山水のSP-70という格子の2Wayスピーカーを入手し、自分なりにネットワークの設定やパーツ選び、スタンドなどを工夫、好みの音が出るようになり、サブ・スピーカーとして十分に楽しんでいました。
 
そんな時です。 インターネットで偶然にもSANSUI SP-LE8Tの中古販売を行っている愛知県のお店を見つけてしまいました。
そこに表示されていたLE8Tは写真を見る限り程度も良さそうだし、値段もリーズナブルでしたが、掲載をされた時期が3週間程前だったのでもう売れてしまったと思いました。 

翌日に期待しないで電話してみると、『ありますよ!』と意外な答えが・・・

その1週間後には写真のようにはるばる愛知県より引っ越してきてくれました。

丁寧に梱包されて届いたSP-LE8Tを箱からそっと取り出すと、まるでタイムスリップして、高校生時代憧れていたけれど声をかけるられなかった女の子と何十年かぶりで巡り会えたようなそんな淡い想いにも似た気分が・・・ 
憧れのSP-LE8Tに少しでも良い音を出してもらうため、また少しでも綺麗になって欲しかったのでSP-70で身につけたレストア技術?を駆使しました。
 
このためSP-LE8Tは30年前の美声と美貌を取り戻しましたが、その代償として私の方は、寝不足、筋肉痛、金欠病などとの戦いが始まりました。 
でもこのまま行けば、SP-LE8Tはサブ・スピーカーどころかメイン・スピーカーとして使っているQuad ESLやESL-63、そしてJBL-4343Bの仲間入りをしそうです。 

20cmの紙製コーンスピーカー1本から素晴らしい音を出します。 現在のスピーカーは新素材だの軽量化だので特性的に進歩はしましたが本当に良い音楽を奏でているのでしょうか? 聴いているとそんな事を考えさせられるスピーカーです。

LE8Tには今回の(写真)アルニコタイプとLE8T-Hのフェライトタイプの2種類があります。 
音に大きな違いがあると言われていますが、私はアルニコタイプしか聴いたことが無いため違いはわかりません。 エッジはオリジナルではなく変更されています。

今回の購入で心配だったモノの一つがスピーカーの製造年代を示すSERIAL NOでした。 
知り合いから聞いた話ではペアと言って販売されているモノの中には、使っているうちに片方のスピーカーがダメになりその時点で入れ替えを行うとかなり音質的な違いがあるそうです。

LE8Tのように1962年から約30年もの間製造され続けた息の長いスピーカーでは十分にあり得ることだと思います。 そんなことを思いながら正面の格子枠を押さえている4本のネジを外し、細心のの注意を払いながら白いコーンのLE8Tを外すまでドキドキでした。 幸い左のように比較的近い製造番号同士で一安心しました。

本来なら先にじっくりと音を聴いたり、セッティングをしたりするのでしょうが、LE8TをスピーカーBOXから外したことを幸いに、先に塗装をすることにしました。

仕上げを大きく左右する下地作りとして最初に240番の紙ヤスリで塗装を削り、地肌を出してから800番の紙ヤスリで磨き、塗装しました。 
SP-70で経験しましたが、必ず木目に沿って削ることが大切です。

塗装に使ったオイルステンは
和信ペイント株式会社の『ワシンウッドオイル』ですが、同じ仕上げもつまらないので、オリジナルの色を生かしたオークを使用し、塗っては(刷り込むが正式)乾かし、塗っては乾かしを同様に5回行いました。

その結果、天板にあった引っ掻き傷などが消え、深みのある光沢が出て新品状態になりました。

また、スピーカーBOXからLE8Tを外すため、内部配線とスピーカーターミナルを外しましたが、本当にお祖末なモノ(写真右側)で、昔の安物のミニコンのターミナルと細い赤黒のスピーカーコードが使われていました。 確かに発売当時は今のようにスピーカーコードだの大型ターミナルだなんて騒がれる少し前だったと思います。
 
内部配線材は、東志株式会社から発売されているMONITOR PC(スピーカーコード)が少し余っていたので取り替えました。 
これは私見ですが、純粋なOFCなどの『銅』系コードよりもMONITOR PCなどの『銀』系コードの方がS/N感が良く透明な音がします。
 
スピーカーターミナルは近々ワンタッチ式ではなく、ねじ込み式の大型で外見を壊さないようなのモノに変更しようと思っています。

SP-LE8Tもセッティングや置き台で音がかなり変化します。
SP-70ではドイトで1本300円位で購入した木製のブロック(50×50×100mmのブナ材)を4本縦置きにし、その上にスピーカーを乗せただけで良いバランスが取れましたが、SP-LE8Tで同じ置き方をすると低音の再生能力が高いためかブーミーな程に低音が出ます。

そこで、写真のような大理石を敷き、木製のブロックと大理石を接着し、スピーカーとブロックの間がピンポイントで接触するようにSTEREO SOUND誌の『ベストサウンド』で見たステンレス製の袋ナットを入れてみました。 

しかし、ブーミー感は取れたものの、反対に4kHzあたりの高域が華やいでしまいます。 
嫌いな音ではありませんが、Vocalを長く聴くには少し疲れます。 
また上手く表現できませんが、音が低い位置に固定されてしまい空間に漂わないのです。 そこで、袋ナットを取り、これもドイトで購入した薄手のゴムを四角く切ってその上にスピーカーを乗せてみました。 一旦乗せてしまうとスピーカーはずらそうとしてもビクともしません。

たったこれだけで今度は出るべき音も綺麗に出て、全体的に静かで音が空中にフワッと定位し、奥行きがグーンと広がりました。 昨年16cmのフルレンジスピーカーSP-10でも感じましたが、ネットワークなど何もないアンプの出力をストレートに変換できるフルレンジスピーカーの優位性と、LE8Tの再生能力に改めて驚きました。

最初はSP-70と同じようにサブ・システムに使おうと思っていたSP-LE8Tでしたが、いつの間にかメイン・システムとしても十分良い音を聴かせてくれることがわかりました。 とにかく20cm1本とは思えない音の厚さと音楽の熱さには驚きです。  

音がすっかりとこなれて来たので、お粗末だったスピーカーターミナルを交換することにしました。

現在売られているどんなターミナルでも何らかの加工をすれば取り付けられると思いますが、スピーカーBOXに大きな加工をしたくなかったので、現在ターミナルが付いている凹みにそのまま付けられる大きさのモノを探しました。 いろいろと調べた中で、TRITECのT-93という「コーンキャビティ型2P ネジ締め バナナ対応」が良いことがわかり、キムラ無線で購入しましたが2組買っても2,000円でおつりが来ました。  

T-93の取り付けに際して凹みの上下を、ヤスリで各3mmほど削ったため、ぴったりと固定出来るようになりました。
古いターミナルを外し、固定版の上に新しいターミナルを重ねて取付けたので、空気漏れも無く良い状態です。

しかし、T-93の大きさから右の写真のようにSP-LE8Tのプレートに少しだけかかってしまいました。 

このターミナルは金メッキもされ、バナナプラグ対応なので値段を考えればとても良いターミナルだと思います。


これで太いケーブルにも対応出来るようになり立派にメインスピーカーとなりました。

 
最近よく聴くDIANA KRALLの『THE GIRL IN THE OTHER ROOM』をSP-LE8Tで聴いてみました。 
彼女の歌とピアノの魅力が満載の最新CDですが、8曲目Joni Mitchel作の『Black Crow』は特に素晴らしいと思います。 でもそれだけでなくチェック用としても良い曲です。
 
冒頭、ノイズが聞こえますが低音が伸びてないスピーカーでは聞き逃してしまうこともありそうです。 
その後、DIANA KRALLのピアノのメロディとペダリングのリアル感〜声とブレスの微妙な変化〜ほど良いバランスでスタートしたあと、かなり量感のあるベースがセンターから出てきます。  
スピーカーのセッティングが悪かったり、アンプがスピーカーを制動出来ないとダブダブのベースになってしまい、中域がしっかり出ていないと、DIANA KRALLが鼻炎になってしまいます。

このCDを基準にしていろいろとセッテイングを行い、ようやく良い音で鳴るようになりました。 この状態で他のCDを聴いてみても、まるでそれぞれのCDに基準を合わせたかのように良い音で鳴るようになります。 不思議です。

両帯域は足らないものの、一つのユニットで必要かつ十分な帯域をカバーし、ネットワークなどによる位相の影響も受けない・・・ LE8Tは一言で言えば大変に良く出来たユニットで、音楽の最も大切な中域を余すところ無く魅力的に聴かせてくれます。