福岡教育大学 中学生対象サマーキャンプ 指導記録

2002年8月に,福岡教育大学女子バスケットボール部監督の鈴木淳先生が行ったサマーキャンプの指導記録です.

対象は中学生の男女です.3日間のキャンプの指導記録をまとめたものを以下に添付します.フリーランスのパッシングゲームを指導していくための,貴重なヒントが詰まっています.文章だけなのでイメージが沸きにくい面もありますが,文章を読んで実際のプレイを想像してみて下さい.きっと,プレイや指導のための新しい観点が見つかるはずです.

キャンプは,3日間で9段階のステージを設定しています.単に技術や戦術を羅列して指導するキャンプではなく,基本的に4対4や3対3などのミニゲームを中心にしながら,そのゲームの質が高まっていくように考えて設定されております.各段階毎に赤の太字で書いてあるのが,各段階の狙いです.段階毎に,少しずつ狙いが高まっていきます.9段階を終えた段階で,子供達に「スペースの優先順位」や「スペースを攻める意識」が芽生え始めていったようです.青字で書いてあるのは中心となるミニゲームと実施上のルールです.必要に応じて,各段階毎に丸印で書いたドリルを実施しております.ドリルからの積み上げ型の指導ではなく,まずゲームをやってみて,必要ならばドリルに戻って部分を練習し,またゲームに戻すという「M-T-M method」の方法に則っています.こうすることで,その技術が実際のゲームの中のどこで活きてくるのかが,より鮮明に実感でき,子供達の目的意識も高まるものと思われます.

キャンプ自体はハーフコートの4対4までですが,これをどうやって5対5のフリーランスや,セットオフェンスに応用していくかが,コーチやプレイヤーのの創造力だと思います.


第1段階

・ インサイドを攻めよう カッティングで攻めよう

・ パスしながらリングに向かって走る.

ハーフコート3on3

(ルール)

・ ノードリブル

・ パスを10回でシュート

・ パスした人だけがインサイドに向かって走る.

○やってみた感じ

・ ボールをキャッチしてのストップが出来ない.出来ない状態からパスをするものだから,パスと体の向きがバラバラ.自分のマークマンにボールを触られる.

 

・ストップ,ピポットを課題とした.

・ 目標は,ボールを持たない人がインサイドにカットしてディフェンスにとって脅威になったから,今度はボールを持っている人がディフェンスにとって脅威になること.→攻め(シュート,ドリブル,パス)ながらキャッチする,ストップする.攻めながらボールをキープする,ピポットする.

 

○ドリル

1.ピポットなしのボールキープドリル

(ポイント)

・ ボールの位置を変えること.自分の前にひし形を描くように.

・ 手首の返し.

・ 肩を入れること.

・ ディフェンスを見ること

2.ピポットありのボールキープドリル

(ポイント)

・4ヶ所のピポット地点

・リバースターン フロントターン

3.シェービング

(ポイント)

・ 攻めながらストップすること

・ ピポットを使ってボールキープする際も攻めること.

・ ストライドストップ

 

○もう一度3on3

 攻めながらキャッチする,ストップするためにディフェンスがマークしなければいけない状況をつくり出すことが出来た.インサイドへのパスでマークマンに触られることはなくなった.

 ただし,ストップが動きとしてうまく出来ない子供はたくさんいる.特に女子.ピポットも同じ.大きな傷害につながる可能性がある.


第2段階

・ インサイドにカッティングしない人は,アウトサイドを攻めよう

・ パスしながらリングに向かって走る.

ハーフコート3on3

(ルール)

・ ノードリブル

・ パスを10回でシュート

 

○第2段階の詳細

・ インサイドを攻めない人は,3ポイントラインより外,しかもフリースローラインよりも外に位置することにした.これでもってトライアングルを創る指導とした.あえてとライングルという言葉は使わなかった.

 

○やってみた感じ

・ 予想通り,インサイドのカッティングに対しては1on1もしくはノーマークの状況でボールを受けることが出来るようになった.


第3段階

・ インサイドにカッティングしない人は,アウトサイドを攻めよう

・ インサイドでは2回ボールを要求する(ハイロープレー)

ハーフコート3on3

(ルール)

・ ノードリブル

 

○第3段階の詳細

・ アウトサイドに合わせた人からインサイドにパスする,つまり今までよりも一つパスを多くして三角形の頂点を経由してからインサイドにパスすることにした.インサイドを攻めた人は2回ボールを要求することになる.また,インサイドは2回ボールを要求しながらインサイドにとどまるため,アウトサイドに合わせた人にパスを出してインサイドに走るとインサイドが2人になり重なる.したがって,パスした後は必ず走るという約束事はこの時点で消滅.

 

○やってみた感じ

・ インサイドにカットしてボールを1on1またはノーマークの状況でもらえるが,レイアップがかなり雑.⇒レイアップの指導 7つのコースのレイアップドリル

・ インサイドで2回ボールを要求すると2回目の要求でボールが入ったときは,リング下で相手に背中を向けてボールを受けるような形になる.そこからのシュートはほとんどがフロントターンしてシュート.女子の場合は,両手のシュート,男子の場合はフェードアウェイ気味にシュート.ずれないかディフェンスから逃げてのシュート⇒フックシュートの指導 マイカンドリル

 

○ドリル

1. 7つのコースのレイアップシュート

(ポイント)

・ ボールを下から持たないこと

・ キャッチからボールを挙げて,最後はリングにボールを置いてくるような感じになる.ボールを下から投げてはいけない.

 

レイアップシュートの指導は難しい.


第4段階

・ インサイドをカッティングで攻めるとともにアウトサイドもつくろう

ハーフコート4on4

(ルール)

・ ノードリブル

 

○第4段階の詳細

・ インサイドに向かってカッティングするのはどのプレイヤーでもよい.それ以外の選手はアウトサイドに合わせる.

 

○やってみた感じ

・ 2-3の配置から始めるとアウトサイドの合わせがうまく出来れば3on3よりもインサイドはクリアになる.人数が増えてもアウトサイドのポイントが増えてディフェンスをより引き連れてくれるからだと思われる.

・ インサイドで2回ボールをもらおうとしても駄目な場合は,アウトサイドにカットアウトする.そして,次にまた誰かがインサイドにカッティングする動きまで創ることが出来た.「スペースを創ってスペースを攻める」ということがインサイドでもアウトサイドでも実践でき,明日のドライブの導入の基礎を創ることが出来た.


第5段階

・ インサイドをカッティングで攻めるとともにアウトサイドもつくろう

・ インサイドにディフェンスが寄っているとき,アウトサイドのオフェンスはボールを要求しよう

ハーフコート4on4

(ルール)

・ ノードリブル

 

○ やってみた感じ

・ インサイドに対してアウトサイドをつくるのだと単純に指導しても駄目で,アウトサイドはフリースローラインよりも上で,しかも3ポイントラインよりも上に位置するとポジションを限定した.さらに,自分のディフェンスがインサイドに寄っているかどうかを判断させ,寄っていたらターゲットの手を出してボールを要求する.これによってよりアウトサイドが明確になる.微妙にディフェンスの気配を読んでインサイドやアウトサイドに動く動きが生まれる.

・ インサイドへのディフェンスの寄りに対してアウトサイドでボールを受け,なおもディフェンスが下がっていてもなかなかアウトサイドからのシュートを打とうとしなかった.


第6段階

・ インサイドをカッティングで攻めるとともにアウトサイドもつくろう

・ インサイドにディフェンスが寄っているとき,アウトサイドを経由してインサイドにボールを入れよう.ハイロープレー.

ハーフコート4on4

(ルール)

・ ノードリブル

 

○ ドリル

 事前にハイロープレーの練習を行う.また,ハイローの練習をする前にフックシュートの練習を行う.ハイからローでボールを受けたときには,フックシュート.

 ハイロープレーの練習は,インサイドにカッティングした場合に1)ベースライン側からディフェンスされボールが入らないケース,2)ハーフライン側からディフェンスされボールが入らないケースに分けて練習.1)の場合はハイにボールが入るとすでにディフェンスより前に位置しているのでシールする.2)の場合には,ロールターンしてディフェンスの内側でシールする.

 

○ やってみた感じ

・ ディフェンスをシールするという感覚がないのでハイロープレー自体があまり成立しない.

・ ハイにボールが入り,ディフェンスが下がっているときのシュートがない.

・ ハイロープレー自体はあまり成立しなったが,インサイドに対してアウトサイドをつくる,3角形をつくって攻めるということに大きく貢献したのではないか.


第7段階

・ 人が動いてスペースをつくり,そのスペースにドライブを仕掛けよう.

ハーフコート4on4

(ルール)

  特になし

 

○ ドリル

事前に,人が動いて出来たスペースにドライブを仕掛けるパターンを2つ練習する.

 

○ やってみた感じ

・ ドライブを仕掛ける際に今まではあまり考えなかったようで,逆に今回の4on4では意識的に行えた.よいプレーが続出.

・ 今まではとは異なり,1on1の状況でドライブが行われるようになった.その状況でディフェンスのヘルプが来れば,ドライブに対する合わせが大切になる.ここでドライブの合わせを導入する環境が整ったと思った.(実際には行いませんでした)今まではもともとディフェンスが2人も3人もいるようなところにドライブを仕掛けることが多く,その状態でドライブの合わせを導入してもあまり意味がないと思われる.でも昔の自分であればやっちゃいそう.

・ ドライブしても自分のディフェンスに守られたり,ヘルプがくるとドリブルを止めてストップしてしまう.

 

ここでドリブルの4つの機能を紹介

・ その中でも「ひっぱる」「様子をうかがう」を取り出した.「ひっぱる」はドライブして駄目でもドリブルを止めずにインサイドを見ながらステップバックして下がってくるとして紹介し,ドリルを行った.ひっぱりながら別のプレイヤーのインサイドへのカットか,再びドライブなど.「様子をうかがう」は,コーナーでボールを長い時間持っているとスペースが悪くなるので,ボールを上に上げてスペースをとりたい.その際にインサイドの様子をうかがいながらドリブルでポジションを移動するとして紹介し,ドリルを行った.様子をうかがいながら別のプレイヤーのインサイドへのカットか,ドライブなど.


第8段階

・ 人が動いてスペースをつくり,そのスペースにドライブを仕掛けよう.

・ ドリブルでインサイドのスペースを攻めだけでなく,ドリブルでインサイドのスペースをつくり出そう.

ハーフコート4on4

(ルール)

特になし

 

○ やってみた感じ

・ ドライブを止めずに,ステップバックし,そのスペースに誰かが飛び込むというパターンがよく決まった.ディフェンスにとっては守りにくいようで今までのインサイドの攻めのなかで一番鮮やかにインサイドを攻めている印象が強い.面白く決まるので何度もやってみようとする.

・ 女子は,ステップしても3ポイントよりも外にはなかなか下がりきらず,途中ですぐに止まってしまう.ステップバックのドリブルがうまくなれば解決すること.


2日間のまとめ

・ 例えば,「ファンダメンタルが未熟でも,3on3や4on4の中でシュートに結びつくところまで出来る.なので,最終的にシュートが決まるようにシュートの練習をしよう」という感覚をもってすすめることが出来ているのではないかと思う.ストップ,ミート,ピポットにしても身に付けた方がもっとうまくいくからやろうという気になれるのではないか.3on3や4on4は面白いらしい.「場所の優先順位」や「スペースを創る」ということから3on3や4on4は面白く,誰にでも取り組めるものになるということなのだと思う.3on3や4on4がやれれば,ゲームもすぐに出来るということだから3on3や4on4から始めることは大切なことだ.それにしても中学生の女子にストップ,ピポットを身に付けさせることは大変.

・ 各セッションの終わりに必ずゲームを行うようにしている.4on4で,シュートクロックは35秒,ゾーンディフェンス禁止.スペースを創ってスペースを攻めることを実践させるためには,24秒ではかなり難しいと35秒のゲームをやってみて思った.何回かパスを回して人が動かなければ,スペースは生まれない.それに24秒は短すぎる.中学生の男子は,初日,スペースに関係なくドライブを仕掛けることが目立った.3人ぐらい引き連れてファールをもらえばOK,たまたま抜ければラッキー,ブロックされても頑張ったからまた次頑張ろうという感じだった.もともと攻めたがりなのに24秒になれば余計にこうなるのも仕方ないのかなと思った.2日目にして,ボールを持ってよくみるようになった.インサイドへのカット,それに対するアウトサイド,今クリアになったスペース.みると時間がどうしてもかかってしまう.だから24秒では短い.


第9段階

・ ディフェンスの状況に応じてボールキャッチを選択しよう

ハーフコート4on4

(ルール)

特になし

 

 最後のセッションだったこともあり,最初にドリルを行った.

○ ドリル

 ディフェンスの状況を以下の3つに分け,状況に応じたキャッチを選択する.

状況1 ディフェンスが下がっているとき

・ アウトサイドに合わせてプレイヤーがボールを受ける際にこの状況が考えられる.また,ヘルプサイドのアウトサイドのオフェンスも考えられる.

・ ボールをキャッチする際に前にリングに向かってミートする.

・ 必ず攻撃(シュート,パス,ドリブル)を狙いながらキャッチする.

 

状況2 ディフェンスがタイトについているとき→インサイドへカット

・ ボールサイドカットを狙う.

・ ボールサイドカットからレイアップを考える.それが出来ない場合は,シェービングの後ろ向きストップから攻める.いずれにせよ,動きながらボールをもらうので攻撃しながらキャッチすることをポイントとする.

・ パッサーは2ガードポジション,Fポジションからカットを起こす.このパターンのみで練習した.

 

説明後,すぐに1on1を行ったが,シェービングの後ろ向きストップから攻める,その攻めのバリエーションがなかったので,ステップシュートの練習をし,再び1on1をする.

 

状況3 インサイドカットからアウトサイドに出てボールを受ける

・ この場合は,キャッチしながらディフェンスの状況をみること.

・ ディフェンスが下がっていればシュート,右に寄っていたら左ドライブ,左に寄っていたら右ドライブ.どちらにも寄っておらず,ディフェンスも下がっていなければ,ピポットで相手を崩す.

 

○ やってみた感じ

・ ディフェンスの状況としては,「状況1」になるはずなのだけれども,アウトサイドに十分が上がっていないため前にミートできないことが多い.自分のチームを指導する際もインサイドを攻撃することも難しいが,アウトサイドのポジション,そこからの攻撃を指導することはそれ以上に難しいと感じていたが,まさにその通りになってしまった.アウトサイドはフリースローラインからハーフラインまでのスペースをどのように利用するかがポイントであると思われる.

・ 女子の場合は,運動量が少ないため,さらにアウトサイドのスペースを有効に使えない.

・ カットから攻撃しながらボールをキャッチしてからのステップシュートはかなり有効だった.今までキャッチしながらの最初の攻撃が出来ないとそこで終わってしまっていたが,攻撃が連続するようになった.