『核と女を愛した将軍様』、『警察裏物語』
藤本健二、『核と女を愛した将軍様 金正日の料理人最後の極秘メモ』、小学館
北芝健、『警察裏物語 小説やTVドラマよりおもしろい警察の真実』、basilico
お気楽な本を2冊。
北朝鮮の動向はもちろん「お気楽」な問題ではないのだが、本書は内幕暴露ものでウラのとりようもないし、北朝鮮ウォッチャーには「情報」としての価値があるのかもしれないが、私なんかにとっては「読み物」としてしか機能しないので。
で、とりあえず著者の記述を基本的に信頼するとすると、金正日がほとんど「愛すべき人物」に思えてくるからおもしろい。なにしろ著者が描き出すのは日本食に舌鼓を打ち、日本製品を賞賛し、『男はつらいよ』を愛し、宴会で日本の歌(軍歌を含む!)を楽しみ、著者を「藤本バカヤロー」と(日本語で)呼ぶ独裁者なのだから。その宴会も「大富豪ならそういうこともあろう」といったもので、例えばフセイン親子について噂されたような無茶苦茶をしているわけではない。タイトルからは「喜ばせ組=ハーレム」のような印象は受けるが、本書が描く金正日はそのあたりについてはかなり慎ましい独裁者である。自分がテレビなどで「偉大な領導者」と呼ばれるのも嫌っていた、という。笑ってしまうのは、「超一流のグルメ」であると同時にB級グルメでもあることで、日本製のインスタントラーメン(特に「ラ王」「スーパーカップ1.5倍」などがお気に入りだったそう)を食べては「日本の料理というのは、こういうインスタントも含めて、すべてカツオブシが基本になっているんだな」と感想を述べ*、軍の視察には「スーパーカップ1.5倍」をお土産にしたという。北京からマクドナルドのハンバーガーを取り寄せ、「同じものをつくれ」と料理人に命じたり(これなんて、究極の贅沢かも)。
もちろん、著者は金正日の料理人(兼遊び相手)というふれこみであるから、それなりに神経をすり減らすような経験こそしているものの、北朝鮮にまつわる現実のシビアな側面には断片的にしか接触していない。また、著者が語ったことがすべて真実だったとしても、著者がなにを語らなかったかをあれこれ憶測することはできよう。その意味では「印象操作」の力を思い知らされるわけだが、他方で独裁者がモンスターであるとは限らない(まして父親がつくりあげた独裁国家を継承した二代目なのだから)、というのは知っておいて損のないことでもあろう。別に独裁者を免罪するためにではない。個人的には愛すべき人物でも冷徹な独裁をなし得るということを学ぶために、だ。
最近、ちょくちょくテレビにコメンテーターとして出ているのを見かける著者の本なので買ってみた『警察裏物語』だが、こちらの方は本当に「お気楽」な一冊。基本的に現在の警察の擁護者である(裏金問題にしても「最近はましになった」というスタンスをとるなど)ことも関係しているのだろうが。サブタイトルが示唆するように、警察小説や刑事ドラマを楽しんだり突っ込んだりするためのネタ本だと思えばよい。
Posted: 木 - 8 月 3, 2006 at 03:12 午前
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