水など液体廃棄物が最も多くて約456兆ベクレル、低、中レベルの固体廃棄物が225兆ベクレルとなっている。原子炉内で強い放射能を帯びた機器類も含まれていた。
液体廃棄物は66年以来、極東海域の主に5つの指定海域で投棄された。この中で最も量が多いのは、カムチャツカ半島南東岸の近海にある第7海域。ただし、放射能の総量では、日本海にある第9海域が最も多い。放射能量でみると、液体廃棄物の投棄は86、87年が最大になっている。
低、中レベルの固体廃棄物の定期的な投棄は86年から、4つの海域で始まり、体積では日本海の第9海域が、放射能の量ではカムチャツカ半島南東岸近海の第8海域が、それぞれ最も多い。これらは、放射性物質入り容器にして6868個、廃棄物を積載して沈めた船が38隻などとなっている。
今回の報告書では、北極海など旧ソ連近海すべての総投棄量は、専門家の分析などをもとに、約9京2000兆ベクレルにも及ぷ、と見積もっている。
投棄された原子炉は全部で18基、うち16基は北極海のカラ海とバレンツ海に捨てられ、その中の6基は燃やした核燃料を含んだままだった。

魚への汚染心配はない

旧ソ連の日本近海への放射性廃棄物投棄について、水産庁沿岸課は「投棄した正確な緯度・経度が分からないと、はっきりいえない」と前置きし、「カムチャツカ半島沖ではマダラ漁、サハリン沖ではカレイやカニ漁、ウラジオストク沖ではエビ類やイカ、スケトウダラ漁を、やっている可能性がある」としている。
しかし、原子炉は燃料が抜き取られているうえ、水深も深いため、取れた魚が放射能で汚染されている心配はないとみられる。(朝日新聞 1993/04/02)

放射性廃棄物 海洋投棄、現在も ロシア政府、公式に認める
【モスクワ2日=徳永晴美】ロシア政府の放射性廃棄物海洋投棄問題委員会メンバーのメ二シコフ・ロシア最高会議環境委員会副委員長らは2日モスクワで記者会見し、旧ソ連が北極海や日本に近い極東海域などで放射性物質を大豊に投棄していた事実を公式に認めた。また、「海軍の極東での液体放射性廃棄物の海洋投棄は、地上の保管基地が満杯のため、残念ながら続けざるをえない」と、現在も投棄が続いていることを認めた。
同副委員長らは、その上で「薄めて、法定限度以下のものを投棄しており、今後の投棄に関しても政府に許可を得るつもりだ」との意向を明らかにした。
また、この日の会見で、ロシアが昨年も数キュリー(1キュリーは370億ベクレル)の固体放射性廃棄物を極東水域で投棄したことを認め、「つい最近固体廃棄物の投棄は停止した」ことも明らかにした。
旧ソ連当局は1985年と89年に、「放射性廃棄物の海沖投棄は行っておらず、今後も行わない」と公式に表明していたが、同副委員長らは「それは事実にそぐわないものだった」と認めた。また、今回の情報公開は国際環境保護団体グリーンピースとの緊密な協力のもとで行われたと強調した。
配布された資料は、原子力潜水艦などの12の原子炉(核燃料抜き)を投棄したことも指摘している。このうち2つは日本海に、1つはカムチャツカ半島の海域にあるという。
このほかにも、北極海には核燃料を搭載したまま事故で原潜が7隻沈没しており、定期的な厳しい監視と放射能測定のための国際協力が必要としている。(朝日新聞 1993/04/03)

放射性廃棄物 海洋投棄を続行 ロシアが白書で方針発表
【モスクワ8日共同】ロシア大統領府は8日、原子力潜水艦などの老朽原子炉や放射性廃棄物の海洋投棄を今後も続ける方針であるとの白書を発表した。
白書は、日本海やカムチャツカ沖の太平洋に長年、放射性廃棄物を捨ててきた太平洋艦隊(司令部・ウラジオストク)が、廃棄物の貯蔵、処理施設の建設が遅れているため、当面、海洋投棄を続けざるを得ない状況だと指摘している。
特に原子炉の冷却水など液体廃棄物についてはロシア海軍は、1997年に予定されている陸上での処理施設の稼働までは海洋投棄を完全にやめる用意はないとしている。
太平洋艦隊については、3隻の原子力潜水艦で事故を起こした原子炉が核燃料を積んだまま保存されており、将来、海洋投棄せざるを得なくなるだろうと述べている。
白書は、投棄場所の選定は急を要する問題で、今年夏までに国際的な協力を得て決めるべきだと提言した。
白書はエリツィン大統領の命令で、放射性廃棄物海洋投棄問題政府委員会(委員長・ヤブロコフ大統領顧問)がまとめた。白書によると、液体廃棄物ののか、固形廃棄物の投棄場所はカムチャツカ沖の太平洋、ウラジオストク沖の日本海となっている。原子炉2基も廃棄物に含まれているが、固形廃棄物の投棄場所の放射能調査はこの25年間、行われたことがなかったという。(朝日新聞 1993/04/03)

ロシア・トムスク7核燃施設の爆発事故
六ケ所村工場は安全か 硝酸で溶かす再処理方式同じ
ロシア・西シベリアの閉鎖都市トムスク7にある核燃料再処理施設で6日に起きた爆発事故は、詳しい原因がわかっていない。この施設は、茨城県東海村の施設や青森県六ケ所村で近く着工する再処理工場と同じ再処理方式になっているようだ。このため、日本でも同じような事故が起こるのではないか、との不安も出ている。これに対して、六ケ所工場を建設する日本原燃(本社・青森市)は、「事故防止の対策は万全」と、安全性に自信を示している。
この再処理方式は、「ピューレックス法と呼ばれ、硝酸で燃料体を溶かし、ウランとプルトニウムを分離する。米国エネルギー啓発協議会(USCEA)の情報によると、爆発は再処理後の廃液のタンクではなく、再処理工程の1つのタンクで起きた。核分裂生成物、ウラン、プルトニウムがそれぞれ分離された後で、「ウラン溶液を入れたタンクが化学的な爆発を起こした」という。
六ケ所工場では、使用済み燃料を細かく切断し硝酸に溶かした後、有機溶媒を加え、ウランとプルトニウムをその中に溶かすことで核分裂生成物から分離する。その後、高濃度の硝酸を使ってウランとプルトニウム混合溶液からウランだけを抽出する。次に、ウランとプルトニウムは、それぞれの精製工程に入る。
硝酸溶液になったウランから、少量残っている核分裂生成物やプルトニウムを取り除く精製工程では、容積を少なくするために、途中で何度か硝酸の一部を蒸発させる。
その際、有機溶媒がある程度以上に残っていて、温度が上がりすぎると、溶媒などが化学反応を起こし、爆発事故につながる。1953年に米国のサバンナ・リバー再処理工場で起きた事故の原因が、それにあたる。
そこで、この事故の教訓から六ケ所工場では、濃縮する前に残存有機溶媒を洗浄器で取り除くことにしていると、日本原燃ではいっている。さらに分解反応が起こるまで温度が上がるのを防ぐため、過熱しそうになると、自動的に熱供給を断つ装置をつける予定という。
爆発の危険性は、精製工程に入る前にもある。溶液が放射線によって分解して水素が発生するからだ。この水素を爆発しない範囲の濃度に保つため、付属施設内から空気を容器内に常時送り込むようにすると、日本原燃は説明している。
もし爆発や火災が生じた場合でも、各工程のタンク類は小さなセル(小部屋)に収められるうえ、工場内の空気の圧力を外気より低く保つようにするので、放射性物質が建物から外に出ることはない、という。
日本原燃再処理本部の築地道夫・技術総括部長(53)は、「ロシアの施設が軍事用なのに対して安全審査の基準も厳しく、同じような事故が起きるとは考えられない」という。こんどの事故が、六ケ所工場の設計などに影響を与える可能性は少ないとの見方だ。だが、「事故の詳細が明らかになれば、運転・管理の面で参考にすべき点は出てくるだろう」と話している。

高い燃焼度に懸念の声

青森県六ケ所村で、1991年10月に開かれた公開ヒアリングで意見陳述した元日本原子力研究所研究員の市川富士夫さん(63)は、六ケ所工場で扱う燃料の燃焼度が、東海再処理施設や仏ラアーグ工場の最新施設UP3よりも高いことを挙げ、「実績の乏しい実験工場だ」と批判する。
燃焼度は、燃料を燃やした程度を示し、長時間燃やした燃料ほど、燃焼度は高い。燃焼度が上がると、燃料内部の放射性物質の量が増え、不溶解物質や放射線量の増加、溶媒の劣化を招くほか、プルトニウムの量も増え、臨界制御の難しさが増す、という。
このほか、放射性物質のトリチウムとクリプトン85を除去せずに外部に放出することも「技術が完成していないあかし」と主張している。(朝日新聞 1993/04/14)

ベラルーシの子供 甲状腺がん24倍に チェルノブイリ事故 WHO発表
【ジュネーブ23日=ロイター】世界保健機関(WHO)は23日、7年前のチェルノブイリ原発事故が原因で、旧ソ連のベラルーシ共和国の子供の甲状腺(せん)がんが24倍に増えた、と発表した。
WHOによると、同共和国では事故があった1986年以後、168例の子供に甲状腺がんが見つかった。事故以前の7年間に発見された甲状腺がんは7例だった。(朝日新聞 1993/04/24)

原発白血病死を労災認定
東電福島元作業員 基準被曝量超す
福島県の原子力発電所で働いていた元作業員が慢性骨髄性白血病で死亡したのは、作業中に放射線を被曝(ひばく)したためだとして、労働省が労働災害と認める初の判断をしていたことが4日、明らかになった。一方、6日には静岡県で、約8年10カ月にわたって原発労働に従事、やはり慢性骨髄性白血病で死亡した孫請け会社作業員の遺族が、労災申請する。ともに、年間の被曝量は原子炉等規制法の限度以下だったが、労働省が労災認定基準としている集積被曝線量を上回っており、原発労働の安全性をめぐる論議が再び活発化しそうだ。
労働省によると、労災認定されたのは東京電力福島第1原子力発電所で働いていた男性。1979年11月から80年9月にかけて、配管などの定期検査の仕事をしていたが、退職後の82年12月に慢性骨髄性白血病と診断され、88年2月に31歳で死亡した。遺族は同年9月、地元の富岡労働基準監督署に労災を申請した。
同省によると、この男性は1年に満たない約11カ月の作業期間中に4レムの放射線を被曝していた。この量は、原子力発電所の労働環境について原子炉等規制法が定めた被曝限度である「年間50ミリシーベルト(5レム)」には達していなかった。
労働省は76年に、白血病にかかったレントゲン技師など放射線業務従事者の労災認定の基準として「相当量の被曝を受けたこと」など3つの要件を労働基準局長通達として出している。具体的には0.5レム×従事年数が「相当量の被曝」にあたるとして、認定の目安にしている。
この基準を申請のあった福島第1原発の労働者が満たしているかどうかについて、労働省で専門家らからも意見を聞いて検討した結果、申請から約3年後の91年12月26日、富岡労基暑が労災認定した。
一方、新たに磐田労基署に申請を出すのは静岡県小笠郡浜岡町、嶋橋正秀さん(63)、美智子さん(56)夫婦。長男の伸之さんは、中部電力浜岡原子力発電所で原子炉格納容器内に設置された計測機器の交換や定期点検作業などの仕事をしていたが、89年11月に慢性骨髄性白血病と診断され、91年10月に29歳で死亡した。(朝日新聞 1993/05/05)

原発労働に改めて問い 白血病で死亡 作業員「労災」
ベールの一端露呈
分厚い「企業秘密」のベールに覆われてきた原発労働。その一端が、ようやぺ垣間見えてきた。福島第1原発での労災死認定に続いて、浜岡原発で長期間働いた末に29歳で白血病死した若者の両親が、新たな労災申請へ。2人の死は、原発労働の「安全性」を、改めて問いかけているようだ。

同じ境遇、他にも 長男亡くした嶋橋さん夫妻

「なぜ息子が死んだのか、事実をはっきりさせてほしい」──中部電力浜岡原子力発電所の煙突が窓越しに見える自宅の座敷で、長男の伸之さんを慢性骨髄性白血病で亡くした嶋橋美智子さん(56)は、涙を浮かべた。夫の正秀さん(63)は、息子と同じ病気で亡くなった福島の原発労働者の労災認定の知らせを聞き、「申請を出す人は氷山の一角で、ほかにも同じ境遇の人がいるのではないか」と語った。
91年秋、伸之さんの葬儀が終わったあと、会社側が「労災に見合う分以上の弔慰金を払う」と、覚書の文書を持ってきた。「労災の申請をすれば時間がかかるし、一時金の方が得」と説明されたという。両親はその年の12月、孫請け会社と覚書を交わし、弔慰金として計3000万円を受け取った。
伸之さんの被曝(ひばく)データを記録した手帳などが返還されたのは、死亡後半年もたった92年春。再三の催促の末だった。社内での健康診断記録には、通常の2倍近い白血球の数を示す記録もあるのに、その横に「異常なし」のゴム印が押されていた。
いま、伸之さんの死を「労災」と信じる美智子さんはいう。「お金の問題ではありません。なぜ伸之が死んだのかをはっきりさせて、あの子の死を無駄にさせたくないからです」

「おかしいのは労災基準の方」 中部電力

浜岡原発の事業者である中部電力(本社・名古屋)は「原子力発電所では、法律に定められた線量を下回る環境下で働いてもらっている。労災認定の基準の方がおかしい」(広報室)と話している。(朝日新聞 1993/05/05)

オホーツク海に原子炉投棄か 87年に旧ソ連海軍
【モスクワ26日AP】26日付のロシア紙イズベスチヤによると、旧ソ連海軍のヘリコプターが1987年8月、放射性物質ストロンチウム90を6キロ内蔵した原子炉1基をオホーツク海に投棄していた。
この原子炉は灯台の発電機用で重さ2.5トン。その後、ソ連当局は極秘に数カ月にわたって捜索したが、発見できなかったという。原子炉の外壁が腐食した場合、100万キュリー(1キュリーは370億ベクレル)の放射性物質が海中に拡散し、これまでに旧ソ連海軍が海洋投棄したとされる放射性物質の総量の3分の1に当たるとしている。(中日新聞 1993/05/28)

放射線被ばく180人労災申請へ 元原発作業員ら
原子力発電所で働き、白血病になったのは作業中に放射線に被ばくしたためだ、として全国の元作業員ら約180人が年内にも集団で労災認定を申請する。原発作業による被ばくでは、福島県の原発で働いていて白血病で死亡した作業員に労災認定が認められたほか、兵庫県の労働基準監督署などに個別の申請が出ているが、集団申請の動きは初めて。
集団申請を取りまとめているのは「原発被曝(ひばく)労働者救済センター」(神奈川県平塚市)の平井憲夫代表世話人。
同センターによると、全国各地の2000人近い人からこれまでに相談を受けた。このうち、医師が白血病と診断したり、甲状せんの異状や白血球の減少などの症状があると認定したりした約180人が労災認定を申請する。
ほとんどが下請けの作業員で、福井、福島、静岡県、などの原発を回り、原発の定期検査で原子炉格納容器内などの機器の点検、補修にあたっていた。
多い人で年間20シーベルトの放射線を被ばくしており、原発の労働環境について原子炉等規制法が定めた被ばく限度である「年間50ミリシーベルト」には達していない。平井さん自身も申請を予定している。(朝日新聞 1993/06/05)

日本の意見広告 英論争に“火”
英の再処理施設 運転開始問題 反対・推進両派、有力紙に
日本の原子力発電所から出る使用済み燃料も扱う英国の新しい再処理施設「ソープ」の運転開始をめぐって、日本の原発推進、反対両派の対立が英国内の論争に大きな影響を及ぼしている。各国のプルトニウム離れが進む新しい状況の中で、英政府は運転許可を先送りし、ソープの「経済性」について、もう一度、議論をやり直すことにした。ソープの行方は、プルトニウムの積極的な利用を目指す日本の原子力政策をも左右しかねない情勢だ。(ロンドン・尾関 章/東京科学部・渥美好司)

「日本が必要ないといっても、ソープを動かすの?」──。6月、英有力紙「インディペンデント」に「プルトニウムを憂慮する日本市民」名の全面広告が載った。
ソープは、英国核燃料公社(BNFL)がイングランド北西部のセラフィールドに建てた施設で、使用済み燃料からプルトニウムを取り出す。今年初めには稼働するはずだったが、政府の許可がまだ下りていない。
意見広告は、日本の高速増殖炉計画の遅れや、核拡散、汚染事故を心配する内外からの批判によって日本のプルトニウム需要は低下する、と指摘。海外に委託する再処理量もずっと少なくなり、ソープの経営は苦しくなる、と主張した。

●大きな反響

広告を出した「日本市民」の事務局である原子力資料情報室(東京、高木仁三郎代表)の鮎川ゆりかさんによると、英国市民からの反響は約170通。意見広告に付けたカードに署名して郵送してくれたのだ。
「広告代は200万円を超え、カンパでは足りなかったが、予想以上の反響でした」と鮎川さん。
日本の電力会社の反応は素早かった。反対意見が掲載された翌週、「はっきりさせよう。日本の電力10社はソープを求めている」という全面広告を「タイムズ」など4紙に出した。プルトニウムを高速増殖炉の燃料や、軽水炉の混合燃料として使う方針を強調し、ソープ操業を「一刻も早く進めるよう英政府に求める」と結んだ。
この反論の文案を練った海外再処理契約委員会の松永長男事務局長は、「(国際環境保護団体のグリーンピースがソープの安全審査に不備があると、英政府に圧力をかけている。日本からも英国世論を惑わすような意見広告を出されては、黙っているわけにはいかない」と言う。
この広告は、下院の論戦に、すぐ持ち込まれた。野党の自由民主党がソープに対する国外の強い反対論にふれて、公聴会を求める動議を出した。政府側は、対抗して早期操業を訴える修正案を提出、その中で「日本の電力10社の強い支持」に言及した。

●日本に期待

英政府が日本に期待を寄せるのには理由がある。ソープがすでに得た受注は、約90億ポンド(約1兆4000億円)。半分以上が国外で、その最大の顧客がドイツと日本。現地に届いた使用済み燃料約7000トンのうち約2000トンは日本からだ。
ところが、ドイツは「使用済み燃料はすべて再処理」という従来の方針を見直しつつある。この6月には、欧州の海洋汚染防止を目指すパリ委員会がソープの放射能排出削減を求める決議をした際、賛成に回った。いまや頼れる得意先は日本だけなのだ。
もっとも、英政府の姿勢もこのところ微妙だ。早期操業を訴える一方で、ガマー環境相は、昨年11月から今年1月まで行った公開協議を結論を出す前に「もう一回、実施する」と表明した。早ければ今月末から8−10週間、近隣自治体など約20団体と協議する。

●痛いところ

今仰の公開協議の焦点について、BNFLのJ・ギネス会長は、ずばり「ソープの経済性だ」と言う。
「日本市民」は、これまで米国など4カ国の新聞にも日本のプルトニウム利用の危険性を訴える意見広告を掲載してきた。しかし、電力会社かち反論広告が出たのは、初めて。「危険性だけでなく、ソープの経営の困難さなど、痛いところを突いたからでしょう」と鮎川さんは指摘する。
安全性や環境以前の「経済性」が、ソープ存廃の決め手になることは間違いない。
「ソープの運転開始が半年ほど遅れても、ブランスでの再処理スケジュールをやりくりすれば、それほど影響は出ない」と日本の電力会社はいう。しかし、万一、運転中止に追い込まれれば、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の運転や、従来の軽水炉でプルトニウムを燃やす計画に支障が出るのは必至だ。
原子力政策を推進する科学技術庁も、意見広告を読んだ人からの質問に答える用意をするなど、神経をとがらせている。(朝日新聞 1993/07/26)

米ワシントン州・ハンフォード核研究施設
冷戦のツケ 放射能漏れ続く 汚染処理には30年
米国の核兵器製造の拠点の1つだったワシントン州のハンフォード核研究施設が、漏れ出した高濃度の放射性廃棄物による環境汚染を引き起こし、改めて注目されている。全米で最悪といわれる汚染土壌などの処理には30年間もかかる見込みで、地元には健康への影響を懸念する声と雇用確保への期待が交錯している。(米ワシントン州リッチランドで、田村雄司)

太平洋岸のシアトルから南西へ300キロ余り。砂漠といった方がいいほど乾き切った荒野の中に、ハンフォード核研究施設がある。太平洋戦争中、核爆弾を開発するマンハッタン計画によって開設され、長崎に投下された原爆のプルトニウムもここで作られた。軍事用原子炉は、1980年代半ばに運転を止め、冷戦のツケともいえる大量の核廃棄物が残された。
広さ1400平方キロの敷地のほぼ中心に23万キロリットルを超える高濃度の放射性廃液や汚染水をためた鋼鉄製の地下タンクが177基ある。そのうち68基に穴があき、土壌を汚染しているのが確認された。
施設から25キロほど離れた所に住むジュリーさん(47)は「20年ほど前、汚染された牛乳で家族の多くが甲状せんの異常に苦しんだ」と不安を隠さない。
その中で政府とエネルギー関連企業による汚染処理事業が89年から始まった。廃液はガラスで、汚染土壌や低濃度の廃棄物はコンクリートで固化する方法だが、全部を処理するには30年の歳月と6兆円近い巨費が必要な見通しだ。
しかも、この汚染処理は第1段階に過ぎず、最終処分先がまだ決まっていないのだ。
全国的な環境団体からの反発に対し、地元リッチランドの住民の大勢は「これであと数十年は仕事が残ることになった」(ヨーク商工会議所会頭)として、雇用確保の立場から処理に時間をかけることはいとわない。住民生活は、核によって支えられてきただけに、町の北側に広がる“核の墓場”がもたらす汚染には目を向けたくないのかもしれない。(中日新聞 1993/08/05)

「父の被ばくが病の原因」否定 核施設作業員の子の訴え却下 英法廷
【ストックホルム8日=尾関章】英国セラフィールドの核燃料再処理施設周辺で、同施設作業員だった父を持つ子らが白血病などにかかったのは父の被ばくが原因、として家族らが英国核燃料公社を相手に起こした損害賠償訴訟で、英国高等法院は8日、訴えを却下する判決を言い渡した。
訴えていたのは、作業員(故人)の妻で、60年代初めに生後10カ月の娘を白血病で失った73歳の女性と、別の作業員の娘で子ども時代にリンパ腫にかかり、治療後も障害が残る27歳の女性。放射能が作業員の遺伝子を損ない、それが精子を通じて子どもに影響が及んだのかどうかが問われた。判決は「訴えの根拠とされた研究は、他の研究によって(広く)支持されていない」などの理由を挙げた。(朝日新聞 1993/10/09)

ロシア海軍の専用船 日本海に核廃棄物投棄
環境団体が放射能測定 通常の10−70倍
国際環境保護団体グリーンピースによると、ロシア海軍の放射性廃棄物の海洋投棄専用船「TNT−27」が17日午前8時ごろから、ウラジオストクの南東約200キロ、北海道・奥尻島の西方約450キロ沖の日本海で、液体放射性廃棄物の投棄を始め、夕方までに終えた模様だ。外務省は16日、モスクワの日本大使館を通じてロシア政府に事実関係を照会しているが、17日夜までに回答はない。しかし、インタファクス通信によると、ロシア環境天然資源省のアミルハノフ次官は、今回の投棄を認めるとともに、国際機関や関係国には事前に通告したとしている。
日本政府としては、海洋投棄規制条約(ロンドン条約)に違反する放射性廃棄物の投棄が確認されれば、直ちに中止を申し入れる方針だ。
「TNT−27」を監視している調査船「グリーンピース号」からグリーンピース・ジャパンに入った連絡によると、16日朝、パブロフスクの原潜基地を出港した「TNT−27」と、放射能をモニターする調査船「ペガス」は、同夜遅く、「第9海域」と呼ばれる投棄点に到着した。
17日朝、「グリーンピース号」から小型エンジン付きボートを下ろし、5人の乗組員が放射線防護服を着て「TNT−27」から15メートルの距離まで接近した。検知器で大気中の放射能を測定したところ、自然界のバックグラウンドの約10倍から70倍の放射能を検出したという。
液体放射性廃棄物は同船から海水面下につながっているパイプを通じて直接、投棄されている模様だという。液体廃棄物は、解体された原潜で使われていた冷却水など、約900トンとみられている。
午後6時には投棄点を離れ、パブロフスクの基地に向かって戻りつつあるようだという。しかし、グリーンピースは、投棄作業が終わったわけではなく、約900トンの液体廃棄物をもう一度、積み込むために帰港しているとみている。
甲板上には、6、7個の大きさの違う金属製コンテナが並んでおり、その中には固体放射性廃棄物が入っているとみられるという。(朝日新聞 1993/10/18)

「投棄は無許可」ロシアで指摘 新聞に監視委議長
【モスクワ20日=森信二】ロシアの核・放射線安全監視委員会のビシュネフスキー議長は20日付の政府系紙「ロシア新聞」のインタビューで、海軍が行った今回の放射性廃棄物の海洋投棄は「わが委員会に何の通告もなく、また許可も受けていない」と述べ、投棄が不法であるとの判断を示した。
同議長によると、放射性廃棄物の投棄にあたっては、同委員会の許可証と安全性強化や再利用施設などのための許可料を支払わねばならないが、その手続きが取られていなかった。また、国際法に照らしても、今回の投棄に合法性は「ない」としている。
第2回投棄が予定された20日に、政府系紙がこうしたインタビューを掲載したのは、政府部内に海軍と環境天然資源省による今回の投棄に対する批判があることを反映しているようだ。(朝日新聞 1993/10/21)

子の甲状腺がん激増 チェルノブイリの周辺 WHO確認
【ロンドン29日=尾関章】1986年にチェルノブイリ原発事故があったウクライナや隣国のベラルーシで、この5年ほどの間に子どもたちの甲状腺(せん)がんが急増、事故の影響が表れていることを世界保健機関(WHO)が29日、明らかにした。ベラルーシでは、従来の約50倍の頻度に達している。国際原子力機関(IAEA)は同事故について「住民の健康への影響は見いだせない」とする報告を91年にまとめていた。
WHOによると、ベラルーシでは、子どもの甲状腺がんの年間発生数は多くて3人程度と推定されてきたが、ここ1、2年は、88年以前の平均水準に比べて約50倍に増え、89年からこれまでの発生数は225人に達している。(朝日新聞 1993/10/30)

動燃再処理工場のタンク穴あき事故? 市民団体が調査要求
茨城県・東海村の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)東海事業所の再処理工場で92年度に、高レベルの放射性液が通過するタンクに穴があく事故があった疑いがあるとして、プルトニウム利用政策に反対する市民団体「反原子力茨城共同行動」(代表・丹野清秋茨城大教授)は26日、同県に対し調査を求める申し入れ書を提出、県の依頼を受け同事業所は調査を始めた。
同グループは、動燃内部の情報を専門家に検証してもらい、信ぴょう性が高いと判断、調査を求めたとしている。
申し入れ書によると、穴があいたのは、使用済み燃料の溶解液をろ過するろ過器の前工程にあるタンクの溶接部分。このため動燃は20億円相当の費用をかけ、再処理工場の運転停止期間中に補修したという。
溶解液は放射能のレベルが高く、事故があったとすれば自治体への報告義務を定めた安全協定に連反する、としている。
同県原子力安全対策課の大森国雄総括補佐は「トラブルなどはなかったように記憶している。動燃側の調査を待ちたい」と言っている。一方、動燃東海事業所の小林純一広報係長は「昨年2月から今年9月まで工場を計画停止し点検したが、異常は見当たらなかった」としている。

科学技術庁の道正久春核燃料規制課長の話 申し入れは、パルスフィルターという、ろ過器に溶解液を送り込む給液槽を指していると思われる。事故があったのか動燃に調べさせている。大事故があれば、原子炉等規制法に基づいて報告が入る事になっているが、現段階では動燃から事故報告を受けたことはない。(中日新聞 1993/11/27)

英の再処理施設ソープ運転許可 核廃棄物処理 見切り稼働へ
「世界のごみ捨て場になる」住民らに強い不安
原発の使用済み燃料から、再利用できるプルトニウムやウランを取り出す英国核燃料公社(BNFL)の新しい再処理施設ソープは今月中旬、英政府が運転開始を許可したことで、稼働に向けて秒読みに入った。これがいったん動き出すと、再生燃料のプルトニウムとは別に、大量の放射性廃棄物が吐き出される。施設そのものも将来、解体されると巨大な廃棄物になる。この核燃料の「最下流」の対策は英政府内にも議論がある。ソープの今後10年の受注量の約4割を占める最大顧客の日本にとっても「核のごみをどう引き取るか」という難問を突き付けられることになる。(英セラフィールド=尾関章)

●断 続 音

ピッ、ポッ、ピッ、ポッ。汚染防止の白衣を着て、中に入った瞬間、断続音が聞こえてきた──。
運転許可が下りたこの15日、イングランド北西部セラフィールドにあるソープの内部を見た。「断続音は、警報装置が働いている証拠。何か異常が起こると連続音になる」。案内役の技術者J・エルドリッジさんがいう。
使用済み燃料を運び込むプールには、満々と水がたたえられていた。まもなく水門が開き、隣の棟のプールから、容器に入れた燃料が移される。操作台はプール際にある。ここはまだ人間が近づける領域だ。
だが、燃料が引き揚げられる一角は厚い壁に囲まれ、のぞき窓は七重の遮へいガラスがはめ込まれていた。その奥で、長さ数メートルの棒状の燃料が2.5−10センチの長さに切り刻まれる。放射性物質が裸にされる瞬間だ。
このあと約90度の硝酸に浸して溶かし、化学処理でウランとプルトニウムを分離する。工程を制御する階には手袋付きの遠隔操作装置が並ぶ。「化学工程は完全に人から隔離される」と、同公社広報担当のS・ウィリアムズさんは話した。
密室で操業が始まると、溶液や容器、機械類は放射能に汚染され、いずれは廃棄されることになる。

●膨らむ体積

「放射性廃棄物の全体の体積は処理によって、もとの使用済み燃料の53倍に膨らむ。将来、施設解体後に出るごみまで入れると189倍になる」と、環境保護団体のグリーンピースは見積もる。
15日、議会下院で運転許可を公表したガマ一環境相は「利益・不利益をはかりにかけた結果、運転するほうが得策との結論を得た」と説明した。「不利益」の大きな部分が、この解体と廃棄物の問題だ。
将来、最大のごみとなる施設そのものの解体について、同公社は解体に約9億ポンド(約1500億円)かかるとしている。世界的にプルトニウム離れが進み、再処理需要が減りそうな中で、この解体費は重荷だ。
再処理で出る廃棄物の問題でも、政府内に論議がある。英国をごみ捨て場としないため、同公社は1976年以降の外国との契約では、廃棄物を顧客に返還する取り決めを結んでいる。
ところが、実際には、高レベルの廃棄物だけを返し、体積で9割以上を占める中・低レベルは英国に残して、その放射能に見合う別の高レベル廃棄物を顧客に引き取っでもらう構想をもっている。輸送コストを減らすことで顧客離れを防ごうとの思惑からだ。

●反対の手紙

英国には、再処理施設の近くに中・低レベルの廃棄物の地中処分場をつくる計画があり、そこに廃棄物を運び込もうという目算だった。だが、環境相の諮問を受けた放射性廃棄物管理諮問委員会は、地下水に放射性物質がしみ出さないという保証がないと報告、同公社の構想に待ったをかけた。
この構想を断念して、顧客にそのまま廃棄物を返そうにも、日本には、いまのところ受け皿となる処分場はない。このままでは、中・低レベル廃棄物が宙に浮く恐れが出てきた。
ガマ一環境相は、運転許可を公表する中で、今年8月から開いた公開協議の期間に、地元住民ら個人から届いた意見約4万2500通のうち63%が運転に反対だったと認めた。翌日、ソープに近いランカシャー州当局は、ソープ問題の公聴会を政府に求める法廷闘争にグリーンピースと加わる方針を明らかにした。
「英国は世界の核のごみ捨て場になる」という不安感が英国内に広まりつつある。(朝日新聞 1993/12/24)

日本の使用済み核燃料 英の核兵器開発に使用?
グリーンピースが報告書
【ロンドン17日共同】国際的環境団体「グリーンピース」は17日、日本の使用済み核燃料が英国の核兵器計画に使用された可能性があるとの報告書を発表した。
報告書によると、英国は英核燃料公社(BNFL)の核燃料再処理施設で、英国、日本(日本原子力発電東海発電所)、イタリアのガス冷却型炉の原子力発電所から出た使用済み核燃料を再処理しているが、英政府は燃料の一部を英国防省に渡した。報告書は、この燃料の一部が「英国の核兵器開発に利用された」としている。
英政府は1979年から使用済み核燃料の一部を研究のために国防省の管轄に移したことは認めている。しかし、英核燃料公社は、日本のすべての使用済み核燃料は国際的安全保障措置の合意に基づき処理しているとして、使用を否定した。また英国防省スポークスマンは「核兵器開発については一切、論評できない」と述べた。(毎日新聞 1994/01/19)

プルトニウム大量残量 動燃東海の製造工程 IAEAが注意
動力炉・核燃料開発事業団のプルトニウム燃料工場(茨城県東海村)の製造工程の機器に、操業開始から5年半で約70キロという、予想を超える大量のプルトニウムが残留していたことが9日明らかになった。動燃は核拡散防止のうえで直ちに問題とされる行方不明分ではないとしているが、国際原子力機関(IAEA)は、査察の信頼性を揺るがしかねない残留量だとして動燃に注意を促した。
この工場はプルトニウム燃料第3開発室といい、1988年10月に運転を始めた。プルトニウムとウランの各酸化物の粉末から、高速増殖原型炉「もんじゅ」などの燃料棒を製造している。
プルトニウムが残留していたのは、グローブボックスと呼ばれる密閉箱。この中で粉末を混ぜたり固めたりして、燃料棒に詰めるペレットをつくっている。4月に運転を始めた「もんじゅ」の燃料製造で、最近、残留量が増えたのではないかとみられる。
動燃はプルトニウムの受け入れ量と工程から出した量の差から、残留量は約70キロとIAEAに申告。IAEAも査察で残留が同量であることを確認した。
IAEAが問題にするのは、残留量が多いため、査察での計測誤差を考慮すると、核爆弾を製造できる量(有意量)を見過ごす恐れがあるためだ。計測の誤差は10−15%とされており、仮に10%とすれば、残留が70キロにもなると7キロ紛失しても把握できない可能性がある。プルトニウムの有意量は8キロとされている。
動燃は「計測上、行方不明量が出ることはあるが、今回の残留量はそれとは違う」と説明しているが、予想を上回る量だったことから「プルトニウムの回収やグローブボックスの更新で、残留量を減らしたい」としている。(朝日新聞 1994/05/10)

北朝鮮ウラン精練工場 白血病や肝炎がまん延
亡命の元労働者が証言

【ソウル9日=清田治史】朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のウラン精練工場から亡命したキム・デホさん(35)は9日、ソウル市内で内外記者団と会見し、「ウラン精練工場では、放射能対策の遅れから、白血病や脱毛症、肝炎などにかかる労働者が多い」と証言した。
キムさんは1985年に除隊後、平安北道のウラン精練工場である「四月企業所」に勤務。87年にはやはりウラン精練などを行う黄海北道の南川化学連合企業所に移り、ことし1月まで勤めた。
放射能被害がとくにひどかったのが南川連合企業所(労働者8000人)。ウラン鉱石を破砕し、ウランのほか、特殊鋼製造に必要なパナジウムなどを抽出している。
パナジウム抽出は熱せられた鉄板上で硫酸を注ぐという原始的な工程を採用しており、キムさんによると発生する硫酸ガスのため、肺と歯に致命的な障害を負う労働者が続出している。
南川連合企業所などで生産された濃縮ウランは、寧辺にある再精練工場「八月企業所」に送られるが、ここでも放射能被ばくが常態化している、という。(朝日新聞 1994/05/11)

商用プルトニウムで核兵器製造 米が62年実験成功
エネルギー省 公表し危険性アピール
【ワシントン27日共同】米エネルギー省は27日、米国が1962年に民間用原発から取り出した商業用プルトニウムで核兵器が開発できるかどうかを試すためネバダで地下核実験を実施し、成功していた事実を公表した。
実験成功の事実は77年に秘密指定を解除されていたが、一部専門家にしか知られていなかった。同省は、商業用プルトニウムが持つ核拡散の危険性を広く知らせるため公表を決めたと説明している。
同省によると、実験は英国が提供した商業用プルトニウムを使い、爆発の規模は20キロトン以下だった。
核兵器に使うプルトニウムは普通、核分裂を起こすプルトニウム239が93%以上含まれるが、この実験によって、同位体のプルトニウム240を7%以上含んでいるため核反応が不安定とされる商業用プルトニウムでも核兵器ができることが立証された。核兵器開発への悪用を防ぐため、詳細は今後も秘密指定が続くという。(中日新聞 1994/06/28)

チェルノブイリ原発周辺 先天男常の増加確認 日本と共同調査
8年前、爆発事故のあったチェルノブイリ原発の周辺地区で、これまで指摘されてきた子供の甲状腺(せん)がんのほか、多指症や内臓奇形など胎児の先天異常の発生率も高まっていることが、現地と日本の共同研究で分かった。高濃度の放射能汚染地区では、異常の発生頻度が事故前の約1.8倍に増えていた。こうした実態が統計で確かめられたのは初めて。14日から、高知市である日本先天異常学会で報告される。
調査したのは、ベラルーシ共和国ミンスク遺伝性疾患研究所のG・ラジュク所長と、広島大原爆放射能医学研究所の佐藤幸男教授(放射線奇形学)らのグループ。
同原発の北東にあって汚染濃度が高かった同共和国は、先天異常の発生頻度を毎年調べている。そのデータをもとに、事故前(1982−85年)と事故後(87−92年)について、汚染度で分けた地域ごとに見た。対象の地域では年間6000人から7000人が生まれた。
放射性物質セシウム137による低濃度汚染地区(1平方キロ当たり5キュリー未満)では、事故前に出産1000件当たり4.6件だった異常が、事故後は6.0件に、高濃度汚染地区(同15キュリー以上)では3.9件から7.0件に増えていた。
また、人工妊娠中絶された胎児について各地の病院の異常のデータを集めたら、高濃度汚染地区の事故後(86−92年)の発生率は9.9%だった。事故前のデータはないが、影響がなかった首都ミンスク(事故前5.6%、事故後4.4%)より高かった。
ラジュク所長は「食生活や公害など複数の否定的要因が重なったことも考えられるが、多指症が増えているので、何らかの突然変異が起きたことは否定できない」としている。
佐藤教授は「事故の放射線の影響で増えたと言い切る証拠は今のところないが、放射線は1つの大きな要因であると考えられる」と話している。
同原発事故の影響についてはIAEA国際諮問委員会(委員長、重松逸造・放射線影響研究所理事長)が調査し、91年、「周辺住民に関する健康被害は現時点では確認できなかった」と報告。先天異常についても「放射線被ばくの結果として胎児の異常が増えた証拠はなかった」とした。

重松逸造・放射線影響研究所理事長の話 IAEAでは、先天異常については聞き取り調査程度しかしなかったので実態は分からない。発生率が増加しているなら、原因について科学的に議論する必要がある。(朝日新聞 1994/07/07)

元浜岡原発労働者 白血病死に労災認定 労働省 
中部電力浜岡原子力発電所(静岡県浜岡町)で働いていた孫請け会社の元社員嶋橋伸之さん(当時29)が慢性骨髄性白血病で死亡し、両親が昨年5月に労災申請していた件で、労働省と磐田労働基準監督署(静岡)は27日までに、労災の申請を認める通知書を嶋橋さんの両親に送付した。福島第1原発の労働者に次いで2件目の認定になる。
申請書によると、嶋橋さんは1981年3月、中部電力の孫請け会社「協立プラントコンストラクト」に入社、死亡した91年10月まで在籍。浜岡原発炉心の下部にある中性子計測器の保守、点検、修理を担当、炉心の下にもぐりこんで作業をしていた。
87年ごろから顔がむくみ始め、88年6月の血液検査では、白血球数が1万3800、同11月の検査では9500と、明らかな異常値を示していたが、会社側は精密検査を受けさせず、被曝(ひばく)労働に従事させていた、という。89年夏ごろには体調を崩し、発熱が続いて2週間ほど寝込んだ。死ぬ間際の91年10月ごろは、歯肉からの出血が止まらない状態だった、という。
労働省は、白血病にかかった放射線業務従事者の労災認定の目安として、0.5レム×従事年数が「相当の被曝量」としている。嶋橋さんの放射線管理手帳によれば、現場作業を離れる89年12月まで約8年10カ月間の累積被曝線量は50.93ミリシーベルト(5.093レム)。
弁護団は、この間の被曝だけで労災の認定基準は満たしている、としていた。(朝日新聞 1994/07/27)

核の労働者に2000万ドル補償 米で和解
【ワシントン26日=大塚隆】米エネルギー省は26日、1950年代から80年代半ばに原爆材料である高濃縮ウランの加工をしていたオハイオ州フェルナルド核兵器工場の健康被害に、2000万ドル(約20億円)の補償を行う和解案に合意したことを明らかにした。
それによると、連邦政府は過去に同工場に勤務し、健康被害を訴えている労働者の毎年の検診費用として500万ドル、健康被害への補償費として1500万ドルの計2000万ドルを負担する。(朝日新聞 1994/07/27)

「プルトニウム1キロで原爆可能」 管理強化求める 米研究機関
【ワシントン22日=大塚隆】米の民間研究機関自然資源防衛評議会(NRDC)は22日、「最新技術を使えばプルトニウム1キロで原爆が作れる」と警告、国際原子力機関(IAEA)が核物質管理の基準にしている量をプルトニウムの場合、8キロから1キロに減らして管理を徹底するよう求め、IAEAと米エネルギー省に書簡を送ったと発表した。ドイツで続発している核物質摘発を契機に、核拡散の防止を実質的なものにするのが狙い。NRDCは核兵器保有国だけでなく、日本の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)などの再処理にも同様の管理強化を求めている。
NRDCの核兵器専門家トーマス・コクラン博士らが最新の技術を検討、核爆弾製造可能量を計算し直した結果をまとめた。最新技術を使えばプルトニウム1キロで大都市なら数千人以上を殺傷する1キロトン級原爆ができ、多くの国が持つ中程度の技術でも1.5キロで原爆ができるという。NRDCはやはり核兵器の材料になる高濃縮ウランについても、25キロを8分の1の3キロにするよう求めている。
IAEAは核爆弾が製造可能な核物質の量を「有意量」として核物質管理の指標にしている。プルトニウムの場合、長崎に落とされた原爆に6.1キロのプルトニウムが使用されたことから、製造ロスを見込んで8キロを有意量にしたという。
しかし、コクラン博士は当時でもプルトニウムが3キロあれば小型原爆の製造は可能だったとし、「基準は時代遅れ。核物質がブラック・マーケットに流れる現状を考えると基準強化が緊急課題」と指摘する。
提言通りプルトニウムの有意量が小さくなれば、再処理やプルトニウム燃料製造などの各段階で工場設備の大幅な改善のほか、細かい運用を迫られるなど負担を強いられることになる。
同博士は日本の再処理にも触れ、「動燃東海工場では70キロを超えるプルトニウム残留があった」と非難、日本を規制強化の標的のひとつにしていることを明言した。(朝日新聞 1994/08/23)

ロケット用原子炉暴走実験 放射能、大量に放出 65年に米国
【ワシントン24日=大塚隆】米エネルギー省の前身、原子力委員会が1965年1月、ネバダ州の砂漠にある実験場で原子力ロケットに使う原子炉の暴走実験を行い、ウラン燃料の一部を高温で気化させ、大量の放射性物質を故意に放出させていたことが分かった。下院の反核派エドワード・マーキー議員(民主党)が24日、明らかにした。
実験は当時、米国が開発中だった原子力ロケット用の炉の特性などを調べるために行われた。同議員が入手した資料によると、キウイと呼ばれる実験炉を計画的に暴走させ、3000度以上の高温を発生させた結果、原子炉内に「花火の打ち上げ時のような白熱した火花のシャワー」が出現、ウランとカーバイドなどを混ぜた特製燃料の5−20%が気化し、かなりの放射性物質が環境中に放出された。
原子力ロケットの構造は明らかではないが、原子炉で水素ガスを2000度程度の高温にし、ロケットのノズルから噴射する。この原子炉は通常の運転状態でも一部で燃料溶融が始まることから、原子炉の特性や運転による環境への影響を調べるため、暴走実験を計画したらしい。
放射線量は実験場所から数十キロ離れた実験場の境界でも年間被ばく限度量の約5分の1に当たる0.057ミリグレイに達した。放射性物質を含んだ雲はロサンゼルス市上空にまで到達、航空機の調査では数日間影響が観測されたという。
マーキー議員は「意図的な放射能放出は人体実験だ」とし、24日、エネルギー省のオリアリー長官あて書簡を出して、詳しい調査を求めた。原子力ロケットの開発実験は55年に開始されたが、数回にわたる実験でもロケットから放出される放射能による環境汚染を解決できないため、72年に開発を断念した。
マーキー議員は、空軍や航空宇宙局は研究再開を検討していると指摘、こうした実験を繰り返してはならない、と訴えている。(朝日新聞 1994/08/25)

人体実験 原子力ロケット開発でも 「市民多数が被ばく」
65年の実験、米議員調査
【ワシントン26日=伊熊幹雄】冷戦時代のプルトニウム人体実験が大きな問題になった米国で、原子力ロケット開発の過程でも意図的な環境破壊や人体実験が行われていたことが、26日までにエドワード・マーキー下院議員の調査でわかった。同議員はヘーゼル・オリアリー・エネルギー長官に書簡を送り、「原子力ロケット開発実験も人体実験として調査するよう」求めた。
同議員の調査及び同日までに公開された機密文書によると、問題の原子力ロケット実験は、1965年1月12日にネバダ州ジャッカース平地にある原子力ロケット開発場で行われた。この時の実験は、実際に原子力ロケットを飛ばすのが目的ではなく、エンジンの原子炉を意図的に爆発させて原子炉の反応及び「爆発で生じた放射能の環境への影響」(ロスアラモス研究所の報告文書)を探るのが目的だった。
この爆発は「まれに見る大量の白熱光線」(同)を生じるとともに、大量の放射能をふりまき、死の灰をもたらす雲が300キロ以上離れたカリフォルニア州の太平洋岸、ロサンゼルスやサンディエゴにまで到達した。これらの地域での放射能は、現在の安全基準値を下回ってはいるものの、マーキー議員は「核爆発が意図的なもの」であるうえ「多数の市民が放射能を浴びた」と批判している。
このほかにも60年には、やはり原子力ロケットのエンジンの原子炉爆発現場に、米軍の航空機を飛ばした上、乗組員がどの程度放射能を浴びるかを探る実験も行われた。マーキー議員は「これは人体実験」とし、65年の爆発実験と併せエネルギー省に徹底調査を求めている。
米国の原子力ロケット開発は、60年代以降たびたび実験が行われながら、現在は中断状態だ。今回の機密文書発掘は、「夢のロケット」とされる原子力ロケット開発の暗部を示したもので、今後の開発復活の動きにも影響を与えよう。
米国では、昨年オリアリー・エネルギー長官の就任以来、同長官のイニシアチブで核兵器開発の暗部を暴く作業が始まり、プルトニウム人体実験の事実が発掘される一方で、実態調査する大統領の諮問委員会も発足している。今回の実験を暴いたマーキー議員は、民主党所属で共和党政権時代から核実験の被害問題に取り組んでいた。(読売新聞 1994/08/28)

プルトニウム 日本の備蓄過剰と指摘 韓国議員
日韓議員連盟と韓日議員連盟の合同総会が6日、東京都内のホテルで開かれた。総会の前の「安保・外交委員会」で、韓国側は日本のプルトニウム備蓄について「過剰に備蓄している日本の核エネルギー政策は理解に苦しむ面がある。しかも核兵器の製造に必要なあらゆる部品と技術を保有しているから、いつでも核兵器の製造が可能だ。こういう政策を再考すべきだ」と指摘した。日本側は「日本はあくまでもプルトニウムを平和利用しているし、非核3原則があるから安心してほしい」と応じた。(朝日新聞 1994/09/07)

チェルノブイリ原発事故から8年半
長期の低線量被ばくに不安募らすベラルーシ
がん「増加」、不完全な究明
大地の放射能が、食べ物を通して体をむしばんではいないか──隣国ウクライナで8年半前に起こったチェルノブイリ原発事故の汚染地を抱えるベラルーシで、事故の記憶が薄れるのとは逆に、がんなどへの不安が強まっている。首都ミンスクで10月初め、科学者たちが、歳月を経て表れる放射線の影響を考える国際シンポジウムを開いた。広島、長崎の被爆と異なり、低い線量の被ばくが長期間続く、原発事故汚染の不気味さが浮かび上がった。(ミンスク=尾関章)

●不 安

7歳の春だった。雨にずぶぬれになりながら、夕方まで戸外で遊んでいた。三百数十キロ離れたチェルノブイリ原発から飛び散った放射能は、風に乗って北上しつつあった。「外に出ない方がいい、と母から言われたのは数日後でした」
人口約160万人、森と農地に囲まれたミンスク。その郊外の団地で、オリガ・キリーナさん(16)は、体験を記者に語った。
事故から6年後の1992年、甲状腺(せん)のはれが目立ち始めた。もしかしたら、甲状腺にたまりやすい放射性ヨウ素に侵されたのかも知れない。不安にかられた。今のところ悪性ではないが、「治らないうちは、結婚しても赤ちゃんを産みたくない」と言う。
キリーナさんはその年の秋、朝日新聞厚生文化事業団などの募金救援活動「チェルノブイリに光を」の招待により来日し、広島で検査を受けた。「宮島や平和記念公園にも行った」。でも、忘れられないのは、医師から「体内に放射能の蓄積はない」と言われた瞬間だった。「本当に、ほっとした」
ジャーナリスト志望。大学を出たら「チェルノブイリ」を書きたいと言う。

●被爆国

広島で被爆資料を見て、キリーナさんは「自分の国も同じ運命にならないでほしい」と感じた。シンポジウムの焦点は、この国の汚染地対策に、日本の経験が生かせるかどうかだった。参加者約250人。日本からも研究者ら十数人が出席した。
「汚染地では、放射性セシウムが年に3−7ミリずつしか地中に沈み込んでいない」。ベラルーシの放射線生物学研究所は、こんな見積もりを示した。汚染物質が地中に染み込んで浄化が進む、という期待は裏切られた。さらに、風がこの汚染土を巻き上げる。
「草原では、草が土壌の放射性物質を吸い上げている」という指摘もあった。森林研究所の」・イパティエフさんは「森林労働者は、都市生活者の3−13倍の放射線を浴びている」との試算を発表した。
線量は高くはない。しかし、問題は、こうした日常的な放射線被ばくによる健康への被害だ。
研究者の間では「低線量なら被害はガクンと落ちる」という見方もあるが、広島大学原爆放射能医学研究所の大瀧慈・助教授は、疑問を投げ掛けた。
日本の被爆者統計をもとに、肺がんや胃がん、肝がん、大腸がんなどについて、放射線でがんにかかりやすくなる度合いは線量とともに直線的に増えていることを示し、線量が低くてもそれなりに危険度が増す可能性を明らかにした。
ベラルーシ医療技術センターのA・オケアノフさんらは、同国で「肺がんや胃がん、乳がんを中心に、がん全体が急増している」と報告した。78年から93年までの間に、がんの発生は男性で44%、女性で35%も増えたという。

●原 因

この傾向は、事故以前から見られることや、肺がんの増え方が女性より男性で目立つことから、「診断の精度が上がったためではないか」「喫煙の影響はないか」などの疑問も少なくない。それでも現地では、事故による汚染がいくぶんかは関係していると疑う見方が根強い。
国際原子力機関(IAEA)の国際諮問委員会が91年の報告書で、白血病や甲状腺がんの増加を記した旧ソ連の統計について、データの不完全さを理由に「白血病やがんの目立った増加を示していない」と分析したことがあった。ところが翌年、「汚染地で子供の甲状腺がんが激増した」との報告が英科学誌ネイチャーに載り、がんの増加が認知され始めたからだ。
汚染地ベラルーシでの研究成果も世界にはあまり知られていない。「月給約15ドルでは外国の学会にも行けない」とユーリ・イワシケビッチ医師(28)は嘆く。
シンポジウムに参加した民間団体の原子力資料情報室の高木仁三郎代表は「今回の研究発表を英文で、世界にわかりやすい形で伝えたい」と話していた。(朝日新聞 1994/10/16)

原発からのプルトニウム 小型の原爆 製造可能 米国立研報告
【ワシントン10日=北島重司】原発の使用済み燃料から取り出されるプルトニウムでも、戦場でも使う小型の戦術核兵器を製造できるとの報告書を米国立研究所が米政府に提出していた。日本や欧州では、こうしたプルトニウムは軍事用に適さないとの見方があるが、それを真っ向から否定した内容。米政府筋も「必要以上に持つ国には、見直しを促したい」としており、日本も含め、管理強化や保有量の抑制などが核拡散防止の新たな枠組みづくりの政策課題に浮上する可能性が出てきた。
前ホワイトハウス科学技術政策局次長のフランク・フォン・ヒッペル氏(現プリンストン大教授)が朝日新聞とのインタビューで明らかにした。報告書は昨年9月、ホワイトハウスとエネルギー省の担当官に出された。全容は秘密扱いだが、核兵器の設計図などを削除した概要説明書が作成されたという。
ヒッペル氏と概要説明書によると、ロスアラモス、ローレンスリバモア両国立研究所の核兵器設計の専門家グループは、使用済み燃料を再処理して出るプルトニウム(原子炉級プルトニウム)でどれぐらいの性能の核弾頭を製造できるか、核実験データなどをもとに検討した。
テロ集団などが核開発を企てる場合、核弾頭には初期の設計が使われる公算が大きいとして、とくに1950年代に米国が開発した核弾頭をつくるとして分析。その結果、設計上の爆発力よりやや落ちる可能性があるものの、高性能火薬に換算して、少なくても1キロトンほどの爆発規模を確保できると結論づけた。

<原子炉級プルトニウム>
プルトニウムには15種類の「兄弟」が知られているが、核兵器の材料には、核分裂性の239が多いだけでなく、240の割合が少ないほど適しているとされる。240は、起爆剤で一気に爆発させる前に、勝手に爆発を誘発する「やっかい者」だからだ。240の割合が2−3%のプルトニウムをスーパー級、7%以下を兵器級と呼び、プルトニウム生産用の特殊な炉でないと作れない。240が18%以上を原子炉級という。(朝日新聞 1995/06/11)

子の甲状腺がん40倍
【ワシントン24日=共同】24日付の米紙ワシントン・ポストは、ウクライナのチェルノブイリ原発事故(1986年)で放射能に汚染された隣国ベラルーシで甲状腺(せん)がんなどが子どもの間で急増している、と伝えた。
それによると、ベラルーシで甲状腺がんと診断された14歳以下の患者は86年にわずか2人だったのに、92年には66人に増え、さらに94年は82人と86年の約40倍になった。(朝日新聞 1995/06/25)

放射能マンションぞろぞろ 台北市一帯
鉄筋に混入886戸 26戸が退去拒む
汚染、教室や道路にも
持参した放射線測定器が突然、「ピーッ」と高い音を出した──台湾の台北市とその周辺で、放射能に汚染されたマンションや学校の教室が次々と見つかっている。当局の原子力委員会が、この事実を知ったのは10年前。3年前に表面化し、これまでに分かっただけでも886戸、58教室になる。「犯人」は鉄筋に紛れ込んだ放射性物質のコバルト60という。経済成長で鉄鋼が不足し、廃鉄をもう一度溶かして再利用したところ、捨てられていた放射性物質も一緒に溶け込んだらしい。当局は住民に退去を促しているが、補償金への不満などから、住み続ける人も多い。同市郊外では、放射能汚染された道路も見つかり、不安は募るばかりだ。(科学部・武内 雄平)

放射線測定器の赤いアラームランプが点灯した。台北の中心部にあるマンション2階の踊り場にさしかかった時のことだ。3階のエレベーター付近で壁に測定器を当てると、毎時100マイクロシーベルト近い値を示した。
仮にこの壁のそばに半日もいれば、国際放射線防護委員会(ICRP)が定めた一般人の年間被ばく限度(1ミリシーベルト)を超えるのに、マンションには警告の表示さえなかった。
「当局はわれわれをだましていた」と、放射能被害者協会の王玉麟・理事長。原子力委員会はこうした「放射能マンション」の存在を1985年に知っていたのに公表せず、92年の新聞報道でようやく一般に知られるようになったという。
同委員会もこの事実を認める。10年前、歯科医のレントゲン機材を設置するためにマンションの環境放射線量を測定したら、異常に高いことがわかったが、担当者は、この歯科医の部屋以外は対策を講じないで放置した。
同委員会によると、866戸のうち、年間の推定被ばく線量が15ミリシーベルトを超すマンションは96戸あり、最も高い部屋(無人)では159ミリシーベルトに達する。
王理事長もかつて放射能マンションのひとつに住んでいた。「そのころ生まれた次女には心臓の先天性疾患がある。放射能のせいかもしれない」
当局は、日本円にして80万円から200万円相当の移転補助金や買い取り策を示しているが、今月中旬現在、15ミリシーベルトを超すマンションにも26戸が住んでいる。
一方、「放射能教室」には託児所や幼稚園も含まれる。こちらは、解体したり遮へい材を設置したりして、対応しているという。
汚染の犯人はコバルト60と、原子力委員会は断定する。台湾では6基の原発が運転されており、原発の廃棄物を疑う声もあるが、「原発の廃棄物ならいろんな種類の放射線が出るはずだが、コバルト60しか検出されていない」と同委員会。いちばん疑われているのが、陸軍化学兵学校で紛失したコバルト60だ。
放射能マンションは82年から84年ごろに建てられた。高度経済成長を迎えていた台湾では、中小の製鉄業者が廃鉄を買いまくり、溶鉱炉で溶かして再利用していた。紛失したコバルト60が一緒に溶鉱炉に紛れ込んだというのだ。
マンション、教室に加え、台北市の北の桃園市周辺で最近、「放射能道路」が見つかった。学校の前の道もある。放射線量は毎時15−20マイクロシーベルト程度という。だが、汚染経路はよくわかっていない。

がんの危険性増す

科学技術庁放射線医学総合研究所の藤元憲三・主任安全解析研究官の話 マンションの汚染は、自然放射線の年間被ばく線量が世界平均2.4ミリシーベルトであることを考えると、かなり高い。住んでいればすぐに病気になるというわけではないが、そのまま被ばくし続けると、がんなどになる危険性が増す。特に、胎児には影響が出やすいので妊婦は注意が必要だ。コバルト60は半減期が約5年なので、10年前は4倍程度の放射能レベルだったと考えなければならない。(朝日新聞 1995/11/20)

甲状腺がん発生100倍も チェルノブイリ影響 WHO会議報告
【ジュネ−ブ20日=竹内敬ニ】1986年に起こったチェルノブイリ原発事故による放射能被害で、手どもの甲状腺(せん)がんが90年代になって急増し、事故前と比べると発生率が100倍にもなっている地域があることが20日、ジュネーブで開幕した世界保健機関(WHO)主催の「チェルノブイリと他の放射能事故の健康影響に関する国際会議」で報告された。
WHOは、放射能被害の大きいベラルーシ、ウクライナ、ロシアの3カ国と協力して昨年まで大規模な健康影響調査をした。この結果の一部を、中嶋宏・WHO事務局長は開会演説の中で明らかにした。
中嶋事務局長と会議に出された資料によると、3カ国の放射能汚染地区の14歳までの子どもを追跡調査したところ、事故発生以降、ベラルーシで333人、ウクライナで208人、ロシアで24人の計565人の甲状腺がんが確認された。
年間の発生率は年とともに上昇しており、ベラルーシの場合、事故前は100万人当たり約1人だったのが、90年から2けたになり、94年には同36人(36倍)となった。とくに同原発の北方にあり、放射能雲が通り過ぎたゴメリ地域の94年の発生率は100倍にもなった。また、がんのほとんどが極めて悪性で、周囲の組織や肺に転移しやすく、多くの子どもがすでに死亡したという。(朝日新聞 1995/11/21)

チェルノブイリ原発事故から来春で10年
がん急増 後遺症深刻に
旧ソ連チェルノブイリ原発の事故から来春で10年。放出された放射能の7割が降ったとされるベラルーシで、子どもの甲状腺(せん)がんの発生率が事故前の36倍に達するなど、恐れられていた後遺症がだれの目にも、はっきりとしてきた。23日まで世界保健機関(WHO)がジュネーブで開いた国際会議では、汚染除去作業員の放射線障害に加え、被ばく体験のストレスがもたらす「心の病」などの問題も報告された。その一方で、ソ連崩壊後のエネルギー危機のあおりで、旧ソ連・東欧圏では、安全が疑問視される原発の運転再開が相次いでいる。世界は今、事故への恐怖と原発依存を断ち切れない現実とのジレンマに直面している。(ブリュッセル支局・吉田文彦/科学部・竹内敬二)

やつれた面持ちに、トビ色のひとみが力なく輝いていた。ベラルーシの首都ミンスクにあるミンスク医科学研究所付属病院に入院していたサーシャ・チトフ君(11)。甲状腺がんの切除手術を受けてから、2日目だった。のど元には約8センチにわたって切開した傷跡がくっきりと残り、思うように声を出せなかった。
サーシャ君が両親に異常を訴えたのは、手術の1週間前。「少し前から首のあたりがはれて食べ物が通りにくかったけれど、急に息苦しくなってきて…」。病院で甲状腺がんと診断され、手術が決まった。
サーシャ君は1986年4月26日に同原発の事故が起こった時、2歳3カ月だった。「放射性ヨウ素に汚染された牛乳などを口にして甲状腺を傷めた」と、同研究所のユージン・デミチク教授は見る。
チェルノブイリ原発があるウクライナの北方に隣り合うベラルーシは、広大な汚染地帯を抱える。しかも、当時はソ連政府の事故発表が遅れ、国民の5人に1人が被ばくした。とくに放射線の影響を受けやすい子どもたちが、知らない間に大量の放射能汚染にさらされる結果になった。
今回、ジュネーブで開かれた「チェルノブイリと他の放射能事故に関する国際会議」では、ベラルーシで子どもの甲状腺がんの発生が86年から95年10月までに400件を超えた、と発表された。94年の発生率は事故前の36倍、汚染のひどかったゴメリ地域では100倍になる。
ウクライナでも、この発生率が国全体で8倍、首都キエフで50倍になっている。
ほかのがんも増えている。ゴメリ地域での子どものがん全体の発生をWHOが92年までのデータで分析した結果、87年から92年にかけて3.7倍に増えていた。
これらの病気の多発は事故後、診断の水準や密度が高まったためではないか、との見方もこれまで根強くあったが、最近の急増ぶりで、そういう背景を考えに入れても、事故の影響は無視できなくなってきた。

広島・長崎と異なる発症

被ばくした市民たちには、白血病などの血液病の不安が募っている。食物から体内に入った放射性セシウムによる内部被ばくが最大の危険要因だ。
チェルノブイリの被害は、広島・長崎の原爆による被爆者と比較されるが、病気の発症の様子は違う。
日本の被爆者は2年後から白血病が増えはじめ、6、7年後にピークになった。甲状腺がんなどを含む普通のがんは10年近くたってから増えはじめ、今も増加が続いている。これに対して、チェルノブイリ原発事故では、甲状腺がんは4、5年後に増加を見せ始め、血液病はベラルーシやウクライナで増加傾向にあるものの「急増」とはいえない。
原爆の場合、大量の放射線が一瞬のうちに体を貫く「外部被ばく」がほとんどだ。
原発事故では、地面に落ちた「死の灰」(核分裂生成物)からの外部被ばくに、汚染食物からの「内部被ばく」が加わり、じわじわと細胞に放射線を浴びせ続ける。この差が、病気の出方の違いに関連しているのかも知れない。
広島・長崎の被害を追っている放射線影響研究所の重松逸造理事長は「甲状腺がんの増加は予測通りとしても、原発事故の被害はまだ分からないことだらけだ」と語る。

甲状腺・血液などに異常

原発とその周辺での汚染除去作業には、旧ソ連全体で約60万人が動員された。
このうち、12万人にのぼるロシア人作業員についての調査によると、92年のがん全体の発生率は89年の1.9倍、白血病などの血液病は1.8倍にもなり、死亡率全体も90年から92年にかけて5割も上昇した。
また、今回の会議で、ベラルーシ医療技術センターのアレクセイ・オケアノフ博士が「93、94年に除染作業員に発生した甲状腺がんは、ベラルーシの大人の平均の3倍。原発から30キロ圏内で1カ月以上働いた人に限ると、甲状腺がんは9倍、ぼうこうがんも3倍」と報告した。ウクライナも「91年ごろから白血病の増加が始まった」と発表した。
実は、作業員の被ばく線量ははっきりしない。2割の人には被ばく線量の記録がないうえ、作業員の大多数を占める兵士は個人線量計を着けずに作業し、後で被ばく線量を少なめに記録した例が多い。このため放射線の影響を正確に知らないまま過ごしている作業員も大勢いて、発表されている数字以上の健康被害が進行している恐れもある。

ストレスも大きな問題

会議では被ばく体験からくるストレスも大きな問題と指摘された。
ウクライナの放射線臨床研究所などが、妊娠中に事故による被ばくを経験した母親と「胎内被ばく児」を対象に調査したところ、非汚染地域と比べ、母子双方に情緒不安定など精神面での問題が多かった。
子どもには、知能や行動の面でやや発達の遅れもあった。この原因として「放射能と、放射能以外の影響が考えられる」と分析された。「放射能」では「脳の発達にとって大事な妊娠8−15週の間に被ばくした恐れと、被ばくによる甲状腺の機能障害」が考えられ、それ以外では「母親の精神面での不安定など」が疑われる。後者の影響が強ければ、土地を離れての生活や将来の健康不安など母の「心の病」が子の健康に影を落としたことになる。
ウクライナの心理学者は、チェルノブイリの隣町プリピャチから疎開した家族を典型例としてあげた。
14歳の少女は気分が落ち込み、自殺願望に悩んだ。妹が血液病をもって生まれ、母親がかかりっきりになり、より疎外感が増した。母親も情緒不安定になった。父親は逆に病気の娘を全く無視し、家族に相手にされないことから酒びたりになったという。この心理学者は「一般に小さな子は事故のせいで家庭が崩壊したと思い込み、青年期では自信喪失、将来への絶望感が募る。最悪は50歳以上で、新しい土地や仕事に適応できない」という。

「不安な原発」なお運転 旧ソ連・東欧

放射能汚染の傷の深さが明らかになる一方で、旧ソ連や東欧では「原発回帰」が相次いでいる。
チェルノブイリ原発では、4号炉が大事故を起こしたが、1−3号炉が生き残った。その後、2号炉の機械室で火災があった。現在、1、3号炉が運転中だ。2号炉も来年春には改修が終わり、運転開始をめざしている。
西側諸国は事故再発を警戒して、ウクライナ政府に1−3号炉の全面閉鎖を求めた。ウクライナ政府も、代替電力源の開発や汚染除去などへの財政支援を条件に、2000年にはチェルノブイリ原発を閉鎖すると発表したが、支援規模で折り合いがつかず、全面閉鎖のメドはたっていない。
ブルガリアでは、炉心を覆う圧力容器の安全性に不安を抱える旧式の原発が運転再開された。アルメニアでは、88年の大地震で耐震性に疑問が出た原発の運転を再開している。
いずれも厳しい冬を乗り切るため、西側が危険性を指摘している原発であっても稼働させている。健康被害が明らかになっている中でも、電力不足を前に原発に寄りかかる現実。この板ばさみから抜け出すには西側諸国の支援が欠かせないが、解決策を見いだせないまま、今日も「不安な原発」が動いている。(朝日新聞 1995/11/26)

六ケ所村・核燃再処理施設 クリプトン、大気中放出へ
気象に影響懸念の物質 「回収施設、高い」
青森県六ケ所村に建設中の民間初の核燃料再処理工場から出る放射性物質クリプトン85について、事業主体の日本原燃(本社・青森市)は回収施設を造らず、全量を大気中に「垂れ流し」する方針を決めた。クリプトンは気象に影響を与えたり、被ばくで皮膚がんを増やしたりするのではないかと心配されている。地元住民らは回収を求めてきたが、同社は「大規模な回収施設はコストがかかりすぎる」としている。同工場の建設費は、設計変更しても計画の2倍の1兆7000億円前後に達することが明らかになっている。
クリプトンは再処理工場の燃料を溶かす工程で発生する。茨城県東海村にある動力炉・核燃料開発事業団の再処理工場では、地元の要望もあって回収試験を始めている。「相当量を除去できそうだ」(環境技術開発部)という。
日本原燃も当初、回収施設の設置を計画。現在も敷地は確保しているという。だが、国への事業許可申請には盛り込まず、原子力安全委員会の安全審査などでは、クリプトンを全量放出しても大気中に拡散、周辺住民の被ばく量は非常に少なく、環境への影響もないとされてきた。
日本原燃は「回収施設を造ろうとすれば大規模なものになり、巨額の建設費をさらに押し上げかねない」(瀧田昭久・放射線管理部長)と、回収断念の理由を説明する。
反核団体、原子力資料情報室の高木仁三郎代表は「回収施設がなければ多量のクリプトンが垂れ流しになり、地球環境にも大きな影響を与える。経済性を理由に回収しないというのは許されない」と話す。
クリプトンは天然には存在せず、再処理工場や核実験などで発生する。ベータ線とガンマ線を出す。海水にはわずかしか溶けず、北半球では1985年までの10年間で濃度が2倍になり、世界気象機関(WMO)はオゾン層破壊や酸性雨を引き起こす物質とともに、監視項目に指定。日本では気象庁気象研究所が濃度変化を監視している。(朝日新聞 1995/12/10)

もんじゅ事故 手順書に重大欠陥
『小規模漏れ』は止めず 動燃認める
福井県敦賀市の高速増殖原型炉「もんじゅ」で起きたナトリウム漏えい事故で、動力炉・核燃料開発事業団(動燃)は19日、異常時の運転手順書を公開した。ナトリウム漏えいの初期段階では、火災検知器やナトリウム漏えい検出器が警報を発しても原子炉停止はできず、運転員の主観的判断に頼るしかないという致命的な欠陥があることが明らかになった。動燃によると、手順書では、ナトリウム漏えいが発生しても、ナトリウムの液位に変化が見られない場合、火災検知器やナトリウム検知器が鳴り続けていても、場所を確認するだけで、原子炉を手動で緊急停止するようにはなってない。
今回の漏えい事故の場合、8日午後7時47分に火災警報、その1分後にナトリウム漏れ警報が鳴り、運転員1人が現場の2次冷却系配管室の入り口から中を見て「もやもやとした煙が見える」と微妙な表現で報告した。中央制御室では、ナトリウムの液位に変動がないことから「小規模漏えい」と判断。その時点で、手動による原子炉緊急停止操作には入らなかった。
同8時50分に再び、現場を見て、白煙が充満していたことから「中規模漏えい」と判断を変更。同9時20分、最初の煙確認時から90分も遅れて手動停止させた。
ナトリウムの液位は、最低でも0.5トン前後が漏れないと、計器の目盛りは変化しない。手順書通り手動停止させるには「中規模漏えい」まで漏れが拡大し「白煙」を運転員が確認しない限り、原子炉手動停止はできないことになる。
動燃は「小規模、中規模は結果であり、白煙など徴候によって対応するのが本来の手順書。運転員が誤解しやすく、不備があった」と、手順書の欠陥を認めた。(中日新聞 1995/12/20)

もんじゅ事故 ビデオの重要部隠す 撮影の動燃、編集し公開
動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故で、動燃が事故直後に撮影したビデオを事故の核心部分を隠す目的で職員が勝手に編集し、大半の映像が公開されていなかったことが、20日までの動燃の調査でわかった。未公開部分には、漏えい個所とみられる温度計など、公開部分にない生々しい映像が含まれていた。大石博理事長は同夜、科学技術庁で2度にわたって記者会見し、「意図的に編集したと思う。情報公開を進めなければならないのに、極めて遺憾な事態を起こし、申し訳ない」と謝罪。「関係者の処分も検討している」と明らかにした。
ビデオは事故発生翌日の9日午後4時10分ごろから約10分間、動燃の職員9人が事故後2度目に現場に入った際に撮影した。
動燃は、最初は1分間だけを報道関係者らに公開。その後、4分間のビデオだとして、再度公開した。その際、撮影はカメラ1台で行い、これ以外に映像はないと説明していた。
しかし実際はカメラ2台で、計約15分間分を撮影していた。「未公開部分には温度計以外にも、配管や空調用ダクトに漏れたナトリウムの化合物が積もっている様子など、公開部分にない事故の具体的な様子を伝える映像が含まれていた。
動燃によると、ビデオの編集は現地の「もんじゅ建設所」で行われた。同建設所の佐藤勲雄副所長もこの事実を知っていたという。
大石理事長は「本社には編集の事実は伝えられていなかった」と話している。(朝日新聞 1995/12/21)

「もんじゅ」ビデオ問題
動燃所長「編集を指示」 副所長は口止め
動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故で、動燃が撮影したビデオの核心部分を隠す編集をしていた問題で、大森康民・もんじゅ建設所長は21日、福井県敦賀市のもんじゅ建設所で記者会見し、「私の方から分かりやすく編集してくれと言った」と、編集の指示をしていたのは大森所長自身であったことを初めて認めた。
また、編集に当たった佐藤勲雄副所長が撮影者に元テープの存在の口止めをしていた事実も明らかになった。
ビデオは事故直後の9日午後4時10分ごろから、2台のカメラで約11分と4分、並行して撮影された。撮影の直後に佐藤副所長が現場の状況を報告した際、大森所長が「内容がよく分かるように編集してくれ」と指示したという。佐藤副所長は「空調ダクトが取れている部分などは刺激が強すぎるのでカットした方がいい」と判断し、1分間に編集した。
佐藤副所長から、ダクト部分などの削除の報告をうけ、編集後のテープを見た大森所長は「これでいい」と了承した。
また、福井県と敦賀市の立ち入り調査のビデオが公開された後の11日夕、動燃側は新たに4分間に編集し直したビデオを公開。佐藤副所長は「これで元のテープは出さなくていい」と撮影者らに口止めも指示していた。(朝日新聞 1995/12/22)

もんじゅ事故 運転日誌も修正 動燃公開 改ざんは否定
動力炉・核燃料開発事業団(動燃)は22日夜、ナトリウム漏えい事故を起こした高速増殖原型炉「もんじゅ」=福井県敦賀市=の運転日誌の一部を公開した。数個所修正が加えられたところがあり、動燃側は「決して改ざんしていない」と懸命に釈明しているが、これまでに相次ぐ事故隠しの事実があるだけに、疑惑がぬぐい切れないでいる。
公開されたのは、事故が発生した今月8日午後7時47分ごろから翌朝にかけての部分。修正されていた部分は、主要運転操作の時刻記入欄など4カ所。このうち、運転員の引き継ぎ依頼事項と引き継ぎ時の原子炉出力の記入個所は、横にきちんと2本線を引いた上に、当直責任者の印鑑が押してあった。
しかし、ナトリウム漏れを確認した後の、原子炉出力降下開始時刻(8日午後8時)など2カ所は、用紙の表面がナイフのような物で不自然に削り取られたうえ、「20:00」とボールペンで書き直された跡がはっきりと確認された。
動燃側は、この削り取られた2カ所について、通常の修正方法と異なっていることを認めたが、プラントの運転状況が記録されたコンピューターのデータ上も同じ時刻であることを示して、「コンピューターから直接打ち出されたデータは、故意による数値の訂正はまったくできない。だから2カ所のデータのつじつまは合っており、単に訂正しただけで、改ざんではない」と説明していた。(中日新聞 1995/12/22)

「もう危ない」と室外へ もんじゅ事故直後 生々しくビデオに
科学技術庁が22日、福井県敦賀市にある動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の高速増殖原型炉「もんじゅ」の建設所で押収した事故から6時間半後のビデオ映像には、ナトリウム化合物の白煙がたちこめ、雪のように降り積もっている1次系配管室の様子が克明に映っていた。漏えい個所の配管下に多量のたい積物がはっきりと確認でき、この段階で、動燃が事故の概要をつかんでいたことが裏付けられた。映像は現地のもんじゅ建設所などで22日午後、報道関係に公開された。
ビデオは9分30秒ほど。銀色の防護服やヘルメットに、空気ボンベを背負った重装備の職員数人が、漏えい個所を調べに行く姿を、家庭用の小型ビデオカメラでとらえている。
2人の職員が配管室の扉を開けて中に入ると白煙がたちこめ、視界は数メートル程度。通路には、白いぬるぬるとした劇物の水酸化ナトリウムなどの化合物が積もり、足跡がくっきりと残った。「シュー、シュー」とボンベの音がし、職員らは「すべるよ」と声をかけあって、そろりそろりと奥に向かって進んだ。
30−40メートル進んだところで、配管下の床にナトリウム化合物がたい積しているのを確認。「もう、危ないよ」という声が聞こえたあと、室外に出た。(朝日新聞 1995/12/23)

もんじゅ事故 動燃に「情報隠し」の体質
専門家、経験不足など指摘
高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故で、動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が「情報隠し」を重ねるなど、事故対応のまずさを露呈した。その背景には、設立時から持つ「国家戦略遂行機関」としての体質や、地元対応の経験不足などがあると指摘する専門家が多い。(新庄 直樹)

●国策組織

動燃は1967年、日本独自の新型原子炉の開発を目的に、原子燃料公社を吸収する形で設立された。
それまで日本の原子力研究を担ってきた日本原子力研究所(原研)では60年代前半、待遇改善などをめぐって労使が対立、ストライキが相次いで研究マヒ状態となったことから、「原研では高速増殖炉など、日本の将来に必要な原子炉の開発はとてもできない」とされ、動燃が産官学一体の組織として作られた。
高木仁三郎・原子力資料情報室代表は「動燃は、純粋な研究開発よりも、国家戦略として強力に事業を遂行する組織として作られた。この反動として、安全性や情報公開はないがしろにされてきた」と話す。

●経験不足

動燃がこれまでに建設した原子炉は茨城県大洗町の高速増殖実験炉「常陽」と、敦賀市にある新型転換炉原型炉「ふげん」「もんじゅ」の3基。
両県とも、すでに原研の研究所や日本原子力発電(原電)の原発などがあり、原子力には理解のある土地柄だった。
原子力政策に詳しい川上幸一・神奈川大名誉教授は「地をはうような努力で原発立地を進めてきた電力会社にくらべ、動燃は地元自治体や住民とのつきあい方が訓練されていない」と指摘する。
さらに、現在の原発のほとんどを占める軽水炉では、初期に配管割れなどのトラブルが相次いだ。このため、電力会社はトラブル時の広報や地元対応の経験を積んでいる。一方、動燃は原子炉での大きな事故は経験していなかった。
加えて、「住民の混乱を避けるため、よけいな情報は極力出さない」という原子力事業全般にある風潮、軍事転用の恐れのあるプルトニウムを扱う組織としての秘密保持の必要性などがあいまって、今回のような対応を生む土壌となったとみられる。(朝日新聞 1995/12/24)

もんじゅ事故 化合物、屋外に流出 大気中に拡散か
「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故で、2次系配管室内で発生したナトリウム化合物が屋外に排気された後、近くの吸気口からほかの部屋に入り込んでいたことが25日、科学技術庁の検査で明らかになった。科学技術庁は「周辺住民への健康面の影響はない」としているが、ナトリウム化合物が大気に出ていたことが確実になり、広範囲に広がった恐れもある。
今回の漏れ事故では、ナトリウム化合物が原子炉補助建物内の2割、約4000平方メートルに拡散した。これまでは部屋の扉のすき間や機器類を通す貴通部から広がったと見られていたが、大気にも出ていたことが確実になった。
科技庁の調べによると、2次系配管室で壊れた空調ダクトの穴から外部の大気に通じる補助建物屋上の排気口の鉄網状のスクリーンにかなりの量のナトリウム化合物が付いていた。約10メートル離れた別の部屋に通じる吸気口にも同じように付着していた。この吸気口は蒸気発生器室などにつながっており、蒸気発生器室でもかなりの量のナトリウム化合物を確認したという。
当時、外に出たナトリウム化合物は排気口から風速10メートルで吸気口まで運ばれ、広がっていったという。
動燃は事故前まで、もんじゅの2次系ナトリウムは漏れても、ある程度の密閉性を配管室に持たせているとしていた。事故時には空調を止める操作も遅れた。
科技庁原子炉規制課は「設計上の問題か運転員の対応の問題かは、今後、調べていく」と話している。(朝日新聞 1995/12/25)

もんじゅ 海外も注視 増殖炉の“先輩”厳しく
■予想通り危険な事故■計画中止求めよ
福井県敦賀市にある動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の高速増殖原型炉「もんじゅ」で起きたナトリウム漏れ事故は、海外でも関心を呼んでいる。
日本の反原発団体への問い合わせは日を追って増加。高速増殖炉開発を現在も続けている国は世界でも例がないことから、「すぐに運転を中止すべきだ」などの意見が少なくない。さらに、日本のプルトニウム政策そのものに対しても、疑問の目が向き始めている。
ドイツでは、テレビが10日夜(現地時間)のニュース番組で、新聞各紙は11日付朝刊で「重大事故」として大きく取り上げた。
フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング紙、南ドイツ新聞などは1面で扱った。
ドイツでは、もんじゅのモデルとなった高速増殖原型炉「SNR300」でナトリウム漏れが相次ぎ、安全性の問題から運転を断念している。このため、もんじゅ事故についての報道は「事故は予想どおり危険なものだった」「高速増殖炉開発に疑問を促す深刻な事故」と厳しい。
また、ベルリンに拠点を置く日独両国市民らによる反核団体「日独平和フォーラム」は、「ナトリウムが一度漏れると完全には除去できない。もんじゅは即刻スクラップにすべきだ」と緊急アピールを出した。
フォーラムの代表は「運転の再開は自殺行為だ。フランスの核実験に続き、日本のプルトニウム政策は世界の批判の的になる」と指摘した。
米国では、経済性と安全性を理由に、やはり開発を断念し、すでに撤退している。もんじゅの事故は12日付のニューヨーク・タイムズ紙など新聞数紙が報じた。
ワシントンにある核管理研究所(ポール・レーベンソール所長)は11日、「今こそ日本国民は、世界を危険にさらす増殖炉計画をやめるよう要求すべきだ」と声明を出した。
フランスは、国内に多数の原発がある。だが、ふだんから原発事故の報道は控えめだという。
もんじゅより一歩進んだ実証炉「スーパーフェニックス」は昨年、事故、トラブル続きで増殖炉として使うのをやめた。現在もトラブルで停止中だ。
リヨンを拠点に、ヨーロッパ約250の組織で作る「スーパーフェニックスに反対する欧州の会」の職員フィリップ・ブルッフさん(28)は「スーパーフェニックスは10年前に動き出したが、実際稼働したのは半年だけ。もんじゅもただちに運転をやめるべきだ」との意見だ。
スウェーデンのストックホルムを中心に、核に反対する約4000人の市民で作る「反核反戦市民団体」の国際担当エイア・リリグリーエンさん(60)は、「原発は危険過ぎる。あらゆる原発を閉鎖するべきだ」と話した。
韓国では13日、「環境運動協会」の十数人がソウルの日本大使館の前に集まり、「もんじゅはアジア破壊だ」「再起動をやめろ」と書いたプラカードを掲げて抗議のデモをした。(朝日新聞 1995/12/26)

「もんじゅ」温度検出器 強度試験 メーカー任せ
動燃『信頼してた』 専門家、安易すぎると批判

高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の温度検出器のさや管が折れた問題で、動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が検出器の強度検査を独自に行わず、メーカーまかせにしていたことが、8日明らかになった。動燃は昭和52年の臨界以来無事故の実験炉「常陽」(茨城県)でも同様構造の検出器を使用していたため、としているが、専門家からは「安易すぎる」との批判も上がっている。
温度検出器は、2種類の金属の電位差を利用して温度を検知する「熱電対」というセンサーをさや管に入れ、配管内のナトリウム温度を計測する。配管内に挿入した検出器は、より正確な温度差を測定するため、先端部を細くしている。
実際に原子炉が動き始めると、温度検出器は配管を覆う保温材などに隠れて直接検査できない。設計や製造段階でのチェックが重要だが、動燃は出来上がった製品を設計通りにできているかなどを確認するだけだったという。
これについて、動燃は「温度計は、18年間ナトリウム漏れを起こしていない『常陽』と同じ技術で作られている。振動は当然考慮されているはず。メーカーを信頼している」と説明。今回のくびれた部分の強度を独自に試験せず、メーカー任せにしていたことを認めた。
しかし、技術評論家の桜井淳氏は「常陽ともんじゅでは、配管の大きさや出力も異なり、経験があるといっても新たな評価をするのが当然」と動燃側の認識の甘さを批判。技術力についても「メーカーをうのみにするのは問題」と指摘している。
「もんじゅ」では温度検出器の損傷などの異常は、ナトリウム漏えい検出器を通して把握する方式だった。
だが結果的に今回のような大規模な漏えい事故に対応できなかった。
「火災に備えるため2次系も窒素で満たす配慮をするなど、基本的な設計の転換が必要」(桜井氏)と、システム自体の見直しが必要との声も上がっている。(中日新聞 1996/01/09)

「もんじゅ」設計・品質管理 分担企業に任せきり 動燃
ナトリウム漏れ事故を起こした動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)は、原子炉や1、2次冷却系など重要機器の設計を、分担した国内の原子炉メーカー4社に任せたままで、ナトリウム漏れにつながった温度計などの部品の品質管理もすべて担当メーカー任せだったことがわかった。動燃は施設全体の設計の妥当性を評価し、問題点を改善すべき役割を果たしておらず、福井県などは「企業間では技術、情報の交換が難しく、規格もばらばら」と指摘。国による設計、安全性チェックの体制不備もあらためて問われることになった。
もんじゅにかかわったメーカーは、三菱重工業、日立製作所、東芝、富士電機の4社。
動燃によると、各部分ごとに希望を募り、動燃が最適と決めたメーカーに設計と工事を発注した。この結果、原子炉容器と蒸気発生器は三菱、1次冷却系と過熱器は日立、2・3次冷却系やタービンは東芝、核燃料貯蔵槽などの取り扱い設備は富士電機が請け負った。このため、配管温度計も1次系は日立、2次系は東芝が担当し、規格などがそれぞれ違っている。(朝日新聞 1996/01/11)

もんじゅの温度計さや 運転100時間で折損も 振動にもろい構造
動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)のナトリウム漏れ事故で、先端が折れた温度計のさやは、100%出力時にナトリウムの流れによって生じる振動と共鳴して揺れが増幅し、金属疲労を起こしやすい構造だったことが12日、動燃大洗工学センター(茨城県大洗町)の分析でわかった。100%出力の場合、最悪だと100時間前後の運転、1億回の振動で折れる危険性があるとされ、「もんじゅ」ではすでにそれに相当する流速でナトリウムを長時間動かしていた。こうした分析は、事故前にはほとんどなされておらず、動燃や国のずさんなチェックが問題になりそうだ。
同センターは事故後、大型コンピューターを使って、ナトリウムの渦による振動で、温度計さやの先端部(長さ15.4センチ、直径1センチ)がどのように揺れるかを計算した。
その結果、さやそのものが持つ揺れやすい振動数は230−300ヘルツ(1ヘルツは1秒間に1振動)で、ナトリウムが秒速5メートルとなる100%出力時の場合、流れの中で自然に起きる「流体振動」は200−260ヘルツであることがわかった。
周期が似通ってくると、振動を増幅する「共振現象」が起きて揺れがいっそう強まり、強い力がかかる。
さらに、100%出力では、幅はあるものの最悪の場合、1億回の振動で大きな金属疲労が起き、さやの急に細くなる部分に強いひずみがかかって先端が折れやすくなることがコンピューターの解析で分かった。運転時間にすると、100時間前後で振動回数は1億回に達するという。
もんじゅではこれまで、40%を上回る出力試験はしていないが、1992年の循環ポンプ試験を中心に、100%出力に相当する流速でナトリウムを800−900時間循環させており、温度計さやの振動は1億回をゆうに超えていたという。
動燃はこれまで、温度計の振動試験を独自でしておらず、事故後の分析でこうしたデータをつかんだという。現在、メーカーがどのような分析をしたのかを問い合わせるなどの調査を進めている。(朝日新聞 1996/01/12)

もんじゅ事故 ビデオ隠し
動燃本社 管理職も関与 コピー持ち帰る

高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故で事故直後に現場を写したビデオが隠されていた問題をめぐって、動力炉・核燃料開発事業団(動燃)は12日、同社の現地幹部だけでなく本社の管理職ら数人も「ビデオ隠し」にかかわっていたことが社内調査で明らかになった、と発表した。事故当日の昨年12月8日に現地にいた本社の管理職が、翌日夜、このビデオのコピーを本社に持ち帰り、職員数人と一緒に見ていたという。動燃はこれまで、この不祥事は現地のもんじゅ建設所の幹部の指示でなされ、本社は存在を知らなかった、と説明していた。
ビデオは、事故から約6時間半後の12月9日午前2時5分ごろ、現地の職員5人が現場の2次冷却系配管室内で撮った。映像は約10分間で、床に積もったナトリウム化合物などが鮮明に、生々しく写っていた。その存在は約2週間隠され、12月22日になって初めて公開された。
動燃によると、当時、現地に出張中だった本社動力炉開発推進本部の坪田俊秀主幹が12月9日午後4時ごろ、ビデオのコピーを入手し、午後9時ごろ、本社に持ち帰った。同本部は「もんじゅ」の開発を受け持っており、坪田主幹はその場で職員数人とこのビデオを見たという。
これまでの調査で、見たと特定されたのは坪田主幹を含めて4人だが、全部で10人前後になる可能性もある、という。
だが、同月11日ごろ、当時、もんじゅ建設所副所長だった佐藤勲雄・東海事業所担当役から、同本部の職員に「ビデオをしまっておけ」と連絡が入った。このため、この職員はビデオを自分の引き出しにしまった、という。
事故後初の配管室の調査を指示したのは、もんじゅ建設所の当時所長だった大森康民・大洗工学センター担当役と佐藤担当役。2人はビデオ撮影を知っていたが存在を公開せず、調査を担当したプラント第2課の当時の課長とともに同月23日付で現職に異動になった。
一連のビデオ隠しでは、当時現地の最高責任者の理事(敦賀事務所)だった高橋忠男・技術参与も12月28日付で異動している。
動燃は、坪田主幹以外の幹部がかかわっていたかどうかについて、「いまの段階ではわからない」(安藤隆理事)としている。
一方、もんじゅ建設所が12月9日午後4時すぎに撮影した2巻、計約15分間のビデオの核心部分をカットし、1分間と4分間に編集して公開した問題についても、動燃は「現段階の調査では、本社がかかわったという事実は出てきていない」としている。

憤り表す言葉もない

栗田幸雄・福井県知事の話 驚きと憤りを表す言葉もない。極めて遺憾で悲しむべき事態だ。一連の対応に具体的な責任の所在が明らかにされないと、県民の信頼回復も、客観的な原因究明も図りえないものと、深く憂慮する。(朝日新聞 1996/01/13)

もんじゅナトリウム漏れ 配管保温材は設計外
業者が変更 動燃知らず

動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で、ナトリウムが漏れた温度計付近の2次冷却系配管を覆う保温材(6層構造)のうち3つの層で設計とは違う材料が使われていたことが18日、分かった。動燃は「施工業者が配管室の構造上、配管の太さを抑える必要があるとして薄い材料を使ったようだ。安全性に問題ない」としているが、科学技術庁の事故特別調査班の指摘まで知らず、メーカー任せの姿勢が改めて浮き彫りになった。
設計によると、保温材の材料は最も外側の6層目から4層目までと、配管に最も近い1層目がセラミックス質(耐熱温度1300度)で、2、3層目が岩石を溶かして繊維状にしたもの(同600度)。6層の厚さは計35センチ。
ところが、科技庁金属材料技術研究所の入江宏定室長の指摘で動燃が材料を調べたところ、6層目には設計とは異なる、2、3層目と同じ岩石の繊維状の材料が使われていた。さらに4、5層目も設計のセラミックス質とは違うガラス繊維などの布状の素材(同950度)が使われていた。
保温材はナトリウムの温度を均一に保つのと、ナトリウムが漏れた場合に大きな火災になるのを防ぐ役目がある。動燃は「設計どおりにすると、保温材が厚くなって配管を支えるつり棒と接触するため、施工業者が薄い素材に変えたようだ。これで保温材の厚さは30センチになったが、性能試験で安全性に問題のないことを確かめている」と説明した。
調査班の指摘まで知らなかった点については「この部分の工事は特殊な技術は必要ない」としている。(朝日新聞 1996/01/19)

旧ソ連原発で75年 大量の放射能漏れ ロシア環境安全委員長明かす
【モスクワ19日=西村陽一】旧ソ連のレニングラード原発1号機で1975年11月30日に、推定約150万キュリーの放射性物質が外部に放出される事故が起きていたことを、ロシア安全保障会議のヤブロコフ環境安全委員長が19日までに、朝日新聞記者に明らかにした。事故翌年、周辺地域では、新生児に染色体異常の急増が見られた。事故に関する情報は当時、公開されなかった。90年になってフィンランドの放射能防御センターが旧ソ連政府に照会していた。
ロシア原子力省のカウロフ広報官は、燃料集合体の内壁が焼けて穴があく故障が発生したことは認めたが、「深刻な事故ではなかった」としている。
しかし、ヤブロコフ委員長は、公式見解では「構造上の欠陥で技術系統が破損した」となっているが、複数の発電機が何らかの理由で故障し、その結果、燃料が過熱して、いくつかの燃料棒が破損、炉心の技術チャンネルの1つも破損した、と明かした。この後、水蒸気の爆発が起き、大量の放射性物質が放出されたと説明している。
レニングラード原発は、レニングラード(現サンクトペテルブルク)市街から約100キロ離れたフィンランド湾岸の森林地帯にある。10年前に大惨事を起こしたウクライナのチェルノブイリ原発と同型同出力のRBMK−1000(黒鉛減速軽水冷却炉)で、92年3月24日にも、3号機で、調整弁の損傷により圧力管への冷却水の供給が減少し、蒸気とともに放射性物質が漏れる事故が起きている。(朝日新聞 1996/01/20)

核再処理工場 建設費1兆7000億円に
当初の2倍 電事連発表 操業3年ほど遅れ
青森県六ケ所村に建設されている核燃料再処理工場の建設費は、設計変更で削減したが、それでも当初見積もりの2倍かかると、電力9社で組織する電気事業連合会(電事連)が23日、発表した。建設費削減の努力は続けるとしているが、将来の電気料金に跳ね返る恐れがある。同工場のプルトニウム生産量は減り、操業開始も2000年の予定から3年ほど遅れる見通しだ。
再処理工場の事業主体である日本原燃(青森市)の試算を了承する形で、建設費などを明らかにした。
工場本体の1兆6000億円に、高レベル放射性廃棄物の貯蔵施設を含めた総建設は約1兆7000億円になる見通し。当初は8400億円とされていた。民間初の再処理施設で研究開発費が膨らんだこと、耐震性、安全性を確保するための設備の増加、人件費や資材費の上昇などが理由という。
日本原燃はプルトニウムの精製工程を2系統から1系統に減らしたり、廃液処理、貯蔵施設を統合したりしたが、「安全性にかかわる部分は削減しなかったので、建設費の高騰は避けられなかった」という。
この工場で国内の原発の使用済み核燃料を再処理すると、発電量1キロワット時当たり1円強かかる。フランスに委託すると同75銭ほどで、国内での再処理は1.4倍も割高になることも明らかにした。
電事連では「海外委託に比べて割高になった分は電気料金収入の0.5%程度。電力9社の合理化努力で電気料金への跳ね返りを防ぎたい」としている。
2000年とされていた操業開始の時期が遅れる影響について、日本原燃は「プルトニウムの生産量が従来の計画より約14ドル少なくなる」と説明。核燃料の年間処理量も800トンとしていたのを、2003−6年までの4年間で1600トンと修正したので、プルトニウムの生産量がさらに少なくなる可能性が高い。

「建設費の増加、原子力では常」 原燃専務

青森県六ケ所村の核燃料再処理工場の建設費が当初計画の約2倍になったことについて、事業主体の日本原燃の高岡敬展専務は23日、科学技術庁で記者会見し、「建設費が基本設計時より増えるのは原子力の世界では常。これを見込んで事業指定許可申請すべきかもしれないが、そんなことをしているところはない。申請も後で変更するのが常だ」と述べた。(朝日新聞 1996/01/24)

核のゴミ 地下処分の研究本格化
深さ1000メートルに施設 腐食防止策など難題山積
原発などから出る高レベル放射性廃棄物を地下に埋める地層処分の研究が本格化してきた。海外からの返還が始まったが、2040年代には最終処分を始めるという国の計画は、「とても実現しそうにない」と言う専門家もいる。高速増殖原型炉「もんじゅ」の事故や再処理工場の設備縮小など、国の原子力政策の軸になる核燃料リサイクル計画の「輪」がほころぶ一方、「核のごみ」の後始末にも多くの難題が待ち構えている。
岐阜県の瑞浪市と土岐市にまたがる地区に、動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が「超深地層研究所」を建設する。地下約1000メートルと、世界で最も深いところにある研究施設という。
地元との協定で、放射性物質を使わず、高レベル廃棄物を地下に埋めたときに、周りの岩盤や地下水などとどう影響し合うかなどを調べる。
高レベル廃棄物は原発の使用済み核燃料を再処理すると出る。放射能が弱まるまでに数万年かかる物質も含まれ、それを漏らさず、長期間管理する技術開発が目的だ。同じような施設を北海道幌延町に造る計画は地元の反対で行き詰まっており、動燃は「これで欧米の研究と肩を並べられる」と期待する。
だが、地下深くで放射能が漏れないようにする技術の開発は難しい。
高レベル廃棄物をガラスと溶かして固めたガラス固化体にし、緩衝材(粘土)、オーバーパック(炭素鋼)などで覆う「多重バリアシステム」という処分方法が検討されている。
が、何万年もの間、緩衝材などが腐食や地下水の侵食に耐えられるか、よくわかっていない。
放射能がどう漏れ出すか、動燃がコンピューターでシミュレーションをしたら、「1000年後には腐食でオーバーパックに穴が開き、ガラス固化体が地下水と接触することがわかった。放射性物質が漏れだし、そのピークはセシウム135なら400年後、アメリシウム243では7万年後という。
これとは別に、オーバーパックなど金属の腐食の様子を古代の銅鐸(どうたく〕を使って調ベているが、せいぜい2000年ほどたった様子しかわからない。
また茨城県東海村に、地下深くの地下水の動きなどをシミュレーションできる試験施設を造ったが、「地層の複雑な変化をつかむには、おもちゃのような施設。いまの研究ペースでは、100年かかってもわからない」と専門家は指摘する。
科学技術庁や動燃では「超深地層研究所の地下の地質は花こう岩。性質の違うたい積岩の地質でも、同じような施設を造って試験をする」と話している。幌延町の地質はたい積岩だ。(朝日新聞 1996/01/24)

チェルノブイリ 30年後も汚染深刻
ベラルーシ 国土の14%と予測
【ミンスク(ベラルーシ)24日=石田勲】地球規模の放射能汚染を引き起こしたチェルノブイリ原発事故から30年後の2016年、被災したベラルーシでは国土の約14%がなお深刻な放射能汚染にさらされている、とする予測地図を、同国の水文気象委員会がまとめた。放射性物質セシウム137によるこれまでの汚染をもとに調べた。
世代を超えて人と大地をむしばみ続ける原発事故の恐ろしさを物誇る未来像だ。
同委員会は、1986年から93年にかけて、居住地区約2万5000カ所と森林、草原の地表付近から採った土壌試料約40万点が含むセシウム137を分析、半減期(30年)などから95年と2016年の汚染状況をはじき出した。
それによると、95年では、事故前の平均放射能の約20倍に相当する、1平方キロ当たり1キュリー以上の汚染地域が約4万5500平方キロに及び、全国土の約22%を占める。この地域に現在、人口の約2割に当たる約200万人が暮らしている。日本では、同レベルの汚染の可能性があれば、「放射線管理区域」として一般の立ち入りが禁止される。
2016年を予測すると、ゴメリ市周辺やチェルノブイリ原発に近いウクライナとの国境周辺では、1平方キロ当たり15キュリー以上の地域がなお残る。この汚染レベルは同国では、原則として住民の移住対象地域になっているという。同40キュリー以上の地域もある。1キュリー以上の汚染地域は、全国土の約14%に当たる2万8300平方キロにもなる。(朝日新聞 1996/01/25)

核再処理工場・施設、建設費2兆円に 設備費高騰、原燃が修正
電力業界の委託を受け、青森県六ケ所村で日本初の民間による核燃料再処理工場の建設を進めている日本原燃(本社・青森市)は31日、工場本体と、海外から返還が始まった高レベル放射性廃棄物の貯蔵施設を含めた建設費の総額は、2兆円前後にのぼる見通しだと発表した。電力会社の団体である電気事業連合会と原燃は1月下旬、約1兆7000億円とする見通しを示していたが、原燃が再度コストの内訳を洗い直して上方修正した。
再処理工場を中心とする建設費の総額は1986年に見積もられ、8400億円と公表されてきた。この時の内訳では、(1)再処理工場の土木・設備費が5700億円(2)工場建設にかかわる人件費や支払い利息などが1900億円(3)高レベル放射性廃棄物の貯蔵施設が800億円だった。
コストの高騰が明確になったのは(1)の部分で、5700億円から1兆6000億円と、3倍近くに跳ね上がった。増額分の半分近くが物価上昇によるというが、発表した原燃の野澤清志社長は、メーカーや建設業者への発注に競争原理を十分導入しなかったことも、高騰の原因として認めた。
合計すると2兆円を超える見込み。日本原燃は、(1)と(2)を合わせた工場本体のみの費用を4月ごろに改めて発表する。(朝日新聞 1996/02/01)

米の核兵器施設 放射能汚染浄化に42兆円
開発費用の1.5倍以上
【ワシントン3日共同】米国の核兵器開発に使われた施設での放射能汚染浄化に必要な費用はこれまでの試算を大幅に上回り、今後75年間に最大3900億ドル(約42兆円)に達するとの試算をホワイトハウスがまとめていることが分かった。
米エネルギー省筋が3日までに共同通信に明らかにした。米国が核兵器開発に費やした総予算は二千数百億ドルといわれるが、今回の試算額はこれを大幅に上回る。
同筋によると、3900億ドルの約半分は廃棄物の管理費用。環境回復が約3割で、ほかに技術開発費用や施設の安全維持費など。(中日新聞 1996/02/04)

もんじゅの事故原因 金属疲労と断定 科技庁調査班
高速増殖原型炉「もんじゅ」の事故原因について、科学技術庁の事故特別調査班は21日、ナトリウムの流れでできた渦による振動で、温度計のさやが金属疲労を起こして亀裂が入り、これが広がって破断したと断定した。さやが揺れやすい振動数(固有振動数)と、渦の振動数が極めて近かったため、激しく揺れる「共振現象」が起こったと推定している。こうした共振は、事前の解析では予測していなかった。温度計の構造にも揺れによる力が集中しやすい欠陥があったため、短期間で破断したとみられる。
動燃や温度計を設計した東芝、科技庁金属材料技術研究所などの実験や解析で、金属疲労が原因と結論づけた。
動燃によると、渦による振動は、ナトリウムの流れが秒速3メートルを超えると目立ち始め、同5−6メートルでは共振することがわかった。この流速は、出力60−100%での運転時に相当するという。
動燃は1992年5月から8月の間に計約720時間、出力100%を模擬して、事故のあった配管にナトリウムを流す試験をしており、同調査班はこの試験中に亀裂が入ったと断定した。(朝日新聞 1996/03/22)

「危険な原発に“もんじゅ”とは!」 仏教徒ら改名求める
危険な原発に菩薩(ぼさつ)名を付けるのは、罰当たりだ──。ナトリウム漏れ事故を起こした動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の改名を求める署名運動に、仏教関係者が立ち上がった。
オウム真理教事件への対応が鈍かったとされる仏教界のマイナスイメージをぬぐい去りたい、という願いを込めた運動だが、思わぬ提案に動燃側も戸惑っている。
署名を始めたのは宗派を超えて布教活動に取り組んでいる「南無の会」(事務局・東京都大田区、松原泰道会長)。
同会によると、仏教を悪用したオウム真理教の一連の事件について、キリスト教などは積極的に問題点を指摘し、被害者や脱会者の支援に当たったのに対し、仏教界は動きが鈍かった。
そんな中、仏教で知恵を象徴する菩薩の名を与えられた「もんじゅ」で昨年12月、ナトリウム漏れ事故が起き、動燃の事故隠しも明らかに。「仏教は誤ったイメージを持たれ、埋もれてしまう。今こそ行動し、社会に提言していかなければ」と危機感を持ち、慈悲の菩薩名を持つ動燃の新型転換原型炉「ふげん」(敦賀市)を含め、改名を呼び掛けることにした。
同会は、機関紙を通じて署名を呼び掛け、改名を求める市民の集いを結成。集いの発起人には、作家の永六輔さん、立松和平さん、大学数授らさまざまな分野から100人以上が集まった。
地元の福井県でも、この話を知った中島弥昌県議会議長らが、同県を訪れた中川秀直科学技術庁長官に「ふさわしくない菩薩名をやめて科学的な名前に変えたら」と詰めよる場面もあったが、中川長官ははっきりと返答することは出来なかった。
動燃によると、「もんじゅ」と「ふげん」は、知恵と慈悲で巨獣を制御している両菩薩にあやかり、原子力も同様にコントロールできるようにとの願いから命名。菊池三郎・もんじゅ建設所長は「謙虚な気持ちで使っており、署名が集まっても改名の予定はない」という。
最初に改名を呼び掛けた機関紙の前田利勝編集長は「ただ、名前を変えさせればいいというのではなく、運動を通して、原発の安全性やエネルギー問題について広く考えるきっかけにしていきたい」と張り切っている。(三国通信部・沢田一朗)(中日新聞 1996/03/24)

英の小島でがん多発 チェルノブイリ原発が原因か
【ロンドン31日共同】31日付の英日曜紙インディペンデント・オン・サンデーは、スコットランドの島で過去1年半の間にがんが他の一般地域の3倍を上回る率で発生、1986年4月に起きた旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と関連がありそうだ、と報じた。
同紙によると、この島はスコットランドの北西にあるへブリディーズ諸島のベンべキューラ島。チェルノブイリ原発事故の翌月、放射性物質を含んだ雲が同島地域一帯を通過、2日間にわたって激しい雨が降った。この際、放射性物質が地中に染み込んだ可能性があるという。
同島の医師シニア博士によると、人口1800人の島で94年末以来、19人の新たながん患者が報告されており、同博士は「(同島の規模では)通常、6人程度の患者が予想されるので、3倍以上の発生率」と述べている。
患者の多くは農業に従事する40−50代の男性で、大半が消化管のがんを患い、肺腫瘍(しゅよう)の例も見られるという。
医師らは、放射性物質に汚染された野菜、羊やシカの肉、海産物を長年食べたのが原因ではないかと疑っており、本格的な調査の必要性を訴えている。(中日新聞 1996/04/01)

チェルノブイリ原発 10−20年で放射能流出?
埋設廃棄物から川に
【ウィーン2日共同】史上最悪の事故を起こしたチェルノブイリ原発(ウクライナ)の敷地内外にある放射性廃棄物を埋めた穴から、今後10−20年で近くを流れるプリピャチ川に放射能が流れ出す恐れが強いことが2日までに、経済協力開発機構(OECD)の報告書で明らかになった。
同原発など旧ソ連製原発の安全性を討議する国際会議が1日ウィーンで始まったが、原発自体だけでなく、周辺環境の安全性も論議の大きな焦点になりそうだ。
流れ出す恐れがある放射能はストロンチウム90。人体に入ると骨髄などに集まり長期にわたって造血器官を侵す性質があり、同報告書は厳重な監視と安全な廃棄物処分の必要性を指摘している。
問題の穴は事故後、緊急に掘られ、放射能で汚染された原発周辺の約8平方キロの土壌や樹木、草をブルドーザーで集めて埋設した。記録が不十分で正確な数は不明だが総計600−800カ所あるという。
これまでの調査では、対象とした43カ所の穴のうち32カ所が水に浸った状態になっており、周辺のいたるところの水から1リットル中4ベクトルを超すストロンチウム90が検出された。
埋設された汚染土壌には、プルトニウムやセシウム137も含まれているが、これらの放射能は地中の移動速度が遅いため、穴のごく近くにとどまっている。
ところが、ストロンチウムは移動速度が大きく、同報告書は一部の穴からは10−20年でプリピャチ川に流れ出す、と予測。下流域の飲料水が汚染される可能性を指摘している。(中日新聞 1996/04/03)

放射能の影 いまも 死者や子供の病気増加
チェルノブイリ事故で疎開の人々を再訪
1986年のチェルノブイリ原発事故によって住み慣れた村を追われ、疎開した人たちが住むキエフ郊外の村を6年ぶりに再訪した。死者や子どもの病気が多く、10年たっても放射能の影から逃れられない。豊かだった故郷への思いは消えないが、新しい希望も芽生えつつあった。(ウクライナ・キエフ=竹内 敬二)

電話の故障で連絡がとれず、突然訪問した。庭仕事をしていたスベトラーナ(47)は、手を広げて驚きながら家に招き入れてくれた。キエフ南郊40キロ。国営農場の片隅に同じ形の家が約110戸並ぶ。原発の西40キロにあったボロービチ村から疎開してきた人たちの村だ。原発事故から半月後に強制疎開になり、8月にここに来た。
スベトラーナはここの村ソビエト(議会)の議長をしている。明るい行動的な女性だ。
「きのうも54歳の男性の葬式でした」。10年間の最大の変化は人口の激減だ。疎開時には約360人がいたが、今は235人になった。100人以上が亡くなった。村はずれに新しい墓標が並ぶ。20歳の男性の墓石には「あなたを決して忘れません」という恋人の詩が刻んであった。乳児を残して血液の病気で死んだ21歳の女性もいた。
スベトラーナの夫で医師のユーラ(36)は「血液と心臓の病気が多く、20歳から50歳代の死が目立つ」と話す。「被ばくした子どもの健康状態が悪く、甲状腺(せん)肥大や免疫の低下など、全員に問題がある」。新しい村での誕生は約20人だけだ。健康の心配からあまり子どもを産みたがらないという。
健康の悪化の背景には、生活レベルの低下もあるようだ。この10年でソ連邦が崩壊し、経済危機がきた。近所のオリガ(65)は、「あの事故さえなければボロービチに住んでいたのに」と繰り返す。イチゴやコケモモ、キノコの豊かな森への郷愁は強い。(敬称略)(朝日新聞 1996/04/08)

事故の放射能が甲状腺がん原因 チェルノブイリ専門委が断定
【ウィーン10日共同】チェルノブイリ原発事故の汚染地域に住む子供の間に発生した小児甲状腺(せん)がんは1986年4月の事故以来659人に上り「事故の放射能以外の原因は考えられない」とする論文を、事故10周年国際会議の専門家委員会がまとめ10日、報告した。
事故後増え続ける小児甲状腺がんは昨年11月の世界保健機関(WHO)の会議でも「被ばくと関係している」とされたが、一部には検査態勢の強化で発見数が増えただけなどの異論もあった。
今回の報告は、放射能以外の可能性をすべて否定しており、チェルノブイリ周辺の小児甲状腺がんの増加原因をめぐる論争に終止符を打つものといえる。
報告によると、事故以来の小児甲状腺がんの発生数(15歳以下)は、ベラルーシで424人(95年まで)、ウクライナ211人(94年まで)、ロシア24人(同)の計659人。
ベラルーシ、ウクライナとも事故の4年後から急に増え始めた。特にベラルーシでは昨年だけで91人の患者が発生、15歳以下の人口100万人当たりの年間患者発生数は38人と、英国(0.5人)の76倍に上った。(朝日新聞 1996/04/11)

放出放射能、推計の3倍 甲状腺がんの原因物質は6−7倍
汚染データを再計算 チェルノブイリ原発事故 OECD報告
【ウィーン10日=竹内敬二】10年前のチェルノブイリ原発事故で放出された放射能は、旧ソ連が事故直後に行った推計より3倍も多く、総計で約11エクサベクレル(エクサは10億の10億倍)に及ぶことが分かった。経済協力開発機構(OECD)がウィーンで開催中の国際会議「チェルノブイリ後の10年」に提出した報告書で明らかにした。
最新推計では、希ガスのキセノンが約6.5エクサベクレル、ヨウ素やセシウム、プルトニウムなど健康に大きな影響を及ぼす種類が約4.4エクサベクレルの計約11エクサベクレル(約3億キュリー)となっている。これでもまだ誤差は大きいとされている。
事故直後、旧ソ連は自国内の汚染データなどからの推計で、キセノンなどが約5000万キュリー、その他が約5000万キュリーの計約1億キュリーが放出されたと発表していた。しかし、欧州各国の汚染データなどを考慮し再計算したところ、さらに大きな値となった。
甲状腺(せん)がんを起こすヨウ素131は当初推計の6−7倍である約1.8エクサベクレルとなっている。チェルノブイリ事故では屋根が吹き飛んで炉心が大気にさらされ、高熱による上昇気流で1週間、大量の放射能の放出が続いた。(朝日新聞 1996/04/11)

チェルノブイリ10年 汚染の大地に「沈黙の春」
ネズミ・シカ…数は増えたが
体内に放射能蓄積 免疫や繁殖力低下
10年前のチェルノブイリ原発事故で「汚染大地」となり、ほぼ無人化した原発から30キロ圏内で、ネズミやシカなど野生動物が増えている。しかし、動物によっては免疫力や繁殖力が低下するなど、放射能の影響が不気昧に広がっている。原発のあるウクライナや隣国ベラルーシでの研究で、こんな実態が明らかになってきた。(ウィーン=竹内 敬二)

ウクライナのシュマルハウゼン動物学研究所によると、1986年4月の事故直後にはネズミが大発生、翌年秋には、1ヘクタールに2500匹と事故前の50倍もいた村もあった。穀物が置き去りにされたためだ。ネズミなどをねらうタカやトビなども多く飛来したが、ネズミは数が増えすぎ、穀物も底をついたため激減。いまは事故前の1.5−2倍に落ち着いている。
住民が疎開して生息地が広がり、狩猟もなくなったので、大型獣も増えた。いまは事故前に比べてイノシシは8−10倍、シカも5−6倍になった。オオカミも増え、ヤマネコなど希少種も確認されている。鳥類も春と秋の渡りの季節には大量に立ち寄るなど、確実に増えた。
こうした野生動物に放射能が蓄積、濃縮されていると、ベラルーシの動物学研究所のグループが先週、ウィーンで開かれた国際会議で報告した。
自然界の食物連鎖で動物性プランクトンに蓄積された放射能は1キロ当たり最高3400ベクレルだったが、魚類では同3万1000ベクレル。食物連鎖の上位にいるイノシシでは同40万ベクレル以上で、食用にする場合の基準の300倍を超す。キツネやシカも高いという。
シュマルハウゼン動物学研究所のガイツェンコさんらがカモなどのヒナを調べたら、87年には飛べるまで生きたのは約15%だった。90年には約30%になり、それ以後も回復しているが、まだ事故前の60−80%よりは低い。
卵の殻に蓄積された放射性ストロンチウムが原因らしい。放射能は分裂中の細胞をとくに傷つける。ストロンチウムの化学的性質はカルシウムと似ているので、殻の中に蓄積、濃縮されやすく、細胞が分裂・成長を続ける間、影響を与え続けたとみられる。
60年代以降、殺虫剤などの塩素が鳥の細胞や卵の殻に蓄積、繁殖力を低下させることが問題になった。「沈黙の春」といわれた、この現象と似ている。
ネズミは増えたが、一度に産む子供はふつう6−8匹なのに30キロ圏内では4匹ほど。体も15%ほど小さめで、皮膚の免疫力は被ばく量が多いほど落ちていた。
ガイツェンコさんは「30キロ圏内は動物の楽園になったようにみえるが、深刻な事態が進行している」と言う。(朝日新聞 1996/04/17)

ウクライナ 47万人が被害者登録 チェルノブイリ事故で
【モスクワ23日=共同】ウクライナ保健省は22日、インタファクス通信に対し、同国民の47万4095人が10年前のチェルノブイリ原子力発電所の事故の被害者として登録されていることを明らかにした。
特に影響を受けたのは成長期の子供たちで、事故発生から昨年までの調査で、15歳までの子供256人が甲状腺(せん)がんの患者として登録された。
このほか、神経や消化器、呼吸器系の疾患なども急増、子供の死亡率が上昇したという。
チェルノブイリ原発事故は、隣国のベラルーシやロシアにも被害をもたらし、ウクライナと同様に子供の甲状腺がんの多発が報告されている。
また、ウクライナ保安局によると、ウクライナの全人口約5200万人のうち約1割にあたる500万人以上が事故による放射線の影響を受けたとしている。(朝日新聞 1996/04/23)

チェルノブイリ事故 高放射能粒子の7割地表付近に
ベラルーシ大調査
チェルノブイリ原発事故で大量に放出された強い放射能をもつ微粒子「ホットパーティクル」が10年後の今も、地中に沈まず70%が地表から3センチ以内にあることが、ミンスクにあるベラルーシ国立大学の調査で分かった。こうした微粒子は、地中では少しずつ分解して植物の根から入りやすい、より小さな微粒子を作っている。また呼吸で肺に入った後は、分解して体内に侵入、蓄積するなど、さまざまなルートで健康への脅威となっている。
原発事故で降った放射性物質のうち1粒で強い放射能をもつものがホットパーティクル(高放射能粒子)。ベラルーシの高濃度汚染地では、放射能の4割が高放射能粒子による。とくに核燃料自体が高温で溶けてできた粒はプルトニウムなどを多く含み、放射能も強い。
ベラルーシ国立大の放射線化学研究者ペトリャエフ教授やレイノワ研究員らによると、高放射能粒子は土などの粒子と結びつき、地中には沈まず、今も70%が表層から3センチ以内、ほぼ100%が10センチ以内にある。「事故直後と同じ。驚くほど小さな移動しかしない」(レイノワ研究員)という。
粒子は次第に地中の物質と反応し、分解してより小さな粒になる。事故直後には直径が0.1ミリ、1000ベクレルの放射能を持つ粒子もあった。この1粒が1リットルのミルク中にあれば、現在のベラルーシの許容基準の約9倍になる。現在は大きなものでも0.01ミリ程度、100ベクレル以下になった。
植物の根がこの粒子を丸ごと吸い込むのは難しいが、小さくなれば根から入りやすく、食物汚染の基を供給し続けている格好だ。(朝日新聞 1996/04/24)

チェルノブイリ原発近く 子供の遺伝子に多い突然変異
放射線が原因 初めて確認 英誌に掲載
【ロンドン25日高島良樹】チェルノブイリ原発の近くで生まれた子供は遺伝子に突然変異を起こしている確率が高い、との研究結果が24日、ロンドンで発表された。英科学誌「ネイチャー」最新号に掲載される。
研究をまとめたのは、英国レスタ一大学の遺伝子学の権威、アレック・ジェフリー卿で「放射線が遺伝子の突然変異の原因であることが確認されたのは初めて」としている。
同原発の事故で重大な影響を受けたベラルーシの汚染地域に事故後も住んでいる79家族を対象に、両親と、1994年2月から9月までの間に生まれた子供の血液を採取し、遺伝子を調べた。
一方、同原発事故とはまったく関係ない英国の家族105組を選んで、同様の調査し、両グループを比較した。その結果、ベラルーシの子供には、英国の約2倍の遺伝子突然変異が見られた。
この変化は、遺伝子情報として組み込まれ、次世代に引き継がれていく、と同卿は話している。(中日新聞 1996/04/26)

回復なお遠い 汚染の大地 チェルノブイリ
固定化進むセシウム ストロンチウムは流動化
半永久的に使えぬ農地も
チェルノブイリ原発事故は、放射能による汚染食品でいまも深刻な健康被害を起こしているが、飛び散った放射性物質のセシウム137は土の中で鉱物類と結合し、植物に吸い上げられる量が事故直後の一割程度にまで減っていることが、ベラルーシ放射線植物研究所(本部・ゴメリ)の研究で分かった。その一方で、同じ放射性物質のストロンチウム90は水に溶けだして植物が吸い上げやすくなっていた。このため、同研究所のフィルサコバ所長は「セシウムによる汚染食品がなくなるだけでも、あと2、30年が必要」と分析している。
事故が起きた時、放射性物質は軽い物ほど遠くまで拡散、セシウムはベラルーシの国土の23%に当たる地域を汚染した。同研究所は、この汚染地で地表から1メートルほどまでの土壌を定期的に採取、1−5センチの厚さごとに放射性物質の割合や移動状況を調べた。
この結果、地中に残るセシウムの7−9割は地表から5センチ以内に集中していることが分かった。この地層は野菜や牧草、キノコなどの根が最も活発に活動するため、放射性物質も高濃度に吸い上げる。1994年にべラルーシ保健省が、個人農家が生産したミルクを検査したところ、そのサンプル約3万4000点のうち約1割が汚染限度の基準値を超え、キノコ、木イチゴなど森の産物は8割が基準を大幅に上回っていた。
その一方で、事故から時間がたつにつれて、セシウムは土の中の鉱物類と結合し、植物が吸い上げにくくなってきていることも分かった。地質によって差はあるが、セシウムはほとんどの地点で約9割が土の中で固定化され、植物に吸い上げられている量は、土の中のセシウム全体の1%以下と推定された。このため、牧草などの植物の中の溝度も事故直後の10分の1にまで減っていた。
しかし、国土の約1割を汚染しているストロンチウムは8割が土の中で自由に移動、一部は水に溶け出してイオン状態になっているため、植物の根が吸い上げやすくなっていた。
フィルサコバ所長は、「地域によっては、事故から3、4年でセシウムが完全に固定化され、汚染食品が激減している。しかし、ストロンチウムやプルトニウムの汚染地は農耕地としては半永久的に利用できないだろう」と指摘している。(朝日新聞 1996/05/01)

もんじゅ事故再現 厚さ6ミリ床の鉄板に穴
科技庁、誘爆の危険 認める
高速増殖原型炉もんじゅのナトリウム漏れ事故の再現実験で、コンクリートの床に敷いた鉄板に穴があき、ナトリウムが貫通していたことが10日、科学技術庁と動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の調べで分かった。実際の事故では穴はあいていないが、今回の実験結果は、より深刻な事態を引き起こす恐れもあったことを示しており、国の安全審査基準も見直しが迫られそうだ。
実験は7日、茨城県の動燃大洗工学センターで実施された。実験室内のナトリウム化合物の飛沫(ひまつ)が収まった10日、同庁特別作業班と動燃が内部を調べたところ、約6ミリの厚さの鉄板に、直径10−20センチの穴が3つできていることが分かった。
この実験は、もんじゅと同じ材料を使って事故を再現。鉄板部分の温度は最高921度まで上昇した。鉄の融点である約1500度には達していないので「ナトリウムと鉄と酸素の化学反応で溶けたのでは」と動燃は推測している。
ところが、安全審査基準では、ナトリウム漏れで鉄板が化学反応を起こす可能性は考えられていない。
液体ナトリウムが水分を含んだコンクリートと直接、接触すると水素が発生し、爆発を起こす危険性があり、科技庁も重大な事故に発展しかねなかったことを認めている。
しかし、科技庁は、実験時間が長かった上、漏えい部の下に温度測定と試料採取のための枠を設けたためにナトリウムが飛び散って床の近くで激しい火災を起こしたなどから、実際のもんじゅ事故より厳しい条件だったと説明。「すぐに鉄板がダメということにはならない。さらに検討が必要だ」としている。
今後、小規模な実験でナトリウムと鉄でどんな反応が起きるのかを検証し、必要なら今回が最後としていた実験を再開することも検討するという。

『予想外の化学反応』 技術の未熟さ浮き彫り

高速増殖原型炉もんじゅ事故を再現したはずの動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の実験で床の鉄板に穴があいたことは、もんじゅの技術者や科学技術庁にとって、事故そのものにも増して衝撃的な結果だ。決まり文句のように繰り返してきた「外部に影響のあるような事故ではなかった」という事故評価が覆りかねないからだ。
乾いたコンクリートに含まれる水分とナトリウムが反応すると、水の中の酸素が消費され水素が発生する。発生と同時に燃えてしまえばよいが、たまって爆発するのがこわい。
だが、もんじゅの安全審査ではナトリウムが直接コンクリートと接するのを遮るため鉄板を床に敷いており、こうした事態は起こり得ないとされていた。穴があいたことは安全確保の前提が崩れたことになる。
実験では水素は検出されなかったが、万一、ナトリウムが液体のまま流れ込めば、水素発生の恐れは十分あった。
同庁の武山謙一原子炉規制課長は「実験は実際のもんじゅ事故より厳しい条件だった」と説明したが、今回の実験はまさにもんじゅで何が起きたのかを再現するのが目的。同課長が「鉄がナトリウムとの化学反応で溶けることは安全審査で考慮していなかった」と認めたように、こうした反応は全く想定外で、もんじゅで起きなかったことの方が幸運だった可能性がぬぐえない。また、もんじゅ建設前の実験でこうした可能性を予見できなかったことは、技術の未熟さを浮き彫りにした。今後は「大事故につながりかねなかった事故」と認識した上での原因究明が必要になるだろう。

事故は不幸中の幸い

福井県原子力安全対策課の話 今回の動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターでの実験で、床の鉄板の裏側の温度がなぜ、こんな(セ氏921度)に上がったかも含め、さまざまなナトリウムの漏えい形態を考慮して安全評価をやり直すことが必要だ。床の破損に対する評価が不足していたのかもしれず、事故は「不幸中の幸い」と言わざるを得ない。(中日新聞 1996/06/11)

過疎地に原発…事故への備え!?
「集団被ばくを減らすため」 原子力委委員長代理
「(原発の)大事故時に、人口集団の放射線被ばく量を少なくするため」──国の原子力委員会が24日、都内で開いた原子力政策円卓会議で伊原義徳・委員長代理は、原発が過疎地に立地されている理由を聞かれ、こう説明した。原発反対グループの変化球質問に、「つい本音が出てしまった」との見方も。
会議は、高速増殖原型炉「もんじゅ」事故で高まった国民の不信感を払しょくするのが狙い。4月から開かれており、5回目のこの日は「原子力は安全か?安心か?」と題し、大学教授ら10人が意見を述べた。
そのひとり、福井県の「高速増殖炉など建設に反対す敦賀市民の会」の吉村清代表委員(71)が、原子炉立地審査指針の条件に「低人口地帯」とあるのを取り上げ、「安全なら東京につくっては」。
伊原さんはいったん「(低人口地帯は土地代が安いから」などと話したものの、吉村さんは収まらず、「人をくったような発言はやめていただきたい」と重ねて答えを求めた。
「(原発は)大きな事故を起こす可能性がゼロではない。その時に受ける人口集団の放射線量をできるだけ低くする。それが一番重要なことで、そのために過疎地に立地する」と伊原さん。東京につくらないのは「地盤が悪いからだ」と述べた。(朝日新聞 1996/06/25)

もんじゅ事故再現実験で水素検出
コンクリートと反応か 想定外、安全に疑問
動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が実施した高速増殖原型炉もんじゅの事故再現実験で床の鉄板に穴があいた問題で、漏れたナトリウムが床下のコンクリートと反応して発生したとみられる水素が検出されていたことが28日までの調べで分かった。
ナトリウムがコンクリートに触れると水素が発生、濃度が一定以上になるなどの条件が重なれば爆発を起こす恐れがあることが知られているため、もんじゅでは仮に漏えいがあってもコンクリートに直接触れないことが安全確保の大前提だった。
鉄板の穴も想定外とされていたが、さらに水素の検出で、動燃などが主張する多重防護の前提が崩れたことになり、安全審査の在り方が根本から見直しを迫られそうだ。
実験では開始から3時間30分後に床下の温度が測れなくなっていることから、開始約3時間20分後にナトリウムや酸素と反応して鉄板に穴があき、床下のコンクリート上に高温のナトリウムが入り込んで温度計が壊れたとみられる。
実験後、水素検出器のデータを調べたところ、穴があいたのとほぼ同時刻に、実験施設内の水素濃度が0.17%と、直前の0.04%から急に上がったことが分かった。
動燃は、穴から漏れたナトリウムがコンクリートと触れ、反応を起こしたのではないかとしているが、床下部分では水素がさらに高い濃度になっていた可能性もあるという。
また、鉄板には大小6つの穴が見つかった。大きいものは縦22センチ、横28センチあり、その周辺には茶褐色の化合物がただれたように付着していた。ナトリウムと酸素、水分、鉄の化合物とみられるが、動燃は民間の研究所に分析を委託、成分の特定を急ぐ。分析には約2カ月かかる見通しだ。実験は今月7日、動燃大洗工学センター(茨城県大洗町)の試験施設で実施した。(中日新聞 1996/06/29)

ナトリウム外部放出 事故時 換気ダクト通じ200キロ
高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の昨年12月のナトリウム漏れ事故で、換気ダクトを通して約200キロのナトリウムが外部に放出されていたことが、2日までの動燃の調べで分かった。
動燃は1日、ナトリウムが漏れた2次系配管室をはじめ原子炉補助建屋内の床や壁、機器類の表面に残ったナトリウムの回収・除去作業を昨年12月の事故直後から、約半年ぶりに終えた。回収されたナトリウム化合物の量は約803キロで反応前の純粋なナトリウムでは約467キロに相当する。動燃は、回収が難しい換気ダクト内部にも約20キロの化合物が残っているとみている。
事故で漏れたナトリウムの総量について、科技庁は事故報告書で約700キロと推定しており、回収したナトリウムとの差のうち200キロ前後が換気ダクトを通じて外へ放出された、と判断した。事故再現実験による1秒当たりの漏えい量(50グラム)と換気ダクトの推定運転時間(約1時間)からも裏付けられる、という。
空気中に出たナトリウムは空気と反応して酸化ナトリウム、水酸化ナトリウムになった後、二酸化炭素に触れて炭酸水素ナトリウム(重曹)になるため、動燃は、ナトリウムの外部放出による環境への影響はない、と説明している。(中日新聞 1996/07/03)

米軍基地で放射能漏れ 38年前、ロンドン西郊 英紙報道
【ロンドン14日高島良樹】英国内の米軍基地で38年前、放射能漏れがあったことが明らかになった、と14日付の英紙サンデー・テレグラフが報じた。同紙報道は、英国の反核団体「核軍縮運動」(CND)が入手した英国防省の極秘の報告書に基づくもの。
それによると、事故が起きたのは1958年、ロンドン西郊のグリーナムコモン空軍基地(現在は閉鎖)で、飛行中のB47爆撃機がエンジントラブルを起こし、燃料タンクを投棄した。このタンクが、同基地に駐機中だった別のB47爆撃機の近くに落下したため、同機が火災を起こし、2人が死亡、火災は4日聞くすぶり続けた。
英国防省や米空軍は当時、火災を起こした爆撃機が核兵器を搭載していたことを強く否定した。しかし3年後、英政府が派遣した科学者の調査で、同空軍から約16キロ離れた地点で、通常の100倍もの放射能を観測した。科学者らは汚染の唯一の可能性として、事故を起こした米軍爆撃機が核兵器を搭載しており、火災でウランとプルトニウムの粉末が漏れたと結論付けた。
CNDは、こうした結論を導いている極秘の報告書を入手。「この事実は英米両当局にもみ消された」と主張している。今回の報道は人口約11万人の基地周辺地区で、子供の白血病が多発している事実に再度、光を当てることになるとみられている。(中日新聞 1996/07/15)

仏の再処理工場周辺で高濃度の核汚染 仏の学者が講演
使用済み核燃料の再処理をしているフランス北西部ラ・アーグ核燃料再処理工場周辺の河川で、放射性物質のトリチウムが、一般環境の約700倍、セシウム137が約160倍の高濃度で検出された──。来日中のフランス・カン大学準教授の物理学者で、民間の研究機関「西部放射能監視協会」(ACRO)代表のダビッド・ボワイエさん(30)が29日、北九州市内でこんな講演をした。核燃料再処理工場の建設が進む青森県六ヶ所村についても、「放射能汚染が日本でも広がらないといいのだが」との懸念を述べた。
ACROなどによると、ラ・アーグ工場は1966年に操業を始め、現在は年間1600トンの使用済み核燃料を処理する。6カ国30社と計9000トンの再処理委託契約を結び、うち約2900トン分が日本との契約という。
93年12月から95年1月にかけ実施した調査では、エ場周辺を流れるサントエレヌ川の水から放射性物質のトリチウムを1リットルあたり最高約700ベクレル検出した。フランス国内の一般環境で検出される値の約700倍にあたる。川底の堆積(たいせき)物からは、放射性物質のセシウム137を、1キロあたり最高約1600ベクレルを検出した。一般環境での値の160倍にあたる。
また、25歳以下のがんに関する診療記録を分析した結果によると、工場から10キロ以内での発症率は、人数あたり国内で平均とされる発症数1.4人に対し2.8倍の4人を記録したという。(朝日新聞 1996/08/30)

原発建設『人口密集地やはり問題』 中電常務が発言
中部電力の竹内榮次常務は17日、同社で行われた報道関係者との懇談会の席上、原子力発電所が都会でなく地方に集中する理由として「もしもの場合、被爆の問題を考えると、人口密集地に建てるのはやはり問題がある」と発言した。
懇談会は、最近の原子力情勢について意見を交わすため、同社原発責任者のひとりである竹内常務を囲む形で中電の呼び掛けで開催。はじめに竹内常務が、全般的な原子力問題を紹介したあと、質問に答えた。この中で、「なぜ原発を都会につくらないのか」との質問に答える形で、「冷却水の確保のため海の近くが良い」といった理由に加え、冒頭の発言となった。
中電は、浜岡原子力発電所(静岡県)の5号機増設で、先日地元で同意をやっと得たばかり。芦浜(三重県)、珠洲(石川県)での原発の新規立地は行き詰まっており、立地の地元住民らから「過疎地にばかりリスクが押しつけられている」といった批判がされている中、この発言は物議を呼びそうだ。(中日新聞 1996/10/18)

沈没ソ連潜水艦から放射能漏れ 大西洋の深海底
弾頭からプルトニウム
【ロサンゼルス24日共同】24日付の米有力紙サンフランシスコ・エグザミナーは、1986年にバミューダ諸島沖の大西洋で爆発事故を起こし沈んだ旧ソ連のヤンキー級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦から、核弾頭のプルトニウムが漏れ出している可能性があると報じた。
事故直後、旧ソ連側が行った沈没現場の秘密調査の結果、同艦が積むミサイル16基の核弾頭計32個に用いられていた軍事用プルトニウム239に汚染された残がいを回収したという。同紙は「原潜事故で高濃度の軍用放射能が周辺環境に流れ出したのは初めて」としている。
この調査に加わった核弾頭研究施設の責任者スタニスラフ・ベスノブスキー氏は、同紙に「爆発と、沈没時の高水圧のため、核弾頭が破壊された可能性が高い。壊れた数は確認できていない」と述べた。弾頭のプルトニウムの総量は約90キロという。
事故当時、旧ソ連側も米側も「核弾頭が爆発する危険はなく、放射性物質による汚染も見つかっていない」と強調していた。
ロシアや、事実を知った米側の研究者は「沈没場所は水深5000メートル以上で、海流の影響も少なく広範囲な拡散の恐れは少ない」としながらも「食物連鎖を通じた汚染拡大の危険が懸念される」として、両国の研究機関が協力して本格的な調査を行うよう求めている。問題の原潜は86年10月、大西洋をパトロール中にミサイルの燃料が爆発、その2日後にバミューダ沖東方約1050キロで沈没した。(中日新聞 1996/11/25)

米国の原子力政策 立ち往生 “核の墓場”づくり難航
住民訴訟も相次ぐ
核の商業利用に乗り出して約半世紀になる米国で、原子力政策が今、立ち往生している。原子力発電所の老朽化、コス卜削減による事故の危険性の増大、たまり続ける使用済み核燃料。商業原発からの高レベル放射性廃棄物に責任をもつ連邦政府は、仮の保管施設さえ確保できないでいる。全米各地に放射能汚染の脅威は広がっている。(在ニューヨーク、フリージャーナリスト・神尾理思子)

2基の研究用原子炉を持ち半世紀の間、放射線医療や放射能汚染の研究で米国の先端に立ってきた国立ブルックヘブン研究所(ニューヨーク州アップトン)に対し今年2月、周辺住民が10億ドルの集団訴訟を起こした。
「数十年に及ぶずさんな放射性廃棄物処理による排気や排水で、住民にがんなどの健康障害と地価下落などの経済的損害を与えた」と。
原告側のローズン弁護士によれば、同研究所から半径約20キロの地域の乳がん発生率は全米最高。子供の舌がん、喉頭(こうとう)がんなど飲料水が原因と疑われる発病例も多い。
同研究所は1989年から.スーパーファンド(環境汚染除去連邦助成重点地域)に指定されているが、地域の批判が高まったのは、研究所職員が所内のずさんな汚染除去風景を撮ったビデオを地元テレビ局に送った内部告発による。研究所は下水設備刷新のため約2億リットルの汚染水をペコニック川へ放出予定だった、とも報道された。
同研究所を管轄するエネルギー省は今年1月、人体に有害な環境汚染はないとしながらも、「予防措置」として井戸水に頼る周辺の約800世帯に水道を無料配備した。
ニューヨーク州厚生局は9月に「ペコニック川からは確かにブルックヘブン研究所からの放射能汚染が認められたが、汚染値は連邦基準の10分の1で人体に害はない」と発表。地元の環境団体は「汚染値はニューヨーク州の他の河川の100倍で実害は確か」と反論。裁判には数年かかるもようだ。
原発は50年代には「使用量を計る必要がないほど電力を安くする」ともてはやされた。予測では2000年までに全米に1000の原子力発電所ができるはずだった。しかし、早くも70年代に建造ラッシュは下火となり、100カ所以上が建設中止に。78年以降、新設はなく、現在操業中の原発は109施設にすぎない。
米証券会社の予測では、経営上の理由で2000年までに25施設が運転停止になる。経費が高額な原発は割高となり、事故で負う膨大な経営上のリスクが原発離れの理由のようだ。
原発による環境汚染の疑惑は各地で絶えないが、汚染による損害を住民が立証するのは至難だ。79年の事故をめぐるスリーマイル島原発訴訟では今年6月、「がんなどの健康障害と放射能汚染の直接の因果関係が認められない」と、2000件の損害賠償訴訟がまとめて却下された。
反対運動で2500人の逮捕者を出し、予定から11年遅れて90年にフル運転を開始したニューハンプシャー州のシーブルック原発では、最新の監視網をもつ住民グループ「C10」が昨年11月深夜、通常の6から15倍の放射能を検知した。
原発側は「排気筒の放射能メーターは停電で作動していなかったが、所内の他の計測値は通常通り。C10の検知した放射能の発生源は発電所ではない」と説明。原子力規制委員会は4カ月後、「燃料交換のため運転停止中で、放出はあったが放射能は微量」とする調査結果を出した。
それに対してC10は「メーターが偶然に作動していなかったとは考えにくい。深夜に故意に放出したのでは」と疑っている。
原子力規制委員会の安全度ランクで今年、コネティカット州のミルストン原子力発電所と並び最悪とされたのは、ニューヨーク州公共事業体所有のインディアン・ポイント原子力発電所。93年の運転停止処分後、設備改善、職員の再訓練を経て昨年5月に運転再開が認可されたが、55日後に再び運転停止に。その間に運転基準違反で2回の勧告、5万ドルの罰金を科された。地域の原発反対派は同原発がコスト削減のため安全性を軽視していると批判。「電力供給過剰のニューヨークに原発は不要」と廃止を求めている。民間原発からだけで約3万トン、軍需を合わせれば約8万トンにもなる高レベル放射性廃棄物も深刻な問題だ。核拡散の恐れから再処理を行わない米国は、82年の核廃棄物規制法で高レベル放射性廃棄物を、98年1月までに国が引き取り、永久埋蔵する予定になっている。
それまでは各原発が使用済み核燃料を発電所内に仮貯蔵するが、貯蔵用冷却プールは許容限度に達し、その処理に苦慮している原発が多い。
政府は人体への危険がなくなる1万年後までは、放射能が土壌に流出しない「核の墓場」として20地域を候補として検討。ネバダ州のユッカ山の地下を最終候補地として地質調査を開始した。
ネバダ州や市民団体は「ユッカ山は火山に近く、地質は不安定。科学的見地ではなく政治的な候補地の決定だ」と大反対で、2010年までに埋蔵施設を開設する目標達成は絶望的のようだ。
原発産業の請願で共和党が今年提出した「ユッカ山に仮貯蔵施設を開設、99年から既存の高速道路や鉄道で廃棄物輸送を開始する」とする核廃棄物規制法の修正案は7月に上院で可決。しかし下院の共和党は11月の選挙前に国民に不人気な立法のゴリ押しは不利とみて、年内立法化を見送った。再選されたクリントン大統領は、議会を通過しても大統領拒否権を行使すると誓うが、行方は再び過半数を獲得した議会共和党の出方にかかっている。(中日新聞 1996/12/04)



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