『サンキュー・スモーキング』(追記あり)
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:アーロン・エッカート、ウィリアム・H・メイシー、ロバート・デュヴァル、ケイティ・ホームズほか
2005年、アメリカ
タバコへの賛否は別として、よくできたコメディです。ちなみに監督(脚本も)はタバコ吸わないそうですが。しかしなんだよ、この邦題は! 「サンキュー・スモーキング」って、「スモーキング君、ありがとう(Thank
you,
Smoking)」か? 「あなたに感謝を捧げる一服」か? 「サンキュー・フォー・スモーキング」と「サンキュー・スモーキング」で後者の方が語呂がいいか? これは日本人の英語運用能力をダメにするための陰謀か? わけわかんねえよ。
キャストがなかなか面白くて、主人公の息子は『ウルトラヴァイオレット』で物語のカギとなる少年をやっていた子役。こちらの方がアメリカでは先に公開されてるんだけど、なかなか印象的なルックスだ。また、ウィリアム・H・メイシーの上院議員(!)の手下の役人には『ハイ・フィデリティー』でオタ丸出しの店員をやっていたトッド・ルイーゾ。ケイティ・ホームズの「肉弾取材も厭わぬ女性記者」はあからさまにミスマッチ(なんせ背中すらみせない箱入り娘ぶり)で、意図されたミスキャスト。
アーロン・エッカートは『ブラック・ダリア』と違って非常にはまっている。この映画の予告編を何度も見ていたのが『ブラック・ダリア』のキャスティングに納得できなかった理由かもしれない。
主人公の生業にしてこの映画のネタである「スピン・コントロール」はもうアメリカのみならず日本でも洒落にならない問題なので、機会があればまた改めてとりあげたい。なんせ、野党の若手議員がガセネタに引っかかったことはまるでこの世の終りみたいにさんざん話題になったのに、米・英をはじめとする各国政府がガセネタを信じて(というより信じたふりをして)戦争をおっぱじめ、その戦争を日本政府も支持し、結果数万人が死亡する結果になったことについては冗談みたいに軽い扱いしかされていないわけである。ちなみに、自分の政治的嗜好にあわせて選んだ特定の話題についてだけ「○○語ができないと△△について語るのは難しい」などと言いだすのもスピン・コントロールの一種ですな。「権威を疑え! 自分で考えろ」というのがスピン・コントロールの手段として有効であることを暴露している点で、なかなか啓蒙的な映画でもあります。
追記:言わずもがなのことかもしれませんが、「権威を疑え! 自分で考えろ」というのがなぜスピン・コントロールの手段として有効であるかといえば、要するに一人一人の人間は多くの場合「権威」ほどの知識や能力がないからですな。そりゃあ、「権威」が間違うこともあります。間違うだけでなく意図的に嘘をつくことだってあります。ある分野で「権威」の一人である個人が別の分野ではデタラメを信じていることだってあります。しかし、たいていの場合「権威」が言うことが正しい…というのもまた真実であるわけです(特にアカデミックな「権威」の場合。政治的な「権威」については正しい確率はかなり下がります)。というわけで、権威を疑って自分で考えると結果的に間違ってしまうことがあるわけですな。「アポロは月に行ってない」とか「南京事件は中国のでっちあげ」なんてのがそのパターンに属します。「権威を疑え! 自分で考えろ」というメッセージに欠けているのは「自分も疑え」「権威を疑え、と言うやつを疑え」ということです。
Posted: 日 - 10 月 22, 2006 at 05:05 午後
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