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MD導入、防衛庁独断専行
MD導入、防衛庁独断専行 日米同盟強化狙う
精度不明、費用莫大 1423億円来年度予算計上へ
防衛庁は弾道ミサイル防衛システム(MD)の導入費1423億円を来年度予算の概算要求に盛り込んだ。初期配備に5年を要し、最低7000億円の巨費が必要。国防政策の大転換にもかかわらず、防衛庁だけでほぼ決めてしまった。背景にはMD構想をリードする米国に追従する姿勢が浮かぶ。「国民的な論議が必要」との声は当の庁内からも上がっている。(東京社会部・半田 滋)
■かつては消極的かつて防衛庁は米政府の度重なる参加要請にもかかわらず、弾道ミサイル防衛にむしろ消極的だった。命中精度に疑問があるうえ、莫大(ばくだい)な費用が見込まれたからだ。それが突然、様変わりした。
防衛庁幹部は「昨年12月の(石破茂)長官訪米がすべてだった」と打ち明ける。「開発にまだ数年かかると思っていたが、『(北朝鮮の弾道ミサイル)ノドン対処は可能になった』と説明を受けた。現に北朝鮮の脅威があるのだから、導入するのは当然」という。
そうなら決断は9カ月も前だったことになる。
米国は1980年代、ソ連の核兵器を積んだ長距離弾道ミサイルを迎撃する目的で戦略防衛構想(SDI)と呼ばれる弾道ミサイル防衛に着手した。
ソ連は崩壊したが、計画は名前を変えて生き続けた。
■国防長官が推進MDに慎重だったクリントン政権下で、弾道ミサイルの脅威をまとめた報告書を米議会に提出したのがMD推進派で、現国防長官のラムズフェルド氏だ。
昨年12月17日、米国防総省は米本土を守るため、2004年からMDを配備すると発表した。同じ日、ラムズフェルド氏と会った石破長官は「開発、配備を視野に検討する」と表明した。このときは、続行中だった迎撃ミサイルの共同技術研究に触れたものと受けとめられたが、実際には米国に歩調を合わせてMD導入のハラを固めていたのだ。
防衛庁のMD導入費には、米国が開発経費を上乗せした金額が含まれており、防衛庁幹部は「SDI以降、10兆円を投資した米国の負担軽減につながる」という。米国からのMD参加の誘いを渋る国も目立つ中で、防衛庁の決断が米国の追い風になるのは間違いない。弾道ミサイル防衛システムを導入する最大の狙いは、日米同盟の強化にこそあったといえる。
だが、その裏にあるのは前代未聞といえるほどの高額な費用だ。しかもシステム全体が開発途中のため、命中精度の証明は不可能。費用対効果は不明ということになる。
■中期防不可能に自衛隊の任務や装備の大幅変更になるにもかかわらず、ともに閣議決定された防衛計画大綱と中期防衛力整備計画(中期防)の見直しが行われていない点にも問題がある。MDが割り込んだ結果、中期防で予定した戦車や戦闘機は目標とした数を購入するのは不可能になった。
弾道ミサイル防衛に詳しい防衛庁関係者はこういう。
「弾道ミサイルを100%迎撃するのは不可能だ。日本に向けて発射するのを思いとどまらせるだけの『抑止力』、発射しそうな場合に発射基地をたたく『攻撃力』、それに弾道ミサイルが落下した場合に国民が自らを守る『民間防衛』が組み合わされて、はじめてミサイル防衛が有効になる」
日本は抑止と攻撃を米国に依存しているが、北朝鮮がノドンを発射する時、米軍が日本を守るのか否か検証されていい。民間防衛に至っては、まったく浸透していない。この関係者は「防衛庁の議論には多角的な視点が欠けている」と指摘する。
これに対し、防衛庁幹部は「予算案はあくまで防衛庁の希望。内閣の安全保障会議でさまざまな観点から議論してもらう」という。だが、これほどの装備が頭から否定された例はなく、MD導入は既成事実化したとみられている。
【防衛庁の計画する弾道ミサイル防衛システム】某国から発射された弾道ミサイルを日本海に配備したイージス護衛艦のスタンダードミサイル(SM3)で狙い撃ち、撃ち漏らした場合、本土に配備した弾道ミサイル対処専用パトリオットミサイル(PAC3)で撃ち落とす2段階の迎撃システム。保有するイージス護衛艦4隻を毎年1隻ずつ改修し、パトリオットは6個高射群のうち4個高射群を改修する。
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三菱重工など日本9社、SDIを初受注 防衛システムなど研究
【ワシントン5日河内孝特派員】米国の戦略防衛構想(SDI)研究開発への日本からの参加第1号として注目された、西太平洋地域戦略防衛構想に三菱重工、川崎重工業など日本企業9社が加わることが5日、明らかになった。米国防総省が4日、発表したもので、三菱重工を中心とするグループと、米国のLTV社グループの2企業グループが応札、発注金額は約600万ドル(約7億8000万円)。
この構想は、東アジアの西側同盟国および米軍基地を目標とするソ連の巡航ミサイル、潜水艦発射ミサイルに対抗し有効な防御手段を研究、開発しようというもの。範囲は、アリューシャン列島から日本列島を含みミクロネシアまでとされている。
当初、この構想には三菱重工を中心とし、三菱電機、日立製作所、富士通、三菱商事と米国ボーイング、ロッキード、マクダネルダグラス社などが加わった企業グループだけが名乗りを上げ、受注は確実とされていた。ところが、9月中旬の入札締め切り直前にLTV社を中心に川崎重工も加わった第2グループが参加、国防総省がどのような判断を下すか注目されていた。
双方は防衛システムと迎撃ミサイル設計について並行して研究を進めるものとみられ、最終的には一方に絞られる模様だ。
日本は昨年7月、米国との間でSDI研究に参加する取り決めを締結した。SDIに参加した同盟国としては英国、西独、イスラエルなどに次ぎ9番目となった。(毎日新聞 1988/11/06)パトリオットは役立たず 米物理学者ら証言 湾岸戦争から1年 米で性能論戦開戦
湾岸戦争で米軍のパトリオット・ミサイルは、イラク軍のスカッド・ミサイルを撃墜して、一躍、名をあげた。17日の湾岸戦争開戦1周年にタイミングを合わせたかのように、米国ではパトリオット・ミサイルの性能をめぐって「実はスカッド迎撃には全面的に失敗した」「いや十分に役目を果たした」と論争が起きている。
湾岸戦争では現地での生々しい戦闘の様子がテレビで世界に中継された。米軍のパトリオット・ミサイルがイラク軍のスカッド・ミサイルを撃墜する瞬間もテレビで映し出された。
イラク軍はスカッドをサウジアラビアとイスラエルへ向けて発射した。湾岸戦争ではイラク軍が効果的に用いた唯一の武器だった。
サダム・フセイン・イラク大統領は去る6日のイラク陸軍記念日にイラク国営テレビで演説を行い、「わが国のミサイルは、のろわれたイスラエルを攻撃し、いたるところでアラブ人を解放した」と述べ、湾岸戦争におけるスカッドの威力を自慢した。
パトリオットはこのスカッドの攻撃を食い止めたとされているが、それは見せかけの成功にすぎない、というのがパトリオット批判派の言い分だ。
論争の火付け役は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のセオドール・ポストル教授(国家安全保障政策論)。同教授は国防総省でアドバイザーを務めたこともある物理学者。
昨年4月、ポストル教授は米ハーバード大学のアルバート・カーネセール教授とともに、米議会公聴会で、パトリオットの性能を批判する証言を行ったが、最近、ハーバード大学科学・国際間題センターの学術誌「国際安全保障」に詳細な論文を寄せて、その中で「パトリオットが成功したという話は幻想にすぎない」と主張している。
米陸軍のパトリオットはイラク軍のソ連製スカッドと同様に戦術弾道ミサイル(TBM)に分類され、長さは5.18メートル、直径は0.41メートル、射程は160キロ。
パトリオツトの迎撃システムは、まず地上レーダーがスカッドを識別して管制ステーションに情報を送り、それに基づいてミサイルが発射される。地上レーダーはスカッドの飛行ルートを予測して、パトリオット先端部のレーダーに信号を送ってスカッドに向かわせる。
ポストル教授はこう言う。
「スカッドの設計はあまりにもお粗末のため、目標に接近した際、厚い大気の中でミサイル本体がバラバラになってしまい、迎撃が困難となる」
その結果、パトリオットが迎撃に成功した相手はスカッドの破片にすぎず、肝心のスカッドの弾頭部分は無傷のまま、目標へ突っ込んでいくケースが多かったという。
同教授は「パトリオットがスカッドの破片に命中したのを本体を撃墜と錯覚するのは、炎とさく裂音に惑わされるためで、ビデオを詳しく調べると、そうでないことが分かる」と述ペている。
さらに「パトリオットをスカッドヘ向けて発射した場合、地上における損害は、パトリオットを発射しなかった場合より大きくなったと思われる」と同教授は述ペ、「パトリオットはスカッド迎撃にはほとんど全面的に失敗」と決めつけている。
パトリオットは湾岸戦では150発がイラク軍のスカッドとその改良型ミサイルのアル・フセインヘ向けて発射された。
これに対してパトリオットの主要メーカー、レイセオン社(マサチューセッツ州レキシントン)は「パトリオットはサウジでは90%近くの成功率をあげ、イスラエルでは50%の成功率を記録した。イスラエルでの成功率が低かったのは、要員の訓練が十分ではなかったからだ」と反論した。
同社の広報担当副社長、ロバート・スケリー氏が発表した声明は「事実は単純明快である。パトリオットは十分に役目を果たした」と述ペ、「ポストル教授はかねてから迎撃ミサイルは役に立たないと主張しており、今回もそうした自説を展開しただけである」としている。
パトリオットは湾岸戦争をきっかけに、各国から注文が殺到しているといわれる。それだけにレイセオン社としては、パトリオットヘの批判を無視できない。国防総省は同社を応援する立場にあるが、まだポストル教授の主張に本格的な反論は試みていない。(中日新聞 1992/01/17)「SDIにニセ実験 ソ連と米議会欺く」 NYタイムズ
【ワシントン18日=ニューヨーク・タイムズ特約】レーガン政権時代の複数の政府当局者が明らかにしたところによると、いわゆるスターウォーズ計画――戦略防衛構想(SDI)の担当者が不正なやりかたでミサイル迎撃実験を操作したうえ、他のデータも改ざんして、当時の仮想敵国ソ連と米議会をだましていた。この不正な計画は当初、SDIの実験が成功しているようにソ連に思わせることが狙いだったが、米議会から多額の予算を獲得するための説得材料にも使われるようになったという。
これらの政府当局者によると、不正な実験計画は当時国防長官を務めていたワインバーガー氏も承認していたとされる。これに対して同氏は承認したかどうかについては確認を避け、「議会をだましたことはない。しかし、敵に偽情報を流すのは常道だ」などと述べた。
偽情報の具体例として関係者が挙げた実験は、1984年6月に行われた。カリフォルニアから発射された標的のミサイルを、太平洋上から打ち上げたミサイルで迎撃するものだった。しかし、最初の3回が失敗したことで、「議会で多額の予算が認められなくなるのを恐れた」(実験を担当した科学者)ため、4回目の実験を偽ったという。
この科学者によると、標的のミサイルに特定の周波数を発信する無線標識を取り付け、受信機をつけた迎撃ミサイルが用意に捕そくできるように仕組んだ。結果は「見事に命中し、議会も疑問を持たなかった」と話している。(朝日新聞 1993/08/19)SDI 迎撃実験成功はウソ? 米紙が報道 事実調査へ
【ワシントン20日関口宏】スターウォーズ計画の別名で知られた米国の壮大なミサイル迎撃システム、戦略防衛構想(SDI)は今年5月にアスピン国防長官が開発打ち切りを宣言して、忘れられた存在となりつつあったが、「開発の行方に大きな影響を与えた1984年の迎撃実験成功の報告には虚偽の内容が含まれていた」とするニューヨーク・タイムズ紙の報道が米マスコミにSDIという文字をよみがえらせた。アスピン国防長官は「重大な問題」と受け止め、事実関係の調査を命じている。SDIは旧ソ連の大陸間弾道ミサイル(ICBM)が米本土へ向けて発射された場合、これを宇宙空間で迎撃、撃破するシステムで、レーガン政権時代の83年に開発計画が打ち出された。ニューヨーク・タイムズ紙が取り上げたSDI実験は84年6月に行われている。
この時の実験の目的は、赤外線センサーを搭載した迎撃ミサイルを地上から打ち上げ、その赤外線センサーが宇宙空間を飛来する弾道ミサイルの弾頭追尾に有効かどうか確かめることにあった。
迎撃ミサイルは2段ロケットを使って西太平洋クエゼリン島の米陸軍ミサイル発射実験場から打ち上げられた。一方、模擬弾頭を装備した標的用のミサイルはカリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地から発射された。
迎撃ミサイルは標的ミサイルに命中、実験は成功した。過去3回にわたる失敗を経て4回目にようやく実験成功にこぎつけたもので、迎撃ミサイルが飛行中の長距離弾道ミサイルの弾頭を撃破したのは、ミサイル開発史上、これが最初のケースだっただけに、SDIの前途を明るく照らす材料となった。
しかし、ニューヨーク・タイムズ紙(18日付)が匿名を条件とするレーガン政権時代の4人の実験関係者の話として報じたところによると、この時の実験成功は、実際は「成功を装った」ものであり、「他のデータも改ざんした」ものだったという。
同紙は「SDIの前途を保証するため、実験をごまかした」という関係者の話も紹介した。その方法は、標的ミサイルに特定の周波数を発信するビーコンを搭載し、迎撃ミサイルにはそれをキャッチする受信装置を取り付けた。これによって、迎撃ミサイルは確実に標的ミサイルを撃破できたというわけである。
偽装の上に成り立つ実験成功は、当時のワインバーガー国防長官も了承し、結果的に旧ソ連に米国が真剣にSDI開発と取り組んでいることを印象づけ、同時に米議会にSDI予算を認めさせる効果をもたらしたと同紙は報じた。
4人の関係者のうちの1人は「偽装工作は冷戦時代の文脈の中でとらえるべきで、だまし合いは米ソ双方の武器だった」と同紙に語っている。
こうした報道に対してワインバーガー元国防長官は「全くナンセンスだ」と述べ、「議会をだます理由なんて何もないし、旧ソ連はわれわれが何をやっているのかちゃんと知っていた」と反論した。
また当時、陸軍弾道ミサイル防衛システム司令部の司令官だったユージン・フォックス退役少将は「迎撃ミサイルには何の受信装置も搭載していなかった。だから迎撃ミサイルは標的ミサイルと直接、通信する方法はなかった」とニューヨーク・タイムズ紙の報道内容を否定した。(中日新聞 1993/08/22)撃破率9% パトリオット神話“落下” 米会計検査院報告
スカッドミサイルを次々に空中で撃破するパトリオット――。湾岸戦争で生まれた対空ミサイル“パトリオット神話”だが、実際のスカッド撃破率は9%にすぎないと、米国会計検査院が報告書に記載していたことが27日、防衛庁関係筋の話で分かった。両ミサイルの残がいが落下し、むしろ被害が広がった事実も確認されている。訪米中の中西啓介防衛庁長官は27日、米国のアスピン国防長官と会談するが、パトリオットを組み込んだ戦域ミサイル防衛(TMD)構想の日米協議に重大な影響を与えそうだ。
湾岸戦争ではスカッドと呼ばれていたが、正式にはイラクの技術で手を加えたスカッド改良型中距離弾道ミサイル「アル・フセイン」。これに対して、米軍は地対空ミサイル「パトリオット(PAC2)」で迎撃した。その光景は全世界にテレビ中継され、パトリオットが「夢のハイテク兵器」であるかのような印象を与えた。
イラクが発射した「アル・フセイン」は88発。これに対し、米軍は158発のパトリオットを発射した。米軍は当初、96%を破壊したと発表していたが、1992年4月の議会への最終報告ではイスラエルで40%、サウジで70%の成功率だったと下方修正した。
米会計検査院の報告書によると、スカッドは落下途中で爆薬の詰まった弾頭と推進部に分かれるため、弾頭部分の破壊が必要。だが、弾頭破壊が確実に行われたのは9%にすぎず、16%はパトリオットがスカッドの近くを通ったものの弾頭破壊の証拠がない、という。
また、この報告より前、米国の専門家が「市街地に落ちたスカッドやパトリオットの残がいで、負傷者は50%、アパート損壊は3倍に増えた」と発表した。
米国では“神話”はすっかり地に落ちている。(中日新聞 1993/09/27)疑問だらけ 戦域ミサイル防衛構想 防衛庁にも苦慮する声
米国が日本に協力を求めている戦域ミサイル防衛(TMD)構想が議論を呼んでいる。現在、協力の可能性を探る日米事務レベル協議へ向けて、調整が進んでいるが、米国の“売り込み”の真意は? 巨額な開発費に見合う効果があるのか、集団的自衛権や宇宙の平和利用と矛盾しないのかなど、急浮上した同構想の問題点を検証した。(東京社会部・半田滋、政治部・大島宇一郎)米の真意は兵器輸出
米国がこの構想で日本などの協力を求めるのは、地域紛争などに対応する米国の国防戦略の転換やミサイル防衛の拡散という冷戦終結後の新しい状況を考えた上でのことだが「米政府の狙いは新兵器の売り込み」(防衛庁幹部)という面もみのがせない。
SDI(戦略防衛構想)がつまずき、膨大な費用をかけて、そのために開発、蓄積してきた技術を“輸出”し、米国国防産業の救済を図ろうという米産業界の願いがこめられている。
純軍事的な意味でも、日本を含めた北東アジアには、核疑惑に満ちた朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)という不安定要員が存在する。ちょうど、北朝鮮が日本の大部分が射程にはいる中距離弾道ミサイル「ノドン1号」の実験に成功したこともあって、TMDの日本“売り込み”がある種の現実味をもって急浮上した。迎撃の能力は未知数
ところで「ミサイルをミサイルで撃ち落とすことが本当に可能だろうか」。米国が日本政府に参加を勧めているTMD構想について、迎撃効果を疑う声が防衛庁内にある。湾岸戦争で生まれた「パトリオット神話」が幻想であることを知っているからだ。
湾岸戦争で米国は、イラクが発射したスカッド改良型の中距離弾道ミサイル「アルフセイン」を地対空ミサイル「パトリオット」(PAC2)で迎撃した。米軍は当初、96%を撃破と発表したが、その後の調査で9%にすぎないことが判明した。
TMD構想に含まれる「PAC3」や戦域高々度防空システム「サード(THAAD)」にしても、空中でミサイル同士をぶつけ合う“神業的手法”を取ることに変わりない。命中率が上がらず、技術的につまずいた米国のSDI(戦略防衛構想)の焼き直しだけに、命中精度は「まったくの未知数」(航空自衛隊幹部)。確実なのは、1個高射群で約800億円するパトリオットと比べ、はるかに高額であることぐらいだろう。集団的自衛権に抵触
この構想には制度面でも問題点がある。第1に憲法上許されない集団的自衛権に抵触しないかという点。
畠山蕃事務次官は先月末の講演で、米国が「TMDはミサイル防衛の世界的なネットワークに加盟するものではなく各国個別のミサイル防衛構想の総称」と説明したことを強調し、集団的自衛権にはあたらないとの見解を示した。
だが、同じころ来日した韓国の韓昇洲外相は韓国人特派員に対して、日米協議に参加したいとの考えを表明。これにより、韓国の関与の仕方によっては集団的自衛権に抵触する可能性が指摘されることになった。
4日の衆院予算委で質問にたった自民党の橋本竜太郎政調会長は「万一の危険へ対応を準備するのは当然だ」と構想の趣旨には理解する立場を示したが、「日米韓のTMDとなると問題を生ずる」と述べたのをはじめ、与党内にも「集団的自衛権は微妙な問題が残る」(公明党幹部)との見方が早くも出ている。
実際、防衛庁内にも「日米韓でTMDを構成すると確実に問題は出る」(宝珠山昇防衛庁官房長)と、抵触の可能性を認める発言も出ており、さらに慎重な検討が必要なようだ。宇宙平和利用と矛盾
もう1つは宇宙平和利用の国会決議と矛盾しないかという問題。
この国会決議については「わが国における宇宙に打ち上げられる物体および打ち上げ用のロケット」を対象としていることから、防衛庁内は「衛星を他国と共有せず、米国の衛星からの情報提供は問題はない」との見方が強い。しかし決議は昭和44年の通常国会で議決されたもので、TMDのような衛星の利用法を想定していたものかどうかは疑問。TMDを契機に宇宙利用のありかたについて改めて議論を呼びそうだ。
米国は、8月、9月の2度にわたり国防省次官を日本に派遣したうえ、11月上旬にはアスピン国防長官の来日計画を進めており、TMDへの勧誘に熱を入れている。防衛庁内には「米国と付き合わないわけにもいかず難しい問題だ」(幹部)と対応に苦慮する声も出ている。<戦略ミサイル防衛(TMD)構想> 中距離弾道ミサイルを軍事衛星で探知、その情報をコンピューターで即時処理し、パトリオットほか、イージス艦搭載の対空ミサイルや戦域高々度防空システム「サード(THAAD)」を複合的に活用して迎撃するシステム。米国で開発を進めている。米国の盟友国やその国に配備されている米軍を守るため、ハイテク防衛網を張り巡らせようとするもので、米国は今後6年間に400億ドル(約4兆2000億円)を投じる計画。日米次官級安保定期協議(SSC)の下で協議することが決まっている。(中日新聞 1993/10/16)
「パトリオット 迎撃率低い」 湾岸戦争時「ほぼゼロ」 イスラエル元国防省発言記録
【ワシントン20日=坂口智】湾岸戦争でイラクのスカッド・ミサイル迎撃に効果を上げたとされる対空ミサイル「パトリオット」について、戦争当時のイスラエル国防相モシェ・アレンス氏が「ほとんど役に立たなかった」と判断していることが、朝日新聞が入手した同氏の発言記録で明らかになった。米国が日本に対し開発協力を提案している戦域ミサイル防衛(TMD)構想では、パトリオットの改良型が迎撃ミサイルシステムの有力候補となっている。
アレンス氏は今年9月上旬、マサチューセッツ工科大のセオドア・ポストル教授らから成る研究チームのインタビューに対し、「正確な統計はないが、迎撃成功率は極めて少ない。実際無意味(なほどの数)だ」と発言。改良計画にも強い疑念を表明していた。
戦争直後、米国は100%に近い迎撃成功率を主張していたが、その後サウジアラビアでの迎撃成功率は約70%、イスラエルでは40%と下方修正した。また、米会計検査院は、「迎撃成功の証拠があるのは9%」との報告を出すなど、諸説が流れているが、イスラエルの軍事情報を掌握していた人物がパトリオットの「無能性」を公にしたのは初めて。
アレンス氏は、パトリオットが本来、対航空機用に開発されたシステムであり、「スカッドのようなミサイルを迎撃できる可能性は非常に低いことを知っていた」と発言。同氏は「(戦争開始後)最初の数日で、迎撃効果はゼロに近いことがはっきりした」と断言した。(朝日新聞 1993/11/21)SDI実験の成功、「まやかしだった」 米議会当局が報告書
【ワシントン22日=ニューヨーク・タイムズ特約】米レーガン政権時代の戦略防衛構想(SDI)の「スターウォーズ計画」で、ミサイル迎撃実験が3回失敗した後、4回目の実験を成功させるために、担当官がこっそりと命中率を倍加させる「補強措置」をとっていたことが、米議会調査当局の報告書で明らかになった。報告書は「ミサイル防衛計画の技術が実際よりも進んでいると、当時のソ連に思わせるために、まやかしの計画を行っていた」と述べている。
4回目の実験は1984年に行われ、標的のミサイルに命中した。報告書によると、標的のミサイルに熱を加えることによって、迎撃ミサイルのセンサーが感知しやすくなる措置が取られた。さらに、正面からの衝突を狙っていた過去3回の実験方法を改め、標的ミサイルの側面が見えるように飛行させて、標的の範囲を広げた。これで迎撃に成功する確率は2倍以上になったという。
初めの2回の実験では、標的のミサイルに爆弾を埋め込み、迎撃に失敗しても爆発させる計画を立てた。しかし、「他人をだますには、あまりにも2つのミサイルが離れ離れだった」と、ニアミスにさえできなかったために、この方法を断念したとしている。(朝日新聞 1994/07/24)TMD構想 産業界で割れる評価
米国が提案している新しい防衛構想である戦域ミサイル防衛(TMD)構想について、防衛庁が新年度予算で調査費2000万円を要求するなど具体的な動きが出てきたのに伴って、その評価が割れ始めている。産業界では、ビジネスチャンスが広がる、という期待論とともに、縮小傾向にある防衛予算がTMDに取られて他の装備受注が減る、との警戒論も高まっている。また、軍事的な実効性を疑問視する見方も根強い。予算論議のなかで、TMD構想はひとつの焦点になりそうだ。「システム全体の費用は兆円単位」といわれるTMD構想をにらんで、9月に発足した「防空システム研究会」を作る重工・電機メーカー8社は、全体システム、センサーなど4つの専門部会を設け、既存の機器・システムの利用方法や、システム構築の費用などの研究を進めているが。12月下旬に3回目の全体会合を開き、中間報告にまとめる予定だ。
従来の迎撃ミサイルが敵ミサイルの近くで爆発するのに対し、迎撃ミサイルで敵ミサイルを直撃することを目指すTMD構想では、ミサイル自体は米国メーカーが開発を進め、迎撃のタイミングなどをコンピューターを駆使して計算する技術や、センサー精度の向上などが課題とされている。
こうした技術は専ら電機メーカーの得意分野だ。研究会に参加する大手電機メーカーの担当者は「ビジネスチャンスとしては電機メーカーにある」と意欲を見せる。
また、パトリオットの制御システムや発射装置などをライセンス生産している三菱重工業も、「ミサイル自体にも研究の余地はある」(日根野穣常務)と前向きの姿勢を示している。改良型のパトリオットを使うTMDでライセンス生産を得るためには、日本側も何らかの貢献が必要、というのが三菱重工などの基本的な考えだ。
一方、他の重工メーカーは、「戦車も戦闘機もいらない。TMDだけあればいい、というものではないはず」(川崎重工業・筒井良三専務)と慎重論が大勢を占める。航空分野では、AWAKS(空中警戒管制塔)2機を購入した94年度、国内メーカーの受注額は1828億円と90年代の半分程度にまで落ち込んだ。防衛受注に7割を依存する航空機産業にとってTMDに予算を取られることは大きな打撃になる。
SDI(戦略防衛構想)では、日本メーカーも米国政府の予算で研究を進めた。しかし、TMD構想は、米国本土の防衛ではなく、米軍が展開している同盟国周辺での防衛を目指すこともあって、米国は日本にも出費を求めている。さらに、米国の防衛産業も国防予算が削られていることから、TMDを始め、日本への売り込みは強まる、との見方が防衛関係者の間では支配的だ。負担増を恐れ大蔵は消極的
TMD構想の調査費として2000万円の予算を要求している防衛庁は今年9月、米国と共同研究することで合意しており、何としても獲得したい構えだが、構想参加となれば将来の負担も巨額にのぼるため大蔵省は消極的だ。
防衛庁防衛局は「TMD構想への参加はまったく白紙。調査費は、参加すべきかどうか訪米調査団を作ることなどが目的」という。ただ、先端的な軍事技術の開発構想には、何らかの形で関与しておかないと取り残されるとの危機感がある。
これに対し、与党の社会党は、5日の経団連との懇談で、「軍縮の立場を堅持したい」と社会党色を打ち出したい考えを表明し、大蔵省内にも「単なる調査なら、既存の費用の範囲内でできないのか」という声がある。巨額な割に有効性低い
軍事評論家・野木恵一氏の話 米国が主導するTMD構想は、率直に言って、巨額なカネを投じる割には有効性は低いと考えている。
湾岸戦争では多国籍軍はパトリオット・ミサイルでイラクのスカッドミサイルを迎撃したが、弾頭を撃ち落とすことには失敗した。あの段階のパトリオットは、敵ミサイルの近くで爆発して撃ち落とすタイプだったが、直撃させる改良などは容易ではない。100%の確率で撃ち落とすことは技術的に不可能だ。
日本での展開は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を念頭においているようだが、そもそも北朝鮮が深刻な脅威だ、とは思わない。エレクトロニクス技術が遅れている北朝鮮に対応するために、巨額なハイテクシステムが果たして必要なのか。根本に立ち返って考えるべきだろう。(朝日新聞 1994/12/08)「B2ステルス」重大欠陥表面化 米議会調査文書 米紙伝える
【ワシントン17日共同】レーダーに映りにくいことを売り物とする米国のB2ステルス戦略爆撃機に重大欠陥があることが表面化し、今後の生産計画をめぐる論議に影響を与える可能性が出てきた。
15日付の米紙ニューヨーク・タイムズが、議会会計検査院の調査報告書草案の内容として報じたところによると、欠陥は(1)B2爆撃機が搭載しているレーダーが、雨天の際に雨雲と山の地形とを区別できない(2)最大の特徴である敵のレーダーに機影が映らないという「ステルス性」が、技術的側面から当初の計画ほどの性能ではない――の2点。
報告書は、国防総省の当局者から会計検査院が聴取し作成。「ステルス性」については、これまで開発に要した14年に加え、さらに6年の開発期間が必要とみられると指摘している。
B2爆撃機は、20機が総額444億ドル生産済みもしくは生産中。開発費は240億ドルに達し、最も高価な戦闘機といえる。
国防力を重視する下院共和党は、さらに20機の生産追加を求めているが、国防総省はこれ以上のB2は不要としており、上院では共和党議員の一部からも「冷戦時代の遺物」(マケイン議員)と反対が出ている。(中日新聞 1995/07/18)見えない爆撃機も見える? チェコ製レーダー 旧ソ連の某国購入
【ウィーン31日=宮田謙一】米国が開発した「見えない(ステルス)爆撃機」も探知できるというレーダーシステムを開発したチェコの兵器メーカーが、旧ソ連の共和国の1つにシステム一式の売り込みに成功したことが、明らかになった。
「タマラ」と呼ばれるこのシステムは一式約2000万ドルといわれる。レーダーから電波を発射し、そのはねかえりを利用して探知する従来型のレーダーと異なり、精密なセンサーとコンピューターを組み合わせ、ステルス機から発するわずかなレーダー妨害電波などでも存在を感知できる受動式システムだという。
売却先は公表されていないが、輸出を認可したチェコ通産省当局者は「国際的にみて何の問題もない国」としている。
タマラは1980年代後半に開発されたとされ、西側の軍事専門家の中には性能を疑問視する声もある。
しかし、チェコの軍需産業の技術水準は共産党政権時代から定評があり、こうした懐疑的見方に対しては、「米国がばく大な開発経費をかけたステルス技術を守るためのPR作戦」との反論も国内のメディアには出ている。
昨年、総額9000万ドルのイランへの売却話が米国の圧力でつぶれたと伝えられたほか、中国、台湾、韓国、インド、タイなどが関心を示しているという。(朝日新聞 1995/08/01)ハイテク兵器は高い買い物 米検査院報告書
【ワシントン9日=ニューヨーク・タイムズ特約】ハイテク兵器は、高価な割に効果が過大に評価されており、「新兵器」が、「旧兵器」よりも成果をあげたとは必ずしもいえない――米国の会計検査院はこんな指摘を盛り込んだ報告書をまとめ、何百億ドルもかけた兵器に頼りがちになっている軍の計画に疑問を示している。
検査院は、国防総省のデータや1991年の湾岸戦争時のパイロットら100人以上からのインタビューをもとに4年がかりで報告書をまとめた。ニューヨーク・タイムズが入手した報告書の要約によると、ハイテク装置があってもパイロットが、戦車とトラックの識別もつかなかったケースもある。また、レーザーや電子透視装置があっても、曇り空や雨などのためによく見通せなかったという。
こうした指摘をもとに、「湾岸戦争で使われた高価な飛行機が、低価格の飛行機よりも効力を発揮したとはいえない」と報告書は結論づけている。(朝日新聞 1996/07/10)『ステルス機 過大評価』 撃墜事件で米誌が性能検証
【ニューヨーク27日共同】28日発売の米ニューズウィーク誌最新号は、敵のレーダーに映りにくい「見えない爆撃機」といわれる米空軍のF117ステルス爆撃機が、ユーゴスラビア空爆中に撃墜された事件の検証記事を掲載、ステルス機の性能は過大評価されており、実は脆弱(ぜいじゃく)だと報じた。同誌はまた、別のF117が作戦中に被弾したとも伝えた。
同誌が国防総省や専門家の話として伝えたところによると、ステルス機の機体はレーダー波の反射を避けるため、角材を切り落としたような直線を複雑に組み合わせた形状をしている。しかし、この形状が変化したときには在来型のレーダーにも捕そくされやすくなる。3月にベオグラード近郊で撃墜されたF117は、爆弾投下用の扉を開いた際、ユーゴ軍のロシア製移動レーダーにとらえられたとみられる。
また黒く塗装された機体は月夜の雲を背にした場合などには視認が容易になるため、灰青色の方がカムフラージュになるという説もあったのに、空軍は「男らしくない」として黒く塗るよう命じていたという。撃墜された機は、片翼に機関砲弾による穴が開いており、ユーゴ軍に視認され対空機関砲で撃たれた可能性があるという。(中日新聞 1999/06/28)NMD:開発中の迎撃システムは役に立たず 米の科学者11人
【ワシントン11日布施広】米政府が巨額の費用をつぎ込んで開発している米本土ミサイル防衛(NMD)について、米国の著名な科学者11人が11日、開発中の迎撃システムは役に立たないと結論付けた報告書をまとめ、クリントン大統領にミサイル防衛構想の根本的な見直しを求めた。大統領は7月をめどに、NMDを配備するか否かを決断するが、米政府諮問機関の元メンバーを含む科学者団体が、技術的な問題点を指摘したことで、大統領はさらに難しい対応を迫られそうだ。
『対抗措置』と題した約200ページの報告書はマサチューセッツ工科大、ペンシルベニア大、コーネル大などの教授、有力研究所の研究員らがまとめた。11人中には、国防総省の諮問機関や米議会委嘱の「弾道ミサイル脅威評価委員会」の元メンバー、米防衛産業の元研究者も含まれる。
敵の弾道ミサイルを迎撃ミサイルで破壊するNMDについて報告書は、敵がおとりとして多数の金属製風船をばらまいたり、直径10メートルの風船の中に弾頭を入れた場合など、迎撃システムが正確に標的を捕捉できるかどうか疑問と指摘。敵が弾頭を金属で覆って冷却した場合は、熱線追尾も難しくなるとしている。
さらに、NMDが核兵器の多弾頭化に対応できたとしても、化学・生物兵器の場合は弾頭のユニットをさらに細分化できる。報告書によると、中国はNMDを無力化する対抗策を取ると明言しており、米国がNMD配備を決断した場合、ロシア、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)などが、NMDの防御網を突破するミサイル技術の向上に努める可能性が高いという。
国防総省は6月にもNMD迎撃実験を行い、配備するか否かをクリントン大統領に進言する方針だが、NMDの開発・維持費として300億ドル近くかかるとの見方もある。半面、過去の実験では手の込んだおとりは使われていないため、報告書は「現在の実験では実際のミサイル攻撃に対する有効性を評価できない」と指摘。
見切り発車の形でNMDを配備すれば「米国の安全保障は低下する」と警告している。(毎日新聞 2000/04/12)膨れ上がる米のミサイル防衛費、見積もり600億ドルに
核不拡散条約(NPT)再検討会議で各国の批判を浴びている米国の本土ミサイル防衛(NMD)構想をめぐり、米議会予算局は25日、2015年までの開発・配備費は594億ドルにのぼる、と発表した。国防総省は、敵のミサイルを迎え撃つ迎撃体の配備数を100発とする第1段階の費用しか明らかにしていない。この日の報告書は、最終的に250発まで増やす第3段階までの総見積もりに初めて踏み込み、国防総省が先に発表し直した数字の倍近くになる、と結論づけた。膨れ上がる一方の費用に、反対派は「値札を何回付け替えればいいのか」と批判している。
国防総省は今月、迎撃体100発の配備や、2026年までの兵器の維持などに少なくとも302億ドルかかる、と修正したばかり。
クリントン大統領は6月の米ロ首脳会談で、(1)撃ち落としをめざすのは、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)などの長距離ミサイルで、ロシアの核ミサイルではない(2)当面は、アラスカの基地1カ所だけで、大規模な展開はしない(3)配備に伴う弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約の見直しも小幅にする──といった案で、ロシアの理解を得たい考えだ。
しかし、共和党は「限定的な配備でロシアと妥協すれば、将来の開発の手足を縛る」と反対する。しかも、地上配備の迎撃体を250発にする、という国防総省の最終目標でさえ、国土防衛には不十分だ、と唱えている。ロシアの説得のために規模を抑えれば共和党が反発し、大規模な配備に道を開けば、ロシアと折り合えないだけでなく、開発費もさらに膨れ上がる、というクリントン政権の板挟みが、浮き彫りになってきた。
中立的な立場の議会予算局が、1996年から2015年までのコストを試算したところ、第1段階は、国防総省の見積もりを39億ドル上回る295億ドル。地上のXバンド目標捕そくレーダーや早期警戒衛星などを増やす第2段階で61億ドル、早期警戒機能を高め、ミサイル基地を2カ所にする第3段階には133億ドルが、それぞれ必要となる。これに、衛星の運用費などを加えると、総額で600億ドル近くになる。
NMD構想を支持しているドメニチ上院議員(共和党)も「最終的にいくらかかるのか、国防総省がつかんでいるとは思えない」と疑問を呈した。NMDは軍拡競争の再燃につながるとして反対する「核の危険削減連合」や「憂慮する科学者連合」などの民間団体は「技術的に不確かな兵器にこれほどの巨費を投じるのは無駄だ」「2階建ての家を建てるのに土台の費用しか明らかにしてこなかったのはおかしい」と勢いづいている。
NMDは6月に予定されている迎撃実験を経て、国防長官が実戦配備について大統領に勧告。クリントン大統領は、脅威、コスト、技術、ロシアとの軍備管理交渉の4点を踏まえ、夏から秋にかけて、正式に導入するかどうかの結論を出すことになっている。(朝日新聞 2000/04/27)中国のICBMを無力化 米NMD、軍拡招く恐れ
【ワシントン2日共同】米国が2005年の配備開始を構想する米本土ミサイル防衛(NMD)が、中国の大陸間弾道ミサイル(ICBM)戦力を無力化する能力を持つことが1日までに分かり、米軍備管理専門家らが「中国が対抗上、ミサイル軍拡を進めるのは必至」と懸念を表明した。
同構想の全容は、米政府がロシア政府との弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約の修正交渉の場で提示し、米核問題専門誌が最新号で全文を報じた。
それによると、NMD構想は100基の迎撃ミサイルをアラスカ州に配備する第1次計画と、ノースダコタ州に100基を配備する第2次計画に分かれ、合計200基の迎撃ミサイルが侵入してくる40から45のミサイル弾頭を破壊する。
米国はNMDが少数のミサイルしか発射できない朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)やイランを対象とし、ロシアの千を超すICBM戦力には対抗できないとしてロシアの了解を得ようと努めているが、中国が保有している20基前後の単弾頭式ICBMは無力化されてしまうことから、米軍事誌ディフェンス・ウィーク最新号は「中国のNMDへの懸念は正しいことが証明された」と解説した。
また、米カーネギー国際平和財団のウルフストール研究員は、中国が対米抑止力を維持するためにミサイル数を増やし、多弾頭化などICBM戦力を拡充するのは間違いないと指摘。「ロシアがNMDを了解しても、中国の軍拡を招き米国が得るものはない」との見方を示した。(共同通信 2000/05/02)ノーベル賞学者が反対表明 米本土ミサイル防衛で大統領に書簡
【ワシントン6日共同】原爆を開発したマンハッタン計画で指導的役割を果たし、戦後歴代米大統領の核兵器問題担当上級顧問を務めたハンス・ベーテ博士ら、米国のノーベル賞受賞科学者50人が6日、米本土ミサイル防衛(NMD)システムについて「資金の浪費の上、かえって米国の安全保障に悪影響を与える」として、配備中止を求める書簡を連名でクリントン大統領に送った。
有力科学者が反対を表明したことで、米国内にも根強いNMD反対論は今後さらに強まりそうだ。
書簡は、発射されたミサイルを空中で撃ち落とすという技術自体が「完成されていない。(迎撃)実験が成功したとしても、時期尚早で(配備は)危険だ」と指摘。
さらに、外交的な影響について「ロシアや中国は、(朝鮮民主主義人民共和国など)小さな国のミサイル脅威のために、米国がわざわざ巨額の資金を投じるとは受け止めない」として、NMD配備はロシアと中国の弾道ミサイル増強につながり、米国の安全保障上の利益にはならないと警告した。(共同通信 2000/07/07)NMD開発計画──技術よりも政治先行
「あなたは科学技術にうとい周囲の人々に科学的助言を求めている。その情報は正確ではない。科学者から情報を得るべきです」
今月6日。米マサチューセッツ工科大(MIT)のセオドア・ポストル教授は、米本土ミサイル防衛(NMD)開発計画の見直しを求めてクリントン大統領に手紙を書いた。科学技術分野の最先端を行くMITのミサイル技術の専門家。国防総省の海上ミサイル研究の顧問も務めた人だ。
「米国では不合理なことが進行している。(NMD開発に関して)注意深い考察より政治的な見方が先行しているのです」
教授が手紙を書いてから2日後、国防総省はNMDの3回目の迎撃実験に失敗した。迎撃用ミサイルから弾頭破壊装置を切り離すことができず、迎撃以前の段階で実験は頓挫(とんざ)した。たとえ最先端の技術を持っていても、思わぬミスがすべてを台無しにする。NMDを導入しても安全になるとは限らない、と少なからぬ米国民は考えただろう。
実験後、カリフォルニア州からホワイトハウスを見物に来た男性(51)は言った。「実験に失敗したんだから、NMD開発を続けるべきではない。おカネもかかる」。NMDを配備すれば、2015年までに600億ドル必要との試算もある。
ワシントン記念塔の前で、チェコのプラハから来たミロスラブ・ハンクさん(70)は力説した。「NMDを推進して、米国はロシアとどう折り合いを付ける気かね。米露共同のミサイル防衛なら賛成だな。ロシアがチェコを守ってくれるとも思えないけどね」。外国人といえども無関心ではいられない。
飛来するミサイルをミサイルで撃ち落とす防衛構想は、米国では1950年代から検討されてきた。技術的な壁、財政的問題などから、構想は実現しなかった。空前の繁栄を享受する米国で「技術的に可能になり次第、速やかに配備する」とのNMD法が成立した今は、ミサイル防衛推進派にとって「歴史的悲願」達成の好機と言える。
NMD開発に関与する宇宙・ミサイル防衛司令部のコステロ司令官は「NMDは最近浮上した構想じゃない。反対する者は何十年も同じことを言い続けている」と語気鋭く言ってのける。だが、問題は「技術的に可能」かどうかだ。敵が複数の核弾頭や生物兵器をばらまいても、1つ1つを完ぺきに破壊できるのか。
ポストル教授は「現行のシステムでは、可能性はほぼゼロ」と断言する。ノーベル賞を受賞した米国の50人の科学者も、NMD開発を批判する書簡を大統領に送った。クリントン大統領は、米国に対する脅威、技術的実現性など4点を考慮して、配備するかどうかを決めるという。
だが、米軍備管理協会のキーニー会長は素朴な疑問を提起する。「大規模な反撃を承知で、米国を核攻撃する国があると思いますか」。庶民には「技術的実現性」の問題も「脅威」の実態も、見えてこない。【ワシントン・布施広】(毎日新聞 2000/07/20)「軍縮に悪影響」と批判 NMD研究者が来日会見
原水爆禁止日本国民会議(原水禁)の世界大会に出席するため来日した米本土ミサイル防衛(NMD)の研究者、ジョージ・ルイス米マサチューセッツ工科大安全保障プログラム副主任(45)が31日、東京都内で記者会見。「NMDは技術的に核弾頭のおとりなどの対抗手段に対応できず、国際的な軍縮の流れに悪影響を及ぼす」などと、計画の見直しを訴えた。
ルイス氏は技術的な側面からNMDを研究し「表面を金属で薄く覆ったおとりのバルーン(風船)などを使用すると核弾頭と区別できず、防衛能力は期待できない」と結論付けた。
さらに「科学者はこうした事実を理解しているが、政治家を説得するのは困難で、新たな軍拡競争が起きる」と懸念を示した。
NMDは長距離弾道ミサイルを迎撃し、米国全土を守るシステム。迎撃するミサイルが比較的短距離で、防衛地域も在外米軍など狭い場合を戦域ミサイル防衛(TMD)と呼び、日本は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の脅威を理由に共同研究を進めている。
ルイス氏は、日本について「まず本当に脅威があるかどうかを検討すべきだ」と指摘。その上で「NMDやTMDを正当化するような脅威は存在しない」と語った。(共同通信 2000/07/31)日本は7カ所に配備か 米紙がTMD構想図掲載
【ニューヨーク4日共同】4日付の米紙ニューヨーク・タイムズは戦域ミサイル防衛(TMD)構想に関する特集を組み、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の弾道ミサイルから日本を防衛するためのミサイル3種類の配備に関する構想図を紹介した。
それによると、陸上発射の戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)の場合は東京、大阪、福岡など7カ所に配備することで日本列島のほぼ全域をカバーする。
低層用地上配備のパトリオットPAC3の場合は、札幌から鹿児島まで13都市に配備し、それぞれ周辺数十キロを防衛する。
第3の海上配備型上層防衛システム(NTWD)では、東京と大阪を含む本州中部が防衛対象となる。
同紙は、構想図は国防関係の研究機関などの資料に基づき作成したとしており、米国防当局の意向を反映しているかどうか不明。
また米兵多数が駐留する沖縄への配備構想の有無も明らかでない。
TMDは、在日米軍など特定の施設や地域を守るため、衛星などで弾道ミサイル発射を探知し迎撃するシステム。日米は共同で技術研究を行っている。(共同通信 2000/09/05)北朝鮮と中国が最大の懸念 米国防総省の報告書が指摘
米国防総省は10日、核、生物・化学兵器や弾道ミサイル開発の報告書を発表し、「北東アジアでは朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と中国が最大の懸念だ」と指摘した。コーエン長官は、報告書を引用しつつ、北朝鮮、イラン、イラクの「脅威」を強調し、米本土ミサイル防衛(NMD)の必要性を唱えた。NMD配備を掲げるブッシュ次期大統領は、政権発足を目前に、NMD開発の根拠を得た形だ。エネルギー省の諮問委員会も同日、「ロシアの核物質管理が新政権の最も緊急な課題となる」との報告書をまとめ、大幅な予算増を提言した。
国防総省の報告書「拡散の脅威と対応」は、クリントン政権末期に和解ムードが高まった北朝鮮について、「南北朝鮮の首脳会談や米朝の高官会談にもかかわらず、強力な軍事力維持の方針を堅持しており、大量破壊兵器やミサイルの開発計画は安保戦略の核心であり続けるだろう」と述べ、「外貨の獲得手段として中東や南アジアにミサイル技術を輸出している主要国のひとつ」と強調した。
中国については、100発以上の核弾頭を保有し、核ミサイル戦力の大型化、精度の向上を進めている▽2015年までに米国を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)を数十基に増やす▽NMDに対抗して核兵器の近代化を速 める可能性が強い、と指摘した。
また、国際テロの黒幕として、米国が行方を追うオサマ・ビン・ラディン氏のイスラム過激派組織が、大量破壊兵器の獲得に関心を示している、と述べ、「経済の衰退、犯罪組織の強大化、兵器の研究機関の警備のゆるみ、核物質の輸出管理の甘さ」などが顕著になっているロシアが最も狙われやすい、と警告した。
4万発以上の核兵器、1000トン以上の高濃縮ウラン、150トン以上の兵器用プルトニウムがあるロシアについては、ベーカー元上院議員とカトラー元大統領顧問が共同議長を務めるエネルギー省の諮問委員会が、10日の報告書で、「核物質が盗まれ、テロリストや敵対国家の手に渡る危険が切迫している」と訴えた。委員会はブッシュ次期政権に対し、向こう8年から10年間で、核物質の管理強化予算として300億ドルを投じるべきだ、と提言した。(朝日新聞 2001/01/11)NMD推進、日本の核武装化もたらす=米上院議員が警告
【ワシントン6日時事】米上院外交委員会のバイデン議員(民主、デラウェア州)は6日、記者会見し、「ブッシュ政権が全米ミサイル防衛(NMD)構想を推進するなら、将来は日本の核武装につながる」と指摘。日本の核武装化の可能性にも言及して、同構想に強く反対する考えを示した。
バイデン議員は「ブッシュ大統領が欧州諸国の反対を押し切ってNMD構想を進めることは可能だが、その代償は非常に大きい。特に中国が対抗して核兵器を増強することは間違いない」と語った。その上で、「こうした状況は日本や朝鮮半島の核武装を招くことになる」と述べ、NMD構想の推進は日本や朝鮮半島の核武装に発展すると警告した。(時事通信社 2001/02/07)TMDの開発優先を示唆 中国を刺激するのは必至
【ワシントン2日共同】ブッシュ米大統領は1日の演説で終始「ミサイル防衛」という表現を繰り返し、米本土ミサイル防衛(NMD)と戦域ミサイル防衛(TMD)との区別を避けた。さらに迎撃ミサイルの海上発射や発射直後のミサイルを迎撃するというTMDの特性にも言及した。
これは現在、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の迎撃よりも、射程の短いミサイルを撃ち落とす技術開発の方が先行しているという事実を反映しており、米国がとりあえずはTMDシステムの開発を優先させる姿勢を示したとみられる。
TMDは、アジアでは中国や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が発射した中距離ミサイルを、日本の基地や海上から迎撃ミサイルで撃ち落とすことを想定。欧州では、欧州に設置する基地から迎撃ミサイルを発射、ロシアのミサイルを撃墜することを意図して研究が行われている。
ロシアはTMDには比較的寛容な姿勢を示しているが、中国はNMDより、台湾にも配備される可能性があるTMDに対して警戒感を抱いており、ブッシュ大統領の演説は欧州よりアジア地域で波紋を広げることになりそうだ。(共同通信 2001/05/02)ブッシュ大統領、ミサイル防衛への強い意志を表明
ワシントン(CNN)ブッシュ米大統領は1日、メリーランド州の国防大学で演説し、1972年に締結された弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約を「過去の遺物」と定義、それに代わるミサイル防衛システム構築への米国の意志を明確にした。
しかし、この日の発言は米国のABM条約からの一方的離脱の意向を意味するものではなく、欧州やアジアの同盟国などに対し、米国の推進するミサイル防衛計画への協力を改めて訴えたものと解釈される。
ブッシュ大統領は「今日の世界の脅威に対抗するには、ミサイル防衛の構築を可能にする新しい枠組みが必要だ」と述べ、ミサイル防衛構想の制約になっているABM条約はロシアなど当事国と協議の上で「新しい枠組み」に置き換えるのが好ましいとの考えを示唆した。
大統領は米国とソ連が軍拡競争をしていた冷戦時代に締結されたABM条約は現在の世界を取り巻く状況にそぐわないと主張、イラクや北朝鮮などからの核兵器攻撃に備えるためには、ミサイル防衛システムが必要であると述べた。
さらにブッシュ大統領は、冷戦後の現実を反映させ、米国が近く一方的核軍縮を行う考えを示唆した。(CNN 2001/05/05)日本が米安保戦略の中心に 在日米軍司令官が言明
【ワシントン9日共同】ヘスター在日米軍司令官は9日までにロイター通信と行ったインタビューで、米国が安全保障政策の重点を欧州からアジア・太平洋地域に移す結果、地理的に日本が米国の安保戦略の中心になるとの見解を表明した。
この発言は日米同盟重視を公言しているブッシュ米政権の意向を反映したもので、安全保障の分野で米国が今後、日本に対し一層の責任分担を求めることは確実とみられる。
司令官は、米安保戦略見直しの結果「日本がアジア・太平洋地域の安保機構の中心になる。日本は(アジア安保戦略上)地理的に理想的な位置にある」と述べた。
ラムズフェルド米国防長官は、ペルシャ湾と朝鮮半島での2つの大規模紛争に同時対処する「2正面戦略」を事実上放棄、今後は中国の急速な軍事力の近代化をにらみ、安保政策の重点をアジア・太平洋地域に置くべきだとの報告を今週中にブッシュ大統領に進言する方針を決めている。フライシャー大統領報道官らによると、大統領はこの進言に沿ったかたちで米政府の新安保政策を近く正式表明する予定。
ヘスター司令官はまた、米原潜と愛媛県の実習船の衝突事故で日本国民の反基地感情が高まったという事実は「確かにある」と指摘。さらに沖縄県などでの米軍基地撤退要求について「地域を代表する地元政治家がそう主張するのは当然だ」としながらも「(米軍駐留の是非は)日本政府と米国政府の間の問題だ。われわれは日本のよき隣人でありたい」と述べ、米軍駐留は必要と主張した。(共同通信 2001/05/09)田中外相、米ミサイル防衛計画を強く批判
田中真紀子外相が5月25日にイタリアのディーニ外相に対し、ブッシュ米政権が積極姿勢を示すミサイル防衛計画を強く批判するとともに、欧州と日本が協力して米国に自重を求めるよう提案していたことが1日、明らかになった。日本政府はこれまで、ミサイル防衛計画について「米国が計画を検討していることは理解している」との立場を表明。田中外相の発言は政府の見解と異なる。
北京でのアジア欧州会議(ASEM)の昼食会で、隣に座ったディーニ外相に発言したもので、外務省関係者によると、田中外相は米政府の姿勢について「ミサイルの脅威というが、本当にミサイル防衛が必要なのか。日本と欧州は米国に対し『やりすぎるな』と言うべきだ」と提案。
また「米国は中国の経済的脅威、軍事的脅威に対抗したいがためにミサイル防衛構想を推進しているのだろう。武力で対抗してはならない」と述べた。
田中外相は1日の記者会見では発言について「そんなことはないし、いちいちマスコミの報道にコメントしない」と述べた。
日本政府は5月8日、来日したアーミテージ米国務副長官に対し(1)弾道ミサイルの拡散が深刻な脅威であるという米国の認識を共有する(2)米国との戦域ミサイル防衛(TMD)の共同技術研究は推進する――との見解を伝えている。(朝日新聞 2001/06/01)田中外相、豪外相にも米の批判 ミサイル防衛で
田中外相が5月28日に行われたオーストラリアのダウナー外相との会談で、米国のミサイル防衛計画に批判的な発言をしていたことが分かった。外務省関係者によると、ダウナー外相は「同盟国として、そんなことを言うべきではない」とたしなめたという。田中外相は25日のイタリアのディーニ外相との会談でも同計画を批判していた。(朝日新聞 2001/06/01)米ミサイル構想に当面、参加せず=TMDの日米共同研究は継続−防衛庁長官
中谷元・防衛庁長官は17日午前、テレビ朝日の報道番組に出演し、ブッシュ米政権のミサイル防衛構想について「米国がやろうとしていることであり、現在のところ参加するということはない」と述べ、当面、日本政府として同構想に関与することはないとの考えを明らかにした。政府はこれまで同構想に関して「米国の検討を理解する」などの見解を示してきたが、防衛庁長官が関与しないことを言明したのは初めて。(時事通信 2001/06/17)NMDとTMDを統合 「弾道ミサイル防衛」に 米国防総省
【ワシントン19日共同=上田泉貴】米国防総省弾道ミサイル防衛局のケイディシュ局長は19日、これまで「米本土ミサイル防衛(NMD)」と「戦域ミサイル防衛(TMD)」とに区別してきたミサイル防衛構想を大きく転換、今後は統合した「弾道ミサイル防衛(BMD)」として研究開発、実験を推進する考えを初めて表明した。下院軍事委員会の同防衛構想関連予算案審議の公聴会で証言した。
証言は日米の共同技術研究が進むTMDとNMDの一体化を進める米政府の姿勢を公式に宣言。「米戦略に組み込まれない」(防衛庁幹部)としている日本政府は今後、集団的自衛権との絡みで、システム開発にどこまでかかわっていくのか重大な判断を迫られる。
同構想に反対する中国、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)などがさらに批判を強めるのは確実だ。
局長は「TMDとNMDの区別はもはや存在しない。単一、統合したBMDシステムとして研究開発、実験計画を進めてきた」と明言。BMDはあらゆる弾道ミサイルを「上昇中」「大気圏への再突入までの飛行中」「最終の過程」のすべての段階で迎撃する多層防衛と位置付けた。
また、最終的には陸上、海上、空中発射の迎撃ミサイルを配備し、さらに軍事衛星に搭載したレーザー兵器で宇宙にも防衛網を展開すると説明した。
局長は日米の共同開発計画に関する覚書にも言及。防衛対象に「同盟国、友好国」を含めると指摘し、日本なども包み込むミサイル防衛網を目指していることをにじませた。
クリントン前政権は、長射程弾道ミサイルを米本土から撃ち落とすNMDと駐留米軍や同盟国を短・中距離ミサイルから守るTMDを分けて検討していたが、ブッシュ政権は射程に区別なく敵ミサイルを発射直後に迎撃する抜本的転換を志向。日本は共同研究について「国土防衛のために主体的に運用する」(中谷元・防衛庁長官)と強調してきた。(共同通信 2001/07/20)米環境団体、MD阻止に乗り出す
米ブッシュ政権がミサイル防衛(MD)体制の構築を急いでいる中、これを阻止しようとする米国内の反対勢力の動きも次第に活発になっている。
グリーンピースと天然資源保護委員会(NRDC)など8の環境団体は、合同で28日ブッシュ政権がアラスカ州などに建設を計画しているミサイル試験場と発射場など、ミサイル防御体制施設を建たせないことを求める訴訟を、ワシントン連邦地裁に起こした。
これらの団体は訴状で、ミサイル防御体制関連施設が建設される予定のアラスカ州及びハワイ、太平洋のマーシャル群島などのミサイル試射場所に対する環境影響評価が終わっていないと主張し、裁判所がこれらの施設に対する環境及び健康への影響に対する評価を命令することを要請した。
NRDCのアドルマン弁護士は「ブッシュ政権は自主承認だけでミサイル防御プログラムを急激に変更して来た」と指摘した後、「潜在的な環境被害を再評価しないままミサイル防御計画を進めてはならず、もしそうすれば法律違反になるだろう」と主張した。
グリーンピースのメラニー・アラスカ州代表は、「ブッシュ大統領がアラスカで『スターワーズ』進めようとするのは道徳に反するだけではなく違法かもしれない」と言った。
ブッシュ政権は7月14日、太平洋上空でミサイル迎撃試験に成功した勢いに乗って、10月に後続試験を実施する予定だが、国内外の反対の声のため苦心している。
著名なミサイル専門家でミサイル防御体制にとりわけ批判的なマサチューセッツ工科大学のポストル教授は、7月ミサイル迎撃テストが成功した時も、「このテストは造作されたもの」と主張して国防部を困惑させた。
教授は現在の技術では、防御用ミサイルが敵国から打ち揚げられたミサイルの弾頭とかく乱体を見分けて迎撃しにくく、精巧なかく乱体をの開発はミサイル防御体制構築より遥かに易しいという理由で、ミサイル防御体制の現実性に疑問を提起している。
国防部は彼の口を封じるため、マサチューセッツ工科大学のベスト総長にポストル教授が持っているミサイル防御体制に関する資料を押収して教授がそれを手に入れた経緯を調べることを要請したが、ベスト総長はポストル教授の資料は公開されたものだとしてこれを拒否した一方、ドナルド・グレッグ元米駐韓大使は28日、ワシントンのあるセミナーで、米国が北朝鮮の脅威を口実にミサイル防御計画を進めるのは正しくないと批判した。(東亜日報 2001/08/30)ブッシュ米大統領がABM条約からの脱退を通告
米国は13日、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約から一方的に脱退することをロシア政府などに通告した。ブッシュ大統領が同日、発表した。ミサイル防衛(MD)計画の本格推進に踏み出すためで、冷戦期の72年に旧ソ連と締結して以来、両核大国の抑止力の均衡を維持してきた条約体制は消えることになる。「力の均衡による平和維持」という世界の安全保障の枠組みを米国が単独で変えかねない決定で、中国や欧州など各国が懸念を強めるのは確実だ。
ブッシュ大統領はホワイトハウスで13日朝(日本時間14日未明)、声明を発表し、「ABM条約はテロリストや『ならず者国家』から国民を守る手段を妨げるとの結論に達した」と表明。ロシアとは、核報復の力を持ち合う「相互確証破壊」から「相互協力」の関係へ移るとし、「条約脱退でロシアの安保は損ねないことをプーチン大統領と合意した」と述べた。
米政府は同日、ロシアのほか、条約を継承したウクライナなど旧ソ連諸国の3カ国にも脱退 を通告した。条約の規定により、正式な脱退は通告から6カ月後になる。
条約脱退により米政府は、来年からMD計画を加速させる。これまで規制されていた海上や空中発射のミサイル迎撃兵器を使った実験も行い、来年後半からアラスカ州に司令センターなどの基地建設にも本格着工。04年には限定的な初期配備を実現させたい意向だ。
米政府は9月の同時多発テロ後、予定されていた条約の範囲内のMD実験を一時延期したが、大統領は今月11日、イラクや朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)など「ならず者国家」やテロ組織によるミサイル攻撃に備える必要性が明白になったと表明していた。
MD計画の影響をめぐっては、米国の防衛網をかいくぐる抑止力を持とうとする他国の核ミサイルの軍拡を誘発するとの懸念が指摘されている。とくに米ロに比べて小さい核攻撃力しか持たない中国の対応が注目されており、日本など周辺国に強い懸念材料となる。
また、日本は、MD計画の一部である戦域ミサイル防衛(TMD)の開発で米国と共同技術研究を進めており、米国の今後の計画にどう関与していくかも問われる。
ブッシュ政権は今年1月の発足後、戦略核兵器の削減とMD計画を組み合わせた国防態勢をめざす方針を表明。ロシア側は核の大幅削減には合意したが、条約は堅持する姿勢を保ってきた。(朝日新聞 2001/12/14)米国防総省:弾道ミサイル防衛局をミサイル防衛庁に格上げ
【ワシントン佐藤千矢子】米国防総省は4日、同省に設置していた弾道ミサイル防衛局(BMDO)をミサイル防衛庁(MDA)に格上げすると発表した。ブッシュ米大統領は先月13日、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退を宣言し、ミサイル防衛計画を推進する方針を鮮明にしており、同省として体制強化を図る狙いと見られる。
ラムズフェルド米国防長官はこの組織改編に伴い、(1)米国、前方展開米軍、同盟国、友好国を弾道ミサイル攻撃から守る(2)敵のミサイルの発射直後、宇宙空間、大気圏に再突入の各段階で多層的に迎撃するシステムを確立する(3)できるだけ早期に配備する──などの方針を示した。
日本は99年度から米国と戦域ミサイル防衛(TMD)を共同研究しているが、ブッシュ政権は長距離弾道ミサイルから米本土を守る米本土ミサイル防衛(NMD)と、中・短距離のミサイルから同盟国や海外駐留米軍を守るTMDを一本化し、敵のミサイルを各段階で迎撃する多層防衛を目指している。(毎日新聞 2002/01/05)米、MD開発に執念 TMD技術転用も
【ワシントン26日=杉本宏】ブッシュ米政権は25日、イージス艦を利用した海上発射の迎撃実験を初めて実施し、海外の米軍や同盟国まで守る大がかりなミサイル防衛(MD)にかける執念をあらわにした。海上発射の迎撃は技術的に極めて難しいといわれているからだ。短・中拒離ミサイルを撃ち落とす実験の一環でもあり、日米が共同技術研究を進める戦域ミサイル防衛(TMD)構想の流れにも沿ったものだ。
同政権下ではこれまで、地上発射の迎撃実験を2回実施していた。今回の実験は、ロシアが米国のMD開発を事実上黙認する姿勢を見せる中、海上発射という「未知の領域」に手をつけた形だ。
米国防総省は、まだ開発のごく初期段階なので「命中は成功の条件ではない」とし、本格的な迎撃実験とは位麿づけていない。今回は標的ミサイルにレーダーを内蔵するなどして、実験の難易度をかなり下げたため、命中したに過ぎないという見方が専門家の間で支配的だ。
だが、命中そのものよりも、大がかりなMD開発に取り組む意気込みに関心が集まっている。同省は地上、海上、空中に迎撃ミサイルの「盾」を張り巡らす計画だ。撃ち落とす段階も、標的の弾道ミサイルが上昇した直後、宇宙空間、大気圏に再突入した段階にわたる。
従来はイージス艦からは発射直後の迎撃方法に注目が集まっていたが、今回は宇宙空間でミサイルが上昇中の段階を狙った点も特徴だ。今後、気象条件などに左右されないこのタイプの実験を優先する姿勢を鮮明にしたともいえる。
今回の実験は、日米共同研究の対象である海上配備型上層システムの開発の範ちゅうに入る。今後、TMD開発をめぐる日本への圧力が高まりそうだ。
ブッシュ政権のMDは同盟国を守るTMDシステムと、米国を狙う長拒離ミサイルを迎撃する米本土ミサイル防衛(NMD)システムを融合したもので、両者の区別は判然としていない。TMD技術を転用し、将来的には、米国を守るシステムへ組み込むことも検討している。
一方、同政権は昨年12月にロシアに弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退通告をした。通告から6カ月後に正式脱退となる。同条約は長距離弾道ミサイルを対象にしており、中距離ミサイルを使った今回の実験は条約に抵触しないと米政府は説明している。海上発射の移動式でもTMD用の実験ならば条約違反にならないが、TMDとNMDの区別がはっきりしない以上、疑義は残るといえる。(朝日新聞 2002/01/27)日米共同で飛行実験 ミサイル防衛で米国防総省
【ワシントン6日共同】米国防総省が2005会計年度(04年10月−05年9月)に、ミサイル防衛構想に基づく日米初の迎撃ミサイル共同飛行実験を計画していることが6日、米国防総省の内部文書で明らかになった。実験は日米が共同研究している部品を搭載した迎撃ミサイルを使い、約2年間続く見込み。日本はこの成果を踏まえ「研究」から「開発」段階への協力移行を決断する見通しだ。共同実験の設定は、日米協力に対する米側の強い期待を浮き彫りにしたもので、配備を前提とした「開発」段階への日本参加の流れが強まってきたといえる。(共同通信 2002/04/06)迎撃ミサイルに核搭載 国防長官、開発に前向き
【ワシントン11日=杉本宏】11日付のワシントン・ポスト紙は、ブッシュ政権のミサイル防衛(MD)の一環としてラムズフェルド国防長官が核弾頭搭載の迎撃ミサイル開発の検討に前向きな姿勢を示していると報じた。
国防長官の諮問機関「防衛科学委員会」のシュナイダー委員長が同紙に明らかにした。それによると、長官は核弾頭搭載の迎撃ミサイル構想の是非を委員会が検討することに「非常に興味を示した」という。
国防総省が現在、開発を進めているのは非核の迎撃体による衝突で目標ミサイルを破壊するシステム。だが、敵のおとりミサイルなどと標的を識別して命中させるのは技術的に極めて難しいといわれている。核弾頭による迎撃は、命中しなくても、周囲で核爆発を起こせば、おとりも含めてすべて破壊できるとされる。(朝日新聞 2002/04/12)米ミサイル防衛システムは機能せず、資金の浪費=反対派
【ワシントン16日ロイター】米ミサイル防衛システムをめぐり、国防総省が当初の有効性はわずかと認めるなか、反対派からは、同システムは機能せず、資金の浪費になる、との声が上がっている。
レーガン政権で国防総次官補を務め、現在はシンクタンクに所属するローレンス・コーブ氏は、同システムが「現実の世界で実際に機能するという強い確信はまったくない」と述べた。
ブッシュ大統領は国防総省に対し、地上・海上型のミサイル防衛システムを2004年から配備するよう指示した。
同システムは、米国領土を長距離ミサイルから防衛することを目的としているが、11日の迎撃実験失敗を含め、過去8回行われた太平洋上での実験のうち3回が失敗に終わっている。
反対派は、同システムにはすでに数百億ドルが投じられているほか、長期的には数千億ドルを必要とするなど、あまりに費用がかさむうえ、言われている通りの効果を発揮することが証明されていない、としている。
また、システムの展開が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)や中国といった国のミサイル開発強化を誘うのではないか、との懸念も高まっている。(ロイター通信 2002/12/16)ミサイル防衛網は「北朝鮮の抑止効果」
ラムズフェルド米国防長官は17日、2004年から配置される米国のミサイル防衛網(MD)について、米国の軍事能力を立証し、核開発を試みる朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)などの国家に、抑止力として働くだろうと強調した。
同長官は定例ブリーフィングで「ミサイル防衛網は、北朝鮮のような国家へのメッセージなのか」との質問に「そう思っている」と答えた。そして「他国は、米国の能力がどのようなものかをよく知っているはずであり、それは、米国が持っている能力ほどの抑止力になるはずだ」と述べた。
同長官はまた、ミサイル防衛網はまだ初期開発段階にあるが、時間が経つほど改良される「進化的プログラムになるだろう」との見方を示した。
ブッシュ米大統領はこの日、外国からの弾道ミサイルの攻撃から米国を防衛する、いわゆるミサイル防衛(MD)体制を配置し始めるよう、軍部に正式に命じた。行政府関係者らは、このシステムが2004年から実戦に使われるようになると話している。
ブッシュ大統領は声明で「わたしが就任したとき、わたしは米国の国家安保戦略と防御能力を21世紀の脅威に合わせて変化させると約束した」としたうえで「今日、われわれが友人と友邦はもちろん、米国を保護するミサイル防衛体制を配置し始めることにより、わたしはこの脅威に対処する1つの重要な措置を発表したことになった」と説明した。ワシントン=金ジン(キム・ジン)特派員(中央日報 2002/12/18)英国、米ミサイル防衛構想に参加表明
【ロンドン15日ロイター】英国は、与党労働党内部からも強い反対の声が上がっているにもかかわらず、米国にイングランド北部の主要なレーダー基地使用を許可し、ミサイル防衛構想を是認する方針を明らかにした。
米国は12月、ミサイル防衛構想を進めるため、ファイリングデールズにあるレーダー基地の早期警戒システムを改良する許可を英国に求めていた。
フーン英国防相は「米国に対する答えは“イエス”でなければならず、改良計画に同意すべきという結論に達した」との考えを議会で明らかにした。
フーン国防相は、英政府が米国に正式な回答を示す前に議会に発言の機会を与えるとしているが、決定に関する投票は行わないと述べた。(ロイター通信 2003/01/15)英国、米国のミサイル防衛構想に正式に合意
【ロンドン5日ロイター】英国政府は、米国がミサイル防衛構想に関して英国に要請していた支援を行う方針を正式に決定し、米国が英国内にあるレーダー施設を利用できるようにすることを明らかにした。
フーン国防相が、議会に向けた声明のなかで明らかにした。同声明では、英国内のレーダー・システムの刷新を含むミサイル防衛構想に英国が合意することを、米国に文書で通知する、としている。
フーン国防相は1月15日、「暫定的な結論」として、同構想に合意する考えを示す一方、採決はしないものの、審議の機会を設けるため、議会に数週間の時間を与える、としていた。
与党・労働党では、今後起こり得る対イラク戦争に英国が関与することについて懸念する多くの党員が、米国のミサイル防衛構想は新たな国際軍拡競争を巻き起こす恐れがあるとして、反発している。(ロイター通信 2003/02/06)日米、ミサイル防衛構想の協力強化
【ワシントン=秋田浩之】石破茂防衛庁長官は17日朝、ラムズフェルド米国防長官とワシントン郊外の国防総省で約1時間会談し、日米が現在、共同技術研究を進めている弾道ミサイル防衛構想について「将来における開発・配備を視野に入れて検討を進めていく」と表明した。
ラムズフェルド長官は「ミサイル防衛は基本的に防衛的なものだ」と応じ、同構想は日本の専守防衛に合致するとの見解を強調した。ミサイル防衛での日米協力を巡って、米側は北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威を念頭に置いて、開発段階への移行に強い意欲を示しているが、日本はこれまで判断を留保していた。 石破長官は会談後の記者会見で、開発・配備段階への移行を検討する意向を伝えたことについて「当然のことを言っただけだ。開発・配備に移行すると言ったわけではない」と説明。具体的な移行のスケジュールに関しては「全く決めていない。色々な情報をもとに判断していく」と述べ、費用対効果なども含めて精査する考えを示した。(日本経済新聞 2003/02/18)04年度にも迎撃実験 弾道ミサイル防衛で日米
日米両国政府は17日までに、共同技術研究している弾道ミサイル防衛構想に関し、早ければ2004年度後半から迎撃実験に着手する方針を固めた。北朝鮮が弾道ミサイル開発を進めるなど朝鮮半島情勢が緊迫化する中、日本としても迎撃システムの配備を視野に共同研究を加速させたい考えだ。
迎撃実験は04年10月から06年9月までの間にハワイで2回実施。日本側の分担費用は十数億円程度とみられる。
弾道ミサイル防衛は、レーダーなどで弾道ミサイルを探知し、迎撃ミサイルで撃ち落とすシステム。北朝鮮が1998年に弾道ミサイル「テポドン」を発射したのをきっかけに、政府は99年度から、大気圏外を飛行中のミサイルをイージス艦装備のミサイルで迎え撃つ「海上配備型システム」について米国との共同技術研究を続けている。
政府は2003年度予算案に研究試作費として約19億円を計上しており、関連予算の総額は156億円に達する。ただ、日米共同研究中の迎撃ミサイルは「次世代」のミサイルと位置付けられ、開発・配備の見通しは立っていない。このため防衛庁は、米国が04年から初期配備を開始する別の迎撃システム導入の是非も検討している。(東京新聞 2003/02/18)ミサイル防衛、「決定する時期」 参院決算委で石破長官
石破防衛庁長官は10日の参院決算委員会で、北朝鮮のミサイル発射実験に関連して、日米が共同で技術研究を進めているミサイル防衛(MD)について「安全保障会議の議を経て決定する時期だろうと思っている」と述べ、導入に向けた本格的な議論を進めるべきだ、との考えを示した。
ミサイル防衛については、開発・配備への移行は別途判断するというのが従来の政府方針。石破氏は昨年12月、米国のラムズフェルド国防長官と会談した際にも「将来の開発・配備」に言及したが、その後、「検討するとは言っていない。今までの政府のラインと変わらない」などと釈明していた。
決算委で、石破氏は「現実問題として米国で配備されるようになったこと、冷戦時代は米ソしか持っていなかった弾道ミサイルを45、46カ国も持っていることをどのように考えるか。政府として大きな責任を有している」と述べ、大量破壊兵器の拡散が進んでいることなどを踏まえた対応が必要と強調した。
また、小泉首相は日本全土を射程内とする北朝鮮の弾道ミサイルについて「日本への攻撃とみなした場合、米国は自国への攻撃とみなすとはっきり言っている。これが大きな抑止力になっている。それを間違えるような馬鹿なことは北朝鮮はしないと思う」と述べ、日本へ向けて発射される可能性は低いとの認識を示した。いずれも江本孟紀氏(民主)の質問に答えた。(朝日新聞 2003/03/11)防衛庁長官「ノドン迎撃は改良型PAC2では困難」
石破茂防衛庁長官は14日の閣議後の記者会見で、7月から配備する地対空誘導弾・改良型PAC2が北朝鮮の弾道ミサイル「ノドン」を迎撃できる可能性について「極めて限定的だ」と述べ、事実上困難との見方を示した。政府はノドン迎撃のため、米国の海上配備型ミサイルや地対空誘導弾・PAC3を購入する方針を決めている。
防衛出動の手続きに時間が掛かることに関しては「時間を短縮したりする方法はある」と指摘した。緊急時に首相の権限である防衛出動命令を防衛庁長官が代行する案を念頭に置いた発言とみられる。(日本経済新聞 2003/03/14)米ミサイル導入に予算要求 防衛庁が04年度で検討
防衛庁は14日、米国が独自に開発し2004年から配備を目指している海上発射のミサイル防衛(MD)システムの導入に向け、海上自衛隊が保有するイージス艦4隻の改修経費などを04年度予算に要求する方向で検討に入った。
防衛庁は、米国が開発した地上配備型の新型パトリオットミサイル「PAC3」導入も検討している。
日米両国は共同技術研究を進めているが、実用化までには「さらに7、8年はかかる」(防衛庁幹部)。北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に、日米研究とは切り離しMD導入を急ぐべきだとの判断に傾いた。
ただ予算化は、政府決定が前提。米システム導入に対しては与党内に強い慎重論がある上、集団的自衛権行使を禁止した憲法との関係や経費面など検討すべき課題が山積しており、政府・与党内の調整は難航が必至だ。(共同通信 2003/03/15)新型『パトリオット』ミサイル、迎撃精度は向上したか
(WIRED NEWS 2003/03/25)北朝鮮を「深刻な脅威」と名指し=ミサイル防衛加速を指示−米大統領
27日付の米紙ワシントン・タイムズ(電子版)は、ブッシュ米大統領が北朝鮮を米国と同盟国に対する深刻な脅威であると名指しした上で、ミサイル防衛システムの配備を急ぐよう指示する大統領指令を出していたと報じた。
「国家安全保障大統領指令第23号」と題するこの指令書は、ブッシュ大統領が昨年12月に署名。その概要は公表されていたが、北朝鮮を脅威と明記した部分は公開されていなかった。(時事通信 2003/05/27)核武装よりミサイル防衛必要=隣国との歴史認識一致は困難−麻生自民政調会長
自民党の麻生太郎政調会長は31日、東京大学で講演し、日本の核武装に関する質問に対し「安さだけでいったら、核(武装)の方がはるかに安い」としながらも、「ミサイル防衛(MD)の技術はこの10年で恐ろしく進歩した。日本が専守防衛をやるなら、MDを徹底してやった方がいい」と述べ、ミサイル防衛網の構築を急ぐべきだと強調した。麻生氏は「対中(国)等々を考えると、日本は人口密集度合いが全然不利。あちらは広い。撃ち返すのも大変だ」とも述べた。(時事通信 2003/05/31)米ミサイル:防衛システムで警告する報告書を公表 会計検査院
【ワシントン河野俊史】米会計検査院は4日、ブッシュ政権が04年から実戦配備を計画しているミサイル防衛システムについて「大統領の指示に従うために、国防総省のミサイル防衛局は未完成の技術と限られたテストでシステムを運用しようとしている」と警告する報告書を公表した。性急な計画推進を批判する内容で、国防総省にはシステム運用前に構想全体を見越したコストを見積もるよう勧告した。
同システムは弾道ミサイル攻撃から米本土などを守るもので、ブッシュ大統領は昨年12月、初期段階として04年にアラスカ州とカリフォルニア州の基地に計10基を配備する計画を公式に発表している。しかし、石破茂防衛庁長官が訪米中というタイミングに加え、太平洋上空でのミサイル迎撃実験が失敗して技術的問題が明らかになった直後だっただけに「政治的理由で急いだ」との見方も強まっていた。
検査院の報告書は、性急な計画推進は「道を踏み外す危険があり、長い目で見た場合にその努力を損なう」と懸念を示すとともに、「(大統領の指示する期限に間に合わせようとすれば)意図した通りにいかない部分が生じる可能性がある」と危惧を表明している。
国防総省は同システムの研究・開発のために今後6年間で計500億ドルが必要と試算。その後、さらに予算の追加が予想されている。(毎日新聞 2003/06/05)巨額の経費、どう捻出=迎撃100%保証できず−「最後は国民の選択」・MD防衛
2004年度予算の概算要求を前に、ミサイル防衛(MD)システム導入に向けた検討が政府内で大詰めを迎えている。防衛庁には6月上旬、米国防省高官が相次いで訪れ、地対空誘導弾パトリオット「PAC3」とイージス艦搭載型ミサイル「SM3」による2段階迎撃網の有益性を強調した。しかし、配備には最低でも数千億円が必要。防衛庁幹部は「弾道ミサイルを確実に撃ち落とせる保証はない。導入の是非は最終的には国民の選択」と話す。(時事通信 2003/06/14)ミサイル防衛実験に初の失敗 米国防総省
米国防総省は18日、米国が独自に開発したイージス艦搭載型の迎撃ミサイルを使ったミサイル防衛(MD)実験をハワイ上空で実施したが、迎撃に失敗したと発表した。海上発射ミサイルによる実験は今回を含め4回実施しているが、失敗したのは初めて。
弾道ミサイルを、飛来する中間(ミッドコース)段階(大気圏外)で迎撃する「SM(スタンダードミサイル)3」の迎撃実験だった。防衛庁は海上自衛隊のイージス艦で同様の迎撃システムの構築を目指し、04年度の概算要求に購入費か契約費を盛り込む方針だが、失敗したことで影響が及ぶとみられる。
国防総省当局者は、ロイター通信に対し、失敗の原因は不明としたうえで、「開発計画の初期段階にある」との見解を示した。ブッシュ米大統領は、北朝鮮などを想定した「テロ支援国家」などによる弾道ミサイル攻撃から米本土を守るMD網の初期段階の配備を04年から開始することを決定済みだ。失敗が続けば、計画の後退も予想される。(朝日新聞 2003/06/19)「北が核弾頭保有」情報 ミサイル防衛推進 米の思惑見え隠れ
政府は懐疑的「それほど技術ない」
北朝鮮が弾道ミサイルに搭載可能な核弾頭を数発保有しているとの情報を、米政府が日本政府に伝えていたことが20日分かった。だが、日本政府は、核兵器開発に関する北朝鮮の技術力も踏まえて懐疑的に受け止めている。北朝鮮の「核ミサイル保有」を既成事実化することで、ミサイル防衛(MD)構想の推進を図ろうとする、米国の思惑を感じ取る向きもある。北朝鮮の核兵器については「プルトニウム型原爆を1、2個保有している」(パウエル米国務長官)との見方が一般的。ただ、日本や韓国を核ミサイルで攻撃するためには、弾頭を小型化する高度な技術が必要だ。
日本政府は米側の情報について「いろいろ情報はあるが、断定できる状況ではない」(小泉首相)と、表立った対応は取っていない。というのも「北朝鮮にはそれほどの技術はない」(政府筋)と見ているためだ。
また、米側の情報が事実となれば、国民の不安が高まり、弾道ミサイルから日本を守る「盾」の整備を求める世論が強まるのは必至。米側は日本政府に対し、自国で開発しているMDの売り込みを展開しており、これを機会に「圧力」を強めることも予想される。
日本政府内では、18日にハワイで行われたMD実験が失敗したことからも、開発に巨額費用が見込まれながら性能に疑問が残るMD導入については、慎重論が根強い。米側の売り込みをかわし、MDの将来性を見極める時間をかせぐためには、米側情報の独り歩きは避けたいところだ。「断定できない」と繰り返しているのにはこうした事情もある。
ただ、政府内には、情報が不確実だとしても「最悪の事態を想定して対応すべきだ」(政府筋)との意見もある。北朝鮮が瀬戸際外交をエスカレートさせれば、MD導入論が高まる可能性も出てくる。(中日新聞 2003/06/21)米迎撃ミサイル、三菱重工にライセンス生産発注検討
防衛庁は24日、米国が独自に実戦配備の計画を進めている最新鋭の迎撃ミサイル地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の導入に際し、国内でのライセンス生産を前提に米側と調整する方針を固めた。ライセンス生産先は三菱重工業が有力。同庁は国内防衛産業の技術力の維持や、修理・整備の迅速性などを総合的に判断したとしている。
ライセンス生産は、日本企業が米国企業と契約し、技術や部品などの提供を受けて生産する仕組み。三菱重工は現在、自衛隊が実戦配備しているPAC2をライセンス生産している実績がある。防衛庁は北朝鮮の弾道ミサイル「ノドン」が日本全域をほぼ射程に収めていることを念頭に、この迎撃システムを早期に整備するのが不可欠と判断。イージス艦に搭載するスタンダードミサイル(SM)3と並び、PAC3を2004年度に新規契約する正面装備の目玉と位置付けている。SM3が弾道ミサイルが最高度に到達した時点で迎撃し、これで打ち損じたミサイルをPAC3が迎撃する二段構えになることから、両ミサイルの同時配備が必要だと説明している。(日本経済新聞 2003/06/24)ミサイル防衛:05年度導入へ 2年間で2000億円
防衛庁は11日、日本へ向けて発射された弾道ミサイルを迎撃するためのミサイル防衛(MD)システムを05年度から自衛隊に導入する方針を決めた。04年度予算の概算要求に導入経費を盛り込み、05年度までの2年間で約2000億円を投じて海上自衛隊のイージス艦4隻と航空自衛隊の1個高射群に迎撃ミサイルを配備する。将来的には国内6カ所に置かれている空自の高射群(対空ミサイル部隊)すべてに導入する構想で、総事業費は1兆円を超える見込み。8月に安全保障会議を開き、政府方針として決定する見通しだ。
防衛庁が導入を決めたのは、米国が04年から配備するイージス艦発射型の対空ミサイル「SM3」と地対空ミサイル「パトリオットPAC3」を組み合わせる2段階システム。日本に飛来する弾道ミサイルが大気圏外を飛行中(ミッドコース段階)にSM3で迎撃し、撃ち漏らした場合は大気圏に再突入後の着弾前(ターミナル段階)にPAC3で迎え撃つ。
MDは大量破壊兵器の世界的な拡散に対抗するため米国が開発、同盟国に導入を働きかけている。5月の日米首脳会談で小泉純一郎首相は「(導入の)検討を加速していく」と表明していた。
防衛庁は99年から約156億円をかけてSM3の将来システムとなる海上配備型ミサイルの日米共同技術研究を続けているが、核兵器・弾道ミサイル開発を進める朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の脅威を受け、現行システムの導入を急ぐ必要があると判断した。共同技術研究も継続する。
防衛庁は05年度までに、海自が保有するイージス艦4隻のレーダーやミサイル発射装置を改修し、SM3を発射できるようにする。またPAC3の導入には、弾道ミサイルより低速の戦闘機などを迎撃するパトリオットPAC2のシステムをPAC3用に改修する必要がある。2段階システムを連動させるため各自衛隊の指揮・通信システムの統合も進める。
戦車や戦闘機などの大型装備品を削減してMD導入費に充てる予定で、防衛力整備の根本的な改革につながるため、年末にも現在の防衛大綱を見直す方針だ。
ただ、MDシステムは「今の技術で100%の迎撃はありえない」(防衛庁幹部)と指摘されており、SM3は先月、米国が行った4回目の迎撃実験で初めて失敗している。このため、政府内には技術面や費用対効果の面で懸念も残っている。<ミサイル防衛> 敵の弾道ミサイルをレーダーなどで探知し(1)発射直後の上昇時(ブースト段階)(2)大気圏外を飛行中(ミッドコース段階)(3)大気圏に再突入後(ターミナル段階)──の3段階で迎撃するシステム。米国はレーガン政権時代の戦略防衛構想(SDI)から曲折を経ながらも、総額10兆円といわれる巨費を投じて開発を進め、04年から本格的な実戦配備に入る。日本では98年8月、北朝鮮の弾道ミサイル「テポドン」が日本上空を越えたのを受けてMD導入論が噴出。99年から将来システムの日米共同技術研究を続けている。(毎日新聞 2003/07/12)
発射時の迎撃に実用性なし ミサイル防衛で米物理学会
【ワシントン15日共同】ブッシュ米政権が2004年から初期配備するミサイル防衛に関し、米物理学会は15日、ミサイル発射段階での迎撃は「ほとんど実用性がなく効果がない」とする研究結果を発表した。北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を想定したケースでも、対応できないと指摘している。
ミサイル防衛は敵のミサイルの発射直後、中間飛行、最終の3段階で撃ち落とす多層防衛が基本。1段階でも実用性が問われれば、計画全体に影響が出ることになりそうだ。
発射段階では航空機によるレーザー照射や地上、海上からの迎撃ミサイルで敵の弾道ミサイルを撃ち落とす。
同学会によると、燃焼時間が短い固形燃料型ICBMの場合で90−120秒、液体燃料型ICBMで140−170秒で迎撃ミサイルが目標ミサイルに到達しないと撃ち落とせない。(共同通信 2003/07/16)ミサイル防衛は効果なし 対北朝鮮で米専門家指摘
【ワシントン28日共同】米国防予算の無駄遣いを長年訴えてきた元国防総省職員が5月末の退職後も、米政府が必要のない兵器開発を進め、軍予算を増大させていると批判。日本が2006年度にも導入を目指しているミサイル防衛についても「北朝鮮の脅威はミサイル防衛では防げない」と懐疑的な見解を示した。
この元職員はアナリストのチャック・スピニー氏。1977年から国防総省で政策評価を担当し、82年には「必要性の有無にかかわらず、複雑で高額な兵器購入が予算をむしばんでいる」とする報告書をまとめた。
83年には上院予算委員会で国防予算の膨張ぶりを証言し、注目を浴びた。その後もワシントン・ポストやテレビなど米メディアで「異端の国防総省職員」として取り上げられ、昨年の上院小委員会でも証言した。
スピニー氏は「対テロ戦争にB2ステルス爆撃機は必要ない。必要なのは接近戦の訓練を受けた兵士だ」とし「戦略の誤りが今もイラクで米兵を殺している」とブッシュ政権を批判した。
北朝鮮の核開発や弾道ミサイル配備に関して「日本が脅威に感じることは十分理解する」とした上で、ミサイル防衛は「パソコンと同じで日常的に作動しなくなる可能性があり、有効な対抗手段にならない」と語った。
さらに「日本は偵察衛星や偵察機などの導入で、独自の情報収集能力を上げるのが先決。ブッシュ政権の無駄遣いに付き合うことはない」と指摘した。(共同通信 2003/08/28)ミサイル防衛の重要な柱 2011年度で完成へ
防衛庁が開発する新型レーダー「FPS−XX」(仮称)は、北朝鮮の弾道ミサイル「ノドン」の迎撃を目指すミサイル防衛(MD)の重要な柱の1つだ。
実際にノドンを撃ち落とすには、迎撃ミサイルを発射するイージス艦の改修や、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の導入に加えて、「レーダー網」の整備などが不可欠。「FPS−XX」はこのレーダー網の中核をなす施設となる。
防衛庁は2007年からイージス艦1隻とPAC31個高射群によるMD配備を予定している。ただ新型レーダーが配備されるのは08年度以降になり、それまではMD網の実効性は限定的にとどまるとみられている。
このほか2010年度までにイージス艦4隻を改修、PAC3を4個高射群に導入する計画で、防衛庁は「FPS−XX」4基の配備を予定している11年度の時点を「MD構想の完成」と位置付けている。(共同通信 2003/09/14)豪州:米のミサイル防衛計画に参画へ
【シドニー山本紀子】オーストラリア政府は4日、米国が進めるミサイル防衛計画に参画すると発表した。弾道ミサイルや生物化学兵器などの攻撃を防ぐ、迎撃・警戒システムを整備していく。ヒル国防相は「今のところ直接的な脅威はないが、熟慮のうえ、計画参加を決めた」と述べた。計画の詳細や予算額は固まっておらず、2国間で協議する。
ミサイル防衛計画は、北朝鮮などの脅威を念頭に米国が膨大な予算をつぎ込み、開発を重ねている。日本も共同研究などに参加している。しかしミサイルを撃ち落とすためのシステムは非常に複雑で、迎撃実験の成功率も100%とはいえず、実現が疑問視されている。
ダウナー外相は米CNNに取材に対し、「無法な国家の攻撃から身を守るもので、あくまで自衛手段にすぎない」と強調した。周辺のアジア諸国が、対米協調に傾く豪州への批判を強めていると指摘されると、「我々も日本も米国の同盟国で、米国は自由社会のリーダー。平和を守るため、喜んで協調してゆく」と述べた。(毎日新聞 2003/12/04)日本、ミサイル防衛システム導入へ
潤う米と防衛産業 2年で改良 カネのなる木
政府は近く開催される安全保障会議でミサイル防衛システム(MD)の導入を決定する。石破茂防衛庁長官がMD開発を急ぐ米国を訪問し、意欲を示してわずか1年。「対米追従」との批判もある中、防衛力のあり方を足元から揺さぶる巨大な武器システムの導入問題はあっさり決着。米政府と米軍需産業、さらに国内の防衛産業にとって毎年、利益を生み出す「カネのなる木」が誕生する。(社会部・半田 滋)先月下旬、都内で開かれた第2回日米安全保障戦略会議。米国防総省や自民党国防族が参加し、会場に隣接した講堂には日米防衛産業のブースが並んだ。
ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン、レイセオン、ボーイング。世界市場で売り上げ1位から5位までに入る巨大武器メーカーだ。ブースには来年度予算で防衛庁が購入を計画しているイージス護衛艦から発射するスタンダードミサイル(SM3)や地上配備のパトリオットミサイル(PAC3)の実物大模型が展示された。
「新ミサイル防衛構想について」のテーマで開かれたシンポジウムで、米国防総省顧問のシュナイダー氏が「日本のミサイル防衛計画は米国の計画をさらに有効にする」と述べ、集団的自衛権行使を視野に入れた共同対処の重要性を強調した。■投資回収
官民挙げて売り込みを図る米国には、日本を取り込むことでMDの戦略的な効果を高める目的のほかに、10兆円に上る過去の投資を回収し、将来の利益につなげる狙いがあるようだ。
ミサイル防衛の歴史は古く、冷戦下の1983年、レーガン政権下で開始された「戦略防衛構想(SDI)」が原点。ブッシュ政権になって研究が加速、米政府は昨年12月、2004年と05年に米本土を守るMDを初期配備すると発表した。
同じ日、訪米中だった石破長官は米国に歩調を合わせるように「開発・配備も視野に入れる」と積極姿勢を表明した。米国が日本という、うまみのある市場をあらためて認識した瞬間だった。
米国防産業の最大手であり、MDの主契約企業でもあるロッキード・マーチン社とブッシュ政権とのかかわりは深い。01年から02年にかけての政治献金は236万9000ドルに上り、その6割が共和党に支払われた。チェイニー副大統領夫人がロ社の役員だったのは有名な話だ。
98年、米議会が設けた「弾道ミサイル脅威評価委員会」の委員長として北朝鮮による弾道ミサイルの脅威を強調し、MD導入の旗振り役を務めた現国防長官のラムズフェルド氏は、ロ社と関係深いシンクタンク「ランド研究所」の理事だった。
同研究所は01年に「日本と弾道ミサイル防衛」の論文を発表、日本のMD配備に1兆2000億円から5兆9000億円かかるという試算を行っている。
「米国製」ばかり並ぶミサイル防衛システムの中で、防衛庁は指揮統制・通信システムを国産とし、米国とのデータ交換なしでも運用できるシステムづくりを目指す考えでいる。
しかし、同様のシステムを既に完成させ、米国防総省に採用されたノースロップ・グラマン社の副社長、ガルーナ氏は「独自に開発することは時間とカネの無駄遣いだ」と話し、防衛庁に購入を勧めていると舞台裏を明かした。■政策変更
もともと、弾道ミサイル発射を探知できる早期警戒衛星を持たない日本は各種情報を米国に頼らざるを得ない。指揮管制・通信システムを日米でつなげば、集団的自衛権の行使に踏み込むことになりかねないが、前出のシュナイダー氏は「日本のイージス艦のレーダーを使って米国のイージス艦が弾道ミサイルを撃ち落とせば、コスト効果が増大する」と日本の政策変更に期待を寄せる。
国内の防衛産業のうち、MD導入の推進役となっているのは三菱重工業だ。昨年度の防衛庁との契約額は3481億円で、2位の川崎重工業の1102億円を大きく引き離しトップ。
だが、主力商品のF2支援戦闘機は数年内に生産を終え、防衛庁からの受注は激減する見通し。既にPAC3の前身である地対空ミサイルのPAC2をライセンス生産し、防衛庁に納入している同社にとって、米国では2年ごとに改良するMDはカネを生み続ける魅力的な商品となる。
MDに関する取材には「応じられない」とする同社だが、防衛庁幹部は「SM3、PAC3ともライセンス生産で導入したい」と三菱重工業への発注を示唆する。MDが“軍産複合体”のシンボルとなる日は近いようだ。■武器メーカーの献金額と主なMD生産内容
・ロッキード・マーチン 2,369,234ドル(1位)
イージス護衛艦のイージスシステム、同垂直発射装置(VLS)、PAC3
・ノースロップ・グラマン 2,014,370ドル(2位)
統合国家インテグレーションセンター(JNIC)、宇宙追跡・査察システム(STSS)
・レイセオン 1,082,969ドル(4位)
SM3
・ボーイング 387,234ドル(10位)
SM3(キネティック弾頭)、PAC3(赤外線シーカー)
(注)金額は2001〜02年米国内の軍需産業部門政治献金。その下はMDの主な生産内容<ミサイル防衛システム(MD)> 弾道ミサイルをレーダーなどで識別し、軌道を予測して地上や海上から迎撃ミサイルで撃ち落とす防空システム。米国のブッシュ政権は弾道ミサイルを(1)上昇途中のブースト段階(2)大気圏外のミッドコース段階(3)落下直前のターミナル段階−の3段階に分類し、それぞれの過程で迎撃する構想を描く。日本は(2)の海上発射型と(3)の陸上発射型を組み合わせる。(中日新聞 2003/12/12)
日本政府、弾道ミサイル防衛システム導入を決定
【東京19日ロイター】政府は、午前に開いた安全保障会議と閣議で、弾道ミサイル防衛(BMD)システムを導入することを決定した。これを受けて、2004年末までに新たな防衛 計画の大綱および中期防衛力整備計画を策定する。
大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散が進展している状況で、BMDシステムが技術的に実現可能性が高くなったこと、専守防衛の理念に合致すると判断し、導入を決定。新たな安全保障環境を踏まえた防衛力の見直しが必要だとした。
決定を受けて、福田官房長官が閣議後に発表した談話では、(1)BMDシステムは、弾道ミサイル攻撃に対し、国民の生命・財産を守るための純粋に防衛的な、かつ他に代替手段のない唯一の手段として、専守防衛の理念に合致する、(2)従って、周辺諸国に脅威を与えるものではなく、地域の安定に悪影響を与えるものではない、としている。
他国を標的としたミサイルを撃ち落した場合、集団的自衛権の行使を禁じた政府の憲法解釈との問題が指摘されてきたが、集団的自衛権との関係では、同談話で、「あくまでもわが国を防衛することを目的とするものであって、わが国自身の主体的判断に基づく運用、第三国の防衛のために用いられるこはないことから、集団的自衛権の問題は生じない」としている。
その後開かれた記者会見で、福田官房長官は、「あくまで自衛手段で、他国を侵害するものではない。飛翔距離からしても明白だ」とする一方で、「特定の国を指していうものではないが、脅威があることに対して、なるべく早く整備するのは当然」、「守るべき手段をもつのは当然ではないか」と述べ、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の脅威に対応する必要を示唆した。(ロイター通信 2003/12/19)日豪に続きカナダも参加へ 米推進のミサイル防衛
【ワシントン6日共同】カナダが近くブッシュ米政権が推進するミサイル防衛に参加する見通しが強まり、米軍筋は6日までに「交渉は順調に進んでおり、カナダ政府は近く正式参加を決めると思う」と述べた。
ミサイル防衛は日本が先月に導入を正式決定したほか、オーストラリアも参加方針を表明したばかり。同盟国の相次ぐ参画で、ミサイル防衛網拡大に一層の弾みがつきそうだ。
先月就任したマーティン首相は以前からミサイル防衛への参加に意欲を表明。プラット新国防相もカナダ軍の変革に取り組む中で、ミサイル防衛の検討を最優先の課題に位置付けている。
クレティエン前政権はミサイル防衛に関する検討を進めていたが、導入には慎重姿勢を示していた。カナダはイラクへの派兵拒否で冷却化した米国との関係を改善する狙いもあるとみられる。(共同通信 2004/01/06)米国防費、ミサイル防衛などで7%増 軍拡路線続く
05会計年度の米国防費は、前年度比7%増の総額4017億ドルが計上された。前年度に続いて世界規模の対テロ戦や米本土防衛に重点を置いているが、なかでもミサイル防衛(MD)関連で大幅な増額を求めていることが目を引く。
今回、イラク関連の経費は含まれていないが、対テロ戦の広がりを反映し、04年度に続く大型予算となる。米国防費は冷戦後、90年代後半に底を打ったが、その後は上昇。03年度は対前年度比約15%と過去20年で最大の伸びを記録し、04年度は約4%増。今回は伸び率で04年度を上回り、軍拡路線がさらに鮮明となった。ブッシュ政権発足後の伸び率は35%となる。
米本土防衛の主軸を担い、ブッシュ政権が推進する軍事革命(RMA)でも重要な一角を占めるミサイル防衛関連では、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の導入予算を含め、約103億ドルが計上された。陸軍の予算として計上されるPAC3とは別のミサイル防衛局の予算は、前年度の76億ドルから20%近く増え、91億ドルを占める。
ミサイル防衛には技術的な問題があるとの批判もあるが、国防総省は予定通り今年からミサイル防衛システムの初期配備に乗り出す方針だ。いま米国にとって、弾道ミサイルの脅威として真っ先に挙げられるのは北朝鮮だが、中国の潜在的な脅威に対する警戒感も根強い。(朝日新聞 2004/02/02)宇宙配備の迎撃兵器開発へ 米ミサイル防衛で予算計上
【ワシントン2日共同】今年から初期配備される米国のミサイル防衛に関し、2日、議会に提出された2005会計年度(04年10月−05年9月)国防予算の中に、宇宙配備型迎撃兵器の技術開発・実験経費が盛り込まれていることが明らかになった。
ブッシュ政権は宇宙配備型も検討する方針を表明しているが、開発予算の計上は初めて。宇宙空間の軍拡競争につながる可能性があり、内外から強い批判が出そうだ。
国防総省ミサイル防衛局の予算見積書によると、宇宙配備型の迎撃兵器は海上配備型迎撃ミサイル発射台や燃料の改良経費など総額4700万ドル(約50億円)の中に含まれている。
同省スポークスマンは「内訳は分からない。宇宙配備型に振り分けられた額は多くない」としているが、宇宙配備型を含めた改良迎撃ミサイルへの予算は、09会計年度には総額で17億4000万ドルにまで増額させる。宇宙配備型の迎撃兵器としては、軍事衛星搭載のレーザーなどが想定されている。(共同通信 2004/02/03)ミサイル防衛「北朝鮮ミサイルに対応難しい」 米高官
米上院軍事委員会は11日に05会計年度の予算をめぐる公聴会を開き、ミサイル防衛(MD)について、その真価を問う議員側が、9月から配備する意義を強調する国防総省側に厳しい質問を繰り返した。MDは北朝鮮のミサイルの脅威に対応できないと懸念する議員に対し、同省高官の1人は「そうだろう」と認めたが、別の高官は「それは機密だ」と正面からの回答を避けた。
ブッシュ政権は05会計年度のMD関連の予算として、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の導入予算を含め、約103億ドルを計上。陸軍の予算として計上されるPAC3とは別のミサイル防衛局の予算は、前年度より20%近く増え、91億ドルにのぼる。
これに絡み、リード議員(民主党)は「北朝鮮が米国にミサイルを発射した場合、システムが未熟で対応できないのではないか」と質問。同省ミサイル防衛局のクリスティー運用試験・評価部長は「そうだろう」と認めた。
その後、クリントン議員(同)が「交渉や封じ込めが失敗して北朝鮮がハワイやアラスカなど米本土へのミサイル発射を企てた際、大統領から防ぐ用意はできているのかと聞かれたら、あなたはどう答えるか」と質問。MD計画の責任者ケイディシュ・ミサイル防衛庁長官は「実際の性能データは機密だ」とだけ答えた。同省側は、迎撃実験などを重ね、システムの完成度を高めることは可能と強調した。(朝日新聞 2004/03/12)米海軍、イージス艦を日本海に常駐配備 北朝鮮対策で
米海軍のイングランド長官は22日、ワシントンで講演し、ブッシュ政権が推進するミサイル防衛の一環として、広範囲のレーダー探索能力のあるイージス艦を9月末までに日本海に配備する方針を明らかにした。北朝鮮による弾道ミサイルの発射探知や追尾などが目的と見られ、北朝鮮の核問題をめぐる6者協議の展開にも影響を与えそうだ。
日本海には海上自衛隊のイージス艦も配備されているが、米海軍が海上配備型の迎撃システムの配備先を公表するのは極めて異例だ。北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合に備える姿勢を明確にすることで、北朝鮮がミサイル発射実験などをしないよう牽制(けんせい)する狙いもあると見られる。
長官は講演の中でミサイル防衛について「米国とその同盟国の繁栄のために必要な、安全で安定した環境を提供してくれる」と必要性を強調。「ミサイル防衛の運用能力を高めよとの大統領令により、長距離探知のためにミサイル駆逐艦(イージス艦)を日本海に配備する」と表明した。
その狙いについては「日本海で目標となる(ミサイルの)データを瞬時に司令部まで伝えることが可能になる」と語り、ミサイル防衛システムの実戦配備の一環であることを明言した。
さらに長官は、04年の初期配備に続き、第2段階として05年には短中距離の弾道ミサイルを対象とする海上配備型のスタンダードミサイル3(SM3)を予備的に搭載するイージス艦の配備を開始。第3段階として06年にはSM3を搭載するイージス艦10隻などを配備すると説明した。これらの派遣先については「世界各地で弾道ミサイルの脅威に対抗するため」と述べるにとどめ、明らかにしなかった。<ミサイル防衛とイージス艦> 米政府は、弾道ミサイルをレーダーなどで発見・識別し、地上や海上から発射した誘導ミサイルで破壊するミサイル防衛構想を進めている。強力なレーダー能力を持つイージス艦は、ミサイル探知で大きな役割を果たす。また、迎撃ミサイル「SM3」を搭載するシステムの開発が進んでおり、昨年12月に迎撃実験に成功。日本は同月、SM3システムと陸上配備型の「PAC3」システムを導入することを決めた。(朝日新聞 2004/03/23)
ミサイル防衛:「夢の構想」か「暴挙」か 日本も一体
一面の雪の中、巨大な茶色の建物が点在している。ミサイル防衛施設の建設工事が進む米軍「フォートグリーリー基地」(米アラスカ州)。広大な基地内を四輪駆動車で案内してくれたラルフ・スコット広報官が、金網越しに遠くを指さした。「あそこがミサイルのサイロ(格納庫)だ」
車を降りて近づくと、金網の手前20メートルほどで制止された。金網の向こうの雪原に、3基の白いドームが見える。その脇に2本ずつそそり立つ通気塔。カメラを構えると、吹き付ける突風と寒さで涙が止まらない。スコット広報官は「きょうは暖かい方だ。少し前までは氷点下50度を下回っていた」と話す。
地下に潜るサイロは直径約6メートル、深さ約25メートルの円柱形で、地上にある白いドーム状の上部が開き、ミサイルが発射される。建設予定の16基中すでに6基が完成し、今年中に迎撃ミサイルが実戦配備される。敵ミサイルをミサイルで迎撃する構想は、その技術的実現性などをめぐり、長年論議が続いてきた。推進派にすれば「夢の構想」、反対派にすれば「国際秩序を損なう暴挙」が、極寒の地でいよいよ動き出す。
現場の最高責任者、ケビン・ノーガード大佐(45)が、アラスカ州に迎撃基地を造る理由を説明してくれた。「ここから迎撃ミサイルを発射すれば全米50州を守れる。非常に戦略的な場所だ」。同基地では、いつでもミサイルをサイロに入れ、「オン・アラート(発射準備)」態勢を敷ける状態だという。
約280万平方メートルの敷地で02年夏から本格工事が始まり、施設はほぼ完成。軍事衛星や各基地とネットワークされた「防衛通信棟」、迎撃ミサイル発射の指令を下す「コントロールセンター」、「ミサイル組み立て棟」などが全容を見せていた。ノーガード大佐が胸を張って言った。「これは単なる工事現場ではない。平和を築く工事なのだ。米国全土を、すべての子どもや子孫を、ミサイル攻撃から守れると確信している」◆ ◆ ◆ アラスカでの工事は日本にも密接に関係する。ブッシュ政権は同盟国にミサイル防衛の早期導入を呼びかけ、日本とオーストラリア(豪州)が手を挙げた。日本は昨年12月19日の閣議で導入を正式決定。防衛庁幹部は「米国は全世界をミサイル防衛網で網羅するつもりだ。日本はその構想の一部」と解説する。
ラムズフェルド米国防長官の側近として計画を推進するシュナイダー国防科学委員長は「ミサイル防衛は、日本など同盟国と共通の情報システムを構築することが極めて重要になる。日本の防衛は非常に大きな変化を迎えるだろう」と述べ、防衛面での日米の一体化が一層進むと予見する。
一方で、日米豪によるミサイル防衛整備は、北朝鮮はもとより、中国やロシアの神経を逆なでせずにはいない。ミサイル防衛は、果たして日本とアジアに安定をもたらすのか。深い論議もないまま、日本と米国の「運命共同体」のきずなは確実に強まっていく。◆技術的疑問、数多いまま
02年12月の日米防衛首脳会談前日。石破茂防衛庁長官は、ワシントン郊外のミサイル防衛庁を視察した。その場で米国側は石破長官に耳打ちする。「我々は04年からミサイル防衛を配備することを決めた」
ブッシュ政権は「04年に初期配備」の意向を前々から示していたが、米国が「テロとの戦争」に追われる中、配備はもう少し遅れるとの見方が強かった。石破長官は周囲に漏らした。「こんな極秘の話を聞いたのは、同盟国首脳の中でも私が最初じゃないか」
石破長官は上機嫌で翌日のラムズフェルド国防長官との会談に臨んだ。ミサイル防衛がテーマになったのは最後の数分間だけ。「日本も一緒に配備しますよね」と聞くラムズフェルド長官に、石破長官は通訳を介して「イエス」と応じた。
石破長官は会談後、首相官邸との協議もないまま「配備を視野に検討を進めたい」と表明し、日本はミサイル防衛の導入に大きくかじを切っていく。石破長官の行動は「フライング(先走り)」と受け止められ、「有頂天になって口を滑らせた」(自民党国防族)との批判すらある。
石破長官の表明直後、米国防総省は04年の配備を発表し、日本は後戻りできなくなった。ミサイル防衛への疑問が米国内でもくすぶっているだけに、「米国にとって、日本の決定はイラクへの自衛隊派遣と同じくありがたいものだった」(ヘリテージ財団のベイカー・スプリング研究員)。◆ ◆ ◆ ミサイル防衛が当面照準を合わせるのは、核開発を続ける北朝鮮だ。仮に北朝鮮から弾道ミサイルが発射された場合、日本に着弾するまでの時間はわずか7分。日本の指導者は、この「7分間」にミサイルを探知し、弾道の方向と角度から着弾点を計算して迎撃ミサイル発射のボタンを押す意思決定を下す、という未知の試練に直面する。
これが日本にとっていかに難しいかを示す事態が昨年春、起きている。
「どうして官邸に情報が来ないんだ」。福田康夫官房長官は昨年2月24日、北朝鮮の地対艦ミサイル「シルクワーム」(射程約75キロ)発射を伝える夕刊各紙を見ながら防衛庁幹部をしっ責した。「防衛当局は的確に判断して速やかにミサイル情報を報告してほしい」。防衛庁に厳命が下った。
「日本に届かないミサイルなので騒ぐ話ではない」と判断し報告しなかった防衛庁の担当者は結局、永田町を謝罪行脚するはめになったが、混乱は約2カ月後のシルクワーム発射実験でも繰り返された。「米軍から防衛庁に一報が入り、その度に日本は右往左往している」(警察庁幹部)というのが実態だ。
閣議で昨年12月にミサイル防衛導入を正式決定した際、政府は「日本独自のシステムを使い、日本独自の判断で運用する」との官房長官談話を発表した。米国との共同運用を否定し、「憲法が禁じる集団的自衛権の行使にあたる」との批判を打ち消そうとしたのだ。
しかし、「独自システム」には限界がある。限られた「7分間」で危機に対処するには、米国の早期警戒衛星の発射探知情報が不可欠だ。日本海のイージス艦や地上配備予定の新型レーダーでは、「地球が丸いためにカバー範囲が限られ、ミサイル発射から約1分間は発射確認が不可能」(防衛庁関係者)だからだ。
こうした現実を踏まえて、自民党の防衛政策検討小委員会は近く、「日米同盟を強化する上で、集団的自衛権の行使を可能にすることは極めて重要」との提言を行う。「ミサイル防衛は改憲の引き金になるだろう。米国はミサイル防衛が日米同盟の質を大きく変える契機になると期待している」。米戦略国際問題研究所(CSIS)の渡部恒雄氏はそう語る。
ミサイル防衛システムについては、米国内でも「技術的に不可能」と見る科学者が少なくない。また、ミサイル防衛の配備は、米国が仮想敵とする「ならず者国家」のほか中国やロシアを刺激することになり、結果的に国際的な軍事バランスを損なうとの見方も強い。
2月18日、プーチン大統領はロシア北部のプレセツク宇宙基地を視察した後、「ロシアは近い将来、大陸間を超音速で飛行し、速度やコースを制御できる兵器を配備する」と胸を張った。どんな兵器かは不明だが、「ミサイル防衛の無力化」宣言とも受け取られた。
一方、米国内では、民主党の大統領候補になるのが確実なジョン・ケリー上院議員がミサイル防衛に反対の立場。アーノルド・カンター元国防次官は「彼が(11月の大統領選で)当選すれば、米国のミサイル防衛政策が覆る可能性もある」と指摘する。
日本のミサイル防衛には総額で約1兆円が必要とされる。しかし、国会ではイラクへの自衛隊派遣問題に隠れ、導入の是非をめぐる論戦は盛り上がらなかった。ミサイル防衛は日米同盟の「必要経費」なのか。技術的可能性や安全保障上の利点が不明確なまま、未知数の構想(ミサイル防衛)に貴重な血税がつぎ込まれようとしている。
世界が変容を続ける中、安全保障の枠組みが揺れている。日本と世界は今、どんな問題に直面し、国際秩序はどう変わろうとしているのか。「漂う安全保障」の行方を追った。【「平和立国」取材班】◆米、独伊と共同開発も
米国はレーガン政権時代の84年、戦略防衛構想(SDI、スターウォーズ計画)を打ち出し、大規模なミサイル防衛の1つのモデルになった。クリントン政権は、米国を守る米本土ミサイル防衛(NMD)を研究したが、同盟国や海外駐留米軍を守る戦域ミサイル防衛(TMD)とは区別していた。
しかし、ブッシュ現大統領は弾道ミサイル防衛(BMD)と称して概念を統一。敵ミサイルを発射直後(ブースト)、飛行中(ミッドコース)、弾頭切り離し後(ターミナル)の各段階で撃ち落とす「多層防衛」の構想を打ち出した。
米国が04年から配備するのは、ミッドコースでイージス艦などから迎撃するシステムと、ターミナル段階で陸上から迎撃するシステム。米国はこれまでにミサイル防衛の研究・開発に約824億ドル(約9兆円)の巨費を投じている。
また、広義のミサイル防衛として、米国はドイツ、イタリア両国と中距離拡大防空システム(MEADS)を開発中。イスラエルの地対空ミサイル「アロー」は米国との共同開発を終え、00年3月に配備が始まった。
98年から米国と海上配備型ミサイルの共同研究を続けてきた日本は、米国製艦対空ミサイル「SM3」をイージス艦4隻に、地対空ミサイル「パトリオット」(PAC3)4基を地上に配置することで、米国のミサイル防衛配備に連動する。
日本のシステムは、SM3が撃ち漏らしたミサイルをPAC3が追撃する2段階式。SM3は海上自衛隊、PAC3は航空自衛隊の指揮下に入るため、両隊の統合運用が不可欠となる。(毎日新聞 2004/03/23)ミサイル防衛配備の延期を要望 米退役将軍ら49人
米軍を退役した大将らが26日、弾道ミサイルを撃ち落とすミサイル防衛(MD)の実戦配備延期を求める要望書をブッシュ米大統領に提出した。その分の予算を、原子力関連施設の安全を強化したり、テロリストが大量破壊兵器(WMD)を米国内に持ち込まないように港や国境線の警備を強化したりすることに使うべきだと進言している。
要望書を出したのは、「軍備管理・核拡散防止センター」に所属するメンバー49人。レーガン、ブッシュ政権時代に統合参謀本部議長を務めたクロウ元海軍大将をはじめ陸海空軍と海兵隊を退役した、大将、中将、少将、准将らから成る。
配備延期の理由としてまず挙げるのは、実験がまだ不十分という点だ。ブッシュ大統領が02年、MD網を04年9月までに初期配備すると決めたため、国防総省が期限に間に合わせようとして、MD網が効果的で適切かどうか確認するだけの基本的実験を控えてきたと指摘している。
また、MD網構築にかかる予算が膨大で、対テロ戦争に必要な経費に予算が十分回らない点も挙げている。05年度だけで約102億ドルかかり、今後5年間で計530億ドルが見込まれている。十分に実験をしようとすればさらに予算が膨らんでしまう。
さらに米軍の技術は、弾道ミサイル発射基地を正確に攻撃することができるため、米国からの報復攻撃を考えればもはやどの国もWMDを搭載したミサイルを米国に向けて発射しようとすることは非常に考えにくいと指摘している。(朝日新聞 2004/03/27)米ミサイル防衛システム、北朝鮮への対応能力に疑問
【ワシントン=秋田浩之】米会計検査院(GAO)は23日、ブッシュ米政権が今年9月から実戦配備を始めるミサイル防衛システムについて、北朝鮮のミサイル攻撃に対処できるかどうかは現時点では極めて不透明とする報告書をまとめた。米国から同システムを購入する日本にとっても気になる内容だ。
GAOは米政府の予算の使い方などを監視する機関。報告書は「今年9月から初期段階の配備が始まるが、システムの実効性はほとんど実証されていない」と結論づけた。
その理由として、同システムのミサイル迎撃実験がなお不十分であることなどを挙げた。(日本経済新聞 2004/04/25)参照:総費用も不明、能力も不明のまま推進される「ミサイル防衛システム」
(WIRED NEWS 2004/04/27)ミサイル防衛システム:9月配備、米国内で批判 「成功率6割」のウソ
米ブッシュ政権が今年9月にも初期配備を開始するミサイル防衛(MD)システムへの批判が、米国内で強まっている。技術的な実現性に疑問があるうえ事前のテストが不十分で、現状のスケジュールで配備しても、期待通り弾道ミサイルを撃ち落とせるかどうか分からないためだ。今後5年間だけでも530億ドル(約6兆円)の支出が必要とされ、日本も昨年末に一部の導入を決めた巨大防衛システムの何が問題視されているのかを探った。【ワシントン和田浩明】4月21日、上院軍事委員会国防小委員会が開催した公聴会。民主党のファインシュタイン議員が質問に立った。
「迎撃に必要なレーダーや衛星の導入は来年以降。(敵の)おとり弾頭への対処も難しい。なぜ配備を始めるのか」
同議員は、国防総省の担当者がシステムは「北朝鮮のミサイルに対抗できるか現時点では定かではない」と上院軍事委で3月に証言したことを指摘、ケイディシュ国防総省ミサイル防衛局長の見解をただした。
同局長は「今は誰かに(ミサイルを)撃ち込まれても撃ち返せない。それが可能になる」と配備の意義を説明。05年には「これまで行えなかった多数の飛行試験などが実施できる予定だ」と述べ、配備開始後も継続的に性能の向上を目指すとの従来の方針を繰り返した。
北朝鮮の弾道ミサイルを撃ち落とせる確率については「100%ではないが、かなり高い」と主張したものの、具体的な数字への言及は避けた。◇「成功率6割」のウソ
■「現実的テスト」なし
ブッシュ大統領が02年12月に04年中の配備開始を発表したのは、長距離弾道弾のミッドコース迎撃に対応する地上配備型(GMD)システムだ。
米国は97年以降、GMDの飛行試験を10回実施。うち8回で迎撃試験を行い、5回成功した。「成功率は6割」と見えるが、実態は異なる。
GMDシステムの技術的問題点を指摘し、配備延期と試験の強化を求める報告書を13日に発表した「憂慮する科学者連盟(UCS)」(マサチューセッツ州)によると、これまでの迎撃試験は、「非現実的」な環境で行われた。
報告書によると、標的ミサイルは、自らの位置を知らせる電波発信機を装備。迎撃ミサイルも、配備予定の3段式ではなく、プロトタイプの2段式だった。迎撃対象の模擬弾頭と、これに衝突して破壊する「キル・ビークル」の接近速度も、意図的に実際より低く抑えられていたという。
事前に設定された「シナリオ」通りに行ったもので、不測の事態を想定する必要がある実戦環境からは程遠いというのだ。米会計検査院も4月に議会に提出した報告書で「現実的な試験は行われておらず、配備時に期待通りの機能を発揮できるかどうかの証明が求められている」と指摘した。◇「核拡散防止こそ推進を」
■元将官らも公開書簡
さらに、UCS報告書の執筆者の一人で、クリントン前政権で防衛システムの試験担当だったフィリップ・コイル元国防次官補によると、迎撃ミサイルの初期配備が行われるアラスカ州のフォートグリーリー基地では、周辺住民への危険性から迎撃試験は実施できないという。試験は、もう1つの配備場所であるカリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地などで行うが、フォートグリーリー基地では「ぶっつけ本番」になる。
早期配備への疑念は、米軍関係者からも上がっている。米軍退役将官ら49人は3月末にブッシュ大統領あての公開書簡で「米国へのミサイル攻撃の可能性は低い。巨額の費用を投じてミサイル防衛を進めるより、テロリストの悪用を防ぐため、核兵器・物質の拡散防止を推進すべきだ」と呼びかけた。◇モデルは戦略防衛構想
米国は60年代にソ連の大陸間弾道弾(ICBM)を迎撃するシステムを開発しようとしたが、技術的問題などで断念。その後、レーガン政権が83年に打ち出した戦略防衛構想(SDI、スターウォーズ計画)がミサイル防衛のモデルになった。
ブッシュ現政権は、敵ミサイルを、発射直後(ブースト)、飛行中(ミッドコース)、弾頭切り離し後(ターミナル)の各段階で撃ち落とす「多層防衛」の弾道ミサイル防衛構想(BMD)を打ち出した。04年からミッドコースで地上から迎撃するシステム(GMD)を配備する。
日本は、98年から米国と海上配備型ミサイルの共同研究を続けてきたが、昨年末、米国製の海上発射型の「SM3」ミサイルと「パトリオットPAC3」地対空ミサイルの導入を閣議決定した。
米国はドイツ、イタリアとも中距離の防空システムを開発中。イスラエルは米国と共同開発した地対空ミサイル「アロー」をすでに配備している。……………………………………………………………………………………………………… ◇難しい技術開発 日本は焦る必要ない──フィリップ・コイル元国防次官補(試験・評価担当)
94〜01年までミサイル防衛システムの各種防衛装備の試験や評価を担当したが、米国史上最大級かつ最も高価なものの1つといえる防衛システムだ。それを、現実的な有効性試験も行わずに配備しようというのは、懸念を禁じえない。
十分な資金と時間を投じて開発を行っても、敵ミサイルが多弾頭式やデコイ(おとり弾頭)を使用していると、弾頭を迎撃する技術開発は極めて難しいだろう。今回の初期配備は、翼や着陸装置のない軍用機を実戦投入するようなものだ。
日本はミサイル防衛の導入を決定したが、実際に敵のミサイルを撃ち落とせるかどうかは分からないのだ。米国が進める政策のバスに乗り遅れないよう焦る必要はない。現在の脅威のレベルは、巨額の費用を投じて拙速な導入を進める必要にまで達していないと思う。(毎日新聞 2004/05/15)米科学者団体、「ミサイル防衛に効果なし」
米国の民間団体「憂慮する科学者同盟」(UCS)は13日、今秋にも米国内に配備されるミサイル防衛システムについて、「実戦では機能しない」という報告書をまとめた。米会計検査院も先月、懐疑的な報告書を発表しており、配備を急ぐブッシュ政権への風当たりが強まっている。
UCSの科学者やマサチューセッツ工科大の専門家が、国防総省関係者らの議会証言や公表資料を詳細に分析。大気圏外を飛来中のミサイルを迎撃する「地上配備ミッドコース防衛」(GMD)の有効性を検証した。
報告書は、レーダーやセンサーの性能に問題があることや、迎撃実験の条件設定が実践的でなかったことを指摘。「北朝鮮がハワイを長距離弾道ミサイルで攻撃した場合、迎撃ミサイルで破壊することはできないだろう」と批判した。
国防総省は9月末までに、GMD用の地上配備型ミサイル計10基をアラスカ州とカリフォルニア州に配備。太平洋越しに飛来する弾道ミサイルを追跡するレーダーと連結する。05年末までに計20基に増やす予定だ。
UCSは「いったん配備を凍結して、より実践的な迎撃実験をするべきだ」としている。(朝日新聞 2004/05/16)米ミサイル防衛配備中止を 効果立証ないと科学者団体
【ワシントン31日共同】米国の第一線の科学者らでつくる「憂慮する科学者同盟」(UCS)はこのほど、北朝鮮などの弾道ミサイルを想定し、米政府が年内に実戦配備を予定しているミサイル防衛システムに関し、効果が立証されていないとして配備中止を求める報告書をまとめた。
会計検査院(GAO)も最近、同システムの効果に懐疑的な報告書を出しており、実戦配備を急ぐ米政府への風当たりが強まりそうだ。
UCSの報告書は「弾道ミサイルを迎撃ミサイルで撃ち落とす過去の実験では、実際の攻撃に関連するデータが得られたとはいえない」と指摘。迎撃が容易な条件下での実験しか実施していないことに懸念を示した。
特に迎撃を回避するためのおとりへの対策ができておらず、北朝鮮のような国でも原始的なおとりを使うことは十分可能と警告している。(共同通信 2004/05/31)米、アラスカの基地に迎撃ミサイルを初配備
米国防総省は23日、長距離弾道ミサイルを使った米本土攻撃に対抗する地上配備型の迎撃ミサイル1基をアラスカ州フォートグリーリー基地に初めて配備したと発表した。北朝鮮やイラン、テロ組織などによる攻撃の可能性を念頭に進められているブッシュ政権によるミサイル防衛(MD)計画がさらに一歩進展した形だ。
ミサイル防衛局(MDA)によると、このミサイルは弾道ミサイルを、飛来する中間(ミッドコース)段階(大気圏内)で迎撃する。22日に配備されたが、レーダーやセンサー、指揮命令系統、通信関係などの接続は完了しておらず、ミサイル防衛システムとしてはまだ機能していないという。
同基地には年内にさらに5基が配備されるほか、05年中に10基が追加配備される予定で、こうした追加配備にあわせて本格運用を始める。ミサイル防衛計画は実用性に疑念も出ているが、国防総省当局者は「実験を繰り返し、精度を高めていく」と強調した。
米政府は北朝鮮のミサイル開発について「米西海岸に到達可能なミサイルを現時点で保有している」(米中央情報局)と説明している。アラスカに優先配備したのは、核兵器を搭載できるテポドン2などによる攻撃の可能性を排除していないためとみられる。(朝日新聞 2004/07/24)武器輸出3原則見直し「強く支持」 米ミサイル防衛局長
米国防総省のオベリング・ミサイル防衛局長(空軍中将)は26日、日米ミサイル防衛(MD)協力に伴う日本の武器輸出3原則見直しについて「強く支持する。(日米が)開発に投資した成果を完全に活用できるからだ」と述べた。ワシントン市内での講演後、記者団に語った。
オベリング局長は、日本の取り組みについて「同盟国の中でも先導的なパートナーだ。防衛予算の中でMD分野に多くの金額を充てている」と高く評価。日米が進めている共同技術研究に関しては「今冬か来春にもいい方向で報告の成果を得られる」との見通しを示した。
武器輸出3原則は、外国への武器輸出を原則として認めない日本政府方針で、米国への武器技術供与だけを例外としている。MD協力が技術研究から開発・配備の段階に入ることから、日本政府は見直しを検討することを表明している。(朝日新聞 2004/10/27)パトリオットに「欠陥」 英軍機墜落事件で米教授指摘
イラク戦争中に、米陸軍のパトリオット迎撃ミサイルが誤って英空軍機を撃墜した事故の原因を調べた米国の科学者が「パトリオットのシステムの欠陥と、運用上の不備が重なって起きた」との結論を出した。パトリオットは日本でも自衛隊が保有し、改良してミサイル防衛(MD)の一環として重要な役割を担わせることになっている。その能力に専門家から疑問符がついた形だ。
調査したのはマサチューセッツ工科大学のセオドア・ポストル教授(物理学・安全保障論)。
03年3月23日、クウェート上空で英戦闘機を米陸軍パトリオット(PAC2)が撃墜。同年7月の米軍報告書は「英機の敵味方識別システム(IFF)の誤作動が原因」としていた。
しかし同教授は、米中央軍が今年6月公開した事故報告書の添付データを解析し、「報告書の結論部分とは食い違う全体像」が分かったという。
同教授によると、英機は確かに識別信号を出していなかったが、正常な信号を出した僚機と2機編隊を組み「安全回廊」に指定された空路を飛行していた。米軍の防空システム上も「友軍機」と認識されていた。
ところが、ミサイルを発射した中隊は、装備発送の遅れから、防空システムに接続するデータリンクを欠いていた。
また事故の直前、この中隊の射撃管制盤には、英機とは離れた別の地点に飛来中のミサイルがあるとの表示が出ていた。実際は何も飛んでおらず、電波干渉などでシステムが誤作動して出る「ゴースト」だった。
この「ミサイル」を迎撃しようとしてパトリオットが発射された。データリンクを欠いていたため、近くに飛来した英機を友軍機と判断して攻撃を中止することもできずに起きた「複合要因」の事故だと同教授は推察する。
英機撃墜の10日後、同じ大隊の指揮下にあって先進型のパトリオットPAC3が配備された別の中隊も、米海軍機を誤って撃墜した。こちらの事故は、調査結果がまだ公表されていない。
この中隊に従軍した米地方テレビ局の取材班は、事故以前の別の日に、PAC3の管制盤にミサイルのゴーストが何度も表示されたのを見たと証言している。
ポストル教授は「これらの事故は、パトリオットシステムにゴースト表示の欠陥がある上、いったんミサイルがゴーストに向けて発射されると、近くを飛行する友軍機を攻撃してしまう問題点を抱えていることを示している」と話している。(朝日新聞 2004/12/04)ミサイル防衛だれのため? 全国民を守れない
弾道ミサイル防衛(MD)システムの導入を盛り込んだ「防衛計画の大綱」。大綱別表では、迎撃ミサイル「パトリオット(PAC3)」を配備するのは東京周辺などの3個高射群に限られ、残る3個高射群には導入しないことが分かった。「守る国民」と「見捨てる国民」をだれが選ぶのか。MDは国防上の難問を突きつけている。(社会部・半田 滋)政府が導入を決めたMDは、飛来する弾道ミサイルを迎撃ミサイルやレーザー光線で撃ち落とす多層防衛システム。1980年代に米国で開発が始まり、日本は海上のイージス護衛艦から発射するスタンダードミサイル(SM3)で迎撃し、撃ち漏らした場合、地上のPAC3で対応する2段階の迎撃方式を採用した。最後のとりでがPAC3というわけだ。
■3個高射群に限定
パトリオットはもともと侵入する航空機を撃ち落とす目的で導入された。航空自衛隊基地に6個高射群を配備している。
大綱別表では、PAC3が発射できるよう改造する部隊は3個高射群に限定。このため、残る3個高射群が置かれた地域には「MDの傘」がかからないことになる。
「守られる地域」について、防衛庁は2004年度予算で入間基地に置かれた第一高射群へのPAC3導入を決定した。配下の4個高射隊はいずれも、東京周辺にあり、首都防空を狙っているのは明らかだ。残り2個高射群について防衛庁は「どこにするのか検討中」としている。
6個高射群をすべてPAC3にしない理由について、幹部は「費用対効果の問題」という。
PAC3を撃てるよう1個高射群を改造するのに必要な費用は約500億円。防衛庁はミサイルの単価を明らかにしていないが、調べによると、PAC3は1発約5億円もする。04年度の購入費は64億円だから、12発から13発の購入分にすぎない。
イージス護衛艦から発射するSM3はさらに高く1発約20億円。04年度予算では購入費に181億円を計上したが、9発の購入分にしかあたらない。■北のノドン約200発
防衛庁が警戒しているのは北朝鮮の弾道ミサイル「ノドン」だ。これを迎撃するにはイージス護衛艦2隻を日本海に配備する必要があるが、米国防総省によると、北朝鮮のノドン保有数は約200発とされ、次々に発射されれば、仮に迎撃率を100%としても、弾数の少ないSM3ですべて迎撃するのは不可能だ。防衛庁幹部は「落下地点に重要施設がなく、人口も少ないとなれば迎撃を見送らざるを得ない」という。
SM3が守らない地域をPAC3で防御するはずもなく、守られない地域の住民にとってMD導入は、まさに「税金の無駄遣い」でしかない。
防衛庁計画課は「建造中の新型イージス護衛艦2隻にMD対処能力を持たせるか検討する際、残る高射群をどうするか決める」と含みを持たせるが、新型イージス護衛艦は防衛範囲が広くなる日米共同技術研究中のSM3将来型を搭載する計画でいる。■「重要な政治判断」
海上での対処能力が向上するならPAC3配備を増やす必要はなく、3個高射群への配備が最終案との見方が強い。
「MDの傘」から外れる地域をどこにするのか。自衛隊幹部の1人は「制服組が決めて国民が納得するだろうか。これは極めて重要な政治判断。政治が決定すべきだ」と注文をつける。
一方、防衛庁幹部は「MDは北朝鮮に弱みを見せないための外交の道具にすぎない。北朝鮮が本当にノドンを発射するとは思えない」という。
それが事実ならMDにかける総額1兆円以上という費用はいかにも高額。米国生まれのMD購入を決めたのは、世界の中でも日本だけだ。<航空自衛隊高射群> 侵攻する航空機を迎撃するための地対空ミサイル部隊。千歳(北海道)、三沢(青森)、入間(埼玉)、岐阜、春日(福岡)、那覇の各基地に1個高射群ずつ配備されている。各高射群は4個高射隊で編成され、1個高射隊は5基の発射機を持つ。(東京新聞 2004/12/24)
米、大型SM3の開発決定 ミサイル防衛、新段階へ
【ワシントン10日共同】米国防総省は日米が共同技術研究を進めている直径約53センチの海上配備型迎撃ミサイル(SM3)の開発に乗り出すことを決め、年内にも日本政府と協議を開始する方針を固めた。同省当局者が10日までに明らかにした。
日本が昨年末、ミサイル防衛関連部品の対米輸出を武器輸出3原則の例外としたことに伴う措置。生産・実戦配備に移行するには「少なくとも3−5年かかる」(同省当局者)とみられるが、今後の日米安保体制で基軸となるミサイル防衛が新たな段階へ進む。ブッシュ米政権の国防政策の基軸となるミサイル防衛で日本の関与が一層深まることになりそうだ。
同当局者は共同技術研究の結果を踏まえたうえで、年内にも共同開発への移行で正式合意したい意向を示唆した。オベリング・ミサイル防衛局長の早期訪日も検討されているという。(共同通信 2005/01/10)ミサイル防衛網:米国の打診受け、政府が共同研究検討へ──レーザー撃破
米国が計画中のミサイル防衛(MD)網のうち、航空機に搭載したレーザーで発射直後の弾道ミサイルを撃破するシステムについて、米政府が日本政府に対し、日米共同の技術研究を非公式に打診していることが9日、明らかになった。同システムは日本が導入を決めたシステムより迎撃精度が高いとされ、政府は共同研究の検討に入る。しかし、相手国領空を上昇する弾道ミサイルを撃破する攻撃的性格が強いため、専守防衛の理念や憲法で禁じる集団的自衛権行使との整合性が議論となりそうだ。【宮下正己】◇集団的自衛権、抵触の恐れも
米政府が打診しているのはエアボーン・レーザー(ABL)システムで、大型航空機に高出力のレーザー砲を搭載し、偵察活動でミサイル発射の可能性が高いと判断すれば出動。数百キロ離れた上空から発射直後の上昇(ブースト)段階にある弾道ミサイルにレーザーを照射、爆破させる。米空軍がボーイング社などと契約、研究・実験を続けているが、配備までに数千億円規模の開発費がかかるといわれ、技術開発の遅れが指摘されていた。
政府関係者によると、米政府は日本の高い技術を活用し開発コストを削減するため、日米間の技術者レベルの協議で、非公式に共同技術研究を要請。昨秋以降、ボーイング社など米防衛産業も、自民党の国防族議員らを朝食会などに招き、共同研究への理解を求める活動を活発化させている。
MDシステムをめぐり政府はすでに(1)イージス艦からの海上発射型(2)地上配備型──の迎撃システムの米国からの導入を決定。99年度からは海上発射型の次世代システムの日米共同技術研究を継続中で、04年12月に武器輸出3原則を緩和、米国向けMD関連は対象外とした。
このため、自民党幹部は「米国のレーザーを使ったMD技術も将来的には輸出解禁の対象になり得る」と説明している。
ただ、発射直後の上昇段階では弾道ミサイルの着弾地点の判別が難しく、他国を狙った弾道ミサイルを撃破すれば、憲法解釈で禁じる集団的自衛権行使に抵触するおそれもある。このため政府内にも、新たな共同研究に踏み込むことに慎重論が残っている。(毎日新聞 2005/01/10)米国:MD実験、3回連続で失敗
【ワシントン和田浩明】米国防総省ミサイル防衛局は14日、地上配備型ミサイル防衛(MD)システムの弾道ミサイル迎撃実験で、迎撃ミサイルが発射されなかったと発表した。迎撃実験の失敗は02年12月以来3回連続となった。米国は当初、北朝鮮などの弾道ミサイルに対抗するため、04年末までのシステム稼働を目指していたが、相次ぐ失敗でシステム稼働がさらに遅れそうだ。
同局で原因を調査中だが、「迎撃ミサイルではなく、地上施設の問題とみられる」と説明している。(毎日新聞 2005/02/15)カナダ「MD不参加」 マーティン首相表明、米と関係再び悪化も
【ニューヨーク=長戸雅子】カナダのマーティン首相(自由党)は24日、米国が協力を求めていたミサイル防衛(MD)構想について、「われわれが努力を傾注する分野ではない」と述べ、参加しない考えを公式に表明した。米国は今月14日に行った大陸間弾道ミサイル(ICBM)迎撃実験に、昨年12月に次いで失敗。実戦配備が遅れるなか隣国カナダの不参加表明は米国にとって打撃であり、イラク戦争への不参加で冷却した両国の関係が再び悪化する可能性も出てきた。
マーティン首相は最初に政権に就いた2003年にはMD構想への支持を示していたが、昨年6月に行われた総選挙で自由党が少数与党に転落。国民世論が参加に否定的なうえ、政権運営にはMD構想の参加に反対する政党も取り込んでいく必要があるため、今回の決定に至ったとみられる。
米国とカナダは共同防衛協定に基づいて、早期警戒にあたる共同組織「北米航空宇宙防衛司令部」(NORAD)を運営しており、米防衛当局者は「カナダはすでにMD構想の一役を担っていると思っていた」とし、今回の決定に衝撃を隠し切れない様子だ。カナダが不参加ならNORADを利用した配備は事実上困難になる。
ブッシュ大統領は昨年12月にカナダを訪問した際、「弾道ミサイル防衛で前進を実現したい」と言及、カナダの協力に強い期待を示していただけに、ミサイル迎撃実験の相次ぐ失敗ともあいまって、米国内でMD構想の計画そのものに疑問の声が高まりかねない。
マーティン首相は「米国とは今後も外交、防衛面で緊密な協力をしていく」と述べたが、米国のセルッチ駐カナダ大使は「自国に向けて発射されるかもしれないミサイルに対抗する権限をなぜ放棄するのか理解できない」と批判した。(産経新聞 2005/02/25)イラク戦争:「パトリオット」友軍機誤射で報告書 迎撃ソフトに欠陥──米国防総省
◇自動迎撃ソフトに欠陥
【ワシントン和田浩明】03年のイラク戦争で米軍の地対空ミサイル「パトリオット」が友軍機を誤射、撃墜した原因の1つに、自動迎撃機構のソフトウエアや表示装置の問題があり、操作担当者による判断の度合いを増やすべきだなどとする報告書を、米国防総省の諮問機関「国防科学委員会」がまとめた。同ミサイルは、日本が導入するミサイル防衛(MD)システムの一部でもあるが、信頼性への懸念が高まりそうだ。
イラク戦争で米主導の連合軍は、「PAC2改良型」と「PAC3」の2タイプのパトリオット計60基を実戦配備したが、03年3月23日に英軍機が、同4月2日に米軍機が「敵ミサイル」と誤認されて撃墜され、パイロットら計3人が死亡している。国防科学委は同年8月〜04年にかけ原因などを調査。このほど報告書の要旨を公表した。
報告書は原因として▽撃墜機に搭載された敵味方識別装置の欠陥▽パトリオットと、戦闘地域周辺の防空レーダーとの連携の欠如▽パトリオットの自動迎撃機構の問題──などを挙げた。
自動迎撃機構については「運用指針や手順、表示装置、ソフトウエアが不十分だ」と指摘。操作担当者はソフトウエアを信用するよう訓練されていたが、イラク戦争の実戦環境に即したものではなく、人間による判断を増やすべきだったとの理由を挙げ「操縦担当者による監督と制御を拡大すべきだ」などと勧告した。
パトリオット・システムの問題については、米マサチューセッツ工科大の研究者も「電波干渉により、存在しないミサイルを表示する欠陥がある」などと指摘している。
同委によると、イラク戦争中に9基の敵ミサイルを迎撃、うち8基は確実に撃墜したといい「全体としては相当な成功を収めた」と評価している。(毎日新聞 2005/03/07)地上型ミサイル防衛、資金凍結を=ノーベル賞受賞の科学者ら要請−米
【ワシントン7日時事】ノーベル賞受賞者9人を含む米科学者22人が7日までに、上院軍事委員会のウォーナー委員長に書簡を送り、北朝鮮などからの弾道ミサイル攻撃を想定した地上配備型のミサイル防衛システムについて「実際の攻撃を防御する能力を備えていない」と批判、資金拠出を全面的に凍結するよう求めた。
ブッシュ政権が推進しているミサイル防衛システムをめぐっては、実効性を疑問視する声が専門家の間で出ていたが、多数の科学者による連名の反対表明は異例。(時事通信 2005/04/08)ミサイル防衛運用穴だらけ
ミサイル防衛(MD)システムを運用する手続きを定める自衛隊法改正案などが14日、衆院を通過した。北朝鮮から弾道ミサイルが発射されればわずか10分程度で日本に着弾するため、迅速に迎撃するのが狙い。だが国会審議では、システムの運用や技術的な問題点が次々と表面化し、「MDで国民を守れるのか」という根本的な疑問は深まるばかりだ。(社会部・半田滋、政治部・梶雅一)●PAC3配備
政府の対応の遅れが際だったのは、地上から発射する地対空ミサイル(PAC3)の運用だ。
既に埼玉・入間基地など首都圏にある4カ所の基地への配備が決定。有効な迎撃には50キロ間隔で発射機を並べることになるため、適地が民有地であれば確保する必要が出てくる。民間航空機を誤射する危険を避けるには、首都圏上空に飛行禁止区域の設定も不可欠になる。
PAC3を基地の外に展開する手続きについて、防衛庁の飯原一樹防衛局長は「法案成立後に具体的に検討しなければいけない」と答弁し、検討不足を率直に認めた。
飯原氏は飛行禁止区域について「法律で制限する必要はない」としながらも、「飛行機が飛んでいる状況で、ミサイルを発射することは極めて難しい」と、PAC3の使用は事実上不可能との見通しまで示した。
また地上から弾道ミサイルを探知するレーダーの問題点も表面化。強い電磁波を発するため、さまざまな面で市民生活に影響が出るのは必至とみられている。
防衛庁の大井篤参事官は「(レーダーの)前方120メートルと、作動角度範囲内には立ち入らない措置を講ずる」と立ち入り禁止区域を設ける可能性を述べたが、PAC3の運用自体を「法律成立後の検討事項」(飯原氏)と答弁しているため、国民生活への影響は不明のままだった。
さらにPAC3の配備地域についても疑問は解消されていない。
防衛庁は入間を含む高射部隊の半数に配備することを決めているが、それ以外の地域に配備の予定はない。
同庁はPAC3が移動式であることを理由に「穴のない防空体制」を強調するが、同法で規定した緊急手続きが必要な場面では手遅れになるのは確実だ。「PAC3に守られない国民」の問題についても、国会の議論は煮詰まっていない。●チェック機能
今回の自衛隊法改正は、迅速な迎撃を行うため、安全保障会議や閣議を経て防衛出動を発令する、従来の重層的な手続きを簡素化するのが狙い。
このため、(1)他国にミサイル発射の兆候がある場合は、首相の事前承認を得て迎撃(2)兆候が察知できずいきなりミサイルが飛来した場合は、事前に策定された「緊急対処要領」に基づいて防衛庁長官が迎撃命令―とし、兆候の有無によって異なる手続きを定めた。
与野党から質問が集中したのは、兆候の有無を判断する条件だ。
防衛庁は北朝鮮を念頭に「兆候が察知できないことは考えにくい」として、迎撃手続きは(1)を基本にすると説明。一方で(2)の規定は「他国のミサイル発射の動きが、日本を標的としたものでないと想定してイージス艦を出動したら、日本に向けてミサイルが飛来した場合」などとした。
野党議員からは「防衛庁は、現場指揮官の裁量が大きい(2)の規定で活動したい意向がにじむ」との批判も根強い。与党からも「手続きは複雑すぎて部外者のチェックが不可能」との不満がある。
今回の手続きの変更で現場指揮官の裁量が拡大し、ひいてはシビリアンコントロール(文民統制)が形がい化していく印象はぬぐえない。<ミサイル防衛(MD)システム> 弾道ミサイルを高性能レーダー網で追尾し、迎撃ミサイルで撃ち落とす多層防衛システム。日本では大気圏外で撃墜するイージス艦発射型迎撃ミサイル(SM3)と、撃ち漏らしたミサイルを落下直前に撃墜する地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の2段階で防御。2006年度末にPAC3、07年度末にSM3配備を開始する予定。(東京新聞 2005/06/15)
パトリオット3、国内生産へ ミサイル防衛で日米合意
日米両政府が、ミサイル防衛(MD)システムの地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)を国内でライセンス生産することで合意していたことがわかった。05年度中に製造元の米ロッキード・マーチン社と三菱重工業がライセンス生産に関する契約を結ぶ見通しで、08年度から配備する予定。防衛庁は、防衛産業の技術力を維持でき、修理にも素早く対応できると歓迎しているが、米国からの直接購入に比べ割高になる可能性もある。
PAC3は、弾道ミサイルを撃ち落とす地上配備型の米国製迎撃ミサイル。防衛庁は06年度末から日本国内にPAC3の配備を開始する方針。06年度と07年度は、防衛庁が米政府と結ぶ購入契約である有償軍事援助(FMS)契約に基づき米ロッキード・マーチン社製の装備を購入し、配備することを決めている。08年度以降に配備する装備の調達方法は白紙で、日米両政府が協議を続けてきた。
日本側は、パトリオットミサイルの生産技術を「安全保障上、不可欠な中核技術」(守屋武昌防衛事務次官)と位置付け、国内でのライセンス生産を認めるよう米側に働きかけてきた。米国からの直接購入では、国内の技術低下を招きかねないとの懸念があるためだ。
その結果、日米両政府は3月、PAC3のライセンス生産を認める了解覚書(MOU)を締結。今年度中にPAC3の地上装置と、ミサイルについてライセンス契約を交わす見通しが立った。
これを受ける形で大野防衛庁長官は6月、米国側が求めていた次世代型迎撃ミサイルの共同開発に入る方針を正式に表明。06年度予算の概算要求に数十億円の開発費を盛り込む意向を示した。
三菱重工は、航空自衛隊が保有している航空機迎撃用のPAC2は既にライセンス生産している。防衛庁は、PAC3の国内での生産が決まったことについて「日本の防衛産業の技術力を維持することができる。故障などの際も即応できるなどメリットは大きい」と意義を強調している。
ただ、FMS契約に基づき米国から直接購入する方法に比べ、ライセンス生産の方が導入費用はかさむとみられる。防衛庁はMDシステム全体にかかる経費を総額8000億円から1兆円と見込んでいるが、費用がさらに膨らむようだと、国会での予算審議などで批判が出る可能性もありそうだ。(朝日新聞 2005/07/16)迎撃手続き簡素化 ミサイル防衛の枠組み整備 改正自衛隊法が成立
日本に飛来する弾道ミサイルをミサイル防衛(MD)システムで迎撃するための法的手続きを定めた改正自衛隊法が、22日午後の参院本会議で与党の賛成多数で可決、成立した。現行法では国会の事前承認が必要な防衛出動発令に限られている迎撃手続きを簡素化し、迅速な迎撃を可能にする。政府が2006年度末からの配備を予定しているMDシステムの法的枠組みが整った。
ただ実際の迎撃行為では現場指揮官の裁量が大幅に認められることになり、文民統制(シビリアンコントロール)の確保などが課題だ。
改正自衛隊法は、同法82条(海上警備行動)に「弾道ミサイル等に対する破壊措置」を新たに追加。(1)弾道ミサイル発射の兆候がある場合(2)明確な兆候がつかめない場合―の迎撃の二類型を明記。迎撃後の国会報告も盛り込んだ。
具体的な手順としては、燃料注入などミサイル発射の明確な兆候がある場合は、防衛庁長官が迎撃ミサイルを搭載したイージス艦部隊などの展開を首相に上申。首相が閣議を経て長官に迎撃権限を与え、ミサイルが発射されれば現場指揮官が迎撃する。
一方、発射の明確な兆候はつかめないものの実験、訓練など警戒を要する動きを察知した場合は、防衛庁長官があらかじめ作成する「緊急対処要領」に従い、期間を定めて部隊を待機させて急な発射に備え、発射されれば現場指揮官が迎撃する。
民主党は迎撃措置後の国会承認の義務付けなどを盛り込むよう求めたが、与党は既に迎撃措置をとった後で国会承認を求めても意味がないなどとして拒否した。(共同)<ミサイル防衛> 弾道ミサイルをレーダー網で探知し、着弾前に撃ち落とすシステム。日本では、大気圏外で撃墜するイージス艦発射型の迎撃ミサイル(SM3)と、撃ち漏らしたミサイルを落下直前に撃墜する地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の2段階で防御する。防衛庁は2006年度末にPAC3、07年度末にSM3の配備を開始する方針。(共同)(産経新聞 2005/07/22)
09年度に日米作戦センター 米軍再編で両政府方針
日米両政府は在日米軍再編で、米空軍横田基地(東京都福生市など)に航空自衛隊の航空総隊司令部(同府中市)を移転するのに併せ、同基地内にミサイル防衛など防空の中枢を担う「日米共同統合作戦センター」を2009年度までに新設する方針を固めた。日米関係筋が24日、明らかにした。
ミサイル防衛は弾道ミサイルを着弾前に迎撃するシステムで、日本はイージス艦発射型の迎撃ミサイルを07年度末、地対空誘導弾パトリオットを06年度末から導入する。統合作戦センターの設置で探知と指揮命令機能の強化を目指すが、軍事面で日米の一体化が加速するのは必至だ。
また日本側が要求していた横田基地管制権の返還は、米側の意向を踏まえ、07年度に予定されている嘉手納基地(沖縄県)管制権の返還後に再検討する方向となった。
航空総隊司令部の横田基地への移転は、04年4月の協議で日本側が提案し、米側が既にこれを受け入れている。(共同通信 2005/09/24)ミサイル防衛共同開発費、米試算で3倍の30億ドル
日米両政府が2006年度から共同開発を開始する次世代型のミサイル防衛(MD)システムについて、米側が開発総額を約30億ドル(約3210億円)と見積もり、日本側に伝えてきていることが分かった。
米側は当初、2011年度までの米の負担額を5億4500万ドル(約583億円)としていたが、開発期間を14年度までに延長したうえで改めて過去の開発例などをもとに積算したところ、総額が3倍弱に膨らんだ。
政府は、中期防衛力整備計画(中期防、2005年度から5年間)の中で、共同開発の費用を数百億円程度見込んでいるが、今後の費用分担の決定次第では、計画に影響が出る可能性がある。
米側は、先に米の負担額を5億4500万ドルと伝えてきた際、日本側にも同程度の負担を求めてきている。開発総額が3倍弱に膨らんだことで、政府内には、日本側負担について、「半分の1500億円程度かそれ以上の負担を求められるのではないか」(防衛庁幹部)と警戒する声が出ている。
このため、日本側が担当する部品の開発に必要な分だけを負担するなどで、負担額をできるだけ抑制したい考えだ。
日米の費用分担は、来年度に共同開発に関する合意文書を取り交わすまでに決定される。
政府は、次世代型に先がけて06年度末から配備を始めるMDシステムの整備費用を8000億〜1兆円と見積もっている。共同開発費用はこれとは別枠で、防衛庁は来年度予算の概算要求に、日米共同開発のシステム設計などの開発費30億円を計上している。
日米で共同開発するのは、海上配備の次世代型迎撃ミサイル(直径約53センチ)。当初は2011年度ごろまでに開発を終える見通しもあったが、現計画では14年度までの開発完了、15年度以降の生産開始を目指している。
米側の積算について防衛庁幹部は、「日本が必要とする以上の規模の実験や、共同開発と関連したシステムの試験などが含まれている可能性がある」と話し、今後、日本側で精査する考えを示した。
また共同開発では、開発の途中段階でも実戦配備し、実験・改良を繰り返して能力を向上させていく「スパイラル開発」が採用される見通しだ。米側が採用している方式で、弾道ミサイルの進化に対応し、技術革新の成果をその都度、反映させることができる利点がある。一方で、開発の進ちょく状況によってはさらに費用が膨らむ可能性がある。
開発費がさらに増加する場合は、日本政府としては、「防衛予算が削減されている流れの中で、米側と同じやり方で負担はできない」(防衛庁幹部)としており、開発の進め方について改めて検討する方針だ。(読売新聞 2005/09/25)迎撃ミサイルの性能に懸念=大統領の性急な配備が背景−米紙
【ロサンゼルス22日時事】22日付の米紙ロサンゼルス・タイムズは、米国の地上配備型迎撃ミサイルの性能に強い懸念が出ていると報じた。2002年にブッシュ大統領の命令で十分なテストを経ず拙速に配備されたことが背景にあり、技術的な信頼度は低いという。(時事通信 2006/06/23)迎撃ミサイル 月内にも沖縄配備 米軍のみで発射判断
米軍再編の最終報告を踏まえ、月内にも米国が在日米軍基地に配備する地上発射型迎撃ミサイル「PAC3」の運用について、日米間の取り決めがなく、発射の決断は米側に委ねられていることが2日、分かった。日本政府の了承なしに迎撃に踏み切れば、日本の主権が侵害されるだけでなく、PAC3が落下した場合には2次災害の補償をめぐる問題も浮上する。北朝鮮が「テポドン2号」の発射を準備する中、日米連携を強調した米軍再編は課題を置き去りにしたまま進んでいる。
PAC3の在日米軍基地への配備と早期運用は、5月に日米が合意した米軍再編最終報告に示された。北朝鮮が「テポドン2号」発射の兆候をみせたことから、米側は配備を急ぎ、月内にも沖縄県の米空軍嘉手納基地に4個高射隊24基を配備する計画でいる。
「装備の重大な変更」に該当する場合は、日米安保条約に基づく日米の事前協議が必要だが、日本政府は今回の配備に注文をつけない方向だ。
PAC3による迎撃には、日本政府の要請や承認を必要とするのか、米軍の意思だけでよいのかなど、発射の要件をめぐる日米間の取り決めが存在しない。
航空自衛隊が来年3月から配備するPAC3については昨年、自衛隊法が改正され、「発射の兆候」を捕捉した時点で首相の承認を得て迎撃することなどが規定された。だが米軍を日本の国内法で縛るのは無理があり、当面は米軍の判断ひとつで発射できる状況だ。
PAC3は発射されると基地を大きく飛び出して弾道ミサイルを迎撃。外れた場合は自爆し、命中した場合でも金属破片が地上に落下する。米軍が「基地の自衛」を主張しても、迎撃が軍事行動であることは否定できない。基地の外に影響が及び、日本の主権が侵害されるおそれがある。防衛庁幹部は「米兵が基地の外に出てきて泥棒をつかまえるようなもの」と問題点を指摘する。
湾岸戦争では、クウェート防衛のため米軍がイラクの弾道ミサイルに向けて発射したPAC2の破片が市街地に落下し、被害が出たことが明らかになっている。在日米軍のPAC3の破片が落下した場合も、同様の2次災害が起きる可能性があるが、補償について日米間の取り決めはない。
事前協議なしに配備が先行する事態について、外務省日米安全保障条約課は「どのような条件の下で在日米軍がPAC3を撃つのか、まさに日米で協議しているところで、早期に結論を得たい」と話している。<地上発射型迎撃ミサイル「PAC3」> ミサイル防衛(MD)システムのひとつで、地上に落下する直前の弾道ミサイルを迎撃する。射程は約15キロ。米国で開発され、航空自衛隊が来年3月から配備する。(東京新聞 2006/07/03)
米ミサイル防衛システム、ハワイに配備へ
【ワシントン=丸谷浩史】米国防総省ミサイル防衛局高官は9日、弾道ミサイル防衛で、敵のミサイルを迎撃するシステムをハワイに配備する方針を明らかにした。ロイター通信などが報じた。ハワイに配備するのは戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)システムで、2009年の実用化を目指して来年初めから本格的な実験を進める。
北朝鮮の核実験発表も踏まえ、ハワイやアラスカに到達する可能性がある長距離弾道ミサイル「テポドン2号」に対応する狙いだ。(日本経済新聞 2006/10/10)北朝鮮核実験、米大統領「ミサイル防衛協力を強化」
【ワシントン=貞広貴志】ブッシュ米大統領は11日、ホワイトハウスで記者会見し、北朝鮮の核実験実施発表に対し、「平壌の政権に対し、確実に深刻な影響を与えねばならない」と述べ、国連安保理決議などを通じ、強硬な制裁措置を取る方針を明確にした。
国連決議に盛り込むべき具体的措置として、<1>核・ミサイル関連技術の輸出禁止<2>核・ミサイル開発支援につながる金融取引の停止──を挙げた。
大統領はまた、「北朝鮮の挑発」に対抗するため、日本など地域の同盟国と弾道ミサイルに対抗する「ミサイル防衛協力を強化する」と述べた。大統領は、6か国協議の枠組みや国連安保理を通じた外交解決の必要性を繰り返し強調しつつ、「すべての選択肢を留保する」と述べ、軍事的措置も視野に入れていることを示唆した。
ブッシュ大統領は、国際社会の警告を無視した北朝鮮を、核兵器廃棄に追い込むため、「外交上のムチ」が必要と述べた。(読売新聞 2006/10/12)参院予算委:ミサイル防衛整備を前倒し 首相が意向表明
安倍晋三首相は12日の参院予算委員会で、北朝鮮の核実験に関連し「こういう状況をふまえ、ミサイル防衛の整備を促進すべく努力する」と述べ、現在政府が進めているミサイル防衛(MD)システム整備を前倒しする意向を表明した。久間章生防衛庁長官も「国民の不安を取りのぞくために少し前倒しを考えないといけない」と語った。
防衛庁は、航空自衛隊入間基地(埼玉県)に今年度末までに最初の地上配備型迎撃ミサイルのPAC3を配備する予定だが、ミサイルの数は限定されており、現行計画ではイージス艦搭載型のSM3とあわせたシステム整備が完了するのは11年度の予定。
首相はまた、国連安保理での北朝鮮制裁決議案に関する中露両国との折衝について「北朝鮮の核武装を許さない点では一致しており、そこをてこに決議を引き出す努力をしたい」と強調した。【須藤孝】(毎日新聞 2006/10/12)日米共同でミサイル整備所 MD計画で防衛庁
弾道ミサイルを迎撃するミサイル防衛(MD)計画で防衛庁が、イージス艦発射型の新型迎撃ミサイル(SM3)の点検整備を行う日米共同の施設建設を検討。長崎県佐世保市の米海軍針尾島弾薬集積所周辺の海上を埋め立てる案が浮上していることが4日、明らかになった。
MDは本格的運用に向け、日米共同の情報ネットワーク構築などが進められているが、武器関連の共同施設計画が分かったのは初めてで、日米の一体化を加速する動きといえそうだ。
米海軍と海上自衛隊が導入するSM3は、発射された弾道ミサイルを高度200−300キロの宇宙空間で迎撃する米国製のミサイル。次世代型では日米共同開発が進んでいる。従来型の10倍以上の高度に到達させるためミサイルを3段式に改良、データの送受信装置も複雑化しており「点検、整備には高度な設備と技術が必要」(海上自衛隊幹部)という。(共同通信 2006/12/04)発射準備でも迎撃命令が可能に ミサイル防衛で閣議決定
政府は23日、外国から突発的に弾道ミサイルなどが発射された緊急時に、現場指揮官の判断で弾道ミサイル防衛(BMD)システムで迎撃する要件などを定めた「緊急対処要領」を閣議決定した。自衛隊初の地対空誘導弾パトリオット・ミサイル3(PAC3)が今月末に航空自衛隊入間基地(埼玉県)に配備されるのに備えて、運用体制を整えるのが目的だ。
緊急対処要領は、首相の承認や防衛相の命令といった通常の手続きが踏めない突発時の対応について規定。(1)ミサイルが発射される疑いがある(2)人工衛星名目でロケットが発射され、日本に落下する恐れがある、などの場合に、防衛相があらかじめ「現場指揮官の判断で迎撃してもいい」と命令できると定めている。(朝日新聞 2007/03/23)ミサイル迎撃可能に 『対処要領』を閣議決定
政府は23日の閣議で、日本を標的に発射された弾道ミサイルを日本独自のミサイル防衛(MD)システムで迎撃する具体的な対応を定めた「弾道ミサイル緊急対処要領」を決定した。首都圏防衛の一環として、今月29日、航空自衛隊入間基地(埼玉県)にMDシステムの核となる地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を配備することに伴う決定。これにより、弾道ミサイルの迎撃が実際に可能となった。
緊急対処要領は弾道ミサイルの迎撃について、首相の承認を得る時間がない場合など緊急時のマニュアルとなり、久間章生防衛相は閣議後の記者会見で「ミサイル防衛についての第一歩を踏み出した」と意義を強調した。
具体的には、弾道ミサイルは短時間で日本に飛来する可能性が高いため、防衛相はミサイル発射の疑いや恐れがある場合、あらかじめ迎撃命令を出しておくことが可能となった。
迎撃命令を受けた自衛隊部隊は日本に向けられた弾道ミサイルの飛来を確認した段階で日本の領域、周辺公海の上空で迎撃する。
弾道ミサイルだけでなく、人工衛星や、打ち上げロケットも迎撃対象に含まれる。
政府は2010年度までにPAC3を浜松基地(静岡県)、岐阜基地(岐阜県)、春日基地(福岡県)に配備するほか、イージス艦発射型迎撃ミサイル(SM3)を順次導入し、MDシステムの整備を進める方針だ。<ミサイル防衛(MD)> 弾道ミサイルをレーダーで探知し着弾前に撃ち落とすシステム。日本周辺に展開するイージス艦が海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を発射して大気圏外で迎撃、撃ち漏らしたミサイルを地上の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が狙い撃つ2段構え。PAC3の射程は20キロ程度と短いため、標的地に近い場所に移動して使う。SM3は2007年中にイージス艦「こんごう」に配備することが決まっている。(東京新聞 2007/03/23)
「PAC3」、入間基地に初配備 日本、独自の迎撃能力
弾道ミサイル防衛(BMD)のための地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)の装備品が30日早朝、航空自衛隊入間基地(埼玉県)に搬入された。10年度末までに全国計16の空自高射隊に導入されるPAC3の最初の配備で、首都防空の役割を担う。日本は独自の迎撃能力を初めて持つことになる。
PAC3は、海上のイージス艦からの迎撃ミサイルSM3が上層の大気圏外で弾道ミサイルを撃ち漏らした場合、下層で地上から迎撃する。装備は移動可能で、防護範囲は半径約20キロとされる。
発射機やレーダー装置、射撃管制装置などの装備品は三菱重工業名古屋誘導推進システム製作所(愛知県)からトラックで出発し、30日午前5時ごろ、入間基地に運び込まれた。
PAC3システムは入間を含め、10年度末までに首都圏、中京・京阪神地区、北九州地区などいずれも人口が多い大都市周辺の計16の空自高射隊に配備される。
日本のBMD構想ではPAC3のほか、11年度末までに全国4カ所に新型レーダー「FPS―5」を整備、「FPS―3改」レーダー7機の能力を向上させ、SM3を搭載する海自イージス艦4隻を配備する計画。
昨年7月の北朝鮮によるミサイル発射を受け、防衛省は07年度末の完成予定だった1隻目のイージス艦のBMD対応型への改修を約3カ月早めるなど、計画全体の前倒しの検討を続けている。(朝日新聞 2007/03/30)米ミサイル防衛配備で反対デモ=最大規模の参加者−チェコ
【ベルリン26日時事】チェコの首都プラハで26日、同国に米国が計画しているミサイル防衛(MD)システムの配備に反対する大規模デモが行われた。主催者側発表によると、参加者は約2000人で、同国で行われた米計画への反対デモとしては最大規模という。AFP通信などが伝えた。(時事通信 2007/05/27)米国防総省、日本への迎撃ミサイル売却を決定
【ワシントン支局】米国防総省は8日、ミサイル防衛(MD)システムに必要な海上配備型迎撃ミサイル「SM3」9基と関連機器を日本に売却する計画を議会に通知したと発表した。すべての売却が承認されれば総額は4億7500万ドル(約575億円)に上る見通し。
同省は「日本は東アジアと西太平洋地域の平和と安全を確実にする上で米国の重要な同盟国である」と指摘。「匹敵する兵器は北東アジアに現在配備されていないが、SM3ミサイルの売却は防衛能力を強化するのみで地域の軍事バランスを大きく変えるものではない」と説明している。(日本経済新聞 2007/06/09)チェコで米レーダー設置問う住民投票・圧倒的多数で反対
【ウィーン=桜庭薫】米国がミサイル防衛(MD)システムのレーダー建設を予定するチェコ西部で9日、建設の是非を問う大規模な住民投票が実施された。投票を実施した九つの町村のうち、投票率不足で投票が成立しなかった1カ所を除き、有効票の約95%が建設反対に投じられた。ブッシュ米大統領がチェコを訪問し、同国首脳と建設推進で合意した直後ながら、住民の根強い反対姿勢は変わらなかった。
これで3月以降、住民投票を実施した建設予定地周辺の19の町村では、すべて圧倒的多数でレーダー建設に反対の結果が出た。チェコ政府は建設の是非を問う国民投票を実施せずに議会承認で建設受け入れを決める方針のため、自治体の投票結果は政府に直接の影響は与えない。ただロシアが「レーダー施設をミサイルの標的にする」などと猛反発しているのを受け、国全体を対象にした世論調査でも建設反対が6割に増えている。(日本経済新聞 2007/06/11)NATO国防相理事会、MD導入「米と一体化」で合意
【ブリュッセル=林路郎】北大西洋条約機構(NATO)の国防相理事会が14日、ブリュッセルで2日間の日程で始まり、欧州防衛向けのミサイル防衛(MD)システム導入について、米国が配備するシステムとの一体化を前提に計画策定に着手することで合意した。
トルコ、ギリシャ、ブルガリア、ルーマニアの4加盟国向けに可動式のMDシステムを配備することを念頭に、来年2月までに米システム配備の影響に関する報告書を作成する。
また、14日のNATO・ロシア理事会では、ロシアが提案したアゼルバイジャンのレーダー基地活用について、NATOがロシアの真意をただした。
国防相理事会では、3万7000人規模に達したNATO指揮下のアフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)について、計3000人程度の増派が可能かどうかも検討する。(読売新聞 2007/06/14)ミサイル防衛:日米が情報伝達訓練 イージス艦参加
北朝鮮の弾道ミサイル脅威が高まる中、防衛省は10日、日本近海で日米イージス艦が参加したミサイル防衛(MD)に関する情報伝達の共同訓練を実施したことを明らかにした。昨年9月から5回程度行ったという。今年5月の日米安全保障協議委員会では、MD関連情報の常時共有が合意されており、日米軍事情報の一体化に向けた動きとみられる。
同省によると、訓練は、日本に向けた弾道ミサイルが発射されたという想定で行われた。日米のレーダー網で目標を捕捉し、イージス鑑や、日本の空中警戒管制機(AWACS)などが参加した。
同訓練の実施は、米海軍第7艦隊が9日付ホームページ(HP)で公表し、同省が実施を認めた。同HPでは、今月6日の訓練で、ミサイルの軌道に関する情報が、発射から約1分で首相官邸に伝えられたことや、次回訓練は11月であることが記載されている。【本多健】(毎日新聞 2007/07/11)米MD計画
欧州の利益にならぬ
ドイツ前首相が批判
【ベルリン=中村美弥子】ドイツのシュレーダー前首相は8日、ブッシュ米政権がポーランドとチェコに配備を狙っているミサイル防衛(MD)計画について、「政治的に危険だ」と批判するとともに、ドイツ政府に対し、米国に計画中止を求めるよう訴えました。
訪問先のモスクワで記者団に語ったもの。米国はイランや北朝鮮の「ならず者国家」からの弾道ミサイル攻撃に対処するためだとして、チェコに地上レーダー施設、ポーランドに迎撃ミサイル発射基地を配備することを計画しています。これはロシアからの強い反発を招いています。
現地からの報道によると、シュレーダー氏は、米国のMD網配備は「ロシアを孤立化させるものだと理解されている。これは欧州の政治的利益にはならない」と発言。また、世界中で新たな軍拡競争を誘発する恐れがあると警告し、「米国に計画を中止するよう説得することがドイツの責任だ」と述べました。
さらに、MD網の東欧配備は当事国だけでなく、欧州全体に影響を及ぼすものだと指摘した上で「欧州連合(EU)はこのような偏狭な国家主義的利害を拒否すべきだ」と強調しました。(しんぶん赤旗 2007/09/11)米の防衛システム、ロシア・ミサイルの迎撃可能=MIT教授
【ワシントン27日AFP=時事】米国が東欧に配備を計画しているミサイル防衛(MD)システムについて、米研究者は27日、迎撃ミサイルの速度が当初の説明より速く、ロシアの大陸間弾道ミサイルを標的とするのに十分なものであると語った。
米当局はこれまで、ポーランドに配備される予定の迎撃ミサイルはイランからのミサイル攻撃を対象としたもので、ロシアのミサイルを念頭に置いていないと主張。その理由として、迎撃ミサイルの速度はロシア・ミサイルよりも遅く、捕捉できないことを挙げていた。
しかし、マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授で、MDシステムを批判しているテッド・ポストル氏は、ミサイル防衛局が迎撃ミサイルの速度を低く言う一方、ロシア・ミサイルの速度を誇張していたと指摘。欧州諸国にMDシステム配備計画を受け入れさせるため、わざと迎撃ミサイルについて偽の情報を流していたと述べた。
これに対し、ミサイル防衛局スポークスマンは、ポストル教授はミサイル実験のデータを知る立場におらず、その主張は全くの誤りだとしている。
米国はポーランドに迎撃ミサイル、チェコにレーダー施設の配備を計画している。(時事通信 2007/09/28)ミサイル迎撃艦、佐世保に実戦配備
12月に米ハワイ沖でスタンダード・ミサイル(SM3)の発射試験に成功した海上自衛隊のイージス艦「こんごう」が4日、長崎県の佐世保港に帰港し、実戦配備に就いた。ミサイル防衛(MD)の一翼として海上からの迎撃を担う。
防衛省はさらに3隻のイージス艦にSM3を搭載予定。日本海側(佐世保、舞鶴)に3隻、太平洋側(横須賀)に1隻の合計4隻体制とする。
SM3で打ち損じたミサイルを狙う地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)は航空自衛隊の入間基地(埼玉県)と習志野分屯基地(千葉県)に配備済み。2010年春までに全国16部隊に備える。PAC3の発射試験は今年秋に米国で実施する計画だ。(日本経済新聞 2008/01/04)ポーランド軍近代化支援へ 米、MD実現へ地ならし
【ワシントン10日共同】ブッシュ米大統領は10日、訪米中のポーランドのトゥスク首相とホワイトハウスで会談し、米国がポーランドで計画するミサイル防衛(MD)施設建設の見返りとして、同国軍の近代化を支援する方針で一致した。
ブッシュ政権はポーランドに迎撃ミサイル基地、チェコにレーダー施設の建設をそれぞれ計画。大統領は2月末、チェコのトポラーネク首相との会談でも早期の最終合意を確認したばかりで、ロシアが猛反発するMD計画実現へ地ならしを終えた形だ。
ポーランド側は施設建設の見返りとして、空軍力などの強化支援を米側に求め、交渉は難航していた。しかし、会談後の記者会見で大統領は「ポーランド軍近代化の必要性を米国は認識している」と言明。自らの任期が切れる来年1月までに、支援の具体策を詰めることを約束した。(共同通信 2008/03/11)「ミサイル防衛は予算の無駄」 元国防次官補が下院で爆弾証言
米議会下院政府改革委員会で4月17日に開かれた公聴会で、証言に立ったフィリップ・コイル元国防次官補は、ブッシュ政権が進めているミサイル防衛について「巨大な浪費」と指摘し、注目を集めている。
クリントン前政権時代の防衛システム試験担当官だった元次官補はこの中で、(1)ミサイル防衛を正当化するために使われた(『ならず者国家』による弾道ミサイル攻撃という)脅威のシナリオは誇張されており、仮に現実的であるとしても計画中のシステムで対処できない(2)レーガン政権から現在まで約1500億ドルも費やしながら、ボーイングやロッキード・マーチンなどの国防総省契約企業は弾道ミサイルを撃ち落とす技術についてほとんど成果をあげていない──などと、厳しく批判した。
ブッシュ政権は日本を共同開発に巻き込み、ミサイル防衛システムを技術的に確立されていないままイージス艦に搭載するなど多額の予算を計上。だが証言のように、かつて「スターウォーズ計画」と呼ばれたSDI(戦略防衛構想)と同様、軍需産業を潤すだけで技術上の困難さから結局破綻する可能性が各方面で指摘されている。(編集部)(週刊金曜日 2008年5月2日号 Vol.701)宇宙基本法案:可決、成立 「非侵略」の防衛利用に道
防衛や産業目的に宇宙の利用を拡大する宇宙基本法案が21日午前の参院本会議で、自民、公明、民主、国民新4党などの賛成多数で可決され、成立した。共産、社民両党は採決で反対した。基本法は平和利用に限定した従来の政府方針を事実上変更するもので、軍事利用をどう制限するかの議論が今後、活発化する可能性がある。
基本法は「我が国の安全保障に資する宇宙開発を推進する」と明記。宇宙条約が認める「非侵略」の防衛利用に道を開く内容で、成立により、(1)北朝鮮などを監視する高解像度の偵察衛星(2)ミサイル防衛(MD)で弾道ミサイル発射を瞬時に探知する早期警戒衛星──などの保有が可能になる。また、宇宙産業分野での競争力強化を目指し、内閣に「宇宙開発戦略本部」(本部長・首相)を設置し、担当閣僚を置くことや、宇宙基本計画の策定などが盛り込まれている。
政府は1969年の国会決議に基づき、防衛利用も困難と解釈してきた。法案では防衛利用の乱用に歯止めをかけるため、「憲法の平和主義理念」の順守を掲げたが、防衛利用の具体的な範囲は今後の議論に委ねられている。【近藤大介】◇宇宙基本法の骨子◇
・宇宙利用は憲法の平和主義の理念を順守
・国の安全保障に資する宇宙利用の推進
・宇宙産業の技術力と国際競争力の強化
・宇宙政策を総合的に進める「宇宙開発戦略本部」を内閣に設置
・宇宙政策の具体的目標や達成期間を定める基本計画を策定(毎日新聞2008/05/21)レーダー施設の主協定を承認=チェコ政府、米MD網の配備で
【プラハ21日AFP=時事】チェコのトポラーネク首相は21日、米国が東欧に配備を計画しているミサイル防衛(MD)網のレーダー施設の同国での展開に関する主協定を、チェコ政府が承認したと発表した。チェコ通信が報じた。
同通信によると、トポラーネク首相はチェコ北西部の町テプリチェで開いた閣議終了後、同協定は、チェコに駐留する米軍の条件に関する協定とともに議会の承認が必要だと語った。(時事通信2008/05/22)米ミサイル防衛:ポーランドにMD配備 米、対露防衛力強化 東欧の懸念払しょく優先
【ワシントン小松健一】米国は14日にポーランドと合意したミサイル防衛(MD)計画で、ポーランドの防衛力強化支援にまで踏み込んだ。MD計画の「仮想敵国」はロシアではなくイランなど「ならず者国家」としてきた米国の主張は説得力を失う恐れがあり、米露の緊張がさらに高まるのは必至だ。
MD計画はイランによる欧州などへの弾道ミサイル攻撃を防ぐもので、ポーランドに迎撃ミサイル基地、チェコにレーダー基地をそれぞれ設ける。米国がMD用基地とは別にポーランドに配備を約束した迎撃ミサイル・パトリオットはロシアなど近隣諸国の攻撃を想定したシステムだ。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、パトリオットはドイツの基地から移し、ポーランドでは米軍の要員が運用するという。
さらに、米国は有事の際にポーランドに協力することにも合意した。同国は北大西洋条約機構(NATO)に加盟しているが、トゥスク首相は「わが国が脅威にさらされた場合、速やかに支援を受ける同盟関係を望んでいる」と強調した。
ロシアとグルジアの軍事衝突で、ロシアを警戒する旧東欧諸国では安全保障への懸念が高まっている。
ブッシュ政権は「ロシアが(旧ソ連時代の)伝統的な勢力圏回復を志向している」(ゲーツ国防長官)との見方でほぼ固まっており、旧東欧の親米諸国の懸念を払しょくするためにも、対露関係よりもポーランドの防衛力強化を優先せざるを得なかったとみられる。(毎日新聞 2008/08/16)危険知らせる活動強化
米軍MD基地反対国際会議
チェコ
【プラハ=岡崎衆史】1日から当地で開かれていた米軍のミサイル防衛(MD)基地に反対する国際会議は2日、MDのレーダー基地建設が計画されているチェコ国内の運動について経験を交流して閉幕しました。発言者からは、MDの危険性を知らせる情報提供活動を強める必要性や、自治体と平和団体の協力の重要性を強調する声が相次ぎました。
チェコの退役軍人の平和組織「反戦退役軍人会」のボフミル・ノバーク氏は、米国とチェコ政府とのMD基地建設に関する取り決めが「レーダー基地を管轄下に置く米軍の戦争にチェコを巻き込むものになる」とし、こうした危険を国民各層に訴える活動を強めていると述べました。
反軍事基地を掲げる60の組織や個人の連合組織「反基地イニシアチブ」のヤン・マーイーチェク氏は、チェコのMD基地反対運動の特徴として、自治体と非政府組織(NGO)の共闘を挙げ、レーダー基地建設予定地周辺の約40自治体が加盟する「レーダー基地反対村長同盟」と、平和団体が協力し、運動を拡大してきたことを紹介しました。
平和団体「レーダー反対」のミレク・プロケシュ氏は、MD基地をめぐる政府側の国民への情報開示が不十分な下で、平和組織が国会議員などへの情報提供を行う活動を重視。さらに、デモや集会を規制しようとする国や自治体当局に対して、市民的自由を守る法廷闘争や、デモ、集会への弾圧を避けるための法的な助言を行ってきた活動経験に触れ、より広範な市民が安心してMD基地反対運動に参加できる条件づくりが必要だとの考えを示しました。
会議は、チェコの平和団体、反基地イニシアチブとカレル大学の国際問題研究所が共催し、英国、米国、ポーランドなどチェコ国外からも平和活動家が参加しました。(しんぶん赤旗 2008/11/04)米MD対抗でミサイル配備 メドベージェフ露大統領年次報告
【モスクワ5日共同=佐々木健】ロシアのメドベージェフ大統領は5日、モスクワのクレムリンで連邦議会に対する就任後初の年次報告演説を行い、東欧での米ミサイル防衛(MD)計画に対抗し、ロシア西部の飛び地カリーニングラード州に最新ミサイル「イスカンデル」を配備すると述べた。また大統領任期について4年から6年に延長するよう提案した。
5月に就任した大統領にとって、外交、内政、経済の全般にわたる基本政策を示す最初の機会。
米大統領選挙でオバマ氏が次期大統領に決まった時期に、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に囲まれたカリーニングラード州へのミサイル配備を表明したことは、欧米を揺さぶりMD計画のけん制を狙ったとみられ、プーチン前大統領の対米強硬路線の継承を印象づけた。
メドベージェフ大統領はMDに対抗し、レーダーの妨害電波を出すとも警告した。
一方で、米国の新政権がロシアと価値ある関係を持つよう期待すると述べ、米新政権との関係改善にも意欲を見せた。
内政面では下院議員の任期も4年から5年に延ばすよう提案。大統領も含め任期の延長は政策実現のための時間を確保するのが目的とした。また下院で7%の最低得票率を超えられない小政党が議席を得られない状態は改善すべきだとし“リベラル”とされる独自色をにじませた。
グルジアとの紛争をめぐっては米国について「紛争を口実に黒海へNATO艦隊を派遣し、欧州にMD施設を押しつけた」と非難した。
世界的な金融危機についても、引き金となった米国の責任を強調。ワシントンで15日に開かれる緊急首脳会合(サミット)を前に、米国主導の世界経済秩序の変革に向けた提案を参加国に送ったことを明らかにした。
年次報告は憲法規定に従い大統領が年に一度、施政方針を表明。日本に関する言及はなかった。(共同通信 2008/11/05)ロ外務省、新型ミサイル配備「米MDなければ不必要」
【モスクワ=坂井光】ロシア外務省のグルシコ次官は9日、「米国がミサイル防衛(MD)施設を配備しないならばロシアにとってミサイル配備の必要性はない」と述べた。メドベージェフ大統領は5日の年次教書演説でMDの東欧配備に対抗して、ロシア西端のカリーニングラード州に新型ミサイル「イスカンデル」を配備することを表明していた。
インタファクス通信が伝えた。次官は「戦略的な安全保障や安定はバランスの上に成り立っている。米国の計画はロシア戦略核の能力を損なうものだ」と指摘した。ロシアはオバマ米次期政権に対しMD配備の見送りを求めていく方針と見られる。(日本経済新聞 2008/11/10)ロシア、米がミサイル防衛計画撤回すれば戦略兵器の開発一部停止へ=通信社
【モスクワ19日ロイター】インタファクス通信によると、ロシア軍戦略ミサイル部隊司令官のニコライ・ソロフツォフ大将は、米国が欧州におけるミサイル防衛(MD)計画を破棄すれば、ロシアは一部戦略兵器の開発を停止するとの方針を示した。
それによると、ソロフツォフ大将は「米国が戦略ミサイル防衛システムの欧州配備計画を撤回すれば、われわれは十分な対応をする」と発言。
「われわれは巨額な費用のかかる計画を多く必要としていない」と述べた。
米国は、MDシステムの一環でポーランドに迎撃ミサイル、チェコにレーダー施設の配備を計画している。(ロイター通信 2008/12/19)MDで「当たるわけない」=北ミサイル、迎撃を困難視−政府筋
北朝鮮が長距離弾道ミサイルとみられる「人工衛星」を打ち上げた場合に備え、政府がミサイル防衛(MD)システムによる迎撃を準備していることについて、政府筋は23日「突然撃ってきたら当たるわけがない」と述べ、迎撃は困難との見方を示した。
政府筋は、ミサイル発射から7、8分で日本に到達するとされることから「浜田靖一防衛相が麻生太郎首相に報告した時にはもう終わっていて間に合わない」と指摘。その上で「見ているしかないだろう」と語った。(時事通信 2009/03/23)米ミサイル防衛は「無意味」 米ロ専門家が計画棚上げ提言
【ワシントン20日共同】米国、ロシア両国の安全保障専門家12人が19日、イランの核やミサイル開発に関する報告書を発表、欧州に対するイランの脅威は「切迫していない」として、米国のミサイル防衛(MD)計画を「無意味」と結論付け、オバマ米政権に計画棚上げを提言した。
ブッシュ前政権が推進したMDにはロシアが強く反発、両国の核軍縮交渉の障害にもなるとみられており、提言がオバマ政権の対応に影響を与える可能性がある。
報告書は欧米双方に拠点を置くシンクタンク「東西研究所」がまとめ、ジョーンズ米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)とロシアのラブロフ外相に報告された。
イランの核開発について報告書は、核兵器開発を政治決断すれば1−3年で「最も単純な核爆弾」を開発できるが、ミサイルに搭載可能な核弾頭とするにはさらに5年かかると予想した。
重量1000キロの核弾頭を搭載し、欧州南部に届く射程2000キロの弾道ミサイル開発にも6−8年を要すると指摘した。(共同通信 2009/05/20)敵基地攻撃、法的に可能=能力保有には言及せず−麻生首相
麻生太郎首相は26日夕、北朝鮮のミサイル発射基地への先制攻撃を想定した敵基地攻撃能力について「一定の枠組みを決めた上で、法理上は攻撃できるということは昭和30年代からの話だ」と述べ、法的には可能との認識を示した。ただ、能力を保有すべきかどうかには言及しなかった。首相官邸で記者団に答えた。
自民党内には、北朝鮮の核実験を受け、攻撃能力の検討を促す声が出ているが、首相の発言はこうした動きを後押しすることになりそうだ。(時事通信 2009/05/26)攻撃的ミサイル防衛を 中谷元防衛庁長官
自民党の中谷元・元防衛庁長官は26日、同党の会合で、北朝鮮の核実験を非難し「北の核の小型化が実現すると(核を搭載した)ミサイルが我が国本土に着弾することになる。安全保障上の現実的な脅威だ」と指摘した。その上で、「待ち受け型だけでなく、アクティブ(攻撃的な)ミサイル防衛も考えるべきだ。(ミサイルを発射する)敵基地攻撃を検討しなければいけない」と述べた。
中谷氏は会合後、記者団に、「イージス艦に巡航ミサイルを搭載して(弾道ミサイル発射を)阻止するのは憲法の範囲内だ。座して死を待つようなことではいけない」と語った。(産経新聞 2009/05/26)日米MD計画、開発費が当初より7億ドル増加へ=米海軍高官
【ワシントン3日ロイター】イージス艦弾道ミサイル防衛システム計画責任者のブラッド・ヒックス米海軍少将は3日、米軍需製品メーカー、レイセオン<RTN.N>が開発に関わっている日米ミサイル防衛(MD)計画について、国防総省が別の計画の中止を決定したため、開発費が当初よりも7億ドル増え31億ドルになるとの見通しを示した。
同海軍少将によると、レイセオンが日本と共同で開発している「SM3(スタンダードミサイル3)ブロックIIA弾道ミサイル」は「軍事のルールを変えるもの」になるとされ、水兵は「ビースト(野獣)」と呼んでいるという。
北朝鮮は1998年に弾道ミサイルの発射実験を実施し、ミサイルが日本列島上空を通過したが、これを受け、日本は米国と共同でMD計画を積極的に進めてきた。
SM3ミサイルは2014年に完成する予定だが、イージス艦1隻で(これまでは3隻必要)敵のミサイル攻撃から日本を防衛することが可能になるという。また必要に応じ陸上でも配備が可能。
同海軍少将は、MD開発費が増える主因として、国防総省が2010会計年度予算案でロッキード・マーチン<LMT.N>の複数迎撃体プログラムを取り止めたことを挙げた。これは同ミサイル向けに開発中の技術に影響を与えるとされる。(ロイター通信 2009/08/04)東欧に地上型SM3配備へ=ミサイル防衛見直しで新計画−米国防長官
【ワシントン時事】オバマ米大統領が、前政権が策定した東欧でのミサイル防衛(MD)構想を見直し、イランの短・中距離弾道ミサイルに対処する新たな欧州の防衛体制を構築すると発表したことを受け、ゲーツ国防長官は17日、海上配備型迎撃ミサイルSM3を軸とした2011年から20年までの新たな配備計画を明らかにした。地上型に改良した同ミサイルをポーランドとチェコに配備する方針だ。
計画では、SM3を搭載したイージス艦を地中海などに重点配備するとともに、地上発射型SM3を段階的に開発。最終的には「イランからの大陸間弾道ミサイル(ICBM)を迎撃する能力も備える」(カートライト統合参謀本部副議長)としている。
ゲーツ長官は、15年をめどにポーランドとチェコに地上型SM3を配備する方針を示した上で、既に両国と協議を始めているとした。また、日本にも配備されている移動式早期警戒レーダーを北欧と南欧に配備する。(時事通信 2009/09/18)米大統領、東欧のMD計画中止を表明 米ロ核軍縮に弾み
【ワシントン=望月洋嗣】オバマ米政権は17日、欧州の旧共産圏ポーランド、チェコにミサイル防衛(MD)網関連施設を配備するとしてきた現行計画を中止すると発表した。イランから欧州への中・短距離ミサイルによる脅威を想定し、イージス艦搭載の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を軸に、11年から新たなMD計画を進める。
米国による東欧諸国へのMD配備は、ブッシュ前政権が「イランの核兵器や弾道ミサイルの脅威から欧州を守る」とうたって進めた。だが、ロシアが「真の目的は我が国の戦略核を無力化することだ」と強く反発、米ロ関係悪化につながっていた。東欧配備の中止によって、年内妥結を目指して進行中の米ロ核軍縮交渉でも、大きな障害が取り除かれそうだ。
米国防総省は最新の情報として、欧州を射程に入れるイランの中・短距離ミサイル開発が予想より早く進む一方、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発は遅れていると分析した。これを受け、新システムの構築では「すでに能力が証明済みで、費用対効果が上がる技術を使う」(オバマ大統領)ことになった。
ゲーツ国防長官が記者会見で説明した新たな計画では、SM3と移動型レーダーによるシステムを11年から配備。15年にはSM3を改変した地上配備型の移動式迎撃ミサイルも加えて、防衛能力を強化するなどとしている。その結果、チェコとポーランドに配備予定だったレーダーや地上配備型の迎撃ミサイルは不要になる、という理屈だ。
一方、東欧諸国が、対ロシア優先での切り捨て策と不満を抱くことに配慮し、オバマ大統領は「ポーランドやチェコとは今後も集団的な防衛で協力していく」と述べた。
米国はブッシュ政権下で、北朝鮮のミサイルの脅威を想定した限定的な地上配備型ミサイル防衛網を米本土の太平洋側に配備し、日本とも国際協力を進めてきた。路線変更が東欧配備の中止にとどまれば、直接の影響は小さいとみられる。(朝日新聞 2009/09/18)
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