『あの戦争から遠く離れて』
城戸(きど)久枝、『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』、情報センター出版局
旧満州国軍の日本人将校の息子として生まれ、敗戦時に両親と生き別れ中国人の養子となった残留孤児が文化大革命のさなかに帰国を果たした。本書はこの希有な体験をした残留孤児の娘が父の足跡を振り返り、中国に留学して父の「故郷」を訪ねるまでの過程を描いたものである。
著者はいわゆる団塊ジュニア世代に属しており、ふつうなら戦後生まれの両親から日本で生まれた世代であり、中国残留孤児の二世であれば中国で生まれているのがふつうの年代なのだが、彼女の父が国交回復・帰国事業が始まる前に独力で(といってももちろん両国の赤十字や日本の両親、中国における友人の支援はあったわけだが)帰国を果たしたがゆえに、日本で生まれた「残留孤児二世」となった。「戦争を知らない子供達の子供達」である団塊ジュニアは、戦争の痕跡を見ずに成長することが特異なことではなくなった最初の世代だと言うことができるだろう。両親が戦時中の記憶をもっており、とりたてて「記憶の継承」を意識しなくても家庭で戦時中のことが話題になることがあるような環境で育ったのは、(もちろん家族構成等によりばらつきはあるが)だいたい私の世代くらいまでのはずだ。その意味で著者が同世代の多くの人々にはない大きな手がかりをもっていたのは確かだが、しかし今でも大多数の日本人はその祖父母の代までさかのぼれば、せいぜい曾祖父母の代までさかのぼれば「私につながる歴史」にたどりつくのである。
Posted: 火 - 12 月 4, 2007 at 05:37 午後
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