レナードの朝
この間の“火星の人類学者”が非常に興味深かったので、オリヴァー・サックスの著書を読破中です。で、レナードの朝である。これは代表作で、映画にもあったから知っている人も多いと思うけれど、本に比べると映画はただの紹介するための帯広告みたいなもんです。もちろん、ロバート・デニーロの演技は素晴らしいのですが。20年代に流行した嗜眠性脳炎(通称眠り病)はウイルス性の病気で脳に損傷を与えるのだが、どうなるかというと、人間が、外観的にはフリーズしちゃうのである。その内面は人それぞれ違うので、もう、推し量るしかないのだが、オリヴァー・サックスが診察した患者の話は壮絶だ。60年代後半にL-Dopaというもともとパーキンソン病患者に使う特効薬(当時は奇跡の薬ともてはやされた)を処方すると、フリーズしちゃっていた患者はぞくぞくと奇跡的に甦る。しかし、だからOKというわけではない。30年眠っていた状態にあった人である。L-Dopa自体の副作用もあり、患者自身それぞれの人格の差異もあり、ほとんどの患者において良い状態は長くは続かなく、グロテスクといっても過言ではない症状が現れはじめる。チック、パーキンソン病的筋固縮、ジストニー、無動、あらゆる部位の振戦、カタプレシー、発作、衝動、精神錯乱、アカシジア、眼球回転発作、舞踏病、異常な執心、性欲の増大、自己破壊的な行為、食欲増加などなど。複雑な症状を見せる患者に対して、結局サックスはL-DOPAの投与量を増やすか、減らすかしかできない。サックス自身、負けるとわかっていながらも投与を続けるしかないのである。僕はこのようなひどい患者の内面を推し量る。オリヴァー・サックスの本を通して僕がしているのはそれだけだ。僕の身内にパーキンソン病(レーガンや、故ローマ法王がこの病気に苦しんだ)にかかった大切人がいるので、とても他人事だとは思えない。患者の言葉が重い。「最初の頃は誰もかれも嫌っていました。それで仕返しをしたいと思っていたんです。私の病気の責任は周りの人にあると思っていたから。その後、それが私の運命だと諦めてから、それが神の罰だときづいたんです。」「自分がなにか特別に悪いことをしたとは思いません。私は悪い人間ではないんですよ。でも、私が選ばれたんです。ーなぜだかは知りませんけど。神の御意思は計り知れませんから」
Posted: 月 - 4月 11, 2005 at 12:25 午前