情報の共有 (1) ──テレビ放送を録画する権利はある? 

ビデオでテレビ放送を録画するのは、「当然」なんでしょうか。

著作権法で、私的使用目的で著作物を複製するのは認められています。
けれども、これは著作者の複製権が制限される状況を定めているのであって、「ユーザの権利」を認めているわけではありません。
ユーザに、放送をビデオ録画する権利はあるのでしょうか? 




「ある」という根拠として、よく引き合いに出されるのが、いわゆる《ベータマックス訴訟》。
ユニバーサル映画&ディズニーが、著作権侵害でソニーを訴え(1976年)、ソニーが最高裁で逆転勝訴した(1984年)アメリカでの判例です。

このときソニー側は、ビデオ録画は著作物のコピー(複製)ではなく、放送のタイムシフト(視聴時間のズラシ)であると主張して、勝訴をもぎとったようです。

この判決は、ビデオというバッファを介して「放送を視聴する」権利を認めたものであって、「著作物を複製する」権利を認めてはいないことになります。



テレビには、「放送の公共性」という理念があります。

わが国でも「公共の福祉に適合」(放送法1-1)する放送を、「国民に最大限に普及」(同法1-1-1)させるのが、地上波テレビ放送の法的義務となっています。
たとえば最近、文字放送が急速に広まっているのは、平成9年の法改正で、聴覚障害者への配慮が義務づけられたから。
放送とはそういうもので、ひとりでも、より多くの人に見てもらうことをめざしつづけなければならない。カラー化もステレオ化も、文字放送もクリアビジョンも、あらゆるテレビ放送技術が、ずっと上位互換を保ちつづけてきたのもそのため。
新しい技術を導入するからといって、古いテレビでは映らなくなるとか、音が聞こえなくなるといったことは許されません(でした)。

それが「放送」の性格なのですが、番組という「著作物」となると一転して、保護される対象になります。
放送の公共性か、それとも著作物としての保護か。
対立・拮抗する両者のあいだの、グレーゾーンにあることで見過ごされてきたのが、「録画」という行為のようにも思えます。



しかし、この「放送の公共性」という理念も、根底からくつがえされようとしています。

「おばあちゃん、テレビが見たいなら、テレビを買い替えるかチューナーを接続するかして、アンテナ建て替えて、B-CAS カード入れないとダメだよ」

それって、従来の放送法の理念をまっこうから否定することのような。



ユーザにビデオ録画する権利は、たぶん「ない」
今後ますます規制されていくようですし、それどころか、「放送を見る権利」(そんなものがこれまであったならば)さえも、否定されつつある気がしてなりません。

(改稿Jun. 09, 29) 

水 - 6 月 9, 2004 at 01:37 []