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世界が育てた軍事大国イラク

最新鋭兵器こぞって輸出




1991年1月28日(中日新聞)

世界が育てた軍事大国イラク
最新鋭兵器こぞって輸出


湾岸戦争が地上戦闘になると、多国籍軍側は味方であるソ連や西側各国製兵器で反撃されることになりそうだ。各国はこれまでせっせとイラクに兵器を売り込むと同時に、イラクの軍事産業のバックアップをしてきた。イラクを「世界4位」といわれる軍事大国にしたのは、もとはといえば世界の各国なのである。

米軍備管理軍縮局が昨年11月末に発表した「世界の軍事費・兵器移転報告書」を見ると、1984年から88年の5年間に、イラク向けに輸出された武器は総額297億ドルで世界一。
国別ではソ連50%、フランス15%、中国10%の順で、イラクは引き続きイラン・イラク戦争が終わった88年にも46億ドルの買い付けを行っている。
ソ連はワルシャワ条約機構軍以外には前例のない高性能攻撃機スホーイ25を総額25億ドルで売り、フランスは最新型のミラージュF1戦闘機のほか、空対艦エグゾゼ・ミサイルを売却。中国も地対艦ミサイル・シルクワームを売却した。
米・英はほとんどないが、売り込み合戦にはこうした大国のほかブラジル、チェコスロバキア、ルーマニア、南アフリカ、ユーゴスラビア、オーストリアも加わっている。
軍事関係者によると、化学・細菌兵器関係では、ドイツの企業のほか、米国の化学工業会社が500トンのマスタード・ガスの原料をバグダッドに送ったことがあるほか、開発にはドイツ、ハンガリーの生化学研究所の協力があったとされる。
核兵器の開発には、ソ連のほかエジプト、パキスタン、アルゼンチン、ブラジルが協力。イタリアは使用済みウランからプルトニウムを抽出するためのホットセル(遠隔操作小部屋)3基を供与、ナイジェリア、ブラジル、ポルトガル、イタリアは大量の天然ウランを送ったという。
普通の兵器はともかくABC兵器(核・生物・化学兵器)技術や物資の移転、売買には厳しいものがある。それをイラクはどのようにして入手したのか。
米中央情報局(CIA)、国防情報局(DIA)によると、その核となったのがイラクの情報機関ムハバラト。フセイン大統領の異父兄弟イブラヒム・シバウィ氏が率いる秘密機関で総勢は12万5000人に上るといわれ、一部はパレスチナ・テロ組織とも関連しネットワークは世界中に及ぶという。
イラクは欧州に約10社の貿易商社、自動車販売会社などの擬装企業(フロントカンパニー)を設置。代表的なフロントカンパニー、スイスのコンサン社はイタリア第1位の国営銀行バンカ・ナチョナレ・デル・ラボロのアメリカ支店に30億ドルの口座を合法的に持ち、「脱穀機」などの名目でイラクの工場に米国製コンピューター、イギリス製工作機械、フランス製ミサイル誘導装置、西ドイツ製ロケットエンジンを送ったという。
米上院外交委員会がまとめた資料では、高度な技術が特にドイツからイラクに渡ったとされる。シーメンス社がミサイル用部品、メッサーシュミット社が化学兵器関係部品、戦闘用ヘリ、対戦車ロケット、ザールシュタール社がウラン濃縮用部品──といった具合だ。
では、日本はどうか。確かに兵器そのものの輸出はないといえる。しかし、問題は一般用が軍用に使われる場合だ。
イラクに駐在した著述業、前田耕一氏の「日本の建設機械総合メーカーの最大手のブラジルにある孫会社が、イラク軍の軽戦車のキャタピラを入れていた」、また軍事評論家、松井茂氏の「日本の最大手通信機器メーカーがイラクに治安用として電波方向探知システムを設計・施工した」などの指摘がある。
さらに米上院外交委員会はイラクの軍拡に協力した企業218社のリストの中に、日本のカメラメーカーが含まれることを公表。「ドイツの支社を通じてミサイル製造に使われる光電子工学機器の供給を計画した」(ドイツ週刊誌シュピーゲル)といわれる。
これに対し、建設機械総合メーカーは「中東に兵器として流れることはないはず。ただ、産業用の部品を第三国を通じて、兵器として勝手に使われるとしたら防ぎようがない」と話す。
しかし、イラクがハイテク技術では世界トップレベルの日本企業に目をつけないはずがない。このため、通産省は昨年夏のイラクに対する経済制裁と同時に、兵器に転用される恐れのある機器を輸出する国内商社、メーカーに対して第三国経由の不法輸出を含め“抜け道”と批判されることのないよう十分に注意するよう呼びかけた。軍事大国イラクを“育てる”側に参加したら、日本批判がさらに高まることは間違いない。


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1991年2月5日(朝日新聞)

多国籍兵器のイラク軍
米や仏 自国兵器と戦う異様


ソ連、フランス、中国、エジプト、アメリカ。湾岸戦争でイラク軍が使っているとみられる兵器、装備の原産国の一部だ。多国籍軍は自国を含め、味方である西側諸国やイラクへの制裁を決めた国連の安全保障理事会の主要国がせっせと売り込んだ武器で反撃されている。世界が、イラクを有数の軍事大国に育てあげたために生まれた皮肉だ。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の1985−89年版年鑑(東海大学出版会刊)によると、1981年から8年間にイラクヘ兵器、装備を売った主な国は別表の通り。特に熱心に売り込んだのはソ連、フランス、中国。武器輸出の新興国ブラジルや、南アフリカ共和国、スイスなども名前を連ねている。
ソ連は、いまイスラエルのほか多国籍軍に向けて繰り返し発射されている地対地ミサイル・スカッド改良型のオリジナル版のほか戦車や自走りゅう弾砲を売却。フランスはミラージュ戦闘機のほか、フォークランド紛争で一躍有名になったエグゾセ・ミサイルも売却している。英国はイラン・イラク戦争の初期80年から83年の間、双方に銃などの小火器と弾薬を売ったとの情報もある。
また、スカッドの簡易発射台に、米国をはじめ西側諸国が経済援助の一環で供与した大型トラックが使われている可能性が大きいことも指摘されている。
特殊兵器開発への各国の技術協力問題も伝えられている。スカッドが発射されるたびに化学兵器の恐怖が広がっているが、化学兵器開発にドイツが協力したとしてイスラエルは、ドイツを厳しく非難している。
兵士1200人を収容できる堅固な地下シェルターの設計図は英国の核シェルター建設業界がイラクに渡した、とされる。ハイテク兵器を駆使した多国籍軍の攻撃に、このシェルターが威力を発揮していると見られる。
イラク側は空爆に耐え、地上戦に持ち込む作戦とされるが、そうなると多国籍軍側にも多数の死傷者が出るのは避けられない。
石川要三・前防衛庁長官は「個人的な見解」と前置きしながら「各国がどんどん武器を売り込んだ結果、イラクが軍事大国になり戦争が起きた。戦争の費用は武器の売上高に比例して負担するべきではないか」として、輸出した国々を批判している。

中東専門家らによると、相手国の武器を奪って使う例は4次にわたる中東戦争ではたびたび見られたという。また、英国とアルゼンチンが戦ったフォークランド紛争では同じ兵器が飛び交ったが、湾岸戦争は、イラクがさまざまな国から多様な兵器を大量に買い集めており、いわば両軍の兵器同士が「兄弟」のようになっている点が特徴だ。
中東問題研究家の田上四郎さんは、「外国の兵器を大量に買って、買い入れた国も相手にして戦争をしているところに今回の異様さがある。戦史上、例のない戦争だ」と語っている。




外国からイラクに供給された兵器

  供給国       兵器         供給時期(年)  数量

 ☆カナダ      ヘリコプター       88       6機
 ☆エジプト     練習機          85〜88    80機
           ヘリコプター       86〜88    18機
           大砲           86〜88    90門
           122ミリ曲射砲      85〜88    96門
           多連装ロケット発射機   87〜88    200基
           地対空ミサイル      ?       ?
 ☆フランス     ミラージュ戦闘機     86〜88    44機
           対空砲装備車両      82〜88    105号
           エグゾセ対鑑ミサイル   83〜88    734発
           空対地ミサイル      85〜88    1200発
           対戦車ミサイル      81〜88    6400発
           地対空ミサイル      82〜88    1050発
 ☆ドイツ      ヘリコプター       84       6機
 ☆イタリア     ヘリコプター       87〜88    11機
 ☆スペイン     ヘリコプター       83〜84    24機
           歩兵戦闘車両       82〜84    300台
 ☆アメリカ     ヘリコプター       85〜86    25機
  ブラジル     多連装ロケット発射機   84〜88    86基
           装甲車          87〜88    200台
           レーダー         84〜88    13基
           地対地ミサイル      87〜88    640発
  中国       爆撃機          88       4機
           戦車           82〜88    1300台
           装甲兵員輸送車      82〜88    650台
           大砲           82〜88    720門
           対艦ミサイル       88       128発
           艦(地)対艦ミサイル   ?       ?
  チェコスロバキア 歩兵戦闘車両       81〜88    1700台
  南アフリカ共和国 155ミリ曲射砲      85〜88    200門
  スイス      練習機          87〜88    20機
  ソ連       122ミリ自走りゅう弾砲  87〜88    80門
           152ミリ自走砲      87〜88    80門
           多連装ロケット発射機   86〜88    360基
           122ミリ曲射砲      82〜88    576門
           戦車           82〜88    1600台
           スカッドB地対地ミサイル  86〜88     350発


SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)年鑑=東海大学出版会刊=1985〜89年版から(☆印は多国籍軍参加国)


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1991年2月7日(中日新聞)

“あらし”吹いて 米軍需産業笑う
株価30−40%も急騰


米軍に率いられた多国籍軍が「砂漠のあらし作戦」を開始して以来、米国の主な兵器メーカーの株は、軒並み急騰した。英国でも同じような現象がみられる。湾岸であらしが吹き荒れれば、それだけ兵器メーカーは潤うという寸法だ。戦闘スタイルを大きく変えるハイテク戦争の背後で“死の商人”は、ほくそ笑む。
新型兵器の開発には巨額の資金が必要だ。今回の湾岸戦争では、“カネ食い虫”と陰口をたたかれながら開発された新型兵器がイラク攻撃に使われ、それなりの成果を上げている。


高価な兵器ずらり

米国防総省当局者は、「米国の納税者はハイテク兵器の価値が分かったのではないか」と述べ、新型兵器の性能に満足の意を表している。
一つひとつの兵器は実に高価だ。
敵のレーダーをかすめて攻撃するステルス戦闘機のF117A(ロッキード社)は、1機が1億1864万ドル(約154億2000万円)もする。
半径480キロ以内のすべての敵機を捕そくし、味方に迎撃を指令する早期警戒管制機(AWACS)のE3Aセントリー(ボーイング社)は、1機当たり1億900万ドル(約141億7000万円)。
敵のレーダーをかく乱する電子戦用機のEF111Aレーブン(グラマン社、ゼネラル・ダイナミックス社)は1機当たり7390万ドル(約96億円)。
空中給油機のKC10Aエクステンダー(マクドネル・ダグラス社)は同7360万ドル(約95億6800万円)。
さらに戦闘機のF15イーグル(マクドネル・ダグラス社)が1機当たり4720万ドル(約61億3600万円)、F111(ゼネラル・ダイナミックス社)が同3590万ドル(約46億6700万円)といった具合だ。


『トマホークが潤す』

湾岸戦争が始まると、米国の兵器メーカーの株価は、急上昇し、その傾向は以後ずっと続いている。
米国の軍事専門誌「エビエーション・ウイーク・アンド・スペース・テクノロジー」は「あらゆる分野の国防産業にこのすう勢がみられる」と書いている。
戦闘用航空機のほか、地上戦の主役となるM1A1エイブラムズ戦車も生産しているゼネラル・ダイナミックス社の株価は、「砂漠のあらし作戦」が開始されてから40%以上も値上がりした。また、F15のほか攻撃用ヘリAH64アパッチのメーカーでもあるマクドネル・ダグラス社の株価も30%近くアップした。
両社の場合、湾岸戦争で初めて実戦デビューし、優れた性能を発揮している巡航ミサイル「トマホーク」のメーカーであることも株価急騰の要因となっているという。
イラクの中距離ミサイル「スカッド」の迎撃に活躍中の米国製の地対空ミサイル「パトリオット」の主要メーカー、レイセオン社は米国防総省の要請で24時間3交代で増産に追われている。
このミサイル・システムの開発に米国防総省は15年の歳月と総額10億ドル(約1300億円)の研究費をつぎ込んだ。
「パトリオット」の売上高は昨年は13億ドル(約1690億円)だったが、今年は16億ドル(約2080億円)、来年は19億ドル(約2470億円)が見込まれている。
現在、ミサイルから野戦病院用のマットレスまで、軍事関連物資メーカーの多くはフル操業中といわれるが、「米陸軍から増産の件については公表しないよう言い渡されている」(ミサイル・システム・メーカーのLTV社スポークスマン)と口は堅いようだ。
英誌「エコノミスト」によると、英国でも国防産業は生産に大車輪のようす。戦闘機トーネードのメーカーであるブリティッシュ・エアロスペース社(BAe)は、同機を使用しているサウジアラビアから部品発注を受けて、工場はフル操業中という。


先行き楽観できず

このように米英の兵器メーカーは目下のところは活気を呈しているが、必ずしも前途は楽観できないという見方もある。米国では最近、国防予算削減の方向に沿って、艦載用のステルス機A12(ゼネラル・ダイナミックス社、マクドネル・ダグラス社)の開発が棚上げにされた。
湾岸戦争が国防産業にとってどの程度の“恵み”をもたらすかは戦争をめぐる今後の状況次第というところらしい。



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イラク大統領の侵攻意図 米大使が読み違え? 7月末会談 軍事行動を“黙認”
【ワシントン13日三輪特派員】イラク軍のクウェート侵攻の直前、フセイン・イラク大統領と会談した駐イラク米大使(女性)が、クウェートに対する軍事行動を示唆する大統領に、反論しないばかりか、黙認するかのような態度をとっていたことが13日、明るみに出た。ホワイトハウスは直ちに「米政府が侵攻を認めるような態度をとったことはない」と否定したが、会談の内容については認めている。
会談の記録全文を入手したとするワシントンポスト紙が13日付で報じたもので、それによると、フセイン大統領がエイブリル・グラスピー米大使とバグダッドの大統領官邸で会談したのは7月25日。
その席で大統領は「われわれは(石油価格の維持に協力しない)クウェートの経済政策を一種の軍事行動とみている。もし、解決策が見つからない場合、自らの死を受け入れることはできない」と、対抗手段としての軍事力行使の可能性を示唆した。また「米国の社会は一度の戦いで、米側に1万人の死者が出ることを受容できないだろう」と、多数の犠牲者が出る危険をおかしてまで米国が介入することはないとの見方を示した。
これに対しグラスピー大使は「イラクが戦後再建のため資金を必要としているのは分かっている。イラクとクウェートの国境紛争のようなアラブ国家間の問題にはわれわれは介入しない」と述べ、さらに「米大統領はイラクとの友好増進を望んでいる。彼は知的な人間で(議会が進めようとする)対イラク経済制裁には反対だ」と答えた。
ホワイトハウスのフィッツウォーター報道官は「大使が、フセイン大統領の意図を読み違えたのではないか」とする記者団の質問に対し「当時の米国はイラクとの友好関係を増進中であり、大使は米国の意思を正しく伝えた。イラクの行動を黙認したとする見方は全くばかげている」と述べた。
グラズピー大使はキャリア外交官。フセイン大統領との会談後の30日からロンドンで夏休みに入り、クウェート侵攻の8月2日以降は帰任する代わりにワシントンの国務省で執務中という。(中日新聞 1990/09/14)

湾岸危機 息吹き返す兵器産業 米、サウジへ大量の武器売却
【テルアビブ22日関口特派員】湾岸危機は米国、欧州などの兵器産業にとって“福の神”となったようだ−−。米ソ和解が急速に進み、東西冷戦の時代が終わるとともに、軍拡という言葉もご用済みになるかと思われた。だが、ペルシャ湾岸危機は、現実はそうでないことを証明してみせた。イラクがクウェートを簡単に制圧できたのは、中東最大といわれる軍事力があったからこそだ。米国はそのイラクの次の軍事行動を封じるため、サウジアラビアに最新式の戦闘爆撃機、ミサイル、戦車などとともに、楕鋭部隊を送り込んだ。湾岸危機は第三世界であろうと超大国であろうと、日ごろの軍備がいかに重要かを浮き彫りにした。東西軍事対決の可能性は薄れても地域紛争はなくならない。兵器信仰が姿を消すこともない。

米ソ両超大国が友好関係を深めるのと比例して、世界の兵器市場は活気を失いつつあった。兵器産業の前途に赤信号が点滅しはじめたところへ、湾岸危機が起きた。
欧州各国が共同開発を計画している「欧州戦闘航空機(EFA)」のプロジェクトも湾岸危機で息を吹き返した。このプロジェクトには英国、西ドイツ、イタリア、スペインが参加して次世代の戦闘機を開発するが、欧州以外でどの程度の売り込みが図れるか、見通しが立たなかった。それが湾岸危機の発生で、中東地域からの受注も期待できそうだという。
このように兵器産業界が湾岸危機の行方を見守っている時に、米国防総省はサウジに対する総額約200億ドル相当の武器売却を検討中と伝えられ、イスラエルを強く刺激した。
米国のサウジへの思い切った軍事的テコ入れは、中東地域に新たな軍拡レースをもたらす気配だ。サウジとイスラエルがレースを展開するという構図である。湾岸危機の副産物といえよう。
サウジに引き渡される武器はF15戦闘機が24機、MIA2戦車が385両、装甲兵器輸送車が500台、パトリオット地対空ミサイルが26基、対戦車へり「アパッチ」48機など膨大な数に上る。
しかし、イスラエルは「米国によるサウジへの大量の武器供与は中東における軍事バランスを崩す」と主張する。
さらに「湾岸危機が去ったあとも大量の武器はサウジに残り、結局はイスラエルに向けられる」と指摘する。
「米国は地域の安定を望むならば、兵器産業を太らせ、武器輸出で貿易赤字の縮小を図ろうという考えは捨てるべきだ」(エルサレム・ポスト)という新聞論評もある。
もっともイスラエルもサウジに比べると、はるかに数は少ないが、米国から武器供与を約束されている。先週、イスラエル南部の空軍基地でシャミル首相も出席して、米国からの対戦車へり「アパッチ」2機の引き渡し式が行われた。ヘリは総額3億5000万ドル相当の武器供与の第一陣で、引き続き60機のF16CとF16Dがイスラエルに供与される。
なおイスラエル側は米国に10億ドル相当の武器供与を求めているが、米国はとりあえず300基のサイドワインダー空対空ミサイルをはじめ合わせて15機のF15AとF15B、パトリオット地対空ミサイル2基をイスラエル側に供与ないし貸与することを約束したという報道もある。だが、イスラエルは資金の面ではオイルマネーに恵まれたサウジの足元にも及ばない。
湾岸危機は中東全体に貯蔵される武器の量を増やすことになり、引き続き危険な火薬庫が残ることは確実だ。(中日新聞 1990/09/23)

イラクへ化学兵器材料 米国政府 侵攻直前まで輸出許可 米議会筋明かす
【ワシントン7日本多特派員】米議会筋が7日明らかにしたところによると、米商務省は昨年8月のイラク軍のクウェート侵攻まで過去6年間にわたり、同国に対し核兵器やミサイル開発につながる機械設備、軍需物資など約15億ドルの輸出許可を与えていたことがわかった。これらの中には直接、「イラク原子力委員会」や同国の弾道ミサイル研究施設「SAAD16」向けのものも含まれており、サダム・フセイン・イラク大統領の「暴虐」さを問題にしながら、一方でこうした物資の野放し輸出を許した米国政府の「甘さ」が問われそうだ。
同筋によれば、これらの輸出許可は85年から90年にかけ、米国の企業750社に対して行われた。15億ドル分の輸出物資の中には民生、軍事どちらにも使われる乳化爆薬、原子力設備、レーザー装置、コンピューター機器、航空機部品、化学原材料が含まれているほか、生物兵器用薬剤の船積み許可も20回以上にわたっているという。
これに対し、米議会下院商業・消費者・金融問題小委員会は昨年秋、モスバカー商務長官に対イラク輸出許可資料の公開を求めたが、同省は同委に対し、外部に一切情報を漏らさないとの罰則条件付きで知らせただけ。
商務省はこれについて「国益に合致するもの以外、個別の商行為の情報公開は法律で禁じられている」として公表を拒否している。(中日新聞 1991/01/08)

イラクの兵器 みな欧州製
スーパーガン/スカッド・ミサイル/毒ガスや生物・化学兵器/地下基地

【ロンドン26日菊池哲郎】イラクが間もなく多国籍軍に向け発射するであろう恐怖のスーパーガン(35センチ砲)は英国で設計、製造され、英政府の許可を受けてイラクに輸出されていた(デーリー・ミラー紙)▼イスラエルを脅かしているスカッド・ミサイルの設計はソ連で、ユダヤ人の科学者、ビクトル・フェルマルク氏が担当していた(デーリー・スター紙)▼毒ガスや生物・化学兵器はドイツ企業がイラクに供給した(ツデー紙)──。
このところ、英国各紙はイラクの武器のほとんどが多国籍軍側あるいはイラクの攻撃目標にされている側が設計し、製造、輸出していたことを競って報じ、今回の戦争のバカバカしさを強調した。
一方、強固なイラクの地下壕(ごう)や地下秘密基地も英、ベルギー、ユーゴスラビアの国際共同企業が建設したことがすでに明らかになっており、欧州は自業自得の結果にホゾをかんでいる。「供給した者が悪いのではなく、発射ボタンを押す方が悪いのだ」(BBC)という反論もあるものの、他方では日本同様、武力を湾岸に送っていないドイツに対し、毒ガス製造装置を供給した責任をとる意味でも、もっと資金協力するべきだと圧力をかけている。(毎日新聞 1991/01/27)

クウェート侵攻の9カ月前 イラクに10億ドル援助 ブッシュ大統領署名 米紙報道
【ロサンゼルス23日=杉本宏】23日付の米紙ロサンゼルス・タイムズは、ブッシュ米大統領が1989年秋、イラクとの関係強化を目的に10億ドル相当の援助をイラクに供与する方針を盛り込んだ国家安全保障会議(NSC)の秘密文書に署名していた、と報じた。イラクによるクウェート侵攻9カ月前で、援助は結果的にイラクの軍備増強を側面支援することになったと指摘している。
同紙が入手した同会議の内部メモなどによると、援助は米農産品購入に伴う信用供与で、政権内部の「イラクの軍備増強につながる」との反対論にもかかわらず、イランとの軍事バランス維持のためなどの観点から正当化された。
さらに同会議や国務省は、クウェート侵攻1カ月前の90年7月になっても、10億ドルのうち残っていた5億ドル分の援助供与を検討していた、と指摘している。
また、同紙は同会議の内部議事録を引用、プッシュ大統領の側近が90年春ごろまでに、イラクが核兵器開発を進めているとの情報をつかんでいたにもかかわらず、「イラクが汎用(はんよう)技術を購入できるようにすべきだ」などと主張。会議で「大統領は特にイラクだけを軍事大国として警戒することを望んでいない」などと述ペたことを暴露している。
プッシュ大統領のイラクヘの「肩入れ」は、レーガン政権以来の方針で、88年のイラン・イラク戦争終結後も継続していた、と分析している。(朝日新聞 1992/02/24)

クウェート侵攻9カ月前、イラクに10億ドル信用供与 米紙報道
【ロサンゼルス23日共同】23日付の米紙ロサンゼルス・タイムズは、同紙が人手した極秘資料を基にブッシュ政権がイラクに対し、クウェート侵攻の約9カ月前、10億ドル(約1280億円)の信用供与を決め、結果的にイラクの軍備強化を侵攻直前まで容認していた、と報じた。イラン・イラク戦争当時から、米国は反イランの立場からイラク側を支援してきたことは知られているが、今回明るみに出た資料はクウェート侵攻の危機が高まる中、ブッシュ政権が内部の反対を押し切ってイラク支援を続けていた経緯を浮き彫りにしており大統領選の行方に影響する可能性も。
同紙によると、1988年8月のイラン・イラク戦争の終結後も、レーガン、ブッシュ両政権はフセイン大統領支援を継続。89年10月初めには、ブッシュ大統領が「(イラクなど)湾岸主要友好国との関係は米国の安全保障上、極めて重要である」として、極秘の国家安全保障指令に署名、イラクとの政治・経済関係強化を指示した。
この指示に基づき、同年10月31日、ベーカー国務長官はヤイター農務長官に電話し、新規に10億ドルの信用保証を与え、イラクが米国から農産物を輸入できるようにしてほしいと要請した。財務省などは武器購入に使用されると反対したが、11月8日、大統領指示を受け入れた。
同紙によると、90年初めに5億ドル分が消化されたが、イラクがこれを核兵器や弾道ミサイルに関する技術取得に使った証拠があるという。イラクのクウェート侵攻直前の7月には国家安全保障会議(NSC)と国務省は残りの5億ドル引き渡しを急ぎ、グラスピー駐イラク大使は同月9日、イラク高官に対し、ブッシュ政権は5億ドルを渡すペく努力中である、と伝えていたという。
極秘文書類は、82年以来、ブッシュ大統領(当時は副大統領)と側近が国内の反対論を押しのけて、イラクに肩入れしてきた経過を詳述しているが、ホワイトハウスはコメントを拒否している。同紙は、ブッシュ大統領の一貫したイラク支持の動機は不明だが、フセイン大統領の拡張主義者としての面を見落としていたと指摘している。(中日新聞 1992/02/24)

米の対イラク不正融資事件 CIA、検察に情報伝えず
【ワシントン14日=坂口智】イタリア政府系銀行のアトランタ支店が1980年代に、米政府の保証付き融資を含む数十億ドルをイラクに不正融資した事件で、米中央情報局(CIA)が、検察当局に重要情報を伝えなかったことが判明し、事件は司法省、連邦捜査局(FBI)も巻き込んだ複雑な展開となってきた。大統領選でクリントン陣営がブッシュ大統領攻撃の材料にしているこの事件で、また疑惑が生じたことは、苦戦するブッシュ氏に新たな頭痛の種を与えそうだ。
連邦検察当局は、これまで、不正融資は支店の独断で行われたとの見方をとり、起訴された当時の支店長も、司法取引で有罪を認めた。だが、CIAは、イタリアの本店が不正融資を知っていたことを示唆する機密情報を持っていたのに、検察当局に提出した書簡では「公開情報しか持っていない」と伝えていたことが判明。今月1日、連邦判事は司法取引の取り下げを認め、正式審理が行われることが決まった。
CIAは、当初「善意のミス」としていたが、その後行われた上院情報特別委員会の非公開聴聞で、「司法省の要請により、情報を抑えた」と説明したと報道されたことから、これを否定する司法省と責任のなすりあいになった。
これを受けて、バー司法長官は10日、司法省傘下の機関であるFBIにこの件の調査を依頼。ところが今度は、独立して調査を行うと主張するFBIと、「FBIは司法省の調査を補助するだけ」と主張する司法省が対立する羽目に。
しかも12日には、ABCテレビが、司法省がFBIのセッションズ長官を倫理綱領違反で調査中と報道した。同長官には、税金を回避しようとしたなどの疑いがあると伝えられる。(朝日新聞 1992/10/16)

米からイラクへ細菌輸出
【ワシントン9日=共同】リーグル米上院議員(民主)は9日の上院本会議で、米政府が1980年代に炭そ菌やサルモネラ菌など細菌兵器開発につながる微生物のイラクへの輸出を許可していたと明らかにした。
同議員は、この細菌を利用して開発されたイラクの生物兵器が、湾岸戦争から帰還した米兵が今も苦しんでいる「湾岸症候群」の原因となった可能性もある、と指摘した。(朝日新聞 1994/02/11)

イラクの生物・化学兵器の開発を支援したのは米国であった
イギリスのテレビ局「チャンネルフォー」が2月12日に報じたニュースによると、イラクの生物・化学兵器開発プログラムを1980年代に支援したのは米国であり、また神経ガスの解毒剤を1992年3月にイラクに輸出したのはイギリスであったという。
同テレビ局が見つけた米国の機密文書によると、1985年から1989年の間に、米国からイラクに合計14種類の生物物質が入った貨物が輸出されたという。その中には、炭疽菌が19個、ボツリヌス中毒を引き起こす生物、ボツリヌス菌15個も含まれていた。この輸出は米国務省が支持し、商務省からの許可を得たものであったと番組は報じた。また、イラクはこの他の有害物質も米国から購入し、バグダッドにある原子力エネルギー委員会は、人の遺伝物質や「培養基」用の大腸菌バクテリアも手に入れていたということであった。
また同番組によれば、イラクがクルド人の町、ハラブジャを1988年にガスで攻撃し、5000人の死者を出した後もイラクに向けて生物物質の貨物が少なくとも29個輸出されたという。1980年代の国防総省の元高官ステファン・ブライアンは、危険物の輸出を阻止しようと自分も同僚も努力したが、「彼らは愚かだった。愚かという一語につきた。彼らは自分達が何を行っていたか全く理解していなかったと思う」とチャンネルフォーのインタビューに答えた。ブライエンは、1988年に神経ガスから兵士を保護するために使われるアトロピン150万投与分の注文がイラクから出されたが、これはなんとか阻止することができたという。米国防省の機密文書からチャンネルフォーが引用した内容によれば、イラクは湾岸戦争後の1992年3月に、イギリスから神経ガスの解毒剤であるプラリドクシンを購入したとされる。「この解毒剤の売却は我々が政権をとるずっと以前に行われたと私は理解している。これについて調査は行うが、恐らく医薬品扱いで輸出されたのであろう。医薬品は現在でもイラクへの輸出が認められている」とイギリスの国防相、ジョージ・ロバートソンは同番組で語った。また、米国の機密文書から、イギリスと米国はすでに1990年8月の時点で恐ろしい神経ガス、エージェント15の存在を知っていたことも明らかになったとチャンネルフォーは報じた。
ロバートソンは彼が述べたことは1991年のイラクの兵器庫に関する新しい情報であるとしながら、サダム・フセインは大量のエージェント15を所有していた可能性があるとした。「当時フセインが所有していたものに関して大体のところは知られていたが、具体的な情報は最近になって徐々に明るみに出てきている」とロバートソンはチャンネルフォーに語った。(ロイター通信 1998/02/12)

生物兵器に変わる物質 英企業 イラクに輸出 湾岸戦争後に
【ロンドン16日三瓶良一】英国の会社が生物兵器に転用の恐れのある物質をイラクに輸出していたことが明らかになり、英国で大きな問題になっている。英軍は米軍とともに対イラク攻撃の準備に入っているが、問題物質の輸出は「ブーメラン効果」で、自軍の兵士を危険にさらすことになりかねず、ブレア政権は輸出管理の総点検を迫られている。
英紙「デーリー・テレグラフ」が報じたところによると、食品・洗剤関連の世界的な大手、ユニリーバ社の英子会社であるオクソイド社は1991年から94年にかけてイラクに対して医学用として細菌培養物質を3000ポンド(約1360キロ)輸出していた。これは保守党政権時代のことで、いずれも貿易産業省から正規の輸出許可を得ていた。
しかし、同物質は医学用ではあるが、炭そ菌などの製造にも使われることが可能だ。湾岸戦争後に行われた大量の問題物質の輸出だけに、イラクの生物兵器開発に一部役だったのではないかとの疑いも出ている。
これに対してユニリーバ社は「輸出は英当局の許可の下に行われた。我々の知る限り、イラクは医学目的のために使用している」と語った。
一方、ボスニア内戦時に国連軍の司令官などを務め英国で著名なマイケル・ローズ退役将軍は、政府の輸出管理のずさんさを批判するとともに、自国が輸出した兵器で自軍兵士が苦しめられる「ブーメラン効果」が過去のボスニア内戦や湾岸戦争でもあったことを指摘。事態を重視したブレア労働党政権は、過去の輸出許可が適当だったかどうかの調査に乗り出した。
下院国防委員会のジョージ委員長(労働党)は「我が軍の兵士に重大な損傷を与えかねない物質の輸出を許可するとは奇怪なことだ」と述べ、前政権のやり方を批判した。(毎日新聞 1998/02/17)

「米が査察官装いスパイ」 イラクで独自に情報収集 NYタイムズ報道
【ニューヨーク7日永井昌己】米紙ニューヨーク・タイムズは7日付紙面で、イラクの武器査察を行ってきた国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)の中に米国が査察要員を装ったスパイを潜入させていたと報じた。「UNSCOMが米の盗聴に協力した」とした前日のワシントン・ポスト紙に続く疑惑で、イラクの猛反発は必至だ。
ニューヨーク・タイムズによると、米の情報機関はUNSCOMに自前のイラク情報や情報収集技術を供与し、その見返りに米と他の安保理メンバー国がUNSCOMの査察情報を入手。米はさらに、外交官や専門家を装った自国の情報部員をUNSCOMに紛れ込ませ、正規の査察官とは独立して情報収集を行わせていたという。複数の米政府高官が証言したが、情報部員の人数や具体的役割は明らかにされていない。
米高官の一人はUNSCOMに対する米の対応を非難して昨年8月にUNSCOMを辞任した米人の元査察官スコット・リッター氏にも言及した。
同氏は「米はUNSCOMの査察活動を乗っ取ろうとした」などと非難したが、米高官は「UNSCOMに情報収集力はなく、彼らが集めたとされた情報は実はメンバー国から提供されたものだ」と強調。米の情報部員抜きでは査察が成り立たなかった実態を示し、同氏は誤解しているとした。(中日新聞 1999/01/08)

情報機関職員の派遣は認める 米政府当局者
【ワシントン7日共同】米政府当局者は7日、米国が国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)の査察要員に米情報機関の職員を派遣していたとの報道を「否定しない」として事実上、認めるとともに、米国の行為は「イラクの対応に業を煮やした」UNSCOMの要請に基づく「正当な措置」であると強調した。
当局者は、米国から派遣された要員は「イラクの大量破壊兵器の実態を把握するUNSCOMの業務以外には携わっていない」と指摘。その上で、要員が米国内で本来の業務に復職すれば、UNSCOMで得た情報が「何らかの形で活用される」ことは自然なことだと述べた。(中日新聞 1999/01/08)

イラクでのスパイ疑惑「CIA、3年活動」 特殊装置で盗聴 米紙報道
【ワシントン2日=林路郎】2日付の米ワシントン・ポスト紙は、米政府職員の話と内部文書を元に、イラク国内に国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)が設置した査察施設に、米中央情報局(CIA)が交信傍受装置を隠し、約3年にわたりイラク軍へのスパイ活動を行っていたと報じた。報道内容についてホワイトハウス、国務省、CIAの高官はいずれも事前に否定しなかったという。事実とすれば、米国と国連との間に生じた亀裂はさらに深まり、国連における米国の信用が傷つくのは不可避だ。
同紙によると、秘密工作がスタートしたのは96年3月。UNSCOMがイラク国内の軍事施設など300か所に設置したモニター装置が撮影した映像を無線信号でバグダッドへ転送する作業と、同時に始まった。CIA工作員がUNSCOM要員としてバグダッド入りし、UNSCOMの設備に特殊なアンテナを忍ばせ、通常傍受が困難な、イラク軍のマイクロ波による交信の盗聴を可能にした。
工作が行われていた間はUNSCOMや査察に協力する他国には知らされず、報告は直接ワシントンへ送られていたといい、同紙は「国連の査察を支援するためにあらゆる協力をしてきた」との従来の説明は完全に偽り、と指摘している。
同紙は、バグダッドのイラン情報当局が97年に、CIAの暗号交信を探知し、テヘランに「米国はスパイ活動をしている」と報告していたことと、さらに、このイランの交信を英国がキャッチし、米国に釈明を求めていた事実を明らかにし、「スパイが逆にスパイされた皮肉な事件だった」と結んでいる。
同紙はまた、工作にかかわっていた3人のスパイの実名は、政府の要請により、伏せたとしている。
米国のスパイ疑惑に関しては、UNSCOMのリチャード・バトラー委員長が今年1月、米国提供の機器を用い、イラク当局への盗聴活動を行っていたことをアラブ紙とのインタビューで認めたが、目的は大量破壊兵器の隠匿場所を追跡するためで、米国への情報提供ではなかったと述べている。報道はこうした主張を全面的に否定するものだ。(読売新聞 1999/03/03)

生き延びたフセイン政権:石油利権巡り各国の企業が攻勢
バグダッド随一の高級ホテル「アルラシッド」。最近は外国人ビジネスマンの宿泊客がめっきり増えた。対イラク国連経済制裁で乳幼児死亡率が高まったなどの批判を受け、1996年12月、制裁が部分解除され、国連監視の下で石油が輸出できるようになったのがきっかけだ。「以前から多いフランス、ロシアのビジネスマンに加え、日本や米国からの方も目立つようになりました」とフロント係の男性が明かした。
ホテルで会った中国人ビジネスマンから商談の内実を耳にした。「今、イラクを訪れるビジネスマンはみな、必死にラマダンもうでをするんです」
ラマダン副大統領を中心とした「ラマダン委員会」という名の組織が設置され、外国企業との取り引きを取り仕切っているのだ。外国人ビジネスマンは石油開発や販売などをめぐり、石油省や貿易省などと下交渉を重ねた末、ラマダン副大統領と面談、委員会の了承を願い出るという。
委員会に認められた企業のビジネス案件だけがフセイン大統領に届くしくみと言われ、商談成立までには半年から3年はかかるとされる。だが、委員会構成メンバーなど詳細はベールに包まれたままだ。
世界全体の11%、1120億バレル。イラクはサウジアラビアに次ぐ世界第2の原油確認埋蔵量を誇る。制裁後、10年を経て、世界各国はすでに制裁全面解除後をにらんだ石油利権獲得に奔走している。
湾岸戦争当時、対イラク空爆容認で足並みをそろえた米、英、仏、露、中の国連安保理常任理事国はその後、強硬派の米英と、制裁の早期解除を求める他の3カ国に分裂。安保理が武器査察のため創設した「国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)」の委員長人事をめぐっても、決着までに「反イラク的でない委員長を」と主張する仏露中と米英が対立する一幕があった。
露、仏、中の各国はそれぞれイラクに160億ドル、100億ドル、50億ドルの債権を持つ。3国が制裁解除に前向きな背景には債権早期回収の思惑もある。
11月、バグダッド入りしたエジプト紙「エル・オスボア」のムスタファ・バクリ編集局長との会見で、ラマダン副大統領は「各国はイラクが豊富な石油資源を抱える重要な国だと改めて気付きつつある。イラクとの関係改善を志向する国を結集すれば、反米英社会を築ける」と自信を示したという。
バグダッドではここ数年、高級レストランが増え続けている。あるレストラン店員は「最近は週末になると、外国人ビジネスマンばかりでなく、イラク人の家族連れがひっきりなしにやって来る」と話す。
大半の国民が依然、貧困にあえぐ中、「ラマダン委員会」は、外国企業とのビジネスでもうけた“新興成金”を生むほど、制裁解除に向けた実を上げている。【バグダッド・小倉孝保】(毎日新聞 2001/01/16)

及び腰の米イラク空爆 ハイテク依存の軍事ショー
【ワシントン17日共同】ブッシュ米新政権は16日の対イラク空爆で「よりタフな姿勢でイラクに臨む」とのメッセージを伝えたと強調しているが、空爆で使われたミサイルは地上の対空ミサイルなどが届かない高高度の戦闘爆撃機から発射するハイテク兵器で、及び腰の対イラク空爆の印象はぬぐえない。
精密兵器に頼る空爆では地上の敵部隊の主力の排除は困難。米国が「目的は達した」(ニューボールド統合参謀本部作戦部長)と言うほど、イラク軍が破壊されたのかどうかは不透明で、包括的なイラク政策ができていない中、今回の単発の空爆は新政権発足に伴う軍事ショーのイメージの方が強そうだ。
米英軍機24機はすべて、イラク南部の「飛行禁止空域」のうち、イラク軍が地上に対空防衛施設を持っていない空域にとどまったまま精密誘導ミサイルの「AGM―130」「AGM―154」を発射、80キロ離れたイラク軍のレーダー基地の破壊に成功した。
しかも戦闘爆撃機は地上からはるかに遠い高高度を飛行中にミサイルを発射したとみられ、操縦士らに危険が及ぶ懸念はなかった。
こうしたハイテク兵器は、米兵の犠牲によって世論が軍事介入に反発を強めたベトナム戦争の反省から開発が進められ、1991年の湾岸戦争で使用を開始。一昨年のユーゴスラビア空爆では「新時代の軍事作戦の主役」となった。
しかし、マケイン共和党上院議員が「敵の弾が届かないところから一方的に攻撃するのは、戦争のモラルに反する」と批判しているほか、人権団体を中心に国際社会からは「目視での標的確認ができないことから、誤爆で民間人が犠牲になる例が多過ぎる」との指摘も根強い。(共同通信 2001/02/17)

米副大統領が関わった石油採掘会社、イラクと取引?
【ワシントン23日=林路郎】23日付の米ワシントン・ポスト紙は、チェイニー副大統領が昨年8月まで会長を務めていた大手石油採掘会社ハリバートン(テキサス州ダラス)が、国連制裁下のイラクに7300万ドル相当の石油採掘施設を建設・供与する契約にかかわっていた、と報じた。事実とすれば、「ブッシュ政権は石油業界の代弁者」という負のイメージが米国民の間に定着し、民主党も来年秋の中間選挙をにらんで、副大統領の「倫理性の欠如」を追及することになろう。
同紙は、石油業界幹部や国連の機密文書に基づく情報として伝えた。それによると、問題の取引は、石油採掘施設製造のドレッサー・インダストリー社とインガソル・ランド社の合弁会社がフランスの関連会社を介して、1997年から昨年にかけてイラク政府と結んだ石油採掘施設や排出ポンプの売却契約。ハリバートン社は98年にドレッサー社を買収したため、契約の履行にハリバートン社が直接かかわることになった。
この合弁会社はまた、湾岸戦争で多国籍軍が破壊したイラクの石油採掘施設の修復契約も結ぼうとしたが、クリントン前政権が「国策に反する」としてこれを阻止したという。
チェイニー氏はこれまで、ハリバートン社がイラン、リビアと取引をしたことは認めている。しかし、今回の件については、副大統領補佐官は同紙に対し、「こうした合弁事業の運営は(親会社とは)別で、(親会社の会長だった)チェイニー氏は何ら関与していない」などと説明している。
これに対し、子会社の役員は同紙に「極めて大きな商談であり、チェイニー氏は決定に参加していなくても、すべてを知っていたはずだ」と証言した。
国連制裁はイラクとの商取引そのものを禁じてはおらず、契約そのものが違法行為とは言えないが、チェイニー氏は91年の湾岸戦争を国防長官として指揮し、95年のハリバートン会長就任時には「イラクに対しては強硬姿勢で臨む」と公言した人物。言行不一致は副大統領の信用失墜につながりかねず、民主党の格好の攻撃材料となりそうだ。
イラクは国連制裁下にあるにもかかわらず、昨年秋の時点で、対米原油輸出量では、サウジ、メキシコなどに続いて第5位。問題の契約は、米国とイラクが敵対しつつも、米石油業界を通じて舞台裏で微妙な関係を維持していることを物語るエピソードとも言える。(読売新聞 2001/06/23)

イラク:申告書に米企業名 化学・生物兵器開発の提供先に
【ニューヨーク佐藤由紀】イラク政府が提出した大量破壊兵器の保有・開発に関する申告書に、化学・生物兵器開発の原料や技術の提供先として米企業名が含まれていることが明らかになった。米ニューズデー紙が13日、イラク高官の話として報じた。
しかし、申告書を精査している国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス委員長は10日、「企業からイラクの兵器開発についての情報を得ており、名前を公表すればその道を閉ざすことになる」との理由で安全保障理事会の非常任理事国に提供するコピーから原料の調達先を除外すると述べ、企業名は伏せられたままとなりそうだ。
イランと対立していた米国は80年代、対抗策としてイラクに接近。米企業が生物・化学兵器などにも使用できる原料や加工施設などを輸出していたことは、米議会で報告されているなど周知の事実だ。しかし、ブッシュ大統領の就任以降に国がイラクの兵器開発に協力していたことが判明すれば、米政府は面目を失うことになる。(毎日新聞 2002/12/14)

「悪の枢軸」に米武器密輸
【ワシントン20日共同】20日付の米紙USAトゥデーは、ブッシュ大統領が「悪の枢軸」と呼ぶイラン、イラク、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の3カ国に、米国の密輸業者らが数百万ドル相当の武器やハイテク機器を違法輸出していると報じた。
同紙が1995年以来起きた40件近い連邦法違反ケースを調査した結果、米国内の密輸業者らがこれら3カ国にF14戦闘機や空対空ミサイル「フェニックス」の部品、集束爆弾に使われる金属ジルコニウムなどを輸出、または輸出しようとしていた。これとは別に旧米軍ヘリコプター34機(計1200万ドル相当)を密輸しようとしたケースもあったという。
同紙によると、こうした武器密輸には国際的な貿易業者や米ビジネスマンのほか、米退役軍人らが関与している。(共同通信 2002/03/20)

「イラク化学兵器使用」 米政権、察知後も極秘支援
【ワシントン17日=ニューヨーク・タイムズ特約】80年代のイラン・イラク戦争末期、当時のレーガン米政権が、イラクが化学兵器を使用していることを知りながら、軍事情報の提供などイラク軍支援を極秘裏に継続していた、と米国防総省の複数の元幹部が明らかにした。
ブッシュ現政権は、イラクのフセイン政権転覆が必要な理由の一つに、当時の化学兵器使用を挙げている。当時のレーガン政権も表向きは、イラク軍の化学兵器使用を非難していた。
イラン革命の湾岸産油国への波及を恐れた米国が当時、イラン軍の動きを示す衛星写真をイラク側に提供していたことはこれまでにも知られていた。証言によれば、支援はこのほか、詳細にわたるイラン軍展開情報の提供や、空爆や戦闘計画の立案支援、攻撃結果の評価など多岐にわたり、国防情報局の職員60人以上が携わったという。
支援を得たイラク軍は88年、ペルシャ湾に通じる南部の要衝ファオを奪還。その後、現地を訪れた米軍の情報将校が、化学物質汚染地域を示す標識や、化学兵器対策の医薬品コンテナを目撃し報告を上げていたが、米政権が軍事支援を停止することはなかったという。
当時の米軍事情報幹部の一人は「レーガン政権は、イスラム革命がクウェートやサウジアラビアへ広がることを恐れていたが、化学兵器が使用されることには、さして懸念を抱いていなかった」と証言している。(朝日新聞 2002/08/19)

フセイン政権生んだのは米国 米誌報道
16日発売の米誌ニューズウィークは、米国が1980年代のイラン・イラク戦争の際、イラクに生物兵器の原料まで供給、大量破壊兵器開発で危険視される現在の「サダム・フセイン政権」出現に、米国自らが手を貸したと報じた。
当時のレーガン米政権がイラクを支援したことは知られているが、同誌が入手した商務省の輸出管理関係秘密文書には、イラク原子力委員会(IAEC)向けの「細菌、菌類、原生動物」が掲載されている。元政府当局者によると、この細菌培養物は炭疽菌を含む生物兵器製造に利用された可能性がある。
IAECには化学分析装置も輸出された。国務省は化学兵器の毒性中和に使うアトロピン注射器の輸出も承認したが、国防総省が介入して阻止したという。
文書にはこのほか(1)反政府勢力監視用とみられる内務省向けのコンピューター・データベース(2)輸送用ヘリコプター(3)ビデオ監視用テレビカメラ−−も含まれている。(共同通信 2002/09/16)

米、対イラン戦争時イラクに生物兵器の原料提供
【ニューヨーク16日=河野博子】米誌ニューズウィークの最新号(16日発売)は、米国がイラン・イラク戦争当時の1980年代、イラクに対し、生物兵器の原料を提供していた、と報じた。同誌が入手した商務省の輸出管理関連文書(極秘扱い)によると、「細菌・菌類・原生動物」が何回にもわたって、イラク原子力エネルギー委員会あてに輸出された。複数の元政府高官によると、輸出された細菌は、炭疽(たんそ)菌を含む生物兵器製造に使われた可能性がある。
こうした輸出は、83年12月20日、現国防長官のラムズフェルド氏が、レーガン大統領(当時)の特使としてイラクを訪れ、フセイン大統領と会談した後に行われた。
イラン・イラク戦争の際、米国がイラクを支援し、「結果的にサダム・フセインというモンスターを作り上げた」と指摘されてきたが、生物兵器の材料が米国から輸出されていたことが明らかになったのは、初めて。(読売新聞 2002/09/16)

フセイン大統領助けていたラムズフェルド米国防長官 米誌が指摘
【ワシントン23日坂口明】ブッシュ米大統領は23日、ニュージャージー州での選挙資金集め集会で「世界最悪の指導者が世界最悪の兵器で米国を脅かすことを許さない」と述べ、対イラク先制攻撃の意図を重ねて表明しました。しかし、ブッシュ政権でフセイン打倒の急先ぽうのラムズフェルド国防長官が「世界最悪の指導者」が「世界最悪の兵器」を開発するのを手助けしていたことが明らかになりました。
米誌『ニューズウィーク』が国務省の解禁文書に基づいて暴露しているもの。それによれば、1983年12月20日、当時は民間人であったラムズフェルド氏はレーガン大統領特使としてバグダッドを訪問し、フセイン大統領と親しく会談。「大統領のあいさつを伝え」、両国関係の改善について話し合いました。
当時イラクは戦争で劣勢でした。しかしラムズフェルド氏訪問後米国は、当時イラクが戦争していたイランの軍備展開に関する衛星情報をフセイン政権に提供し始めました。同誌はまた、「80年代を通じ米国は、イラク原子力委員会が生物兵器製造に使用可能な細菌培養菌を輸入するのを許した」としています。
フセイン政権が国内のクルド人に対し毒ガスをまいた際も、その作戦に使われたのは米国提供のヘリコプターであり、米政権は当初、これをイランの仕業だとしてイラクを弁護した、と同誌は指摘しています。
米国は当時、中東支配の拠点としていたイラン王制をイラン革命で喪失。80年からイランと戦争していたイラクへの支援を開始しました。82年には、それまでのイラクへの「テロ支援国家」指定を解除。ラムズフェルド氏訪問後の84年に外交関係を復活しました。
米政権は、米国産穀物輸入の借款供与のほか、ソ連製兵器が中心のイラク軍が同兵器を新規購入できる援助、米軍事要員による前線での戦術指導などを行いました。このイラク支援作戦の中心人物が当時のブッシュ副大統領でした。
この“甘やかし政策”のもとでフセイン大統領は、米国が許してくれると判断して90年8月にクウェートを侵攻。するとブッシュ(父)米政権は手のひらを返したようにフセインを「ヒトラー」呼ばわりし、対イラク戦争に進みました。
今回の暴露は、米国のフセイン支援が生物・化学兵器などの大量破壊兵器製造にまで及び、しかも現国防長官が関与していたことを示唆するもの。大量破壊兵器取得を目指すフセイン政権の脅威をあおるブッシュ政権の宣伝の無責任ぶりを浮き彫りにしています。(しんぶん赤旗 2002/09/25)

米、イラクに細菌提供 80年代 生物兵器開発の契機に
【ニューヨーク=福島申二】米国が80年代に、後にイラクが生物兵器の開発に使うことになる炭疽菌などの病原菌を同国に提供していたことが、米疾病対策センター(CDC)や連邦議会、国連査察団の資料や記録から明らかになった。AP通信などが30日に伝えた。イラクの生物兵器開発は米国の「援助」から始まったと指摘している。
AP通信によれば、提供されたのは炭疽菌のほかボツリヌス菌、ガス壊疽菌など。CDCや生物関係の民間会社からバグダッド大学などの研究施設へ、米商務省の輸出承認を得て10回前後送られた。
提供があったのはイラン・イラク戦争時。目的は明確ではなく、ボツリヌス菌のワクチン製造に使われたともされる。
イラク政府は国連の過去の査察に対し、大量の炭疽菌やボツリヌス菌を生産し、一部を兵器に用いたことを認めている。
さらにCDCの記録からは、現在米国で大流行して100人以上の死者を出している西ナイル熱のウイルスも、85年にイラク南部・バスラの大学の微生物学者に送られていることが判明した。
カリフォルニア大学名誉教授で「アメリカ帝国への復讐」などの著書があるチャルマーズ・ジョンソン氏は、この報道に関し、朝日新聞の取材に次のように語った。
「まったくのスキャンダルだ。イラン・イラク戦争で米国は、イラン革命の産油国への波及を恐れてイラクを支持した。今日のイラクの脅威は、テロ組織アルカイダ同様、覇権主義的政策の下で米国がまいた種が、自らに吹き返しているものだ。米国は現在も、対テロ戦のためにウズベキスタンやカザフスタンで同じような場当たり的な軍事援助を繰り返している」(朝日新聞 2002/10/02)

「フセイン後」石油求め接触 米社幹部、複数動く──イラク反政府組織に
【カイロ山科武司】米国が対イラク攻撃の準備を進める中、イラク反体制派の最大組織「イラク国民会議(INC)」(本部・ロンドン)の幹部がこのほど、毎日新聞の取材に、米国の複数の石油会社が接触してきたと明らかにした。国連査察団が27日、査察を開始する中、国際石油資本が米軍攻撃に伴うフセイン政権崩壊後を視野に入れ、世界第2の原油埋蔵量を誇るイラクの石油利権をめぐり水面下で動き出したものとして注目される。
イラク国民会議の複数の幹部によると、アハマド・チャラビ同会議代表が今年10月、ワシントンを訪問した際、米大手石油会社3社の幹部が個別に同代表を訪れ、会談したという。
幹部らは「接触してきた会社名は言えない。表敬訪問で、会談は儀礼的なものだった。非公式とはいえ、米石油会社との接触は初めてだった」と述べた。
米石油会社は、対イラク攻撃が石油利権と結び付けられることを嫌がる米政府の意向を受け、イラク反体制派関係者との接触を避けてきた経緯がある。
エクソンモービルなど複数の米石油会社は毎日新聞の取材に「イラク国民会議と公式の接触はない」と話している。
イラクは90年8月、国連の対イラク経済制裁で原油輸出を禁止された。だが、96年12月以降、食糧、医薬品購入の資金を得るため国連管理下で限定的な輸出を認められ、現在では日量200万バレルにまで回復している。
制裁全面解除後の石油採掘権が焦点となっており、イラク国民会議幹部は「新政権樹立後、フセイン政権との契約は見直されるべきだ」と主張している。
イラク国民会議は92年に発足。イラク反体制派の30以上の民族、宗教団体で構成される。(毎日新聞 2002/12/01)

欧米31社がイラクの化学兵器開発に協力――米紙報道
21日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、イラクが国連に提出した大量破壊兵器開発計画に関する申告書に、化学兵器の開発を支援した外国企業として欧米などの31社が記載されていることが分かった。
申告書には企業名のほか提供された化学物質名や量も記載されている。31社の大半は欧州企業で、ドイツの14社をはじめ、オランダとスイスが各3社、フランスとオーストリアが各2社など。米国の企業も2社記載されている。日本企業が含まれているかどうかは不明。
イランとの戦争が続いた1980年代に使用された化学兵器の開発で、シンガポールに拠点を置く企業は、神経ガスの材料となる化学物質3300トン、マスタードガスやサリンの製造に使う別の化学物質950トンを提供するなど、最大の供給元だった可能性がある。
複数の当局者によると、企業リストは96年にイラクが国連に提出したものと一致。同紙はこのリストを湾岸戦争で健康被害を受けた米退役軍人による訴訟を担当する弁護士から入手した。(共同)(日本経済新聞 2002/12/21)

大幅な業績改善相次ぐ テロやイラクで米防衛産業
【ニューヨーク1日共同】ロッキード・マーチン、ボーイングなど米大手防衛機器メーカー各社が1日までに発表した昨年10―12月期の決算は、米軍がアフガニスタンやペルシャ湾岸地域に展開する戦闘機、ミサイルなどの需要増の恩恵を受けて軒並み大幅な業績改善を示した。
最大手のロッキードは最終損失が3億4700万ドルと前年同期の15億ドルから赤字幅を4分の1以下に縮小させた。収益の柱であるF16など戦闘機の納入や開発による収入が大幅に増えたほか、電子監視装置や、ミサイル誘導システムの需要がテロ対策やイラク攻撃の準備とともに伸びたのが主因だ。
2位のボーイングは民間航空部門は厳しい内容だったものの、軍用輸送機などの納入増で防衛部門の収益は4割も上昇。巡航ミサイル「トマホーク」などを製造するレイセオンの営業利益も倍増した。
大手5社で損益が悪化したのは企業向けビジネス機の事業が不調だったゼネラル・ダイナミックスだけだった。
各社とも株安を背景にした従業員の年金負担などがかさみ、最終損益は赤字や低い利益水準にとどまったが、米政府による大幅な国防支出拡大路線の恩恵は今後も続きそうだ。(共同通信 2003/02/01)

80年代、イラク肩入れの実態判明=化学兵器使用を事実上黙認−米公文書
1980年代、当時のレーガン米政権がイラン・イラク戦争で、一貫してイラクに肩入れしていた経緯の詳細が、28日までに機密解除された米公文書で明らかになった。米側はイラクの化学兵器使用を把握しながら、イランによるイスラム原理主義の湾岸産油国波及を警戒、イラク非難を慎重に避けたもようだ。(時事通信 2003/02/28)

禁輸措置に違反し武器売却=ポルトガルがイラクに
【パリ27日時事】ポルトガルが1993年、国連の対イラク武器禁輸措置に違反して、爆弾や地雷など5万ユーロ(約630万円)相当の武器を売却していたことが明らかになった。27日発売のポルトガル誌ビザンが報じたもので、このほか、航空機製造に転用可能な10万ユーロ(約1260万)相当の機械部品なども輸出していたという。(時事通信 2003/02/28)

イラク化学工場、英企業が建設=政府も信用保証で後押し−有力紙
【ロンドン6日時事】6日付の英紙ガーディアンは、米政府がイラクの主要な生物・化学兵器の製造拠点と指摘するファルジャ(バグダッド郊外約80キロ)の化学工場は、米国の支持を背景に1985年に独企業の英子会社によって建設されたものだと報じた。
フセイン・イラク大統領は対イラン戦争で、イラン兵に毒ガスを使用していた事実が知られている。同紙によれば、当時のサッチャー英政権も、「ファルジャ2」と呼ばれる塩素工場がマスタードガスや神経ガスの生産拠点になる可能性を認識していたが、チャノン貿易相(当時)は外務省や国防省の反対を押し切って、建設を受注した企業に秘密裏に輸出信用保証を供与することを決定した。(時事通信 2003/03/06)

米、かつてイラクに“武器援助”
「イラクやイラク国民に使う大量破壊兵器をイラクに持たせたのは、一体どこの国だったか」。イラクの大量破壊兵器開発疑惑に対する国連決議が全会一致で採択される少し前の昨年10月、イランのハタミ大統領はストロー英国外相との会談で、そう発言した。1980年代のイラン・イラク戦争中に、イラクの大量破壊兵器の開発や使用を黙認したとされる米政府を批判したものだが、発言は的を射ている。
米メリーランド州の研究機関「アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション」は、イラクの生物兵器開発が実用段階に進展していた85年ごろ、病原性の炭疽(たんそ)菌をイラク側に引き渡した、という事実を98年、仏フィガロ紙に認めている。
現在、イラク攻撃の急先ぽうとなっているラムズフェルド国防長官は、当時、中東特使として83年にバグダッドを訪問。にこやかにフセイン大統領と歓談している“記念写真”が最近、米メディアで再公開され苦虫をかみつぶしたが、一貫性のない外交を象徴するシーンだった。
英国外務省の報告書によると、国連査察団は98年までに、炭疽菌入りの液体8400リットル、ボツリヌス菌入りの液体1万9000リットルなどを、弾道ミサイル、爆弾に装着可能な状態で発見した(すべて破棄)。細菌培養の進展ぶりが暴れたが、その一部のルーツは“米国産”であるとみられている。
さらに80年代、米国の民間会社がバグダッドの研究機関へボツリヌス菌、炭疽菌を約10回にわたって送り、いずれも米商務省が輸出を承認していたという事実が、米疾病対策センターなどの資料から明らかになった。
イラクの危険度は、化学兵器をイラン戦で実戦使用したことから立証済み。国連査察官の1人で、95年に生物兵器工場の存在を突き止めたドイツ軍人の細菌学者ガブリエル・クラツワドサック氏は、「イラクは70年代から化学兵器を戦闘配備し、専門知識、物資、設備を持っていた」とさえ、ロイター通信に証言している。
当初から分かっていた“危険な国”を米国はなぜ黙認したのか。「敵の敵は味方」という単純な論理に導かれた米国の理念なき外交の結果だった。
米国は67年の第3次中東戦争以来、イラクとは断交状態にあった。しかし79年、米大使館人質事件からイランと敵対関係になった米国は、好く80年にイラン・イラク戦争がぼっ発すると、2年後の82年2月にはイラクをテロ支援国家から除外する。炭疽菌などが「非軍事品」として、正規ルートでイラクに流入し始めるのはそれ以後だ。
84年にはイラクとの復交を正式に発表し、大使館を再開。間もなく、イラクに衛星情報を提供するようになり、85年ごろには、両国間で武器交渉が始まっていたのだった。(カイロ・秦融)(中日新聞 2003/03/20)

露軍事専門家「兵器輸出は事実」
【モスクワ=内藤泰朗】ロシアの有力軍事専門家、フェルゲンガウエル氏は25日、産経新聞に対し、ロシア製兵器が国連の経済制裁下にあるイラクに大量に輸出されていた事実を明らかにし、この違法輸出がなければ、イラク側が米英軍相手にこれほどまでに抗戦することはできなかったとの見方を示した。
同氏が複数のロシア軍産複合体企業幹部や外交官らから聞いた話などを総合すると、ロシア製兵器がイラクに輸出され始めたのは、国連がイラクに科した禁輸措置(1990年9月)以降のことで、輸出は97−98年にピークを迎え、多くの兵器が売り渡された。
中には、フライシャー米大統領報道官が24日の記者会見で明らかにした対戦車ミサイルなどの兵器をはじめ、精密誘導弾の誤作動を誘発する装置や夜間戦闘に使われる暗視装置も含まれていた。取引はイエメンなど第3国で契約を結ぶ形で行われ、現物はイラクに持ち込まれたという。イラクへの兵器輸出には、ロシアのほか、ウクライナやブルガリア、ルーマニア、チェコなどの東欧諸国も絡んでおり、米露両国はこの問題で秘密協議を重ねてきた。
米政府が同日、ロシア企業によるイラクへの兵器輸出に懸念を表明したことに対し、ロシア側は否定した。
しかし、フェルゲンガウエル氏は「禁輸措置が機能して兵器が輸出されていなかったなら、イラクのフセイン政権はずいぶん前に崩壊していただろう。米国がロシア製兵器の対イラク輸出を公表したことは、米露関係に暗雲を投げかけるもので、両国関係の悪化が懸念される」と指摘した。(産経新聞 2003/03/26)

米防衛業界:新型トマホーク増産へ イラク戦争で補充急ぐ
【ワシントン中島哲夫】米防衛機器メーカー「レイセオン」は2日、新型の巡航ミサイル・トマホークの生産加速について米海軍と協議中だと明らかにした。AP通信などが伝えた。米軍はイラク戦争で従来型のトマホークを既に700発使っており、新型で備蓄の補充を急ぐ方針と見られる。
同通信によると、米海軍はレイセオンに対し、契約済みの新型トマホーク192発(計2億6000万ドル)の納入を毎月38発から同50発に増やせないかと打診し、同社は可能と回答した。同社は海軍が単に早期調達を望んでいるのか、さらに多くのトマホークを発注する方針かは不明だとしている。
海軍は04年夏以降、20億ドルを投じて1353発の次世代巡航ミサイルを導入する計画だという。
イラク戦争に向けて米軍は精密誘導兵器の備蓄を増やし、トマホークは開戦時点で2000発を保有していたものと推測されている。
ロイター通信によると、イラク戦争で使われている従来型のトマホークはあらかじめ標的までの飛行データを入力し、全地球測位システム(GPS)の誘導で飛ぶが、新型は2〜3時間の飛行後にも新たな標的情報を受け取れるという。(毎日新聞 2003/04/03)

米産業界、イラク特需 トマホーク740発で520億円
通訳ソフト受注加速/IT関連、息吹き返す

【シリコンバレー=館林牧子】イラク戦争で、米軍は、精密誘導兵器に代表される高度な軍事技術を見せつけている。冷戦後の新たな脅威に対抗しようと、ラムズフェルド国防長官が率先して進める「軍革命」の成果だ。そこには様々な先端技術が取り入れられており、大手の軍事メーカーだけでなく、多様なベンチャー企業にも軍需の恩恵が表れている。
開戦から3週間で、米軍は1万2000発以上の精密誘導兵器を使用した。そのうち、全地球測位システム(GPS)誘導の統合直接攻撃弾(JDAM)はボーイング社製。フセイン大統領を狙って7日にも撃ち込まれた特殊貫通爆弾バンカーバスターはロッキード・マーチン社製。巡航ミサイル、トマホークは、レイセオン社製だ。
例えば1発約60万ドルのトマホークは740発が発射された。約4億4000万ドル(約520億円)分が消費された計算になる。
レイセオン社は、トマホークの製造を中断しており、改良型の生産を今年後半から開始する計画だった。だが、国防総省は、備蓄量を回復させる必要から、早急に製造に着手するよう要請。同社は大車輪で生産準備を進めている。
民間航空機を主力としてきたボーイング社は、今年、過去10年で初めて軍事部門の売り上げが民間部門を上回る見込みだ。
情報技術(IT)バブルの崩壊で青息吐息だったカリフォルニア州シリコンバレーのハイテク企業群の中にも、軍事関連製品の受注で息を吹き返すところが出てきた。
民間研究機関SRIインターナショナルは、国防総省に自動通訳装置用ソフトを提供している。手のひらサイズの機械に英語で話しかけると、アラビア語やクルド語に翻訳され、音声が流れる。イラク戦争では50台が配備されている。
通訳ソフトの開発は、アフガン戦争を境にペースが一気に加速したという。開発者の1人、クリステリン・プレコーダさんは「研究開発の半分は国防総省の予算で賄われた」と説明する。
ベンチャー企業ウィンドリバー社は小型の生物化学兵器検出装置に使うソフトを開発。これを搭載した装置700台がイラクで活用されている。
シリコンバレーでは昨年1年間に、国防総省と契約を結んだ企業は900社に及び、それによる経済効果は40億ドル以上と見積もられている。
ロッキード・マーチンなどは、周辺大学から優秀な人材を確保する動きも活発化させている。スタンフォード大のブライアン・キャントウェル教授は「学生の進路は、IT全盛だった5年前と様変わりした」と語り、軍事産業に進む学生が急増している実態を認める。
米国の2003年国防予算は前年比11%増の3550億ドルに上る。伸びは主にハイテク重視の装備充実に向けられており、一般のハイテク企業にとっても新たな商機になっている。

トマホーク 米国の主力精密誘導型巡航ミサイル。全地球測位システム(GPS)衛星などからの情報で、目標を攻撃する。射程1600キロの対地用などの種類がある。核搭載可能。名称は、米国の先住民族が武器などとして使っていた手おのの英語名。(読売新聞 2003/04/09)

イラクに数千万ドル相当の軍事技術=開戦前に30件、米当局が調査−NYタイムズ
16日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、イラクの首都バグダッドの米移民税関当局者の話として、少なくとも30の米国内の企業や個人が今春のイラク戦争前、数千万ドルの契約を結んで同国に軍事技術を供与した疑いがあり、当局が調査していると報じた。(時事通信 2003/10/16)

『独裁者』の口 のぞけば米の暗部が…
「取引したい」。米軍に身柄拘束された際、フセイン元大統領が吐いた言葉とされる。発言の真偽はともかく、米国の側にも「独裁者」に握られた「弱み」がある。イラン・イラク戦争時代、フセイン政権を軍事支援し「テロ支援国家」の下地をつくったのはほかならぬ米国だ。法廷でばらされては困る過去の暗部もあるだろう。公の場でどう裁くというのか−。

■「政治家暗殺へ CIAが雇う」
「サダムは、彼に反対する人々にとって好ましくないことを話すだろう」
「(フセイン氏が)公平で自由な裁判が受けられるか、疑問がある」
そう強調したのはイランのハタミ大統領だ。イスラム革命後のイランと敵対した米国は、「敵の敵」であるイラクに軍資金や武器供与を続けた。蜜月時代があったからこそ知り得た米国の「闇の工作」を、ブッシュ政権は暴かれたくないだろうという指摘だ。
フセイン氏に証言されると米国が困る情報とは、具体的にどのような内容なのか。米国の国際戦略に詳しいニューヨーク州・バード大のジョエル・コベル教授は「サダムがまだどんな力も持っていない20代のころ、イラクの政治家の暗殺のために米中央情報局(CIA)が雇ったのがサダムだとされている」と指摘する。
放送大学助教授の高橋和夫氏もこう解説する。
「1959年、イラクのカセム将軍暗殺に失敗しカイロに亡命したフセイン氏にCIAが将来、手先として使おうと接触していた可能性が高い。米国の高官の中には過去、企業経営者としてフセイン氏に多額のわいろを提供していた人物も多い。裁判証言で実名が出されるのを嫌がるだろう」
中東経済研究所主任研究員の立花亨氏は「イ・イ戦争中、米国は軍事衛星情報をイラクに流した。使用された毒ガスの材料も提供していた疑惑もある」。
昨年9月には、レーガン政権下の80年代に、米国がボツリヌス菌や炭疽(たんそ)菌などのサンプルを直接イラクに提供したことが、米議会に提出された資料で明らかになっている。これが「汚い兵器」と呼ばれる化学兵器開発につながったとみられている。

■クルド人虐殺で議会は制裁否決
中東調査会客員研究員の大野元裕氏は「88年に、イラクの化学兵器によるクルド人虐殺事件が発覚した時、米議会は対イラク制裁を否決。農業借款を再開する便宜も図った。それを後ろで支えたのがラムズフェルド米国防長官ら。化学兵器などの裏事情を暴露されたくなかったのだろう」。
84年に米国はイラクをテロ支援国リストから外しハイテク技術の輸出制限を緩和。これで大量破壊兵器の開発を可能にするスーパーコンピューターなどを輸入できるようになった。
国際政治学者の浜田和幸氏は「米国が困るのは、大量破壊兵器に関してしゃべられることだ」と断じる。
「イラクがどういう生物化学兵器を持っているかを米国は熟知している。もともと材料を米国が売ったのだから。カーター以降の歴代政権内部での石油利権も表ざたにしてほしくない話だ。83年に中東特使としてフセインと会談したラムズフェルド国防長官は(米石油関連サービス大手の)ハリバートンの代理人としてパイプラインの建設に関する交渉をしたともされている」と指摘する。
だが、「フセイン拘束」に酔う米メディアは、米国とイラクの「過去」に触れようとはしない。
明治学院大の川上和久教授(メディア論)は「米国はフセイン逮捕以降、情報を巧妙にコントロールしていて、不都合な情報を排除している。その広報戦略はほぼ100パーセント成功している」と説明する。
「国防総省は、フセインを生きて捕らえた場合と死んだ場合との広報について綿密な計画を立てていた。直後にフセインの映像を流したのも計画に基づいている。フセインの2人の息子が死亡した際に、イラクでは『死んでいない』といううわさが流れたので、確実に本物を捕らえたことを印象づけるために、直ちにビデオを流している」
そんな中で川上教授が注目しているのが、フセイン元大統領拘束直後に「(大量破壊兵器を)持っていない」という供述が米誌などにリークされた点だ。
「米国民が喜んでいるどさくさにまぎれて、大量破壊兵器については、この供述ですべて終わりにする戦略ではないか」と話した。
現在、元大統領はCIAなどが取り調べているが、前出の浜田氏は「フセインと裏取引を行っている節がある」と話す。
「米政権にとって、公開の裁判でフセインが『米国に言われて…』『米国のために…』などと過去の密約などをしゃべることは避けたい。死刑にしない代わりに、口止めをすることは十分ありえる」と説明する。
さらに浜田氏は「フセインの精神状態が不安定で、つじつまの合わない話をしているとの情報もある」と指摘した上で、こう推測する。「供述内容がどこまで本当か分からないが、裏取引とともに、どんな証言も精神に異常をきたした末の“妄言”とみなされてしまえば実質的な口封じになる。精神鑑定をして『裁判には耐えられない』とすることもありうる」

■イランは強硬に事実解明を要求
だが、米国は、何らかの国際的な法廷の場で、独裁者を裁くことを約束している。裁判の前に、米国とフセイン氏が何らかの「司法取引」をするのも現実には容易ではないと、前出の大野氏は分析する。「司法取引でフセイン氏が死刑を免れた場合、独裁体制で苦しめられたイラク国民が納得するのか。そのあたりのイラク人感情に配慮し、処刑する可能性が高い」
立花氏も同様の見解だ。「米国も大量破壊兵器の証拠が出てくる可能性をほぼあきらめている。そもそも取引が成立する条件がない」と予想する。「イラク人に手を下させてフセイン氏を処刑する可能性が高い。法廷は形式上の“茶番”で、米国の強い影響下で行われる。フセイン氏を殉教者にさせないためには、それしか手段がない」
ただ、フセイン氏の口を封じたまま、葬り去るのも難しい。高橋氏は言う。
「米国としては、フセイン氏に余計なことをしゃべられるより、イラク人の手で早く処刑してもらいたいだろう。しかし、国際世論が許さない。その代表がイランのハタミ大統領で、過去の事実を明らかにすることを強硬に求めている」

■フセイン元大統領拘束以降の発言
(米誌などから)
「撃つな。私はサダム・フセインだ。イラクの大統領だ」「取引したいのだが…」(拘束時、米兵に)
「彼らはみな泥棒かイランのスパイだったからだ」(面会したイラク統治評議会メンバーの「なぜ大勢の人々を虐殺した」との質問に)「(大量破壊兵器は)持っていない。もちろんない。米国がわが国と戦争するために夢想したのではないか」「(国連査察官を施設内に入れなかったのは)大統領施設内に彼らを入れ、プライバシーを侵害されたくなかった」
「(取調官に「元気か」と問われ)私は悲しい。わが国民はとらわれの身にあるからだ」「(水を飲むように勧めると)私が水を飲めば、トイレに行かなければならなくなる。国民がとらわれの身にあるとき、どうして私がトイレなど使うことができようか」(いずれも1回目の尋問調書)(東京新聞 2003/12/19)

化学兵器使用後も関係改善 米長官84年、イラク訪問
【ニューヨーク23日共同】米紙ニューヨーク・タイムズは23日、ラムズフェルド現米国防長官がイラン・イラク戦争中の1984年に、イラクのフセイン政権による化学兵器使用後も同政権との関係改善を図りたいとのメッセージを伝える米政府特使として、同国を訪問していたと報じた。機密解除された国家安全保障関係の文書で明らかになったという。
同紙によると、当時のシュルツ国務長官が製薬会社経営者だったラムズフェルド氏を特使に起用。米政府によるイラクの化学兵器使用非難はあくまでも原則であり、イランの勝利阻止とイラクとの関係改善が米の優先政策だとのメッセージを託した。
ラムズフェルド氏はブッシュ現政権の中で、化学兵器など大量破壊兵器保有を口実にしたフセイン政権打倒の主唱者の1人。(共同通信 2003/12/23)

イラク戦争特需で12億ドル 航空業界にと米紙
【ニューヨーク26日共同】米紙ニューヨーク・タイムズは26日、米国防総省がイラク戦争で兵員や装備の輸送のために12億ドル(約1300億円)以上を米民間航空業界に支払ったと報じた。
国防総省の特需は、戦争の影響などで業績が低迷する航空業界の「頼みの綱」となっている。
同省の報告では、2−6月の緊急動員期間に兵員輸送で10社に6億3620万ドル、装備輸送で14社に5億7400万ドルを支払った。運んだ兵員は延べ約50万人、装備は16万1000トン以上。ほとんどが米国内の基地とクウェート間の飛行だった。
国防総省と契約した会社が戦時に輸送任務を請け負う「民間予備航空団計画」に基づく。制度が始まった1951年以来、運用されるのは2回目。前回91年の湾岸戦争時は、動員兵力は4倍で、期間も長かったため、支払い額は現在の通貨価値で約17億ドル相当だった。(共同通信 2003/12/26)

膨張、米戦場ビジネス 警備、取り調べ、軍への給食まで
イラク戦争を機に、戦場をビジネスの場にする企業の存在がにわかに注目を集めている。冷戦後、縮小する米軍が業務の外注を進めた結果、企業は軍と武器供給ではなくサービスを通じて結びつきを強めた。米兵による虐待事件が起きたイラク・アブグレイブ刑務所では、米企業から派遣された社員が取り調べにまで携わっていた。かつてアイゼンハワー米大統領が警告を発した「軍産複合体の影響力」は姿を変えて膨張している。
職種・取調官▽勤務地・バグダッド▽年収・9万〜10万ドル(約1030万〜1130万円)とボーナス……
米軍関係の求人を扱う民間のホームページにこんな条件が並ぶ。アブグレイブ刑務所に取調官を派遣していたCACI・インターナショナルの求人情報もある。
情報関連企業のCACIの本社は国防総省と同様、ワシントンに隣接するバージニア州アーリントン郡にある。朝日新聞記者の問い合わせに、CACIは「取材には応じられない」としているが、公表資料によると、90年度に約1億5000万ドルだった売り上げが03年度には約8億4300万ドル(約950億円)に達した。うち64%が国防総省相手の事業だ。米兵に対するコンピューター操作の教育から機器の管理、ソフトウエアの開発まで。取調官や通訳の派遣など取り調べにかかわるサービスもその一部だ。経営陣には元国防総省高官も並ぶ。
3月31日、イラクのファルージャで民間米国人4人が殺害された。被害者は、米ノースカロライナ州の警備会社ブラックウオーター・セキュリティー・コンサルティングに雇われた元軍人。食料を運ぶ車両部隊の警備中に襲われたという。
暫定占領当局(CPA)によると、警備にかかわる分野だけで米企業60社に雇われた民間人約2万人がイラクで働いている。これに対し、イラクに展開している米兵は約13万人だ。
米軍は90年代に業務の外注化を進めた。冷戦終了で国防費が削減され、兵員も90年の204万人から02年には141万人に減った。特に後方支援部門の削減が目立つ。一方で湾岸戦争後もコソボ空爆、ソマリアやボスニアでの平和維持活動など米軍の活動は続く。その溝を埋める形で急成長したのが、米軍の業務を受注する民間企業群だ。
米会計検査院(GAO)は昨年6月、ボスニアやコソボ、ペルシャ湾岸地域での民間軍事サービス産業の活動について報告をまとめた。それによると、業務の範囲は通訳、基地の運営、武器の補修、基地の入り口や周辺の警備、情報分析、他の民間企業社員の監督など多岐にわたる。
国防総省の年間予算は現在、約3750億ドル。外注化による経費削減効果は「年間60億ドル」(96年の国防総省の諮問委員会報告)とも「年間20億ドル」(97年のGAOの報告)とも言われる。
これに対し、ブルッキングズ研究所のシンガー研究員は「経費より、むしろ政治的コストの削減効果が大きい」と指摘する。「軍事サービス産業のおかげで、招集される予備役も、死亡する米兵も減り、政治的な抵抗が抑えられる。戦争の原因とは思わないが、戦争をしやすくしているのは間違いない」
危険な地域での注文に柔軟に対応してもらえるよう、国防総省は外注する際、細かな事業内容を特定せずに包括的な契約を結ぶことが多い。限られた総額内ならかかった費用にもとづいて経費を請求できるケースが多く、企業が経費を抑える誘因が働かない。イラク戦争では、チェイニー副大統領が最高経営責任者(CEO)を務めていたハリバートンのグループ企業による給食事業などで、水増し請求疑惑も起きている。
軍事サービスのビジネスの場は国境を超えて広がっている。新生イラク軍の訓練を担当する軍需産業大手ノースロップ・グラマンのグループ企業ビネルは、サウジアラビアで軍の訓練なども請け負っている。シンガー研究員は「世界的な軍事サービス産業の市場規模は年間1000億ドル(約11兆円)にものぼるとみられる。誰が誰のために働くことができるのかなど、国際的なルールが必要だ」と話す。(朝日新聞 2004/05/26)

イラクへの武器輸出許可=米大統領
【ワシントン21日時事】ホワイトハウスは21日、ブッシュ大統領がイラクへの武器輸出を許可することを決めたと発表した。イラク暫定政府の治安維持能力向上が目的。(時事通信 2004/07/22)

露軍需産業“イラク特需” 周辺国が国防予算増、割安な戦闘機に注目
【モスクワ=内藤泰朗】米国主導のイラク戦争の影響で、ロシアを代表する戦闘機メーカーのミグなど同国軍需産業が好景気を迎えている。一方的な勝負を目の当たりにしたイラクの周辺諸国が国防予算を増やし、割安なロシア製戦闘機に注目したためとみられる。スホイ戦闘機への吸収合併話も取りざたされたミグは、年内にもさらに2、3の契約を結ぶとしており、「ブランド」復活に向けて鼻息が荒い。
ロシアの日刊紙、ブレーミャ・ノボスチェイによると、ミグ社は21日、米国がテロ支援国に指定する北アフリカのスーダンに、真新しいミグ29戦闘機2機を輸送機に乗せて送り出し、全部で12機の納入を終えた。契約総額はしめて2億ドル(約220億円)余に上るとみられている。
29番目のミグ保有国となったスーダンのアラク駐ロシア大使は同日、「他国の簡単な標的にならないようにするための予防的措置だ」とミグ29購入目的を説明、暗に米国や米国製戦闘機を保有する隣のエジプトを牽制(けんせい)した。
ミグ社はすでに契約を結んだ200機分の組み立てについて、複数工場で2、3交代制を導入してフル操業で急ぐほか、同じく北アフリカのアルジェリアや東南アジア、中南米の諸国と契約締結に向けて交渉を進め、「近い将来、契約総額が20億ドル(約2200億円)規模になる」と踏む。
スーダンへのミグ29納入は、契約が2001年に結ばれており、昨年のイラク戦争とは直接は関係がないとみられる。
しかし、国営ロシア通信のビクトル・リトフキン軍事評論員は「イラクにみられる米国の拡張主義は、米国と少なからず問題を持つ国々の防衛意識を高め、これらの国々はイラク戦争後、より多くの国防予算を割き始めた」と指摘、ロシアの軍需産業にとり大きなビジネス機会がやってきているとの見方を示した。
そのうえで、「イエメンやスーダン、アルジェリアなど豊かではない国々は、小型で割安のミグを、インドや中国など国防予算が大きい国はミグに加え大型で高価なスホイを選ぶという傾向が表れている」と語った。(産経新聞 2004/07/26)

イラク旧政権、米企業にも利権?=非公開リストに具体名−NYタイムズ
【ニューヨーク9日時事】9日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、イラクで大量破壊兵器を捜索した米調査団の報告書の非公開部分に、フセイン旧政権が石油販売権を割り当てた外国企業・個人のリストが含まれ、米石油企業4社と3個人の名前が上がっていると報じた。
リストは旧政権が管理していた。1996年から2003年までの間に、当時のシェブロン、モービル、テキサコ、ベイオイルの4社とヒューストンの石油業者オスカー・ワイアット氏ら3人が、計1億1100万バレルの石油販売権を受け取ったと記録されている。うちワイアット氏の販売権は7400万バレル分に上り、2300万ドルの利益を得た可能性があるという。
こうした取引は、国連の石油・食料交換計画の規定に基づき、承認を受けていれば違法ではなく、企業はいずれも合法取引だったと主張している。ただ、ニューヨークの連邦大陪審がこれら企業を召喚しているほか、財務省も調査しているという。(時事通信 2004/10/09)

「死の商人」に便宜供与 イラク物資輸送で米軍
13日発売の米誌ニューズウィークは「死の商人」と呼ばれ、米政府が国際犯罪人として取引を禁じているロシアの武器密売業者ビクトル・ボウト氏の関連会社が、米国防総省から基地使用の便宜供与を受けてイラクへの物資輸送を請け負っていたと報じた。
同誌によると、ボウト氏の関連企業とみられるテキサスのチャーター機会社は今年8月まで、米軍基地での給油を受けられる契約を国防総省と結び、イラクに輸送機を飛ばしていた。同省当局者はボウト氏との関係を知らなかったとし、同社輸送機が今年だけで米軍基地に142回着陸したことを認めた。
ボウト氏は旧ソ連軍人で、1990年代に国連などの禁輸措置に違反してアフガニスタンの旧タリバン政権やリベリアなどアフリカの独裁政権、反政府武装勢力に武器を売っていた。(共同)(U.S. FrontLine 2004/12/13)

イギリス企業が、旧サッダーム・フセイン政権の化学兵器装備に関与していたことが明らかになりました。
イランの化学兵器による被害者保護団体の調査や、旧サッダーム・フセイン政権に関する資料により、イギリス企業24社が、サッダーム・フセイン政権の生物化学兵器など、非通常兵器の装備に関与していたことが明らかになりました。
この24社の中には、2002年12月にイラクが国連に提出した、1200ページに及ぶ、大量破壊兵器に関する報告書に記載されている企業もあります。
さらに、一部の企業は、アメリカ企業と協力して、サッダーム・フセイン政権に非通常兵器を提供しています。
このように、アメリカとイギリスの企業、そして西側政府の関与が明らかになっているにも拘わらず、サッダーム・フセイン元大統領の特別法廷が、これらの企業やサッダームを支援していた政府の裁判を行うかどうかは、明らかではありません。(IRIBラジオ 2005/12/03)

サッダーム・フセイン元イラク大統領の弁護士が、アメリカは彼の公開裁判を恐れていると語りました。
フランス通信によりますと、サッダーム・フセイン元イラク大統領のフランス人の弁護士が、7日土曜、「アメリカはサッダームが公開裁判で裁かれることに反対している。なぜなら、彼らは西側がサッダームに協力していたことを知られたくなく、公開裁判で一部の真相が暴かれるのを恐れているからだ」と語りました。
サッダーム元イラク大統領の弁護士に任命された後、同弁護団を解任されたこの弁護士はさらに、「私が彼の弁護士としてこの法廷に出席していたなら、この裁判は何の目的で開かれているのか、という疑問を投げ掛け、サッダームは西側の協力者であり、西側が全てのことを知っていると話していたであろう」と語りました。
サッダーム・フセイン元イラク大統領は、イランに戦争を仕掛けたこと、クウェート侵攻、イラクのクルド人およびシーア派イスラム教徒殺害、西側によって供与された化学兵器使用などの容疑で起訴されています。(IRIBラジオ 2006/01/08)



【関連サイト】

アメリカはイラクの過去の化学兵器使用を責められるか?(人道的停戦を呼びかけよう実行委員会)

独紙が暴露したイラク兵器報告「配布」の実態(Alternative Mailing Lists)

USA CENSORS IRAQ REPORT



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