Coach & Athletic
Director(1998)June, 46~52
Scouting Basketball -How to prepare... where to
sit...what to look for...how to use the report -
バスケットボールのスカウティング ─何を準備するか? どこに座るか? 何を見るか? レポートをどう活用するか?─
David Hock (Director of Athletics Eastern
Technical High School, Essex, Maryland)
Preparation for scouting(スカウティングの準備)
スカウティングは,自分のチームと対象となるチームの年間スケジュールを集めることから始まる.一つのチームに対して複数回スカウティングを実施することが理想であるが,常に可能なわけではない.1回しかスカウティングできない相手には,そのチームと対戦する直前にスカウティングを行うのが良い.そうすれば,そのチームの最新のオフェンスやディフェンスの傾向をつかむことができる.
スカウティングに赴く前に,ホームチームのアシスタント・ディレクターに連絡を取り,試合への入場の許可をもらい,試合時間に変更がないかを確認する必要がある.
スカウティングは,試合開始の20分前までには会場に到着し,ウォーミング・アップを見るように指示している.ウォーミング・アップを見ることによって,個人の特徴,シュート・レンジ,得意な側,ゲームに望む姿勢,強さ,サイズ,持久力などがわかる.また,他チームのウォーミング・アップの中に,使えるドリルを一つか二つ発見することもある.
スカウトは,コートの中央で,コートから少し離れたところに座るのが良い.あまりコートの近くでファンに近づきすぎると,じゃまされたり視野を遮られたりする可能性がある.もう一つ,ベンチと逆側に座って,コーチや選手の状態を観察することが重要である.
注意事項:チームのベンチのすぐ後に座るのは避けなければならないし,スカウティングとして失礼なことでもある.スカウティングがすぐ近くに居ることがわかれば,タイムアウトで言ったことを聞かれたり,作戦板上の指示を見られたりしているようで,コーチはいらつき,心地よく思わないはずである.
Scouting Offense(オフェンスのスカウティング)
オフェンス・パターンをスカウティングするのは非常に難しい.そこで,攻撃を開始する時の5人の選手の位置を書き留めることから始めると良い.そして,まずポイントガードについて以下の項目をチェックする.
- ポイントガードはどうやって攻撃を開始するか?
- どちらか片側へドリブルで移動するか?
- どのポジションの誰にパスをするか?
- パスをした後にどのような動きをするか?(アラウンド,オフガード,スクリーンをセット,など)
タイムアウトやゲームが中断されたときには,選手一人一人の特徴を記述する.(出場選手のリストを持っていない場合には,オフィシャル・テーブルや記録係のところへ行って,番号と名前を写しておく.)
- クイックネスは?(自分たちのチームの選手と比較して)
- バッドショットを打つか?
- シュートレンジは?
- ボールハンドリングは良いか?
- ディフェンスの弱点は何か?
- 片側にしか行かないか?
- どのような動きを持っているか?
- 彼を威嚇することができるか?
スカウティングには,コートの図を書いたシートを準備することが必要不可欠である.一枚の用紙の左側にハーフ・コートの図を5〜6段,右側にオール・コートの図を2〜3段を印刷したものを準備する.コートの図の右側にはそれぞれメモのためのスペースを残しておく必要がある.
コーチによっては,タイプの異なるオフェンス・セットやディフェンス・セットごとに別の用紙を準備することもある.しかし,複数のページをめくっているうちに,ゲーム状況を見過ごしてしまうという問題点が生じる可能性がある.そこで,とにかく一枚のシートにどんどん記入していき,一杯になったら次のシートに移るという方法が簡単でよいのではないか.プレーを整理するのは,ゲームが終わってからでも十分である.
シュート・チャート(シュートの場所を記録したもの)も,ゲームのスタッツ(ボックス・スコア)などと関連づけることによって,スカウティングに大切な情報を与えてくれる.しかし,シュート・チャートを課題評価しすぎるのは良くない.どの場所からのシュートが入ったのか?(落ちたのか?)という情報以上に,そのチームが,どうやってその場所でシュートを打ったのか? という,そのシュートに至るまでの過程に関する情報の方がはるかに重要だということを忘れてはならない.
- Half-Court
Offense(ハーフコートオフェンス一般)
- オフェンスをいつも片サイドから始めるか?
- 右からか?
- 左からか?
- 両方均等に?
- どれだけ辛抱強いか?
- 第一のオプションだけでなく,それ以上のオプションをプレーするか?
- シュートが打てないときは,リセットするか?
- 最も攻撃的な得点力のあるプレーヤー2名あるいは3名は誰か?
- 彼らの長所は何か?
- 彼らを押さえるためにできることは何か?
- フィジカルコンディションは十分か? 最終クウォーターまで耐えられるか?
- 彼らは自信を持ってプレーしているか? 自惚れが強いか?
- 集中力がなく,落ち着きのないプレーヤは誰か?
- セットプレーをどうやってコールしているか?
- 選手が声で
- コーチがサイドラインから
- サインを使っているか
- トランジションをどうやっているか?
- トランジション・オフェンスは?
- トランジション・ディフェンスは?
- よく訓練されているか?
- ボールを不用意に扱うか?
- よいシュートを打つか?
- 我々はボールをスティールできるか?
- オフェンス・リバウンドに積極的に入ってくるか?
- 何人がリバウンドへ入ってくるか?
- 何人がセーフティーで帰るか?
- Half-Court Motion
Offense(モーションオフェンスについて)
- 攻撃開始時の5人の選手の配置は?
- 3アウト2イン
- 4アウト1イン
- 3−2ミドルオープン
- その他のスタック
- ポイントガードがどうやってオフェンスを始めるか?
- どちらかへドリブルで移動?
- どのポジションの誰へファーストパスを出すか?
- パスの後のプレーは?
- スクリーン・アウェイ
- ゴールへカッティング
- ボールサイドへカット・アウト
- 逆サイドへカット・アウト
- ピック&ロール
- アラウンド
- ポイントガードはパスの後にVカットしてリプレイスするか?
- ピック専門のプレーヤーがいるか?
- ガードはポイントガード一人か? ツーガードか?
- 2フォワード,2センターはフリーでプレーするか? それぞれ組んでプレーするか?
- モーションオフェンスに入るときに開始のプレーあるいはスタートのプレーヤーがいるか?
- Out-of-Bounds
Plays(アウト・オブ・バウンズ・プレーについて)
- インバウンダーは指定されているか?
- マンツーマンとゾーンのセットが同じであるか? 個別に準備しているか?
- スローインすることだけを狙うか? 積極的に得点を狙ってくるか?
- ファーストオプションの後も辛抱強く狙ってくるか?
- サイドラインとゴール下からのスペシャルプレーがあるか?
- Press Offense vs Man-Man
Press(マンツーマンプレスに対して)
- ノーマルマンツーマンと区別しているか?
- インバウンドの後にボールマンのためにクリアーするか?
- ポイントガード以外のプレーヤーがボールを持つか?
- Press Offense vs Zone
Press(ゾーンプレスに対して)
- マンツーマンプレスと,ゾーンプレスの対応を区別しているか?
- ゾーンプレスの種類によって,オフェンスを変えてくるか?
- ゾーンの真ん中にポストアップするか? フラッシュしてくるか?
- ヘルプサイドにボールを送るか? 対角にボールを送るか?
- プレスを打ち破った後にゴールを狙ってくるか?
- Fastbreak or Transition
Game(速攻,トランジションゲームについて)
- いつ速攻を行うか?
- ディフェンスリバウンドから
- スティールやターンオーバーから
- ボールをミドルラインに置き,レーンを埋めてくるか?
- ボールマンはトップで止まるか,フリースローラインまで来るか?
- サイドラインブレイクを行うか?
- ポイントガードにアウトレットパスを出したときにナンバードブレイクを行うか?
- アウトレットパスはポイントガードに出すか?
- それ以外にも出すか?
- セカンドブレイクを行うか?
- ボールを逆サイドへ送るか?
- ファーストトレーラーはボールサイドローポストへポストアップするか?
- セカンドトレーラーはトップで止まってボールをリバースするか?
- 速攻での得点は全体の得点の何パーセントか?
- 制御できなくなることがあるか?
- 判断はいいか?
- 速攻で3ポイントシュートを打つことがあるか?
- ディフェンスの終わる前に先走りさせるプレーヤーがいるか?
- そのプレーヤーにロングパスを送るか?
- End-of-Game
Situation(ラスト・セカンド・プレーについて)
- ストーリングをするか?
- ファールゲームでファールすべきプレーヤーは誰か?
- フロントコートからのラストセカンドプレーがあるか?
- フルコートでのスペシャルプレーがあるか?
- サイドラインから得点するスペシャルプレーがあるか?
- M-M
Defense(マンツーマンディフェンスについて)
- ピックアップの場所は?
- トップから
- ハーフコートから
- サイドラインへのディレクションをかけるか? インラインで守るか?
- 最初のボールサイドパスをディナイするか?
- 2ガードのパスをディナイするか?
- 全てのパスをディナイするか?
- ウイングポジションのボールに対してベースラインへディレクションをかけるか? それともベースライン側を止めるか?
- ヘルプサイドのディフェンスはボールにどのくらいよってヘルプするか?
- ボールにフラッシュするプレーヤーをディナイするか?
- ローポストからハイポストへフラッシュするプレーヤーをディナイするか?
- ベースラインエクスチェンジに対してスイッチするか?
- ガードとガードのプレーに対してスイッチするか?
- 全てをスイッチするか? トラブルが起こるとスイッチするか?
- ピックに対してヘッジするか? ルーズコンタクトするか?
- ピックアンドロール対するディフェンスは?
- ボールハンドラーをトラップするか?
- ドリブルペネトレーションに対するディフェンスは?
- ヘルプするか?
- ヘルプの後のローテーションは?
- ウイングにボールがあるときにローポストをどうやって守るか?
- ハイサイドから?
- フロンティング?
- ビハインド?
- コーナーにボールがある場合にポストをどうやって守るか?
- シュートをどのように守るか? ボックスアウトを十分に行うか?
- Zone
Defense(ゾーンディフェンスについて)
- ゾーンをどの程度広げるか? パスを止めるプレーヤーがいるか?
- リバースパスやスキップパスをどう守るか?
- ハイポストをどうカバーするか?
- コーナーのボールをどうカバーするか?
- ゾーンの中でトラップを行うか?
- コーナーで
- 他の位置で
- ゾーンディフェンスでトラップを行うための特別なコールがあるか?
- マッチアップゾーンか?
- ゾーンディフェンスでお互いにトーキングしてコミュニケーションをとっているか?
- シュートをどのように守るか? ボックスアウトを十分に行うか?
- ゾーンのウイークリンクはあるか?
- 成功しているゾーンアタックは?
- Press(プレスについて)
- いつプレスするか?
- フリースロー成功の後
- シュート成功の後
- デッドボール
- プレス開始の位置は?
- フルコート
- 3/4コート
- 1/2コート
- プレス開始の位置を変えてくるか? それはいつか?
- インバウンダーにディフェンスをつけるか?
- コート中央にディフェンスを置くか?
- レシーバーにフェイスガードするか?
- 最初のトラップが打ち破られた後に,いくつかのトラップを試みるか?
- プレスが打ち破られた後のバックアップは早いか?
- プレスが打ち破られた後のゴールをどうやって守っているか?
- コート中央へのポストアップをどのようにして守っているか?
- プレスの中でランアンドジャンプを行うか?
- 成功しているプレスアタックは?
- Defense in
General(ディフェンスその他)
- オープンフロアーへ進められたボールをどうやって守るか?
- どの位置からボールを止めるか?
- トランジションディフェンスでのバックアップは速いか?
- ディフェンスでトーキングしているか?
- ルーズボールを追うか?
- アグレッシブか? 多くのファールを犯すか?
- ハードにプレーするか?
- チャージングをとるか?
- ブロックショットを狙うか? ヘルプサイドからブロックショットを狙いにくるか?
- リバウンドトライアングルを作るか?
- 誰がベストリバウンダーか?
- 打ち破ってオフェンスリバウンドをとれるか?
- シュートの後にボックスアウトをするか?
-
試合の観察にせよ,ビデオの分析にせよ,一つのスカウティング・レポートだけでは限界がある.スカウティングを行った試合は,相手チームのベストゲームであるかもしれないし,最悪のゲームであるかもしれないのである.スカウティングを行った試合に,キーとなる選手が2〜3人欠場していることもあり得るし,対戦した相手のディフェンスのタイプによっては,自分たちが欲しいと思う情報を得られないこともあり得るのである.しかし,スカウティング・レポートからより詳細な情報を引き出すことができれば,それだけ試合に対する準備がやりやすくなるのは明らかである.
Use of the report(スカウティング・レポートの活用)
スカウティングが終わって自宅に戻ったら,全ての情報をまとめて,総合的なスカウティング・レポートを作成しなければならない.そして,その集めた情報を,どう活用するかを決めなければならない.(マッチアップをどうするか,弱点をどう攻めるか,アウトオブ・バウンズ・プレーをどう守るか,主力の選手にどうやってダブるチームを仕掛けるか,など)
スカウティング・レポートを活用することによって,相手のスペシャル・プレーに対処するための練習を幾つか準備することができるであろう.試合に向けて,可能な限り綿密に準備することが望ましいが,選手にあまり無理がかからないようにしなければならない.
「我々は試合にまけることもある.しかし,十分に準備せずに負けることだけはしたくない」という選手の言葉がある.スカウティング・レポートをコピーして,全プレーヤーに配るのが良い.選手は,情報を受け入れ,スカウティング・レポートを十分に活用するであろう.
スカウティング・レポートは,ファイルして保存しなければならない.特に,シーズンによってフィロソフィーを変えないコーチの場合には,選手が替わったり,若干のマイナーな調整はあるとしても,保存しておいたスカウティング・レポートが,将来非常に有効になるであろう.
(訳:坂井 和明)
