目次へ

 

    2 繊維の種類

 一、 綿花(Row Cotton)

 

1 沿革   

        2 種類

        3 性状

        4 需要、用途

        5 その他の特徴

        6 カポック

 

 綿花とはインド原産のニシキアオイに属するゴシピウム(Gossypium) という学名の植物

の種子に発生した繊維を採ったものである。さらにこの植物には様々な種類があり、一年

生や多年生のものがあり、気候や地質に対して適不適があるため、それぞれの産地によっ

て違った種類の綿を栽培していることが多い。花が落ちると子房内部の種子が大きくなり

、種子に毛羽が発生し、子房が果実として成熟すると、果肉は水分を失い破裂し、綿製品

は花のように盛り上がるので綿花と呼ばれる

綿といえば、その風合いの良さや、産業革命の紡績機発明による大量生産などにより、

近年、原料繊維生産に占める割合は第一位であり、ファッションの世界でも、ここ数年、

合繊に押され気味ではあるが、現在でも単一の繊維のなかでは約四割ほどの需要をもつ繊

維素材である。

 

 

  1 沿革

 綿の発生はインドでは紀元前3000年頃、中国では紀元前2000年ごろと言われている。

初めのうちは野性のものを採取して利用していたものと思われる。その後、栽培を行うよ

うになり、一八世紀後半の産業革命の時期に綿製品需要の増大により技術革新として紡績

機械が発明され、この発明により大量生産が可能となり、現在の綿の地位が確立されるこ

ととなった。

 日本においての綿の歴史は奈良時代になってやっと正倉院蔵の品において初めて見つけ

ることが出来るという程度で、その歴史は浅いと言えよう。しかもそれは日本で産したも

のではなく、舶載品であったとされている。その後、戦国時代の末頃、朝鮮より布ととも

に種子が伝わり、わが国でも産する所となり、以前の麻や草木の繊維と比べ、その風合い

と着心地のよさにより、庶民の衣料材料の中心となり、現在に至っている。しかし、それ

以前、綿布は交易によってしか得られず、現在では考えられぬほどに貴重なもので、庶民

には縁の遠いものであった。

 かつて我が国などの紡績業界では「混綿」という様々な国、種類の綿花を混ぜ合わせ、

質の一定した綿製品を作っていた。しかし、輸入品との競争などの事情が背景になって、

各メーカーがそれぞれ一品種の綿花によって特色のある製品を作るようになってきた。さ

らに、合繊に押され気味の最近では、絹のような光沢を持つ超長繊維や元から色の付いて

いる色付き綿花の製品など付加価値のある製品によって他の素材に対抗している。

 

   2 種類

 a)産地による分類

綿の分類の仕方では、まず、産地による分類の仕方があげられる。

 ┌──米綿──米綿のうちもっとも量的に多く産出されているものは、アップランド綿

 │      とよばれ、米綿の代名詞のように呼ばれている。またアメリカ綿とエジ

 │      プト綿との改良種からなるスーピマ綿は、主にアリゾナ州で産する。ア

 │      リゾナ州に住むピマ族とスーペリア(superior)の合成語であり、絹の

 │      ような光沢感と風合いを持つ高級綿で、安定した供給を行うことができ

 │      る。アップランド綿は海島綿に次ぐ品質とされる。

 ├──エジプト綿──優良種で長さが35mm〜45mmあり細い割合に強力が強いため細番手

 │      の高級糸として使われることが多い。近年アメリカのアリゾナやカリフ

 │      ォルニアの一部でも栽培されている。

 ├──インド綿──パキスタン綿の在来種(デシ綿)は米綿より相当品質が劣り長さは

 │      10〜20mmで太さは米綿より太く、紡績が困難なため通常、米綿二〜三割

 │       との混紡で使うのが普通である。ただし、布団綿、脱脂綿に使うには弾

 │ 力があるため適している。

 ├──ソ連綿──旧ソ連の東南部地方、ウズベク、トルクメン、タジク、キルキス、カ

 │      ザフ、アゼルバイジャン、アルメニアなどで主に栽培されているアップ

 │      ランド綿の改良種。1917年の十月革命以後に品種改良を行い長繊維種

 │      も導入してはいるが生産量はまだまだ少ない。

 ├──中国綿──中国在来種はインド綿程度のもので、インド綿の優良種には及ばない

 │      が、米綿を移植改良したものが近年出来、在来種よりはるかに優良であ

 │      る。また新疆ウイグル自治区のトルファンで採れる綿花はトルファン綿

 │      と呼ばれ、繊維が細く長く、絹のような光沢と風合いを持ち、洗濯によ

 │      る硬化性も少ないため、海島綿、エジプト綿などと並び最高級品とされ

 │      ている。

 ├──ブラジル綿──品質は比較的に優良で繊維長もエジプト綿に近く、太さもあり、

 │  ペルー綿   強力も強い、このため、細番手の高級メリヤスシャツに、また、

 │         羊毛との混紡とに使われている。

 └──アフリカ綿──スーダン綿、ウガンダ綿などがあり、どちらも品質は優良で毛筋

           も長い。

 b)米綿の品質による分類

 一口に米綿といってもその品質は種類によって違うので取引上次の四つに区分される。

シーアイランド綿(主産地は南北カロライナ、ジョージア州沿岸の諸島)、アップランド

綿(主産地は南北カロライナ、ジョージア、アーカンソー、アラバマなどの高地)、ガル

フ綿(主産地はミシシッピ、ルイジアナ地方)、テキサス綿(主産地はテキサス)。

 c)その他の分類

 その他の分類の仕方としては綿花の品位を、繊維の長さ、細さ、強力、色合い、光沢、

天然撚り、夾雑物、の程度などにより格付けすることがあるが、その方法は産地によって

違っている。また、繊維長を基準に分類する場合は、26.6mm以上ある長繊維や、それ以上

の超長繊維などに分かれる。超長繊維に含まれるシーアイランド綿(海島綿)は繊維長が

38〜51mmにも達し、繊維も細く、乳白色で光沢に富み、最高級の細番手綿糸の原料として

使われている。

 

  3 性状

 a)物理的性状(外観)

 綿糸を側面から見た外観は、偏平なリボン状の状態を呈していて、全長にわたり天然の

撚りがみらる。撚り数は細い綿ほど多くシーアイランド綿では74/cm 程、米綿では64〜66

/cm ぐらい、インド綿では40〜48/cm 程である。この撚りは綿繊維独特のもので、この撚

りによって繊維同志の摩擦抵抗が増し、また糸をふっくらさせて糸の弾力も増す。ただし

、マーセル化綿では撚りがやや少なくなる。横断面の形は空豆型、馬蹄型等様々なものが

みうけられるが、概して押しつぶされたマカロニのような、偏平な管状を成し、中空部に

は空気を含む。この空気のおかげで保温性が増し、綿布団などを日光に当てると膨張する

のも、この中空部の空気のおかげである。またマーセル化綿での横断面は円形を成す。

 b)化学的性状

 綿繊維の主成分は炭素、水素、酸素の化合物より成るセルロースで、これが全体の九割

を占める。残りは水分、ロウ分、脂肪分、灰分、色素分である。このうちのロウ分(ワッ

クス)は繊維の表面に薄くフィルム状に付着して繊維に保護・防水性を与えている。

溶剤としては 70%硫酸、銅アンモニア溶液があげられる。燃焼試験では、炎に近づけると

触れた直後に燃えだし、炎から離しても燃えつづける。臭いは紙の燃えるような臭いがし

、燃焼後の灰は非常に小さく、柔らかく、灰色をしている。

 

    4 用途、需要

 綿製品の用途としては、その綿の持つ風合いのよさ、吸水性、耐洗濯性の良さ、紡績の

容易性、染色性の良さ、耐熱性、また価格のてごろさなどにより、衣類からインテリア、

日用品、工業用品まで、かなり幅広く、様々な種類の製品として活躍している。需要の面

では18世紀後半の産業革命以後急速に伸び、わが国でも江戸時代になると栽培も行われ

、また、外国からの輸入も多くなって需要は伸び、1989年まで生産は増加していた。

最近では、他の繊維、特に合繊に押され気味で需要も伸び悩みだしたため、生産者、製造

業者共に色々な工夫で巻き返しを図っている。例えば、70年代初めから国内で販売され

始めた海島綿や、80年代後半より大量に出回りだしたエジプト綿など、高級感を前面に

押し出した方向で差別化による需要回復をねらっている。さらに、糸を細くすることでも

質を向上させており、原料の吟味と高速紡績中の糸切れに対処する技術により、現在20

0番手ぐらいまで作るメーカーも多い。愛知県大口町の同興紡績では300番手のものを

製品化しハンカチや高級な下着などに使用している。これも差別化、高級化の方向性に一

致する。また別の方向性としてはハイオートメションによる極端な省人化(これらの技術

革新によって糸を紡ぐ工場内には人はまばらになった)、作業工程内での技術革新による

工程の簡略化でのコストダウンで需要を作りだそうと頑張っている。国内でのこれらの動

きの背景には、単に合繊の進出ばかりではなく、新しい海外の綿生産国の台頭、韓国など

よりの綿製品の輸入増大、最近ではパキスタンからの輸入量の増大も関係している。

 

   5 その他の特徴

 a)実綿(はみわた)、繰綿(くりわた)

 摘み採ったばかりの綿花は種子がついていて、これを実綿(または、はみわた・Seed

cotton) という。実綿より繊維を採るには綿操機(Cotton Gin) を使う。綿操機には長繊

維用のローラー・ジン(Roller Gin)と、中繊維用のソウ・ジン (Sow Gin)がある。

種子を分離した綿を操綿といい、実綿からこれを取りさった後の種子には、長繊維 (リン

ト) の根元に生えている短繊維、コットン・リンターが残る。このコットン・リンターは

再生繊維の原料として用いられる。実綿から操綿の採れる量は割合として約三分の一とさ

れており、コットン・リンターは、約 6〜10% である。

b)綿製品の加工

今日では、綿をそのままの状態で製品にするばかりではなく、様々な加工を施してから

市場に提供している。その目的としては大別して二つ、「機能性の強化」と、「風合い、

着心地、見た目の良さ」を目的とした加工があげられる。

機能性の強化としては防縮、防しわ( 綿100%でも洗濯後しわが残らない) 、防水( はっ水

) 、抗菌、防臭などの加工がなされており、風合い、着心地、見た目の良さを目的とした

加工では、シルケット加工( マーセル化綿) や起毛加工などがなされる。シルケット加工

とは、綿繊維を独特の加工法で、まず、綿繊維を濃カセイソーダに浸漬する。これにより

綿繊維はふくれあがり、天然撚りは無くなり、長さは収縮するのだが、この時、収縮でき

ないように緊張して浸漬すれば、絹のような光沢を持つ綿繊維となる。この加工を施した

ものをマーセル化綿またはマーセライズド・コットン(Mercerized Cotton) とよび、この

加工により染色性も増す。イギリスのJohn Mercer が化学実験中にカセイソーダ中の沈殿

物の濾過に綿布を使用したことにより偶然発見したものである。また、起毛加工では綿布

の表面を針やサンドペーパーのようなものでこすり、表面が毛羽立った状態を作りだして

いる。複合的な加工を目的としたものでは、日清紡からのスーパーソフトなどがあり、綿

糸を液体アンモニアに浸け加工することで、綿の良さを残しながら縮まず、しわになりに

くい繊維を作りだすことに成功している。

 c)綿糸の特殊仕上げ

綿糸も用途により、様々な特殊な仕上げを施している。

ガス糸──紡糸した糸の表面の毛羽をガスの炎のなかを通し、焼き去り、滑らかな光沢の

ある外観をもつ糸を作る。絹や麻でも同様の加工を行うことがある。

シルケット糸──前述シルケット加工を参照。

カタン糸──通常、ミシン糸に使われる。紡績工程は必ずコーマー(短い繊維を取り除き

長さをそろえて、コーマー紡績をする糸を作る機械) を通し、長い繊維を揃えて紡績す

る。染色後、糸磨き(Polishing) という工程が入る。

レース糸──32'S〜80'Sの漂白したガス糸を数本、撚りを強くかけたもの。

 d)色付き綿花

最近の新しい商品で、米国カリフォルニアではベージュ、ペパーミントグリーンの綿花

などが、すでに商業的に栽培されている。現在は、ピンクや紫も開発中である。

発見は1982年、昆虫学者のサリー・フォックス氏。無農薬栽培の研究で虫害に強い綿

を開発中に発見。もともと綿花は色のついていた種を改良していき、現在の白い綿花を造

り上げたといわれるので、先祖がえりをさせたものといえよう。色は育て方や土壌によっ

て変わる。1991年春より国内でも8社より商品化されている。

染色では出にくい色ができると言われている。また、無農薬栽培ができ、染色工程も要ら

ないので環境にも優しいということで、エコロジー路線に訴えかけた商品開発が展開でき

る。一方、弱みとしてコストが白い綿花の数倍にもなるというのが問題である。

 e)脱脂綿(Absorbent Cotton)

夾雑物を取り除き、さらに、表面のロウも薬品により完全に取り除き、吸水しやすくした

もの。原料には主にデシ綿と呼ばれるインド在来種綿( 特にベンゴール綿) または、パキ

スタン綿などを使う。

 

6 カッポク (パンヤ)

主産地はインドネシアで、その他インド、タイ、インドシナ半島などで採れる。高さ10

〜15m の喬木のさく果という種子から採取する。綿のように天然撚りも、縮れもなく、手

触りも非常になめらかで、絡み合う性質がなく、強力も弱いため、これだけでは紡績でき

ない。繊維長は18〜27mm、直径約0.02mm、繊維は中空構造で水の浸透に耐える性質を持つ

ため浮遊性に富み、自己の重量の三五倍の量を浮かせることができる。浸水後一ヵ月でも

26倍もの量を浮かせることができる性質のため、救命胴着の充填材に使われる。また、

軽く、保温性、弾力性に富むため、枕綿、布団綿の代用品として使われる。ただし、布団

綿の場合、カッポクだけでは長期間の使用により、折りたたんだりされる位置では、繊維

がちぎれだし、平面状態を失い、かたまってしまうので、通常、綿花を少量混ぜて使う。

 

 

 

 二、 麻

 

1 麻の種類

        2 特徴、性状(物理、化学的特徴)

        3 亜麻

        4 苧麻とラミー

        5 大麻

        6 黄麻(ジュート)

        7 マニラ麻

        8 サイザル麻

        9 その他の麻類

             a)市皮

             b)ぼう麻

             c)ケナフ

             d)線麻

             e)ラフィア繊維

             f)ニュージーランド・フラックス

             g)コイヤー・ファイバー

             h)芭蕉

 

 ひとくちに麻といっても、その種類は亜麻、苧麻、黄麻、大麻などと数多く、その歴史

も有史以前から使われていた苧麻や大麻、その他の天然の麻などと、長い歴史を持つ繊維

素材である。わが国でも、古来より苧麻や大麻の織物を「上布」と言い、夏の衣料として

使ってきた歴史がある。さらに、中国や日本などでは、「古来より麻は神聖で貴重なもの

として扱われており、神事の際の結び紐には必ず麻が使われていたり、また 麻は中国の

諺にもあるように、真っ直ぐで強いものとの感があり、産まれた子の名に麻の字を使った

りと、珍重されることが多かった。」

 麻は綿製品が浸透する江戸時代前まで、麻は庶民の衣類などの素材の主役であった。他

の植物繊維と比べても扱いやすく、あまり手間もかからずに栽培でき、さらに糸に紡ぎや

すく、加工もしやすく、とりわけ丈夫で長持ちして、麻の着物は一枚作れば一生着れた、

と言われたほどであった。そのような理由で庶民の衣料はほとんどが麻であった時代もあ

った。しかしその後、肌触りも柔らかく、着心地のよい綿製品にだんだんとその座をとっ

て代わられるようになっていく。だが、山村などで農作業をする人たちの間では、丈夫で

、ばらやかぎ裂きにも強く、水切れもよいという特長によって麻の着物がまだ当分は着ら

れる時代が続く。さらに山村の人々は現金収入が少なく自家製で出来る麻などの着物に頼

るしかなく、この状況は第二次大戦後まで続いた。

また、江戸の中期頃にもなると庶民の生活が向上し、いままで土間であったり板張りであ

った住居に、床を張り、畳を敷くようになってきて、畳糸として麻の需要は急速に伸びる

。ところが、明治も中期頃になると産業革命による、綿製品の価格の低下によって綿にと

ってかわられるようになり、栽培面積も減るほどになってきた。しかし、太平洋戦争が始

まると軍の需要により、再び需要量が伸び、一時期、麻の作付けも多くなるが、戦争の終

結と同時に軍の需要もなくなる。その上、進駐軍による「大麻取締法」が制定され、麻薬

の原料となる麻の栽培は厚生大臣の許可が必要になってしまう。さらに、戦後、普及しだ

した今までと比べようにないほど強く、価格の安い化学繊維により、麻産業は衰退の道へ

と追いやられる。

産業用素材の分野で、麻の利用価値はなくなり、今は殆ど合成繊維にとってかわられた。

しかし、麻という素材は、存在価値が無くなっていってしまったわけではなく、ファッシ

ョンやインテリアにおいて、利用価値は、その麻の持つ独特のシャリ感や麻という素材自

体の自然な色彩、熱伝導立の良さによる袖を通したときの涼感、夏服に使用したときに感

じられる粋さ、エコロジー、および天然素材への憧れ、など、どちらかというと機能面よ

りは外観的な面で、多く見られている。1980年代には天然繊維が流行し、麻素材の服

がブームになったこともあり。現在では、麻とレーヨンの混紡、交織によるタオルなど、

新しい使い方がなされたり、麻素材のシーツなどが静かな流行を生んでいる。

 

 

   1 麻の種類

 麻と呼ばれるものには様々な種類があり、植物の皮から採れる靭皮繊維と、茎や葉の脈

などからなる葉脈繊維とに分けることが出来る。そして靭皮繊維としては亜麻、苧麻、大

麻、黄麻、市皮、ぼう麻、ケナフ、線麻、芭蕉などがあげられる。葉脈繊維としてはマニ

ラ麻、サイザル麻、ラフィア繊維、ニュージーランド・フラックスなどがある。また果実

繊維としてココヤシの実からとれるコイヤー・ファイバーなるものもある。

また麻は硬質繊維(Hard Fiber) などと呼ばれることもあるが、それをさらに、亜麻、苧

麻、ラミー、黄麻などの比較的軟らかい繊維−軟質麻(Soft Hemp) と、マニラ麻、サイザ

ル麻などの繊維−硬質麻(Hard hemp) とに分けることもある。

 

   2 特徴、性状

 麻の特長として、ナイロンなどの合繊が現れる前は、まず その強さという点で他の繊

維に勝り、綿と比べては約二倍の強度がある。他には吸水・放水性の良さがあり、汗など

の水分をよく吸い、洗濯後の乾きも非常に速い。しかし、しわになりやすいという欠点が

あり、洗濯後のアイロン掛けは、もちろんのこと、着用時にも容易にしわができる。さら

に弾力性・伸度に乏しい、しなやかさに欠ける、染色性が悪いといった特徴がある。

麻繊維を顕微鏡で見た外観は、側面では繊維方向に線条が走り、所々に節が見うけられ、

先端は、亜麻が鋭角的であるのに対し、ラミーは鈍角である。断面は、亜麻が多角形で中

空部分があり、ラミーは偏平な楕円形で中空部分を持つ。

溶剤としては、70% 硫酸、銅アンモニア溶液と、綿と同じである。燃焼試験も綿とほぼ同

じ結果を示す。

麻の変わった用途として、麻殻(おがら)というものがあり、麻殻とは大麻か苧麻の麻糸

を採った残りで腐敗しにくいのと白い切り口が外観的にもよろこばれ、萱屋根の一番下の

人目の付くところに使われていた。

 

   3 亜麻(リネン・Flax or Linen )

亜麻ともリネンとも言われ、栽培された繊維の原料としては一番古いとも、言われてい

る。18〜19世紀の始めにかけて各種繊維のなかで、全世界での生産量が一位という時

期もあったが、19世紀の半ばごろ綿紡績機の発達によりその地位をとってかわられる。

しかし、現在でも麻類のなかでは最も重要な繊維となっている。

亜麻植物は一年生の植物で繊維亜麻と種子亜麻、鑑賞亜麻との三種に大別でき、繊維亜麻

には花が淡紫色のと白色のものとがあり、それぞれに品質が違い、前者は品質がよいが栽

培が困難で、後者は栽培が容易だが品質が多少落ちる。

製麻方法は茎の太さ1.5 〜2mm 高さ90cm程で根のまま抜き取り、乾燥後、脱穀機にかけ、

種子、葉を取り除く、この茎だけになったものを生茎と呼ぶ。この生茎から繊維を分離す

るには、最初に浸水を行う。この浸水は木質部と靭皮を癒着しているゴム質を軽度の醗酵

により分離しやすくするためである。それを乾燥させたものを干茎とよぶ。これを自動製

線機にかけて木質部を破砕してたたき落とし、出来た繊維を亜麻正線(Scutched flax or

Flax Fiber)といい、この工程で生じる短いくず繊維をスカッチング・トウ(Scutching

Tow)という。亜麻正線の長さは60〜90cmにも達するが、これはまだ一本の繊維ではなく、

多数の繊維がペクチンやゴム質の物質によって結合しているものである。単繊維の長さは

5.5 〜76mm、平均30mm、太さ0.0076〜0.0158mm、平均0.0102mmぐらいである

。しかし、単繊維の状態にするのは機械的に困難なので 7〜20cmぐらい、長いもので50

cm程のものを使う。色は帯黄褐色のものが優良とされている。浸水の状況により銀灰色、

帯緑灰色、灰白色なものもできる。

わが国では需要のすべてを輸入に頼っていて、中国、旧ソ連、ベルギー、台湾などから輸

入している。海外での生産は旧ソ連が最も多く、それに続きポーランド、ベルギー、オラ

ンダ、チェコスロバキア、アイルランドなどである。なかでもベルギー産のものはクート

レー亜麻といい、品質も最高で、銀灰色をして、繊維が細いため、最高300番手ぐらい

までの糸を作ることが可能である。

亜麻の強度は綿より強いが、伸度にとぼしく、吸水性、発散速度に優れ、紫外線の透過率

は比較的に大きく、熱の伝導率も高い、染料に対する親和性は少ないため、堅牢な染色に

はインダスレン染料を必要とし、直接染料では十分に染め上がらない。また酸やアルカリ

の影響を受けやすいため、漂白剤などには弱い。

以前は、強力という性質を利用した用途が多かったが、近年、その部分では合繊にとって

かわられ、現在、主にレーヨン、あるいはポリエステルとの混紡、或いは100%使いにより

、強力という面でよりは、その光沢、硬直性などによる触感、風合いに重点をおいた使わ

れ方をするようになってきてる。

 

   4 苧麻とラミー(China Grass and Ramie )

 苧麻はわが国でも、古来より栽培されてきた植物で、からむしと呼ばれていたり支那麻

とも呼ばれていたりした。従来、苧麻とラミーは別の植物とされていたが、近年の学説で

はラミーは苧麻の一変種にすぎないとされている。商習慣上は苧麻もラミーも同じものと

され、一般的にはラミーのほうが通じやすい。

ラミーは湿気の多い温暖な気候、特に熱帯、亜熱帯での栽培に適する。主産地は中国中南

部、朝鮮半島、台湾、インドネシア、ボルネオ、フィリピン、インド、ブラジルなど。日

本では野性のものも多かったが、長野、新潟、山形、滋賀、九州などで採れる。現在は国

内消費のほとんどを輸入に頼り、主にブラジル、中国、フィリピン、台湾などから輸入し

ている。なかでも、フィリピン産の製品の質は最高である。

原料ラミーは、通常長さ0.6 〜1m程、長いもので1.5 〜2m程のものもある。これらは単繊

維数本が膠質の物質で膠着しているものである。単繊維は亜麻、黄麻よりも長く太い、紡

績原料に使うには10〜20cmに切りそろえて用いる。色は白色、淡緑色、淡黄色をしている

。これを精錬漂白すれば、絹のような美しい光沢を示すので絹麻とも呼ばれる。

強力は大麻より弱く、亜麻よりは強い。特に湿潤時に強力を増すが、長時間、水に浸して

おくと腐敗菌により脆化する。熱伝導率に優れ夏の衣服に適するが、屈撓性に乏しく、し

わになりやすいという欠点がある。

用途としては、高級着尺地としての上布になり、現在も珍重されているが、その他の用途

(産業用など)のほとんどは合繊にとってかわられている。

 

5 大麻(Hemp)

 わが国では「たいま」というより、単に「あさ」と呼ばれることが多かった。また、苧

麻で出来た布と大麻で出来た布とでは区別せずに「ぬの」とよんでいたりもした。「白そ

」「野州麻」などとも呼ばれることもある。「白そ」とは「あかそ」に対しての言い方で

あろうと思われる。亜麻とともに最も古くから栽培されていたといわれている。発祥の地

はインドやペルシアとされているが、現在では熱帯よりも温帯地方での栽培のほうが盛ん

で、旧ソ連、フランス、イタリア、アメリカ、中国、日本、などで栽培されている。品質

ではイタリア産のものが良いとされている。日本では栃木が最大の産地で、その他、長野

、岩手、青森など全国各地で栽培されている。しかし、「麻薬取締法」により、近年、栽

培管理が厳しくなってきている。

 大麻繊維は単繊維がたがいに膠着し合って外観上は2 〜3mにも達する繊維を形成してい

る。色は淡黄色、銀灰色、淡緑色などのものがある。吸湿性が綿、亜麻よりも若干大きく

、屈撓性に乏しいが、強力が大きい。

用途としては、亜麻またはラミーの紡績に代用原料として用いることがあるが、通常、ひ

も、ロープ類などに使われる。

 

    6 黄麻( Jute)

 黄麻というよりも、ジュートと言ったほうが通じやすい。また、カルカッタが世界最大

のジュート集散地であったため、カルカッタ・ヘンプ(Calcutta Hemp)とも言う。

高温多湿に適するので、バングラディッシュで最も多く産し、次いでインド、その他タイ

、ネパール、パキスタン、インドネシア、ブラジル、台湾などでも生産される。バングラ

ディッシュ、インドの生産量で世界の総生産量の約九割を占めてしまうので、世界の相場

はこれらの製品が集散するカルカッタ市場の相場が基準となされる。

 黄麻は一般的に、緑褐色、または黄褐色を帯びているが、上質のものは銀灰色である。

強力は亜麻、ラミーよりはるかに劣る。さらに、大気中で湿気や日光に長時間さらされる

と、繊維は暗褐色に変じ、強力も低下する。見かけの繊維長は 2〜3mにも達するが、単繊

維では1.3 〜5.1mm 程度で、これがゴム質の物質で膠着して出来ている。綿、亜麻などと

違い、セルロースとリグニン(木質分のことで、植物の木質部を構成する成分と同じ性質

のもの)とが結合したリグノ・セルロースを主成分としているため、亜麻などより抗張力

が弱い。

 用途としては、穀類などを入れるガンニー・バッグ(Gunny Bag)または、一般輸出入品

等の包装用ヘシアン・クロス(Hessian Cloth.黄麻布。綿花の包装用などにも用いられる

)の原料となる。

 

   7 マニラ麻(Manila Hemp)

 バナナの植物に良く似た一種の芭蕉の葉柄から採った繊維で、フィリピンではアバカ

(Abaca)と呼ばれる。

栽培地は熱帯に限られ、フィリピン、インドネシア、中米などで産する。なかでもフィリ

ピンは世界の全生産量の約九割を産出し、特にタバオの麻は世界的に有名である。

単繊維で長さ2.54〜12.7mm太さ0.01〜0.02mm程度のものが、多数連なり膠着し、2

〜4mの長い繊維となる。繊維間に隙間を持ち、中心に中空部を持つため、比重が大変軽

く、また、耐海水性にすぐれるという特徴を持つ。その特徴により船舶用のロープに使

われ、その他、婦人用帽子を作る麻真田(あささなだ)の原料にもなる。品質により、

和紙の原料にもなり、楮、みつまた、などと混ぜ、コピー用紙などのような高級薄紙の原

料にもなる。しかし、その硬質さにより、ほとんど織物にはされない。

 

   8 サイザル麻(Sisal Hemp)

 竜舌蘭の葉から繊維を採ったもので、メキシコではヘネケン(Henequen) という。マゲ

ー(Maguey) というものはサイザルの類似品であるが植物学上は別種と分類される。

中米、南米、インドネシア、アフリカなどの熱帯で栽培され、なかでもメキシコと東アフ

リカで多く産し、東アフリカの産出量は三分の一にも達する。日本では産出されないので

すべてを輸入に頼る。

繊維の長さ太さはマニラ麻とほとんど類似しているが、質はマニラ麻より大分硬く、強力

、屈撓性に劣るので、ロープに用いてもそれほど使いよくはない。色は白色、淡黄白色で

光沢はマニラ麻ほどではない。価格はマニラ麻よりは手頃だが利用価値においては劣るた

め、ほとんどがマニラ麻の代用品として、陸上用綱索類にのみ使われる。

 

   9 その他の麻類

 a)市皮(いちび)

 東海・九州地方で栽培される。英名(Indian Malow)。黄麻に似た靱皮繊維。黄麻より

は強力、品質が落ちる。

 b)ぼう麻

 中国の華北、華中、東北地方などで栽培される。市皮と同種の植物から採れる。華北で

は、これを天津ジュート、青麻(ちんま)と呼ぶ。

 c)ケナフ(Kenaph)

 洋麻、またはタイジュートと呼ぶ。原産地はインドおよびイランであったが、現在はタ

イを主とし、その他ベトナム、カンボジアの辺りでも栽培されている。

 d)線麻(せんま)

 中国の華北で栽培される大麻の一種。大麻よりも強力、および品質に劣る。

 e)ラフィア繊維(Raffia Fiber)

 マダガスカル島特産のラフィア椰子(Rafffia Palm)の葉から採った繊維。淡いクリー

ム色を帯び、柔軟な質をもつが、強く、水に濡れても伸縮性が少ない。

 f)ニュージーランド・フラックス(Newzealand Flax )

 ニュージーランド特産の叢生する多年生植物の葉の筋から採った繊維。原住民マリオ族

は、これによって織物を作る。

 g)コイヤー・ファイバー(Coir Fiber)

 ここやし繊維のことで、東インド、スリランカ、フィリピン、タイ、マレーシア、ケニ

ア、タンザニアなどで採れ、やし油の原料コプラ採取のさいの副産物であり、利用価値は

低い。

 h)芭蕉

 現在では、沖縄でのみ産し、芭蕉布の原料となる。沖縄では本島国頭の大宜味村喜如嘉

と竹富島、または西表などで栽培される。糸芭蕉と実芭蕉があり、繊維は糸芭蕉の二年経

過した茎から採れ、後者からはバナナが採れる。外、中、内皮によって繊維の質が異なり

、外皮繊維は太く、中、内繊維は細く良好なので、中、内繊維により芭蕉布は作られる。

織りあげた布は島の魂とされている祭事や芸能に重要な衣装として使われた歴史があり、

階級、男女の差別なく着用された、沖縄を代表する夏衣の材料となった。

繊維の色相は白茶色を呈し、乾燥すると著しく強力を低下させる。

 

 

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