エイズ AIDS

[1985-1993]



日本にも真性エイズ 2患者、既に死亡
輸入血液製剤で感染? 血友病治療中
米国を中心に世界的に多発している難病AIDS(エイズ=後天性免疫不全症候群)の患者が日本でも発生。すでに死者2人が出ている、とする論文を厚生省・エイズ研究班の初代班長だった安部英(あべ・たけし)帝京大教授(内科)が、近く医学専門誌で発表する。輸血に使った輸入血液製剤が感染源である公算が大きい。血液製剤は血友病患者が常用するほか、一般の人たちも大けがなどのときの輸血に使われることがあり、今後の患者発生を防ぐための国の早急な対応が求められている。

厚生省の前研究班長が診断

厚生省はエイズと疑わしい患者を調査検討委員会で検討し、判定することにしている。安部教授が発表する2例は、この「公式判定ルート」にはまだ乗っていないが、「真性エイズ」と診断されたのは初めて。
エイズと診断されたのは、いずれも安倍教授が治療を引き受けていた血友病患者。昨年秋、米国に依頼した血液検査で2人とも、エイズウイルスの感染が確認された。患者はいずれも関東地方の男性で、83年7月に死亡したPさん(48)と、昨年11月に死亡したQさん(62)。
Pさんは血友病B型の患者で、数年来、凝固因子を補給するため、血液製剤の注射を受け続けていた。死亡する2年前の81年8月ごろ発熱し、腹痛、ひ臓やリンパ球のはれなどの複雑な症状が出て、免疫機能も異常に低下した。死後の解剖で、食道から胃腸、心臓にまで、かびの一種であるカンジダがとりついていた。
また、Qさんは血友病A型の患者で、やはり凝固因子の注射を受けていた。死亡する1年前の83年10月、微熱が続いたため入院。Pさんとほぼ同じような症状が出て、最後は、肺がかびだらけになるアスペルギルス肺炎で亡くなった。
2人のうちPさんは、一昨年、厚生省研究班に「エイズの疑い濃厚な患者」と報告されたが、当時は、ウイルスがまだはっきりしておらず、“証明不十分”として、研究班では最終的にはエイズ患者と認定しなかったいきさつがある。
昨年3月まで厚生省・エイズの実態把握に関する研究班の班長だった安部教授は、臨床症状から2人はエイズに間違いないとの確信を持ち、昨年秋、2人の血液を、米国立衛生研究所(NIH)のR・ギャロ博士のもとに送り、確認を求めた。その結果、Pさんは、成人T細胞白血病(ATL)ウイルスと、エイズウイルスと見られるヒトT細胞白血病III型ウイルス(HTLV-III)の複合感染、Qさんは、HTLV-III感染が確認された。
安部教授はこの時、同時に、帝京大病院などの血友病患者50人の血液を送ったが、このほど米国から23人(46%)が、HTLV-IIIに感染しているという回答を受け取った。
「現在の国際診断基準に照らして、2人は真性エイズ患者に間違いない。また、日本人血友病患者でエイズのウイルスを持つ人が予想以上に多いことがわかった。パニックを心配し、ためらったが、今後、患者が多発しないための対策が重要と考え、専門誌『代謝』に公表することにした。詳しくは、論文を見て判断してほしい」と、安部教授は話している。

事実なら対策協議

厚生省エイズ調査検討委員会の塩川優一委員長(順天堂大名誉教授)の話 各病院で疑わしい患者がでれば、すべて委員会に報告してもらい、検討することになっている。帝京大のこの話は初めて聞いた。影響が大きいので厚生省とも相談、早急に検討し、事実なら対策を協議することになろう。

2次感染心配ない

野崎貞彦・厚生省感染症対策課長の話 昨年秋、エイズの発生を監視する目的で設置した調査検討委員会に報告されていないのでなんともいえない。委員会に出してもらったうえで検討したい。本当にエイズだとすれば、血友病の患者さんには深刻なことだが、血液製剤で感染したあと、接触しただけでさらに一般の人にうつることはないので、心配しすぎることはないと思う。

製剤は患者の命綱

全国ヘモフィリア(血友病)友の会・北村千之進会長の話 各国で血友病患者にエイズが出ているので、機会あるごとに「製剤を打ちすぎるのは慎むよう」呼びかけてきた。製剤の熱処理なども進んできたので、ひょっとしたら日本上陸は阻止できるのではないか、という感じがしてきた矢先だっただけに、残念だ。患者にある程度の動揺が出るのは仕方ないだろう。製剤は患者にとっては命綱で欠かすわけにはいかない。当面は国に、ウイルスのチェックや熱処理をキチンとやってもらうしかないが、もっと根本的には、わが国も血液の自給を考えるべき時期が来ていると思う。

<解説> エイズが日本に侵入するとしたら血液製剤がカギになる、との専門家たちの懸念が、帝京大の報告で真実味を増してきた。米国のエイズ患者は、男性同性愛者や麻薬中毒者が大半だが、それでも米国にいる2万人の血友病患者のうち三十数人がエイズで死亡している。厚生省によると、わが国には約5400人の血友病患者がいるが、同じ材料の血液製剤を使いながら、エイズ患者が出ない、という方がむしろ奇妙だった。
エイズのウイルスは血液製剤や輸血でうつりうるが、発病の素地となる免疫低下を起こす患者はその一部、死に至るのはさらにその一部に過ぎない。一方、血友病患者にとって血液凝固因子製剤は命綱。患者は、冷静に現実を受け止めると同時に、国は血液製剤の安全確保のために、最大限の努力をしていく必要がある。
輸入血液が原因とみられるエイズ患者が国内で見つかったことは、血液製剤をつくる原料の90%を輸入に頼っているわが国の医療の問題点を浮かび上がらせた。
現在、わが国に米国から届く血液には、取扱業者による証明書が付いてくる。供血者に「同性愛ではないか」「薬物を常用していないか」などと問い、「シロ」であるとの回答があったことを示す書類だ。だが、供血者が必ずしも真実を申告するとは限らず、十分なチェック法がないことは、厚生省も認めている。同省は先月、米国側に、エイズウイルスの有無を検査したことを示す証明書を添付できないか、打診した。だが、返事は「無理です」だった。全業者に検査の試薬が行き渡るまでにまだ時間がかかるし、試薬の信頼性もまだ100%でない、という理由だった。つまり、ある程度の危険は承知のうえで、それに目をつぶって輸入している、というのがわが国の現状なのである。(朝日新聞 1985/03/21)

エイズに特効薬?
【テルアビブ1日=共同】1日付のイスラエルの日刊紙マーリブは、胸腺(きょうせん)ホルモンから作った薬がエイズ(AIDS=後天性免疫不全症候群)の治療に有効なことが分かったと報じた。同紙によると、この薬は「TAF」といい、ワイツマン研究所のトライニン教授により開発された。同教授は胸腺ホルモンが体内の免疫システムに果たしている機能に注目し、これを人工的に製造することに成功した。

<注> 胸腺ホルモンは、免疫機能に重要な役割を持つ胸腺リンパ球(T細胞)の分化、成熟を促進する物質。胸腺は胸骨の後ろ側にあるへん平で細長く、左右両葉から成る葉状の器官。(朝日新聞 1985/10/02)

6年前、既に日本上陸 エイズ 米で発見の翌年
抗体陽性61人確認 血液製剤で感染?
エイズ(AIDS=後天性免疫不全症候群)の病原ウイルスが、6年前すでに日本に上陸していたことが5日までに、神奈川県立こども医療センター、長尾大(たけし)小児科部長らの研究で明らかになった。エイズ禍が問題になった昨年、同センターが保存していた78年以降の血友病患者の血清を改めて調べ直したところ、80年に初めてウイルスの抗体陽性者が出現、それ以後、毎年増え続けており、昨年までに61人がエイズに汚染されていることが確認された。日本でのエイズ患者認定第1号は昨年3月だが、ウイルス汚染がいつ始まったのかはこれまで不明だった。米国で抗体陽性者が最初に発見されたのは79年。その翌年には日本も汚染されていたわけで、エイズは潜伏期間が4年以上と長いことから、今後、米国並みの患者急増が心配される。この研究結果は、4月24日から福島市内で開かれる日本血液学会総会で発表されるが、関係者に大きな衝撃を与えそうだ。
同医療センターは、78年から85年にかけて、センターで治療した延べ246人の18歳未満の血友病患者の血清を保存していた。最近、これらの血清について、国立予防衛生研究所の協力でエイズウイルスの抗体チェックをしたところ、78年、79年は、いずれも14人の血清すべてが陰性で、ウイルスに汚染されていないことがわかった。しかし、80年になって、採取した19人の血清から、2人が陽性との結果が出た。
その後、陽性者は増加の傾向となり、81年は26人中3人(陽性率12%)、82年38人中8人(同21%)、83年30人中11人(37%)、84年35人中14人(40%)、85年70人中23人(33%)となっていることがわかった。だが、陽性者で、発症した人はまだいない、という。
血友病患者は、米国から輸入した高濃縮血液製剤(血液凝固因子)によりエイズに感染したとみられているが、これらの製剤が日本で市販されたのは79年。翌年にはすでに抗体陽性者が出ているわけで、汚染があっという間に広まったことを裏付けている。
日本で、これまでに確認されたエイズ患者は14人(血友病患者7人、同性愛者7人)で、2万人近い患者を抱える米国ほど深刻ではない。血友病患者に関しても、昨年、加熱処理をした安全な血液製剤が製造承認されたことから、厚生省は「今後エイズ患者がそう急増することはない」とみていた。だが、ウイルスの上陸が、米国での汚染開始の1年後だったことが明らかになったことで、ここ1、2年が日本での発症ピークになる危険性が強まり、厚生省も対策を迫られそうだ。(毎日新聞 1986/03/05)

蚊やダニも媒介 エイズウイルスで発表 仏の学者
【パリ25日西川恵特派員】「蚊やダニ、それにゴキブリによってもエイズ(後天性免疫不全症)ウイルスは媒介される」──フランス・パスツール研究所のエイズ研究者が25日、ハンガリーの首都ブダペストで開かれている世界がん学会でこのような研究結果を発表した。これまでエイズはセックスか輸血を通じてのみ感染するといわれてきただけに、定説を覆す発表が大きな反響を呼んでいる。
パスツール研究所のジャンクロード・シェルマン教授の研究発表によると、同教授のチームはアフリカのザイールと中央アフリカから蚊、ダニ、ゴキブリ計80匹を持ち帰り分析した。その結果、ザイールで採取した50匹全部からと、中央アフリカの30匹の一部からエイズ・ウイルスが検出されたという。
この結果に基づき同教授は「エイズ・ウイルスを持った人の血を吸った蚊やダニ、だ液をなめたゴキブリが媒介して健康体の人にエイズ・ウイルスをうつしていると考えられる。この地域はエイズの発祥地と見られており、エイズ・ウイルスの感染率がこの地域で高いのも、これで説明できる」と指摘した。同教授のチームはフランス国内で採取した蚊、ダニ、ゴキブリについても調べたが、今までのところ検出されていないという。(毎日新聞 1986/08/26)

漢方薬、エイズに効く
グリチルリチン 副作用なし、増殖抑制

AIDS(エイズ=後天性免疫不全症候群)ウイルスの研究を続けている山本直樹山口大医学部教授ら山口大、福島医大の研究グループは、慢性B型肝炎など肝臓病治療やジンマシン、アレルギー治療に使われる薬のグリチルリチンが、エイズウイルスの増殖抑制に効果があることを突き止めた。
これまでAIDSの治療薬は種々発表され、試験管内だけでなく臨床的に有効な薬も報告されているが、その多くは、感染者は一生使い続けなければならず、副作用面で大きな障害となっていた。グリチルリチンは漢方薬の1つ「甘草」の有効成分で副作用がなく、治療薬としての開発に大きな期待が持たれている。この研究は10月13日から福岡市で開かれる日本ウイルス学会総会で伊藤正彦福島医大助教授から発表される。
同研究グループは、グリチルリチンが一部のウイルスに抗ウイルス効果を持つことが知られていることからエイズウイルスに増殖抑制効果を持つかどうかを検討した。
エイズウイルスと同じ科に属する成人T細胞白血病(ATL)ウイルス陽性細胞にエイズウイルスを感染させた後、種々の濃度のグリチルリチンを加え、エイズウイルスによる細胞破壊を計測した。
その結果、グリチルリチンの濃度が培養液1ミリリットル中0.5ミリグラムで、エイズウイルスの細胞破壊は完全に抑制された。また、感染により細胞表面に出現するエイズウイルス抗原も同じ量で98%抑制に成功した。副作用もないことがわかった。なぜ、エイズウイルスの増殖が完全に抑制されるのか、今後の研究で突き止めたいとしている。(読売新聞 1986/09/22)

エイズと戦う細胞発見 白血球の一種、治療法に道
【ワシントン11日=清水特派員】米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究グループは人間の体を病原菌から守る白血球のなかに、エイズ(後天性免疫不全症候群)ウイルスの増殖を抑える機能を持つ細胞があることを発見した。この発見は体内にエイズウイルスと戦う機構が備わっていることを示した初めての成果で、毒性のある抗ウイルス剤の代わりに免疫機構をうまく使った新たな治療法に道を開くものとみられている。
同校のシェイ・レビイ博士を中心とする同グループが発見したのは抑制T細胞とよばれる白血球細胞。この細胞はエイズウイルスを制御、その複製を抑える機能があり、4年以上エイズウイルスにかかりながら発病しない患者はこの細胞が機能しているらしいという。(日本経済新聞 1986/12/12)

甘草成分、臨床でもエイズに効果
漢方薬の1つで、甘草(かんぞう)の成分であるグリチルリチンが、エイズ感染者の免疫力を高め、症状の進行を食い止めることが、東京都立駒込病院などの臨床試験でわかった。
グリチルリチンは慢性肝臓病の治療に使われており、昨年9月、福島県立医大の伊藤正彦助教授(細菌学)らの研究で、エイズウイルスに感染したリンパ球の増殖を抑える効果のあることがわかった。このため駒込病院など4病院で昨年秋から実際にエイズ感染者に投与する臨床試験が行われていた。
この結果、軽症の7人のうち6人については免疫活性を高めるリンパ球が増加。免疫活性を抑制するリンパ球に対する比率が高まるのが確認された。免疫活性を高めるリンパ球が、これを抑制するリンパ球の5分の1以下の重症者には効果がなかった。
伊藤助教授は「長期間の経過をみないとはっきりしないが、現時点では感染者がエイズ患者に移行するのを防げる可能性がある」といっている。(毎日新聞 1987/01/26)

女→男でも感染力強い エイズで米大学が調査
【ワシントン5日=清水特派員】エイズ(AIDS=後天性免疫不全症候群)は男女間の性行為でも非常に感染しやすいことが米マイアミ大学の研究でわかり、6日発行の医学会誌「ジャーナル・オブ・アメリカン・メディカル・アソシエーション」に発表した。
研究グループは男性28人、女性17人の計45人の成人患者の配偶者、子供109人、同居人29人を1−3年にわたり追跡調査、感染具合を調べた。調査開始時に配偶者のうち、女性4人、男性9人が既にエイズウイルスに感染(ウイルス抗体を持つ)していた。残りの配偶者については女性10人、男性3人が調査開始後に感染したことがわかった。
エイズはこれまで性行為によって男性から女性へは感染するが、女性から男性へは感染しにくいとされていた。しかし、研究グループはこの調査で女性から男性にも感染するおそれがあるとの結論を出している。(日本経済新聞 1987/02/06)

エイズウイルス、脳を直撃 細胞表面に侵入の足場
米教授発表

米国でエイズ患者の多くが脳障害を起こすことがわかり、新たな問題になっているが、米コロンビア大のリチャード・アクセル教授たちのグループは、エイズウイルスが直接、脳細胞を侵す証拠をつかまえた。ウイルスが細胞に感染する際、細胞表面に吸着して侵入の足場とする物質が、これまで考えられていたリンパ球だけでなく、脳の細胞の表面にもあることをみつけた。この研究成果は10日、東京で開かれているヤクルト国際シンポジウムで発表される。
エイズは後天性免疫不全症候群といわれるように、外から侵入した病原体と闘う免疫力が極端に低下する新しい病気として1981年、米国で初めて報告された。ところが、米国では2万8000人を超えるエイズ患者の80%近くが痴ほう、運動障害、錯乱、けいれんなどの脳障害を示して患者の世話をすう上でも重要な問題になっている。患者の脳や髄液にウイルスは見つかるが、感染の仕組みはナゾだった。
エイズウイルスは、免疫に重要な役割を果たしている「T4細胞」と呼ばれるリンパ球に侵入して破壊する。感染する際、細胞の表面にある「T4」という糖たんぱくの“受け皿”に結合して侵入する。
アクセル教授によると、大脳皮質の細胞にもリンパ球と同じウイルスの受け皿が見つかったという。さらに、リンパ球と同じ受け皿だけでなく、その4分の1ぐらいの大きさしかない新しい受け皿もあった。ウイルスがこれらの受け皿に結合し、細胞内に侵入するかどうかは、今後の実験で明らかになるが、ウイルスが脳細胞の表面に吸着しただけでも障害を起こす可能性がある、という。

国立精神神経センター神経研究所の安藤一也・疾病研究部長の話 重要な発見だ。エイズ患者の脳障害は、免疫力が低下したために、健康な人には悪さをしない他のウイルスやカビが引き起こす2次的なものと考えられてきた。最近はエイズウイルスが直接、悪さをするとの見方が強くなってきたが、今回の発見によって感染の詳しい仕組みがわかるだろう。(朝日新聞 1987/02/10)

エイズ抑制 インターフェロンが有効
少量で副作用少ない

鳥取大医学部、神戸常盤大のウイルス研究グループは、エイズ(AIDS=後天性免疫不全症候群)の発症予防に抗ガン剤インターフェロンが有効、との研究結果をまとめ、鳥取大の栗村敬教授(53)が14日、東京・経団連会館で開かれている国際エイズ治療会議で報告する。ごく少量のインターフェロン投与でエイズウイルスの増殖が抑えられており、注目した厚生省エイズ対策専門家会議もすでに臨床試験に着手している。
栗村教授と、岸田綱太郎神戸常盤大教授(66)らは、インターフェロンがエイズウイルスの増殖を阻害する働きを持つことに目をつけ、フランス、日本のエイズ感染者(抗体保有者=キャリア)のエイズウイルスを末しょう血リンパ球などの細胞に感染させて、試験管内で培養、インターフェロンを加えて変化を確かめた。
摂氏37度、5%炭酸ガス培養基内で、ウイルス感染による陽性細胞数をカウントする方法で、1週間後の数値を測定した結果、添加しなかった場合は全体の24.3%まで増加したが、1ミリ・リットル当たり500国際単位のインターフェロンを加えると、増加率は7%に抑制された。
逆に増殖を90%まで抑え込むために、どれくらいのインターフェロンが必要かを測定したところ、1ミリ・リットル当たり5国際単位で十分との結果が得られた。
栗村教授は「ごく少量で効果も大きく、しかも副作用が少なく、長期間投与で耐性ができることもない。試験管内では理想的な結果が得られており、臨床面での効果を願っている」と話している。(読売新聞 1987/02/14)

第2のエイズウイルス アフリカ中央で広がる 仏学者が報告
エイズ(AIDS=後天性免疫不全症候群)治療を探る「国際AIDS治療会議」(厚生省エイズ感染・発症メカニズム研究班主催)は、14日、前日に続き東京・大手町の経団連会館で開かれ、フランス・パスツール研究所の女性研究者、F・バレシヌシ博士が、これまでのエイズウイルス(HTLV-1)と同じ仲間だが構造が異なる第2のエイズウイルス(HTLV-2)がアフリカ中央部で広がり始めているようだ、と発表した。
このウイルスは昨年、パスツール研の研究員が西アフリカで発見した。血液や精液を通じて伝染することや、カリニ肺炎などの感染症を起こし、臨床的にはHTLV-1と全く同じ。ただ、ウイルスの表面構造がHTLV-1と異なっている点に特徴があり、HTLV-2と名付けられた。
バレシヌシ博士がアフリカ中央部に広がり始めていると指摘するのは、この地方に住んでいたエイズ患者2人が昨年、パリ、ポルトガルの病院で血液検査を受けた結果、HTLV-2に感染していると判明したため。バレシヌシ博士は「将来、世界中に広まる恐れがある」と指摘する。(読売新聞 1987/02/15)

人体接種で抗体確認 エイズ・ワクチン 仏研究者グループ
【ブリュッセル19日=友清特派員】遺伝子操作によって作ったエイズ・ワクチンを自分自身と数人のボランティアに注射し、エイズに対する抗体ができるのを確認したと、フランスとザイールの共同研究グループが19日発売の英科学誌「ネーチャー」で発表した。エイズ・ワクチンの人体接種の報告は初めて。抗体ができたことでワクチン開発は前進したが、このワクチン接種によって、エイズの感染が防げるかどうかについては、触れていない。発表したのは仏ピエール・エ・マリー・キュリー大学のダニエル・ザギュリー博士らのグループ。博士はザイールのキンシャサにある研究所の協力を得て、数人のザイール人ボランティアと自分自身に、エイズ・ウイルスの一部を牛痘ウイルスに組み込んだワクチンを接種、9週間にわたって経過を観察した。
その結果、体内にエイズに対する抗体が出来たのが確認できた。エイズ・ウイルスには2つのタイプがあるが、主目的としたタイプ以外のウイルスに対する抗体も、弱いながら出来ていた。エイズそのものの症状は出ていないという。(朝日新聞 1987/03/19)

ウイルスの潜伏期間15年 エイズで英の研究者
【ワシントン25日=石田特派員】エイズウイルスの潜伏期間は従来考えられているよりはるかに長く、感染した人の大半が今後30年以内に発病するだろう。という研究結果が26日発行の英科学誌「ネーチャー」で発表される。米国内のウイルス感染者数も米政府の公式発表数を上回り、2年前にすでに250万人に達していた、という。
発表をするのは英セント・スチーブンス病院のマルコム・リース博士。
それによると、エイズウイルスの潜伏期間は平均15年で、感染者の半数は感染後10年から20年以内に発病する。割合こそ少ないが、5年以内、または20年を過ぎてから発病する人もいて、全体としては感染者の大半が30年以内には発病に至る、としている。(朝日新聞 1987/03/26)

エイズ完全治療に道 血液からウイルス除去 旭化成開発
旭化成工業(本社・大阪)は26日、山口大との共同研究により新しく開発した中空糸膜を使ったエイズ(後天性免疫不全症候群)ウイルスを血液から分離することに成功した、と発表した。
十分なエイズ治療薬が開発されていないなかで、エイズ患者にとって完全治療の道が開かれると世界的に注目を集める製品といえるもの。同社では1年後をメドに商品化するといっている。
開発された中空糸膜は再生セルロースを原料にした無数のポア(内部空孔)のある繊維。ポアの大きさを20ナノメートル(1ナノメートルは100万分の1ミリ)から50ナノメートルまで自由にあける同社の技術が寄与したという。エイズウイルスは直径90−100ナノメートルで、この中空糸膜で血液をろ過するとエイズウイルスを除去し必要な血漿(けっしょう、2ナノメートル)は成分組成を傷めずにとりだせる。これはエイズ研究の権威、山本直樹山口大教授の実験で確認された。山本教授は6月、ワシントンで開かれる国際エイズ会議で実験結果を発表する。
同社ではこの中空糸膜により、血友病患者の輸血の際、エイズ感染防止に役立つほか、エイズ患者の血液を浄化することによって発病を遅らすのに効果があるとしている。(産経新聞 1987/03/27)

高脂血症の治療薬・デキストラン硫酸
日本にエイズ特効薬? 米の患者が多数来日
高脂血症の治療薬として日本国内だけで市販されているデキストラン硫酸がエイズに効く可能性があるとして、米国から多くのエイズ患者やその家族、知人らが薬を買い求めに来日していることが、21日明らかになった。メーカーは厚生省と協議したうえ、それら外国人客に対し、「本来の効能以外の用途で服用するリスクは患者自身が負う」との承諾書にサインさせて限定的に販売を始めた。
デキストラン硫酸は現在、国内で十数社が高脂血症の薬として製造・販売している。これとは別に上野製薬(本社大阪)が昨年春、実験室内での研究データを基に米食品医薬品局(FDA)にエイズ治療薬として臨床試験を申請した。
実験データではAZT(アジドチミジン)など従来のエイズ治療薬と同等、もしくはそれを上回る抗エイズウイルス作用があるという。しかもデキストラン硫酸は副作用の心配が少なく、経口投与できる。
デキストラン硫酸のトップシェアを持つ興和(本社名古屋市)はこれまで国内向けにこの薬を販売してきたが、最近、各地の薬局から「外国人の客が薬を買い求めにきているが、どうしたらいいか」という問い合わせが相次いだ。
在米日本大使館などからは厚生省や興和に対し「米国のエイズ患者団体の間で、デキストラン硫酸を売ってほしいとの要請行動が起きている」との連絡が入っている。ニューヨークにある興和の米国子会社にも患者十数人が押し寄せ、「エイズに効く可能性がある薬をなぜわれわれに売らないのか」と抗議するなど、市販を要求する声が強くなっている。
こうした経緯を背景に、興和は厚生省と協議し、先月末から東京、成田の3薬局に限り、デキストラン硫酸を買い求めにくる外国人客に承諾書にサインさせたうえで販売することにした。
厚生省などによると、デキストラン硫酸がエイズ患者に効くというのは科学的にはまだ証明されていない。また血液凝固を抑制する作用があるので、血液製剤によってエイズに感染した血友病患者に対してはマイナスの作用が出る可能性がある。
厚生省やメーカーは「国内のエイズ患者の多くは血液製剤によって感染した人なので、これらの人がデキストラン硫酸を使用するのは危険性もある」と注意している。(日本経済新聞 1988/07/21)

エイズ、毒性低い抑制物質 大阪公衛研など確認
エイズ症状の1つであるカンジダ(カビの一種)症などの治療に使われている抗生物質のアムホテリシンBに硫酸基を加えて合成した物質、硫酸化アムホテリシンB(SA)が、エイズウイルスの増殖を強く抑制、しかも毒性が低く、カンジダ症の治療効果も保っていることを、大阪府立公衆衛生研究所(国田信治所長)と鳥取大学医学部の栗村敬教授らの共同研究グループが突き止めた。この研究成果は来月8−9日に東京・大手町の農協ビルで開かれる第2回エイズ研究会で発表する。エイズウイルスの増殖抑制効果に加え、副作用も少ないと見られることから、今後の臨床試験などでの成果が期待されている。
エイズは、体内の免疫機構で中心的な役割を担うTリンパ球にエイズウイルスが侵入、増殖して破壊するために発症する。大竹徹・府立公衛研主任研究員(40)によると、特殊培養したTリンパ球にエイズウイルスを感染させる実験を行うと、通常は急速にウイルスが繁殖してTリンパ球は4−6日間で死滅するのに、今回合成したSAを培養液1ミリリットル中7マイクログラム(1マイクロは100万分の1)以上の濃度で加えるとTリンパ球は生き続け、SAにエイズウイルスの増殖を防ぐ働きがあることをはっきりと確認したという。
エイズ患者から分離したウイルスを健常者のリンパ球に感染させる、より自然に近い感染状態を再現する実験でもSAは、1ミリリットル中4−15マイクログラムの濃度でウイルスの増殖を抑える効果があった。また、SAを1ミリリットル中30マイクログラム以上の濃度で加えるとウイルスがTリンパ球にもぐり込むのを妨げる効果があることが分かった。
アムホテリシンBは、日本でも販売され、カンジダ症など真菌症の治療剤として広く使われている。しかし毒性が強いのが難点で、1ミリリットル中50マイクログラム以上の濃度になると細胞を死滅させてしまう。これに比べSAは1ミリリットル中1000マイクログラムの濃度まで加えても細胞が正常に増殖することができるなど、毒性が低いのが特徴。さらにアムホテリシンBの持つ真菌類に対する増殖抑制効果は、SAでも同等の効果が認められたという。

畑中正一・京都大学ウイルス研究所教授の話 これまで硫酸基を持った物質が、エイズウイルスの増殖を抑制する効果があることは、試験管レベルでは確立している。問題はそれが、血液中で有効に働くことができるかだ。米国で抗エイズウイルス剤として臨床試験が進んでいる高脂血症治療薬、デキストラン硫酸もその点が詳しく解明されていない。今回合成した物質は実際使われている注射用製剤を硫酸化したものだから、血液中で有効であると期待できる。エイズの日和見感染である真菌症の治療効果もあり、毒性が低いことからエイズ治療薬として有望だろう。(日本経済新聞 1988/11/25)

エイズの新病原体発見か 米学者、詳細明かさず追試拒否
【ワシントン7日=共同】7日付の米紙ワシントン・ポストによると、米軍病理学研究所の研究者たちがこのほど、エイズ(後天性免疫不全症候群)患者数人から「ウイルスに似た病原体」を発見、この不思議な微生物がエイズ患者の死に重要な役割を果たしているとみて解明を急いでいる。
しかし、同研究所は発見した微生物の詳細を明らかにしていないばかりか、他の研究機関に試料を送って追試を求めたり共同研究することを拒否しており、物理・化学界を巻き込んだ常温核融合問題と同じように医学界でも新発見の真偽論争が始まりそうだ。
新病原体の発見を明らかにしたのは、同研究所のシン・チン・ロー博士。米熱帯衛生医学ジャーナル4月号に掲載された論文によると、この「ウイルスに似た病原体」は数年前、カポジ肉腫(しゅ)にかかったエイズ患者の細胞から分離された。
この病原体を4匹の猿に接種した結果、4匹ともリンパ節がはれ、一過性の熱が出たほか、体重が異常に減少して接種後7−9カ月で全部死亡した。1匹には病原体に対する抗体が生じ、3匹には神経病の症状が見られたという。
いずれの猿にも感染症や悪性腫瘍(しゅよう)にかかった跡はなく、エイズ患者と同じような死に方をしたのは病原体によるもの、とロー博士らは主張している。
エイズはヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって起こるというのが確立された定説だが、エイズ治療に携わる専門家の間にはHIVとは別の補助要因が、死に至らしめる原因ではないかとの見方が強かった。
ロー博士の発見した新病原体はこうした見方を補強するもので、本物とすればエイズ患者を死から救う可能性も出てくる。ロー博士らは、他の科学者に発見を横取りされるのを恐れて、詳細な発表を拒否しているとも伝えられており、半年後といわれる“科学的研究成果”の発表が期待される。(朝日新聞 1989/05/08)

「4週間で症状消える」エイズの新薬を開発
ケニアの研究所発表
【ナイロビ7日=ロイター共同】ケニア医学研究所(KEMRI)のデイビー・コーチ所長は6日、ナイロビで記者会見し、同研究所が開発したエイズ新薬の臨床試験で、4週間以内にほとんどの症状を消すことができたと発表した。「ケムロン」と呼ばれるこの新薬は体内にある免疫関連物質インタフェロンを基にしたもので、臨床試験は様々な段階のエイズ患者101人を対象に行われた。
KEMRIは一部政府出資の研究機関で、「ケムロン」は日本の「林原生物化学研究所」(岡山市)、米テキサス州のアマリロ・セル・カルチャー社との共同研究で開発した。コーチ所長によると、何人かの患者は治療を終えており、明らかに症状が軽くなってきている。効果が見られなかったのは最も進行した患者1人だけだったという。
「ケムロン」は、エイズ治療薬として現在ただ1つ認められているAZT(アジドチミジン)と同様、エイズウイルスの体内での複製増殖を抑え、症状を軽くするものである。しかし、AZTは副作用が強く、長期間使えなかったのに対し、「ケムロン」はAZTよりずっと低い濃度で効果があり、強い副作用は現れなかったという。また「ケムロン」を使ったエイズ患者の10%ではエイズウイルスが見つからなくなった。この点についてコーチ所長は、どのようにして効くのか詳細な研究が必要としている。

林原生物化学研究所によると、ケニア医学研究所で進められている研究は、インターフェロンを薄めて少量ずつ患者に与えるという考え方に立っている。この療法は米国アマリロ社の研究者らが考え出したもので、免疫の働きを強めるリンパ球をふやす効果などがあるという。遺伝子工学製のインタフェロンより自然のものがよいといわれ、このため自然型を作っている林原生物化学研に白羽の矢が立った。インタフェロンは薄めて使うと活性が不安定になるため、特殊な糖に吸収させて安定化することが必要。この技術も、林原研側が提供した、といっている。(朝日新聞 1990/02/08)

IFNα経口投与 エイズ症状が改善 林原生物化学研
抗ガン・抗ウイルス剤のヒト天然型インターフェロンα(IFNα)を生産している林原生物化学研究所(本社岡山市、社長林原健氏)は8日、アフリカ・ケニアのケニア医学研究所(デービー・コーチ所長)でエイズ(後天性免疫不全症候群)患者にIFNαを少量経口投与したところ、4−6週間で明らかに症状が改善したことを明らかにした。同社の栗本雅司藤崎研究所長は「従来の大量注射による治療に比べ、少量経口の方法が影響していると思うが、なぜ改善したか理論的な裏付けはまだわかっていない」と語った。
同社によると昨年夏以来投与した患者101人の中で、症状の変化を確認できる適格患者26人でみると、全員明らかに一般症状が改善した。しかも6、7人はリンパ球の中の免疫機能を向上させるヘルパーT細胞と、抑制するサプレッサーT細胞の比率が1を下回っていたのに、健常人とほぼ同じ2近くまで高まり、エイズウイルスも見つからなかったという。
ケニア医学研究所の治療方法は、IFNαをマルトース(麦芽糖)で錠剤にし、毎日2回、150単位程度の少量を経口投与したもの。従来の治療は数百万−千数百万単位を静脈や皮下に注射しているが顕著な効果はなく、少量経口投与の臨床試験は初めてだった。(日本経済新聞 1990/02/09)

エイズの新薬を開発 インターフェロンを錠剤に
林原生物化研など共同研究
林原生物化学研究所(本社・岡山市)は米アマリロ・セル・カルチャー社との共同研究で、ヒト・天然型インターフェロンを錠剤にして少量経口投与するエイズ治療薬を開発、8日、アフリカのケニアで行った臨床試験でエイズウイルスの増殖抑制に大きな成果を上げたと発表した。
新治療法は、インターフェロンを従来の1万分の1以下の極めて少量を経口投与するという方法。インターフェロンは濃度が薄くなると働きが極めて不安定で鈍くなるという性質があることから、実用化は無理とされてきた。しかし、林原が開発したマルトース(麦芽糖)という特別な糖を使い、インターフェロンの活性を長時間常温で安定させることに成功した。
臨床試験は、ケニア医学研究所(ナイロビ市)で行われた。様々な症状のエイズ患者26人に対し4−6週間、錠剤を投与したところ全員がカポシ肉腫(にくしゅ)など外観的な症状が完全に消え、副作用もなかった。うち6人は健常人とほぼ同じまで免疫機能が回復し、エイズウイルスも見つからなかった。(読売新聞 1990/02/12)

エイズ増殖を抑止 副作用「極めて少ない」
三菱化成、内外3大学と新化合物開発

三菱化成は昭和大学など日本、ベルギー、英国の3大学と共同でエイズ(後天性免疫不全症候群)ウイルスの増殖を抑える新しいタイプの化合物を開発した。核酸系の抗ウイルス剤で、試験管実験ではAZT(アジドチミジン)並みの効果があり、2週間の動物実験の結果、副作用が極めて少ないこともわかったという。同社では新しいエイズ治療薬となる可能性が大きいとして90年秋までに米国で臨床実験に着手、92年末に発売する計画だ。
エイズの治療薬として唯一、認められているAZTは、患者に長期投与すると骨髄の免疫機能を抑えてしまうなどの副作用があった。これに対し三菱化成などが開発した化合物はラットと犬に2週間連続投与しても副作用がなく、患者に長期間使用できる可能性が大きいことがわかった。
この化合物は核酸系の「6−置換アシクロピリミジンヌクレオシド」で、特にHIV−1型のエイズウイルスだけに有効だという。またこの化合物はエイズウイルスの増殖を抑える「逆転写酵素阻害剤」というこれまでの方式とは全く違う機構でエイズウイルスを攻撃する。経口投与が可能なため、患者の苦痛も少ない。今後、この化合物がウイルスを攻撃するメカニズムの解明や安全性試験の詰めを急ぐ。
三菱化成は各国で関連特許を申請した。三菱化成と共同開発したのは昭和大学の宮坂貞教授とベルギーのルーベンカトリック大学のエリック・デ・クラーク教授、英バーミングハム大学のリチャード・T・ウォーカー博士ら。(日本経済新聞 1990/02/16)

夢再び?インタフェロン 超微量でエイズを抑制 ケニアでの新薬発表
抗ウイルスの働きを持つたんぱく質インタフェロンを、ふつうの用量の1万分の1以下という超微量で使う「常識破り」の試みに関心が高まっている。
ケニア医学研究所(KEMRI)が最近、エイズ治療で好成績を上げたと発表した新薬「ケムロン」は、この考え方に立ってインタフェロンを薄めて作ったものだ。かつて「夢の新薬」と騒がれたインタフェロンの夢が再び膨らむのか。今のところ、半信半疑の人が多い。症状の軽減は本当に薬効によるのか、もしそうなら、そのしくみは何か──などについて科学的な裏付けが求められている。
ケニア医学研究所に協力している林原生物化学研究所(岡山市)によると、この治療法は、もともと米国のアマリロ・セル・カルチャー社のJ・M・カミンズ博士らが研究してきた。患者にアルファ型のインタフェロンを微量ずつ飲んでもらう。体重1キロ当たり1日に、インタフェロンの単位量で2−4単位。ふつうは「5万−10万単位程度使うのが1つの目安」(大阪大微生物病研究所の栗村敬教授)なので、その数万分の1だ。
カミンズ博士らの87年末の論文では、エイズ患者1人にこの治療を試みたところ、11カ月で食欲が戻り、体重もふえて口の中のかいようが消えた。
今回のケニア医学研の発表では、アマリロ社などの協力を受け、101人の患者にケムロンでこの治療法をとった結果、「多くの患者で4週間以内に症状が消えた」という。
使い方が少ないほどよいことを示したカミンズ博士らの動物実験もある。エイズに似た免疫低下を起こすウイルスをネコに感染させ、人のアルファ型インタフェロンを飲ませた。1日0.5単位ずつだと平均約500日生きたのに、1日5単位では平均約310日、飲まないと平均約70日生きただけだった。
インタフェロンを少量で使う治療は、京都パストゥール研究所の岸田綱太郎所長らのグループが非A型B型肝炎の患者に試み、効果も出ている。「ほかの生体物質とのバランスを保ちながら、インタフェロンを補うには『少量ずつ長期』の方がよいかも知れない。副作用も防げる」と岸田さん。だが、この場合もふつうより1けた程度少なくするだけだ。
「4けた以下となると、抗ウイルスなどの働きをするには少なすぎる。もし本当なら、直接ではなく、何かの引き金として間接的に作用しているのではないか」と栗村さん。
インタフェロンは、ふつう注射で与えられる。消化酵素に分解されやすいことなどからだ。今回、「口から」というのも専門家が不思議がる点だ。
栗村さんは「インタフェロンには未知の部分が多い。最初から否定せず、ぜひ追試を」と強調、林原生物化学研の三橋正和常務も「科学的な根拠がはっきりしていないので即断できないが、インタフェロンの使い方を見直す1つのきっかけになるかも知れない」と話している。(朝日新聞 1990/02/17)

インターフェロン エイズに効果 研究成果発表会
少量を経口で症状改善 臨床試験で副作用なし
−ケニア医学研コーイチ所長−

「夢の新薬」と注目されているインターフェロン(ウイルス抑制因子)の経口投与をめぐる研究成果の発表会が、このほど岡山市で開かれ、エイズ(後天性免疫不全症候群)の治療に効果があったことなどが報告された。
インターフェロンにはさまざまなタイプがあり、アルファ型インターフェロンの錠剤を林原生物化学研究所(岡山市)が開発。ケニア医学研究所のデイビー・コーイチ所長がエイズ患者への臨床試験を行ったところ効果が認められ、世界の注目を集めたため、コーイチ所長らを招いて、成果の発表会を開いた。牛のウイルス性熱病に投与しているケニア農業研究所のA・ヤング博士、ネズミのがんを対象にしている米テキサス大学のJ・スタントン教授ら、インターフェロンの少量経口投与の研究と取り組んでいる各国の研究者が参加、最新のデータを発表し、熱心に討論を行った。
この中で注目されたのは、コーイチ所長によるエイズ患者への臨床試験の成果。それによると、エイズ発症患者38人、非発症患者2人の計40人(男25人、女15人、年齢16−58歳)を対象に行われた。体重1キロ当たり約2単位の錠剤状アルファ型インターフェロンを1日1回経口投与した。
治療前の患者は長期の下痢、発熱、呼吸器系感染症、口腔(くう)かいよう、口腔発疹(しん)、皮膚発疹、寝汗などの症状があったが、口腔かいよう、発熱、寝汗、呼吸器感染症は4週間で全員が消え、6週間後には消化器感染症、下痢、皮膚発疹も各1例を残してすべて消えた。副作用も認められなかった。
インターフェロンの少量経口投与により、エイズ患者の症状は改善されたが、ウイルスまで消えたかどうかは、今後検査しなければわからない。
インターフェロンの少量経口投与はがんや白血病などにも応用すれば、効果の有無やメカニズム解明などの研究が進むものと期待される。
これまでのインターフェロン投与は静脈、筋肉などへの注射で数百万−数千万単位が行われたが、それほど効果がなく、発熱など副作用があった。(中日新聞 1990/04/17)

「エイズ研究なまぬるい」米の研究所にデモ隊
大統領夫人も犠牲者に哀悼
【ワシントン21日新蔵特派員】エイズ(後天性免疫不全症候群)の研究がなまぬるい、とワシントン郊外の国立衛生研究所(NIH)などに21日、デモ隊が押しかけ、82人が逮捕された。前夜には、バーバラ・ブッシュ大統領夫人はエイズ犠牲者を悼むためホワイトハウスにロウソクをともした。いずれもエイズが猛威をふるう米国ならではの話題──。
日本からの研究者も多いメリーランド州ベセスダのNIHの構内に21日、約1000人のデモ隊が入り込み、「早く特効薬の開発を」と叫んだ。一部は発煙筒などをたき、騒然となったため、警察が住居侵入罪で61人を逮捕した。またNIHに近い国立アレルギー・伝染病研究所でも同じようなデモがあり、21人が逮捕された。
このデモは、ニューヨークに本拠を置くエイズ追放運動団体の「アクト・アップ」が組織した。
一方、20日夜のホワイトハウスで、2階の窓に10本のロウソクがともった。ちょうどリンカーン記念館前で、エイズ犠牲者追悼の国際キャンドル集会を開いていた約2000人の参加者にこれが伝わると、歓声が上がった。バーバラ夫人はノーコメントだったが、大統領夫人のペレス報道官は21日「夫人は追悼集会への出席を要請されていたが、あれが夫人なりの参加だったのです」と10本のロウソクの意味を明らかにした。(中日新聞 1990/05/22)

「エイズ特効薬、送って」ケニアの申し入れに頭痛める厚生・通産省
「エイズの特効薬を100万錠、至急送れ」──アフリカのケニアから日本にこんな申し入れが6日までに飛び込み、厚生・通産両省をきりきり舞いさせている。特効薬と名指しされたのはたんぱく質の一種の「インタフェロン」。日本では腎がんの症状を改善する薬として承認されているが、エイズへの効果は未確認。ケニア側は「独自の研究の結果、エイズが治った」と主張。今月27日には、大統領も出席するセレモニーまで準備して到着を待っているという。
問題のインタフェロンは、岡山県内の林原生物化学研究所が製造。国内ではがん症状の改善用注射液として承認、使用されている。このほか、同研究所は、米国の企業やケニア医学研究所(KEMRI)などと共同で、錠剤に加エして、エイズ患者への効果を調べてきた。
ケニアは、すでに「101人の患者に対してこの錠剤を使ったところ、多くの患者が4週間以内に症状が消えた」などとする研究結果を発表。国内では研究所の名前を取った「ケムロン」という名前をつけて、医薬品として承認している。
日本政府への申し入れは、東京のケニア大使館から外務省あての「口上書」の形で、正式の外交ルートで伝えられた。ケニア側は、製造元の日本からの輸出に関して、日本政府の特段の配慮を求めている。
日本からの医薬品の輸出に際しては、厚生大臣と通産大臣の承認が必要とされ、承認申請には薬の名前、成分などにあわせ効果・効能を示す必要がある。
しかし、インタフェロンはエイズに対して、国内では全く効果が確認されていない。国内で効果が確認されないものを、政府が何も責任を持たないままで、他国に薬として売りさばいては「金もうけ万能」との批判を呼ぶ恐れもある。その一方で、せっかく効果が見つかったとされた薬が、製造国の妨害で輸入出来ずにみすみす犠牲者を増やした、とあとで非難される可能性もある。
これまでの研究段階では、輸出量がごく少なかったので、同法の規制を受けなかったが、100万錠という本格的な輸出には、はっきりした法手続きを避けて通れなくなってしまった。
このインタフェロンの錠剤化を引き受けることが専門紙で報じられた製薬会社の株価は、即日150円上昇。
厚生省は「外交上の要請を受けたこともあわせ、慎重に検討する」と説明しているが、ケニア側の「7月第1週までに発送していただければありがたい」という希望は、かなわなかった。(朝日新聞 1990/07/07)

エイズ新薬をケニアが認可 副作用少なく安い
日本の研究所など共同開発

【ナイロビ26日共同】ケニアの中央医学研究所が日本などの研究機関と共同開発したエイズ(後天性免疫不全症候群)の新薬「ケムロン」が27日、ケニア政府から正式に認可、販売されることになった。同薬の認可は世界で初めて。
現在、エイズ治療薬として世界で認められているのはAZT(アジドチミジン)だけ。「ケムロン」の本体は、抗ウイルス剤のヒト天然型アルファ・インターフェロン。飲みやすくして低濃度を経口投与するのが特徴。
副作用が少ないとされ、販売価格もAZTに比べ格段に安いため今後、エイズ患者に広く使用されることになりそうだ。
ケニア政府は「アフリカで開発された画期的な研究成果」として支援、27日にはナイロビのケニヤッタ国際会議場でモイ大統領が「ケムロン」の発売を発表、世界からエイズ研究者らを招き、エイズ・シンポを開催する。
共同開発した林原生物化学研究所(岡山市)と、米国のアマリロ・セル・カルチャー社からも代表が出席する。
ケニア中央医学研究所のコーチ所長がケニアの雑誌などでこれまでに発表したところによると、ヒト天然型アルファ・インターフェロンをごく少量(通常の数万分の1)101人のエイズ患者に経口投与した結果「ほとんどの患者で4週間以内に症状が消えた」という。また患者の10%でウイルス血液検査結果が陰性になったことも明らかにされた。(中日新聞 1990/07/27)

エイズに劇的効果?「ケニア方式」追試へ
インターフェロン極微量投与 患者ら20人対象に

「極微量の日本製インターフェロンがエイズに劇的に効いた」とのケニア医学研究所(ナイロビ)の発表が様々な反響を呼んでいるが、わが国でも近く臨床試験が行われる。厚生省のHIV感染者発症予防・治療研究班(班長・山田兼雄・聖マリアンナ医大教授)のメンバーを中心に、ケニアと同じ方式でテストする。ケニアのデータには首をかしげる専門家が多いものの、「話半分でも大変なこと」とひそかに期待する声もある。
インターフェロン(IFN)はエイズにはあまり効果はないとされているが、ケニア医学研究所長のデイビー・コーチ博士の成績は驚異的。論文によると、40人のエイズ患者とエイズ・ウイルス感染者に試みたところ、体重減少、発熱、下痢、日和見感染などの症状がほとんどなくなり、8人はエイズウイルスの抗体すら消えたという。
投与方法が“常識外れ”で、1回の投与量がわずか100−150単位。普通、IFNは数百万単位を注射するから、ほぼ1万分の1。しかも注射ではなく、マルトースという糖にIFNを混ぜ、飲み薬として与える。どういうわけか「日本製の天然型」がいいとされ、なぜ効くかについては、コーチ博士自身にも「不明」とか。
今回の臨床試験は、これが本当かどうかを確認しようというもので、林原生物化学研究所(本社・岡山市)が生産した天然型のヒトIFN(アルファ型)を使う。臨床試験そのものは持田製薬(本社・東京)の治験研究として、厚生省HIV感染者発症予防・治療研究班の有志が行う。対象は全国8カ所の大学、病院の約20人のエイズ患者、または感染者。1日1回、6週間投与して、来年1月末までに結果を出すが、多少でも効果が見られた場合には、さらに大規模な臨床試験も考えるという。
今年2月、コーチ博士らのデータが公表されると、米国などでは多数のエイズ患者が“少量経口IFN療法”に飛び付き、林原生物化学研究所にも世界3、40カ国から問い合わせが殺到。9月には世界保健機関(WHO)が専門家会議を招集し、混乱の回避に乗り出すなど、ちょっとした騒ぎになっている。(読売新聞 1990/11/12)

エイズウイルスの増殖 逆転写酵素抗体で抑制
エイズウイルスが持つ逆転写酵素に反応して人体内に作られる抗体がウイルスの増殖を阻止し、発病を抑える手がかりとなる可能性があることを、大阪医科大耳鼻咽喉(いんこう)科の高崎智彦医師(33)らが見つけた。
エイズに感染している人の70%は、逆転写酵素の働きを抑える抗体(阻止抗体)を血中に持っている。高崎さんたちは、まず米国のエイズ感染者の血液から阻止抗体を精製した。人間の健康なリンパ球にエイズウイルスを感染させ、阻止抗体を加えたところ、リンパ球内のウイルス増殖は抗体がない時の3分の1に抑えられた。
高崎さんは「普段は抗体が血中からリンパ球に入り込むことはないが、ウイルスと一緒なら入る可能性も考えられる。感染者に抗体を使えば発病を抑える方法につながるかもしれない」と話す。
今後は抗体が増殖を抑える仕組みや、抗体の有無と発病率の関係などを詳しく調べることにしている。

<逆転写酵素> 大半の生物の遺伝子はDNA(デオキシリボ核酸)だが、エイズウイルスなどレトロウイルスと呼ばれるグループの遺伝子はRNA(リボ核酸)で、RNAをもとにDNAを合成する逆転写酵素を持っている。エイズウイルスはリンパ球に侵入すると、この逆転写酵素を使って自分白身のRNAからDNAを合成し、そのDNAから元と同じRNAを作ることによって増える。(朝日新聞 1990/12/12)

エイズに効果 インターフェロンアルファ型 欧米など学者報告
世界的に広まる難病のエイズ(後天性免疫不全症候群)に対して、抗ウイルス作用をもつ薬剤「インターフェロン」を飲ませると、症状が改善するという報告が、このほど大阪市内で開かれたエイズ国際フォーラム(エイズ予防財団主催)で欧米やアフリカの研究者からあった。「新しい治療法になるのでは」と注目されている。
インターフェロンにはいくつもの種類があるが、エイズ患者に効果があったと報告されているのはアルファ型という種類。
国際フォーラムでは、米国・アマリロ・セル・カルチャ社のJ・カミンズ博士がケニア医学研究所と共同で、ケニアの患者に日本製のインターフェロンを飲ませたところ、体重が増えるなどの効果があったと説明。「この薬剤でこの病気の症状は改善できるが、特効薬ではないと思う」と補足していた。
また、オランダ・アムステルダム大で追試しているヘンク・レーン博士も「昨年8月から5カ月にわたり、85人の患者にフィンランド製のアルファ型インターフェロンを飲ませたが、体重増加や食欲回復の例が目立った」という。
ケニア医学研究所のM・アブドラ博士は、ケニアでは現在、患者を2群に分けて、薬の効き目を調べる「二重盲検法」という方法で、効果を調べていると報告した。米国、カナダ、タイなど数カ国でも「二重盲検法」による研究が続けられており、どの程度、この薬剤が効果があるのかの結論は年内にも出そうといっている。
フォーラム主催の中心になった栗村敬・大阪大微生物病研究所教授は「これだけ効いているという報告があるわけだから、この薬剤の患者への応用を、日本でも真剣に考えてもいいのでないかと思う」と語っている。(朝日新聞 1991/02/16)

抗エイズ薬、臨床試験へ WHO アフリカで
WHO(世界保健機関)は4月から日米企業が共同開発した抗エイズ(後天性免疫不全症候群)薬の臨床試験を実施する。ウガンダ、ジンバブエ、ザンビアの3カ国でエイズ患者1200人を対象に効果を調べる。
調査対象の薬は米国のアマリロ・セル・カルチャー社と林原生物化学研究所(本社岡山市)、ケニア医学研究所が開発したヒト天然型インターフェロンα。ケニアではすでに「ケムロン」という薬名で販売されている。患者を同インターフェロンを与えるグループと偽薬を与えるグループに分けて薬の効き目を比較する。調査期間は1年間の予定。
インターフェロンαはケニアでエイズ治療に好成績を上げたとして各国が注目しているが、効能が未確認のためWHOは本格的に調査することにした。インターフェロンαに続き、夏にはエーザイの殺精薬「メンフェゴール」の臨床試験も予定している。(日経産業新聞 1991/03/27)

エイズウイルス論争が決着 第一発見者は仏研究者
米側“過失”認める 『培養器に仏のもの混入』

【ワシントン30日共同】エイズの原因となるウイルスを最初に発見したのはフランスか米国か。6年以上も続いてきた論争について米国立衛生研究所(NIH)の研究者が30日発売された英科学誌「ネイチャー」に投稿、発見したと発表してきたウイルスは、フランスから確認試験のため送られたウイルスだったことを認め、論争は事実上決着した。エイズウイルスの発見はノーベル賞が確実視されており、この問題は科学史上最悪のスキャンダルとして今後、多方面に影響を与えそうだ。

発見を否定したのは、NIHがん研究所腫瘍(しゅよう)細胞生物部長のロバート・ギャロ博士。
ギャロ博士は1984年5月「エイズ患者の末梢(まっしょう)血からウイルスを分離した」と発表した。しかしフランス国立パスツール研究所のリュック・モンタニエ博士らが1年前の83年5月に発表したウイルスと遺伝子構造が98%以上も同じであり、研究室内には当時モンタニエ博士から追試のために送られてきたウイルスがあったことから、フランス側は第一発見者はモンタニエ博士だとして提訴し、NIHも調査に乗り出していた。
2つのウイルスは別のものだと主張してきたギャロ博士は、ネイチャー誌上で初めて「分離したと思っていたウイルスは、ウイルス培養器の中でフランスのウイルスが混入したものだった」と過失を認めた。
ギャロ博士の疑惑については米議会も重大な関心を寄せているが、本人が発見を否定したことから、今後は過失か故意の盗用かに調査の焦点が移ることになるとみられる。
エイズ検査試薬などの特許権料として、製薬業者からNIHに500万−600万ドル(約7億−8億円)、ギャロ博士らに10万ドル(約1400万円)が毎年振り込まれており、この面での責任問題も出てきそうだ。(中日新聞 1991/05/31)

エイズワクチンに有効の証明 T4細胞数の減少ストップ
米チームが臨床試験で確認

【ワシントン12日共同】遺伝子組み換え技術で作った「gp160」と呼ばれるエイズワクチンはエイズ患者延命に有効とみられることがエイズウイルス感染者に対する米チームの臨床試験で分かり、13日付の米医学誌ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに報告された。
臨床試験をしたのはウォルターリード米陸軍研究所のロバート・レッドフィールド博士ら。エイズウイルスは体の免疫反応で中心的役割をしているT4細胞と呼ばれるリンパ球に感染し同細胞を破壊することで体の免疫機能を失わせる。
gp160は、もともとエイズウイルスの外皮タンパクの1つだが、米ベンチャー企業のマイクロジェシス社(コロラド州)が遺伝子工学を使って合成し、ワクチンとした。博士らは30人の感染者を2つのグループに分け、gp160を6カ月間に6回、4カ月間に3回それぞれ投与し、約2年かけてT4細胞数の変化を調べた。
その結果、6回投与を受けたグループは15人中14人までが、T4細胞数の減少が止まるか増加したことが分かった。3回投与のグループでもT4細胞の減少が止まった人は15人中7人いたという。
gp160はポリオワクチンの開発者として有名なソーク博士が1987年に開発したものだが、これまでは効果がはっきりせず評価が低かった。(中日新聞 1991/06/13)

エイズにお茶が効く 『ウイルス増殖防止』
愛知県がんセンター実験

日本茶や紅茶の渋みのもと・タンニンに、エイズ(後天性免疫不全症候群)ウイルスの増殖を防ぐ効果のあることが、愛知県がんセンター研究所の小野克彦ウイルス部第2研究室長の研究で分かった。まだ試験管内での実験だが、リンパ球への副作用を解消できれば、エイズの“特効薬”となる可能性を秘めている。研究成果は27日、静岡市内で開く国際茶研究シンポジウムで発表される。
エイズウイルスの増殖を防ぐ作用があるのは、日本茶の中に含まれているカテキン。紅茶の中のテアフラビンという物質。いずれもタンニンの成分の1つで、化学構造はよく似ている。
小野室長によると、エイズウイルスがリンパ球に感染する過程で、逆転写酵素の助けを借りてウイルスのリボ核酸(RNA)がデオキシリボ核酸(DNA)に変わるが、カテキンなど両物質は逆転写酵素の働きを強く阻害。このため、核酸の転換が行われずウイルスは増殖の道を断たれる。逆転写酵素の働きを阻害する力は、テアフラビンよりカテキンの方が強いという。
ただ問題なのは、両物質とも人体の正常細胞に対しても害を及ぼすこと。この副作用を克服できれば、臨床への応用も可能という。
小野室長がお茶や紅茶の成分に着目したのは、エイズに効き目があるとされる漢方薬「小柴胡湯」の成分の1つに化学構造が似ていることから。実験結果では、逆転写酵素への阻害力は、カテキンやテアフラビンの方が「小柴胡湯」の成分より、10倍から100倍も強いという。(中日新聞 1991/08/26)

お茶が効きます エイズ予防 愛知で研究成果
お茶を飲めば、エイズにかかりにくくなる? 日本茶に多く含まれているタンニンに、エイズウイルスの増殖を防ぐ効果があるという研発が27日、静岡県で開かれている国際茶研究シンポジウムで発表された。愛知県がんセンターの小野克彦ウイルス部室長らの研究報告で、副作用を克服できれば、エイズの治療薬になる可能性もあるという。
エイズウイルスはヒトの血液中のリンパ球に感染。ウイルスのRNA(リボ核酸)の持つ情報がDNA(デオキシリボ核酸)に移される化学反応を繰り返して増殖し、免疫を受け持つリンパ球を破壊していく。
小野室長らはこの化学反応を受け持つ逆転写酵素が日本茶のタンニンの中のカテキンによって強く阻害されることを発見。現在エイズ治療薬として使われているAZT(アジドチミジン)の20−30倍もの阻害力があることを突き止めた。
試験管の中での培養細胞実験では、お茶から抽出したカテキンの持つ毒性が作用してヒトの細胞自体が死んでしまったが、この副作用さえ克服できれば、臨床試験も可能という。
小野室長は「熱湯で出した緑茶にはカテキンが多く含まれており、まだ研究は第一段階だが、お茶を飲むことが、エイズの感染予防になることは確か」と話している。(朝日新聞 1991/08/28)

抗エイズウイルス物質発見 明治乳業が世界初めて
明治乳業は15日、エイズウイルスに感染した細胞を殺す効果を持つ抗HIV(エイズウイルス)物質を発見したと発表した。「HIV感染細胞を殺傷する効果が確認されたのは世界で初めて」という。
発見された抗HIV物質「M−HDA」は、エイズウイルスに感染した細胞を破壊する作用を持つほか、同ウイルスに対する感染阻止や増殖抑制の作用も併せ持つとしている。
M−HDAはヒトの血液から分離したアルブミンと、動物の血液から分離したヘミンなどを複合した。毒性や副作用は現在のところ確認されていないという。特許は既に6月、特許庁に出願しており、来春には米食品医薬品局(FDA)と臨床実験準備の折衝に入る。(中日新聞 1991/10/16)

天然花色素に制がん・抗エイズ効果? 遺伝子に働く酵素を抑制
愛知県がんセンター 小野氏らが研究発表

レモンやブドウなど多くの植物に含まれる天然の花色素「フラボノイド」が、細胞増殖の際など、遺伝子が組み換わる時に働く酵素の作用を抑えることが、愛知県がんセンター研究所の小野克彦・ウイルス部室長と、ロンドン大医学部のマーク・フィッシャー講師らの研究で分かった。名古屋で開かれている「化学療法におけるDNAトポイソメラーゼ会議・国際シンポジウム」で発表された。小野室長は、「うまく使えば、人体に害の少ない抗がん剤やエイズ薬の開発につながるのでは」と期待している。
フラボノイドは、かんきつ類やトマト、タマネギといったごく一般的な植物に含まれている。例えば、緑茶に含まれるフラボノイドは、消臭作用があるとして、ガムなどにも入れられたりしている。
小野室長は、エイズの薬などとしても使われている漢方薬「小柴胡湯(しょうさいことう)」の有効成分を探すうちに、フラボノイドが特殊なエイズウイルスの遺伝子が人間の普通の遺伝子の型になって増えるのを抑える効果に気が付いた。
遺伝子に働く細かな仕組みを調べていくと、細胞の核の中で遺伝子の鎖を切ったりつなげたりして、立体的な形状を変える働きをしている酵素の機能をダメにし、酵素が遺伝子を切ってもつなげなくしてしまう作用があることが分かった。この作用のため、がん細胞を、フラボノイドを加えて培養したところ、がん細胞の増え方が減ることも分かった。
マーク・フィッシャー講師は、「まだ基礎実験の段階だが、改良することで、新しいタイプの抗がん剤が開発できるかもしれない」と話している。(朝日新聞 1991/11/20)

エイズ発症抑止、骨髄移植が効果!? 京大ウイルス研究所
エイズに感染したマウスに、エイズに対する抵抗力を持つマウスの骨髄を移植して発病を抑えられることが、京都大ウイルス研究所の石本秋稔教授らの研究で確認された。
マウスのエイズウイルスは、人間のエイズと同様に免疫機構の中心となる白血球を破壊する。発病すると免疫力が落ちて肺炎やがんにかかるなど、人間のエイズとそっくりの症状が起こるが、人間には感染しない。
普通のマウスにウイルスを注射すると、5カ月以内に100%が発病し、1、2カ月で死んでしまう。しかし、「Fv4」という遺伝子を持つマウスは、感染しても決して発病しないことが知られている。Fv4遺伝子がつくる物質が、白血球の表面にくっついて、ウイルスが白血球に入り込むのを邪魔するらしいが、仕組みは分かっていない。
そこで、エイズに感染させたマウス24匹に放射線を当てて骨髄細胞を壊したあと、Fv4遺伝子を持つマウスの骨髄を移植した。20匹は感染から5カ月たっても症状は現れず、発病を抑えることができた。残りの4匹は5カ月以内に発病して死んだ。放射線の量が不十分で、エイズに弱い骨髄細胞が残っていたためらしい。
石本教授は「人間でも骨髄細胞を取り出し、遺伝子工学の手法でエイズヘの抵抗力を持たせたあと、本人の体に戻し、発病を防ぐ遺伝子治療が将来は可能になると思う」と話している。

栗村敬・大阪大微生物病研究所教授(感染病理学)の話 マウスの実験は基礎的なステップの1つに過ぎず、人間の骨髄細胞を遺伝子工学で処理する技術が確立するまでには時間がかかるだろう。しかし、切り札となる治療薬がない現時点では意義のある研究だ。(朝日新聞 1991/12/04)

インターフェロン効き目確認できず 奈良県立医大など
抗ウイルス作用を持つアルファ型インターフェロンを飲めば、エイズ患者の症状が軽くなると、米国のアマリロ・セル・カルチャー社のカミンズ博士らが87年に報告した。以来、ケニア、米国、タイなどで研究が続けられているが、効果は確認されていない。
奈良県立医大、大阪大微生物病研究所でつくる研究グループは、血友病のための血液製剤でエイズに感染した6人の日本人男性にインターフェロンを飲んでもらった。ところが、8カ月間たっても、リンパ球の数などに変化は見られず、副作用もない代わり、はっきりした効果を確かめることができなかった。研究グループは「感染しているものの、症状が出ていない人たちなので、効果が表れにくいと考えられる」として研究を続ける。(朝日新聞 1991/12/04)

水痘の治療薬がエイズにも有効 死亡率半減の実験結果
英の学者が研究

【ロンドン29日=共同】29日の英日曜紙サンデー・タイムズによると、ヘルペスや水痘などの治療に広く使われていた抗ウイルス薬のアシクロビルが、エイズの治療にも効果があり、この薬の使用でエイズの死亡率が半減したことが、英国の医学者らの研究で明らかになった。
エイズ治療薬としては、現在主にAZTが使われているが、英国、ドイツ、オーストラリアの3カ国の医者が、300人のエイズ患者にAZTとアシクロビルを使う臨床実験をしたところ、AZTだけ与えられた患者は1年間のうちに20%が死亡した。
これに対し、AZTとアシクロビル両方を与えられた患者の同期間の死亡率は10%だった。
実験に参加した医師の1人であるロンドンのロイヤルフリー病院のポール・グリフィス博士は、5年前のAZTの登場以来、最も重要な発見だといっている。(朝日新聞 1991/12/30)

エイズ細胞を一斉攻撃 特殊抗体使う療法開発
変身に対応できれば発病阻止も 名市大の東助教授
体内に侵入したウイルスなどの外敵をやっつける血液中のリンパ球の一種であるキラーT細胞は、1億以上の種類に分かれて、それぞれのウイルスなどに対し働いているが、特殊抗体を加えることにより、エイズに感染した細胞を一斉攻撃する新治療法を、名古屋市立大学医学部の東隆親・助教授(免疫学)が開発した。エイズウイルスの増殖を抑える従来の化学療法と異なり、体内に潜むエイズに感染した細胞を絶滅できる可能性もある。名古屋市で開く「国際バイオシンポジウム92名古屋」で24日発表する。
体内に侵入したウイルスなどの外敵を迎え撃つ抗体には、外敵を捕まえる「手」が2本ある。だが、普通は両方とも特定の一種類の敵にしか反応できない。これとは別にキラーT細胞が外敵を破壊するが、1億以上に分かれて働くため、特定の外敵に向かう数は非常に限られている。
新しい治療法は(1)両手がそれぞれ別のものを捕まえられるような「両手利き」の特殊抗体を人工合成する(2)この特殊抗体をエイズ感染細胞を破壊するキラーT細胞にくっつけ、残った片手でエイズ感染細胞を捕まえさせることにより、この抗体とくっついたキラーT細胞すべてを、エイズ感染細胞を専門に襲う細胞に変えてしまおうという仕組み。理論的には、特殊抗体を増やせば増やすほど、エイズ攻撃にキラーT細胞を動員できる。
容器内でエイズ感染細胞とキラーT細胞を混ぜ、1CC当たり100万分の1グラムの特殊抗体を加えたところ、約3分の1のエイズ感染細胞が破壊された。これは特殊抗体を混ぜない場合に比べ5倍以上の破壊率だった。
エイズ以外ではすでに活用が試みられている。東助教授は順天堂大との共同研究で、3年生存率が約20%という悪性の脳腫蕩(しゅよう)患者27人に対し、この特殊抗体を使った同様な治療を試みたところ、3年生存率が約50%に上がったという。
しかし、エイズウイルスは変わり身が早く、抗体が感染細胞を見分けられなくなるため、この療法でも、それを克服する方法が見つかっていない。
東助教授は「通常、血液1CC中に100分の1グラムほどある抗体量に比べ、この治療に使う特殊抗体は極微量。この方法なら、血液中のエイズ感染細胞をすべて破壊できる。エイズウイルスの変化を追う方法が見つかれば、エイズ発病を完全に抑えられるかもしれない」と期待している。

こうした療法は必要

愛知県がんセンター研究所の小野克彦ウイルス室長の話 非常にユニークな方法だ。エイズは、従来の化学療法では完全な治療は困難で、こういった免疫療法の助けが必要と考えられている。(朝日新聞 1992/01/12)

エイズ感染予防に成功 チンパンジー実験で
熊大グループ 抗体使って初
エイズウイルスに対する抗体を使ってチンパンジーでエイズ感染を予防する実験に熊本大学、化学及血清療法研究所(本所・熊本市)と米国メルク・シャープ・アンド・ドーム研究所などのグループが成功し、20日発行の薬科学誌『ネイチャー』に発表する。ウイルスが体内に入った直後に抗体を注射しても有効で、医療関係者が誤ってウイルスが付着した注射針を自分に刺してしまう事故での感染予防に役立つとみられている。
グループは熊本大学医学部輸血部の松下修三助手、化血研菊池研究所の時吉幸男室長、江田康幸・上級研究員ら。ウイルスの外側にある特定部分に結合するモノクローナル抗体を作って、チンパンジー2匹のうち1匹に注射し、24時間後に2匹にウイルスを注射した。抗体を使わなかった方は感染したが、使った方は1年たっても体内にエイズウイルスが存在せず、感染予防に成功した。また、別のチンパンジーでウイルスを注射した10分後から抗体を使ったが、これでも感染を予防できた。(朝日新聞 1992/02/20)

エイズウイルス遺伝子を攻撃 リボザイム“多弾化”
微工研が新手法
ハサミのような役目をする「リボザイム」と呼ばれるリボ核酸(RNA)を組み合わせ、エイズウイルスのRNA遺伝子を4カ所で切断してしまう方法を、エ業技術院微生物工業技術研究所の多比良和誠主任研究官らのグループが開発した。まだ実験段階だが、副作用がなく、高い確率でエイズウイルスをやっつけることができることから、遺伝子治療が可能になればエイズ治療の武器のひとつになりそうだ。
リボザイムとはリボ核酸と、酵素(エンザイム)の合成語で、1981年に発見された。RNAにくっついて特定部分を切断するため、遺伝子としてRNAを持っているエイズウイルスをやっつけることができる。
しかし、エイズウイルスは遺伝子が変化しやすく、攻撃目標を決めてもかわされやすい。このため、複数の個所をアタックするリボザイムが考えられたが、別々の場所を攻撃するはずのリボザイムが一緒に行動してしまうことが多く、効果が出なかった。
多比良さんらはリボザイムとリボザイムとの間に、自分自身の所で切れるリボザイムを合成して組み込み、細胞の中で独立して働かせることを考案。リボザイムは4つに分かれて、エイズウイルスのRNAの中であまり変化が起きない4カ所をアタックする。うち1カ所でも切断できればウイルスをやっつけられる。
リボザイムは遺伝子組み換え技術を使って増殖できる。遺伝子治療のガイドラインや社会的な同意が得られれば、エイズの新たな治療法になり得るのでは、と多比良さんらはみている。(朝日新聞 1992/03/31)

「劇症」エイズ確認 首都圏の20代男性 感染後8カ月で死亡
感染してから急速に病状が悪化するエイズウイルスによって首都圏の20代の男性が死亡していたと、東大医科学研究所感染症研究部の島田馨教授らのグループが16日から東京で開かれる日本感染症学会で発表する。普通のエイズは感染後数年から十数年は無症状の期間があるが、この患者は感染後8カ月で死亡した。
これは普通より病原性の強いエイズウイルスによる感染とみられ、このような例はフランス、オランダなどでは報告されているが日本では初めて。
関係者によると、この患者は昨年1月に風邪のような症状で受診、7月下旬から呼吸困難になって入院した。8月にエイズと診断され、9月にカリニ肺炎で死亡した。感染時期は昨年1月と推定されている。
島田教授は、「これまでに分離したウイルスの中で最もリンパ球を殺す力が強く、増殖速度も普通の3倍もあった。患者がどこで感染してきたかは分からない」と話している。(朝日新聞 1992/04/09)

Kemron's secret: it doesn't work
Washington
Ever since a Kenyan researcher took the results of an uncontrolled clinical trial to mean that a dilute oral alpha interferon solution (known as Kemron) could halt AIDS, rumours of an African AIDS cure' have run rampant. Now the US National Institutes of Health's AIDS Research Advisory Committee (ARAC) has examined preliminary results from 13 independent studies and come to an unsurprising result: Kemron does not work.
In a statement to be released this week, the ARAC says that no independent trials to date have replicated the Kenyan results. The committee strongly recommends that patients now taking Kemron seek alternatives. At its 31 March meeting, the committee examined preliminary data from a World Health Organization review of 13 trials of the drug. The trials failed to confirm the seroconversion and increased CD4 cell counts that the researchers from Kenya Medical Research Institute had originally reported.
None of this, however, is likely to stop the rumours and conspiracy theories. Last month a science adviser for Jerry Brown, the US presidential candidate, said that investigating Kemron would be one of Brown's priorities. And the Gay Men's Health Crisis (GMHC) in New York says it still gets "an amazing" amount of inquiries about the drug.
The African-American press has alleged that negative reports from clinical trials are a plot to suppress the drug, and Kemron is still sold on the US black market and Kenya.
Christopher Anderson (NATURE, VOL 356, 23 APRIL 1992)

エイズの“薬”に注目
16日の「ギミア・ぶれいく」(CBC)は、世界で初めて、エイズ治療に成功したという「エイズを治す病院」を取り上げていた。治療法もなく、死亡率の高い病気として恐れられているエイズ。それが、果たして治るというのか。「恐れるな、エイズは治る」という触れ込みに、私は半信半疑でその成り行きを見守った。
完全治療に成功したというのは、アフリカのガーナの医師で、ガーナ奥地の村の酋(しゅう)長でもある。これまで他の取材に応じなかったといい、番組では世界初の取材といきまいていた。
エイズ患者の病棟で患者にインタビューしていたが、確かに以前と比べて随分よくなっているのが分かった。
しかし、薬草が入った治療薬を日本に持ち帰り、東京医科歯科大学の全面協力で化学分析していたが、データでは抗ウイルス成分は発見できなかった。
だが、それはそれとして、未知の可能性を秘めた薬に何となくひかれた。(ふ)(中日新聞 1992/06/18 ※江原注: TBS系「ギミアぶれいく」で取り上げられた特番「緊急取材!世界初 薬草でエイズを治す男」についての詳細は「エイズ=遺伝子兵器」の暴露を参照)

感染力ないエイズウイルス 成熟しない変種発見
大阪医大教授ら 逆転写酵素も働かず

エイズウイルスの中に、感染力のない「変わり種」がいることを、中井益代・大阪医大教授と生田和良・北海道大免疫科学研究所教授らが見つけた。「この変種を調べれば、エイズウイルスの感染力を失わせる方法が見つかるかもしれない」と中井教授。25日、京都市で開かれる日本炎症学会で発表する。
エイズウイルスは直径1万分の1ミリほどの球形。リンパ球に入り込んで増え、飛び出して別のリンパ球に感染する。顕微鏡で観察すると、リンパ球を出た直後はドーナツ型をしているのが多く、それが数日後に成熟、遺伝情報を担うRNA(リボ核酸)を包むたんぱく質が中心部に姿を現す。
中井教授らは、ドーナツ型のままで、成熟しないウイルスだけを作るリンパ球をより分けた。このリンパ球から出てきたウイルスは、他のリンパ球に感染する力がなかった。
普通のウイルスは、ドーナツ型のたんぱく質が酵素で切断され、ウイルスの殻やRNAを包むたんぱく質が作られるが、感染力のないウイルスは、酵素が少ないなどの理由で、この切断ができないらしい。また、感染に欠かせないRNAからDNA(デオキシリボ核酸)をつくる逆転写酵素も働いていなかったという。(朝日新聞 1992/06/24)

エイズウイルス増殖 人間の遺伝子が促進
潜伏期から発病 過程の解明に道 名大の松本教授ら発見

人間にはエイズウイルスの増殖を促進する遺伝子があることを松本邦弘名大理学部教授、谷口維紹大阪大細胞工学センター教授らの研究チームが発見、25日発行の英科学誌「ネイチャー」に発表した。
エイズウイルスは人間の細胞に感染すると、tat(タット)と呼ばれる増殖調節遺伝子が働き、増殖を始める。しかし、tat単独では活動が弱い。このため人間の細胞に、この遺伝子の働きを活発化させる機構があると推定されていた。これまでにtatの働きを抑制する遺伝子TBP1は見つかっているが、活発化させる遺伝子は未発見だった。
研究チームが人間の遺伝子を研究している際、TBP1とよく似た遺伝子MSS1を見つけ、調べたところ、tatの働きを活発化させることが分かった。またエイズウイルスが感染するTリンパ球細胞にMSS1が多かった。
今回の発見は、エイズウイルスが潜伏期から増殖へと進む過程の解明に役立ちそうだ。MSS1は人間の細胞にとっても必要な遺伝子なので、将来、人間にとっては十分だが、エイズウイルスが増殖するのには不足するような効果のある薬剤が開発できれば、発病を予防することが可能になる。
日本の研究チームと協力関係にある米国の研究チームは同じ「ネイチャー」に、酵母菌にもMSS1とよく似た遺伝子があることを発表した。
両者の遺伝子の配列は約40%という極めて高い割合で共通していた。
この遺伝子配列を調べたのは両研究チームの研究成果で、これにより、酵母菌から人間まで共通する重要な遺伝子のグループがあることが明らかにされた。(中日新聞 1992/06/25)

病原ウイルス発見のモンタニエ博士が来日し講演
エイズ発病に「補助因子」説 マイコプラズマに状況証拠
抗生物質投与で抑止の可能性も
エイズウイルス(HIV)を発見した仏パスツール研究所のリュック・モンタニエ博士(59)がこのほど来日、京大ウイルス研究所のセミナーなどでエイズ発病の仕組みについて講演した。博士は最近の研究データを基に、マイコプラズマと呼ばれる微生物が発病の補助因子である可能性が高いと述べ、「マイコプラズマに効く抗生物質の投与で、HIV感染者の発病を抑えることができるかもしれない」との考えを示した。
HIVは、免疫機構のかなめであるヘルパーT細胞に感染。数年間の潜伏期を経て増殖を始め、周囲のT細胞を軒並み死滅させる。その結果、免疫機構が働かなくなって発病する。しかも、逆転写酵素を使って自分の遺伝情報を宿主の遺伝子DNAに組み込んでしまうため、いったん感染すると「ウイルスのもと」を取り除くことができない。
HIV感染からエイズ発病までの仕組みには未解明の点が多く、モンタニエ博士らのグループは、エイズ患者が必ず特定のマイコプラズマにも感染していることに着目し、発病との関係を調べている。
マイコプラズマは、バクテリアとウイルスの中間に位置する細胞壁を持たない下等な微生物で、数十種類が知られている。ヒトに肺炎や関節炎を起こす一部の種類を除き、病原性はないとされている。
エイズ患者からみつかるのはこのうち3種類。これらのマイコプラズマは健常者に感染していることもあり、普通は細胞の表面に付著している。ところが、エイズ患者に限り、マイコプラズマはT細胞の中に入り込んでいるという。
こうしたデータから、モンタニエ博士は「状況証拠の段階だが、マイコプラズマはエイズ発病に深い関係があると考えられる」と強調。「主因子であるHIVに感染しただけでは病気にはならず、マイコプラズマが発病を促進しているのではないか。HIV感染直後からマイコプラズマに効く抗生物質を使えば、耐性獲得の問題はあるが、発病を防げるかもしれない」との考えを示した。
講演では、さらにエイズの起源にも言及。「HIVはアフリカ大陸に以前から存在していたが、病気としてのエイズは1980年代に入って、隣接するヨーロッパではなくアメリカから急速に広まった。抗生物質を多用するアメリカでマイコプラズマの変異が進み、そのころ、発病の補助因子となる種類のマイコプラズマが生まれたからではないか」と、エイズ研究第一人者のユニークな視点を披露した。
モンタニエ博士は1983年5月、軽症のエイズ患者からウイルスを分離。その後、米国立がん研究所のロバート・ギャロ博士も第一発見者だと名乗りを上げたことから抗体検査の特許権も絡んで米、仏政府を巻き込んだ論争となり、盗用疑惑まで浮上した。学界では現在、モンタニエ博士を第一発見者とする判断に固まりつつあり、本人も「ギャロ博士のウイルスが私の発見したウイルスと同じものだったことは、科学的にも明らか」と余裕の表情を見せていた。
畑中正一京大ウイルス研究所長はモンタニエ博士の補助因子説について「仮説の段階ではあるが、興味深いデータだ。マイコプラズマのような補助因子がはっきりすれば、HIV感染者の発病予防につながるだろう」と話している。(中日新聞 1992/07/14)

エイズ抑える新物質
エイズの進行を防ぐと期待される新しい物質MRCPを見つけた、と米ノースウェスタン大のR・マーフィ博士らのグループが発表した。人がウイルスに感染したときにできる血清たんぱく質を一部改造したもので、本来は制がん剤や関節炎の治療薬として開発中だった。ヒト細胞の試験管内実験をした国立がん研究所は、この物質がエイズ感染をほぼ完全に防ぐことを確認した。(ロイター)(朝日新聞 1992/07/21)

エイズウイルス 2つの型を発見 米研究者が会議で発表
【ブリュッセル22日共同】米疾病対策センターの研究者は22日、アムステルダムで開かれている国際エイズ会議で「エイズを引き起こすヒト免疫不全ウイルスにA型とB型が存在することを突き止めた」と発表した。
エイズ感染が特に急速に広がっているタイの患者から見つかったもので、A型は主に性行為で、B型は麻薬類の静脈注射を通じて感染するという。タイの調査では、性行為を通じたエイズ感染者の86%がA型ウイルスに感染、麻薬常習の感染者の76%がB型だという。研究所によると、この2つの型は伝染の仕方で生物学的相違があり、この発見はエイズ対策面で重要とみられる。(中日新聞 1992/07/23)

免疫低下の『原因不明エイズ』 米で新ウイルスを発見
カリフォルニア大
【ワシントン22日共同】これまで知られているエイズウイルス(HIV)と全く異なるタイプで、カリニ肺炎などエイズと同じ症状を引き起こしている可能性の強い新ウイルスを、米カリフォルニア大アーバイン校の研究者が発見、8月15日付の全米科学アカデミー紀要に発表する。
HIVの姿が見えない「原因不明エイズ」は医学界で大きな議論となっているが、この発見はなぞを解く手掛かりとなりそうだ。
発見したのは同大学免疫学教室のスディア・グプタ教授ら。このウイルスは、免疫が極端に落ちた患者だけがかかるカリニ肺炎を2年前に発症した女性患者(66)と、現在は症状の出ていないその娘(38)の2人から発見された。
2人とも白血球T4リンパ球が減少するエイズと全く同様の症状を起こしていたが、血液中からはこれまで報告された2種類のHIVやその類似ウイルスのいずれも発見できなかった。2人には、感染の恐れのある輸血やエイズ感染者との性交渉など通常のエイズ危険要因もなかった。
2人の血液を詳細に調べた結果、白血球の単球系細胞から、HIVとは異なる未知のウイルスが見つかり、チームはHICRVと命名した。ウイルスは直径1万分の2ミリ以下で外側に突起があったという。
チームは2人以外にも「原因不明エイズ」の患者8人から、この新ウイルスに対する抗体を発見しているという。「原因不明エイズ」の患者の報告数はまだ20−30人と少ないが、学界で大きな関心を呼んでいるため、全米アカデミーは慣例を破り、この論文の事前発表に踏み切った。(中日新聞 1992/07/23)

米で来月エイズ薬試験 感染症の好転狙う 林原生物化学研究所
バイオテクノロジー(生命工学)の研究を手がける林原生物化学研究所(本社岡山市、社長林原健氏)は27日、米食品医薬品局(FDA)の承認を受け、8月から米国で抗エイズ薬の臨床試験を始めると発表した。11月まで安全性の確認試験をした後、規模を拡大して治療効果を確認する試験に移る予定。来年夏ごろまでには治療効果が判明する見通し。
FDAから承認を受けたのは米国のバイオベンチャー企業、アマリロ・セル・カルチャー(テキサス州、ジョセフ・カミンズ氏)と共同開発した経口投与による天然型ヒト・インターフェロン・アルファー。ハムスターの体内で増殖させたヒトの細胞でインターフェロンを産出する林原独自の技術で製造、ごくわずかの量を口や食道の粘膜から吸収させるだけで効果があるという。この生物製剤はエイズウイルスの増殖抑制でなく、身体の免疫力を高めることでエイズに関連する感染症の好転を狙っているのが特徴。従来のエイズ薬と比べ副作用が少ないほか、安価で大量生産が見込めるという。すでに世界保健機関(WHO)や日本国内で臨床試験が進んでいる。
試験はまず、陽性患者80人を対象に安全性を確認する。その後、数百人規模で治療効果を確認する予定。効果の判定には半年から9カ月程度かかるといい、「医薬品としての認可は早くて2年後」(林原生化研)と見込んでいる。(日本経済新聞 1992/07/28)

生薬にエイズ抑制効果 南蛮毛など3種で実験 福岡県環境研
福岡県保健環境研究所(常盤寛所長)は8日までに、3種類の生薬がエイズの感染予防、発症抑制に有効との実験結果を得た。11月27、28日に佐賀市で開かれる日本感染症学会西日本地方会総会で発表、米国の専門誌にも投稿する予定。
3種の生薬は、南蛮毛(なんばんもう=トウモロコシのひげ)、夏枯草(かこそう=ウツボグサの花穂)、紫根(しこん=ムラサキの根)。同研究所は、実験結果から南蛮毛がエイズウイルスの感染を予防、夏枯草と紫根は感染後のウイルス増殖を抑える作用があるとみている。同研究所は約80種類の生薬を調査。試験管内にヒトのリンパ球とエイズウイルスを培養、各生薬を加え6日間を観察した。
生薬を加えない試験管では、30万個のリンパ球のうち70−80%がエイズウイルスにより細胞変性を受けたのに対し、3種類の生薬を入れた試験管では10−20%しか細胞変性が見られなかったという。水1cc当たりの生薬の濃度は、南蛮毛が62.5−250マイクログラム、夏枯草と紫根は15.6−62.5マイクログラムが適量とされた。(日本経済新聞 1992/08/08)

エイズ発症、大豆で抑制 東北大グループとみそメーカー発見
東北大学農学部の大久保一良教授とみそメーカー、かねさ株式会社(本社青森市、阿保定吉社長)研究部の工藤重光主任研究員を中心とする研究グループは大豆に含まれる成分にエイズの発症を抑制する効果があることを発見した。23日からワシントンで開かれる米国化学会の年次大会で研究成果を発表する。
大久保教授らによると、大豆に含まれている「DDMPサポニン」(糖分の一種)という成分がエイズウイルスの活動・増殖を妨げるという。通常、試験管内にエイズウイルスと健康な細胞を入れると、数日のうちにウイルスが細胞を破壊してしまうが、DDMPサポニンを入れるとウイルスの活動が鈍くなり、細胞が破壊されることもほとんどなくなったという。
大久保教授は「ウイルスが体内に侵入してもDDMPサポニンがあれば、エイズ発病までの期間を長くすることが期待できる」と話している。
まだ基礎研究の段階で、抑制効果の因果関係は立証されていないが、「今後も研究を進め、実用化に早くメドを付けたい」(工藤主任研究員)としている。(日本経済新聞 1992/08/15)

マジック・ジョンソン氏「ブッシュ政権はエイズ対策無視」
協議会委員を辞任

【ロサンゼルス25日=ロイター】エイズウイルスに感染した米プロバスケットボールの英雄マジック・ジョンソン氏は25日、ブッシュ政権の態度を不満として1月に就任した米政府のエイズ対策協議会の委員を辞任する、と通告した。
ホワイトハウスにファクスで送られた手紙でジョンソン氏は、ブッシュ政権がエイズ対策の重要な仕事を完全に無視している、と辞任の理由を説明。委員任命でエイズについて学べたことに感謝を表明しながらも、「どんな素晴らしいチームでもオーナーが関与しなければ優勝はできないのに、あなたはエイズ対策を投げ出しており失望した」と大統領自身のエイズ対策を消極的と決めつけた。
ブッシュ選対スポークスマンは「大統領がエイズ対策にかける努力と情熱をジョンソン氏が認めてくれなかったことは残念」と表明。民主党のクリントン候補は遊説先で「私が大統領に当選したら、ジョンソン氏にカムバックしてもらうことができる」と語った。(朝日新聞 1992/09/26)

エイズ発病の前兆つかむ 阪大グループ 感染者調査で
ウイルス増加や特定抗体の減少

エイズウイルスの粒子を構成しているある種のタンパク質に対する抗体が血液中になくなることや、ウイルスの数が増加することが、エイズ発病の前兆になることを大阪大微生物病研究所の栗村敬教授らのグループが確かめ、30日に神戸市の神戸国際会議場で開かれる日本ウイルス学会で発表する。
より適切な時期に薬を投与して副作用を最小限に抑えることができるなど、治療に役立つ成果だ。
研究グループは、エイズに感染しているがまだ発病していない日本人464人の血液を分析し、1987−91年の5年間にわたって追跡調査した。
ウイルス粒子を構成するタンパク質の1つに対する血液中の抗体を調べたところ、まだ発病していないか、軽い症状の人では61%に抗体があったのに、重い症状の人では24%だった。
また87、88年の時点で発病していなかった人のうち、抗体を持っていた15人は90、91年になっても1人も発病しなかった。これに対し、抗体がなかった16人は6人が発病した。
さらに、症状が重くなるにつれて血液中のエイズウイルスの量が増加することも分かった。
研究グループは「この抗体が体内で発病を抑えている可能性もある。今後、この抗体を発病予防に使えないか探っていきたい」としている。(中日新聞 1992/10/27)

エイズもとから断つ ウイルス殺す“分子ナイフ”
米の大学チーム開発

【ラホヤ(米カリフォルニア州)10日AP】エイズウイルス(HIV)を切断して殺してしまう“分子ナイフ”を開発したことを、カリフォルニア大サンディエゴ校のF・オングスタール博士が10日、明らかにした。1年以内に臨床試験に入る予定で、関係者は「新しい治療法の開発につながる新技術になる」と期待している。
エイズウイルスはT細胞と呼ばれる白血球の中の遺伝子に入り込み、増殖してT細胞を破壊する。
オングスタール博士らの研究チームが開発したのは分子を切断する酵素の役目をするリボ核酸(RNA)という遺伝子の一種で、ヘアピンのような形をしている。この分子ナイフは、エイズウイルスが入り込んだ部分の遺伝子を切断し、ウイルスの増殖能力をなくしてしまう。
試験管レベルの実験でエイズウイルスに感染したT細胞にこれを入れると、ウイルスの増殖能力は10−30%に抑えられたという。(中日新聞 1992/11/12)

「初乳はエイズにも効果」 東海大のグループ解明
防御する物質名は「ラクトフェリン」
ヒトや牛の出産後、初めて出る乳である「初乳」には、エイズウイルスの感染を防御する性質があることを、東海大医学部の田中重明・助教授(分子生命科学)らのグループが突き止めた。「ラクトフェリン」という物質が多く含まれているためで、ウイルスや細菌から体を守る生体防御機構のひとつらしい。田中助教授らは、これをヒントに、エイズ薬開発の可能性を追求したいとしている。
田中助教授と、研究室の持地亘さんらは、ラクトフェリンが一部のウイルスに対する防御効果を持つことに着目。エイズウイルスが感染しやすい培養細胞として実験室で使われているMT4細胞に、ラクトフェリンを添加してエイズウイルスの感染の具合を調べた。
MT4細胞にエイズウイルスとラクトフェリンを同時に入れた場合は、防御作用はまったくなかった。しかし、前もってラクトフェリンを与えて置くと、ヒトのラクトフェリンで55%、牛で66%の細胞がエイズウイルスに感染していないことが確かめられた。
ラクトフェリンは、ヒト、牛とも、乳の出始めの1−3日で1ミリリットルの乳の中に30グラム程度含まれているが、4日目になると同1ミリグラムほどに減少するという。(朝日新聞 1993/02/06)

細胞進入直後 効く物質発見 名大の医師ら
エイズ新薬の可能性

エイズを起こすウイルスが、細胞に進入した直後の段階で作用する物質が見つかり、新しいエイズ薬になる可能性があることが、名古屋市での抗ウイルス化学療法研究会で発表された。名古屋大医学部の山本直彦医師とベルギー・ルーベン大のグループの成果。エイズの特効薬開発が困難ななかで、承認されている薬が効かなくなった患者の治療などに役立ちそうだ。
エイズ薬の開発は、ウイルスが細胞に感染、発病するまでの各段階に応じて研究されている。すでに承認されているAZT、DDIは、ウイルスのRNA(リボ核酸)をDNA(デオキシリボ核酸)に写し替える逆転写酵素を阻害する。
こんどのはバイシクラム系と呼ばれる化合物で、ウイルスが進入後、RNAがDNAに写し替わるまでの間で作用することがわかった。ウイルスが細胞に進入し、たんぱく質の殻を脱いでRNAが露出してくるのを妨害する、と山本さんらはみている。(朝日新聞 1993/02/10)

エイズウイルス 感染初期から活発活動 「真の潜伏期なし」
リンパ節で免疫侵す 米で確認

【ワシントン24日=大塚隆】感染から時には10年以上もかかって発病するエイズは、その潜伏期にウイルス(HIV)がどう活動しているかがなぞだった。米の2グループは、HIVがリンパ節の細胞に潜み、感染初期から活発に活動し続け、免疫機能を侵していくことを突き止めた。発病する前の感染者への治療が必要なことを示している。
米国立保険研究所(NIH)のエイズ研究総責任者であるファウチ博士と、ミネソタ大のハース博士の両グループが、独立して同じような成果を得た。英科学誌ネイチャー3月25日号への発表を前に、会見して明らかにした。
NIHグループは、感染者12人を感染の初・中・後期に分け、リンパ節と血中のウイルスの様子を調べた。ウイルスはリンパ節に潜み、感染初・中期の場合、感染細胞は血中の5−10倍もリンパ節の細胞に多く、隠れ家になっていることがはっきりした。
一方、ハース博士らは、リンパ節の細胞にいるウイルスが、リンパ節を通るリンパ球を持続的に攻撃し、免疫機能を徐々に弱めている可能性が強いことを見いだした。
エイズは感染時に一過性の症状が出るだけで、無症状の時期が長い。しかし、実はこの時期が、リンパ節の細胞にすみついたウイルスが免疫機能をむしばんでいるわけだ。ファウチ博士は「エイズに真の意味での潜伏期がないことが分かった」と話している。(朝日新聞 1993/03/25)

突発性発しんのウイルス HIV感染を手助け 米で確認
ほとんどの人が乳幼児にかかる発熱性の病気「突発性発しん」の原因ウイルスが、エイズウイルス(HIV)の感染を手助けしていることを、米国立保健研究所のギャロ博士らが確認し、1日発売の英科学誌『ネイチャー』に発表した。
問題のウイルスは、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV6)。大人の体内にも、悪さをせずに潜んでいる。博士らは、生体防御を担う白血球の一種、ナチュラルキラー(NK)細胞を培養し、HHV6を感染させると、一部のNK細胞では、本来ないはずのCD4という抗原が表面に現れてくることに気付いた。
CD4は、エイズウイルスが細胞に侵入する時の足がかり(受容体)。これをもっていれば、エイズウイルスの標的になる。
実際、エイズウイルスを、HHV6に感染していないNK細胞に与えても侵入できなかったのに、HHV6に感染してCD4が表面に現れたNK細胞には侵入したことを確認した。(朝日新聞 1993/04/07)

イタドリがエイズに有効か 大阪医科大グループ確認
胃腸薬や利尿剤など漢方薬に使われているイタドリの根が、エイズウイルスの細胞感染などを防ぐ働きのあることを、大阪医科大微生物学教室の蒋岩・中国人研究員と中井益代教授らが確かめた。
まだ試験官内での実験だが、蒋研究員らはイタドリの副作用が弱いことも調べており、エイズ治療薬として今後の研究が期待される。5月20日に大阪市内で開かれる大阪エイズ研究会で発表する。
蒋研究員らは、山野に自生するありふれた多年草のイタドリが中国で風邪、肺炎などウイルスや細菌による病気の薬として使われていることに着目した。
実験ではまず、エイズウイルスに感染したリンパ球と正常なリンパ球を混ぜ合わせ、イタドリの根をせんじて抽出したエキスを加えた。
エキスがない場合、24時間後には、感染した細胞と正常な細胞が融合して巨大化し、やがて壊れていく現象が次々と起こった。しかしエキスを加えると、細胞の巨大化はほとんど見られず、エイズウイルスによる細胞破壊を抑えた。
さらに、エイズウイルスをイタドリのエキスに1時間浸した後、リンパ球に感染させ6日間培養した。エキスに浸されていないウイルスを感染させた細胞からはウイルス粒子が多く飛び出していたのに、エキスに浸されたウイルスを感染させた細胞には、ウイルスの飛び出しがないことを電子顕微鏡で観察した。
中井教授は「イタドリのためにウイルスが感染力をなくしたか、感染しても増殖できなくなったのだろう。どの成分が効くかなど今後分析していけば、エイズ薬として期待できるのではないか」と話している。(中日新聞 1993/04/10)

マイタケがエイズの症状抑える
マイタケにカポジ肉腫(しゅ)などのエイズの諸症状を抑える働きがあるのを、神戸女子薬科大の難波宏彰教授(微生物学)が、米国内で行った臨床試験で突き止めた。食用のマイタケは副作用もなく、有効な治療薬として期待できそうだ。
難波教授は、マイタケの成分に、Tリンパ球の生理活性物質分泌を高め、免疫力を強化する作用があるのに着目。米国のニューヨークなどで、エイズ患者の支援グループの協力を得て、34人(女26人、男8人)のエイズ患者にマイタケの粉末を投与した。
その結果、4人が死亡し2人は試験を辞退したものの、2カ月後、28人が生存。このうち、子宮筋腫を併発していた25人の約7割で腫瘍(しゅよう)が消失したほか、リンパ腫のはれや、カポジ肉腫が小さくなるなど、エイズ関連の諸症状の沈静化がみられた。
また、エイズ症状進行のバロメーターとされるCD4細胞(ヘルパーT細胞)の数も、投与60日後には患者全員で減少が止まった。
現在、約100人を対象にした臨床試験が続けられており、難波教授は、「AZTなどのようにエイズウイルスの増殖を抑える働きはないが、患者の2次的な症状の改善に効果がありそうだ」と話している。(読売新聞 1993/04/17)

エイズ治療に難物ウイルス 延命薬(AZT)に耐性 米で感染確認
【ワシントン21日=大塚隆】エイズ治療薬で最も広く使われているAZTに初めから耐性をもつ変異ウイルスで感染した患者が見つかり、22日付のニューイングランド医学誌に発表された。研究者らは、変異ウイルスの感染が広がると、エイズとの闘いはますます困難になる、と憂慮している。
米ミネソタ大のバルフォア博士らのグループが報告した。患者は20歳の男性で、発熱や疲労感、のどの痛みなど風邪に似た症状を訴えて来院。HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染が分かった。AZTで治療を始めたが効果がなく、ウイルスが最初から薬に耐性があったことが分かった。
患者の相手だった男性がエイズの治療を受けており、こんどの患者がAZTに耐性をもったウイルスに感染した可能性が高い。
AZTはエイズの進行を遅らせる延命効果が認められている。だが、HIVはきわめて変異しやすく、長く使うとウイルスに薬への耐性ができる。米国では耐性が確認されると、別の薬に切り替えている。しかし、最初から耐性をもつウイルスが見つかったことで、初期段階のAZT治療を再検討する必要がある、と指摘している。
米国では使われ始めたばかりの薬で治療中の患者から、その薬に耐性を示す変異ウイルスが見つかった例も報告されている。(朝日新聞 1993/04/22)

治療薬の柱アジドチミジン 発病遅らせる効果確認できず
エイズ克服 道険し 変異・耐性…壁続く
英仏合同の大がかりな研究から、エイズ治療の柱となっている薬、アジドチミジン(AZT)に、感染者の発病を遅らせる効き目は確認できなかったという報告が先ごろ出た。エイズ治療薬は「患者に早く使いたい」と薬効をじっくり見極めないまま認可されてきており、初の本格的な臨床試験の結果に、患者の失望は大きい。認可済みの治療薬はいずれも同じ原理に基づく薬で、すぐにウイルスが耐性をもつ──。薬探しにはまだ幾重にも壁が立ちはだかっている。(ワシントン=大塚隆/ロンドン=尾関章)

「治療薬の効き目に疑問」「打ち砕かれたエイズ薬への期待」。4月初め、「コンコルド」と名づけられた臨床試験の速報結果を、英国の主要5紙のうち4紙が第1面で伝えた。
試験をした英医学研究評議会(MRC)によると、試験の狙いは発病患者に効果があるAZTが、「感染者の発病を遅らせ、延命させることもできるかどうか」だった。英仏などで発病前の感染者約1750人の半数にAZTを、残りに偽薬を飲んでもらった。
AZT、偽薬両グループの3年後の死亡率はそれぞれ8%と7%だった。効果は確認できなかった。
AZTは、米国での臨床試験に基づき、3年ほど前から発病前でも使われ始めた。だが、この試験では感染者の経過を1年ほどしか診ていない。
「エイズは発病まで10年ぐらいかかる。1年で十分な答えが出るはずがなかった。今回、平均3年間追跡した意味は大きい」とロンドン大のA・J・ピンチング教授は指摘する。
そのコンコルドも、途中から特定の白血球が減り始めた人は偽薬をAZTに替えてよいことにしていた。「効果があるなら、早く使わせるべきだ」という「倫理上の理由から」(MRC)だったが、かえって「効き目を見分けにくくした」(製造元の英ウエルカム社)との批判も出た。
こうしたことは、治療薬の開発で何度も繰り返されてきた。そのせいで短期の効果はともかく、長期の効き目については不透明という状態が続いている。
米国には100万人を超える感染者がいるが、このニュースの扱いは控えめだった。1987年にAZTを最初に認可した米食品医薬品局(FDA)も「1つの医学誌に短い報告が出たからといって、今の治療法を変える必要はない」と論評、報告を小さく見せたいという気持ちがありありだった。AZTに代わる薬が簡単に見つかりそうもない厳しい現実があるからだ。
AZTはがん治療薬として開発されたが、7年前、米国立がん研究所の満屋裕明レトロウイルス感染症部長が、エイズウイルス(HIV)増殖抑制効果を発見した。その満屋さんは、今回の結果をほぼ予想されたものとしている。
ただ、「AZTはそもそもHIVをやっつける効果が十分でないうえ副作用が強い。それにHIVは変異しやすく、半年から1年も使うと薬剤耐性もできる。ふつう、AZTの単独投与を3年以上も漫然と続けるとは考えにくい」と、試験方法に疑問も呈した。
満屋さんはエイズ治療の方向をこう予測する。「ここ数年は、数種の薬を組み合わせて使う多剤併用や薬を短期的に替える交代療法が中心になるだろう。相乗効果と副作用の軽減が期待できる。薬剤耐性もできにくいだろう」
先月中旬、製薬会社が異例の企業連合の結成を発表した。バロース・ウエルカム、ホフマン・ラロシュ、メルクら欧米に本社を置く大手15社で、狙いは、多剤併用療法の開発。「多剤療法には大規模な臨床試験が必要。開発の効率化には企業同士の協力しかない」と説明する。
長い潜伏期間後の発病など、エイズにはまだなぞが多い。満屋さんは「HIVは感染すると体の至るところにすぐ広がる。これを根こそぎ取り除くのは不可能だ。現時点の対策は、感染しないようにすることに尽きる」と指摘している。

<主なエイズ治療薬> 現在はAZTとジデオキシイノシン(ddI)、ジデオキシシチジン(ddC)。いずれもAZTとほぼ同じ作用があるが、半年から1年続けて使うとウイルスに耐性ができてしまう。
FDAはこれらの薬の認可の際、延命効果ではなく、病気が進行すると減るCD4というリンパ球の回復効果で判定した。
スピード試験で薬を早く患者に使えるようにするためだ。
このため、FDAはかねて「臨床試験で薬効がないことがはっきりすれば、認可取り消しもある」としている。
ケスラー局長は「CD4は十分信頼できる指標」としながらも、コンコルドの最終報告が出た段階で「十分検討したい」とも述べている。(朝日新聞 1993/05/27)

WHOの調査ではケムロン効果なし エイズ会議で報告
【ベルリン7日=時事AFP】ケニアで開発されたエイズ治療薬ケムロンの効きめがないと、世界保健機関(WHO)がベルリンで開催中の国際エイズ会議で発表した。
ウガンダで60週間にわたり、560人のエイズウイルス(HIV)感染者をケムロン投与と偽薬投与の2グループに分け、効果を調べたところ、死亡や病気の進行に違いが見られなかった。
ケムロンはヒトのインターフェロンからなり、微量でも効くとされていた。

ケニア医学研究所と共同でケムロンを開発した林原生物化学研究所の三橋正和常務取締役の話 日本や米国では、口内のかび、熱、食欲不振など臨床症状の改善が見られるという試験結果が出ている。WHOのデータと比較したい。(朝日新聞 1993/06/09)

エイズ、米64都市で最大死因 25−44歳男性 5州でも1位
予防機関調べ
【ワシントン15日=大塚隆】米国の青壮年のエイズによる男性の死が5州、64都市で最大の死因になっていることが分かった。女性も3州で2番目の、9都市では最大の死因になっている。米疾病予防センター(CDC)が、16日の米医師会雑誌(JAMA)に調査報告を発表した。
25−44歳の死因を、1990年の統計で調べた結果分かった。米全体では、エイズやエイズに関連した病気による死亡は、男性が不慮の事故(21.2%)に次ぐ16.5%を占めた。女性はがん、不慮の事故などに続く6位の4.8%だった。
男性で州別死因の1位になったのはニューヨーク、ニュージャージー、カリフォルニア、フロリダ、マサチューセッツの5州。都市別での1位は主要都市170のうちサンフランシスコ(61%)、マイアミ(43%)、ニューヨーク(35%)など64都市。
女性の場合はニュージャージー、ニューヨーク、コネティカットの3州で2番目の死因で、マイアミ(28%)、ニューヨーク(24%)など9都市で最大の死因になっている。
男女を合わせると、25万人を超す都市全体では死因のトップ(23%)、10万−25万の都市全体では2位(14%)、それ未満の都市は5位(8%)と、都市の規模によって大きな差が出た。性行為感染症としてのエイズが、都市の生活行動と深く関係していることが裏付けられた。
CDCのリチャード・セリク博士は「青壮年の死は全死者の7%を占めるだけだが、早すぎる死は労働力の損失でもあり、子どもが残されるなど問題が大きい。大都市でエイズ対策がきわめて重要なことがはっきりした」と話している。(朝日新聞 1993/06/16)

エイズ増殖 強力に抑制 遺伝子切断の実験成功
工業技術院研究所
通産省工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市)の多比良和誠主任研究官らのグループは、エイズウイルスの遺伝子に結合して切断してしまうリボザイムという生体分子を使って、エイズウイルスの増殖をほぼ完全に抑制する実験に成功した。同様の試みは各国で行われているが、これほどの効果を示した例はなく、将来エイズ治療の有力な武器となりそうだ。
リボザイムは酵素のような働きをするリボ核酸(RNA)。エイズウイルスの遺伝子であるRNAに結合すると“はさみ”のように切断してしまう性質があるが、生体内で壊れやすいという欠点がある。
そこで多比良さんらは、生体内でも壊れにくく、エイズウイルスのRNAの中でも変化の少ない部分に結合するリボザイムをいくつか合成した。
次にこれらのリボザイムを、エイズウイルスが感染したヒトの白血球の培養細胞に導入。ウイルスの増殖能を調べた結果、導入したリボザイムの1つが94%から98%という高い率でウイルスの増殖を抑えることが分かった。
リボザイムを用いてエイズウイルスの増殖を抑える研究は、1990年に米国のグループが初めて成功した。
今回の結果はずっと少量のリボザイムで高率に増殖を抑えており、生体内でも高い効果が期待できるという。
多比良さんは変わり身が速いエイズウイルスに対抗するために、ウイルス遺伝子のいろいろな部分に結合するリボザイムの合成にも成功しており、今後、実際のエイズ治療に向け研究を進めたいとしている。

将来性ある研究成果

山崎修道国立予防衛生研究所長の話 リボザイムを使う方法はエイズ患者の延命ではなく、治癒が期待できるとして各国で研究されている。今回の成果は安定でウイルスの変化にも対応でき、強いウイルス阻害作用が見られた点で将来性がある。今後、リボザイムを生体内へどう送り込むかなどの問題点を解決すれば、有効な治療法になるだろう。(中日新聞 1993/06/27)

米NIHが認定!「舞茸がエイズに効く」全データ
ヘルパーT細胞が症状緩和

6月5日〜6日、アメリカNYで「オールタナティブ・トリートメント・シンポジウム」なる、自然治療医学会が開かれた。写真は、その展示会の一角にたつマイタケ・プロジェクト社の白田正樹社長(43)である。彼が手にしているのは、商品の干し舞茸。その横は、舞茸を粉末状にし、錠剤に固めた製品だ。昨年2月、白田社長が「健康食品」として売り出した商品だが、NY界隈では「エイズにキキメがある」と口コミで広がり、ひそかな人気を呼んでいるのだ。
「エイズに舞茸」の組み合わせは、意外でもナンでもない。アメリカのNIH(国立衛生研究所)は一昨年11月に「舞茸のエキスはエイズに有効」との認定を出しているし、日本でも昨年3月に学会でやはり「強力な抗エイズ作用がある」と発表されているのだ。これまでの研究でHIV(エイズウイルス)に感染した免疫細胞の一種、ヘルパーT細胞に舞茸のエキスを入れると、濃度によってほぼ100%死滅からのがれられることが判っているのだ。つまり、エイズ特有の食欲不振、寝汗、体重減などの各症状は、舞茸を飲むことによってヘルパーT細胞が増殖されるおかげで、免疫不全状態から脱け出せ、症状が軽くなるというわけだ。
M&A専門の証券マンだった白田社長は、いち早くここに注目し、転業した。現在、この商品はエイズ薬としてではなく、健康食品として売り出されているが、300人の医者が免疫を高めるなどの目的で投与している。
「昨年4月、23歳から40歳までの患者26人に、1日1回、3gの舞茸を2カ月間投与したところ、24人の人がヘルパーT細胞の数が最大、2倍に増加しました。また他の2人の医者に頼んで患者さん14人に投与してもらったところ、末期患者は別として、血液1マイクロリットル中のT細胞数は340→441、147→265、392→494、465→496にと、増えています」(白田社長)
服用者の1人は「使用して1カ月で、不眠、食欲不振、体重減などの症状から解放され、49まで落ちていたT細胞の数も280まで回復しました」と、その症状緩和ぶりを証言する。
昨年の年商50万ドルを今年は倍増させたいという白田社長は8日、NIHに患者の数を増やし、内容の濃い臨床試験を許可してもらう申請を出した。またロサンゼルスのエイズ専門医が、カポジ肉腫患者だけの臨床試験を始めたが、その実験にも試したいとの依頼があった、という。
さて、日本古来の食用きのこ舞茸が、エイズから地球を救う日はくるか──。(FRIDAY 1993/07/02号)

その気にさせてエイズ療法
偽の感染細胞でだまし“本物”攻撃
マウスで効果 発症遅らす 日本医大講師が開発
偽のエイズウイルス感染細胞を作ってエイズに感染したと体内の免疫システムを“錯覚”させ、本物の感染細胞を攻撃する能力を高める免疫強化法を、日本医大の高橋秀実講師(微生物免疫学)が開発、マウスを使った動物実験で効果を確認した。生体がもともと持っている免疫の仕組みを利用するもので、感染者の発病を遅らせる効果があると期待される。猿など実際にエイズに感染する動物で実験し、人への応用を急ぐ方針だ。
米国立がん研究所(NCI)のJ・ベルゾフスキー博士らとの共同研究で、成果は24日発行の国際的な免疫学の専門誌「インタナショナル・イムノロジー」に掲載された。
エイズウイルスが体の細胞内に侵入すると、ウイルスの目印が抗原ペプチド(タンパク質の一部)という形で細胞の表面に現れる。この目印を目標に感染細胞を攻撃するのがCD8と呼ばれるリンパ球だ。
しかし、CD8はペプチドが細胞表面に現れないと認識できないため、実用化が難しかった。高橋講師らはマウスのひ臓から採取した白血球の一種、樹状細胞と人工的に作ったエイズウイルスの抗原ぺプチドを結合。さらに放射線を当てて細胞がウイルスに感染して弱ったように見せかけた。
この「偽の感染細胞」約10万個をマウスの体内に戻したところCD8は感染細胞と見なし、異物を攻撃する力が高まった。効果は約6カ月間続き、明らかな副作用はなかった。
この方法で感染者のウイルスを抑え込むことができれば、ウイルスを全滅させることはできなくても、AZTなどの薬と同様に感染者の発病を遅らせる可能性があるという。
ベルゾフスキー博士らは同じ方法で、がん化しようとする細胞を抑えられるのではないかとして、発がん制御への応用を研究中だ。

シンプルで画期的

国立予防衛生研究所細菌・血液製剤部の水落利明室長の話 抗原を生体に強力に認識させる樹状細胞に、抗原となるペプチド(タンパク質の一部)をまぶして生体に戻すというとてもシンプルな方法だ。しかも、抗原となるペプチドを表面に持った感染細胞を、特異的に破壊するCD8をたった一度の投与で誘導できるとみられる。免疫力を高めるという点ではがんにも応用できる可能性があり、画期的だ。(中日新聞 1993/08/25)

HIV発見「虚偽報告」博士への告発 米厚生省が取り下げ
裁定委「実害ない」と新判断

【ワシントン12日河野俊史】エイズウイルス(HIV)の発見をめぐり、米厚生省は12日、「(第一発見者であるとの)虚偽の研究報告をした」とする米国立衛生研究所のロバート・ギャロ博士(56)に対する告発(研究者の反倫理的行為)を取り下げることを明らかにした。
ギャロ博士側からの不服申し立てを受けた裁定委員会が「実害を与えない虚偽報告だけでは反倫理的行為にはあたらない」との新判断基準を示したため。ギャロ博士は“潔白”の身になり、「エイズ研究への努力を倍加できる」との声明を出した。
ギャロ博士は1984年、「エイズの原因になるHIVウイルスの分離に成功した」と発表。しかし、フランスのパスツール研究所のモンテーニュ博士がこれに抗議。ギャロ博士は後になって「ウイルスはモンテーニュ博士から借り受けていたものに由来するかもしれない」と認めた。
エイズウイルスの第一発見者をめぐっては87年、米国とフランスが共同発見として合意。しかし米厚生省は昨年12月、「ギャロ博士の研究報告は虚偽で、連邦政府の予算を使う研究者としての反倫理的行為にあたる」として告発。科学者を巻き込んだ倫理論争に発展していた。(毎日新聞 1993/11/13)

エイズ治療 新薬DDI 甘草成分併用で効果 重症患者が回復
第2のエイズ薬として昨年認可されたDDI(ジデオキシイノシン)と、漢方薬の甘草(かんぞう)の成分であるグリチルリチンとを併用した結果、重症のエイズ患者の症状が著しく改善されたことを、東北大、仙台血液疾患クリニックなどの共同研究グループが30日、東京で開かれた日本エイズ学会で発表した。
症例はまだ少ないが、患者は平常の日常生活が送れるまでに回復、グループは「今後有力な治療法となる可能性がある」としている。
患者は43歳と41歳の男性で、血液製剤によってエイズウイルスに感染、発病した。いずれも治療を開始した1990年半ばには、免疫力が極度に低下、エイズ患者に特有のカリニ肺炎を起こしており、余命は3カ月から6カ月と診断された。
だが、患者にグリチルリチンを連日800−1600cc投与、その後DDIも併用した結果、薬1年後には発病していないウイルス感染者と同程度にまで体調が回復、退院した。
2人とも現在は、DDIを服用し、1週間に3日間通院してグリチルリチンの点滴を受けているが、健康な人と変わらない生活を送っているという。
グループの森和夫・仙台血液疾患クリニック医師は「グリチルリチンには、ウイルスがDDIに対する耐性を持つことを遅らせる作用もあるようだ。間もなく亡くなると思われた人の症状がこれほど改善された例は、世界的にも少ないと思う」と話している。(中日新聞 1993/12/01)



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