『父親たちの星条旗』
監督:クリント・イーストウッド
出演:ライアン・フィリップほか
2006年、アメリカ
周知のようにプロデューサーはイーストウッドとスピルバーグほか、脚本に『ミリオンダラー・ベイビー』でもイーストウッドと組んだポール・ハギスと『ジャーヘッド』のウィリアム・ブロイレス・Jr.。公開初日とあって、まずまずの入り。やはり年配の観客が目立つが、予想以上に若い人もいた。字幕はここのところあまりお目にかかっていなかった戸田奈津子。戦争映画の字幕をもっともやらせるべきではない翻訳家なのに…。
硫黄島での戦闘、アメリカ国内での戦時公債プロモーション旅行、そして現代、と3つの時期の出来事が入り乱れる構成で、イーストウッドというよりはポール・ハギスのタッチが目立つ。もちろん戦場シーンはスピルバーグ流。上陸作戦は二度目だし。ただ、CGが多く(『プライベート・ライアン』より低予算)ちょっと「安いな」と思えるところもある。
シーンのつなぎ方はかなりわかりやすいと言うか親切なのだが、誰が観てもわかるようなスターを使わず(『プライベート・ライアン』では二等兵だったバリー・ペッパーが軍曹に昇進しているが脇役、ライアン・フィリップは言われてみれば『クラッシュ』や『ラスト・サマー』に出てたな、と思い出す程度)、また主役の3人を除けばキャラクターを立たせる間もなく戦闘に突入し、別の時代へと移るので、誰が誰でどうなるのかがちょっとわかりにくい。
もっとも、それ以外の点では図式的すぎるんじゃないかと思うほどである。3人は戦時公債宣伝ツアーに過剰適応する者、拒否反応を示す者、現実的に受けいれる者に分かれ、戦後の運命もそれに対応している。題材と相俟って「英雄の顕彰」に批判的な視点が提示されているわけだが、最後にナレーションでもだめ押し。イーストウッドは刑事物と西部劇で銃をぶっ放している印象が強い割に戦争映画への出演(ないし監督)が少ないのだが、それは意識的な選択だったのか? と思わせるほど。
3人のうち「英雄扱い」にもっとも拒否反応を示すのがネイティヴ・アメリカンの兵士で、酒に溺れたあげくツアーから降りてしまう。「酔っぱらって暴れるインディアン」というのはかつて西部劇の定番だったからいや〜な感じだな、と思っていたら「インディアンに酒は出さない」と入店拒否を喰らうシーンがある。考えてみれば、「酔っぱらって暴れるインディアン」がでてくる西部劇がつくられていた時代である。
本編終了後に続編『硫黄島からの手紙』の予告編。しっかり2本つくってしまうところは共に早撮りで知られるイーストウッドとスピルバーグらしい。イーストウッドは栗林中将の手紙(の英訳)を読んで映画化を決めたそうだが、一体どういう映画になるやら。硫黄島の戦いは沖縄のように非戦闘員を巻き添えにしておらず、インパールやガダルカナルみたいに戦略的にデタラメな戦いでもなかったため美化されやすいのだが、この映画から予測する限り心配はいらないと思う…。
Posted: 日 - 10 月 29, 2006 at 10:40 午前
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