一貫指導カリキュラムを考える

≪一貫指導カリキュラムの開発について≫

☆本内容は,バスケットボールの一貫指導カリキュラム開発に対して,現時点で思うことを箇条書きにしたものです.年が明けてからもう一度整理して図を入れたものをアップしますが,とりあえず載せてみました.図が一つもなく,箇条書きすぎて,意味が通じないところも多いと思いますが,一貫指導カリキュラムについて皆さんからのご意見をお寄せ下さい.


『トップチームを強化したいとなると,どうしてもトップチームそれ自体,あるいはその近くにばかり目が奪われてしまいがちです.しかし,「トップチームの強化のためにはまずGrass Roots(草の根)から」,そして「そのGrass Roots(草の根)である子ども達の育成のためには,彼らを指導するコーチの養成から」・・・一見遠回りに見える地道な努力こそ,結局は最も近道であり,しかも確実な道である.』(クリエイティブサッカー・コーチングp.34 ノルウェーのジュニアの育成より引用)

『マニュアルというと「型にはめてしまうような指導」を思い浮かべるかもしれませんが,実際は,いかに選手をのびのびと育てるかということを示している内容』p.58

 

※「教員免許状」≠「バスケットボールの指導ライセンス(指導資格)」という認識の必要性

これまで日本では学校教育の中でスポーツが発展してきた

教員が「課外活動」としてスポーツを指導するということが当たり前になった

バスケットボールを指導するためには,バスケットボールの指導ライセンスが必要な時代へ突入

 

※「バスケットボールには熱心な指導者が多い」←某スポーツビデオ企画販売会社の担当者の印象

その熱心さ=チームを勝たせることに対する熱心さ ≠競技者を育てることに対する熱心さ ?

 

※指導辞典≠指導教程 両方必要だが,バスケットボールに後者はあるか?

  例:サッカー,スキー教程,算数・数学のカリキュラム(完全階段方式)

    →いつ,なにを,どんな順番で,どんな方法で指導するのが妥当か?

     →目標像の明確化と指導内容の系統性からみた構造的把握

 

※一貫指導が確立されなかったのは何故か?

 1)プレーヤーが所属チームを離れてプレーする機会が少なかった

 2)年代間,コーチ間の情報共有が不十分であった

 3)大会毎に選手とコーチを「選抜」して臨むだけで一定の競技成績が得られた

 4)日本協会の施策とは無関係に競技人口・競技人気がある程度保たれてきた


◇目標像の明確化について

a「どんなバスケットボールを目指すのか?」=チーム作りの視点

  →スタイル,チーム戦術・・・・・・→共通理解が得づらい?

              コーチが100人居れば100通りの戦い方

              →論議は当然必要不可欠→共通項を抽出

      ↓cf↑

 b「どんなプレーヤーを育てるのか?」=競技者作り(育成)の視点

  →個人技術・戦術,グループ戦術・・・→共通理解が得やすい?

      ↓

  例「モーションオフェンスで攻撃できるプレーヤー」

   (モーションオフェンス=移動しながら攻撃する)

  例「1対1で得点できるプレーヤー」≠「ノーマークでシュートの打てるプレーヤー」

  例「195cm〜200cmの田伏勇太?」←「田伏のすごさとは?」

  例「クリエイティブな選手」=「いい判断」+「実践する能力」

 

※ これまでは,プレーヤーが所属チームを離れて活動する機会が極端に少なかったために,コーチの独自性の中で選手育成が進められてきた.→今後トレセン制度が確立され,他チームのプレーヤーと活動する機会が増えれば,一貫指導の必要性はますます高まる.

 

※ 「ジュニア段階では個人技の育成が大切」という共通理解は得やすい≠ドリル漬け

  熱心な指導者ほど細分化した抽象的なドリル漬けになる可能性↑ 

   →そのドリルがうまくなるとゲームの何が変わるのか? 変わったのか? 

    →ゲームが変わらないのであればコーチの自己満足

      ↓

 個人技を発揮しやすいオフェンス形態,ミニゲームの練習形態を提示する必要性

 

『バスケットボールはバスケットボールをすることによって上達する』

『練習は試合のリハーサルである』倉石氏のファンダメンタルの指導書から引用

『できる限り判断を伴う形で技術を習得していく』

      ↓

 (始めから実践の中で)

      ↓

『技術とはそれだけを単独として身につけるものではなく,常に広い視野での状況把握および周囲との連携とともに身につけられなくてはならないという考え方』p.39

      ↓

 最初からオープンスキルとして指導する必要性

 

従来=フォームの指導→ドリル→ゲーム(最後に実践)

 『先ず型から入り→反復しながら徐々に実践的要素を入れ→最後に実践 =武道系の指導(守→破→離)』

 『先ずドリルによって一つの技術を身につけ(closed skill),それを徐々に実践の状況で発揮できるようにさせていく(open skill)』 

 

  将来=M-T-M method(Match→Training→better Matchという指導の流れ)

  ゲーム→(うまくいかなかったら)→ドリル→(うまくいかなかったら)→フォームのアドバイス

 『ミニゲームの中だけでは思ったことがなかなかうまくできないことが多々でてきます.選手がそれを感じたときがドリルを行う時』

 『「練習で身につけて試合で披露」というよりも,「試合を積み重ねながら学んでいこう」』p.68

      ↓

 ミニゲームの中で基本の質をコーチングしていく

1) カット(cut)

2) ポジション(position:コート上のポジション,ディフェンスに対するポジションの両方を含む)

3) ターゲット(target)

4) パス(pass)

5) キャッチ(catch)

6) ムーブ(move)

7) ショット(shot)

 

 例 パスの質=タイミング,方向,強さ  ≠単なる種類ではない

 例 キャッチの質=1カウント目の仕掛けの意図の有無 ≠単なる姿勢の形ではない

    →キャッチとムーブの融合→ムービングレシーブ

 例 ムーブの質=change of pace, change of direction

 例 ショットの質=タイミング,正確性,1ハンド,


運動学習の位相理論

粗形態(発生の段階)・・初めてできた
   ↓
精形態(修正,分化の段階)・・・良い動きへ修正,目的に応じて技を分化
   ↓ =考えながらの反復,意識しながらの反復 ≠機械的な反復 ←「運動の質的な改善」が大切
最高精形態(自動化の段階)・・・ひとりでにできる,無意識にできる

→バスケットボールの中での目指すべき自動化の方向は?

 ≠Closed skillとしての自動化 =Open skillとしての自動化 →M-T-M methodの有効性

→戦術トレーニングの必要性の度合いは?

 第1グループから第4グループまでの図を入れる

    ↓

中学校までにスキルを自動化の段階まで高めておくことが,高校段階以降の戦術トレーニングにとって大切な意味を持つ

 


 

※3対3の必然性

 視野の広がり,第3の動きが発生,ノーボールのスクリーンも発生

 1対1ではスペースを創る−活かすのみ,視野はほとんど関係せず

 2対2では,スペースを創る−活かすのみ,技術の練習には最適だが限られた視野

 

※4対4の必然性

 前後左右への視野の広がり,第3の動きにスクリーンが加わる

 

『広い視野を身につけるには,身体の向きや首を振っての状況把握と同時に,周辺視野を開発することが重要です.周辺視野など神経系の機能改善となれば,発育発達的にもできるだけ早い年代からというは,科学的にも十分根拠があることです.』p.41

      ↓

3対3,4対4のバリエーションの工夫

※「」その課題の達成=そのミニゲームの勝利」になる工夫→必要に応じた技術の習得

(サッカーと違ってコートの広さ,リングの設定を変えづらい)

 →人数,ルールの条件を変えて課題に変化を付ける必要性

1) パッシングゲーム

2) ノーボールスクリーン

3) オンボールスクリーン

4) センターのプレー場所,役割の限定

5) オールコート3対3,4対4ノードリブル

 

6) 3対3+1(スクリーンナーと中継役)

7) 3対3+2(スクリーンナーと中継役)

      

※各種ミニゲームの実施→必ず全体である4対4や5対5に戻す


◇系統性からみた構造的把握について

「個体発生は系統発生を繰り返す」

→バスケットボール競技の歴史的な進化を検証した上で,プレーヤーの育成過程でモーションオフェンスを系統発生させるこができないか?

 ≠既に存在する目に見える戦術の「形」を持ってきて「形に則って動かす指導」

 =狙いや意味の理解からできるだけプレーを自然発生さ「結果的に形が生まれる指導」

  ※「動かされるプレーヤー」≠「自ら動くプレーヤー」

 

 →高校以上の段階で初めてチーム戦術を徹底指導

   この段階で初めて『「コーチのアイデアを実践できる能力」p.46という考え方』を要求する

 

『モーションオフェンスを系統発生させる指導の展開例(案)』

ミニゲーム(3対3,4対4)の中で徹底的に基本の質を高めていく

<モーションオフェンスの利点>

・ 移動しながら攻撃することによって,個人技をより発揮しやすい状況が創れる

・ ハーフコートオフェンスでのポジションの固定化をある程度防ぐことができる

  →長身者がアウトサイドの攻撃を経験する機会が増える

・ オフェンスリバウンドへ飛び込みやすい

 

レベル1「カッティングとパッシングを主体に攻撃する」

<習得させたい課題>

1. 攻撃の優先順位(priority)

 1) 場所の優先順位

 2) 個性の優先順位

2. スペースを創る(create space),スペースを活かす(exploit space)

3. 第3の動き(3rd man cutting,3rd man combination)

※+1のパスもこの中に含まれる

4. 二者択一的決定システム

 右or左,パスorドリブル,penetrate or stop,ball side cut or blind side cut,etc.

5.ムービングレシーブ(moving receive):catch & shot または catch & move で1カウント目の仕掛けで先手を取る

6. ドリブル攻撃に対する周りのプレーヤーのシュートチャンス創り(合わせ)

cut in, around, drift, safety etc

 

※ モーションオフェンスを成立させるためのルール(単なる約束≠習得課題)

1) 互いに4〜6mの距離をとる(一人のディフェンスの守り幅に入らないために)

2) 2秒以上ステイしない(スタンディングオフェンスにならないために)

3) カットインの後にはカットアウトする(狭いスペーシングにならないために)

4) 3回に1回はインサイドにパスを入れる(攻撃の優先順位を見失わないために)

5) インサイドにボールを入れたら広がってずれるかカットする(攻撃を終了しないために)

 

 ※ノードリブル→ドリブルありへと練習を進めていく

 ※指導すべき個人技の中身(高めるべき基本の質)

  カット,ポジション,ターゲット,パス,キャッチ,ムーブ,ショット

 

レベル2「攻撃にスクリーンプレーを加える」

<習得させたい課題>

1. インサイドにシュートチャンスを創るねらいのカットインにスクリーンを加える

→バックスクリーン系の発生

2. アウトサイドにシュートチャンスを創るねらいのカットアウトにスクリーンを加える→ダウンスクリーン系の発生

3. ドリブル1対1にスクリーンを加える

→ピックの発生

※ボールマン攻撃,スクリーンナー攻撃,ユーザー攻撃の理解

※アラウンドはレベル1でインサイドにパスを入れた後のパスラン,ドリブル攻撃への合わせの一つで原型が既に発生

 

レベル3「スクリーンプレーを応用する」高校生以上

<習得させたい課題>

1. スクリーンを連続させる

1) Screen for screener

2) Re-screen

3) Staggered screen

2. 2枚のスクリーンを使う


◇ジュニア育成段階でのゾーンディフェンス,ゾーンプレスの禁止提案へ向けて

1) ゾーンでは何が習得できないのか? それは何故か? を明確に言語化する

 最終的にはゾーンもカットとパスで攻めることが出きるが,最初の立ったままのゾーンでは,スペースを創ったり活かしたりする感覚が育ちにくい

2) ジュニア指導では「守ること」で勝つよりも,「攻めること」の楽しさを

3) 勝つことと同時に負けることを教える←オランダの3−4−3システムの例

『スイーパーを笈田法が勝つ可能性は高くなるであろうが,後に誰もいない状態で互いにカバーし合うことを学び,さらに,良くないプレーがあった時にはそれが失点となって現れた方が,そこから多くのことを学ぶことができる.勝つための努力を非常に重視している中にあって,同時に「負けること」も大切にしていることがわかる.』p.46

 

4) 近道をしない

『最も時間のかかることはとりあえず後回しにされ,来週の試合や次の大会に勝つために即効性のあるものばかりが優先される土壌』p.79を無くしていく

 

5) ローカルルール開発の必要性について

 ※24秒ルール+ゾーンディフェンス+プレス=何を育てようというのか?

 →子供は成人のミニチュアではない

 →無制限な闘いではなく,一定のルール内での闘い.

   =その枠内で徹底して勝つことを要求 ≠勝たなくても良い

 →そのルール内で闘い合うことが,その年代の子ども達を最適に開発する?

  →「勝つこと」と「育てること」の両立を目指して

 →「勝ったコーチ」「育てたコーチ」のいずれも評価する環境作り

 

6)練習の半分以上が戦術的準備になっている?