愛の歌



『スター・ウォーズ エピソード3』の公開を目前に控えた5月23日、映画字幕翻訳家の岡枝慎二氏が亡くなった。岡枝氏といえば、『スター・ウォーズ』旧三部作の字幕を担当した方で、「フォース」を「理力」と訳した素晴らしい翻訳家であった。
 他にも、『惑星ソラリス』から『プラトーン』、『エル・トポ』から『ブレイドランナー』まで、数えきれない作品の字幕を手がけた。中でも我々の印象に残るのが、『エマニエル夫人』である。
 ある年代に産まれた者にとって、『エマニエル夫人』で性の目覚めを知った男子は少なくない。フジテレビの土曜ゴールデン洋画劇場で放映された『エマニエル夫人』を、親の目を盗みながら、それこそ死に物狂いで観たモノである。そういえば関西のあるTV局は、確か1983、4年ごろだったと思うが、年の瀬の12月29日、30日、31日の深夜、三夜連続で『エマニエル夫人』『続・エマニエル夫人』『さよならエマニエル夫人』3部作を放映して我々を驚かせた。もっと驚いたのは、年が開け新学期、学校へ行ってみると、クラスの3分の2の男子が3作とも欠かさず観ていたコトである。
『エマニエル夫人』をあそこまでエロティックにさせたのは、あの有名な歌によるトコロが大きい。ムーディーなメロディに、フランス語でささやくように「♪ふぉわにゃふぉあにゃのなのなんにゃえまにぃえ〜るぅ♪」と歌うあのテーマ曲である。これほどまでに官能的な歌は他に見当たらず、この歌を聞いて育った現在30代から40代の男子は、あのメロディを耳にしただけで下半身が穏やかでなくなるように刷り込まれている。
 さて、岡枝氏である。英語作品だけではなく、フランス語やイタリア語、ロシア語の作品も翻訳していた氏は、エマニエル夫人のテーマ曲を、このような官能的な日本語に訳したのである。
「愛の歌 歌うエマニエル 心が求めるのです
 愛の歌 歌うエマニエル 体がうずくのです」
 さぁ、あのメロディにのせて歌ってみると良い。いかに胸が高まるか。
 我々は、偉大なる翻訳家を失ってしまった。

Posted: 月 - 7月 11, 2005 at 03:44 午後         | |


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