情報の共有 (3) ──ネズミとネコ 

ミッキー・マウスとハローキティ 


アメリカ合衆国の著作権法は、ミッキーマウスの著作権切れの直前に、著作権の保護期間を何度も延長してきたため、ミッキーマウス法と呼ばれる。

なんていわれたりして、「著作権問題」の象徴みたくなってるミッキー。

で、アメリカがネズミなら、本邦はネコってことで、われらがキティちゃんはどうなんだろ? と気になります。
キティの著作権は、いつ切れるんでしょう。



ハローキティの初登場(1975)は、がまぐち。
がまぐちの著作権保護期間は何年? ……って、がまぐちに著作権はありませんね。(^^;
絵画著作物としてのキティの著作権なら、遅くとも2036年には切れることになります。

で、それ以降は、だれでも自由にキティを使っていい、ということになるでしょうか?

キャラメルを食べて300メートル走る人は、大正11年が初出だそうなので(江崎グリコ「ゴールインマークの歴史」)、著作権だろうが意匠権だろうが、とっくの昔に存続期間は切れてます。
でも、おんなじマークをつけてキャラメルを売る権利は、だれにもない。
特定企業のビジネスを妨害するという以前に、いたずらに社会的混乱を招くだけで、公益に反します。

ケーキに舌なめずりする女の子といったら不二家、鳥の唐揚げの店に立つオジサンはKFC、ハンバーガーを勧めるピエロはマクドナルド。
同様に、「キティといえばサンリオ、サンリオといえばキティ」という状況がつづくかぎり、キティはサンリオのものであるのが《公益》といえます。

でも、同じキャラクターでも、その理屈はミッキーには通用しない。

ミッキーのデビューは、映画『蒸気船ウィリー』(1928)。
日米の現行著作権法上、ミッキーはディズニーランドのマスコットでもなんでもなく、その映画の登場人物にすぎません。映画は著作権法の対象なので、絶対的なタイムリミットがあります。
「ミッキーといえばディズニー」という社会通念があったとしても、「その日」が来た瞬間、その通念は全否定されます。




Reason の記事「Mickey Mouse Clubbed」(邦訳「ミッキーマウス 独占インタビュー」)によると、ミッキーが「セックスあり、ドラッグあり」でないのが、著作権の弊害らしいです。
毎日毎日、ディズニーランドであのガキどもを常に笑顔で歓迎しつづける」のもイカンらしい。

記事を読んだローレンス・レッシグは、自身のblog で、

コピーライト延長の弊害について論陣を張ってきたジェシー・ウォーカーが、エルドレッド裁判の判決に関連してミッキー・マウスにインタビュー。52時間ぶりに笑う。
(要約)lessig blog 2003.1.17

と述べています。

セックスレス・ドラッグレスで、子供たちを笑顔で歓迎するのが著作権の弊害……。

レッシグ教授が3日ぶりに笑ってくれるより、いま子供たちが笑ってくれたほうが、よっぽど嬉しい気もするんですけど、そんなこというのは、きっと「既得権益」なんですよね……。




サンリオのハローキティ30周年記念サイトに、「私の大好きなキティちゃんに贈る言葉」として、

これからもずっとずっと、キティは私たちのそばにいてくれるんだよねってこと。

とあります。
キティは、これからもずっと、子供たちに「元気とやさしさ」を与えつづけてくれるでしょう。

でも、ミッキーにそれは許されない。

田舎のネズミと都会のネズミじゃないですが、日米のネコとネズミの命運を分けたのは、グッズという《ビジネス》としてスタートを切ったか、それとも《著作物》としてデビューしたか、という一点に尽きるようです。
著作権とは、そういう呪いでもあります。 

水 - 6 月 30, 2004 at 01:26 []