Transition Offenseについて考える
≪掲載内容≫
防御から攻撃への転換局面を見直そう
トランジション・オフェンスにおける攻撃の段階
トランジション・オフェンスの方法
○防御から攻撃への転換局面を見直そう

 防御(Defense)から攻撃(offense)へ転換する局面(図1参照)は,通常「速攻(Fast Break)」と呼ばれている.このページでは,防御から攻撃へ転換するときに「どんな優先順位で攻撃を組み立ていけばよいか?」という部分に焦点をあてて考える.したがって,このページでは,単に「速く攻める」ということと混同されがちな「速攻」という用語を使わずに,転換局面での攻撃ということを強調するために,あえて「トランジション・オフェンス」という用語を使っている.中にはかなり筆者の造語もでてきますが,意味を解釈してみて下さい.また,攻撃から防御への転換局面である「トランジション・ディフェンス」のページも合わせてご覧下さい.

 24秒ルールの施行に伴い,トランジション・オフェンスの重要性は益々高まっている.防御から攻撃への転換局面において,チームとしてどんなシュートチャンスを準備するかは,コーチにとって非常に重要な課題でもある.トランジション・オフェンスの準備がなければ,攻撃の重要な部分が偶然(ハプニング)に頼らざるを得ない状態になっているということになる.これでは高得点のゲームを目指すことはできない.1試合の中で,トランジション・オフェンスが発生している回数が何回くらいあるか考えたことはあるだろうか? この部分を偶然に任せておくのはもったいない.しかし,単に持久力(スタミナ)をつけるとか,走るのを速くするというだけでは効果的なトランジション・オフェンスは成立しない.体力的な要素はあくまで必要条件であり,十分条件ではない.体力的な土台の上に共通理解としてのチーム戦術を準備することが必要不可欠であろう.

 これを機会に,自分のチームのトランジション・オフェンスについて見直してみていただければ幸いです.


○トランジション・オフェンスにおける攻撃の段階

 筆者は,トランジション・オフェンスには,以下の攻撃の段階があると考えます.具体的な動きの例は方法のところで記述します.

  第1段階:アウトナンバー攻撃狙い(数的優位でシュートチャンスを創る)
   ↓    =1対0から3対2くらいまでのケース
  第2段階:スポット攻撃狙い(決められた場所へ走り込むことで少しでも早くシュートチャンスを創る)
   ↓    =3対3から5対4くらいまで(ディフェンスが3人以上帰陣しているようなケース)
  第3段階:モーション攻撃狙い(移動しながら攻撃することによってシュートチャンスを創る)
        =5対5になった以降の攻撃

 防御から攻撃への転換局面は,スティールから,ディフェンスリバウンドから,シュートを入れられた後のエンドラインのスローインから,等々から開始されるが,いずれにおいても上記の段階を意識することが大切である.隙あらばアウトナンバーを狙い,ダメならスポット攻撃狙い,それでもダメならモーション攻撃狙いとシュートチャンス創りを連続させることができれば,常に攻撃側が先手をとれる.怒濤のごとく攻め続けるイメージだ.そのために何よりも大切なことは,それぞれの段階が「別々なもの」ではなく「連続したもの」として準備されていることではないだろうか.各段階について,詳しくみていく.

 第1段階:アウトナンバー攻撃狙い.この段階は,ワンマン速攻(1対0)の状態から3対2の速攻の状態くらいまでを指す.この段階が1次速攻あるいはファーストブレイク(first break)と呼ばれているものと解釈できます.狙いは,ディフェンスよりもオフェンスの人数が多いアウトナンバー(数的優位)でシュートチャンスを創ることである.アウトナンバーはノーマルナンバー(オフェンスとディフェンスの数が同じ状態)よりもシュートチャンスを創りやい.イージーなレイアップに持ち込むことも容易だ.アウトナンバーでは,多くてもパス2回くらいでシュートに確実に持ち込んでしまうことが大切だろう.それ以上の時間をかけては,ディフェンス帰陣の時間的な余裕を与えることになり,数的優位が解消されてしまう.このページでは,アウトナンバー造りにポイントガードを決めた3線速攻法を採用する.

 アウトナンバー,特に2対1や3対2の練習を行っているチームは多いと思われるが,大切なことは「既に発生しているアウトナンバーをどうやって攻撃しシュートまで持っていくか?」を練習することに加えて,「どうやってアウトナンバー状況を発生させるか?」を練習しているかだと考える.後者を意識して練習していなければ,試合の中で自然発生的にアウトナンバーが生まれるのは,スティールの後か,ロングリバウンドを獲得したときなどの,ほんの数回に限定されるだろう.その数回の攻撃を100%成功させるために練習することが大切であることは言うまでもないが,それに加えて,通常のリバウンドの後やシュートを入れられた後でさえも「隙あらば」アウトナンバーを狙うというどん欲な姿勢を植え付けるために,トランジション・オフェンスの中でどうやってアウトナンバーを創り出すかを練習しておくことは大切なことだと考える.アウトナンバーからノーマルナンバーになるような練習(3対2から遅れてディフェンスが一人参加するような練習)だけでなく,ノーマルナンバーからアウトナンバーを創り出すような練習を工夫して創ってみて欲しい.

 第2段階:スポット攻撃狙い.呼び慣れない表現(筆者の造語)であるが,アウトナンバーではシュートチャンスが創れないなと判断した後(実際にはディフェンスが3人以上帰陣しているような場合であろう.この状態では瞬間的に4対3というアウトナンバー状況が生まれることもある)に,自分の決められたスポット(場所・エリア)に走り込んで,少しでも早くシュートチャンスを創ろうという狙いである.どのスポットに走り込むかは,チームによって異なるだろうが,決定の際には「場所の優先順位(フリーランスパッシングゲームのページで紹介)」と「個性の優先順位(プレーヤーの最もシュートが得意な場所)」を考慮すべきだろう.

 トランジションの局面では,ディフェンスが3人以上帰陣していても,マッチアップが「ルーズ」であったり,身長差などの「ミスマッチ」があったりすることが多い.自分の走り込むスポットが予め決められていれば,それらのディフェンスの隙をついて少しでも早くシュートチャンスを創り出すことが可能になる.走り込む場所が決まっているような速攻は「ナンバードブレイク」と呼ばれる.5人のプレーヤーに1番から5番までの番号を割り当て,それぞれが走り込む場所を決めるところからその名前が付いている.「臨機応変に」というのは理想だが,相手ディフェンスが帰陣する隙をついて,少しでも「時間的に早く」シュートチャンスを準備するためには,ナンバードブレイクを採用するのが最も有効な方法である.

※注 筆者としては,ミニや中学など発育発達の途中段階では,プレーヤーの役割をあまり固定しすぎない方向で指導することが望ましいと考えるが,このトランジション・オフェンスの部分についてだけは,「偶然(ハプニング)」ではなく「計画的に」シュートチャンスを準備することができるナンバードブレイクを採用した方が良いと考えている.その後のハーフコートのオフェンスの中では,あまり固定せずに全員が移動しながら攻撃するようなオフェンスを展開していただきたいと思うのだが,いかがなものだろう? そのためにも,ミニと中学は24秒ルールを採用せずに,30秒以上のローカルルールを採用することが望ましいと考える.

 第3段階:モーション攻撃狙い.スポット攻撃で,単純に場所を攻撃するだけではシュートチャンスにならなかった後に,直ぐにモーション(移動:カットやスクリーン)攻撃へ以降することでシュートチャンスを創っていこうという狙いである.スポット攻撃からいかに効果的なモーション攻撃へ連続させるかがコーチの腕の見せ所であろう.ここまでは,ノーコールで連続的に攻撃が続くことが大切だ.いちいち「アーリー」などとコールしなければ起こらないような攻撃では,セットオフェンスを仕掛けているのと変わりがない.スポット攻撃からノーコールでオートマチック(自動的)に数種類のモーション攻撃が展開されると,守る側も手こずること間違いなしだ.

 第2段階のスポット攻撃と第3段階のモーション攻撃を合わせたものが2次速攻(セカンダリーブレイクあるいはアーリーオフェンス)と解釈することができる.このページでは,特に第2段階のスポット攻撃を大切にしたいために,あえて独立させて表現している.トランジション・オフェンスの中で,スポット攻撃の段階はほんの一瞬になるかもしれないが,筆者は無くてはならない段階であると考える.試合を観戦していると,アウトナンバーにならなかった後に,スポット攻撃を狙わずに直ぐにモーション攻撃へ移行しているチームも見かけるが,こででは,帰陣して直ぐのディフェンスのルーズな状態やミスマッチの状態を的確に攻撃することができない.相手が防御の態勢を整える時間的な余裕を与えることになう.

 24秒ルールの施行に伴い,アーリーとしてのモーションオフェンスを展開した後に,そこからリセットしてセットオフェンスとしてのモーションオフェンスを展開している時間的な余裕はもはや残らない.トランジション・オフェンスでモーション攻撃を準備する場合には,それがレギュラーオフェンスになるくらいの周到な準備と訓練が必要だ.だめなら残された数秒で即座に強引にでもシュートチャンスを創る何らかのプレー(ピックなど)を準備しておかなければならないことは言うまでもない.

 したがって,チームによってはスポット攻撃の段階でシュートチャンスが創れなかったら,モーション攻撃の段階を省いてすぐにポジショニングし直してハーフコートのセットオフェンスを展開する場合もある.この場合には,セットオフェンスの中でモーション攻撃を仕掛けるという解釈になる.24秒ルールになって,アーリーのモーションとセットのモーションを区別することが難しくなっている.というよりも区別すること自体ナンセンスなのかもしれない.現在では「ハーフコートに入ってからセットオフェンス」という感覚ではなく「ボールを運んでくる段階から既にセットオフェンスを展開する」という感覚に変わらざるを得ないが実情だろう.いずれにしても,限られた時間の中で,どうやって効果的にアウトナンバー攻撃からモーション攻撃まで持っていくかが鍵である.

 タイマーがが止まった後にバックコートのスローインから始まる攻撃では,セットオフェンスをコールして展開する場合が多いが,その時のプレーヤーの配置とモーションを観察し,トランジション・オフェンスのスポット攻撃とモーション攻撃とを比較してみると,そのチームがトランジション・オフェンスをどのように準備しているかが理解しやすくなるだろう.


○トランジション・オフェンスの方法

第1段階:アウトナンバー攻撃狙い

 リバウンドの後には,下の左図のように1番のプレーヤーにアウトレットパスを出して,2番と3番が先行するという形が最もシンプルで考えやすい.アウトレットの位置は,リバウンドの落ちた側でフリースローラインの延長線上よりも上でハーフコートラインよりも下側のアウトレットエリア(図では左側)が良い.このエリアは,「はしご(ラダー)」の様にも見えるので「ラダーエリア」と呼ばれることもある.フリースローラインよりも下側であれば,簡単にアウトレットをだすことはできるだろうが,ボールを前に進めるという利点が無くなる.コート中央は密集地帯でもあり,安易にパスするとスティールされたり,受けた後にトラベリングなどのバイオレーションになる可能性が高い.問題は図のラダーエリアのどのあたりに出すかだ.できるだけ前にパスを出すのが良いが,前になるほどパスの距離が長くなり,スティールの危険性が高くなる.相手ディフェンスとの関係で,「スティールされない範囲でできるだけ前」というのがセオリーになるだろう.(当然,直接リバウンダーから先行している2番や3番にパスを出せれば,そちらを優先することは言うまでもない.リバウンダーの視線が常に遠くを向いていることが大切だろう.ゴール方向を向いていれば,自然にアウトレットを呼ぶ1番のプレーヤーも視野にはいるはずだ.逆に1番を探すことを優先順位の1番目に持ってきてしまうと,先行しているプレーヤーのチャンスを見損なってしまう可能性が生じるので注意が必要だ.パスはベースボールパスやフックパスが直接ボールを送る場合には効果的な方法だ.)

 1番のプレーヤーをポイントガードとしてボールを運ばせる役割に固定して,アウトレットを受けさせるのが最も簡単に3線速攻を発生させる方法であろう.それを狙われて止められた場合には,中図のようにリバウンダーがアウトレットを狙った後にドリブルアウトで一気に抜け出す方法が有効だ.ドリブルアウトが成功すると一気にアウトナンバーを創り出すことができる.レイカースのシャキール・オニールでさえもドリブルアウトから自分でボールを運びアウトナンバー攻撃する時代である.時にはそのままダンクに持ち込むことさえある.日本人のセンターならば誰でも訓練すればできるようになるはずだ.1番2番3番を固定せずに3つの役割を臨機応変にやらせるという選択肢もある.それで迷い無くできれば問題はないが,混乱するようであれば,最初は固定した方がわかりやすい.1番がリバウンドを獲った場合にはそのままドリブルでボールを運べばよい.

 1番はアウトレットパスを受ける前に,先行する2番と3番が有利な状態ならばすぐさまボールを送れる準備をしておくことが大切だ.アウトレットを受けてから前方をみるようではダメだ.2001年ヤングメン世界選手権大会のポイントガード:柏倉君が素晴らしいのは,この前方への視野の確保と,そこへの的確タイミングと強さでパスが出せる能力だ.ボールを一気に前線へ送ることが出きれば,1対0や2対1の状況を創り出すことも十分可能だ.アウトナンバーでなくても,先行している二人に攻撃力があれば,どんどんボールを送って積極的な攻撃をさせてもよいだろう.

 1番がボールを先行する二人へパスを送らなくても,3線速攻を創って攻撃すれば,帰陣しているディフェンスが二人までなら十分有効なシュートチャンスを創ることができる.その場合には右図のように,三角形でのフィニッシュに持ち込むことができるだろう.3線速攻での3対2の攻撃法は,多くの指導書に書かれているのでそちらを参考にしてほしい.2番と3番はフリースローラインの延長線までは広がって,そこから一気にゴールへ向かうのがミソだ.そうすればボードに対して約45度の角度で入ることができ,レイアップシュートに最適な角度になる.この角度はレイアップシュートでは「オーディナリーコース」と呼ばれ,最も確立の高くなる角度だ.

 

第2段階:スポット攻撃狙い

 問題はアウトナンバーできなかった場合だ.ディフェンスが3人以上帰陣しているような場合なので,アウトナンバー攻撃の右図のように制限区域で三角形を作るような展開に持ち込んでも,有効なシュートチャンスは生まれない.2番と3番は3ポイントラインよりも中に入らずに広がることが大切になる.3人以上ディフェンスが帰陣している状態では,中途半端に中に入ることによって,かえってディフェンスの守り幅に入ってしまう結果になる.それは一人のディフェンスに二人のオフェンスが守られてしまう状態に陥ってしまうことを意味し,ディフェンス側を助けることになる.このページでは,ボールを運んできた1番が2番か3番のどちらかへパスを出してカットする方法ではなく,1番がガードポジションに残り,トレーラーが2ガードの位置に入る最も簡単にスポット攻撃が発生する方法を採用する.

 ボールがハーフラインを超える段階で判断し,アウトナンバー攻撃ができそうに無ければ1番がコートの中央を避け,どちらか一方へ寄る(ここでは左側)ことが大切になる.そうすることによって,4番と5番のいずれか(図では5番)がゴール下のスポットへ飛び込むスペースを空けるのだ.ゴール下のスポットは場所の優先順位が最も高いエリアである.そこへ長身選手である4番と5番のいずれかが飛び込むのが狙いだ.5番がディフェンスリバウンドを獲れば4番が先行してゴール下へ向かい,4番が獲れば5番が先行することになるだろう.一方のプレーヤーは,トレーラーとしてガードの横(2ガードの位置)に入るのが最近の傾向としては多くみられる.

 相手のディフェンスがルーズな間に,とにかく長身者が積極的にゴール下に走り込んで攻撃するのだ.ただし,この場合に注意すべき点は,右図のように「最初からビッグブロックへ走り込むのではない」ということだ.これでは攻撃の脅威が半減どころかなくなってしてしまう.最初からビッグブロックへ向かい,そこでポジション争いをしたもののディフェンスに押し出されてしまい,結果的にショートコーナーあたりでボールをもらっているセンターを見かけるが,これでは相手にとって脅威にはならないだろう.ちなみに自分のチームのセンターに,「速攻の時にどこに走るの?」という問いかけをしてみてほしい.「真っ直ぐにゴール下」と答えてくれれば問題ない.

 スポット攻撃では,先ず確実にゴール下へ向かい,積極的に自分からディフェンスにコンタクト(身体接触)していってポジションを取り,できるだけゴールに近いところでボールを受けて攻撃するという手順を踏むことが大切だ.そのまま頑張りすぎると3秒オーバータイムになるので,そこで初めてボールサイドのビッグブロックへ出るのだ.この手順があるのと無いのでは天国と地獄くらいの差があることを認識してほしい.

 また,1番側のプレーヤー(図では3番)は,ボールから4〜6m離れることが大切だ.場合によってはコーナーまで使うことになるだろう.「ディフェンスを広げる・下げる」というキーワードがここでは生きてくるはずだ.コーナーからリングへ向かうレイアップのコースを「サイドウェイ」」と呼ぶが,韓国のトランジション・オフェンスではこのコーナーの使い方が非常に巧く,シュートフェイクから一気にリングへ向かってペネトレートするケースも多く見られる.12コースのレイアップドリルなどの練習をしているチームは多いが,その中のサイドウェイトのコースが生かせる場面は,こんな所にもあるのだ.

 ドリブルでボールを運んできた1番からは,すべのポジションへのパスがアシストパスになりうる.5人それぞれがこのスポットでシュートチャンスを狙うのだ.広がったスペーシングを取ることで,互いに4〜6mの距離になり,中途半端にゴチャゴヤと邪魔し合う状態を避けることができる.ペリメーターのスポットでは,単純にシュートを打つだけでなく,ディフェンスがシュートブロックに詰めて来れば当然ペネトレートすることも有効だ.攻撃の優先順位はあくまでゴール下のセンターからだ.これはトランジション・オフェンスの「First Option」と呼ばれ,常に意識することが大切だ.この配置ではディフェンスは広がらざるを得ず,5番や4番のゴール近辺のプレーにヘルプをしづらい状況が必然的に生まれているのだ.ヘルプでディフェンスが収縮すれば,外へパスアウトしてシュートを打たせればよい.

 「ラン&ガン」というと,とにかく速くボールを運んで外からどんどんシュートを放るバスケットボールがイメージされがちであるが,本当のトランジションゲームを確立するためには,このFirst Optionがしっかりできていることが前提になる.だからこそ,ディフェンスがインサイドに引きつけられ,外のシュートチャンスが生まれるのだ.万が一シュートがはずれた場合にも5番と4番のオフェンスリバウンドが期待できる.5番と4番の走りなしに,小さい選手だけが走って,ただ外からがんがん打つだけでは「ボールを捨てている」ようなものだ.40分の中で,時には何本か連続して入って勢いに乗ることもあるが,トータルでは3割程度しか入っていないのではないだろうか? NBAの各チームでも,トランジション・オフェンスでは常にセンターがゴール下へ走り込んでポジション争いをしているのがわかる.日本の女子ナショナルチームの大黒柱である浜口選手(通称マック)も,この仕事を徹底している一人だ.とにかくゴール下からゴール下へ走ることを忠実にこなすのだ.案外見過ごされてしまっている要素かもしれないが,本当は試合の勝ち負けを決める重要な仕事なのだ.マッチアップするディフェンスがミスをすると,5番や4番の簡単なレイアップシュートが生まれるし,オフェンスリバウンドからのセカンドショットのチャンスも確実に増える.2001年のウインターカップ男子は能代工業が優勝したが,加藤三彦監督のインタビューの中にも「センターの走りあっての外角のシュート」というコメントが含まれている.目に見えやすい部分だけを真似るのでは,真の強者にはなれない.

 

第3段階:モーション攻撃狙い

 スポット攻撃でも効果的なシュートチャンスが生まれなかった場合には,すみやかにモーション攻撃へ移行し,カットやスクリーンを使ったシュートチャンス創りの段階へ進むことが,攻撃の連続性を生む.

 モーション攻撃の段階については,本当にさまざまなモーションが考えられるので,ここで全てを紹介することができない.スポット攻撃までの段階は,最近のバスケットボールのスピード化に伴って,ある程度の固定化が必要だと筆者は考えるが,このモーション攻撃の部分は,チーム独自のスタイルがあって良いと思う.スポット攻撃は2ガードの配置になっているが,ここから1ガードの配置の2メンインサイドに移行しても良いし,そのまま2ガードの配置のまま攻撃しても良い.発送次第でいろんなモーションオフェンスが創造できるだろう.

 色んなモーションが考えられるが,下の図の丸印で示した3点をやっつけることができれば,ディフェンスに対して圧力をかけることができるだろう.もちろんゴール下の四角のエリアでシュートが打てればそれに越したことはない.以下に色んなモーションオフェンスの例を載せているが,それらも図中の攻撃ポイントを攻めていることがわかる.

 一つは,フリーランスパッシングゲームへ移行する方法がある.スポット攻撃の配置から先は,自由にモーションを行わせる方法だ.ミニや中学の段階では,この段階でパスとカッティングを中心にしたフリーランスを展開してほしいと願っている.この場合には,拘束する形が無い.

 以下に,最近見かけたトランジション・オフェンスのモーション攻撃の例を幾つか紹介する.いずれも有効な方法である.チームのメンバー構成を検討して,有効であれば取り入れることもできると思われる.ただし,「ただ形を真似る」のではなく,そのモーションの狙いをしっかりと考えた上で,自分のチームに応用していただければ幸いです.細かなコメントは省略するので,線画から狙いをイメージして下さい.今後も,いいのが見つかったらアップしていきます.

1)2001年ヤングメン世界選手権大会:オーストラリアの例

左図:トランジションのコース
・1st optionのゴール下を徹底して狙ってくる.
・トレーラーのCは2Gポジションに入る
中図:Earlyオプション
・G→Cの→ローポストのCの移動→FがCにバックスクリーン
右図:Earlyオプション
・バックスクリーンのスクリーンナーをCに出す 


Cが一気にコーナーまで出る→これによってバックスクリーンをかけたFのスクリーンナープレーのスペースが生まれる


左図:Earlyオプション
・G→Cへのパス→CがGにパスを戻す→Fのスクリーンを使ったCのカットがボールサイドカットになる
右図:Earlyオプション
・G→C→Fへのパス→FからGへパス→Fのスクリーンを使ったCのカットがボールサイドになる.※上のオプション4と同じ狙い


左図:Earlyオプション
・G→Fへのパス&カット→トレーラーのCがサイドピックをセット→ローポストのはコーナーへ広がってスペースを広げる
中図:Earlyオプション
・トレーラーのCがGにハイピックをセット
右図:Earlyオプション
・G→C→Fのパス→サイドピック
※G→Cの横のパスの後にローポストのCがボールサイドに移動しない場合は,逆サイドでダブルダウンになるケースが非常に多い.

2001年ヤングメン世界選手権大会:韓国の例

左図:先行するウイングがコーナーまでしっかりと走りディフェンスを「広げて下げる」
中図:トレーラーのセンターが,トップに入るような場合→そのままシュートやハイローが作りやすい.
右図:トレーラーがサイドピックをセットしたケース

2001年女子アジア選手権大会:カザフスタンの例

トレーラーとセンターでハイローができなければ,そのままコーナーに出る例.狙いはセンターのローポスト攻撃

2001年WJBL:JAL(日本航空)の例

スポット攻撃の後に,センターのハイポスト攻撃狙い

2000年JBL:東芝の例

@アーリーの原型(シドニーオリンピックカナダと同じ形)
Aフレックスカットを入れるオプション例,センター同士のダウンスクリーンは同
BAのオプション例 フレックスカットでディフェンスが先回りすればポップアウトして戻る.この時にガードのスクリーンも効いてくる.
Cトレーラーのセンターが直接ガードにピックをかけるオプション例.フォワードがセンターにクロスコートスクリーンをセットしてローポストにもシュートチャンスを創っている.
DEトレーラーのセンターとフォワードのスクリーンプレーではいるオプション例.


@北の1対1を直接作るオプション
A上の@でダウンスクリーンの後にハイポストにパスした後の動きの
Bローポストへパスした後に動きの
C逆サイドへ展開した後に,フォワードの折原のチャンスを創るオプション例

2000年シドニーオリンピック:女子USAの例

上図:トレーラーが1ガードの位置に入る例→逆サイドへ展開
下図:逆サイドへ展開した後にサイドピックをセット→ゴール下へカットしたFが2枚のダブルスクリーンを使ってカットアウトで合わせる


ガードがFへパスをして逆サイドのビッグブロックへカット→展開してからクロスコートスクリーン→ダウンスクリーンの例

2000年シドニーオリンピック:女子オーストラリアの例

ガードがスペースへ一気にペネトレートした例→だめならトレーラーへ返してシュート


ガードがパスして逆サイドのビッグブロックへカットしたケース(左図)→トレーラーを中継して逆サイドへ展開した場合にはクロスコートスクリーン→ダウンスクリーンの連続へ移行する


ガードがパスして逆サイドへカット→ダウンスクリーンでフォワードと入れ替わり→トレーラーを中継して逆サイドへ展開→最初のセンターがハイポストで止まっていたので,スクリーンが斜めのカットになっている→ダウンスクリーンの連続した例

2001年ウインターカップ:女子富岡高等学校の例

トレーラーが逆サイドでダウンスクリーン→渡ってくるFに対するダウンスクリーンとトップでのピックの2カ所にスクリーン攻撃を作っている例