ロッキード事件(裁判)関連年表


『ロッキード裁判とその時代 第4巻』(立花隆、朝日文庫)の略年表などを参考に

72年2月 米中共同声明
72年6月 ウォーターゲート事件、発生
72年7月 田中内閣発足
72年8月 丸紅による請託
72年9月 田中・ニクソン会談
72年9月 日中共同声明
72年10月 トライスター採用正式決定
73年8月 一回目の現金授受。四回目は74年3月
73年10月 オイルショック
74年8月 ニクソン大統領辞任、フォード副大統領昇格
74年11月 田中首相、「金脈」問題により(ロッキード事件ではなく!)退陣
74年12月 三木内閣発足
76年2月 米上院チャーチ委員会でロッキード事件発覚
76年3月 米捜査資料、日本へ
76年6月 嘱託尋問開始
76年7月 田中逮捕
76年12月 衆院選大敗を受け三木退陣、福田内閣発足。田中は大量得票でトップ当選
77年1月 丸紅ルート初公判
79年11月 第二次大平「田中角影」内閣成立
80年6月 自民、衆参ダブル選挙で圧勝
80年7月 鈴木「直角」内閣成立
82年11月 中曽根内閣発足。法相は秦野章。
83年10月 一審有罪判決

先日、久しぶりにロッキード裁判カテゴリーのエントリをチェックしていて、去る7月にコメントが一つついていたのを(今頃)発見した(「田原総一朗の「ロッキード事件」論」)。4月以降まったく更新していないカテゴリーだったのですっかり見落としていたのだが、例によってまったく新味がない。本ブログへの投稿としては唯一新しい論点が「文明子の本」。ちょっと調べればわかることだが、「○○のかげにアメリカの謀略が…」というのはこの人の得意技である。で、その内容というのもキッシンジャーとの私的会見でどうたらという、他になんの裏付けもない(他のジャーナリストが同じことを証言しているとか、発言を裏付ける文書があったとかということがない)ものに過ぎない。もちろん、だからといって直ちにガセだと主張するつもりはないが、「文明子がそう書いてるんだから陰謀だったんだ」と主張する人は徳本栄一郎氏による文明子へのインタビューも同時に鵜呑みにしてもらいたいものだ。でなけりゃダブルスタンダードというもの。

陰謀論者にお願いしたいのは、手垢のついたワンパターンのネタを使い回ししていないで、きっちりこっちの疑問を説明してみろよ、ってこと。田中が踏んだ「虎の尾」というのが日中外交であれエネルギー外交なのであれ、金脈問題ですでに退陣している田中に追い討ちをかけるいかなる合理性があるのか? むしろ「金脈」報道が謀略だったという方がまだしも合理的だ(その場合、立花隆と児玉隆也の記事を『文藝春秋』に載せた文藝春秋社がその後ロ裁判批判の拠点となったことを合理的に説明する必要があるが)。アメリカにとってもっとも避けねばならないのは日本に社会党(主導の)政権ができることである。実際、ロッキード事件発覚後の選挙で自民党は大敗している。そんなリスクを冒してまですでに退陣している田中を追いつめねばならなかった理由は?(実際、まったく逆の「謀略」説もある) 確かに田中は再び首相になることはできなかったが、たとえロッキード事件が発覚しなかったとしても再び首相に返り咲けたかどうかは非常に怪しい(三木内閣は約2年続いたが、いわゆる「三木降ろし」の動きはロッキード事件の発覚によって起きたのだ!)。もっと低いリスクで、つまり自民党内の政争というかたちで田中の力を削ぐ手段はあったはずだし、またロ事件が謀略だというのなら田中が「闇将軍」として大平・鈴木・中曽根内閣に影響力を行使していたのをなぜ傍観していたのか?
アメリカは日本に先立って中国との国交樹立を果たしていたのだし、エネルギー危機の時期にアメリカが日本のエネルギールートを100%押さえようとするのも合理的ではない。というのもその場合、アメリカは日本を自陣営にとどめるためには日本が必要とするエネルギーを100%確保してやる必要があるわけだが、この時期にはそれはとても高くつく選択肢だったからである。別段、日本のエネルギールートを100%押さえなくたって、日本の首根っこを押さえるには十分だ。だいたい、日本が独自のエネルギー源を確保することをアメリカが許さないというなら、日本の原子力政策を推進した連中はすべてCIAに消されてるはずじゃないか。

もちろん、一般論としてアメリカがさまざまな「謀略」を行なってきたことを別に私は否定しているわけじゃない(自民党にCIAから流れた金、とかね)。しかしロッキード事件に関する限り、謀略説を裏付ける証拠は実質的にゼロなのに謀略ぬきで合理的な説明を与えることは十分可能だ。上の年表にウォーターゲート事件を入れておいたのはそのため。ニクソンが録音テープのなかで(戸田奈津子が苦手な)四文字言葉を連発していたことなどもあって、アメリカ政府は国内の道徳保守派の支持を回復する必要があり、チャーチ委員会の活動もその一環だと考えればなんの不思議もないのである。

そうそう、日本が中国に接近したり、独自にエネルギーを確保することをアメリカは(謀略を使ってでも)阻止する、というのであれば昨今の日中関係もアメリカの謀略くさいですな(w まあ実際そう主張している人もいるわけだ*。ロッキード事件謀略説を唱える人は、日本国内の中国バッシングなんかにひるむことなく、日中共同での東シナ海ガス田開発を提言していただきたいものである。

* その謀略説が当たりであるかどうかは私にはわからない。しかし「歴史認識」問題で日本と中国が反目しても日本にはいいことなどなに一つない、ということだけはわかっている。

Posted: 土 - 10 月 8, 2005 at 02:10 午後          

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