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◆有機溶剤の毒性と健康影響について◆
有機溶剤は揮発性が高い物質が多く、眼・皮膚・気道への刺激や、中枢神経系への影響があるため、直接皮膚に接触したり、蒸気を吸い込んだりすることは、できるだけ避けなければなりません。
止むを得ずベンジン等有機溶剤を使用して版の汚れを除去するときは、換気をよくし、また、蒸気に目を侵されないように溶剤を流した版に顔を近付けないことや、指についたインクを溶剤をつけたウエスで拭き取ることは止めなければなりません。
使用する溶剤の成分と含有量については注意し、その毒性について認識しておくことが健康を守るために必要だと思います。
21世紀は環境の世紀と言われています。環境問題に取り組むことは各企業にとっても存続のための大きな柱の一つであり、各分野での研究努力がなされています。有機溶剤についても数年前と比較すると毒性の明確になった成分を低く押さえる商品開発努力がされてきています。しかし数多くある有機溶剤の毒性とその混合暴露の毒性については依然不明な点も多いのが現状です。環境問題のミニマムは固体の健康です。このことは版画芸術とその教育の現場に於いても対応が迫られている問題です。
〜海外の報告から〜
[以下の文章は、webサイト「住まいの科学情報センター」(http://www.kcn.ne.jp/~azuma/)の東
賢一氏の著述(1999年)を引用しています。]
◆アメリカ政府が発行する科学雑誌「環境衛生展望」において、30年間種々の有機溶剤に曝露した57歳のペンキ塗布作業者に発生した慢性脳障害について、ボストン医科大学のRobert
G. Feldmanらの報告があります。
[Robert G. Feldman, Robert G. Feldman, Thomas Ptak 環境衛生展望(Environmental
Health Perspectives)Volume 107, Number 5, May 1999
URL: http://ehpnet1.niehs.nih.gov/docs/1999/107p417-422feldman/abstract.html]
◆1999年4月22日のレイチェル・ウィークリーの概要。
["Environmental Research Foundation" 「RACHEL'S ENVIRONMENT
& HEALTH WEEKLY #647, April 22, 1999.」]
4つの章から構成されています。
1. 「有機溶剤(−汎用の毒薬−)についての概説」 2. 「出生障害」 3. 「結合組織疾患」 4. 「癌」
◇第1章では、私達の家庭や職場などの身の回りにある有機溶剤と、それらを用いた製品事例及び健康影響について紹介しています。
<健康影響例> ・出生障害 ・免疫組織異常(リウマチ、関節炎、強皮症、狼そう紅斑症) ・乳癌などの種々の癌
◇第2章「出生障害」では、職場で有機溶剤に曝露した女性に関わる健康障害事例について、研究論文を紹介しながら概説しています。
特に医療関連の職業、衣類や織物産業、グラフィックアートは有機溶剤に曝露しやすい職業です。健康障害事例としては、有機溶剤への妊娠期間中の曝露とその後の影響が報告されています(米国医学協会雑誌(JAMA)
[1] )。
この論文では、妊娠初期13週の間に有機溶剤に曝露した、工場作業者、実験補助、アーティスト、グラフィックデザイナー、印刷産業労働者、化学者、画家、OL、獣医、葬儀場労働者、大工、社会福祉家、カー清掃業の労働者125人を分析した結果、胎児の奇形などの先天性異常のリスクが13倍増加すると報告しています。
その障害例は、心臓弁の障害、喉頭軟骨の軟化、異常に小さいペニス、難聴、内反足、神経管障害(索状脊椎組織に関係)ハイドロネフローゼ(腎臓障害)。
そして、妊娠期間中の女性や授乳時期の女性の有機溶剤への曝露は、できるだけ最小限にすべきだと指摘しています。
◇第3章の「結合組織疾患」と第4章の「癌」では、有機溶剤が結合組織疾患に与える影響と癌との関連性について、関連論文紹介しながら述べています。
「結合組織疾患」 リウマチ性関節炎、狼そう症、強皮症などの結合組織疾患。(このような症状は男性よりも女性に多いと本文で述べています)。リウマチ性疾患の原因はよくわかっていないが、有機溶剤が原因の1つであることが研究論文からも示唆されます。
「癌」 特に石油化学産業において不可欠である有機溶剤として用いられるベンゼン、トルエン、キシレン、スチレンと癌との関連性について述べています。これらの溶剤は混合物として用いられることが多い。
・ベンゼン : 人体への発癌性が明確になっており、職場で曝露すると白血病が発症する可能性が高くなります。
・スチレン : 動物実験での結果から人体に対しての発癌性が示唆されています。
―「15種類の癌をもつ3730人の患者の体験調査(1998年、カナダ、[2] )」―
<要点> 1. キシレン:結腸癌 2. ベンゼン、トルエン、スチレン:直腸癌 3. スチレン:前立腺癌
上記3つの関係について限定的ではあるが確証が得られています。
―「女性の乳癌と有機溶剤曝露との関連についての1つの仮定 [3] 」―
<要点>
この論文では動物実験研究より、有機溶剤が乳癌発生の原因となる確証があると述べています。また、工業国における女性の乳癌患者の母乳中には、脂肪組織に溶解する有機溶剤が多数含まれていると報告しています。これらの溶剤は女性の血液よりも母乳中のほうが高濃度であると述べています。またエストロゲン作用(内分泌かく乱作用)を示す物質もこの中にはあります。この研究から、母乳を通じて乳児の体内に有機溶剤が容易に進入するということです。産業の発展とともに有機溶剤の使用量が増加し、有機溶剤を摂取するルートは職業上以外に一般家庭でも多数考えられます。
ここで検出された有機溶剤は塩素系化合物、芳香族系化合物が非常に多いということも認識する必要があると思います。
<有機溶剤の例>
・脂肪族炭化水素(ミネラルスピリット、ニス、灯油)・芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン)
・塩素化炭化水素(四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン)
・脂肪族アルコール(メタノール)・グリコール類(エチレングリコール)
私たちの身の回りには延べ数百種類もの有機溶剤があり、それらへの曝露は単一というのはまれなことで、一般的には混合物に曝露しています。またその多くは揮発性が高く、室内空気汚染で問題になっている揮発性有機化合物(VOC)に含まれます。室内空気汚染問題においても揮発性有機化合物の特定が研究されており、今後徐々に解明されると思われます。人体への影響については、混合物の曝露と単一物の曝露の双方から研究する必要があります。
<参考文献>[1] Sohail Khattak and others, "Pregnancy
Outcome Following Gestational Exposure to Organic Solvents,"
米国医学協会雑誌: Journal of American Medical Association (JAMA), Vol.
281, No. 12 (March 24/311999), pgs.1106-1109.
http://jama.ama-assn.org/issues/v281n12/full/joc81429.html
[2] Michel Gerin and others, "Associations Between Several
Sites of Cancer and Occupational Exposure to Benzene,
Toluene, Xylene, and Styrene: Results of a Case-Control Study
in Montreal," AMERICAN JOURNAL OF INDUSTRIAL
MEDICINE Vol. 34 (1998), pgs.144-156.
[3] France P. Labreche and Mark S. Goldberg, "Exposure to
Organic Solvents and Breast Cancer in Women: A Hypothesis"
AMERICAN JOURNAL OF INDUSTRIAL MEDICINE Vol. 32 (1997), pgs.1-14.
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