○数色のビブスをつかった練習[08/05/20]

≪掲載内容≫
発想の源[08/05/20]
3人3色[08/05/20]
4人2色[08/05/20]
5人2色[08/05/20]
身につけてほしい感覚[08/05/20]
集団の手抜き[08/05/20]


○発想の源

 サッカーの元日本代表監督であるオシムの練習には、数色のビブスを使った練習があると聴いたり本で読んだりした。どんなねらいで、どんな効果があるのか? 試してみたくて自分なりにやってみたら、意外に面白かった。実際のオシムの練習を見たわけではないが、サッカーは人数が多いので、いろんな色使いが可能になりそうだ。しかし、バスケットボールでは5人しかプレーヤーがいないので、3対3を3色で、4対4を2色で、5対5を2色でという3つについてはメリットがありそう。オールコートを使った3対3や4対4だが、色があるだけで俄然面白くなる。

 コーチはいろんなドリルを使って、グループ戦術の「やり方」を練習する。しかし、ここで紹介する練習では、グループ戦術を「発生させる」ことが練習の課題になる。引き出したいグループ戦術が発生するような色に関するルールを設定することがポイントになる。色を設定するだけで、「次にボールをもらうための準備の意識」や「ボールをレシーブした後にどんなプレーを仕掛けるかの準備の意識」が自然と訓練され、「どこを見るか」も自然と身に付けることができるという印象を受けた。判断もどんどん速くなり、プレーのテンポが上がる。特に、子供たちには、難しい言葉で説明するよりも、単純な色を使った練習によって身体で覚える方が良い気がする。

 したがって、練習方法作成の出発点は、まずどんなグループ戦術や個人戦術を練習の中で引き出したいのか? をコーチ自身が決めることである。下のメニューを参考に、オリジナリティ豊かなドリルを工夫してください。

 面白いのは、下に示したように、それぞれの練習には基本ルールを設定するが、「破っても良い」というルールを設定するところにある。プレーヤーは、基本的にはルールに従ってプレーするが、どうしても「そのルールに従うよりも良い選択肢がある!」と決断した場合には、色のルールを破ってプレーする権利を与えておくのだ。例えば、「赤」→「青」→「緑」の3人3色で、色の順番にパスをするというルールでプレーしながらも、「ここは赤→青→赤」とパスをリターンする方がいいと決断したら、パスを戻してもいいということである。

 そうすると、単にルールに従うだけでなく、今その瞬間にもっと良い選択肢はないか? も考えるようになる。そして、ルールを破ってプレーするには、それなりの説明責任と結果責任を問う。「どうしてそのプレーを選択したんだ?」「ルールに従うよりも価値のあるプレーだったのか?」を徹底して問う。そして「選んだからには結果に責任を持ってプレーを成功させろ!」と要求する

 普段は何気なくパスやドリブルをしていたのが、「ルールを守る」ことと「ルールを破る」ことの2面によって、判断や決断を要求することになる。プレーを「する」ことも「しない」ことも全て決断であることがよくわかる。普段の練習から決断することと結果責任を徹底的に要求しておけば、試合の大切な場面でも、自信を持って決断し、結果もついてくると思うのである。

 コーチの言うことだけをやっていてもゲームには勝てない。でも、コーチの言うことだけをやるプレーヤーに限って、負けたらコーチの責任にする。自分が決断していない証拠であろう!


○3人3色

 ・オールコート3対3の片側チームに3色を設定する(対抗チームは色なし)
 ・基本ルール:ボールを受けたプレーヤーの色とは違う色のプレーヤーにパスをする
 ・ねらい:3人目の準備を早くさせ、「次は自分だ」という意識を強く持たせる
 ※第2段階としては、単独のカッティングに加えて、ボールを持っていないプレーヤー同士のダウンスクリーンを加えていく。

 バスケットボールでは、AさんからBさんへボールが渡った瞬間に3人目のCさんがカットし、「パッ、パッ」というリズムでパスきれば、効果的なプレーが成立する。これは「3人目の動き」と呼ばれ、サッカーでは「3rd man combination」や「3rd man running」という名前で呼ばれる、ボールゲームの基本的なグループ戦術である。

 バスケットボールは5人でプレーする。したがって、AさんからBさんへボールが渡った瞬間にはCさんDさんFさんの3人がこのレシーバーになれる可能性を持っていることになる。このドリルによって、ボールの移動を予測して、3人目が単独でカットしてボールを受ける能力を高めることができそうだ。

 しかし、「パス&ラン」を使って瞬間的にボールを放したプレーヤーがリターンパスをもらえると判断した場合には「ルール破り」が起こる。この決断が面白い。あるいは、カットした3人目に角度を変えてボールを入れるプレー(下の図:トライアングルプレー? 直角ポスト? アングルを変える?)でもボールを戻す「ルール破り」が起こる。いずれにしても、基本ルールに乗っかってプレーしながらも、ルール破りのチャンスを伺っていることが大切になる。


 ・オールコート4対4の片側チームに2色を2人ずつ設定する(対抗チームは色なし)
 ・基本ルール:ボールを受けたプレーヤーは自分と違う色のプレーヤーにパスをする
 ・ねらい:3人目の準備を早くさせ、「次は自分だ」という意識を強く持たせる
      ボールに対して攻撃のレシーバーを2カ所創る能力を高める

 よく「1カ所だけ見てたらだめだ!もっと周りを見ろ!」というアドバイスをする。しかし、この4対4をやっていると、対抗チームに色がないので、ボールを持っているプレーヤーにとって、違う色の2人が「浮かび上がって見える」ような感覚になる。実際に動くプレーヤーも、ボールに対して「同じ色のあいつがああ動くなら、自分はこう動いてチャンスを創ろう!」といった具合に連動して考えるようになる。

 この4対4の場合には、パス&ランは色違いにパスするプレーなので、基本ルール内に含まれ奨励されるプレーになる。更に、パスしてアラウンド(アウトサイドスクリーン)に走るプレーも、パス&ランの発展型として奨励する。

 ここで面白いのは、「今は自分がレシーブする順番ではない」と判断した時に、「違う色のプレーヤーを活かすスクリーンプレー」を発想したり、「スペースを創りだすためのカッティング」でボールの隣をオープンにして次のレシーバーが攻撃するスペースを創る無駄走りの発想をしたりし始めることだ。「自分じゃない」時に、ただ休んでいるだけではプレーは連続しないし、効果的な攻撃はできないことがよくわかってくる。

 起こりうるルール破りは、完璧に同じ色がオープンになっている場合だ。色違いにパスするのが基本ルールだが、同色が完全にフリーならば、決断してそこへパスを出しても良い。レシーバーも、完全にオープンならばターゲットボイス!!


○5人

 ・オールコート5対5の片側チームに2色を2人と3人で設定する(対抗チームは色なし)
 ・基本ルール:ボールを受けたプレーヤーは自分と違う色のプレーヤーにパスをする
 ・ねらい:3人目の準備を早くさせ、「次は自分だ」という意識を強く持たせる
      ボールに対して攻撃のレシーバーを2カ所創る能力を高める
      2人の側のプレーヤーがボールを受ける能力を高める

 5対5なので、2人の側からするとレシーバーは3人居るが、3人の側からするとレシーバーは2人しか居ない。したがって、この2人の側のプレーヤーがボールの動きに合わせてせっせと仕事をしないと、ボールが止まることになる。結構忙しいが、ボールを受ける準備が遅いプレーヤーには良い練習になる。どのプレーヤーを2色にするか? ということと、関連性を持たせたいプレーヤー同士を色違いにするということが課題になる。

 例えば、ハイロープレーを積極的に発生させたい場合には、インサイドの2人を色違いにして2人の関係性を高めればよいだろう。


○身につけてほしい感覚

ビブスの色を変える練習によって身につけてほしい感覚を箇条書きにしてみた。

・自分がどのボールに合わせて準備するのか? タイミングを計る感覚
・ボールをレシーブした後に、何をするのか? 先手を仕掛ける感覚
・同時に攻撃ポイントを2か所以上確認できているか? 視野を広げる感覚
・同時に攻撃ポイントは2カ所以上創れているか? 全員が攻撃する感覚
・意識を「外」に向けても体が正しく操作できているか? 体が無意識に動く感覚

・ルールを破って「計算されたリスクを冒す」場面があるという感覚
・常に「確認」しながらプレーする感覚
・パスを「止める」ことができる感覚
・自分で決断したプレーをやりきる責任感
・自分が攻撃できなくても、無駄走りでディフェンスを動かしスペースを創り出す感覚
・自分が攻撃できない時に、味方を生かすスクリーンをセットする感覚
・起こった現実に対応するのではなく、自分のイメージした未来になるように動く感覚
・表のプレーと裏のプレーを瞬間的に同時に準備する感覚
・ハイスピードで動きながらも、最後のショットはバランスよくリラックスして打てる感覚
・ハイスピードで動きながらも、正確にファンダメンタルを遂行する感覚
・プレーとプレーが1回1回止まる「点」ではなく流れるような「線」でつながる感覚
・人の動きと自分の動きを連動させる感覚
・瞬間的に過去⇒現在⇒未来の連続したプレーのイメージを創る感覚


○集団の手抜き

 全ての練習は、対抗チームは色なしで行う。ビブス組を2回くらい経験した後に、ビブスありとビブスなしを入れ替えると、面白いことが起こる。

 「色なし→色あり」は急にルールに縛られるので、と惑う。
 「色あり→色なし」は急にルールが無くなるので、「みんながお休み状態になって動きが止まる」か「みんながレシーバーになって混雑する」かのいずれかが起こる。前者は集団の手抜きだ。「自分が受けなくても、他にもレシーバーは居るし・・・自分が少し手を抜いても大丈夫」という無責任な感覚である。無意識的にこれが起こる。この段階を超えて、色がなくても準備して動ける段階に入る。色ありろ色なしを繰り返しながら、「何が変わるか?」を常に問いかけながら、練習を繰り返していけば、リズムのよいバスケットボールが出来上がりそうな予感。