レーヨンとは、1924年にアメリカで従来のArtificial Silk から、光る糸という意
味を込めてレーヨンという名に改名されたものである。狭義には、ビスコースレーヨンの
ことを指すのだが、ポリノジック、キュプラなどをも加え、総称してレーヨンと呼ぶこと
もある。ビスコースレーヨンの種類としては、フィラメント、ステープル共に作られてい
て、さらに強力レーヨン、中空レーヨン、偏平糸(リボンストロー)などがある。艶のあ
るものをブライト、艶消ししたものをダルという。フィラメントは数本から数十本を束ね
てレーヨン糸にし、ステープルは紡績してスパン・レーヨン糸(いわゆるスフ)になる。
強力レーヨンは紡出方式により強度を強めたもので、強力レーヨン糸にスーパービストロ
ン(ユニチカ)、強力レーヨンステープルにレーコット(旭化成工業)などがある。中空
レーヨンは繊維中に発砲をおこさせたもので軽く保温性を持つ。また、ステープルには羊
毛のような捲縮を与えた捲縮レーヨン・ステープルも製造されており、羊毛と同様の用途
に用いられている。フィラメント類は絹と同様な織物地、編み物地、レース類に向けられ
、ステープル類は綿、毛、絹紡績などと似た使用のされ方をしている。製品はしわになり
やすいので、樹脂で加工し、防シワ加工を施す場合がある。
1892年イギリスで発明され、1904年本格的に工業化された。わが国では一番最
初に作られた化学繊維で、亜硫酸パルプが主原料となる。昔はフィラメントを人造絹糸
(人絹)、ステープルをステープル・ファイバー(スフ)と呼んでいたが、現在では年配
の人の口から以外は聞くことが無くなった。手触りはさらっとしており、吸水性、染色性
に優れる。普通のレーヨンの強力は綿よりも劣り、特に湿潤時には通常時よりも60〜70%
にも落ちる。弾力も他の繊維より劣り、しわになりやすいが、他の繊維となじみやすく、
交織、混紡にもよく使われる。染色は直接染料で染まる。
変わった用途としては、棺桶の内装用繊維(燃えやすく灰が残らないため)、ガムテープ
の基布としても用いられている。
一般性状として理化学的性質は同繊維素の綿、麻と似た性質を表す。溶剤は 60%硫酸、
35%塩酸、銅アンモニア溶液。燃焼試験では、炎に近づけると直ちに燃え、炎から離すと
燃焼を続け、早い速度で燃えつづける。また残照は無く、臭いは紙の燃えるような臭いが
し、灰はダルでなければほとんど残らない。顕微鏡で見た外観は、側面で繊維軸方向に数
本の線状が見られ、断面では不規則な花弁状の輪郭が見られる。
平均重合度が400以上の結晶化度の高い繊維。作り方はレーヨンとほぼ似ている。わ
が国で発明された「虎木綿」を改良したもので綿に近い性質を持っている。強力がレーヨ
ンよりも優れているので細番手織物にでき、耐アルカリ性にすぐれ、洗濯時に型崩れしに
くく、レーヨンと同様、染色性、吸水性があり、絹のようなさらっとした光沢を持つ。顕
微鏡的外観では、表面は滑らかで、断面は円形であり、燃焼試験はレーヨンに準ずる。綿
と混紡してシルケット加工ができ、またサンフォライズ加工(防縮加工)ができる。用途
としては、綿と混紡して下着などに用いられることが多い。
別名、銅アンモニアレーヨンとも呼ばれ、コットンリンター、または木材パルプを銅ア
ンモニア溶液で溶解し、紡糸する。日本では旭化成がライセンス生産を行い、「ベンベル
グ」という商標名で有名である。硝化法人絹に次いで1890年に完成され1897年に
工業化されビスコースレーヨンの7年前より工業化されていたが、生産費が割高なためビ
スコースレーヨンに発展を阻まれた経歴を持つ。非常に細い糸ができ、しなやかで肌触り
がよくトリコットや薄地の生地または、特に裏地として多く使われる。生産はフィラメン
トが主体だがステープルも若干産する。特徴は細い糸ができ、柔らかい感触と絹の風合い
があり、繊細で優雅な光沢を持ち、染色性を持ち、洗濯や日光による褪色が少ないなどの
メリットがある。燃焼試験、及び顕微鏡的外観はポリノジックに準ずる。現在の一般的な
衣服の裏地として、かなり普及している製品である。
アセテート系のものはアセテート、トリアセテート、酸化アセテート、エチルアセテー
トなどに分かれる。アセテートはトリアセテートに対し正確にはダイアセテートと呼ぶべ
きもので、商品にはエステラン(ダイセル化学工業)、テイジンアセテート(帝人アセテ
ート)、リンダアセテート(三菱アセテート)、他にミナロン、カロランなどがある。ト
リアセテートは、アセテートよりも酢酸の結びつきが多く、アセテートよりも吸水性が劣
り、耐熱性に優れる。商品はソアロン(三菱アセテート)、アーネルなどがある。酸化ア
セテートではアロンなどが販売されている。
1984年以来イギリスで研究され、第一次大戦後本格的に工業化された。わが国では
酢酸、アセトンが高価なため生産量はたいしたことはないが、アメリカでは衣料を中心と
して大量に消費されている。レーヨンやポリノジック同様、パルプを主原料としているが
、これに酢酸を作用させて作っているので、植物性繊維と合成繊維の特徴を併せ持つ。比
重は綿、レーヨン、キュプラなどより軽く、毛とほぼ同じで、ふっくらとした風合いと豊
かな感触を持つ。フィラメントは絹のような光沢と感触を持ち、発色性の良さと、適度な
吸水性、保温、弾力性を持つ。熱可塑性があるためプリーツ製品などに用いられる。ステ
ープルファイバーは羊毛との混紡に好適とされている。用途としては衣料、インテリア、
その他では洋傘や煙草のフィルターなどに用いられる。備考としては、しみ抜きのアセト
ン、シンナーなどの溶液に溶けてしまうので注意がいる。
顕微鏡的外観としてはアセテート、トリアセテート共に側面で繊維軸方向に一〜二本の
線条がみられ、断面ではクローバーの葉状の外形が見られる。溶剤はアセテートがアセト
ン、氷酢酸で、トリアセテートでは 70%硫酸、塩化メチレンである。燃焼試験で、炎に近
づけると溶融しながら炎から離れ、そのまま溶融し燃焼しつづける。燃焼臭は酢酸の臭い
がし、灰は黒くて硬くもろい不規則な形をする。
東洋紡の開発により、アクリル繊維の原料、アクリロニトリルと、天然の動物性蛋白質の
牛乳蛋白を重合して作った繊維であり、商品名シノンとして東洋紡より市場に出ている。
適度な吸水性と、絹のような暖かい感触、美しい光沢を持ち、耐候性、染色性、発色性に
優れ、虫にもやや抵抗力を持つ。しかし、カビに対しての抵抗力は少し劣り、また、塩素
系漂白剤、スチームアイロンにも弱く避けたほうがよい。天然物質と合成物質を共重合し
たことは世界初の試みであり、天然物質の導入により、絹により近い風合いと光沢を出す
ことが可能となった。比重は 1.2で絹よりも一割ほど軽い。側面は繊維方向に細い線条が
走っており、断面は周辺に不規則な凹凸のある楕円形あるいは繭形をしている。
再生タンパク質系繊維を総称しアズロンとも呼び、その他のアズロンの仲間には牛乳蛋
白ではアララックス、カスレン、カソラナ、フィプロレンや、イタリアのメリバ、ラニタ
ールなどがあり、大豆蛋白ではソイロン、落花生蛋白でのイギリスのアーデル、トウモロ
シ蛋白によるアメリカのバイカラなどがあるが、これらのほとんどは現在、市場より消え
去っている。
合成繊維のなかでは最初の本格的な製品で、アメリカ、デュポン社より「石炭と空気と
水からつくられ、クモの糸より細く、鋼鉄のように強い」というキャッチフレーズで発表
された繊維である。当初、くつ下やストッキングでメジャーになり、日本でも「戦後、く
つ下と女は強くなった」と言わしめた繊維製品である。
代表的な種類には日本やドイツのナイロン6 や、アメリカやイギリスのナイロン66があ
り、前者には東レナイロン(東レ)、テイジンナイロン(帝人) 、ユニチカナイロン(ユ
ニチカ)、旭化成ナイロン(旭化成工業)東洋紡ナイロン(東洋紡)、カネボウナイロン
(鐘紡)、エンカロン、ベルロンLなどがあり、後者にはデュポンナイロン(デュポン)
、バイエルン、ペルロン、プロミラン(東レ)、レオナ66(旭化成工業)などがあり、こ
のナイロン66は全世界ナイロン生産量の七〜八割を占める。その他にもナイロン6 10、フ
ランスのナイロン11などもあり、これらは、重合している原子の結合状態によって違いが
できる。また、ウーリーナイロン、や複合繊維、異形断面繊維、制電制繊維、ナイロンモ
ノフィラメントなども作られている。以前まではアラミド繊維もポリアミド繊維というこ
とでこの仲間にされていた。
ナイロンとはアミド基(CONH) で炭化水素基が結合された合成線状ポリアミドに対して
与えられた一般名称であり、原料は基本的に空気と水と石炭であるが、近年、石炭を用い
ず、石油やトウモロコシの穂軸、綿実殻などからも作ることができる。ナイロンは引っ張
り、折り曲げ、摩擦などの外力に対して強く、濡れてもこの特長は低下しない。さらに、
弾力性を持つため皺になりにくく、熱可塑性があるため適正なセットを施せば伸び縮みや
型崩れも無く洗濯が楽である。比重は1.14で生糸の8割、綿の7割と非常に軽い。光沢が
あり、酸やアルカリ、海水、カビ、虫にも強く、染色も容易なほうで直接染料でもある程
度染め付けることができる。短所としては吸水性が悪いことや、耐熱性、耐紫外線性に劣
ることや、静電気が起きやすいなどであるが、吸水性がないことで洗濯後の乾きが早いと
いうことにもなっている。フィラメントの用途は衣料、インテリア、産業と幅広く、ステ
ープルはレーヨン、綿、羊毛などとの混紡として多くの糸、織物類になっている。フィラ
メントは通常3D程の単繊維数本の引き揃えで使われるが、太い一本の単繊維で使用される
ナイロンモノフィラメントなるものもあり、テグスやテニスのガットなどに用いられる。
またナイロンに伸縮かさ高加工を施したウーリーナイロン、バンロン、ヘランカ(商標名
)は靴下および肌着での需要が多い。レーヨン、綿、羊毛などとの混紡用のナイロン短繊
維は、太さ長さを調節するもので、切断前に捲縮加工を行うのが普通である。
最近、製造過程上のコストダウンも盛んに行われ、例えば東レの PNC法などでは、光エネ
ルギーを使い、製造過程での化学変化を容易にしたもので、これにより、材料のラクタム
の製造原価は従来の半分以下のコストで、できると言われている。
ポリアミドとは構造中にアミド結合を持つ高分子化合物の総称で、ナイロンはアミド基
(CONH) で炭化水素基(CH2)が結合されたものが長く連なった合成線状ポリアミドの一般
名称である。溶融点はナイロン6 が摂氏215 度、ナイロン66が摂氏250 度とナイロン66の
ほうが高い。溶剤は 20%塩酸、氷酢酸( 煮沸、ナイロン66は溶解しない) 、 60%硫酸など
である。燃焼試験では、炎に近づけると溶融し、炎のなかでは溶融して燃え、炎から離す
と燃焼しない。燃焼臭はアミド特有の臭いがし、灰は硬く焦茶色から灰色のビーズを呈す
る。外観では、表面は滑らかで、断面は一般的に円形である。
1968年にデュポン社が発表したもので、ナイロンと同じポリアミドの一種であるが
、分子構造、成分、原料が従来とは違うとされている。融点が高く、比重がナイロンより
もさらに軽く、吸湿性もナイロンよりあり絹よりも少なく、防皺性、ウォッシュ アンド
ウェアー性に優れ、光沢および、染色性は絹にかなり近づいたとされている。
1941年、イギリスの ICIが開発した繊維で、 DMT(ジメチルテフタレート)とエチ
レングリコールとを重合させてできたポリエチレン・テフタレートを溶融紡糸してつくら
れたもの。わが国では1957年より生産している。
テイジンテトロン(帝人)、東レテトロン(東レ)、クラベラ、クラレエステル(クラ
レ)、東洋紡エステル(東洋紡)、ユニチカエステル、テイテルーナ(ユニチカ)、旭化
成エステル(旭化成)、ソルーナ(三菱レーヨン)、カネボウポリエステル(鐘紡)、ス
カイパック(大和紡績)、ダクロン(デュポン)、テリレン(ICI)、コーテル、フォトレ
ル、バイクロンなどの製品がある。
ポリエステルは今は、化学繊維としては一番多量に生産されている繊維である。強度(
湿潤時であっても)、摩擦、しわ回復性、薬品、カビ、虫に強く、長時間日光にさらして
も強度は落ちず、合成繊維中では比較的、耐熱性に優れ、熱可塑性がある。吸湿、吸水性
が少ないので洗濯後の縮みがなく乾燥も早く、しわ回復性があるためウォッシュ アンド
ウェア性がある。また他の繊維ともなじみやすく混紡、交織したものは、それぞれの長
所が生かされ短所を消し会うという特長が出る。例えば麻との交織では、麻の涼感と吸水
性を生かしながら、ポリエステルの耐しわ性と wash and wear特性が期待できるものにな
る。ステープルとフィラメントは大体、同量作られており、フィラメントはそのまま繊維
として使われるものと、かさ高加工を施されジャージや加工糸織物として使われるものと
がある。ステープルは主として綿や毛と混紡したり、ステープルのまま布団綿などになっ
ている。異形断面繊維や静電性繊維などの様々な加工製品も出ている。用途も衣料、イン
テリア、産業、その他人工皮革などと広く使われている。近年では原料に DMTを用いず、
高純度テレフタール酸(TPA)に切り換えることでコストダウンを図っている。
また1988年に市場に登場し、89年に商品化が進み、90年以降人気の出てきた「新
合繊」もポリエステルの糸、織物さまざまの段階での加工によるものであり、これは、こ
れまでの絹などの天然繊維により近い繊維の開発といった考え方ではなく、天然繊維を越
える、あるいは全く新しい感覚の繊維の開発といった考え方に基づく製品になりつつあり、
今日でも次々と新商品が発表されつづけていて、目の離せない動向となっている。
ポリエステルの特殊な用途では帝人が特許を持ちスポーツウェアーやブラウス、下着など
に利用されている、通気性を持ち綿よりも吸水性を持つ「ウェルキィ」を、医療用のテー
プ剤などに利用するケースがある。テープ剤は皮膚に貼ることにより体内に薬の成分をし
み込ませる働きを持つものでアメリカなどでは乗り物酔い、禁煙用として普及している。
日本では狭心症や虚血性心疾患を防ぐために帝人より「アンタップ」が発売されている。
ポリエステルの溶剤はm-クレゾール(温液)、ジメチルホルムアミド(煮沸)、ニトロ
ベンゼン(煮沸)である。燃焼試験では炎に近づけると溶解し、炎のなかでは燃え、炎か
ら離れても燃焼し続ける。燃焼臭は弱いながらも非常に甘い臭いがし、灰は硬く丸い黒色
を呈する。外観は表面では滑らかで、断面では一般的には円形の外形を見せる。比重は1.
38 。
アクリル繊維とは、アクリロニトリルを主成分とする重合体の繊維のことで、ポリアク
リロニトリル繊維、ポリアクリル繊維の略。それぞれの会社が独自の方法、または独自の
技術を補足して様々な種類が作られている繊維である。
品質表示法ではアクリルとアクリル系に分けられ、アクリロニトリルが主成分のものを
アクリルとし40〜50% のものをアクリル系とする。商標名としてはエクスラン (日本エク
スラン工業)、ファイネル、ボンネル(三菱レーヨン)、セリスタ、カシミロン(旭化成
工業)、ベスロン(東邦レーヨン)、トレロン、キューター(東レ)、ニトロン、ドラロ
ン、アクリラン、クレスラン、ゼフラン、ダイネルがあり、アクリル系のものではカネカ
ロン(鐘淵化学工業)などがある。また、アクリル系をモダクリルと呼ぶ場合もある。
一般にアクリル繊維は強度もあり、羊毛より軽く、染色性も良く、ふんわりと柔らかく
、暖かな手触りがあるのでウールの分野(特にニット)で利用されている。保温性、弾力
性、熱可塑性があり、耐薬品、耐カビ性に優れ、羊毛などのようにフェルト化しないなど
の特性を持つ。ほとんどがステープル製品でかさ高性やバルキー性を与える加工が施され
ていて、他の繊維では見られないハイバルキー糸などもあり、これは、熱収縮率の違うス
テープルを混ぜ、紡績し、これを蒸気で処理することで、さらにふっくらとしたかさ高性
のある繊維が出来上がる。ステープルのほとんどは湿式紡績だが、最近では乾式紡績のも
のも少量、生産されており、一般に繊維が均質で緻密な構造を成し、表面が滑らかなため
、ソフトでしなやかな感触、優れた弾力、優雅な光沢を持ち、カシミアなどの獣毛との混
紡にも使用される高級品も出てきている。フィラメントのものは絹のような光沢と感触が
あり、黄変しないので和装品などの絹の分野にも進出している。
ただし、洗濯後、水の重みで若干伸びるおそれがあるので注意が必要です。
毛玉ができやすく、汗を吸わなく、熱に弱いなど「安物」のイメージのあるアクリルだ
が、ここ二−三年、このアクリルに高い機能を持たせた高級アクリル繊維の開発に各メー
カーはしのぎを削っている。旭化成工業からは「スプラ」などでがでていて、繊維の断面
の形から改良を加え、静電性の克服や綿並みの吸水性、乾燥の速さ、染色性のよさなどの
機能的な利点を前面に押しだし、タオル、スポーツ衣料、高級毛布などへの進出に力を入
れている。このような製品が出てくる背景としては、急進の韓国や台湾などの低価格の製
品を得意とする企業に対して、価格以外の機能性や付加価値で競争していかないと生き残
っていけなくなってきたためである。しかし、ポリエステルなどでの新合繊の成功に対し
て、アクリルでは、紡績工程が必要なため繊維そのものの改良がそのまま製品に出にくい
のが弱点である。また、新合繊と比べて、風合いというよりは機能性を改善させたものが
主流になっている。
アクリルの燃焼試験では、炎に近づけると溶融して着火し、炎から離れても速やかに燃
え、燃焼臭は肉を焼いたときに近い臭いがし、灰は硬く黒い不規則な形をする。アクリル
系では炎に近づけると、縮れて炎から離れ、炎のなかでは黒煙を上げながら燃え、炎から
離すと燃焼を止める。臭いは石鹸を焼いた臭いにやや似ており、灰はもろい不規則な黒い
塊になる。アクリルの外観は側面では種類が多く一様ではないが表面は滑らかな方が多い
。断面では円形のものが多く、またハート形のものもある。アクリル系では表面に繊維軸
方向に走る一本の太い線が見られ、断面は馬蹄形をしているものが多い。比重はアクリル
で1.14〜1.17で、アクリル系は1.28である。
ビニロンとはポリビニルアルコール繊維にわが国で付けた一般名称であり、1939年、
桜田一郎氏(京都帝国大学名誉教授)が開発した繊維である。
ステープルが中心でクラレビニロン(クラレ)、ユニチカビニロン(ユニチカ)などが
あり、フィラメントではビロン(ニチビ)などがある。
日本で発明された合繊、合繊のなかではかなり吸湿性があり綿に近い合繊とされている。
軽く、丈夫で耐候性に優れ、産業用として広く使われている。湿っている時に熱を加える
と黄変したり、やや硬くなったりするのでアイロン掛けには注意が必要である。フィラメ
ントは絹に風合いが似ており和装品などに用いられる。
ステープルの場合には捲縮、オイリング加工を施してから切断されることが多い。また、
熱処理の程度を軽くし、アセタール化をしない繊維は温水に対して可溶性となるのでケミ
カルレースの基布となる。
学生服、作業服などにも混紡されていた時期もあったが、現在その生産量は減少している。
しかし、衣料用以外の用途で、特に発癌性物質を含むアスベストの使用規制の厳しい欧州
を中心として、アスベスト代替品として注目されている。1992年度の全生産量の4分
の1はアスベスト代替需要に振り分けられる見込みだという。
原料はアセチレンを母体としているが、もともとは石炭と石灰と水である。溶剤は 20%
塩酸、 40%蟻酸、 60%硫酸である。燃焼試験では、炎に近づけると縮んで溶融し、炎のな
かでは溶融し燃え、炎から離れても燃焼しつづける。燃焼臭はポリビニルアルコールが燃
えるとき特有の甘い臭いがし、灰は硬くて焦茶色の不規則な塊状をなす。外観は側面の中
央部で繊維軸方向に走る白い線が見られ、断面は繭状でコアー層の存在が確認できる。比
重は1.26〜1.30でレーヨン、アセテート、毛、綿よりも軽い。
塩化ビニリデン80〜90% 、塩化ビニール20〜10% を共重合し溶融、紡糸したもの。
商品としてはサラン(旭化成工業)、クレハロン(呉羽化学工業)、ベロンなどがある。
耐薬品性が非常に優れる、摩擦に強く、比重が 1.7と大きく、吸湿性が全く無いなど、極
端な性質から用途も限られ、インテリア、産業などの特別な用途に使われ、衣料用にはほ
とんど使われない。耐薬品性が非常に優れるというため、付随的に染色も困難になり、染
色は、サラン重合物という途中段階において染料、顔料を混合してから溶融、紡糸する。
また音を非常によく通すという性質により音響機器のキャビネットに用いられることもあ
る。このポリ塩化ビニリデンは、最近の電子レンジの普及により、需要の増加しているサ
ランラップ等の原材料でもある。
アセチレンと塩酸を原料としている。溶剤はテトラヒデラフロラン、ジオキサン (煮沸
) 、ジメチルホルムアミド (摂氏50〜60度) 、モノクロムベンゼン(煮沸)である。燃焼
試験では、炎に近づけると縮れて炎から離れ、炎のなかでは溶融し煙を上げ燃え、基部は
緑色を呈す、炎から離れると燃焼を止める。燃焼臭はピリッとした刺激臭で、灰はもろい
不規則な黒塊になる。外観は、側面での表面は滑らかに見え、断面では普通円形で、楕円、
偏平な形のものも見られる。
ビニール系合成繊維の一種で、合繊のなかで最も安価とされている。
種類ではテビロン(帝人)、ビクロン(呉羽化学工業)、バルレン、エンビロン、ニッ
プ、ニシカロンなどの単独重合物と、ビニヨンなどの共重合物、そしてペーツェーなどの
後塩素化合物などにわかれる。合繊のなかでは最も早く発明され、1931年、ドイツで
発明された。丈夫で耐候性に優れ、酸やアルカリにも強く、保温性に優れ、また他の繊維
との摩擦により常に負の静電気を帯びるため肌着にしてリウマチに効用があるとされ、健
康衣料として販売されたりもする。しかし、耐熱性で大変に劣り、ひどいもので摂氏60度
で収縮しはじめ、良くても 105〜110 度で縮みはじめるのでアイロン掛けの必要性を持た
ないものにしか用いられない。摩擦強度が大きく、日光に強く、吸水性が全く無いなどの
性質もある。用途は衣料では肌着、メリヤス製品に限られ、その他、布団綿、産業用途な
どに用いられる。
溶剤はテトラヒドロフラン、ジオキサン(煮沸)、ジメチルホルムアミド(常温)、モ
ノクロルベンゼン(煮沸)である。燃焼試験では、炎に近づけると縮れて離れ、炎のなか
では溶融して黒煙を上げて燃え、炎から離すと燃焼を止める。臭いはビニリデンのときに
似ているが弱い臭いで、灰の形態はビニリデンに準ずる。比重は1.39 。
ISO(International Standardization Organization) によりポリプロピレンとポリエチ
レンを合わせてポリオレフィンとよぶ提案が成されている。
ポリプロピレンで国内で見られるものにはイタリア、アメリカ、国産技術の三系統があ
り、三菱パイレン(三菱レイヨン)、東レパイレン(東レ)、東洋紡パイレン(東洋紡)
、旭化成ポリプロ(旭化成)、日東紡ポリプロ(日東紡)、ダイワボウポリプロ(大和紡
績)、トーア紡ポリプロ(東亜紡績)、チッソポリプロ(チッソ)などがあり、ポリエチ
レンではエチロン(呉羽化学工業)、カネボウカネライト(鐘紡)、サンライン(宇部日
東化成)、イナロン(稲葉化繊)、ハイゼックス、ヒラロン、ベレックス、プラチロン、
タンカロン、モプレンなどがある。
石油を原料としている。比重が0.91と合繊のなかで最も軽く、吸湿性はない。強い繊維
で弾性に富むが、耐熱性は低い。耐薬品性に優れるが、染色性は悪い。他の繊維と混紡し
てわずかに衣料用として用いられるが、産業用の用途が多い。また複合繊維 (コンジュゲ
ートファイバー) や制電性繊維も作られている。
石油から得られるエチレンを原料とする繊維。比重は0.94〜0.96とポリプロピレンに次
ぐ軽さである。強度が大きく、薬品類に強く吸水、吸湿性がなく、耐熱性も小さいため衣
料用ではなく産業用に使われることが多い。わが国ではモノフィラメントを作っているが
、外国ではマルチフィラメントを相当、作っている。また、このポリエチレンは繊維とし
てよりはフィルム状や合成樹脂で使われることが多い。
溶剤はキシレン(煮沸)やモノクロルベンゼン(煮沸)で、燃焼試験では、炎に近づけ
ると縮れて炎から離れ、炎のなかでは溶融し煙を出しながら緩やかに燃え、炎から出して
もそのまま緩やかに燃えつづける。燃焼臭はパラフィンの燃える臭いに似ていて、灰は硬
い灰色のビーズ状になる。繊維の表面は滑らかで、断面は円形をしている。
繊維自体が伸び縮みする弾性繊維で、スパンデックスは商標名であるがこの繊維の一般
名としても通用している。
この製品にはフジボウスパンデックス(富士紡績)、テイジンネオロンスパンデックス
(帝人)、オペロン(東レ・デュポン)、東洋紡エスバスパンデックス(東洋紡績)、モ
ビロン(日清紡績)、ルーベル(鐘紡)、ロイカ(旭化成工業)、ライラク(アメリカ)
、バオリン(イタリア)、スパンゼル(イギリス)、ペルロンUなどがある。
1940年頃ドイツで発明されたが、1950年以降実用化されだした。強度はそれほ
ど強くないが、ゴムの二〜四倍の引っ張り強度を持ち、ゴム同様、繊維自体が5〜8倍程
伸びる。比重は1.0 〜1.3 でゴムより軽く、ゴムのような時間の経過による品質劣化は無
く、染色性に優れ、細い糸が作れる。アルカリには強いが塩素系の漂白剤には弱い。100%
使いの製品は少なく、カバード・ヤーン、コア・スパーン・ヤーンなどの糸にされ使用さ
れる。ポリウレタンを中心にし、周囲をナイロンなどで被覆したカバリング糸からできた
パワーネットは、ファンデーションなどに多用されている。今までストレッチ素材という
とジャージー素材がほとんどであったが、この素材の登場による伸縮自在なストレッチ織
物ができるようになった。主な用途は、ファンデーション類やスポーツ衣料、衣料品のリ
ブなどに用いられている。
溶剤は 80%硫酸(タイプにより異なる)、ジメチルホルムアミド(煮沸)で、燃焼試験
では、炎に近づけると溶融し、炎のなかでは溶融し燃え、炎を離れると燃焼を止める。燃
焼時は特異な臭いを発し、灰は粘着性のあるゴム状の塊となる。表面は滑らかで、断面の
形はその種類によりまちまちである。
1968年から本格的に生産が始められたシルキー化合成繊維でユニチカのエイテルが
ある。化学構造や性質はポリエステルと良く似ていて、絹に似た外観や手触りを持ち、吸
湿性が少なく、皺になりにくく、強度、熱セット性、耐候性に優れ、黄変はしない。婦人
服地、和服地、洋傘などに用いられる。溶剤はm-クレゾール(煮沸)、フェノール四塩化
エタン混合液(煮沸)で、燃焼試験では、炎に近づけると溶融し、炎のなかでは黒煙を上
げて燃え、炎から離しても燃焼を続ける。臭いは甘い臭いがし、灰は硬く焦茶色の塊にな
る。繊維の表面は滑らかで、断面の形態は三角形をしている。
ビニロンの原料のポリビニルアルコール(ポバール)とポリ塩化ビニールの原料、塩化
ビニールを共重合して作った繊維で興人から出ているコデーランなどがある。よって性質
としては、比重は1.32で、吸湿性、強度、熱に対する性質はポリ塩化ビニールとビニロン
の中間ぐらいの特性を示す。柔らかく、保温性、耐薬品性に優れ、また、ポリ塩化ビニー
ルの性質の難燃性という特性も残っているのでカーテンなどによく用いられる。一般溶剤
には溶解せず、燃焼試験では、炎に近づけると縮れて離れ、炎のなかでは黒煙を上げ燃え
、離すと燃焼を止める。臭いには甘い刺激臭があり、灰は黒く周りは焦茶色になる。
ポリフルオロカーボンを繊維化したもので、テフロンはデュポン社の製品である。この
糸状分子はフッ素が炭素の周囲を取り巻いているため、化学薬品に対する抵抗力が非常に
強く、また、耐熱性に優れ、摩擦係数も非常に優れるなどの特長を持つが、価格が高いの
で一般用途には向かない。よって、価格の安い他の分子と共重合させ、コストを抑える研
究がなされている。
鐘紡が開発した、絹感覚の複合繊維の一種。芯にポリエステル糸、その周囲にポリアミ
ド系のもので取り巻いて作る。この二重構造により、光沢、弾力性、感触などが絹に似た
ものができ、染色性も良い。比重は1.2 。
特殊なガラスを繊維にしたもので、ステープルとフィラメントがある。引っ張り強度が
強く、耐熱性に優れ、不燃性である。熱や電気の絶縁性に優れ、吸水性はなく、酸、その
他の薬品、カビ、虫に大変強い。
ステープルは、防音、断熱、保温材料として建築、車輛、船舶、宇宙船、冷蔵庫、また腐
食性薬品の濾過やプラスティックの補共用に使われる。フィラメントは織物にすることも
できるため、電気絶縁用、あるいは不燃性カーテンとして使われ、またこれもプラスティ
ック補共用に用いられる。ガラス繊維でプラスティックを補強した強化プラスティック(
FRP)は、スポーツ用品や浴槽、浄化槽などに使われている。商品としては日東紡績よりニ
ットーボーグラスファイバーとして出ている。
スチール線のようなものでも細くしていきさえすれば、繊維の感触が出てくるもので、
現在、市場に出ているもので 4〜25ミクロン程のものがある。クロム、ニッケルの合金の
ステンレスが素材で、フィラメントと他の繊維との混紡用のスライバー状のものがある。
但し、この繊維の比重は 7.9と非常に重く、通常の用途には向かない。しかし、電気伝導
性があり静電気防止のため他の繊維との混紡に使われることは多く、また耐高温性、耐薬
品性が高いなどの、他の繊維に比べての長所により、特殊な用途に使われる。
さらに、ステンレスではないのだが、一九九二年にトリンプ・イターナショナル・ジャパ
ンと三菱マテリアルの共同により、生地を編み上げる糸に直径25ミクロンの二十四金の純
金の糸を使って作り上げたブラジャーの試作品が発表されている。衣料用に、形を安定さ
せるためにスズ、アルミなどを使うことはあったが金製品は珍しく、メーカーも新素材開
発に役立てると言っている。
炭素の正六角環が網目となった、グラファイト(黒鉛)構造の炭素から作る高弾性、高
強度繊維。また振動減衰性や耐疲労性に優れた特徴を持つ。初期はセルロース系繊維から
作ったが、現在はポリアクリロニトリル(PAN)を不活性ガス中で焼成して作ったりと、様
々な新しい方法を開発中である。織物として使用する場合には織物にしてから焼成する。
工業生産は一九五九年以降で、炭素含有量が100%に近いほど性能が向上する。引っ張り強
度が強く、引っ張ってもほとんど伸びず、耐磨耗性、寸法安定性に優れ、耐熱、耐薬品、
電導性に優れている。 PAMハイグレード品では引っ張り強度は一平方ミリあたり700kg 、耐
熱性も1000度、比重も1.5 〜 2と軽く、「鉄よりも強く、アルミよりも軽い」とうた
われ、複合材料として航空機などの構造材やスポーツ用品、さらには火星探査のバイキン
グ号などにも使われていた。
炭化ケイ素繊維としては1975年、わが国で開発企業化されたもので、引っ張り強度
は15ミクロンのもので平方ミリあたり400kg といわれており、耐熱度は1500度の高温で
も連続使用に耐え、比重は2.7 と比較的軽く、腐食性の化学薬品にも強く、弾力性もある
など、優れた点が多いが、現在は高価なため用途は限られ、繊維強化金属材料(FRM)に用
いられる見込みである。
スーパー繊維とは、それ自身が一本の糸である線状でかつ結晶性のもので、高強度、高
弾性率を主たる機能とする高性能構造材料用繊維のことである
ウィスカーとは細長く、猫のひげのように成長した線状の単結晶で、太さ長さの比で見
れば繊維ということになるものである。金属や無機化合物などの蒸気を結晶として固まら
せる(晶出)と、直径数〜数百ミクロン、長さ数十〜数千ミクロンほどの針状の結晶がみ
られる。普通、結晶には転位と言われる結晶の乱れがあるものだが、ウィスカーでは、こ
の転位はほとんど含まれないため、非常に変形しにくい。一般の鋼が一平方ミリあたり50
kg程度の引っ張り強度であるのに対し、太さ数ミクロンの炭化ケイ素ウィスカーでは1000
kgもの値をとる。このように、特徴として素晴らしい特性が挙げられるが、その長さが通
常の繊維とは比べ物にならないほど短いので現在は通常の用途には用いられていない。ウ
ィスカーは、1948年アメリカのベル研究所で偶然、すずウィスカーが発見されて以来
、研究されているが、高分子でも太さ 1ミクロンほどの POM(ポリオキシメチレン)やポ
リジアセチレン、ポリ・P ・ポリオキシベンゾイルなどでも形成できることが分かってお
り、この素材の軽量、高弾性という特性を生かしたスピーカー振動板なども発売されてい
る。
アラミド繊維とは芳香族ポリアミド繊維のことで、通常の有機繊維よりも、強度、弾性
、難燃性、耐熱性に優れている。1972年、米連邦取引委員会(FTC)が付けた名称で、
これにより従来の脂肪族ポリアミドのナイロンとは区別されることとなった。分子構造の
違いからパラ系とメタ系に分かれ、パラ系は強度に優れ、タイヤコード、航空、宇宙分野
、スポーツ用具等に、メタ系は耐熱耐炎性に優れるため、防火服、レーシングスーツや集
塵装置のフィルターなどに使用されている。企業化は1972年にデュポン社が行い、初
めにメタ系のノーメックスが発売され、その後、帝人の独自の重合法による繊維コーネッ
クスを開発、さらに、ノーメックスより10年遅れて、ケブラーがデュポンから、Twaron
が、アクゾより誕生する。以降、多くのアラミド繊維が研究されたが新たに加わったもの
は帝人のクラノーラぐらいである。ちなみに、ケブラーの密度はスチールの5分の1で、
引っ張り強度はスチールの7倍、ガラスの3倍ある。
その他のものでは、ポリアレート繊維などがあり、これにはまだ市販されずに試作段階
のものが二種類あるそうで、他のスーパー繊維に対して強度の太さ依存性が少ないという
利点があるが、製造上のコスト、性能などから見るとまだまだのものである。さらに、現
在までに報告されているもののなかで最も高性能な繊維として、ポリパラフェニレンベン
ゾビスチアゾール試作繊維というものがあり、比強度22.4g/d 、比弾性率1.3g/dの値をと
るが、これもコスト面からみていくと今後の展望は明るくないとされている。
「一本の繊維は細いもので 0.5ミクロン程度の直径であるが。それはさらに数ナノミク
ロンから数十ナノミクロンの太さのミクロフィブリルと呼ばれる微細繊維の集合である。
したがって繊維の性質はミクロフィブリルの性質に大きく依存するものであり、さらにミ
クロフィブリルの収束の状況や相互の凝集力(接合力)によって支配されるのである。例
えば、ミクロフィブリルは固く、弾性的であっても、高温になったり、溶媒がフィブリル
間に進入したりすることでフィブリル間の滑りが容易になると、繊維の性質はフィブリル
間の性質が反映され、フィブリル自身の性質は隠されることになり、また、繊維を繰り返
し、曲げや引っ張りなどの作用下にさらすと、ミクロフィブリルが新たに形成され、激し
い場合にはフィブリルは独立し、繊維はバラバラに裂けてしまうこともあり得る。」
天然繊維などでもミクロフィブリルは存在しているが、まだまだ解明されてない部分が多
いのが現状である。
すべての繊維は、太くすると強度や弾性率が低下する傾向にある。よって、強い繊維を
作るには細い繊維を作り、引き揃えるて使うという発想が出てくるのは当然だが、「繊維
軸方向に圧縮力が作用する場合には成り立たず、細く強い繊維を引き揃えても、太く強い
繊維の代用にはならないことが繊維強化複合材料の研究で確認されている。」しかも細い
繊維を作るということは、生産性の低下という現象を引き起こしもするのであり、太さが
、力学的性質に与える影響は大きいと言えよう。
一般に高分子材料などは温度の上昇に従い次のような性質を示すことが多い。第一に強
度、弾性率の低下で、第二にクリープ変形の速度の増大などに見られる流動性の増加が挙
げられ、第三に熱分解速度の増大である。特に第二、第三においては時間的依存性が大き
いので使用される条件や環境に対して、どのような力学的特性があるかを、把握しておく
ことが大切である。
これから主に述べる繊維は、繊維と人間の関わりが、これまでに考えられなかったほど
進んでいることを示す一例であり、今後の繊維の進む道の一つになるであろう。
消臭繊維とは、悪臭物質の変性をうながす物質を混入、あるいは化学的に固定したもの
で、その物質としては、悪臭物質と直接、反応して無臭の化学物質を作る場合と、触媒の
役割をして無臭化の反応を促進させる場合とがある。具体的には悪臭物質の酸化反応に対
して触媒作用を持つ、金属フタロシアニンや天然のツバキ化の植物から抽出した消臭有効
成分を使って作られたセルロース系繊維などがあり、消臭布団綿などとして市場に出回っ
ている。
防臭繊維としては繊維に抗菌剤を含有させ、それを徐放させることで、放っておくと悪臭
を発生する細菌の繁殖を防ぐものである。最近では抗菌剤と消臭剤を同時に含ませた製品
もあり、靴下などとして市場に出回っている。
また、新しい技術としては、日竹理化の独自開発により、キトサンとコラーゲンの誘導
体(キトコラ樹脂)をアミノシリコン樹脂と架橋体化する技術が完成した。これにより、
従来の柔軟仕上げ加工と同時に抗菌・防臭加工を施すことが容易になった。
これは良い匂いを発生させる繊維で、香料を肉厚の中空糸中に作った四個の花弁状部分
に練りこんだ製品が市販されている。良い匂いを嗅ぎながら眠ることにより、深い睡眠と
レム睡眠が増し、良質な睡眠が得られるという事実が、大学の医学部の研究結果により証
明されているそうで、寝具などへの応用が行われつつある。
人工筋肉としては、現在、水などの溶媒を含んだ状態の、すなわちゲル状態で使われる
繊維、ゲル繊維が研究されている。ロボットなどでのメカノケミカルの分野での人工筋肉
としてのゲル繊維の期待は大きいが、現状では高分子電解質ゲルが溶媒の種類、温度、電
解質濃度、電圧の変化などによって生じる顕著な体積変化(膨潤度変化)を一次元の寸法
変化として取り出すのが精一杯というところである。
羊毛や絹などがある種の金属イオン、または金属物質を吸着する現象は、絹のスズによ
る増量などにより古くから知られていたが、1960年頃から環境汚染の原因である金属
回収、或いは資源開発としての海水からのウラン回収などでの、繊維素材への期待が高ま
った時期があった。しかし現在では、海水からのウラン回収時におけるコスト的な問題な
どにより、現実的な応用例は少ない。ではあるが、これから何らかの技術的なブレークス
ルーが起きることで現実的な応用が期待できるようになることも考えられよう。
クリーンルーム用衣料とは、クリーンルーム内で働く人間から発生する塵…人間の代謝
によるものや、着用している下着から発生する塵を外皮により、外に出さないようにする
ものである。この繊維には様々な要求がなされ、衣料自体の発塵が少なく、人体系の塵を
外に出さないフィルター機能を持ち、静電気を帯びず、塵を吸着せず、生理的適性、耐薬
品性、耐洗濯性を持つなどの厳しい要求がなされる。これらの要求に適したものとして、
ポリエステル長繊維糸に少量の導電性の繊維を織りこんだものが使われている。
これは、大分昔にカメレオン繊維という言葉で言われたことがあったもので、温度で色
が変化する現象(サーモクロミズム)を応用した繊維である。サーモクロミズム機能を持
つマイクロカプセルを樹脂に混ぜて、布上にコーティングすることで可能になった製品で
あり、スキーウェアーなどで使われるようになっている。
医療目的や生物工学で使用される繊維はバイオメディカル・マテリアルとも呼ばれ、当
初は汎用の産業用資材が使われていたが、今日では目的機能にかなうように研究、改善が
施されている。用途も多様で、縫合糸は勿論のこと、人工肺、人工腎などでの血液浄化シ
ステム内の膜モジュール、人工血管、創傷被覆材、人工皮膚、人工肝など応用例は多い。
また医療用ではないが中空糸を使った透析技術をさらに転用した、水道水の浄化モジュー
ルなども、最近よくみかけるようになった。
数十年前より酢酸菌と呼ばれる一群のバクテリアの中で、セルロース性の極微細な繊維
を作るものがいることが知られていた。この極微細繊維は太さ20〜50ナノミクロンで長さ
は数百ナノミクロンに達し、生成と同時に互いに交錯しあってシートを成す。最近、この
シートより異物を取り除くことで 40GPaにも達する弾性率を持ったシートを作ることがで
き、スピーカーなどの振動板に応用されようとしている。
使い古したボロ布、または縫製加工時の裁断くずを反毛機にかけ、解舒して繊維状にし
たものを回収繊維と呼ぶ。回収繊維には綿、毛、絹、麻、化合繊などがあるが、なかでも
毛が最も多く利用されている。しかしながら、繊維長が短く、強力も低下しているため、
利用価値はかなり劣っている。
この中でもショディー(Shoddy) または通称 反毛、或いはRecovered Woolと呼ばれるも
のは、毛の回収繊維で、なかでも縮充されていない毛織物やメリヤス製品から得られる反
毛がこのように呼ばれている。用途はオーバー地、毛布などの紡毛織物、フェルト類など
の原料に使われる。
ムンゴー(Mungo)と呼ばれるものは、縮充された毛織物、またはフェルトなどから得られ
た反毛で、ショディーよりも更に繊維長が短く、下等なものである。わが国ではほとんど、
この用語は使われず、ショディーに一括して扱われている。主として下級フェルト原毛、
または太い紡毛糸の原料に混ぜて使われる。