音撃 

19才の時に気づいたんじゃ。おら建物の裏口とかに設置されてるネズミよけの超音波みたいなやつがすっごい聞こえるんだ。場所によっては「うぎゃあ!」って叫んで走って逃げるくらい。
(中略)
なんで今頃この話してるかっつうと、(中略)年齢とともに衰えるかもしれないから若いうちしか聞こえないんじゃ?と思って聞こえるうちになんか有意義に使えないもんかのう、と思ったの。

さっそく“有意義に”使おうとした人がいたみたいで。 

(略)Howard Stapletonが、若者にだけ聞こえる不愉快なノイズを発生させる装置"Mosquito"を開発した。コンビニエンスストアなどの店頭を「占拠」して商売の邪魔になる若者を退散させることができるという。

人間の可聴域が年齢とともに狭くなる(落ちる)ことは昔から知られているが、Stapletonは子供のころ父親が働いていた工場で、自分にはとても耐えられないノイズが聞こえるのに大人に訴えても理解してもらえなかった経験からヒントを得たと語っている。


宇多田さんの聴覚は人並みはずれているのだとは思う。
彼女はグランドハイアットのネズミ撃退器が「今のところ史上最強にひどかった」と報告しているが、同じ場所を十代とおぼしき人たちがごく普通に何気なくご通行している。可聴域が年齢によって変わる(狭まる)としても、それ以前に個人差も大きいだろう。Stapleton 氏の装置がかならずしもすべてのティーンに有効とは思えない。宇多田ヒカルさんを駆除できることだけは間違いないけど。

若年層の可聴域が広いという同じ身体現象をめぐって、自らの不快な体験を、かたや「なんか有意義に使えないもんかのう」と快感に逆転すべく考える人もいるかと思えば、かたや不快感をマックスに増幅すべく考える人もいると。

快感と不快感は紙一重のところもある。
エレキギターでいうディストーションとか、わざと“不快な音”を出して楽しませるテクニックもあるわけだ。ジャズの隆盛期やビートルズの全盛期には、「あれは騒音であって音楽ではない」と反発する人たちが後を絶たなかったと聞く。いまやスタンダードなクラシック音楽にしか聞こえないサウンドでも、当時は“不快”に感じる人たちもいたわけだ。
超音波領域の音は、いまはネズミ撃退器におけるがごとくに“不快感”にしか利用されていないけれど、“快感”に転じる可能性はつねにある。

いずれ宇多田さんのような可聴域を持った人が、音楽にふたたび革命を起こす日が来るかもしれない。その革命に参加しうる能力の持ち合わせがないのは残念だけれど。

# それにしても“音撃”って一般名詞なのかしらん? 

水 - 12 月 14, 2005 at 23:20 []