表1.男子出場各国の平均身長と平均年齢

<身体能力>
表1は,各チームの平均身長である.いずれも190cm台後半で,200cmを越えるチームも半数に上っている.また,長身選手もインサイドでプレーするだけでなく,チームのシステムの中でモーションし,フォワード的にプレーしてくるチームが多い.「動けない長身選手」のイメージはほとんどなく,長身選手も中・長距離のシュートを打ち,前向きでどんどん攻撃してくる.
筋力・パワーの強さも各国ともに向上しており,ポジション取り,リバウンド,ディフェンスなど,かなり激しい身体接触が見られる.各国ともにアメリカに劣らない力強さを発揮している.特に,ディフェンスで相手のコースを身体でブロックするバンプにおいてかなりの衝突が見られた.ゴール下では,ダンクに持ち込める力が無ければ,中途半端なシュートはブロックされてしまう現象が起こっていた.
<チーム戦術>
○ブレイク
アウトレットはポイントガードに.アウトナンバー攻撃できない場合には,そのまま途切れずにアーリーへ移行することで,連続的にシュートチャンスを準備しているチームが多い.24秒ルールへの変更も考え合わせると,最初の10秒間の間にシュートチャンスを連続させるための準備は,極めて重要な意味を持つと考えられる.
男子では,ボールを運んだガードがボールサイドのフォワードにパスした後にオンガードするケースが多い.インサイドプレーヤーが,ボールサイドのローポストに積極的に走り込んでポストアップする.トレーラーで遅れて参加するセンターあるいはパワーフォワードは,2ガードポジションの位置またはハイポストでストップしてアーリーに参加する形が多い.
○セット
各チームともに,「どこで」「誰に」ボールを持たせたいのか? というねらいが非常にはっきりしている.フレックスやシャッフルなどの5人が動くモーションのオフェンスをベースに採用しながらも,チームの核となる選手が「おきまりのポイント」で1対1を仕掛けてくるチームが多かった.

図1.典型的な攻撃例
中でも今回は特に,トライアングルオフェンスの影響で,シャッフル(図1上左)を採用しているチームが非常に多かった.シャッフルへの入り方とシャッフルのオプションはチームによって幾つかのパターンに分かれた.入り方は大部分が1ガードからであったが,オーストラリアは2ガードから入っていた.1ガードの場合にはUCLAカットからボールサイドのセンターがポップアウトし,逆サイドのセンターがスクリーンナーになる場合と,ボールサイドのセンターがスクリーンナーになって逆サイドのセンターがポップアウトする場合とが見られた.シャッフルを両側で続けるのはオーストラリア.大部分は1回のシャッフルの動きから図1上右のオプションを多用していた.
また,今回のオリンピックでは,両側のローポストとハイポストを(またはトップの位置)の3角形で,クロスコートスクリーンからダウンスクリーンへ移行するスクリーンの連続(図1下右)を,ハーフコートのセットやアーリーの一部として多用していた.
ディフェンスのディナイプレッシャーが厳しく思うようなパッシングやモーションができない場合や,シュートクロック残り僅かでのシュートチャンス作りには,トップやウイングでのピックが多用されていた(図下左).特にトップでのピックは多用される傾向が見られた.ガードのドリブル突破力が非常に高いため,このセットだけでかなりのシュートチャンスを作れていた.
ノーボールのスクリーンでは,シングルスクリーンだけでなく,ダブルスクリーンや,スタッガードの形で2枚に時間差をつけたスクリーンをセットするケースが非常に多く見られた.
1対1の個人技のレベルが際だって高いアメリカは,スクリーンを1回〜2回程度かけてそのままシンプルに1対1や2対2で攻撃してくるケースが多いが,リトアニアやフランスの場合には,とにかくスクリーンをしつこく何回も何回も連続させながらチャンスを作るという違いが見られた.
スペインのように,ポイントゲッターがアウトサイドの選手1〜2人に限られ,インサイドのポイントがないチームは,前半は勝負になるが,後半に入ってから対応され,上位進出ができなかった.
中国は,ディフェンスシステムがはっきりしておらず,今後若い長身選手がさらに育ち,ディフェンスのプレッシャーが強まれば,上位進出がねらえる可能性のあるチームである.
○ディフェンス
ハーフコートでのプレッシャーマンツーマンが基本であるが,ガード陣は常にオールコートでボールに対してプレッシャーをかけている.バックコートが8秒ルールに変更されることを考えると,今後もバックコートでのプレッシャーやトラップなどの仕掛けは増えていく傾向があると考えられる.
しかし,一方でオールコートのトラップは簡単にアウトナンバーを創ってしまうという危険性もあり,現に,フランスはアメリカに対してわざとトラップをかけさせておいてからドリブル突破し,アウトナンバーを仕掛けるという戦術を採っていたのも事実である.ガードのボールハンドリングが高い世界レベルでは,オールコートのディフェンス展開は現実的に難しいのかもしれない.
ハーフコートでのディフェンスでは,特にスクリーンの対処について十分に訓練されている傾向が見られ,スイッチ,ショウ,ファイトオーバー,フォローなど,チームディフェンスが徹底されていた.
<個人戦術>
スクリーンを使っても完全なフリーの状態はなかなかできないので,相手ディフェンスがついている状態でシュートを打てる個人技術が必要不可欠になる.スペースを作って1対1の攻撃を積極的に行う場合も,シュートについてはゴール近辺でディフェンスにブロックされない技術が非常に重要である.ノーマークで打つ正面を向いたジャンプシュートの技術だけでなく,相手のブロックをかいくぐって打ったり,ベビーフックでディフェンスから遠いところで打つワンハンドのシュート技術の重要性も高い.特に,前後左右の崩しでディフェンスとの間に少しでもスペースを創ってシュートを打つ技術が必要である.
大型の選手では,ブロックされないような高い打点でのシュートや,素早いターンからのクイックシュートが多く見られ,その確率が高かったように思われる.