『逆境ナイン』



 試写にて、『逆境ナイン』を観る。
 原作漫画ほども圧倒的パワーは感じられないが、おバカ度は高く笑える作品に仕上がっている。
 この映画は『少林サッカー』 の成功がなければ、作られなかっただろう。チャン・シンチーは、日本の『キャプテン翼』を読んで『少林サッカー』を思いついたそうだが、だとしたら、当の日本には、飛んで跳ねて魔球を使うスポーツ漫画がてんこ盛りじゃないか!と気づいた日本の映画・テレビ製作者少なくないだろう。今度は『アストロ球団』が実写ドラマ化されるらしい。一体どうなることやら。
 原作でもそうだが、本作のポイントは、「絶望的な逆境をいかにバカバカしく乗り越えるか!?」というトコロにあり、それが突飛で豪快であればあるほど、笑えるし盛り上がる。例えば本作の最後は、この試合に勝てば甲子園、という決勝戦の、9回裏、最後の攻撃を迎えるのだが、スコアが112対0!という逆境。この逆境をどのように乗り越えるか、想像がつくだろうか。

 ちなみに、私のこれまでの人生にも数々の逆境があった。あれは、今から十数年前。とある場所で酒を飲んでいたら、終電に乗り遅れてしまった。歩いて帰ると数時間かかる距離。困り果てていると、駅前の歩道に数十台の自転車が放置してあるのが目に入った。ところが運悪く(?)、鍵がかかってないのはボロボロの、田舎の中学生が乗りそうな型のスポーツ自転車しかない。本当はマウンテンバイクがオシャレで好きなのだが、渋々それにマタがりペダルを漕いだ。
 しばらく走って気づいたのだが、その自転車のブレーキは前後ともに壊れており、止まるには、アニメのように両足でズズズズッ!と踏ん張るか、自転車ごとどこかに激突するしかない。仕方なく、あまりスピードを出さないように気をつけつつ、あっちの電柱にぶつかり、こっちの壁に激突しながら、何とか家の近くまでやって来た。
 あと15分ほどで到着、というトコロで、運悪く交番の前を通った。しかも、そんな深夜によほど暇なのか、警官の一人が交番の前に立っているではないか。素知らぬフリをして、口笛なんぞを吹きながら前を通り過ぎようとしたのが余計に怪しかったのだろう。「キミ! 無灯火だよ! 止まりなさい!」と声をかけられてしまった。
 ブレーキの壊れている自転車のライトが壊れていないハズはない。ましてや、止まれと言われても、すぐに止まれる自転車じゃない。命令してもすぐに止まらなかったコトが、警官はお気に召さなかったのだろう。電柱にぶつかりやっと止まった私のもとへ駆け寄り、「何故すぐに止まらない! 何だこの自転車は! ブレーキも壊れてるじゃないか! 盗難車か! 名前は! 住所は!」と矢継ぎ早に責め立ててくる。こちらも負けじと、「これは俺のだ! 今か友人宅へ向かうトコロだ! 文句あるか!」と、あるコトないコト(っていうかほとんどがないコト)言って反撃する。交番の中から同僚警官2名も出て来て、心ならずも大騒ぎになった。
 ここで引き下がっては男が廃る、と、おもむろに免許証を突き出し、「俺はこういう者だ、調べてみやげれ!」と大見得を切ってやった。すると警官は涼しい顔でこういった。「うん、じゃ、調べる」。……、逆境だ! これは逆境だ!
 警官が私の免許証を片手に防犯登録を調べている間、この逆境をいかに乗り越えようか、頭脳コンピュータで計算していた。さっきは口がすべったと言おうか、ゴメンナサイ・モウシマセンと謝ろうか……。
 待つコト15分。1人の警官がやって来て、私の肩を叩いた。もはやこれまでか!と思った瞬間、警官は信じられないコトを口走った。
「確かにキミの自転車だ」
 ウソ〜ん! 僕のチャリンコじゃないんですけど〜! ポカ〜ンと口を開ける私に、「気をつけて行けよ!」と笑顔で手を振る3人の警官。よくわからないまま、私はブレーキのない自転車で無事に家までたどり着いたのであった。
 私がこの奇跡的な事件から得た教訓は、「どんな逆境に遭遇しようと、最後の最後までナニが起こるかわかならい。決してあきらめな」というコトと、「自転車の防犯登録ってよくわからない」というコトである。

Posted: 火 - 6月 28, 2005 at 06:16 午前         | |


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