個人技が足りないからチームでパターン(フォーメーション)を準備する→個人技が育たない→チームでパターン(フォーメーション)を準備する→個人技がなおさら育たない・・・・という悪循環に悩んだ経験はないだろうか?
手っ取り早く試合に勝つためにはパターンを準備し,個人の役割を限定して闘うのが一つの有効な手段である.パターン・オフェンスには「自分たちの長所を最大限に生かす」「短所を見せない」「相手チームの弱点を徹底的につく」プレーをチームで「組織的」に準備できるという利点がある.しかし,ミニ,中学の段階からあまりにパターン・オフェンスを優先すると,結果的に子ども達の判断力や個人技が育たなくなるのではないだろうか.あきらかに「コーチが闘っている」チームや,「形だけを追っている」チームを見かけると,「状況に応じて自分で考え」「創造力豊かに」プレーする選手が育たないのでないか? と不安になってしまう.
バスケットボールの初心者のコーチングでは,「チーム戦術の不足を補う個人技術・戦術はあっても,個人技術・戦術の不足を補うチーム戦術はない」(あるサッカーの指導書の中にかかれていた言葉)という言葉の意味を改めて考えてみるべきではないだろうか.そして,少ないルールを決めたフリーランス・オフェンスから出発し,個人技をどんどん発揮しながらプレーするような攻撃を目指してほしいものである.選手は,オプションの多いプレーを好むものであり,好きだからこそ練習の取り組みも良くなるのではないだろうか.「おまえはこれをやれ」「おまえはこれをするな」という指導は,勝利には最短距離かもしれないけれども,どこかバスケットボール本来の楽しさを見失っているような気もするのである.
長身選手の育成は日本バスケットボール界の課題であり,また,個人技の育成は,バスケットボール界全体のレベルアップにとって必要不可欠である.フリーランス・オフェンスを通じて選手のプレーの幅を広げ,自分自身で状況を解決していけるだけの個人技を育てていくことは,目先のゲームに勝つことには遠回りになるかもしれないが,長い目で見れば,選手個人が将来大きく育ち,結果的にチーム力を格段に高めることにつながるのではないかと考える.トランジション・ゲームによる速いテンポでのゲームと合わせて,観客も「見ていてわくわくするバスケットボール」であれば,また会場に足を運ぼうと考えるであろう.
バスケットボールには「コーチ」「選手」「観客」の3つ立場が関わっている.「勝ちたい」あるいは「勝たせたい」と強く思うコーチの視点に,プレーする選手の視点や,それを見に来てくれる観客の視点が加わってこそ,日本のバスケットボールが「文化」として定着していくのではないかと常々思うのである.
フリーランス・オフェンスといっても,いろんな種類がある.パッシングを中心に攻撃するタイプ,スクリーンを中心に攻撃するタイプ,両者をミックスしたタイプなのである.また,オフェンス時の基本的なフロアーバランスも,「オールアウト」「4メン・アウト,1メン・インサイド」「3メン・アウト,2メン・インサイド」などに分かれる.さらに,同じフロアーバランスでも,アウトサイドとインサイドの選手を分けるタイプと,各選手が状況に応じてアウトサイドとインサイドの両方をこなすようなタイプに分かれる.どのタイプがベストと言うことはなく,自分のチームに最も合ったタイプを選択することが大切であろう.
フリーランスは「原則のある」攻撃であり,「でたらめな」攻撃や「行き当たりばったり」の攻撃ではない.チームとしてどのような原則を作るかは,そのチームのメンバー構成や予想される相手チームのメンバー構成などを考慮して,チームごとに作っていくことが必要である.
このページでは,パッシングとカッティングを中心としたフリーランス・オフェンスから出発し,その中にペネトレートのドリブル1対1,あるいはインサイド・ポストの1対1を加え,さらにスクリーン・プレーを入れていくという流れで一つの指導例を作ってみた.ポジションは固定せず,誰もがペイント内に飛び込んだり,アウトサイドに広がったりするタイプの攻撃を目指したものである.初心者やミニあるいは中学レベルでの指導に適していると考えられる.
フリーランス・オフェンスでは,アウトサイドでの1対1の個人技,インサイドでの1対1の個人技,あるいはパスの技術を発揮する機会が多くなるので,フリーランス・オフェンスは,これらのファンダメンタルがなければ成立しないと同時に,フリーランス・オフェンスをメインのオフェンスとすることで,逆にファンダメンタルが定着するというメリットもある.いずれにしても,チーム練習の中だけでなく,取りだした個人技術・戦術の練習が必要不可欠であることはいうまでもない.
パッシングとカッティングを中心としたフリーランス・オフェンスを作っていくために,先ずハーフ・コートでの3対3をノードリブルで行わせるのが有効である.サッカーでは「壁パス」と呼ばれる攻撃が非常に有効な戦術となる.バスケットボールでも壁パスは「パス&ラン」プレーとして,初心者からトップレベルまで必要不可欠な攻撃戦術である.
パス&ランプレーは,ディフェンスがルーズな場合に有効な初歩的な戦術であると考えがちであるが,そうではなく,ディフェンスがタイトで厳しいほど,その効果を増すのである.ディフェンスがタイトに守っているからこそ,ボールを離した瞬間の突破が可能になるし,ディナイされた一瞬の隙をついてのバック・ドア・プレーが成功しやすくなる.ルーズなディフェンスに対してではなく,タイトなディフェンスに対してノードリブルの攻撃が成功するように訓練することが重要である.このドリルを厳しく行うことによって,ディフェンスがどんなにタイトな状態でもボールと人の動きが止まらない攻撃の基礎ができる.
また,ドリブルが許されない状況では,ストップ,ダッシュ,ピボットを連続しなければならない.これが選手の「脚力強化」にとっても非常に有効である.あるいは,チェスト・パス,サイドハンド・パス,オーバーヘッド・パス,フローティング・パス,バウンド・パスなど,いろんな種類のパスを使う場面が生じるので,パスのファンダメンタルのドリルとしても最適である.タイトなディフェンスに対しては,パスのタイミングが非常に重要になるので,パスの種類に加えてタイミングを訓練するためにも有効なドリルである.
ノードリブルの3対3の練習を,実際には以下の段階に分けて指導することによって,より実践的な段階へと進むことができるであろう.
最初にドリブルを制限するからこそ,「ここでドリブルが使えたら突破してシュートできるのに・・・」といったドリブルの有効性を再確認できる.同時に,バランスを保つために仕方なくついていたドリブルや,攻撃とは無関係のドリブルをなくすことができると考えられる.ドリブルはあくまで突破するためのドリブルに限定すべきである.
しかし,ノードリブルの練習をするからといって,「ドリブルが悪である」という気持ちを選手に抱かせるのは良くないであろう.ドリブル突破が必要な場面なのに,選手がためらってドリブル攻撃をしなくなるようでは,指導の失敗である.攻撃にとってドリブルは有効な手段であり,大切なものである.ドリブルを制限するのは「ドリブルが悪」だからではなく,あくまで「ドリブルを使わなくても攻撃できる力を付ける」ためであり,「ノードリブルで攻撃できる力が付けばドリブル攻撃はもっと楽になる」ということを選手に理解させることが必要であろう.「ノードリブルの中でドリブルの必要性を指導する」という逆説の論理が必要である.
ノードリブルの3対3を使ってフリーランス・オフェンスを指導するに当たり,チーム内で攻撃の原則を確認する.以下にその原則の例を挙げる.ここで述べる原則は,あくまで参考であり,チームの状態により付け加えたり省いたりが必要であろう.
フリーランス・オフェンスの練習を開始するに当たり,コート上の場所(スポット)に優先順位をつける.バスケットボールのコート上に,チームとしての重み付けをするのである.バスケットボールは「陣取り合戦」であり,攻撃するにも防御するにも,場所に優先順位をつける必要がある.優先順位をつけた理由を箇条書きで示した.
攻撃を指導していると,「動け」とか「どこ見てるんだ」と叫びたくなる瞬間が多々ある.選手自身に「大事な場所はどこなのか?」を理解させることは,自分自身で判断して動けるようになるためのヒントになるのではないだろうか.オフェンスは,隙あらば常に優先順位の1番であるローポストに飛び込むべきであり,それがだめなら2番のミドルポストやハイポストへ動くことを考えるべきである.同様に,アウトサイド(すなわち3や4の場所)でボール保持している選手は,常に1や2のスポットに視野を向けるべきなのである.大切な場所を見るのはごく当たり前のことである.それができていないとすれば,大切な場所がわかっていないということである.

原則1−2.3回に1回はインサイドへパスを入れる
下に,ノードリブルの3対3を行ったときのパスの動きを線で表した図を示した(図2と図3).どちらの攻撃がより有効な攻撃であるかは,一目瞭然である.
どんなに人の動きが激しくても,結果的に図2のような動きでしかボールが動かないような攻撃は,相手としてはあまり脅威を感じないのではないだろうか.少なくとも3回から4回に1回はインサイド(1と2の場所)にボールを入れることができれば,得点のチャンスは高まると同時に,ディフェンスが収縮するためにアウトサイドの攻撃もよりしやすくなるであろう.「パスを10回や5回連続させてからシュート」という課題が与えられたとしても,そのパスがあまりに攻撃と無縁な外側だけを回っているようでは,本当の練習をしていると言えない.
選手にも,「良い攻撃のイメージ」を伝え,単に人とボールが動けばよいのではないということを理解させることが必要である.


原則1−3.5〜6mのスペーシングを保つ
攻撃のスペーシングに関するルールである.攻撃がお互いに広がることが大切である.互いに広がることは,ディフェンスにヘルプされることを防ぎ,1対1のスペースを確保することにつながる.5〜6メートルの間隔が,パスが強く届く距離として有効である.しかし,あまり遠すぎると,今度はパスの強さが確保できなくなるので,逆にインターセプトの危険を生む.自分たちのチームのパスの強さを考慮しながら,適切な距離を考えることが必要であろう.
メジャー(巻き尺)を持って,実際にコート上のポジション間の距離を測ってみることが重要である.そうすることによって,距離感が生まれ,パス練習を行う上での目標距離が設定しやすくなる.
原則1−4.2秒間以上同じ場所にとどまらないで動く
オフェンスはどのポジションであれ,同じ場所に2秒以上とどまらないように動くというルールである.攻撃が「スタンディング」になってしまうと,防御は非常に守りやすくなる.移動しながら攻撃することによって,攻撃と防御の関係を崩しやすくなる.
また,「人が動くからこそスペースが生まれる」ということを選手が理解する必要がある.「人が動けば,その人がいた場所に新たなスペースができる.」そこへ次の誰かが走り込んでも良いし,ボール保持者がペネトレート(ドライブ)を仕掛けても良い.「動いた人を見る」段階から「人が動いた後のスペースを見る」段階へ選手は発展しなければならない.サッカーもバスケットボールも「スペース」が大切である.中田はディフェンスの裏側にあるスペースへキラーパスを送り込むが,彼が見ているのは動いている人ではなく空間である.バスケットボールはコートが狭いからこそ,より「スペースを生み出す」努力や工夫が必要になるのではないだろうか.
原則1−5.カット・インの後にはカット・アウトを行う
攻撃場所の優先順位がインサイドにあるので,選手はどうしてもローポストやミドル・ハイポストへ飛び込む動きを多用する.しかし,結果的にそこでボールをもらえない場合には,原則1−4により2秒で次のポジションへ移動しなければならない.そうしなければ,原則1−3のスペーシングを保てなくなると同時に,インサイドのスペースを殺すことになってしまう.したがって,インサイドへ飛び込んだ選手は,次に必ずカット・アウトを行って,インサイドにスペースを生み出すことが大切である.
原則1−6.パッサーのカッティング(2線目のカッティング:パス&ランプレー)とパッサー以外のカッティング(3線目のカッティング)を使い分ける


図4,5に示したように,3対3の中でのカッティングは大きく二つに分かれる.一つはパスをした選手がそのままパス&ランでカッティングする方法である(図4).もう一つはパスした選手とは別の選手がパスと同時にカッティングする方法である(図5).ノードリブルの3対3ではどちらのカッティングも必要であり,有効なカッティングである.ただし,二人が同時にカット・インを行って,インサイドにだぶってしまう「交通事故」は避けなければならない.そのような場合には,先にカッティングした方を優先するとか,視野を広く持ってもう一人を意識できた方がぶつからないようにカッティングの方向を変えるなどの調整が必要になる.練習の最初には交通事故が頻発するが,次第に減っていく.また,交通整理を如何に行うかがコーチの腕の見せ所でもあろう.
しかし,「交通事故が起こらないようにするプレー」の指導と同時に,「交通事故を瞬間的に回避するプレー」の指導も必要である.交通事故を全く起こらなくするという方向では,オフェンスがかえってぎこちなく,単純なものになりすぎてしまう.交通事故は起こるものであり,その事故を逆に合わせに使ったりしながら利用する方向で指導を考えた方が,より自然な攻撃になるのではないだろうか.二人が同時に飛び込んだら,どちらかがスクリーンナーになったり,ペネトレートとカッティングで飛び込んだ選手がぶつかりそうになったら,上手くアラウンドしてかぶさることで合わせにしたり,瞬間的にゴールカットしてディフェンスの背後をカットする合わせにしたりなどなど・・・工夫すれば,交通事故がかえって良い攻撃になったりすることもあり得るのである.「きれいなオフェンス」は必ずしも良い攻撃とは限らない.きれいすぎるオフェンスは守りやすいオフェンスにつながる可能性もあるのである.
原則1−7.インサイドへパスが入った後の動きを整理する
攻撃の優先順位をインサイドへシフトしてあるので,インサイドへ飛び込んできた選手(ローポストやミドル・ハイポスト)へパスを入れることが多発する.問題は,インサイドへパスが入った後である.インサイドへパスが入れば「後の攻撃はその選手の個人技に任せておく」では,攻撃がそれで終わってしまう.インサイドへ飛び込んできた選手の能力が非常に高く,その1対1で攻撃が終わればそれはそれでよいのだが,実際に,パスをあまり強くもないインサイドの選手へ入れた後に,周りの選手がその場に立ち止まってしまう場面を試合中によく見かける.結果的にインサイドが「1対5」の状態に陥ってしまっているケースである.どんなに優れたインサイドプレーヤーでも,周りをヘルプに囲まれた窮屈な状態で攻撃することは容易ではない.
「インサイドへパスを入れたらそれで攻撃が終わる」という意識ではなく,「インサイドへパスを入れたのを起点としてプレーが始まる」くらいの意識で,次のプレーを準備できるようになれば,攻撃の連続性が高まると考えられる.インサイドには,得点,パス,スクリーン,リバウンド,ディフェンスの5つの役割があるが,その中でも,パスとスクリーンの役割を強調し,インサイドを「中継役」くらいに考えるとボールの動きや人の動きがスムーズになる.そうすることで,逆にインサイドのディフェンスの意識がヘルプへ行くので,インサイド自体の得点チャンスも広がって来るという相乗効果を生むのではないだろうか.
インサイドへパスを入れた後の動きは,1.カッティング 2.ワイドオープン 3.アラウンド 4.スクリーン・アウェイ の4つに大別される.3と4は,スクリーンを含んだプレーであり,下の「4.スクリーン・プレーを加える」の項で述べるものであるが,インサイドへパスが入った後の有効な戦術であるのでここで紹介しておく.フリーランス・オフェンスの進んだ段階のオプションとして導入するのが良いであろう.ノードリブルの3対3では,カッティングとワイドオープンの二者択一で攻撃するだけでも十分である.


カッティングには,パスを入れた選手のカッティングだけでなく,第3者のカッティングもある.ボールがインサイドへ入った瞬間に,ディフェンスの意識がインサイドへ行き,自分に対する意識が薄れた瞬間が勝負である.図6では,ボールをサイドからローポストへ入れた場合である.この場合には,パスを入れた瞬間にディフェンスをすり抜けてカッティングすれば,インサイドからリターンパスをもらってのシュートが可能になる.また,逆側からカッティングすることもあり得る.図7では,ハイポストへ入れた場合であるが,同様にパスをした選手のカッティングと第3者のカッティングの両方が可能である.図では両側の動きがいずれもカッティングになっているが,両方が同時に同じプレーをする必要はない.


インサイドへパスが入った後の動きがカッティングだけだと,ディフェンスはボールが入った瞬間に下がってカッティングをさせないように守るようになる.その時には,思い切って3ポイントラインの外側へ広がってディフェンスから遠ざかりリターンパスを待つようにする.図8はローポストへ入った場合,図9はハイポストへ入った場合である.ハイポストの場合には,近づかずに遠ざかるために,コーナー側へ動く動きが主になると考えられる.図では両側の動きがいずれもワイドオープンに広がる動きになっているが,両方が同時に同じプレーをする必要はない.
大切なことは「二者択一」を準備することである.防御する側が「一方を守れば他方がやられる」と思うようなプレーを最低二つは準備することが戦術として重要である.カッティングだけでなく広がる動きをオプションに入れることで,攻撃の選択肢は広がり,ディフェンスの混乱が始まる.
また,一旦広がるような動きをした後に,一気にゴールへカッティングするような動きも効果的である.


ハイポスト付近へボールを入れた場合には,そのままアラウンドへ行く動きが有効である.ディフェンスを一気にすり抜けてリターンパスをもらい攻撃する.1のカッティングと同じような動きではあるが,ここでは,よりスクリーンを使った2対2のイメージが強くなる.ディフェンスがスライドすれば,図10のようにそのままボールをもらってシュートが打てるし,ディフェンスがファイト・オーバーしてきた場合には,図11のように途中で方向を変えて逆側にカッティングする動きが有効である.

ローポストへパスが入った場合には上へスクリーン・アウェイ,ハイポストへパスが入った場合には下へスクリーン・アウェイをするのが一般的である.スクリーン・アウェイの動きは,スクリーンによってアウトサイドにシュートチャンスを作る効果があると同時に,スクリーンの対処にディフェンスの意識が行くことでインサイドの攻撃へのヘルプが手薄になるという効果がある.パスを入れたインサイドの個人技が優れている場合には,外側でスクリーンプレーを仕掛けることによって,インサイドを単独な1対1にすることも有効な戦術となる.
原則1−8.インサイドからアウトサイドへパスを出した後の動きを整理する
インサイドへパスが入り,その1対1でシュートが打てたり,上に紹介したカッティングでシュートが打てた場合にはそれで攻撃が終了する.後はオフェンス・リバウンドへ続く.しかし,ワイドオープンへ広がった選手へパスをし,そのパスでシュートが打てない場合には攻撃が連続しなければならない.この場合には,インサイドからパスを出した選手は,その場にスタンディングしてはならない.
基本的には,パスを出した選手は,
などの選択肢が考えられるであろう.1は,その場に2秒以上とどまってはならないという原則に反するが,パスを外へ返した瞬間にディフェンスは気を抜きがちである.その瞬間に再度ポジション取りをしてボールをもらえば,攻撃のチャンスはある.3秒バイオレーションにならないように注意してトライすれば,有効な戦術になるであろう.ハイポストからアウトサイドへパスを返した場合には,そのままローポストへパス&ランを仕掛ける3の選択肢が非常に有効である.
原則1−9.ボールサイドカットを原則とし,ディナイされたらブラインドカットする
カッティングの原則はボールサイドカットである.積極的にディフェンスの前側をカッティングするように努力する.ディフェンスにとって最も脅威なのは自分の前をとられることである.シュートも打ちやすく,ファールをもらうこともできる.それに対してディフェンスが過剰に反応して来た場合には,ブラインドサイドカットが有効になる.ボールサイドカットを試みてディフェンスにコースを止められた場合には,その場にステイしてはならない.これではディフェンスが非常に楽になる.ボールサイドカットのコースをふさがれた瞬間にゴールに向かってカットするブラインドサイドカットがあってこそ,二者択一が成立する.
また,ボールがもらえないのに,その場にじっとしている選手をよく見かけるが,それではスペースが死んでしまう.ブラインドサイドカットでゴールに向かってカットし,スペースを生み出すことができれば,そこへペネトレートすることも可能になるし,次の誰かがカッティングするスペースも生まれる.一番悪いのはその場に「うじうじ」としていることである.
原則1−10.パス&ランの後のクリアー(カット・アウト)の方向を工夫する

パス&ランでゴール方向へカッティングした後は,パスした側にカット・アウトする方法(図12)と,その逆が考えられる.どちらにしなければならないという原則はなく,状況に応じて判断する必要がある.しかし,パス&ランのカッティングとドリブルペネトレートの1対1を中心に攻撃する場合には,パスの側へカット・アウトする方法が良いのではないだろうか.
図のようにパスした側へカット・アウトすると,パスを受けた選手が,カッティングによってできたスペースへペネトレートすることが可能になる.ペネトレートでシュートまでいければそれでよいし,だめならば,逆サイドのA の選手とのあわせのプレーが生まれる.これが,パスと逆の方へカット・アウトしていれば,ペネトレートする選手やあわせの選手とのじゃまになる可能性が生じる.
原則1−11.ペネトレートの合わせの原則を作る
カッティングとパッシングによって攻撃の動きが生まれると,カッティングによってできたスペースへのペネトレートがやりやすくなる.インサイドへパスを入れた後の動きと同様に,誰かがペネトレートを始めた後の動きについても,チームで原則を作る必要がある.誰かがペネトレートを始めたら,それが攻撃の終わりのようなイメージになってしまっては,ペネトレートが1対5になり,攻撃がしづらくなると同時に攻撃の連続性がなくなってしまう.ペネトレートについても,それを起点として攻撃が始まるくらいのイメージで合わせのプレーを準備しなければならない.
合わせのプレーは原則として以下の5種類である.
1〜3の合わせが非常に攻撃的な動きであり,5のセーフティーは,合わせというよりも相手に速攻をされないための防御的な動きである.4は,ペネトレートした選手が元いた場所へ動く動きであり,ペネトレートした後に1〜3の攻撃的な合わせができなかったときに「逃げのリターンパス」を返す場所を準備する動きである.この「元いた場所」は,案外空いているものであり,ここに誰かを配置することによって,「ドリブルが止まってしまってどこにも返す場所がない」という最悪の状況を防ぐことができる.ペネトレートの攻撃がうまくいかない場合の準備の動きである.「備えあれば憂いなしである」
下にフォワードポジションからのペネトレートに対する合わせの例を幾つか示したが,図24のように,合わせにスクリーンプレーが入るようになると,より守りづらくなるであろう.


原則1−12.「全員が一つの生き物のように動く」
これは,原則というにはあまりに抽象的すぎるかもしれないが,チームで攻撃する上で非常に大切な意識であると考える.鳥や魚がたくさん集まったところを想像してほしい.その集団がまるで一つの生き物のように振る舞いながら動くのを見たことがあるだろうか.それぞれの鳥や魚が,周りとの関係を崩さずに,一定の距離を保ちながら,動くことによって,集団が一つの生き物のように見える.バスケットボールも同じように動くことが大切である.チームのそれぞれがお互いの意図や動きを察知しあいながら,お互いに関係を崩さずに動くことができれば,チームの攻撃力は一段と高まるであろう.そうすることによって,フリーランスで攻撃しているチームそのものが,周りから見たときに一つの生き物のように見えるのではないだろうか.
一人一人の動きが,次の動きの引き金になり,攻撃がどんどんつながっていくようなイメージが大切である.
ノードリブルの3対3の発展として人数を4対4に増やした練習を行う.この場合には,以下の二つのタイプが考えられる.
1のタイプは,ノードリブルの3対3の人数をそのまま4人に増やしたもので,全員が交互にインサイドへ飛び込むことができるタイプである.この場合には,全員が3対3と同じ原則のままプレーすることができる.攻撃を一人増やしたことにより,ディフェンスと合わせて二人の選手がコート上に増えたことになる.したがって,お互いのスペーシングが少し難しくなるが,パスのレシーバーが一人増えたことにより,パスの周りはかなり楽になり,パスが展開されるテンポがよくなるはずである.1のタイプは,オールアウトのフロアバランスへ進むことができる.
これに対して,2のタイプは,ノードリブルの3対3にインサイド・ポストを一人加えたものである.インサイドは基本的にポストエリアから大きく外へ出ないようにする.ポストエリアをどこまでと捉えるかにはいろんな考え方があるが,ここでは,制限区域とフリースローサークルを1メートル程度外側へ広げた区域をポストエリアとする(図12).ポストに指定された選手は,このポストエリア内で原則に則ってプレーすることになる.しかし,インサイドでプレーするからといって,一つのポジションにずっとスタンディングしてはならない.2秒の原則に従って,エリア内でのポジション移動が必要である.2のタイプは,4メンアウト・1メンインサイドのフロアバランスへ進むことができる.

ノードリブルの4対4の練習も,3対3と同様に以下の段階に分けて指導することによって,より実践的な段階へと進むことができるであろう.
ノードリブルの3対3,4対4と練習を進めた後に,5人へ練習を進めなければならない.ここで問題となるが,5人のフロアバランスをどうするかである.定義のところでも述べたように,フロアバランスとしては以下の3つのタイプが考えられる.
初心者やミニ・中学の段階では,全員にアウトサイドとインサイドで攻撃する機会を与えることで,個人技を全面的に発達させることができるオールアウトのフロアバランスが適しているのではないだろうか.全員にインサイドでのプレーを要求することになるが,長身選手だけがインサイドのプレーに適しているとは限らないのである.問題は,1.攻撃と防御の身長差, 2.攻撃と防御の個人技の能力差 である.長身選手であっても相手のマッチアップしている選手との身長差がなければ長身選手の利点はなくなる.逆にアウトサイドの選手にミスマッチ状態があれば,その選手が積極的にインサイドへ飛び込んでプレーしても良いのである.相手の長身選手を外へ引き出すことにもなり,一挙両得である.長身選手は,毎日インサイドのディフェンスの練習をしていると思われるが,アウトサイドの選手は必ずしもインサイドでのディフェンスの練習をしているとは限らない.このことが,逆にアウトサイドの選手がインサイドでプレーする利点を生むことになるのである.個人技に優れていれば,身長差がなくても得点したりファールをもらったりすることは可能であろう.
下にフロアバランスの例を2つ(図14,15,)示したが,比較的全員がインサイドとアウトサイドの役割をこなしやすいバランスである.ノードリブルの3対3や4対4をそのまま5人へ増やすしたものである.図14はオールアウトのイメージであり,とにかく優先順位の高いインサイドを最初にオープンにしておき,そこへ交互に飛び込んでプレーしようというものである.図15は,2ガードタイプであり,コートの左右へボールを展開しやすいという利点を持つ.オールアウトと同様にインサイドをオープンにしておき,そこへと飛び込んでプレーすることを狙う.しかし,ここでは一人をインサイドの役割に固定し,ポストエリアから外に出ないようにすることで,インサイドに起点を作ることもできる.インサイドに一人ずば抜けた選手が居る場合にも使えるフロアバランスである.インサイドを一人で使えるために,1対1をするスペースが広い.

これに対して,図16のフロアバランスは少し特殊である.インサイドに二人配置してあるが,この選手には,「中継者」と「スクリーンナー」と「リバウンダー」の役割を強調するのである.比較してほしいのが下の図17,図18のタイプである.図17,18は同じようにインサイド・ポストを二人配置してあるが,これは,攻撃の優先順位の高いローポストと,ミドル・ハイポストに最初から長身者を置く,インサイドの選手が攻撃の主役となるタイプである.この場合には,アウトサイドの3人はアウトサイドに役割を固定し,インサイドへボールを入れることと,インサイドからのパスを受け手の3ポイント・シュートが主な仕事になる.インサイドにずば抜けた長身選手が居るようなチームに適している.


図16のタイプは考え方を変えて,「優先順位の高いローポストと,ミドル・ハイポストを最初にオープンにしておき,そこに飛び込んでプレーする」ことをねらいとした,アウトサイドの選手が主役のタイプである.インサイドの役割を与えられた選手の身長が低くても,パスとスクリーンの能力があれば,十分に機能する.比較的外側でプレーするために,リバウンドもランニングリバウンドで走り込むケースが増え,ディフェンスとすればボックスアウトしづらいという利点も生じる.イメージとしては,ノードリブルの3対3に,障害物を二人配置したイメージでプレーできるであろう.アウトサイドの3人は,ノードリブルの3対3で単独で動くのに比べ,二人を「壁」として利用できるので,より攻めやすくなる.
中継者の役割:インサイドの二人は,アウトサイドの選手を助けるように動くことを念頭に置いて動く.アウトサイドの選手間のパスが止まったらすぐに中継してボールを受け,攻撃のリズムを崩さないように心がけることが大切である.中継には図19に示したような,ハイポストへフラッシュする動きや,逆にショート・コーナー方向へ広がるような動きなどが考えられる.いずれにしても,ボールの動きが止まった瞬間に敏感に反応してボールを中継することが大切である.この動きが,アウトサイドの選手のバックドアプレーを成立させたり,外へ広がることで空いた中のスペースへ逆から飛び込む動きなどを誘発することにつながる.

スクリーンナーの役割:アウトサイドの選手にシュートチャンスを作る「スクリーン」の役割としては,図20に示したようなインサイドへ飛び込ませてシュートチャンスを作るスクリーンと,図21に示したような外側へ広がらせてシュートチャンスを作るスクリーンなどがある.インサイド二人のプレーの優先順位を中継とスクリーンにすることで,ディフェンスの注意がヘルプへ行ったときこそが,自分の得点のチャンスである.「周りを生かす」意識が結果的に「自分を生かす」のである.

図16のタイプでは,インサイドの選手が比較的ポストエリアの外側でプレーすることが多いので,中距離のジャンプシュートが打てなければディフェンスを外へ引き出すことができない.単なる「中継」と「スクリーン」の役割だけしかできない選手だと,そのディフェンス二人が完全にヘルプディフェンスとなるため,3対5の苦しいオフェンスになってしまう.インサイドの選手も,中継とスクリーンの役割をこなしながら,自分の得点を忘れてはならない.また,外側でプレーするからといってリバウンドの役割も怠ってはならない.
フリーランスオフェンスパッシングゲームを展開する上では,図25に示したような,空間的な幅と厚みについて意識する必要があるだろう.

二つの要素のうち,幅については,それほど大きく崩れることはない.あるいは意識的に左右のフロアーバランスを崩して,片側に人を集めるのが,「アイソレーション」と呼ばれる攻撃方法だ.片側半分を一人の1対1のスペースとして解放する攻撃法だ.フリーランスオフェンスを展開していく中では,特に「厚み」という言葉で表現した縦方向のスペーシングが常に保たれているかどうかをチェックすることが大切になると考えられる.
図26左のように厚みが無く,全体的に上側に上がっているスペーシングは,攻撃のエントリー場面(例えば1−4の入り方)に多く観られる.この場合には,まだベースライン側が大きく空いているので,そのスペースへカッティングで飛び込んだり,ペネトレートで切り込んだりすれば,有効な攻撃につながる.優先順位の高いエリアを最初に意識的にオープンにしておいて,そこへ攻め込もうという意図が見受けられる.
問題なのは,図26右のようなスペーシングになっているときだろう.フリースローラインの下側に偏ったスペーシングで攻撃すると,非常に堅苦しい攻撃になりがちである.本来攻撃したい優先順位の高いエリアに,オフェンスが密集するので,当然ディフェンスも密集してくる.結果的に,狭くごちゃごちゃした印象を与える攻撃になる.

やはり,図27の左のように,ベースラインからトップまで全てを使えるようなスペーシングで攻撃し,幅と厚みを兼ね備えた場合には,オフェンス同士の距離も適正に保ちやすいし,結果的にディフェンスの密集も防ぐことができる.方サイドから逆サイドへのボールの展開もスムーズに行うことも可能になる.
また,図26右のような攻撃では,「ウイングからの攻撃」が中心になるのに対して,図27左のような攻撃では,それに加えて「トップからの攻撃」も可能になる.オフェンスが縦と横に広がっているので,ディフェンスも分散するためトップからのペネトレートも可能になってくるのだ.どこかに「ペネトレートはウイングからするもの」という既成概念があって,それにとらわれてしまいがちだ.そうすると,どうしても下に偏ったスペーシングに陥りやすくなる.ウイングからの攻撃になると,ボールサイドとヘルプサイドという関係ができあがってしまうので,ヘルプディフェンスを訓練しているチームの場合には,ディフェンス側が比較的ヘルプの準備をしやすくなる.特にベースライン側へのペネトレートは,「シェルディフェンス」の普及により,現在では簡単にヘルプされて終わることが多い.これに対してトップからのペネトレートは,ボールサイドとヘルプサイドがはっきりしづらいので,かえってディフェンスはヘルプしづらくなる.ハイポストからの攻撃が,360度の可能性を持っているのと同じ理由だ.ペネトレートで一気にハイポストやローポストへ切り込めると同時に,止められてもアシストの方向は多い.ウイングからのミドル方向へのペネトレートが守りづらいのも同じような理由だ.
図27右は,いわゆる「ハイモーション」と呼ばれるスペーシングだ.これは,意識的に全体のスペースを上に上げて,攻撃したいベースラインエリアをオープンにしておく攻撃隊形になる.図26左と似ているが,それよりもガードの位置が比較的上まで上がっているのが特徴である.ベースライン側を空けておいて,さらにそこへのヘルプをしづらくするスペーシングだ.
いずれにしても,フリーランスで攻撃している中で,適切な幅と厚みを意識することが大切だろうs.選手自身が比較的自由にフリーに動きながら,常に全体としてのフロアーバランスがどうなっているかを意識できるようになることが肝心だ.自分自身の動きだけでなく,チーム5人全体がどんな広がりと幅を持っているかを頭に入れながら動くようにしよう.

ノードリブルの3対3と4対4の練習によって,ディフェンスのディナイがどんなに厳しくてもボールと人の動きがスムーズにできるようになる.パッシングとカッティングを中心に攻撃し,それに空いたスペースへのペネトレートとインサイド・ポストの1対1を加える.これだけでも攻撃として十分に機能するが,より発展させるためには,スクリーンプレーを加えていく段階に進む.スクリーンプレーは,ボールのあるところでのスクリーン・プレー(ピック&ロール,アラウンド)とボールのないところでのスクリーン・プレー(ダウン・スクリーン,バック・スクリーンなどなど)に分かれる.ここまでで,既に幾つかのスクリーン・プレーについて簡単に触れているので,参照してほしい.
3−1.アラウンド
パッシングとカッティングを中心としたフリーランス・オフェンスに,導入しやすいスクリーンプレーは,「原則1−7.インサイドへパスが入った後の動きを整理する」の中で紹介したアラウンドのスクリーンプレーである.インサイドに飛び込んだ選手にボールをパスした瞬間に,そのままアラウンドへ行くので,パス&ランプレーの延長として捉えやすいのではないだろうか.また,インサイドへパスを入れた後にゴール方向へカッティングするように見せかけてから,アラウンドへ行く方法もある.インサイド・ポストとアウトサイドの選手が行うスクリーン・プレーであれば,身長の大小が大きいので,ディフェンス側のスイッチもしづらい状況を生むことが考えられる.
アラウンドプレーについては,別のグループ戦術のページで詳しく紹介する(工事中,しばらくお待ち下さい.).
4−2.ピック&ロール
ボールのあるところでのスクリーン・プレーであるピックアンドロールも,有効な戦術である.
1.図10のインサイドへボールを入れてアラウンドするプレーから,ディフェンスのスライドに対応してピックアンドロールへ入る方法
2.図21の外へシュートチャンスを作るスクリーン・プレー(フレアー・スクリーン)からピック&ロールへ入る方法
3.フォワードポジションのボールに対してピック&ロールをつくりに誰かがスクリーンに行く方法
4.ガードポジションのボールに対してピック&ロールをつくりに誰かがスクリーンに行く方法
などなどいろんなバリエーションが考えられるが,ピック&ロールプレーについては,別のグループ戦術のページで詳しく紹介する.
4−3.ボールのないところでのスクリーン
ボールのないところでもいろいろなスクリーンを設定できる.これについても,別のページで詳しく紹介する(工事中,しばらくお待ち下さい).