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2004/01/13
ビッグ・ショー 今日の話はホントにとっておきの話です。もちろん僕の大活躍の話です。 これは亡くなった「初代ボス」ヨープさん がまだ十分に動ける頃の話です。僕が1歳を過ぎた頃の話ですから昔のことです。僕はこのヨープさんが本当に好きでした。ヨープさんのことはまた別の物語でいろいろ話そうと思っています。この時も僕の痛快な活躍を一番喜んで呉れたのは、このヨープさんでした。この事件の後、とても自慢してたみたいです。いろんな人にこの事件のことを話していましたから。 この出来事が起きた時、今のボスの Brug も一緒だったのですが、他にもヨープさんの古い友人でハーグ市に住むカップルが一緒でした。この御夫婦はヨープさん同様、海外での生活が長かったそうです。若い頃インドネシアで働いている時に知り合ったそうです。ご主人のハンスさんは僕のいい遊び仲間だったんだけど、ヨープさんより先に亡くなってしまいました。急に姿を見なくなって寂しい思いをしました。定期的に僕らを訪ねてくれて二、三日泊まってくれました。ヨープさんが病気で以前みたいに長期の外出が難しくなったからね。病気になる前はヨープさんもこの夫婦をハーグに訪ねて週末をハーグで過ごすことも多かったそうです。Brug も一緒によく泊まったそうです。白いヒゲをはやしたなかなか立派なお爺さんでした。奥さんのリュートさんもとても品のいい方でした。この方達は歳はヨープさんより少し上だったみたい。よく Brug を誘ってブリッジをやっていました。 アムステルダム市の南にバウテンフェルデルトという街があります。大きな邸宅のある閑静なところです。その南に「アムステル川」が流れています。この川の下流を塞き止めてダムを作り、そこに街を作ったので「アムステルダム」と名付けられたそうです。大昔の話です。で、このバウテンフェルデルトからそのアムステル川にかけて大きな公園があります。アムステル・パークです。この公園には5月から6月にかけて何種類もの美しい「シャクナゲ」が咲きます。20〜30種類くらい、1000本以上あるみたいです。色のバリエーションもビックリするくらいたくさんあります。 「猫に小判・犬にシャクナゲ」なんて言わないでね。自慢じゃないけど公園や庭に咲く花がどんなにキレイで人が大切にしているか、ちゃんと理解してるんだからね。花の国オランダに住んでいるいる訳だし、今のボスの Brug は日本にいた頃から花を育てるのが趣味だったらしいし、近所の人達と庭談義なんかしてるの見たり聞いてるからね。花を毟ったり花壇に入り込むような無粋なことは、子犬の頃から躾けられているから絶対にしません。 6月の初旬でした。シャクナゲの姿をきれいに整えて庭園風に作り上げたり、のばし放題にして森みたいに野性的な作りにしてあったりで、皆 mooi!!, heel mooi!! を連発してました。オランダ語で「美しい」という意味ね。ランチをそこで食べました。僕は朝食と夕食の2回しか食べないので、水をドッグ・バーでたらふく飲みました。折角来たんだから足跡を残していかなければいけないからね。訪れた場所は全て僕のテリトリーにしたいから、オシッコであちこちに僕のマークを付けておきます。そのために水を十分に飲んでおきます。 ランチの後でアイスクリームを食べてました。ヨープさんが少し手に乗せて僕に呉れようとしたら、 Brug が意地悪く「ダメ!」と怒鳴ってました。ヨープさんの素敵なところは、そんな Brug の意見はお構いなしでね〜。「僕が欲しいか、欲しくないか」で判断して呉れるのです。で、もちろん僕は食べちゃいました。美味しかったよ。暑い日でね、そんな日にはアイスクリームって最高だよね。でも、Brug は口で言うほどのことはなく、ニコニコして「美味しいか?」なんて聞いて、ヨープさんよりたくさんアイスクリームをくれました。へへ。食べ物は他の人からは絶対に貰わないよ。家の外ではヨープさんとこの Brug が手で呉れた時だけ食べていいと決めてるからね。 ランチの後もずっとシャクナゲを見ながら歩き続け、公園の一番奥にある出口から出ました。その出口から少し行ったところに「アムステル川」が流れてます。その辺りの「アムステル川」はこの時期とてもキレイです。堤防沿いに大きな屋敷が並び、立派な前庭があります。庭には例外なくTheehuis が建てられています。これは「お茶を楽しむための小さな家」という意味です。小屋と言っていいくらい小さな建物で、一部屋しかない家です。いろいろな趣向がこらしてあり、それはそれは可愛いきれいな建物です。母屋もこんな茶室のある小さな家も、オランダ黄金時代の17世紀くらいに建てられたものだそうですです。モニュメント扱いだそうです。こんな家の庭は、公園の花とは違った美しさを見せてくれます。 このアムステル川の下流はアムステルダム市の中心で塞き止められていますから、流れは殆どありません。上流からの水はあちこちの支流に流れ込んで行くみたいです。レースのボートが訓練をしてました。8人乗りから1人乗りまで。伝統的にオランダはこのボートレースが強いとのこと。オリンピックでは毎回メダルを取っているそうです。 その公園の出口から少し歩いた辺りの川沿いに古いカフェがあります。カフェの前に白い船を浮かべ、そのデッキをテラスとしてテーブルを置き、客に解放してあります。その船のデッキのテラスで休憩することに意見がまとまったようでした。 公園を出たところが芝生の広場になっています。その広場の川に面したところに大きな風車があります。これは有名な風車でとてもキレイです。一般に開放されてますから観光客がいっぱい訪れます。一種の博物館です。すぐ横に観光バスの停まれる駐車場もついてます。その日も観光客がいっぱい来てました。中国からの観光客も来てました。で、カフェへ行くのにその芝生の上を歩き始めたら、風車の近くに何か小さいものがいっぱい動いてるんです。最初わからなかったのだけど、よく見たら鶏が20羽くらいいます! もちろん以前にも鶏を見たことあるけど、あんなにたくさん屋外を歩いているの見たの初めてでした。これは面白そうと、直ぐに駆け出しました。まだ誰も鶏がいること気がついてないみたいなので、邪魔されないうちに鶏の群れに飛び来んじゃえと…。思い切り走りました。Brug が気がついて、「止まれ!」って怒鳴ったけど無視して突っ走りました。鶏も僕が突き進んでくるのを見て慌てたみたいです。ほとんどの鶏は逃げたけど、なんか鶏のボスみたいな大きなのがゆったりしてました。僕がまだ子供だと思って馬鹿にしている感じでした。別に捕まえる気はなかったけど、そのボス鶏にはムカっと来たので思い切りスピードを上げて追いかけました。なんか僕はすぐムカッと来るのです。 そうしたらそのボス鶏が飛んだの〜。鶏の飛ぶの初めて見たけど、驚いたね〜。でもあんまり速くないし、高く飛べないみたいだから諦めないで追いかけました。ビックリしたけど、ボス鶏は川の方へ飛んで行っちゃうんです。僕は水が苦手です。小さい頃に水で嫌な経験があったのでね。だからスピードを緩めて川に落ちないように川岸に止まって眺めていました。その鶏がどうなるかと。向こう岸まではけっこう距離もあるから。なんか飛び慣れていないみたいで、ヨロヨロ・バタバタと飛んでいました。 そこにいた観光客が50人以上集まって来て見物してました。僕がカッコよく鶏を追い散らしたところから見てます。で、そのボス鶏、川の真ん中に着水しちゃいました。僕は吠えるのも忘れて見てました、どうなるかと。観光客も静かに見てるだけです。 ね、知ってる? 鶏って泳ぐんだよ! で、そのボス鶏こちら側に向かって泳ぎ始めました。家も家族もこちらにいるからね。なんかあんまり格好いい泳ぎ方ではなかったよ。その時になってヨープさん達が追いついてきました。なんか皆オロオロしてるの〜〜。Brug はものすごく怒ってるみたい。Brug は僕の首を押さえつけて、首輪から鎖をつないでしまいました。もうちょっとこのショーを続けたかったのにね〜。本気で捕まえる気なんてなかったんだから。鶏じゃ捕まえてもしょうがないし、自慢にもならないからね。野ウサギとかなら別です。 やっと鶏が岸に泳ぎ着いたのだけど、岸が水面より大分高くなっていて上がれないのです。濡れて重くなっているし、疲れているみたいだから飛び上がれないのね。動きも鈍くなってました。観光客の一人が素早く鶏を掴んで岸に引き上げてくれました。観光客の間からワーッという歓声があがり、大きな拍手が起こりました。それを見たら僕も嬉しくなっちゃってね、なんかとってもいいことした気分になりました。(???) 鶏の飼い主が登場しました。近くにいる観光客から話を聞いていました。僕の方を指差しながらその観光客は何か説明しています。皆がどうなるか注目していました。僕は大勢の観光客が見てる前で、面白いショーを演じることが出来たので大満足でした。ちょっと得意な気持ちもありました。 飼い主のところへ皆で行きました。意外にも、彼はとても不機嫌な顔をしています。ヨープさんに噛み付くように何か言ってます。文句を言ってるね〜。風車見学に来ている観光客に受けることをやってあげたのに…。みんな、あんなに喜んでくれたのにね! Brug が鎖をピンと張って、僕が動けないようにしてます。Brug も他の人もヨープさんがどんな話を進めるか興味津々です。皆よく知っているのです、或ることを。引退する前のヨープさんは外交官でした。神戸のオランダ総領事をしてました。そんなトラブルの時の話し方はそれは上手いんだから〜。ヨープさんが口を開いて話を始めました。ものすごく穏やかでね〜、ニコニコしながら話すんです、ヨープさん。 あんなに不機嫌にしていた飼い主がニコニコし始めました…。そうなったらヨープさんのペースです。しばらくしたら握手してます。で、僕のところへ来て「そっか、お前がやったのか。まあ、鶏も無事だし、皆さんがショーを楽しんでくれたみたいだから許してやるよ!」って、あごの下を撫でてくれました。その人、風車の管理の責任者でもあるのね。その後たくさんの観光客が僕のところへ来て挨拶してくれるんだよ。「面白かったよ! このいたずら者!」とか言いながらね。 やっぱりいいことしたんだね、僕! その後予定通りカフェへ行き、白い船のデッキのテラスで楽しい憩いのひと時を過ごしました。ヨープさんはご機嫌でね〜、ハンスさんと奥さんのリュートさんを相手に面白可笑しく僕の先ほどの活躍を話していました。Brug も大笑いしながら生ビールを飲んでました。 ヨープさんとの楽しい思い出でした。 ではまたお目に掛かります。 トニーBrug43 今回はトニーに話しかけるのではなく、正直な印象を書きます。あの時はあせりました。鶏が死んだらどうしよう、と想いを巡らせました。もちろん当時トニーは私の犬ではありませんから、飼い主のヨープさんの責任です。でもトニーの訓練を引き受けてやっているのは私でしたからね。まだ訓練の途上でしたから。 トニーは今年9歳になろうとしているのに、いたずらの質が少々変わっただけで、やっていることは当時とあまり差がありません。もちろん今は鶏だけでなく、鴨等の野鳥や家畜を追いかけたりしなくなりましたが…。2歳になる頃まで、散歩中に牧場のフェンスの中に入り込んで羊の群れを追いかけたり、牛の群れを追いかけるつもりが逆に追いかけられて逃げ回ったりと、目に余る行動がめだちました。 牛の牧場の時はフェンスの網にあった「破れ穴」から入り込みましたから、牧場からなかなか出られなくて怖い目に遭ったようです。私は声を上げて笑いながら見ているだけでした。乳牛ですから、乱暴なことにはなりません。私がその「破れ穴」のあるところに戻り、場所を示したのでそこへ戻り、牧場から出られました。牧場の牛は珍入者があると団体で御挨拶にきます。牛の習性ですね。その時、牛の群れは遠くにいましたから、トニーには牛の大きさが分からなかったんでしょうね。近くへ来るにしたがい巨大な動物と分かり慌てたみたいでした。これはオランダ/ベルギー/ドイツの3国が国境を接する有名な地区で休暇を過ごした時の出来事でした。このキャンプでのハップニングはたくさんありますから、いずれ独立した1話にします。夜の散歩中にあの可愛いハリネズミを見つけたりして…。 それにしても、あんな場面でヨープさんが外交手腕を発揮したのには驚きました。引退後、久しく見なかったヨープさんの勇姿でした。あっは。カフェに座ってから何を鶏の飼い主に話したのか聞いたところ、「自分が感じたことをそのまま話した。トニーは楽しんでふざけただけだし、観光客もそれを見て大いに楽しんだ。ショーを見て喜んでいる観光客に不快感を与えるべきではない!」と穏やかに諭しただけとの返答。呆れました。あっはは。 では次の連載まで。 |