『新約聖書』
G・タイセン、『新約聖書 歴史・文学・宗教』、教文館
ドイツにおける新約学の第一人者による入門書。特徴は文学史的なアプローチで新約聖書の成立を記述していること。それゆえ新約聖書を構成する各文書の文学様式が分析の手がかりとされている。すなわち、「第一世代」がつくりあげた「手紙」という様式、第二、第三世代がつくりあげた共観福音書および使徒言行録という文学様式(「生涯もの」の変種としての)、といった具合に。ヨハネ文書は福音書文学図書館文学の結合として特徴づけられる。
著者はイエスを「カリスマ的な治療者」と規定し(31ページ)、イエスおよび直接の弟子たちのエートスを「遍歴のラディカリズム」と呼美、語録伝承はそうした遍歴の霊能者によって担われた、とする*
。福音書の成立は遍歴の霊能者の影響力が退潮し、地域教会の比重が増したことを反映している(137ページ)。
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『失われた福音書 Q資料と新しいイエス像』のバートン・L・マックはイエスたちをキニク派の遍歴哲学者として描いているが、タイセンは弟子たちが遍歴にあたって許された持ち物がキニク派よりさらに少ないことを指摘している(35ページ)。クロッサンの『イエス あるユダヤ人貧農の革命的生涯』はまた別のイエス像を描き出していて読みたいんだけど、版元品切れで古書はえらい値段がついてしまっている。
手紙、特にパウロの真筆は福音書よりも先に成立しており、本書でもかなりのページを割いて分析されている。偽名による手紙にはパウロのラディカルさを和らげる(台無しにする)意図が明確である。例えばイエスやパウロが対決した家父長制との妥協(204ページ)など。
Posted: 日 - 7 月 16, 2006 at 12:45 午後
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