|
2004/03/01
仕 返 し 僕が住む街は毎週水曜日にゴミ回収の車が来ます。近所の人はその前夜10時過ぎくらいから、所定の場所にプラスティックのゴミ袋を置き始めます。新聞などの紙製品と瓶などのガラス製品は、別の場所にそれぞれ大きな専用ボックスが設置されていて、そちらへ捨てることになってます。これはいつ捨てても構いません。 ボスの Brug は出来るだけ前夜にゴミ袋を指定の場所に持っていくようにしているようです。公式には当日と言ってますが…。2度くらい朝寝坊して捨て損なったことがあり、腐りかけたゴミの入った袋を2重にして、一週間裏庭に置いてから捨てた苦い経験があるそうです。2重にしたのは、匂うと猫が穴をあけることがあるからだって。 僕の一日の最後の散歩は夜11時過ぎです。ボスは散歩のついでにゴミを捨てます。以前住んでいたフラットは16階でした。そのフラットには「ゴミ捨てシュート」があったので、ゴミはいつ捨てても構いませんでした。そのフラットに住んでいた時は、近くでゴミ袋を殆ど見たことがありませんでした。「だからよかった!」なんて言わないよ! 何故か僕は小さい頃からプラスチックの袋を見つけると、走って行ってその上にオシッコをかけるのが大好きなんです。だから、ここへ引っ越してきてからはゴミの置き場所へ行くと、オシッコのかけ甲斐のある大小のプラスチックバッグがたくさんあるので、ワクワクします。前夜だけでなく当日の朝も、まだ回収車が来てなければもう一度楽しめます。この行事はここへ来てからの新しい楽しみです。 Brug はここへ引っ越して来てからセンターへ以前みたいに行かなくなっちゃったなあ、なんて時々ぼやいてます。でも、僕は大好きです。ほんの5分くらいのところに大きな公園があるし、大きな運河も流れていて、その両岸がまた散歩に絶好だから。この運河沿いは自転車専用道はあるけど、車は入れないから安全です。ここはもう春の様相を呈して、小さな黄色い花が咲いてます。その花、遠くから見た方がきれいです。群生していて近くで見るとまだ葉っぱがでていなくて、ヒョロっとした茎の上に小さな花をいっぱいつけてます。でも、どこか寂しげな花です。そんなのも風情があっていいと Brug は言ってます。もうじきウンザリするほど花が咲くから、この時期に健気に咲いてくれる花に惹かれるんだって…。 それと前に住んでいたフラットでは、住んでいる人達と楽しい付き合いがいっぱいあったけど、一つだけ不満なことがありました。わりとお年寄りが多かったんです、そこに住んでる人達。40代前半くらいの夫婦も住んでいたけど、子供を全く見ませんでした。フラットの中で子供の姿を見るのは、子供連れの家族が訪ねて来た時だけでした。僕はホントに子供達と遊ぶのが好きだから。この近所には悪ガキのクリスチャンを含め、いっぱい子供がいるからね。青空市へ行った時もいろんな子供に会えるのが楽しみです。 さて、その日はとても天気のいい寒い日でした。公園へ午後の散歩に行ったら仲間がいっぱい集まっていました。20頭くらいかな。1人でメスのジャック・ラッセル5頭を連れてくる女猛者のヨーケとか、犬より飼い主の方が個性的と言ってもいいくらいです。もちろんみな知り合いです、人も犬も。ブリーダーはこの近辺にはいません。この大きな公園の真ん中にバラ園があります。冬はもちろん花をつけていませんが、密度の高いブッシュになるバラの垣根で囲まれてます。冬でも葉はたくさん付いていて風を遮ってくれます。その垣根の内側にベンチがいくつも置いてあって、そのブッシュで日だまりになってます。春から秋にかけて野バラみたいな小さな一重の花をたくさんつけます。こんなバラもきれいです。 みなさんそのベンチに座って日向ボッコをしながら、チャットしてました。カナダからのお姉さんが居ます。ご主人がオランダ人です。そのお姉さんは出来たら英語でしゃべりたいので、Brug が来ると喜びます。みんな英語出来るけど、意識的にちょっと意地悪するのね。そのカナダからのお姉さん、とても太ってます。オランダに住んでから肥ったと言ってますが、どんなものでしょうか。ご主人も肥ってますから。あっはは。優しいオランダ・コーイケル犬 (Kooikerhond) の飼い主です。もちろん僕が褒めるんだから雌犬に決まってます。そういえばこの前、Brug が Yahoo Japan でブリッジをしている最中に、この犬のことを尋ねた人がいたそうです。オランダ語のスペルを教えて上げて Web 検索したらいっぱい出たみたいです。ドイツ語でもけっこう出たみたいです。 大半が雌犬だから僕はご機嫌です。一頭だけ邪魔者がいます。60半ばくらいの大きな身体のピートが連れてくるセントバーナード犬。まだ11ヶ月。会った最初から僕と遊びたいみたいで、会う度に僕にチョッカイを出して来ます。人間の子供と遊ぶのは好きだけど、犬のガキは興味ないんだよね。この11ヶ月、僕の10倍くらいあるよ、もう。もっとかな? そのピートはもう一頭セントバーナードを連れてます。こちらはおじいさんで、10歳を過ぎたところです。こちらも雄だけど、ガキの方と違って落ち着きもあるし、ゆったりしてるから結構好きです。僕が雌のラブラドールとかジャックラッセル、コーイカーと遊んでいると、そのガキ・セントバーナードがちょっかい出して来るんです。その度に「う〜!」って追っ払うんだけど、すぐ戻ってくる。それを見るとピートが笑いながら「トニーはホントにヤクザみたいだな!」なんて言ってます。 まあ、いつもの仲間と飼い主の楽しい憩いの場所と時間です。飼い主は犬を自由に遊ばせ、チャットに花を咲かせます。春からはランチ持参でくる飼い主もいます。このバラ園の横には大きな芝生の運動場があるんだけど、小学生以下しかプレーしちゃいけないそうです。近くにある小学校の生徒達が先生と一緒に来て、いろんなゲームをやってます。もちろんオランダではサッカーが一番盛んなスポーツだけど、男子生徒と女子生徒を混ぜてやるとレベルが違い過ぎて問題があるそうです。一度、ソフトボールをやってました。こんなのは殆どの子供達がやったことないから、男の子も女の子もお互いにハンディにならないみたいです。審判をやってる先生もルールがよくわからないらしく、いい加減なジャッジしていたみたいです。Brug がそれを見て笑ってました。でも、Brug は何も言いませんでした。その先生はこちらを見て、苦笑いしてました。あっはは。 公園の奥の方から、あの「第4話の馬糞」で Brug をギャフンと言わせたオバさん、エリザベートが歩いてきます。犬は連れてません。どこかへ買物に行った帰りみたい。この公園の先に立つ青空市はその日はありません。飼い主達はチャットに忙しく、気がついてません。僕とジャックラッセルが気がついて、オバさんの方へ走りました。セントバーナードのガキも一緒に来ました。オバさん嬉しそうな顔して、僕らの脇腹をなでて呉れます。僕らはオバさんに飛びつきましたが、気にもかけません。でもセントバーナードのガキが飛びつこうとしたら、大きな声で「お前はダメ!お座り!」って座らせてしまいました。ピートさんよりこっちが怖いみたい、このガキ。^^。 このオバさん、粧し込んでます。とてもきれいなピンクのレザーコートを着てね。いわゆるショッキングピンクなんだって、この色。肥ってないし、背もけっこう高いし、歩く姿がカッコいいんだよ、このオバさん。Brug がこの前「初老のご婦人」って書いてたね。でも年寄り臭くはありません。化粧もすこし濃いめでね、ソフィア・ローレン風なんて誰かが言ってた。いつも話す時の身振り手振りが大きいから、ホントにイタリア人みたいなんだって。オバさんの到着でチャットが一段と盛り上がったみたいです。このオバさん、今日は粧し込んでるから、ベンチに座らないんです。カッコいいブーツも履いてるし、立ったままです。手にはプラスチック(!)の大きなバッグを持ってます。濃いグリーンで "Harrods" って入ってます。こんなの見ると僕はウズウズして困っちゃいます!? 僕はずっとオバさんの側を離れないで狙っています、あるチャンスを。カナダのお姉さんがそのバックを見つけて、「あ、最近ロンドンへいらっしゃったのね?」と英語で話しかけ、堂々の英会話になりました。一通り盛り上がったところで、次の話題に移っていきました。オバさんはやっとそのバッグを地面に置きました。けっこう重いものが入っているみたいで、垂直に立ったままです。オバさんがカナダのお姉さんと英語で夢中に話している最中に、サッとバッグに走り寄り、足を上げて「おしっこ」をそのバッグ目がけてかけちゃいました。こんなバッグを見ると僕の本能が疼いてね〜。気持よかった!バッグの裏と表で2回やっちゃっいました。 ピートが2回目のを見ててね、大きな声で笑い始めました。オバさん、気がついてもの凄い形相で怒り始めました。Brug はちょっと驚いたような、困ったような、笑いをこらえているような顔をしてます。もの凄いジェスチャーでオバさんが僕に何か怒鳴ってます。僕はそんなの覚悟してやってるから、尾っぽ振って逃げ回るだけね。少しオバさんの気が鎮まった頃を見計らって、Brug が「トニーは昔からスノッブなモノを見つけるとオシッコをかける悪い癖がある犬でね、申し訳ない!」と言いました。ピートが「エリザベート、俺もそんな気持になることあるよ、トニーみたいに!」と穏やかな笑い声で言いました。オバさん、苦虫をかみつぶしたような顔を引っ込め「そうだ、ウチのチビ犬もやるんだ、これ!」って笑い始めました。「この手のテリアはホントに困ったものだ!」ってため息まじりの笑い声。みんな大笑いで楽しい集いとなりました。この前の「馬糞の話」はみんな知ってるしね。 僕は正直なところスノッブの意味は知りません。まず、プラスチックのバッグにオシッコをかけるのが大好きだからやったのと、オバさんになにかイタズラをしてやれと思っただけです。結果としてみんなが楽しく笑ってくれれば、僕は大満足です。僕は生まれながらのエンターテイナーなんです。Brug も流石の対応をしてくれました。 帰りの道で Brug が笑いながら「仕返しが出来たな〜」って喜んでました。僕は「仕返し」なんて思わなかったけどね。 |