新型インフルエンザ:スペイン風邪と同じ構造 「高齢者に免疫」裏付け
新型インフルエンザが人に感染するかどうかを左右するウイルスの構造が、スペイン風邪など20世紀前半に流行したウイルスと同じだったことが、科学技術振興機構の西浦博・さきがけ研究員らの研究で分かった。新型ウイルスでは高齢者に感染者が少ないことが知られているが、その原因の1つが解明されたことになる。また、日本で1人の感染者から広がるのは1.21〜1.35人で、感染力は季節性インフルエンザと同じか弱いことも判明した。7日付の英医学誌2誌に発表した。
ウイルスの表面にはヘマグルチニンという突起があり、この突起を使ってヒトの細胞に侵入する。研究チームは、新型と同じH1N1型の過去のウイルスで、ヘマグルチニンの先端構造を比較した。
その結果、1918〜40年代前半に流行したスペイン風邪や同時期の季節性インフルエンザのウイルスは、先端の構造が同じだったことが分かった。これに対し、77年以降は同じ構造を持つウイルスが、ほぼなくなっていた。このため、60歳代以上では新型に免疫を持つようになったと考えられる。
さらに、確定患者約3500人を対象に感染のしやすさを調査。20〜39歳を1とした場合、19歳以下は2.7倍、40〜59歳が0.56倍、60歳以上は0.17倍となった。
西浦さんは「再流行が起きても、小規模な流行にとどまるのではないか」と話す。【永山悦子】(毎日新聞 2010/01/08)WHO、製薬会社と癒着?新型インフルで欧州会議が調査
【ローマ=南島信也】世界保健機関(WHO)と新型インフルエンザのワクチンを製造する製薬会社との癒着が、世界的大流行(パンデミック)を宣言したWHOの判断に影響を与えたとの疑惑が浮上し、欧州47カ国が加盟する欧州会議(本部・仏ストラスブール)は12日、調査を開始すると発表した。
同会議保健衛生委員会の委員長で、感染症を専門とするドイツ人医師ボーダルク氏が「虚偽のパンデミック」との動議を提起したことが発端。仏リュマニテ紙のインタビューに「こんな厳戒態勢をとる正当な理由がない。WHO内のあるグループは製薬会社と癒着している」と、不透明な関係の存在を指摘した。
25日から始まる同会議総会で認められれば、主要議題の1つとして審議される。26日には、WHOの代表や製薬会社、専門家から非公開で事情を聴くことも決まっている。
欧州各国では、接種率の低さからワクチンが大量に余り、売却や製薬会社との売買契約解除の動きが加速している。WHOが当初、「2回のワクチン接種が必要」とし、各国が実際に必要な量の2倍のワクチンを調達したことも背景にあり、WHOに対する批判が強まっている。
WHOのチャイブ報道官は12日の記者会見で「批判や議論を歓迎する。WHOの対応を検証するのはやぶさかではない」と語り、外部の専門家らを交えて経緯を調査する考えを明らかにした。(朝日新聞 2010/01/13)新型インフル:ワクチン接種後に死亡…「因果関係あり」初
厚生労働省は29日、新型インフルエンザのワクチン接種を受けた新潟県内の80代女性が急死し、主治医から「接種との因果関係あり」との報告があったと発表した。ワクチン接種後の死亡は27日までに117件確認されているが、他はすべて「因果関係なし」か「評価不能」で、「関係あり」の報告は初めて。厚労省は専門家に検証を依頼している。
厚労省によると、女性は26日ワクチン接種を受け、副作用が出ないことを確認して30分後に医療機関を出発。約10分後、路上で倒れているのが見つかり、搬送先の病院で死亡が確認された。死因は不明。女性には高血圧や心臓の弁の働きが弱い持病があった。
主治医は報告の中で、注射で血圧低下などの過敏反応を起こす「アナフィラキシー・ショック」と、突然の不整脈や肺塞栓(そくせん)などの可能性が同程度考えられると説明している。厚労省は「接種から数時間で急死したケースはこれまでもあり、因果関係は即断できない」としている。【清水健二】(毎日新聞 2010/01/29)『緑茶うがい』広まる 新型インフル予防
体にいいといわれる緑茶。含まれる成分が、抗ウイルス作用や抗酸化作用といった働きがあることも、動物実験などの研究で明らかになっている。最近は、ヒトにも有効とされ、緑茶によるうがいを新型インフルエンザ予防などに活用する動きが広まっている。 (鈴木久美子)「ガラガラ…」
茶畑に囲まれた静岡県島田市の市立五和(ごか)小学校で、体育の授業後に外から帰ってきた子どもたちが、水飲み場で次々とうがいをする。使用しているのは、水ではなく緑茶だ。「給茶機」が設置されているので、蛇口をひねると水のように緑茶が出る。
「風邪やインフルエンザの予防に、手洗いと一緒に『緑茶うがい』を呼びかけている」と鈴木しめ子教頭。同校では3年前に給茶機を導入。今後市内の小中学校に増やす予定だ。
インフルエンザウイルスは、のどなどの細胞に吸着し感染するが、緑茶に含まれる成分「カテキン」が、それを阻害する抗ウイルス効果があることが分かっている。
実際に緑茶うがいによる抗ウイルス効果を探るため、静岡県立大薬学部の山田浩教授(医薬品情報解析学)は2004年冬、東京都内の特別養護老人ホームの入居者124人を対象に調査を実施。3カ月間、カテキンを混ぜた水でうがいをした76人と、通常の水でうがいをした48人で、季節性インフルエンザにかかった人数を比較。水は5人だったが、カテキン水は1人だった。
翌年、成人(20〜65歳)395人を対象に、カテキン水とプラセボ(同様成分を含まない偽物)で比較し、カテキン水のうがいで発症が減る傾向が出た。
飲むことによる予防効果も注目されている。昨年、同大客員共同研究員・朴美貞さんが、静岡県菊川市内の小学生約2500人に実施した調査では、緑茶を1日に1〜5杯飲む子どもは、1杯未満の子どもに比べ季節性インフルエンザにかかった割合が約6割だった。
新型インフルエンザも季節性と同様の仕組みで感染するため、「緑茶は新型インフルエンザの予防効果も高めると期待できる」と山田教授は話す。
昨年末、伊藤園中央研究所(静岡県)などが行った細胞実験では、カテキンの1つ「エピガロカテキンガレート」が、季節性だけでなく、新型インフルエンザのウイルスについても感染抑制効果があることを示した。カテキンは紅茶やほうじ茶などほかの茶にも含まれるが、エピガロカテキンガレートは緑茶に多い。
メタボリック症候群や生活習慣病の予防効果についても、研究が始まっている。同県掛川市立総合病院緑茶医療研究センターの鮫島庸一センター長らはこれまで、肝臓のダメージを抑える緑茶の抗酸化作用などを生かして、C型肝炎のインターフェロン治療に緑茶を併用し治療効果を高めてきた。
C型肝炎患者がメタボリック症候群になりやすいことから、同症候群と緑茶の関係にも着目。患者24人に1日6グラムの緑茶粉末(緑茶約20杯分)を1カ月飲んでもらったところ、内臓脂肪を減らし血管を保護する働きを持つ物質が平均で15%増加した。
昨年からは、大規模な臨床試験も開始。2年間で同症候群の約350人に、緑茶粉末やプラセボを飲んでもらい血液の変化などを見る。予備試験では、ふだん飲茶しない人で緑茶粉末を飲んだ人の方が、プラセボより体重が減る傾向もみられた。
「緑茶は、いつでも誰でも安全に飲める。ぜひ予防に役立てたい」と鮫島センター長は意気込む。(東京新聞 2010/01/29)新型インフルエンザ:流行で急性脳症が急増 5〜9歳を中心に
インフルエンザによる急性脳症の発生報告が、例年に比べ急増していることが、国立感染症研究所のまとめで8日分かった。新型インフルエンザの流行が影響しているとみられる。専門家は、ワクチンによる感染予防や早めの受診を呼びかけている。
脳症は、体内に侵入したウイルスへの免疫反応が過剰になって起きるとされる。インフルエンザ発症後1〜2日で発症し、長く続くけいれん、幻覚などの意識障害が特徴だ。
感染研が全国約5000医療機関からの報告をまとめたところ、「新型」の流行が始まった昨年7月以降の脳症患者は285人(1月24日現在)で、新型によるものが84%を占めた。年齢は7歳が39例(13.7%)と最多で、5〜9歳が中心だった。病院側から回答があった118例のうち8人が死亡、14人に後遺症が残った。
一方、季節性インフルエンザによる従来の報告数は毎シーズン40〜50件程度で、患者も0〜4歳が中心という。
新型のウイルスは肺まで達しやすく、それが脳症につながりやすいとの指摘がある。関心の高まりで報告数が増えている可能性もあるという。感染研感染症情報センターの安井良則・主任研究官は「新型の感染者は減少傾向にあるが、子どもの様子を注意深く観察し、早めの受診を心がけてほしい」と話す。【関東晋慈】(毎日新聞 2010/02/09)新型インフル 強酸性水で感染力抑制
ホシザキ電機など効果実証
業務用厨房(ちゅうぼう)機器大手のホシザキ電機(愛知県豊明市)は、独立行政法人「農業・食品産業技術総合研究機構」、名古屋大学と共同で、水道水を電気分解して生成する「強酸性水」が、新型インフルエンザウイルスの感染力を抑制する効果があることを実証したと発表した。強酸性水は殺菌効果が高く、飲食店やホテルなどで食器の洗浄水として使われている。ホシザキ電機は、水道水に食塩などを混ぜて電気分解し、強酸性水をつくる業務用機器を製造、販売している。
実証試験では、ホシザキ電機の機器で生成した強酸性水と新型インフルエンザウイルスを試験管に入れ、10秒間放置した場合、ウイルスの感染力を示す指数が99.99%低下した。
ホシザキ電機は今後、ウイルスの付いた食器などを強酸性水で洗い流した場合など、実際の使用条件下での感染力抑制についても実証したい考えだ。
ホシザキ電機の強酸性水製造機の売上高は年間数億円で、売上高全体の1%にも満たないが、新型インフルエンザ抑制効果をアピールし、「将来の事業の柱に成長させたい」としている。(読売新聞 2010/02/20)鳥インフルと季節性、混合で重症化も 東大など研究
鳥インフルエンザが人の季節性インフルと遺伝子の組み換えを起こすと、哺乳(ほにゅう)類に効率的に感染するだけでなく、重症化しやすいウイルスに変わる恐れがあることが分かった。鳥インフルが、人の間で世界的大流行(パンデミック)を起こす新型インフルになる可能性が引き続き高いようだ。東京大医科学研究所の河岡義裕教授や米ウィスコンシン大の八田正人准教授らの研究で、今週の米科学アカデミー紀要電子版に発表する。
これまで鳥と季節性との遺伝子組み換えでは、重症化しないウイルスしか生まれないと見られていた。
鳥インフル(H5N1)は鶏などに対しては100%近い致死率になるが哺乳類にはそれほど強い症状を起こさない。世界でアジアを中心に300人近くが亡くなっているが、治療まで時間がかかるなどウイルスの性質以外の要因が影響しているとみられる。人から人へ効率良く感染するように変異もしていない。
河岡さんらは、鶏で流行しているウイルスと、季節性インフルのA香港型(H3N2)とで遺伝子が混合する組み合わせを254通り想定。実際に遺伝子工学でつくって性質を調べた。
254種類のうちパンデミックを起こす恐れが強く、増殖能力の高い75種類をマウスに感染させた。そのうち22種類は、ウイルス1万個を感染させたマウス4匹がすべて2週間以内に死んだ。とくに致死性の高い3種類はわずか10個のウイルスの感染で半数のマウスが死亡した。22種類すべてで、ウイルスの増殖に関係する遺伝子(PB2)は季節性インフルのものだった。
人の場合、季節性と鳥の両インフルに同時に感染すると、体内で遺伝子組み換えがおこり、病原性の高いウイルスが誕生する可能性がある。
河岡さんによると、感染力は強くないが、PB2がヒト型の鳥インフルはすでに欧州で散発的に見られる。鳥インフルの調査を継続的に実施することが大切だという。(大岩ゆり)(朝日新聞 2010/02/23)新型インフル、子どもや肥満の人は重症化しやすい=米研究
【ワシントン24日ロイター】米専門家が24日、重症肥満の人や学齢児童はそうでない人たちと比べて、新型インフルエンザ(H1N1型)の感染が重症化したり死亡したりしやすいとする研究結果を発表した。
米疾病対策予防センター(CDC)の専門家によると、予備データでは、重症肥満者はそうでない人と比べて、入院したり死亡したりする割合が4倍と高かった。また、子どもの死亡率はそのほかの年代の人の5倍と高かったという。(ロイター通信 2010/02/25)強毒の鳥インフル、吸入式新薬「有効」 第一三共が申請
感染患者の5割前後が死亡している高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)に対して、国産の新しい抗ウイルス薬が治療や予防に効果が高いことがわかった。鳥インフルは次に世界的大流行(パンデミック)を起こす新型インフルに変異することも懸念されている。東京大医科学研究所の河岡義裕教授らによる動物実験で、26日付の米科学誌プロス・パソジェンズに発表する。
第一三共(東京都)の「CS―8958」。週に1度、口から吸い込むだけで済む。今秋ごろになるとみられる次の季節性インフルシーズンに間に合うよう、厚生労働省に承認申請されている。
研究チームの木曽真紀研究員らは、鳥インフルを感染させたマウスにCS―8958を投与し21日間観察。人に投与した場合と近い条件になる量にしたマウスは6割生き残った。その倍量にすると9割生き残った。現在使われている抗ウイルス薬タミフルとほぼ同じ効果だった。
一方、タミフルが効きにくい耐性の鳥インフルのウイルスで実験した場合、タミフルは効果が激減して1割ぐらいのマウスしか生き残らなかった。これに対しCS―8958の効果は変化しなかった。
予防効果を見るため、マウスに感染させる7日前に1回投与した場合、人での量に近くしたマウスは21日後に6割生き残った。その倍量では9割生存していた。
錠剤などのタミフルは毎日のむ必要があり、吸入式の抗ウイルス薬リレンザは1日2回、5日間投与が必要。河岡さんは「耐性ウイルスが出ることも考えると、抗ウイルス薬は種類が多い方がいい」と話す。(大岩ゆり)(朝日新聞 2010/02/26)インフル治療薬:強毒鳥インフルに効果 初の純国産
国が承認審査を進めている初の純国産インフルエンザ治療薬「CS−8958」が、強毒性鳥インフルエンザ(H5N1型)に効果のあることを、東京大医科学研究所の河岡義裕教授(ウイルス学)らが確かめた。26日、米科学誌プロス・パソジェンズに発表した。
マウスにH5N1型ウイルスを感染させて実験した。それによると、薬を投与しないマウスはすべて死に、別の治療薬「タミフル」を投与した場合の生存率は5〜9割だった。これに対し、CS−8958は7〜9割と効果が高かったほか、タミフルが効きにくい耐性ウイルスにも効果を維持した。
CS−8958は第一三共が開発から製造まで行い、今月、国に承認申請した。年内の発売を目指している。吸引タイプで、1回の服用で効果があるとされる。タミフルは5日間続けて計10回経口する。
世界保健機関(WHO)によると、2月17日現在の感染者は東南アジアを中心に478人(うち死者286人)。現在の治療薬には主流のタミフルとリレンザ、今年1月に発売された点滴薬ラピアクタの3種類ある。河岡教授は「タミフル耐性ウイルスの流行に備え、新しい薬を用意することが重要だ」と話す。【関東晋慈】(毎日新聞 2010/02/27)インフルエンザ予防にビタミンDが効果的 魚やキノコ
魚やキノコに多く含まれるビタミンDが、季節性インフルエンザ予防に効果があることを東京慈恵会医科大のチームが突き止めた。ビタミンDのサプリメント服用によって、発症率が半分近くに下がったという。実験結果は10日付の米臨床栄養学会誌に掲載。ビタミンDはワクチンや抗ウイルス剤のような副作用もなく、価格も安いため、途上国の予防対策としても期待できそうだ。
同大の浦島充佳准教授のチームは、平成20年12月〜21年3月の流行期に、12病院の協力で6〜15歳の子供334人を対象に実験。半数にビタミンD(30マイクログラム)入りカプセルを、残り半数にビタミンDが入っていないカプセルを毎日与えた。ビタミンD入りグループのインフル発症率は10.8%で、ビタミンDなしの18.6%の約半分に収まったという。
ビタミンDは、サバなどの魚類やシイタケなどのキノコ類に含まれ、体内で細胞の抗菌物質を分泌。食事だけでは十分でなく、紫外線を浴びることで皮下脂肪のコレステロールの一種がビタミンDに変わり、増える。インフルの流行は日照時間が短い12月に始まることから、これまでもビタミンDとの関連性が指摘されていたが、実証されていなかった。
浦島准教授は「ワクチンは流行の型で効用が大きく左右される。ビタミンDはよほど大量に摂取しない限り副作用がなく、安価」と指摘。特に途上国ではワクチンが十分行き渡らないこともあり、「ビタミンDは途上国のインフル予防対策として効果がある」と話す。(杉浦美香)(産経新聞 2010/03/17)「スペイン風邪」と類似 新型インフルのウイルス
新型インフルエンザのウイルスは、1918年に発生したスペイン風邪のウイルスと構造的な特徴が似ており、スペイン風邪の時に獲得した免疫が新型にも働く可能性があることを、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)と米疾病対策センター(CDC)のチームが突き止めた。24日付の米医学誌に発表した。
スペイン風邪のウイルスに感染した高齢者は、新型インフルエンザへの免疫を持っているとする報告はこれまでにもあったが、ウイルスの分析で裏付けられた格好だ。チームは、いずれも同じH1N1型である新型インフルエンザ、スペイン風邪、季節性インフルエンザのウイルスを調査。それぞれのワクチンをマウスに接種した上で、致死性のある新型インフルエンザウイルスを感染させた。
新型とスペイン風邪のワクチンを接種したグループはすべて生き残ったが、季節性ワクチンのグループは多くのマウスが死んだ。逆に、新型のワクチンを接種したマウスにスペイン風邪ウイルスを感染させても生き残ったため、新型とスペイン風邪には共通の免疫が働くとみられる。
ウイルス表面のタンパク「ヘマグルチニン」の立体構造を詳しく調べたところ、新型には季節性が持つ特徴はなく、スペイン風邪と類似していることが判明。新型とスペイン風邪に同じように免疫が働くと考えられた。(共同通信 2010/03/25)ヒトへ侵入優先か、抗体防御か=新型インフルと季節性の違い解明−米チーム
新型インフルエンザや1918年に大流行したスペイン風邪を、同じタイプの季節性インフルエンザと比べると、ウイルスの表面にあってヒト細胞への侵入に使うスパイク状のたんぱく質「ヘマグルチニン」の頭部2カ所に大きな違いがあることが分かった。新型などには糖鎖の「カバー」がなく、侵入しやすさを優先しているのに対し、季節性ウイルスは少なくとも1カ所にカバーを付けることで、ヒトの免疫抗体に邪魔されないよう、防御していた。
米国立衛生研究所(NIH)と疾病対策センター(CDC)の研究チームが26日までに、米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシン電子版に発表した。今後、このカバー部分を狙えば、ワクチンを効率良く開発できる可能性があるという。(時事通信 2010/03/26)インフル:初の純国産治療薬、「タミフル耐性」に効果
国が承認審査を進めている初の純国産インフルエンザ治療薬「CS−8958」(一般名・ラニナミビル)がタミフル耐性ウイルスに効果があることを、けいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫・小児科部長らが確かめた。米国微生物学会誌(電子版)に掲載された。
菅谷部長らは08〜09年、患者184人を分けてラニナミビルとタミフルを投与。同シーズンはAソ連型(H1N1型)でタミフル耐性ウイルスが流行し、試験した患者でも約95%が感染した。すると、ラニナミビルを投与した患者はタミフルを投与した患者より平均60時間以上早く回復した。一方、タミフル耐性でなかったA香港型(H3N2型)やB型に感染した患者の治療効果に差はなかった。
ラニナミビルはリレンザと同じ吸引式で1回の服用で済む。これまでの試験でA型、B型の季節性ウイルス、さらに新型(H1N1型)、強毒性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)に対する効果も確認されている。
菅谷部長は「来シーズンまでにはラニナミビルが承認され、新型のウイルスがタミフル耐性になっても効果が期待できる」と話している。【関東晋慈】(毎日新聞 2010/04/09)新型インフル、漢方が予防効果? 帝京大准教授が発表
新型の豚インフルエンザの発症予防に漢方薬が役立ちそうだと、帝京大医学部の新見正則・准教授(外科)が11日、東京で開催中の日本内科学会総会・講演会で発表する。
有効性がわかったのは、胃腸の働きをよくして、体力を回復する効果があるとされる補中益気湯(ほちゅうえっきとう)。
昨秋、東京にある病院の職員358人(平均41歳)の協力を得た。半数の人に補中益気湯を4〜8週間毎日飲んでもらい、残り半数は飲まなかった。8週間後までに、飲まなかった人で7人が新型インフルと診断された。飲んだ人では1人だけだった。ただ、薬が合わず、途中でやめた人が14人いた。
新見さんは「アレルギーなどがあってワクチンが使いにくい人もいる。漢方薬で予防するという選択肢があってもいい」と話している。(朝日新聞 2010/04/11)新型インフルエンザ感染者、腎臓疾患に陥る可能性=研究
【ワシントン14日ロイター】カナダの研究者は14日、昨年、新型インフルエンザ(H1N1型)感染で重篤化した患者に、腎不全を起こして病状が悪化した例が多くみられたとの報告を発表した。
全米腎臓基金の会合に出席した研究者は、医師らは新型インフルエンザで入院した患者の腎臓の損傷に注意するべきだと警告した。
カナダ・マニトバ州の州都ウィニペグにあるマニトバ大学のマニッシュ・スード氏の研究チームは、同州にある集中治療室で治療を受けた新型インフルエンザ感染の重篤患者47人の症例を分析。3分の2の患者に腎臓の損傷もしくは腎不全が確認された。また、11%が人工透析を必要とし、16%が死亡したという。(ロイター通信 2010/04/15)新型インフルで呼吸器障害の子ども、ステロイドが効果
新型の豚インフルエンザによる肺炎など呼吸器障害の子どもの治療にはステロイド薬が有効であることがわかった。日本小児アレルギー学会と日本小児科学会が小児の入院患者約860人を調査した結果で、盛岡市で開催中の小児科学会で25日、公表される。ステロイド薬は小児の症状を悪化させ、特にぜんそくの子でその可能性が高いのではと心配する声があったが臨床で効果を確認できた。
全国61病院に昨年12月25日までに入院した19歳以下の患者862人を分析。平均は約7歳。死亡例はなかった。
呼吸器障害が原因で入院した489人のうちステロイド薬が使われたのは7割の340人だった。このうちぜんそくの子の231人では18%で著しく効果があり74%で有効だと評価された。持病のない子109人も85%が著しく効果ありか有効と評価された。
調査をまとめた荏原病院(東京都)の松井猛彦小児科部長は「これだけ大勢の患者を調べたのは初めて。今後の治療の参考にしてもらいたい」と話す。
今回の調査対象の3分の2が男児だった。理由は不明だが、新型インフル脳症でも男児が重症化しやすいとみられ、厚生労働省研究班(代表=森島恒雄岡山大教授)の報告でも、15歳未満の脳症の子どもでは男児が5対3で多い。季節性インフルの脳症では男児は約1割多い程度だという。(大岩ゆり)(朝日新聞 2010/04/25)梅干し1日5個食べれば新型インフル予防 和歌山医大「ウイルス増殖を抑制」
新型インフルエンザ(H1N1型)ウイルスの増殖を抑える物質が梅干しに含まれていることを、和歌山県立医科大学の宇都宮洋才(ひろとし)准教授らの研究チームが突き止め、1日発表した。梅干しを1日5個食べることで予防効果も期待できるとしている。
物質は、ポリフェノールの一種の「エポキシリオニレシノール」という化合物で、世界で初めて発見した。
宇都宮准教授らは、梅干しから抽出したエキスを、H1N1型のインフルエンザウイルスを感染させたイヌの肝細胞に加える実験を繰り返し、有効成分のエポキシリオニレシノールを確認。ウイルスを感染させた細胞に、エポキシリオニレシノールを加えると、約7時間後にはウイルスの増殖を約90%抑制していたという。添加しなかった肝細胞はウイルスに破壊されていた。
宇都宮准教授は「予防に有効で、梅干しを毎日5個食べれば、新型を含むインフルエンザにかからないことも期待される」と話している。(産経新聞 2010/06/01)World Health Organization Scientists Linked to Swine Flu Vaccine Makers
(ABC News 2010/06/05)強毒鳥インフル:新型インフルと容易に交雑 感染の危険性
ヒトでの流行が懸念されている強毒性の鳥インフルエンザウイルス(H5N1)は、昨年流行した新型インフルエンザウイルス(H1N1)と交雑しやすい特徴があることを、河岡義裕・東京大医科学研究所教授(ウイルス学)らが実験で確かめた。H5N1は、ヒトには感染しにくいとされるが、H1N1との交雑によって、感染力を持った強毒ウイルスに変化する可能性がある。5日、米専門誌「ジャーナル・オブ・バイロロジー」(電子版)に掲載された。
河岡教授らは、H1N1とH5N1の両ウイルスをイヌの細胞に同時に感染させ、増殖したウイルスの遺伝子を調べた。その結果、採取できた59個のウイルスの85%にあたる50個が遺伝子交雑を起こしていた。さらに、ウイルスの感染力や増殖力が強まる遺伝子交雑の組み合わせを想定し、人工的に作った交雑ウイルスをヒトの肺の細胞に感染させたところ、大量に増殖した。
季節性ウイルス(H3N2、香港型)とH5N1の交雑ウイルスを使った実験では、増殖力はそれほど活発ではなかった。河岡教授は「新型ウイルスは、季節性ウイルスに比べて圧倒的にH5N1と交雑しやすい。交雑は豚の体内で起きるとされるので、大流行を防ぐには、豚の監視が必要だ」と話している。【関東晋慈】(毎日新聞 2010/08/05)新型インフル大流行、カギのアミノ酸解明 東大教授ら
新型の豚インフルエンザがなぜ、人の間で世界的な大流行を起こしたのか。その謎を解く鍵が、ウイルスの増殖に関係するたんぱく質のわずかな違いにあることを、東京大医科学研究所の河岡義裕教授らが見つけた。たんぱく質を作るアミノ酸が1カ所だけ変わっていた。河岡さんは、新たなウイルスの流行に備え、ウイルスの継続的な監視が必要と指摘している。
新型インフルは、豚と鳥、人のウイルスの遺伝子が交ざってできている。ウイルスの増殖に関係するたんぱく質「PB2」は鳥由来だ。鳥由来のPB2は本来、人の鼻やのどの中ではあまり増えないが、新型インフルはなぜか、人の間で大流行していた。
河岡さんらは、新型インフルのPB2たんぱく質の591番目のアミノ酸が、通常の人や鳥のインフルのようにグルタミンではなく、アルギニンに変わっていることに注目した。たんぱく質はアミノ酸がつながってできている。
遺伝子工学で、新型インフルのこのアミノ酸をグルタミンに戻して、細胞培養すると、2〜5割、増殖能力が落ちた。さらに、イタチの仲間のフェレットに、グルタミンに戻したウイルスと、アルギニンのままのウイルスの両方に感染させ、鼻の中のウイルスの変化を調べた。すると、感染5日後に、元の新型インフルウイルスが全体の9割以上を占めるまで増えた。
6日付の米科学誌プロス・パソジェンズに発表する。(大岩ゆり)(朝日新聞 2010/08/06)メカブ粘り成分で「効果増強」=インフルエンザワクチン―ヒトで確認・理研ビタミン
メカブの粘り成分「フコイダン」がインフルエンザワクチンの効果を高めることが、ヒトを対象にした理研ビタミン(東京都千代田区)、豊中愛和会(大阪府豊中市)、武庫川女子大国際健康開発研究所(兵庫県西宮市)の共同研究で分かった。22日から神戸市で開かれる国際免疫学会で発表される。
フコイダンは、メカブのほかワカメやコンブなどに含まれる粘り成分の1つ。特有のヌルヌルで海草本体を守り、海中から引き揚げられた際などに乾燥を防ぐ。これまで、抗酸化作用や抗がん作用、抗ウイルス作用などが動物実験で確認されていた。
共同研究では、理研ビタミンがメカブから抽出して粉末状にしたフコダインを使用。67〜102歳(平均年齢87歳)の男女67人を2グループに分け、一方のグループにメカブフコダインを、他方に疑似粉末を、1日当たりそれぞれ300ミリグラム摂取させた。
摂取開始から1カ月後、3種混合季節性インフルエンザワクチンを接種し、さらにその1カ月後には、感染予防に重要な役割を果たす抗体がどの程度できているかを測定した。この結果、メカブフコイダンを摂取したグループは、疑似粉末のグループに比べ、A香港型(H3N2)、B型、Aソ連型(H1N1)の3種ともに、顕著に抗体の増加が見られたという。(時事通信 2010/08/18)タミフル効かぬ新型インフルウイルス、通常型並み感染力
抗ウイルス薬タミフルが効きにくくなった新型の豚インフルエンザウイルスが、通常の新型ウイルスと同様の感染力と病原性を持っていることが、東京大医科学研究所による動物実験でわかった。今後、タミフル耐性ウイルスが主流になり、治療に制約が出る恐れも否定できない結果だ。
同研究所の河岡義裕教授らが26日、米科学誌プロス・パソジェンズ電子版に発表した。
新型インフルウイルスでは、変異してタミフル耐性になっても、感染力が落ちてあまり広まらないだろうと予測されていた。
河岡さんらは、患者から分離された通常の新型インフルウイルスと、タミフル耐性ウイルスをイタチの仲間フェレットに感染させた。翌日、通気のいいカゴに入れた未感染のフェレットを隣に置き、11日間、感染するか比較した。
その結果、どのウイルスも、隣のカゴのフェレットに広がった。鼻汁中のウイルス量を分析すると、耐性ウイルスも通常と同程度の感染力があることがわかった。
フェレットを感染6日後に解剖したところ、耐性ウイルスを感染させた場合も、気管支や肺に炎症が起きており、病原性は通常ウイルスと同程度だった。
季節性インフルAソ連型では、ほとんどのウイルスがタミフル耐性に置き換わっている。タミフルが効きにくくなって、発熱期間が延びたなどの指摘が臨床の現場からは出ている。河岡さんは「タミフルの使用基準をもっと慎重に検討すべきだろう」と話す。(大岩ゆり) (朝日新聞 2010/08/28)致死率高い鳥インフル、人間に感染しやすい型に変異
人に感染すると6割近い致死率を示す高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)が、インドネシアで豚に感染し、一部が人ののどや鼻の細胞に感染しやすいウイルスに変異したことがわかった。解析した東京大医科学研究所の河岡義裕教授らの研究チームは、致死性の高い新型インフル出現に備え、豚インフルの監視の必要性を強調している。
河岡さんらはインドネシアのアイルランガ大と共同で、2005年から09年にかけて3回、インドネシアの延べ14州で、無作為に選んだ702匹の豚の鼻汁や血液、ふんなどを調べた。
05〜07年に調べた豚の7.4%から高病原性鳥インフルのウイルスが分離され、分析すると、どの豚も近隣の鶏で流行した鳥インフルに感染していた。詳細に調べた39のウイルスのうち、1つが人の鼻やのどの細胞にくっつきやすく変異していた。08〜09年の調査では過去に感染していた形跡はあったが、ウイルスは分離されなかった。
これまで見つかった高病原性鳥インフルは人には感染しにくいが、人に感染しやすい高病原性の新たなインフルの出現が懸念されていた。豚は鳥型インフルにもヒト型インフルにも感染するため、豚の体内で、人に感染しやすく変異したとみられる。
高病原性鳥インフルは、豚では症状を起こしにくく、感染した豚は無症状だったため、気づかないうちに広がった可能性がある。河岡さんは「高病原性で人に感染しやすいウイルスが知らぬ間に広がる恐れがあり、症状がなくても豚のウイルス検査をきちんと実施すべきだ」と話す。
調査結果は米疾病対策センター(CDC)の専門誌「新興感染症」電子版で報告された。(大岩ゆり) (朝日新聞 2010/09/01)新型インフル
流行期のタミフル投与
「副作用死6人」報告
日本社会薬学会
世界的に猛威をふるった「新型インフルエンザ」の流行期に治療薬として投与された「タミフル」による副作用死が6例報告されていることが5日開かれた日本社会薬学会で発表されました。
発表したのは健和会臨床・社会薬学研究所の片平洌彦所長と日野紀子・みさと健和病院薬剤部長。
死亡した6例の死因は、自殺、肺炎、突然死、ライ症候群、ショック、急性腎不全と記載されています。
この報告は、片平氏らに依頼された日本共産党の小池晃参院議員(当時)が「医薬品医療機器総合機構」に症例票を開示請求。これらの症例票の調査で初めて明らかになったものです。
副作用報告は、2009年4月1日から2010年1月31日までの医薬品副作用・感染症症例報告書によるもので、副作用として100症例報告されています。
突然死した59歳の男性は、09年12月3日、発熱、関節痛、悪寒があり、検査の結果は「新型インフルエンザ」は陰性でしたが「タミフル」などの投与を4日まで受けました。その後、解熱しましたが、12月5日、布団の中にはいったまま死亡しているのが発見されました。行政解剖の結果、インフルエンザの悪化や肺炎、心筋こうそくなどの所見はありませんでした。
片平氏らは「同様の突然死の事例は、季節性インフルエンザの時にも報告されている。タミフルの2009年11月付審査報告書では『因果関係が否定できない』副作用の1つとして突然死が記載されており、この59歳の男性についても因果関係は否定できないと考えられる」と結論づけています。(しんぶん赤旗 2010/09/06)漢方併用で効果 麻黄湯 インフル治療
秋が深まり、インフルエンザの流行期が近づいてきた。新型が猛威を振るった昨年と違い、今年はまだ“序盤戦”だが、治療法や予防接種の最新情報を整理し備えたい。治療は抗インフルエンザ薬が基本だが、併用で効果を高める漢方薬「麻黄湯(まおうとう)」という選択肢もある。(杉戸祐子)「抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)と麻黄湯を併用した場合の治療成績が良かった」
2005年から治療に麻黄湯を取り入れている「せんぽ東京高輪病院」(東京都港区)の辻祐一郎小児科部長は説明する。小児患者に抗インフルエンザ薬と麻黄湯を一緒に処方したところ、それぞれの単独処方より発熱持続時間が短くなった。副作用のうち興奮や目まいが減った。
抗インフルエンザ薬を使わなかった患者に、抗生物質(マクロライド系)と麻黄湯を併用したところ、抗生物質の単独処方より早く回復する傾向がみられた。辻部長は「麻黄湯には下痢を起こしやすいなどの短所もあるが、併用することで相互作用が得られる可能性がある」と分析する。
麻黄湯は麻黄、桂皮(けいひ)、杏仁(きょうにん)、甘草(かんぞう)の4種の生薬からつくる漢方薬で、インフルエンザ治療薬として健康保険の適用対象になっている。
インフルエンザに効く明確な仕組みは解明されていないが、八ッ目漢方薬局浅草店(台東区)の酒井哲夫薬剤師は「麻黄と桂皮が発汗・解熱などの効果を持つほか、せきを鎮めたり筋肉痛を軽減する成分も含まれている」と解説する。
成人患者に対しては、福岡大病院(福岡市)の鍋島茂樹総合診療部長(内科)によると、麻黄湯またはタミフルを投与して経過を調べたところ、発熱持続時間に差はなかったが、服薬開始日の夜の体温は麻黄湯服用患者の方が下がっていた。鍋島部長は「麻黄湯は特に服薬当日の発熱を改善し、早期の解熱効果に優れていることがわかった」と解説する。
麻黄湯は医師が処方するほか、漢方薬局などで市販されている。ただし、北里大東洋医学総合研究所漢方診療部の星野卓之医師(内科)は「一口にインフルエンザといっても、寒けが強くて熱が上がり始めた時期には適した薬だが、熱が上がって汗が出始めたら服用をやめる必要がある」と指摘。血管収縮作用があり、高血圧など循環器系に持病のある人などは使用できない。星野医師は「症状や時期によっては麻黄湯が適さない例もある。自己判断で服用せず、医師の診断を受けて」と話す。
現状では、麻黄湯は治療効果を上げる補助的な役目、治療の主流は抗インフルエンザ薬。使用には医師と相談することが大切だ。(東京新聞 2010/11/02)回復期患者の血漿輸血が効果=新型インフル、死亡率低下−香港大
新型インフルエンザ(A型H1N1亜型)に感染し、重症となって病院の集中治療室(ICU)に入院した患者に対し、回復期にある患者の血漿(けっしょう)を輸血したところ、死亡率が大幅に下がったことが分かった。香港大などの研究チームが7日までに米医学誌クリニカル・インフェクシャス・ディジーズ電子版に発表した。
回復期の患者の血漿に含まれる中和抗体の効果とみられ、この治療法は新型ウイルスが急に流行した場合の重症患者に有効と考えられるという。
研究チームは、香港の7病院のICUに2009年9月から昨年6月までに入院した重症患者20人(平均年齢48歳)に血漿輸血を実施。その後の死亡者は4人で、死亡率は20.0%だった。これに対し、同様にICUに入院し、血漿輸血を受けなかった73人(同54歳)では40人が死亡し、死亡率は54.8%に上った。
輸血に使った血漿は、新型インフルエンザの発熱やせきなどの症状が治まってから2週間以上経過した患者から採取された。(時事通信 2011/02/07)新型インフルワクチンに副作用?=発作性睡眠、12カ国で確認−WHO
【ジュネーブ時事】世界保健機関(WHO)は8日、世界各地で2009年に大流行した新型インフルエンザの感染予防ワクチンの一種について、接種を受けた若年層が突然、睡眠状態に陥ったケースがフィンランドなど少なくとも12カ国で報告されていると発表した。関係者によると、12カ国の中に日本は含まれていない。
調査対象となっているワクチンは、英製薬大手グラクソ・スミスクラインが製造している「パンデムリックス」。09年に大流行した新型インフルエンザ(H1N1)の予防ワクチンとして、世界47カ国で使われた。フィンランド、スウェーデン、アイスランドで特に症例が多いという。同社によれば出荷先に日本は含まれていない。
フィンランド保健当局がWHOに報告したところによると、09〜10年にパンデムリックス接種を受けた人のうち、4〜19歳の子供や若者が「ナルコレプシー」と呼ばれる発作的な睡眠状態に陥ったケースが、接種を受けていない場合より約9倍多かったとしている。(時事通信 2011/02/09)梅成分に抗インフル作用 感染・蔓延予防に効果、“新薬”期待
梅果汁製造最大手の中野BC(和歌山県海南市)と中部大学生命健康科学部の鈴木康夫教授は、梅エキスの有効成分「ムメフラール」に、インフルエンザウイルスの人体の細胞への感染と、細胞内で増殖したウイルスの他人への感染の両方を阻害する優れた抗ウイルス作用があることを発見した。感染予防と、パンデミック(世界的大流行)につながる蔓延(まんえん)予防のそれぞれに作用する天然成分の発見は世界でも初めて。インフルエンザの大流行を食い止める新薬開発に有効な成分として注目されそうだ。(芳賀由明)鈴木教授は、梅エキスにA型インフルエンザの感染予防効果があることを平成20年に立証している。今回は中野BCと共同で、梅エキスの5つの成分を分解して精製したうえでそれぞれの機能を分析。インフルエンザウイルスの吸着(感染)と放出(蔓延)の機能を担うそれぞれのタンパク質「ヘマグルチニン」と「ノイラミニダーゼ」に対してムメフラールが阻害効果を発揮することが分かった。
鈴木教授らは研究過程のなかで、新型インフルエンザが世界的に流行した21年9〜11月にモニター実験を実施。梅エキスを凝縮した中野BCの粒状製品「梅真珠」を同社の社員や関係者に、食後3回3粒ずつ摂取させた結果、有効サンプル166人のうち新型インフルエンザにかかった人は1人(軽症)、家族に新型インフルエンザ患者がいた場合にかかった人はゼロだった。海南市では学校閉鎖が相次ぎ、関連会社にも患者が増加していた時期だけに、研究の有効性を示すエピソードとなった。
「タミフル」や「リレンザ」など化学合成物によるインフルエンザ治療薬は蔓延予防には効果があるものの、感染予防の効果は立証されていない。梅エキスそのものでは現在の治療薬の効果には及ばず、ムメフラールの成分を治療薬に応用するためには効果を数千倍高める必要がある。
鈴木教授は「ムメフラールですぐに治療薬ができるわけではないが、インフルエンザの新薬候補となるリード化合物(医薬品開発を導きだす化合物)になる可能性を示した」と成果を説明する。<ムメフラール> 農林水産省食品総合研究所の菊地佑二上席研究官らが平成11年に発見した成分で、梅の学名「mume(ムメ)」から命名。生梅に含まれる糖質の一種とクエン酸が結合した化合物で、血液サラサラ効果などの研究成果も発表されている。青梅の果汁を煮詰める梅エキスの製造過程で生成するが、生梅や梅干しには含まれていない。(産経新聞 2011/02/21)
強力ウイルス出現に警戒を=新型、鳥インフル混合で−中国
2009年から世界的に流行した新型インフルエンザA型H1N1亜型と主にアジアの鳥類に広がっている同H9N2亜型について、中国農業大などの研究チームが28日までに遺伝子を組み換え、マウスに感染させる実験を行ったところ、両亜型より病原性が高いウイルスが生じる場合があることが分かった。
ニワトリなどに多いH9N2ウイルスはヒトも感染するが、季節性インフルエンザ程度の症状のため、同ウイルスと気づかれないことが多い。中国では過去に感染していた人が多いとの研究報告もあり、今後ヒトやブタの体内で両亜型の遺伝子の組み換えが起き、新たな大流行につながることを警戒する必要があるという。研究成果は米科学アカデミー紀要電子版に掲載される。
組み換えで高い病原性をもたらしたのは、ウイルスの複製、増殖を担う酵素「RNAポリメラーゼ」の一部「PA」の遺伝子で、H1N1ウイルスのPA遺伝子を持つ場合に病原性が高かった。(時事通信 2011/03/01)鳥インフル、免疫活性で致死率激減 神戸大など確認
ヒトに感染すると致死率が約6割とされる高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)に対し、感染前に体内の免疫機能を活性化させると致死率が約10分の1に低下することを、神戸大や東京大などの研究グループがマウスの実験で確認した。ヒトでも同様に致死率を低下させられる可能性があるといい、研究成果は英科学誌に掲載された。
H5N1型は2003年以降、世界15カ国で560人以上が感染し、320人以上が死亡。変異などでヒトへの感染力が強まり、世界的な流行につながることが心配されている。
神戸大は、最大の被害国インドネシアのジャワ島東部スラバヤにあるアイルランガ大学を拠点に、H5N1型の共同研究を進めている。
今回の実験では、マウスの免疫細胞の表面にあり、ウイルスなどの病原体成分を認識して別の免疫細胞に攻撃させたり、抗体作りを促したりする受容体「TLR4」に着目。働きを活性化させる物質を投与し、3日目にH5N1型を体内に入れ2週間観察した結果、投与しなかったマウスと比べ致死率が低下したという。
ヒトで毎年のように流行する季節性のAソ連型に似たウイルスでも、同様に致死率が低下。免疫機能の活性化でウイルスを効率よく排除できたと考えられる。
実験を担当した神戸大大学院医学研究科の新矢恭子准教授は「ヒトでも感染前に免疫機能を活性化させられれば、致死率を大幅に下げることが可能。実用化につなげたい」と話す。(金井恒幸)(神戸新聞 2011/08/03)鳥インフル再流行の兆し、中国とベトナムで変異株を確認
【香港30日ロイター】国連食糧農業機関(FAO)は29日、中国とベトナムで強毒性の鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)の変異株が見つかったことを明らかにし、鳥インフルが再流行する可能性があるとして、アジアとその周辺地域に警戒を呼び掛けている。
また、香港のウイルス学者らは30日、変異株に有効なワクチンは今のところないとし、ヒトへの感染を防ぐため、変異株に感染した家禽類や野鳥を注意深く観察することが必要と訴えた。
香港大学のウイルス学者マリク・ペリス氏は「世界保健機関(WHO)が推薦するH5N1型ワクチンはあるが、変異株に完全に効くわけではない」と指摘。「変異株が必ずしもヒトに対してより毒性が強いということではないが、世界的に流行すれば脅威となる」と語った。
H5N1型ウイルスはヒトに感染すると、最大60%が死に至るとされる。この数カ月、同ウイルスは再び流行し始めており、特にカンボジアでは今年に入り8人が感染、死亡している。(ロイター通信 2011/08/31)鳥インフル論文、テロ懸念で米誌掲載見合わせ
強毒性の鳥インフルエンザウイルス「H5N1」に関するオランダと日本などの研究論文2本について、米科学誌サイエンスが生物テロに悪用される危険を理由に掲載を見合わせていることが分かった。
オランダの論文では、H5N1の遺伝子を5か所変異させると人間同士での感染力をもつことが説明されており、同誌を発行する米科学振興協会は生物兵器開発の参考にされると懸念している。
強毒性H5N1は腸管の出血も起こし、死亡率が高い。現在は人間への感染力が非常に弱く、人間同士での感染例は限られている。
しかし、同協会のホームページによると、オランダ・エラスムス医療センターのチームが、人間への感染力を生み出す変異を発見し、遺伝子を組み換えたウイルスを作製。人間と似た反応を示すフェレットの感染実験にも成功したという。東京大医科学研究所の河岡義裕教授らの国際チームによる論文については、内容を明らかにしていない。(読売新聞 2011/11/30)鳥インフルエンザ研究を米諮問委調査 生物テロへの悪用懸念
【ワシントン共同】米公共ラジオ(NPR)は11月30日までに、欧州の研究チームが毒性の強いH5N1型鳥インフルエンザウイルスの感染力を高める実験に成功し、米政府の科学諮問委員会がバイオテロに悪用される恐れがあるとみて調査を始めたと報じた。
H5N1型は通常は鳥の間でしか効率的に感染しないが、いったん人に感染すると致死率が高い。論文として発表されれば生物兵器として悪用される恐れもあり、諮問委が発表を見合わせるよう勧告する可能性もあるという。
NPRによると、オランダのエラスムス医療センターのチームは、人での感染を調べる実験動物のフェレット間で効率的に感染するウイルスを作製。さらに5カ所の遺伝子変異が起きれば、人を含む哺乳類に強い感染力を持つ可能性があることが分かったと、9月にマルタで開かれた学会で発表した。
新型インフルエンザとして世界的に流行する懸念もある。ただ研究者の間には「感染拡大の防止やワクチン開発のために研究は重要だ」と諮問委の介入に反発する声も出ている。(共同通信 2011/12/01)ヒト感染する鳥インフル変異株を開発、流出や悪用めぐり警戒感
【12月12日 AFP】オランダの研究所が今年9月、ヒト間で感染伝播する鳥インフルエンザウイルス(H5N1)の変異株の作成に初めて成功した。この研究をめぐり、仏パリ(Paris)で9日開かれた世界健康安全保障イニシアチブ(Global Health Security Initiative、GHSI)の会合では、各国保健相らが強い警戒感を表明した。
グザビエ・ベルトラン(Xavier Bertrand)仏保健相は、「非常に警戒する必要がある。けさは、この問題が多く話題に上った」と会合の合間に明らかにした。GHSIは主要7か国(G7)や欧州委員会(European Commission)、世界保健機関(WHO)で構成される。
H5N1型は、ヒトが感染した場合の致死率が60%に達する。ただ、ヒト間では感染しないことから、これまでの死者数は世界で350人程度にとどまっていた。■強毒性変異株、悪用される恐れも?
ところが今年9月、オランダ・ロッテルダム(Rotterdam)のエラスムス医学センター(Erasmus Medical Centre)のロン・フーシェ(Ron Fouchier)氏率いる研究チームが、ほ乳類間で感染するH5N1変異株の作成に初めて成功したと発表。この変異ウイルスは「想定よりも簡単に作成できる」「研究室の中では、空気感染可能なウイルスへの変異も可能だった。この(変異の)過程は、自然界でも起こり得る」などと指摘した。
発表を受け、この変異ウイルスがなんらかの形で自然界に広まる恐れや、研究成果がテロリストに利用される危険性への不安が高まっている。
こうした不安があることについて、欧州連合(EU)のジョン・ダリ(John Dalli)欧州委員(保健・消費者保護担当)は、「オランダ当局からウイルスが厳重に保管されているとの確約を得ている」「研究に関する情報も十分に管理されており、変異に関する詳細な情報は明らかにされていない」などと記者団に述べた。(AFP 2011/12/12)「鳥インフル論文、テロ悪用も」 米研究所が非公表勧告
強毒性鳥インフルエンザH5N1の動物実験についての2本の論文がテロに利用される恐れがあるとして、研究を支援した米国立保健研究所(NIH)のバイオセキュリティーに関する国家科学諮問委員会が20日、内容の一部を公表しないよう科学誌に勧告したと発表した。
2本の論文は、H5N1が人間でも空気感染する可能性を示したもので、別の研究チームが米科学誌サイエンスと英科学誌ネイチャーにそれぞれ投稿した。
勧告は「悪用の可能性が否定できない」として、実験に使ったウイルスの遺伝子や作り方を掲載しないよう求めた。科学論文はデータの掲載が欠かせず、削除要求は異例。勧告に拘束力はない。(朝日新聞 2011/12/21)タミフル:副作用、専門家が分析 重篤化誘因の恐れ
インフルエンザ治療薬のタミフルが、患者25万人に1人程度の割合で、服用後12時間以内に重い呼吸困難など容体の重篤化を引き起こしている可能性があるとの分析結果を、NPO法人・医薬ビジランスセンター(大阪市天王寺区)理事長の浜六郎医師らがまとめ、オランダの医学専門誌「薬のリスクと安全の国際誌」に発表した。
浜医師らは厚生労働省の公表データに基づき、09年発生の新型インフルエンザで死亡した患者のうち、医師にかかった時点では重篤でなかった161人について分析した。
タミフルを投与された患者は119人で、うち38人が12時間以内に重篤な状態に陥るか死亡した。別のインフルエンザ治療薬のリレンザを投与された患者は15人で、12時間以内に重篤化や死亡した人はいなかった。
浜医師らは一方、製薬各社が同省に報告したデータなどから、同時期のタミフル使用者を約1000万人、リレンザ使用者を約700万人と推定。年齢などを考慮して統計的に分析すると、タミフル使用者はリレンザ使用者より死亡率が約1.9倍高く、使用後12時間以内に重篤化か死亡する率は約5.9倍との結果が出たという。
厚労省医薬食品局安全対策課は「慎重に確認したい」と説明。タミフル輸入販売元の中外製薬は「精査している途中だ」と話している。【高木昭午】(毎日新聞 2011/12/30)タミフル、インフルエンザ治療効果に疑問
【ワシントン=山田哲朗】医学研究の信頼性を検証する国際研究グループ「コクラン共同計画」(本部・英国)は17日、インフルエンザ治療薬タミフルが重症化を防ぐ効果を疑問視する報告書を発表した。
タミフルは世界で広く使われ、特に日本は世界の約7割を消費している。各国が将来の新型インフルエンザの大流行を防ぐため備蓄を進めており、その有効性を巡り議論を呼びそうだ。
報告書は、製薬会社に有利な結果に偏る傾向がある学術論文ではなく、日米欧の規制当局が公開した臨床試験結果など1万6000ページの資料を分析。
タミフルの使用で、インフルエンザの症状が21時間ほど早く収まる効果は確認されたものの、合併症や入院を防ぐというデータは見つからなかった。
報告書は「当初の症状を軽減する以外、タミフルの効果は依然として不明確」と結論、「副作用も過小報告されている可能性がある」と指摘した。(読売新聞 2012/01/18)鳥インフル研究を一時自主停止 日欧科学者、米諮問委要請で
【ワシントン共同】日欧の科学者による鳥インフルエンザウイルス研究について、米政府・科学諮問委員会が生物テロに利用される懸念から論文の一部を削除するよう求めた問題で、東京大医科学研究所の河岡義裕教授ら世界の科学者39人は20日、自主的にウイルスの研究を60日間停止するとの声明を発表した。
声明によると、停止は一時的なもので、研究の重要性やウイルスが外部に漏れないように厳重な措置がとられていることを広く説明するのが目的。
英科学誌ネイチャーと米科学誌サイエンスに同時発表された声明などによると、河岡教授が教授を兼務する米ウィスコンシン大と、オランダ・エラスムス医療センターの研究チームは、H5N1型鳥インフルエンザウイルスがどういう遺伝子変異をすると、感染しやすくなるかを実験用動物のフェレットを使い突き止めたとされる。
これに対し、諮問委員会はウイルスの作り方など一部を削除するよう論文掲載予定だった両誌に要請。両誌は要請に一定の理解を示したが、まだ論文を誌面に掲載していない。
声明で研究者らは、研究の重要性とともに「厳格に管理され、最も高い安全基準を満たした施設で研究している」と安全性を強調。一方で「外にウイルスが流出するのではないか」という不安にも理解を示し、国際会議などで研究による利益と危険への対応策を説明する考えも示した。(共同通信 2012/01/21)遺伝子立体構造を初解明=インフルウイルス、「新型」で−増殖防ぐ新薬に・東大など
インフルエンザウイルスの粒子内にある8本の遺伝子分節の立体構造を初めて解明したと、東京大医科学研究所や兵庫大などの研究チームが24日付の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表した。観察対象は2009年に流行した「新型」(A型H1N1亜型)だが、さまざまなインフルエンザでウイルスの増殖を防ぐ画期的な新薬を開発する手掛かりになると期待される。
ウイルス粒子は、ヒトや動物の細胞への侵入・脱出に使うとげ状たんぱく質が表面にたくさんあるウニのような球形(直径約100ナノメートル=ナノは10億分の1)をしている。この球形の殻の中に、かりんとうに似た形の遺伝子分節(太さ12ナノメートル)が8本、束になって入っている。
東大医科研の河岡義裕教授や野田岳志准教授らが電子顕微鏡を使い、コンピューター断層撮影(CT)に似た方法で調べたところ、1本の遺伝子分節は棒状のたんぱく質にリボ核酸(RNA)が巻き付いてできていることが判明。遺伝子分節同士は、数本の細いひも(太さ2ナノメートル)で結ばれていた。このひもができないようにする薬を開発すれば、ウイルスは遺伝子分節を束ねられず、増殖できなくなる。(時事通信 2012/01/25)インフル大流行対策を妨害=米当局の研究情報規制−河岡教授
ヒト同士で感染しやすく変異し、世界的大流行に至ることが懸念されている強毒性鳥インフルエンザA型H5N1亜型の研究情報を米政府当局が規制する方針であることについて、米ウィスコンシン大教授を兼任する河岡義裕東京大医科学研究所教授は25日付の英科学誌ネイチャー電子版で、ワクチンや抗ウイルス剤を緊急に開発、準備すべきだとして、改めて撤回を訴えた。
河岡教授らとオランダの2研究チームが、H5ウイルスの遺伝子操作実験を行った結果、フェレット同士で感染しやすく変異したと同誌と米サイエンス誌に論文発表しようとしたところ、米バイオセーフティー委員会がテロリストによる悪用を理由に論文中の実験データを公表しないよう両誌に勧告。河岡教授ら39人の研究者が20日、60日間の研究自主停止を宣言する事態になった。(時事通信 2012/01/26)米諮問委、鳥インフル論文の詳細公表中止を勧告 テロ懸念
(CNN) 米政府の諮問委員会は31日、強毒性の鳥インフルエンザウイルスに関する研究は公衆安全上の「重大な懸念」を生じさせる恐れがあり、詳しい情報の公表は控えるべきだとする勧告をまとめた。
勧告は米国立衛生研究所のバイオセキュリティーに関する国家科学顧問委員会がまとめたもので、米科学誌「サイエンス」および「ネイチャー」が書簡を公表した。
同委員会はこの中で、新型ウイルスに関する情報が将来のインフルエンザ流行に備えた対策のために役立てられると認定した。一方で、研究結果の発表に当たっては、テロリストによる生物兵器開発に利用される恐れのある詳細情報の公表は差し控えるよう勧告。「こうした実験に関する詳細な情報が公表されれば、特定の人物や組織、政府に情報が渡り、危害を加える目的で哺乳類に感染するA型H5N1型インフルエンザを発生させる手助けとなる」とした。
同委員会はまた、「これは生命科学分野の研究において前例のない勧告であり、われわれは公表することのメリットと、このような前例を作ることによる悪影響の両面について入念に検討した」とも述べている。
この問題は昨年12月、米ウィスコンシン大学とオランダの科学者がフェレット間で感染する強毒性のインフルエンザウイルスを作成したと報じられたことをきっかけに浮上した。オランダの研究チームはサイエンスに、ウィスコンシン大学はネイチャーにそれぞれ論文を発表する予定だったが、両誌とも掲載を見合わせることに同意している。
これに対して鳥インフルエンザ研究に携わる研究者からは、論文が検閲されれば研究者間の情報共有が難しくなる一方で、テロ防止にはほとんど役に立たないと指摘する声も出ている。(CNN 2012/02/01)ヒト感染する鳥インフル変異株の論文、WHOが全文公開を勧告
【2月20日 AFP=時事】ヒト感染する能力のある強毒性鳥インフルエンザ(H5N1)ウイルスの変異株に関する2論文の公開の是非を検討していた世界保健機関(World Health Organization、WHO)は17日、スイス・ジュネーブ(Geneva)で開いた会合で、全文公開すべきだとの勧告を決定した。ただし、論文公開と研究再開の前には安全評価を実施する必要があることでも合意した。
論文の執筆者の1人でWHO会合に出席したオランダのロン・フーシェ(Ron Fouchier)教授によると、出席者は「論文の全文公開は、公衆衛生に利する」との意見で一致したという。
オランダと米ウィスコンシン(Wisconsin)州の研究チームはそれぞれ前年末、哺乳類間で空気感染するH5N1変異株の作成に成功した。これを受けて、変異株が研究室から流出して悪用されたり、大量の死者が出る大流行につながる懸念が浮上。米国が、論文の主要部分を非公開とするよう求めていた。■検証後に研究再開へ、科学誌も決定を支持
科学者らは1月20日に追加研究の60日間の一時停止に合意していたが、フーシェ教授によると今回の会合で、より幅広い専門家による危険性の検証や公開議論を行うため、停止期限を無期限とすることが決まったという。
フーシェ教授は「この研究は進める必要のある極めて重要な研究だ」と述べ、安全性の確保、バイオセキュリティーの問題、悪用防止などの点で合意ができ次第、研究を再開させると語った。
会合には、論文の掲載を差し控えるよう求められた米科学誌サイエンス(Science)と英ネイチャー(Nature)の代表者も出席。サイエンス誌のブルース・アルバーツ(Bruce Alberts)編集長は「(掲載するか否かの)最終決定者が(編集長の)私であってはならない」と述べ、決定を支持するとのコメントを発表した。「論文のどの部分を編集すれば安全かを見極めようと多くの政府関係者が努力してきたが、あらゆる困難に直面していた」
同紙はネイチャー誌とともに3月号に論文の一部掲載を検討していた。アルバーツ氏によれば2誌は関係当局と緊密に協力しており、追加情報を待って全文掲載を決める予定。同氏は、今回の決定が今後、同様の問題を解決する国際機関の設立につながることを期待すると述べた。■広い分野の専門家で会合へ
WHOによれば、 これまで確認されたH5N1型の感染例は15か国584人で、うち345人が死亡している。最も感染例が多い国はインドネシアだ。
WHOの福田敬二(Keiji Fukuda)事務局長補は17日、「高い致死性を持つこのウイルスに科学界が強い危機感を抱いており、さらなる研究によって(このウイルスを)理解する必要があることが会合で強く示された」と語った。
WHOは、より多岐にわたる分野の専門家を集めた会合を近く開催する予定。フーシェ氏は「今回はインフルエンザ専門家による会合だった。より広範囲の科学界と話し合いをする必要がある」と語った。(AFPBB News 2012/02/20)鳥インフル致死率、WHO発表よりはるかに低い=米研究
【ニューヨーク23日ロイター】世界保健機関(WHO)が約60%とする鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)の致死率は、実際にははるかに低いとする研究結果が23日、米科学誌サイエンス(電子版)に発表された。
この研究は、ニューヨークのマウント・サイナイ医科大学でウイルス学を研究するピーター・パレス氏らのチームが行ったもの。同氏らは、WHOが鳥インフルエンザの感染者数を低く見積もって致死率を算出したと指摘。具体的な致死率は示していないが、研究結果の数字に基づけば、1%以下になるとみられる。
WHOは60%という数字は正しいとしており、パレス氏らの研究が誤ったデータに基づいていると指摘する科学者もいる。WHOによると、23日現在、鳥インフルエンザウイルスに感染した患者数は586人で、うち346人が死亡。致死率は59%となっている。
鳥インフルエンザをめぐっては、米国が犯罪者などの手に渡れば大量殺人につながる恐れがあると主張し、サイエンスと英ネイチャーが2つの研究論文の発表を見合わせている。また、米国とオランダの研究者らが研究の一時停止で合意したほか、先週開かれたWHOの会議でも、研究によるリスクの評価が終わるまで論文公表を控えることが合意された。(ロイター通信 2012/02/24)鳥インフル論文、公開へ「テロ悪用の危険低い」
【ワシントン=山田哲朗】米国立衛生研究所(NIH)の諮問機関「生物安全保障のための科学諮問委員会」(NSABB)は30日、「テロに悪用される恐れがある」として米英科学誌に一部掲載を見合わせるよう求めていた2つの学術論文について、全面公開を認める勧告を公表した。
世界保健機関(WHO)の会議が今年2月、全面公開が有益とする見解を示したのを受け、従来の方針を撤回した。
論文は近く米科学誌サイエンスと英科学誌ネイチャーに掲載され、研究者らが1月に自主的に決めた60日間の研究凍結措置も解除される見通しだ。
論文は、鳥インフルエンザウイルス「H5N1」が変異して実験動物のフェレットで空気感染するようになることを報告したもの。東京大医科学研究所の河岡義裕教授と、オランダの研究者がそれぞれ、ネイチャーとサイエンスに投稿したが、同委員会が昨年12月、研究内容の詳細を伏せるよう両誌に異例の勧告をした。
同委員会が30日公表した声明によると、両論文に関しては、テロ悪用の危険性より新型インフルエンザ対策などに役立つ公衆衛生上の利点が大きいと判断した。論文は、鳥インフルエンザが人同士で感染する新型インフルエンザに変化する仕組みを把握するのに役立つ内容で、ワクチンや治療薬の開発にもつながる。
論文のウイルスは、多量に接種しない限りフェレットが死なないなど、危険性が低いと判断された。河岡教授はネイチャーに「委員会の判断は、成果の公衆衛生上の意義をよく理解した結果」とコメントした。
一連の掲載見合わせで、日米欧などの科学界は反発。ジュネーブで2月に開かれたWHO専門家会議では、当面の掲載見合わせは支持したが、「成果を共有する利益の方が大きい」として、悪用を防ぐ措置を講じた上で全面公開することが望ましいとの見解をまとめた。(読売新聞 2012/03/31)鳥インフル:河岡教授の論文やっと公開 米が非公表要求
人から人には感染しにくいとされている高病原性H5N1型鳥インフルエンザウイルスについて、わずかな遺伝子の変異で哺乳類の間でも容易に感染することを示した東京大医科学研究所の河岡義裕教授の論文が、3日付の英科学誌「ネイチャー」に全文掲載された。この論文については、米政府が生物テロに悪用される懸念があるなどとして一部非公表を求めたことで、掲載が先送りされていた。
H5N1型ウイルスはアジアやアフリカで散発的に人に感染し、死者も出ているが、人から人に容易に感染する変異ウイルスは今のところ出現していない。河岡教授らのチームは、H5N1型ウイルスの表面にあり細胞に入り込むための突起「ヘマグルチニン」に注目。H5N1型の遺伝子のうち、このヘマグルチニンに関する部分を操作して3カ所を変異させるなどし、新たなウイルスを作った。これをイタチの仲間のフェレットに感染させたところ、さらに1カ所が変異した。(毎日新聞 2012/05/03)
![]()
![]()