A Man Without A Country


ぼくは、カート=ボネガットがカート=ボネガット=ジュニアと呼ばれていたころからのファンだ。

先週末の「ザ・ウェスト・オーストラリアン」紙に、カート=ボネガットのインタビュー記事が載っていた。なんと彼は今年83歳。現代文学の旗手として名を馳せていた彼が、もうそんな年齢なのだ。まずそれに驚いた。
インタビューには、ボネガットの大まかな生いたちと、節目節目の代表作が触れられている。そして最新作の「A Man Without A Country」のこと。彼は第二次世界大戦でのドレスデン空襲の生き残りである。しかもドイツでのその空襲のとき、彼は捕虜としてドレスデンの収容所のいたのだ。そのときのことを題材にしたのが「スローターファイブ」だ。そのあと、彼は戦争のことを書かなかったが(もっとも、彼は常に人間の愚かさを書いてきたのではあるが)、今度の作品はかなりしっかりとアメリカの愚かさ(つまり戦争フォビア)に触れているとのこと。
ボネガットの小説には、辛辣な皮肉とその裏返しのようなユーモアが溢れ出ている。饒舌ですらある。それは彼の内にある楽観主義的な要素というよりも、「終わりを見極めた者の開き直り」というような雰囲気さえある。彼はインタビューで言っている。人類は終わりに向かっている、確かに、と。
でもそれは、悲観ではない。そうなるという人類の道を見据えて、彼は83歳になるいま、新しい小説を世に問うた。アメリカという、彼の母国であり世界最大の愚かな国のことを。

ちょうど今日、ぼくは岡本太郎の文庫本を読み直したところだった。太郎は言っている。人類が滅びるとか滅びないとかで言い合うのはナンセンスだ。滅びるなら滅びるでいいじゃないか、生まれた者は必ず滅びる。それは当然の流れだ。ならば滅びるときに平然と滅びてしまおうじゃないか。先のことを思い悩んでいったいどうするというのか。問題は、生きているいまのことなのだ、と。

「A Man Without A Country」。83歳のボネガットがいまをどう表しているのか。もちろん日本語訳は未だだろうから、さっそく明日にでもここの本屋に行って原書を手に入れてこよう。

Posted: 月 - 2月 27, 2006 at 11:37 午後            


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