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2004/01/01
花火って... 僕は花火が大嫌いです。あの遠くから聞こえてくる爆発音が嫌いなんです。近くから聞こえるのも嫌いだけどね。12月になると花火を打ち上げる人がいっぱい出てきます。クリスマス直前に多くなり大晦日から元旦に年度が変わる時がクライマックスなんです。日本では花火は夏のものらしいけど、こちらでは12月から元旦にかけてです。 公園で会う仲間がこの時期になるとよく話しているけど、彼等は花火が怖いらしいんです。出来ることならこの時期は外出しないで、家の中に閉じこもっていたいなんて話しています。トイレもしなきゃいけないからそうもいかないし、なんてボヤいてます。僕はこの世に怖いものなんてないから、そんな話を聞く度に余計花火に腹が立ってきます。人間達がそんな僕の仲間を驚ろかせたり、怖がらせるために花火をやっているのは許せません。近所の大好きな子供達でも花火を始めたら許せないから、大きい声で吠えまくってやることにしてます。大好きな向かいの家のクリスチャンでも花火を始めたら思い切り吠えてやることにしてます。 殊にひどいのが大晦日から元旦にかけてです。大晦日は昼前から花火を始める子供達がいっぱいで、暗くなると大人も加わります。新年を迎えるための大きな花火を打ち上げる準備と雰囲気を盛り上げるためにやる、なんて勝手な言い方をしてます。そのせいで僕の好きな雌のゴールデンレトリーバー達が震えているのに…。だから僕は余計に吠えてやることにしてます。出窓のところに乗って花火をしている子供達をにらみつけて、吠え続けます。向かいの家のクリスチャンは近所でも評判のいたずらっ子です。花火を僕がいる出窓に向けて飛ばしたりします。そんな時のクリスチャンは最大の敵になります。で、僕も最大の声を張り上げて吠えてやります。 僕が住んでる街では大晦日に大きなイベントがあります。いつも散歩に行く公園とは逆の方向に表面がデコボコの広場があります。デコボコしてなければけっこう広いので、いい遊び場になるのに誰も遊んでいません。遊んでいても1、2頭の犬と飼い主くらいです。殆どの犬は公園へ行くからね。あんまりよく知らない犬しか遊んでいないみたいです。イベントはこの広場で開催されます。このイベントのことは僕ではちょっと説明がうまく出来ないのでボスにしてもらいます。その説明がないと僕のきょうの話は分かりにくいので。ボスの説明のあと話を続けます。では、またあとでね。 (Brug:トニーの代わりにちょっとだけ説明します) では、話を続けますね。このイベントへ行ったのは3年前です。行った時は遠くの方から花火の音が聞こえてくるだけでした。人がいっぱい集まっていました。子供もいっぱいいて遊んでくれるし、最初は楽しかったよ。そのうち大きな火が点いて、何かヤバそうだな〜と思ったらドカン・ドカンと大きな花火の音が始まったのね。同時に馬鹿みたいな光と音のディスコもトラックの辺りで始まりました。イベントというより、大きな騒動が始まった感じでした。で、我慢出来ずに花火を打ち上げている方向に向かって思い切り吠えていたら、大きな身体の警察官がきました。なんか犬好きのする若い警察官でね…。「オッ、お前は花火や焚き火が怖くないんだな、偉い犬だ!」と褒めてくれるの。だったらアッチへいったらいいと、大きな音を立てている方向を指差しました。その時は焚き火や花火の打ち上げ場から離れたところに居たんです。ボスはすっかりその気になって、鎖を引っ張ってその警察官と一緒に歩いて行くんです。僕も仕方ないから付いて行きました。 近づくにつれて暑いのね〜、焚き火って。花火の音も大きくなるし不快な気分になってきました。で、これ以上先へ行くのが嫌になったので足を止めました。ボスは鎖を引っ張って僕に来るように促すんだけど、テコでもこれ以上先へは進まないことを決心しました。首輪が喉に食い込んで苦しかったけど足を踏ん張って抵抗しました。ボスもやっと分かってくれて、それ以上先へは進むのを止めました。若い警察官が僕を抱き上げて焚き火がよく見えるようにしてくれました。そのやり方が気に入ったので彼の鼻をペロッとなめてやりました。でも、暑いのです。で、暴れて下におろしてもらいました。地上の方が暑くないのね。下ろしてくれた警察官は自分の仕事に戻っていきました。人がどんどん増えてきたから。 近所の子供達が親と一緒に到着しました。僕の名前を呼びながら。誰も犬を連れてません。皆さん僕がここへ来ているのにビックリしているみたいでした。僕は花火の音に向かって吠えてました。近所の人は「犬は普通こんなの怖がるのにね〜」なんて話してます。僕には怖いものなんて何にもないのにね。でもこんなのは楽しくないね、ただうるさくて暑いだけです。近所の子供が僕の鎖をボスからもらってディスコのトラックの方向へ連れて行こうとします。でもそのすぐ裏が花火の打ち上げ場になっているの知ってるから、また足を踏ん張って抵抗しました。 クリスマス・ツリーの焚き火は勢いを増して行きます。ディスコ・トラックの音楽や光もそれにつれてますます強烈になってきます。花火は3つも4つも同時に打ち上げられてますますうるさくなってきます。吠え続けたのと暑いのとで喉が渇いて参ってしまいました。で、ホット・ドッグみたく舌をだしてハー・ハーやってたらボスがやっと気がついてくれました。「水が欲しいんだな、家へ帰ろうか?」と言ってくれました。僕はすぐそれに反応して、ボスを引っ張るようにその広場から離れようとしました。ボスは逆方向に行こうとしてます。もちろん家がそっちの方向なのは知ってますが、花火の打ち上げ場の横を通らないといけないのです。だから少し遠回りになっても逆方向へ一旦行ってから、他の道を通って家へ帰ればいいのね。でもボスはそれに気がつかないのです。ホント鈍いんだから…。 僕も意地になってお互いに引っ張り合っていました。そのうちボスが気がつてくれました。あ、そうかという感じでね。僕の意図した道順で家のあるところへたどり着きました。もうここへは来たくないね。こんな暑いてうるさいところへは……。 家の前まで来たら、人が集まってます。クリスチャンと家族が家の前で花火をやってるの。小さな花火ね。音はするけどさっきのに比べたら迫力ないし、吠えるのは止めました。しゃがんでいるクリスチャンのところへ走っていって、顔をなめてやろうと飛びついたら逃げられちゃいました。そのあと彼が小さな花火に火をつけて僕の方に投げてよこしたの。その小さな花火がくるくる回りながら僕に向かって勝手に動いてくるのには参ったね。なんか僕が逃げる方向に来るのね。で、僕の目の前でパンと音を立てて終わったけど、あの大きな音を立てる花火よりよっぽど怖いよ、これ。クリスチャンやボスが大笑いしてるけど、次が来る前に家の中に入っちゃえと家のドアに向かって一目散で逃げました。あとで聞いたらこの花火は「ネズミ花火」という昔から日本にもあるやつなんだって。ボスも小さい頃この花火で女の子をからかったことがあるんだって。クリスチャンはけしからんね、女の子じゃなく犬をからかうなんて。 それ以降はあの広場の焚き火を見にいかないことにしたそうです。理由は僕が怖がるからなんてボスは人に説明してますが、そんなことは絶対ないからね〜。むしろ「ネズミ花火」みたいなのは怖いよ。あの、目の前でバンと弾けたのにはたまげたよ。まあ、クリスチャンのことだから許すけどね。元旦を迎えるといっぺんに花火の音が聞こえなくなるので一安心です。 嫌な花火の話でした。次はもっと楽しい冒険談にします。 トニーBrug43 この3年前にクリスマス・ツリーの巨大な焚き火を見てから、トニーはますます花火が嫌いになったようです。花火に向かっての吠え方が更に強烈になりました。ただし家の中からしか吠えなくなりました。やはり花火を怖いと思うようになったみたいです。ここ(地上階)へ引っ越してくる以前は16階のフラットの窓からしか花火を見たことがありませんでした。大きな花火の打ち上げを目の前にしたのは初めてですから、驚いたのだと思います。 クリスチャンと「ネズミ花火」のエピソードもなんか取ってつけたような説明で、実際にはそれほど怖がっているようには見えませんでした。厭がってはいましたけどね。 翌年の年末にトニーをからかってやろうと、花火を打ち上げている焚き火の広場の方向へ行こうとしたら、勝手にUターンして走って家へ帰ってしまいました。震えてるというほどではありませんが、尾っぽをダラリと下げて私の到着をドアの前で待っていました。滅多に見られないトニーの姿です。ドアを開けてやったら中へ飛び込み、家の中を走り回っています。これ何となく恥ずかしい思いをした時にやるトニーのリアクションです。私が「お前、やっぱり花火が怖いんだ〜」と言いながら笑ってやると、私の前でピルエット (舞踊バレーの回転ジャンプ) を2・3度して「う〜」と唸りながら私に飛びついてきました。いつものパターンです。 その夜は花火の音に向かってずーっと吠えていました。そのうちに喉が枯れてしまい、声(音)が出なくなってしまいました。息だけの音です。その息だけで吠え?続けるんですから、大したものです。諦めません。あっはは。実は3年前にこうなった時、私は心配になりましてね。声が潰れて元へ戻らないのではと。でも元旦の夕方には正常の音が出せるように回復してました。 夕べから今朝にかけても、同じパターンで声を枯らしてます。元旦で静かな平和が戻り、トニーはいま死んだようにベッドで身動きもせず寝てます。 トニーと花火のエピソードでした。 次回をお楽しみに…。 |