『敵こそ、我が友〜戦犯クラウス・バルビーの3つの人生〜』


監督:ケヴィン・マクドナルド
2007、英仏

原題は Mon Meilleur Ennemi(我が最良の敵)、英語タイトルが My Enemy's Enemy (敵の敵)。監督のケヴィン・マクドナルドについては『[ブラック・セプテンバー]ミュンヘン・テロ事件の真実』をDVDで見たことがある。ウガンダのアミン元大統領を題材にした『ラストキング・オブ・スコットランド』は未見だが、一見したところ分かりやすい悪役が存在しているがその背景や細部や裏側にまで踏み込んでみると・・・というケースを好んで題材としてとりあげているようである。

柿本昭人氏言うところの「思考としてのナチズム」がナチス・ドイツの敗戦後も生き延びたという事態を、もっとも分かりやすく体現しているのがこのバルビーという人物であるということができるだろう。アメリカの庇護下で、ついでボリビアで(ということはつまりアメリカの黙認ないしそれ以上の関与の下で、ということだが)、バルビーはかつてドイツ占領下のフランスで振るったのとまさに同じ手腕を発揮したのであるから。
アイヒマンの逮捕(60年、処刑は61年)とは違ってバルビーの逮捕と裁判はリアルタイムで報道されたのを記憶してはいるが、いまのようにホロコーストに関心をもっていたわけではない時期のことなので詳細は覚えていなかったから、裁判を描いたパートも大変興味深かった。全体で90分という尺であるため生存者の証言も、弁護人および被告バルビーの反論も断片的にしか紹介されないが、被害者たちの証言の圧倒的な重みにもかかわらず弁護人の弁論が無視し得ない説得力をもつのは、それまでに映画がボリビアでバルビーの行なった拷問やクーデターへの関与などを描いているからである(これが単なる「相殺の論理」を越えた意味をもちうるのは、アメリカやボリビアはバルビーが戦犯であることを承知しつつ利用していたからである)。バルビーの弁護人ジャック・ヴェルジェスはアルジェリア独立運動の闘士からホロコースト否定論者、あるいはキュー・サムファンと、要するに多くの弁護人がひきうけたがらない被告の弁護を露悪的と言ってもよいスタイルでひきうけてきた有名人とのこと。調べてみると実は同じ2007年に、このヴェルジェスを主人公にした映画『テロルの弁護士』が制作されているのだが、その監督バルベ・シュローダーは1974年にイディ・アミンについてのドキュメンタリーを撮っている。本作のマクドナルド監督の関心と交差しているところが興味深い。

Posted: 火 - 9 月 2, 2008 at 11:01 午後          

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