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2007.10.24up

Tiger上でのpTeX




 このコーナーもながらく放置してしまったまま、2007年10月26日にはMac OS X 10.5、Leopardの発売をひかえることとなってしまった。ここで10.4 Tigerでの状況を整理しておこうというのはいまさらの感もあるが、この間に生じたMac、pTeX双方での状況変化にはみのがせないものがあるので、とりいそぎ簡単にまとめをしておきたい。

【Macの変化〜Intel CPUへの移行〜】

 Tigerが現役の間におきたMacプラットフォームについての最大の変化は、Macintosh誕生以来つかわれてきたモトローラ系CPUと訣別し、PC/AT互換機と同じくIntel CPUを採用したことである。ここではそれ自体の功罪はさておき、AppleがCPUの移行をスムーズにすませるために、アプリケーションにPowerPC/Intel双方のバイナリをもたせて、どちらの環境でも動作するようにするユニヴァーサル・バイナリというしくみとともに、PowerPC用だけに作成された従来のアプリケーションであってもIntel機上で動作させるためのエミュレーション環境であるRosettaを用意したことにだけ触れておこう。私が配布しているpTeXやGhostscriptのパッケージは、このユニヴァーサル・バイナリとなっており、どちらの環境でも問題なく動作しているようである。ただし、ユニヴァーサル・バイナリとすることでバイナリ部分の容量は従来の倍となってしまっており、ただでさえ以前とくらべてteTeX/pTeXが肥大化していることとあわせて、ダウンロードやインストール時の容量が増加の一途をたどっているという弊害は否めない。これを回避するために、PowerPC版とIntel版とを別パッケージにするという選択もあるだろうが、それには別のわずらわしさがともなうこととなり、判断のむずかしいところといえる。
 ところで、かつては定番であった桐木紳氏によるパッケージは、2005年度以来更新されないままとなっており、その間にIntelプラットフォームへの移行が生じてしまった。また、井上浩一氏のパッケージもほぼ同様の状況にある。これらPowerPC版パッケージのIntel機上におけるRosettaを介した動作については、拙作パッケージのPowerPC版で確認したかぎりでは、ほぼ問題ないようではある。ただし詳細な試験をおこなったわけではないので、PowerPC/Intel間のエンディアン処理の相違などが、どのような影響をもたらすかについては保証のかぎりではないことを断っておきたい。
 一方、TeX文書編集作業のための定番統合環境であるTeXShopは、すでにユニヴァーサル化をとげて久しく、これまでと同様の快適な環境を提供してくれている。また、同じく定番テキスト・エディタである miも、ユニヴァーサル版のαテストが続けられているとともに、PowerPC版のIntel機上での動作にも問題はない。さらにmiでのTeX文書作成を支援する、栗田哲郎氏によるツールもユニヴァーサル版がリリースされている。このように、編集環境については、Intel機であってもこれまでと何ら変わらぬ状態が実現しているものの、DVIビューワとして定番の内山孝憲氏によるMxdvi には、まだユニヴァーサル版は用意されていない。しかし、これもまたRosettaを介しての動作に問題はないものと思われる。

【pTeXの変化〜UTF-8への対応〜】

 pTeXの内部処理は旧JISコードによっており、入力もJIS/Shift_JIS/EUCのいずれかのみである。しかし最近では、Mac OS XではもちろんWindowsやLinuxでもUTF-8が普及しつつあり、より多くの文字種を直接ソース上であつかえるUTF-8へのpTeXの対応が、じょじょに望まれるようになってきている。このような要望に対しては現在、相異なるふたつのアプローチが試みられている状況にある。そのひとつは、Mac OS XもふくむUnix系OSを対象とした、teTeX/pTeXのネットワーク経由でのソースからの自動構築環境であるpteTeXを配布されている、土村展之氏によるもので、そこではUTF-8で書かれたソースのうち、JISコードの内にある文字種はJISコードに、その外となる文字種はUTF/OTFパッケージの\UTF{}コマンドに変換することで、内部処理がJISのままのpTeXでのUTF-8ソースの処理を実現するというアプローチがなされている。これに対して、煩雑な手間を要するpTeXの内部処理コードそのもののUTF-8への拡張を試みているのが、ttk氏によるアプローチであり、こちらはこれまでのpTeXからは大幅な機能拡張となるため、それとは独立したupTeXという名称と一連の別コマンド名があたえられている。このふたつのアプローチは双方刺激しあいながら、合流しつつあるようであり、Windowsでの定番環境である角藤亮氏によるW32TeXには、すでにその機能が試験的にとりこまれている。これらは素晴らしい成果であり、関係各位のご努力には敬服するほかないが、拙作パッケージにかんしては、私自身がUTF-8の範囲にもおさまらぬ文字種のためにOTFパッケージを常用していることから、個人的にはすぐにはUTF-8化のメリットをあまり感じることができず、その成果の吸収については、もうしばらく様子をみることとさせていただきたい。

【TeXの変化〜teTeXの開発中止〜】

 Thomas Esser氏によるteTeXは、TeX関係の諸プログラムや諸マクロを集成したUnix系OS向きパッケージ集として不動の地位を有しており、teTeXの登場以来、pTeXもその存在を前提として構築される仕様となっていた。しかし、2006年5月にteTeXの開発中止が宣言され、そのためpTeXの今後のあり方については、いまだ不透明な状況にある。Esser氏は、ご自身も開発にかかわっておられるもうひとつのTeXパッケージ集であるTeX-Liveへの移行を勧めており、これをふまえてpteTeX開発チームもptexliveの開発を進めている。しかし、TeX-LiveはteTeXにもまして、さまざまな機能を集積することによる利便を追求した結果、その容量はDVD一枚分にもおよびかねないような巨大化をとげてしまったものであり、これまでのteTeXベースのpTeXパッケージのような構築済パッケージを作成し、それをwebをとおして配布することを、TeX-Liveをベースにしつつ続けていくということに、現実味があるとはさすがに思われない。今後はユーザーが各自の責任において、ptexliveなどをもちいて自ら環境を構築するという方向に移行せざるをえないかもしれない。しかしそれでは、開発環境には明るくないユーザーにも、可能なかぎり簡単にpTeXを利用してもらうことはむずかしくなりかねない。あるいは、TeXShop開発チームがTeXShopとともにもちいるために以前から配布している、Mac OS X用に構築されたTeX-Liveパッケージへの機能追加パッケージとして、pTeX関係だけに絞った比較的容量の小さなものを配布するという方法に切り替えるという選択はあるかもしれない。ただし、そのようなパッケージの作成が比較的容易に可能であるかどうかは、検証してみないとわからないし、また、現在の私にそのための時間が十分にあるともいえない。いずれにせよ、Leopardの登場を前にして、Mac OS X上におけるpTeX利用は、さまざまな意味で岐路にさしかかりつつあるといえるだろう。



<この項、了>


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