岡本喜八 池袋・新文芸座にて、5月21日から6月10日まで行われていた「追悼・岡本喜八の軌跡」。2月に他界した岡本喜八監督全作品のうち、1本を除いたすべての監督作品が上映された。
私は時間が許す限り劇場に足を運び、結局、16本を観るコトができた。『独立愚連隊』『独立愚連隊西へ』『月給泥棒』『江分利満氏の優雅な生活』『ああ爆弾』『殺人狂時代』『日本のいちばん長い日』『肉弾』『どぶ鼠作戦』『激動の昭和史 沖縄決戦』『座頭市と用心棒』『侍』『青葉繁れる』『ブルークリスマス』『ダイナマイトどんどん』『ジャズ大名』である。 何度も観ている作品もあれば、初見だったモノもあったが、やはり喜八映画は抜群に面白い。テンポが抜群によく、スピート感もあり、飽きるコトは絶対にない。そして何より、楽しい。何度か観ている作品は、カット割りや編集を具体的にチェックしよう、と思いながら挑むのだが、いつの間にかそんなコトを忘れて映画に見入ってしまっている。喜八映画は、映画を観るコト意外のコトを考えるコトを許してくれない。 すべての作品について語りたいトコロだが、いつくか選んで紹介したい。 『独立愚連隊』 岡本喜八の名を一躍知らしめた傑作シリーズである。満州をアメリカの西部に見立てた「ジャパニーズ・ウェスタン」だ。粋で壮快でカッコイイ。満州侵略や従軍慰安婦が次々と出て来て、現代では問題になるような題材だが、極上のエンターテイメントに仕上がっているトコロがすごい。主演の佐藤允の無国籍な顔(?)がなければ成り立たない映画だったろうし、何より、世界の三船をキ○ガイの兵隊で登場させるなんて、さすがの世界のクロサワも思い及ばなかったであろう。サム・ペキンパーの『ワイルド・パンチ』を彷彿とさせる圧巻のラストシーンだが、こちらの方が10年も早い。 『日本のいちばい長い日』 1945年8月15日。終戦の24時間を描いた超大作だ。これを観たら、NHKの大河ドラマなんてしゃらくさくて観ていられない。重厚な内容だが、この題材がきちっとドラマチックな映画になっているのはさすが。日本がどのような経緯で終戦を受け入れたか、という内容を描いるのだが、いかに日本の上層部(海軍、陸軍、政府)はバラバラだったかがよくわかる。これはあの戦争を語る上で非常に重要だと思う。トップ会議でポツダム宣言を受け入れるコトを決定した直後にも、「まだ残った男子の半分が特攻になれば闘える!」と訴える者までいて、ゾッとする。スター総出演の超大作だが、反乱青年将校を演じる若き黒沢年男のパワーが際立つ。 『肉弾』 『日本のいちばん〜』が日本トップから見た終戦なら、こちらはごくフツーの一般人の兵隊から見た終戦。主役は特攻隊員である。しかし決して暗くならず、笑いを忘れない、このユーモア感覚こそ岡本喜八の真骨頂。寺田農のひょうひょとしたナレーションが効いている。 『ああ爆弾』 ハチャメチャなミュージカル。ナンなんだ、このメチャクチャさは。よく考えれば物語としても映画としても破綻しているような気がするのだが、面白いのだ。面白過ぎるのだ。ラストの「間に合ってくれ〜!」は、漫画だ。漫画だが、感動すら覚える。俺は笑っているのか、泣いているのか!? 感情も無茶苦茶にされる作品である。ちなみに、公開当時、本作は『砂の器』と二本立てだったらしい。狂気の沙汰としか思えない。 『激動の昭和史 沖縄決戦』 終戦直前、沖縄がいかに軽視されていたか、というコトに対する喜八監督の怒りに満ち満ちた作品。爆発しまくる。人が死にまくる。スピルバーグが『プライベート・ライアン』で手足飛び散る戦場シーンを描いたが、こちらはもっと早く、もっと壮絶で生々しい。救いはないが、それが史実である。壮絶な作品であるが、必見の一本である。ちなみに、庵野秀明監督は、本作は人生でベスト1らしい。 『侍』 映画には、白黒フィルムでしか描けない映画がある。本作は、白黒映画の最高峰である。光と陰。ラストの大雪舞う中での襲撃シーンまで、白黒でなければ表現できないカットの連続である。私の歴代3本の指に入る日本映画だ。オープニング。大老井伊直弼暗殺を企てる三戸藩の残藩が会合している広間をカメラが進み、一番後ろで退屈そうにしている男の顔のアップで止まる。三船である。そして、タイトル『侍』がドーン!と現れる。スクリーン左半分にデカく「侍」、右半分に三船の顔。シビれる。びりびりとシビれる。もはや最後まで目をそらすコトができない。女に恋して悩み苦しむ三船、というのも良い。 『ブルークリスマス』 公開は1978年。何と東宝が、『未知との遭遇』によるSF映画ブームに便乗しよう、と製作したらしいが、だったら何故、岡本喜八!?と首をひねりたくなるが、結果的に(異色であるが)凄くよくできた映画になった。脚本は倉本聰である。ちなみに喜八監督は特撮嫌いで有名。本作でも、UFOの来襲がテーマになっているにも関わらず、一切姿を見せない。唯一使った特撮は、クリスマスに雪が降っているシーンくらい。特撮の使い方、間違ってないか? 良いのだ。それで良いのだ。あまりに切ないラストを見ると、UFOや宇宙人の姿を見なくて、本当に良かったと思う。 『ダイナマイトどんどん』 菅原文太といえば、『トラック野郎』でも『仁義なき』でもなく、本作だ。はじけている。ヤクザ同士による野球大会、という物語なのだが、キャッチャーの菅原文太が、ボールを持って相手のチンピラを外野まで追いかけ回し、後頭部をどついて「タッチアウトじゃ〜!」。ピッチャーは北大路欣也だが、指を詰めているせいで、不思議な変化をする魔球を投げるコトができる。もはやこれだけで、いかに本作が愉快かがわかるだろう。 他の作品もすべて面白いので、機会があれば是非見ていただきたい。あまりDVD化されている作品は少ないが、『日本のいちばんながい日』が近々発売される。他の作品もどんどんDVD化して欲しいモノである。 Posted: 月 - 6月 13, 2005 at 10:21 午前 | | |
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