whale はクジラなのか? (3) - whale は狩るものか、見るものか 

blog の存在自体忘れてました。(^^;
つづきをカンタンに。

正月に私がつらつら考えてしまったのは、日本語の《クジラ》と西洋語の《whale》は、概念的に別物なんじゃないかと。
もっといえば、西洋語圏の反捕鯨運動の背景には、「whale」という単語の用法をめぐる問題が横たわっていないかと。

捕鯨のことを、英語で whaling という。
たとえば International Whaling Commission (IWC) は、日本語では「国際捕鯨委員会」と訳される。だが、反捕鯨運動の立場からは、そうした訳語そのものを否定することになるのではないかという話である。

fishing は魚釣り、foxing はキツネ狩り、wolfing はオオカミ狩り。
fish fox は、魚やキツネを意味する名詞であるとともに、動詞として「魚を釣る」「キツネを狩る」を意味する。fish fox という単語自体に、《狩りの獲物》という意味が内蔵されている。
whale という単語もこれと同様であり、そうした用法や語義こそが、反捕鯨活動の攻撃対象になる。 

語義を攻撃するとはどういうことか。

先例がある。たとえば反鳥猟活動としてのバードウォッチング。動詞 bird は「鳥を狩る」を意味し、鳥猟のことを birding と言った。
birding から bird watching へ。「bird」という単語を、watch の目的語として位置づける。「鳥は狩るものではなく、見るものだ」───獲物であるはずの bird を目の前にしながら、狩らずに見るだけ。いわば《おあずけ》を繰り返すことで、自分たちの中の辞書にある bird という名詞の語義を、狩猟対象から観察対象へと書き換えようという運動。
この運動において、鳥を観察する行為は目的ではなく手段である。バードウォッチングの目的は、鳥の観察そのものではなく、その行為を通じて bird の語義を変える=辞書を書き換えることにこそあった。

世間の辞書には、いまでも birding は鳥猟のことだと載っている。しかし、「birding」でググってみれば、鳥の観察のことを birding と呼ぶサイトの目白押し。バードウォッチング団体は、これまで「bird watching」と呼んできた行動を、ただ「birding」と呼び替えはじめているのだ。birding という言葉が、狩猟ではなく観察を意味するようになったとき、名詞 bird も《狩りの獲物》という語義から解放される。

whale をめぐっても、ホエールウォッチングといった活動があり、bird の成功例をトレースしようとしている。その目的は、辞書を書き換えることにほかならないだろう。
whale が「クジラを捕る」を意味する現状、whaling が「捕鯨」を意味する現状を変えること。
そうであるなら、IWC(International Whaling Commission)なる機関が捕鯨問題をあつかうこと自体が攻撃の対象とならざるをえない。whaling が捕鯨を意味してはならない以上、IWC が「国際《捕鯨》委員会」であってはならないのだから。

ある種これは whale という言葉を狩猟対象として定義してしまった西洋人の贖罪行為かもしれない。だが、彼らがそのことを意識することはない。 

木 - 10月 29, 2009 at 23:44 []