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2004/07/07 
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テオ/ Theo
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 きょうは友人の "テオ=Theo" について書きましょう。オランダ在住の外国人顧客(企業ではなく個人)を多数抱える陽気な会計士。中年の190センチを超す大男。童顔。オランダなまりは強いが、内容のある英語を自在に操る。フットボール(サッカー)狂。ビール狂。愛犬家。床屋嫌い。仕事でストレスが溜まると、ときどき大麻をやっている。旨いものに目がない。自分でもときどき料理を作るが、結果はいつも悲惨。結婚はしているが子供はなく、現在別居中。こんな風に書いてもゼンゼン彼の実体が出て来ません。不思議な男です。

 彼との付き合いは、亡くなったトニーのボス、ヨープの顔見知りという関係から始まりました。彼と初めて会ったのは1997年初頭でした。彼は当時、ヨープのフラットの近くの小さな郵便局に勤めていました。その小さな郵便局には売店があり、タバコと郵便のための筆記具がたくさん置いてありました。ヨープは手紙を書くのが趣味でしたから、郵便物を出すだけでなく、封筒や便箋をその郵便局で求めていたようです。そんな中でテオと口をきくようになりました。

 そのころの私はオランダで始めたブリッジの理解が深まり、その面白さの虜になっておりました。しかし、なかなか上手くいかないものでして、パートナーに逃げられたというか、嫌われたというか、ブリッジが出来ない状況になっておりました。その少し前に、私がやったプレー/オークションにそのパートナーからクレームがつきまして、説明を求められました。私の意図は明確なものでしたから、その通り説明しました。そのパートナーには、少しばかり難解過ぎるプランを持ってやったかもしれません。それ以降、ちょっと怖がっているような、敬遠しているような態度になり、ギクシャクしたパートナーシップとなりました。まだ、クラブで始めてから1年ほどのことですから、CクラスとBクラスを上下している程度でした。あ、Aクラスが最上級です。で、どちらが言い出すともなくパートナーシップを解消することになりました。

 ブリッジはパートナーなしでは出来ません。その後、何人かの他のプレーヤーと試しましたが上手くいきませんでした。クラブにも行かず悶々としておりました。ヨープが「そのテオがブリッジ・パートナーを探している」との情報をくれました。自分のことは棚に上げての話ですが、一般に決まったパートナーを持てないプレーヤーには、何か大きな欠陥があることが多いようです。ほとんどの場合人格的な問題です。かなり上手なプレーヤーでも、パートナーとの意思の疎通が上手く出来ていませんと、いい結果はでません。何より、一緒にやっていて楽しくない! で、一匹狼のように毎回のようにパートナーを変えてプレーしてます。ヨープからテオがパートナーを探している話を聞いても、人格的に楽しくない人だったら嫌だなあと、考えていました。試しに会ってみようということで、夕食に招待しました。

 で、彼が来て会いました。陽気で楽しい、いい男です! 会ったその時から、私はすっかり彼のファンになってしまいました。トニーも彼を気に入り、気違いみたいに彼と遊びまくりました。私は飲み物を出したり、料理をしておりましたので、テオやヨープと一緒に座ってゆっくりすることは出来ませんでした。まあ、食事が始まってからゆっくり話せるからと思いましてね。ヨープがテオのトニーの扱いぶりに感心することしきりでした。大分犬を扱い慣れています。聞いてみたら犬を何頭も飼った経験があるそうです。テオもトニーのテリア独特の乱暴な遊び方が気に入った様子です。

 食事の用意が出来たのでテーブルに着いてもらいました。夢中になって遊んでいたトニーが、とたんに静かになり、つまらなそうに自分のベッドへ入り込み寝てしまいました。それを見たテオが不思議そうに尋ねました。「トニーはどうしたんだ、急に静かになっちゃったけど。乱暴な遊びをし過ぎて、どこか痛めたのだろうか?」と。「トニーは訓練してあるので、人がテーブルに着いたら遊びの時間は終わりと知っている」と、説明しました。これは "乱暴に遊ぶトニー" から想像も出来ないことだったようです。大きな声を張り上げて「トニー、お前は賢い偉いチビ犬なんだ〜!」と呼びかけました。トニーはそれに、眼を開けてチラッと反応しただけでした。

 食事をしながらブリッジのこと、彼のパートナーがハーグに引っ越してしまい、それ以来新しいパートナーが見つからないことの説明がありました。私もブリッジの経験は数年しかなく、経験の乏しいプレーヤーに過ぎないことを説明しました。まあ、気楽に試してみようということになりました。食事が終わり、飲み物を持ってソファーに席を移しました。その途端にトニーが嵐のようにテオに襲いかかります。最初の紹介に書いたように、テオは床屋が嫌いです。彼の髪は長く巻き毛になっております。よく洗ってはあるようですが、あまり手入れはしてありませんので鳥の巣の様相を呈しております。^^。その髪にトニーは触れたがります。

 このシーンを見るのは私やヨープにも初めてのことで、不思議に思いました。テオが「オレの髪の毛は犬にとてもセクシーに見えるらしい。他にもトニーと同じ反応をする犬がたくさんいる!」と、説明がありました。「女の子は?」と、即座に私が質問を飛ばします。「え? あ、人間のね? それは、ゼ〜ンゼン!」と大笑いになりました。笑うとトニーがますます喜び、テオに飛びつきます。

 その日のうちにすっかり意気投合しまして、美味しいお酒を深夜遅くまで飲みました。ヨープも私達が上手くやって行けそうなのを見て一安心、私に向かって得意そうに「私には人を見る目がある。十分な経験も積んできている。ダテにオランダ総領事をやっていた訳ではない。 いい人間じゃなければ、私がお前に紹介する訳がない!」と威張ってました。^^。ええ、確かに私の危惧していたことは不要なことでした。トニーにもね。

 そのとき聞きましたが、かれの郵便局勤めは週3日です。あとの4日を自宅で会計士として働いているそうです。ほとんど週末も仕事をしているそうです。この郵便局で働いているのも、彼の会計士としての資格からです。この郵便局のポストバンクの部門をみていた人物が急に辞めてしまい、ポストバンクに勤める友人から、次の正規の人材が来る迄の応援として手伝って欲しいと依頼があって、やっていたそうです。テオは以前このポストバンクで働いた経験があるそうです。ポストバンクとは日本の郵便局の貯金部門と同じですね。オランダではこのポストバンクの口座を皆さん持っています。いろいろな料金の振込に全く手数料がかからない口座を一般市民に提供しています。但しこの口座に入れた貯金に利子はつきません。利子のつく口座は種類の違うものとして別に用意されてます。もちろん私もメインの銀行として使っております。その会った年の秋には次の人材がきて、彼は自分の仕事に戻りました。1年くらいの手伝いだったようです。いまでは彼は私の最も信頼に値する、親友です。亡くなったヨープには、このテオを紹介してくれたことで大変感謝しております。

 ブリッジを初めて驚きました。アマチュアとして彼はオランダでもトップのブリッジ・プレーヤーでした。自分からあまり語りませんでしたが、種々のトーナメントへ以前のパートナーと組んで参加していたようです。彼とのパートナーを組んでのブリッジに慣れるにしたがい、私のプレーも長足の進歩を遂げました。彼が教えてくれたこともありましたが、勉強しました。2ヶ月でAクラス入りを果たしました。その間、嫌な思いをしたことは全くありませんでした。眼と耳の神経を可能な限り研ぎすますことを彼から学びました。ますます、ブリッジに没頭するようになりました。これは私には悦楽の世界と時でしたね。

 え、結果ですか? Aクラスに入ってからも好成績は続き、その年のクラブ・チャンピオン戦の出場権を得ました。クラブでのレギュラーのシリーズとは別に6週間をかけて上位8ペア総当たりでクラブチャンピオンの座を争います。最初Bクラスから始めて、その時点で上位8チームの2位にランクされました。そのチャンピオン・シリーズでも好調を維持出来勝ちました。クラブチャンピオンになってしまいました。そのときはもうクラブのプレーヤーの力量もハッキリ掴んでおりましたし、私達のクラブのレベルがそれほど高いものでないことも分かっておりました。このテオと組んで、機会があるごとにアチコチのトーナメント/試合に出場するようになっておりましたから、このレベルなら勝って当然という自信がついていました。テオとごく普通にプレーすればよかった訳です。翌年もクラブのチャンピオンの座を獲得しました。感激は最初の年ほどありませんでしたね。

 テオとパートナーを組んで3年目になりました。ヨープの病状が悪化してきて、夜ブリッジに出掛けることが難しくなってきました。ブリッジに出掛けるのは、留守にだれかヨープに付いてくれるときだけ出掛けました。テオの奥さんのマリンケがヨープさんを気に入り、ときどき面倒をみてくれました。種々の友人達が助けてくれ、私をブリッジに送り出そうとしてくれました。でも甘えてばかりいる訳にもいきません。次第にブリッジからはなれることになりました。ヨープのことは私が最後まで面倒をみようと決心をしていましたから、覚悟は決まっていました。ブリッジが出来なくなることを、それほど残念とも思いませんでした。まあ、強がりかもしれませんが、むしろオランダに住み始めてから遠ざかった "読書" の時間がたっぷり取れます。

 テオには申し訳ないことになりましたが、新しいパートナーを探すように話しました。事情の分かっているテオですが、すぐに新しいパートナーを探す気にもならなかったようです。彼もクラブへ顔を出さなくなりました。

 クラブへ行けなくなってからは、奥さんのマリンケを連れて夕食を一緒にするために来てくれました。テオとマリンケが買い物をたくさんして来て、料理の腕を振るってくれました。お世辞にも旨いとはいえない代物でしたが。でも彼等の作ってくれるものには旨さに優るものがありました。ヨープと過ごす時間が長くなっていますから、トニーと散歩をしているとはいえ運動量が減ってます。食欲も以前ほどありません。でも、テオとマリンケの作ってくれるものを目の前にすると、どんなに旨いものより食が進みました。これは不思議な経験でした。お袋の味というのとも違いますね。ヨープも楽しんで食べていたようです。オランダ料理ではなく、野菜をタップリ使う彼等のオリジナルのようでした。たぶんイスラム系の料理法を使っていたのだと思います。味というのは不思議なものとつくづく思いました。

 私がトルコの店でよく買い物をするようになったのは、テオの影響がありましたね。私のやりたい料理の食材が、普通のオランダの店では手に入らないことがあります。ことにネギ類です。中華街へ行けばもちろん買えますが、そのころは中華街へ行くのには不便な地域に住んでおりました。車で出掛けることは駐車場の問題があり、ほぼ不可能でした。

 この「トニー番外編 3」で取り上げた「ハンス=Hans」がヨープの会計士をしてくれてました。このハンスが亡くなってからは、テオが引き継いでくれました。ついでに私のもね。これも一般的に見て大変に好運なことでした。新たに安価でやってくれる会計士を探すのは至難のことです。高い会計士はいくらでもいますが・・。^^。

   3stars

 このテオをここで取り上げたのは目論みがありましてね〜。先月は「トニーの物語」を一つも書きませんでした。再開にあたり面白いはなしを取り上げたくなりました。これにはテオの登場が必須です。で、その前にこの「トニー番外編」でテオの人物紹介しておくことにしました。「トニーの物語」での彼に関する記述が楽になりなりますからね。へへ。

 テオについては書きたいことがけっこうあります。あ、これはオランダ人の "ある典型" を描き出すのに最適な人物という意味でです。いままで温存してきましたが、これからテオの登場が度々あると思います。全てのコーナーにです。今回は中途半端な紹介ですがこのへんにしておきます。次回をお楽しみに。


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