自民党による「A級戦犯分祀」の動きに反対しよう!(追記あり)
世のウヨク諸氏の中には「サヨクは靖国神社へのA級戦犯合祀に反対している」とか「A級戦犯を分祀せよと主張している」という粗雑な理解を持っている人が少なくないようである。
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20060908/p1
から派生した
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20060910/p4
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20060910/p5
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20060912/p2
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20060912/p3
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20060913/p3
などをごらん下さい。
当たり前のことだが、一宗教法人たる靖国神社が誰を祭神として祀るかは最終的には靖国神社が決めることである。市民がその判断について批判することはもちろん許されるが(したがって日本遺族会がA級戦犯分祀を主張することそれ自体にはなんの問題もない)、靖国神社がその批判を受けいれる法的義務はなく*、また政府がその判断に介入することは許されない。私見では靖国神社の最大の問題点は「A級戦犯合祀」ではなく、靖国が「戦死者を顕彰し、喜んで戦死する国民をつくる装置であったこと、そして戦後もその機能を反省していないこと」である。A級戦犯を分祀することによって総理大臣や天皇の靖国参拝が容易になるのだとすると、この真の問題点は放置され定着してしまうことになる。さらに、たとえ私的団体たる日本遺族会を通じてではあれ、政府の意向が一宗教法人に圧力となるといった事態はリベラルを自称する者として座視するわけにはいかない。というわけで、自民党主導の「A級戦犯分祀」には断固反対であることをここに表明しておく。
*
遺族の以降を無視して靖国が戦死者を合祀することについては、遺族の権利を侵害している疑いがあり、現に遺族が提訴したことがある。この権利侵害が裁判所により認定された場合には、当然靖国神社は合祀をみなおす法的義務を負うことになる。
追記
・「A級戦犯を分祀することによって総理大臣や天皇の靖国参拝が容易になるのだとすると」という点。「容易になってよいのか?」という問題と「現実問題として容易になるかどうか」とは区別してここでははなしを進めている。靖国問題の核心は「A級戦犯合祀」ではない、という立場からは当然、首相や天皇の靖国参拝の是非はA級戦犯を分祀したとしても変わらない、という帰結を導きうる。
他方、「A級戦犯が合祀されているから」という理由で首相(および天皇)の靖国参拝に否定的であるような人々がけっこういる、というのも事実だろう。現に天皇に関しては、「A級戦犯合祀が参拝取りやめの理由だった」という従来からの通説が富田メモ、卜部日記により決定的なものとなった。中国の主張も、ほぼ「A級戦犯を分祀すれば不問に附す」というものだし。ウヨクのなかには、「サヨク=中国の手先」というクリーシェが脳の髄までしみわたっているので、これが国内の左派の共通見解だと思えてしまうらしいが。政府が分祀を強要するなんてことは、それこそいまの中国でなら生じうるかもしれないが、いまの日本ではあってはならないことである。それに、姑息なようだが、戦略的に見れば靖国がA級戦犯分祀を断固拒否している状態の方が私のような人間にとっては「好都合」ですらある。
・もっとも、「A級戦犯合祀」それ自体は問題ではない、とまで言おうとしているのかというとそういうわけではもちろんない。敗戦後に靖国神社は廃止しておくべきだったという主張があり、私も基本的にはその立場をとるのだが(敗戦の時点で靖国は現在のような宗教法人ではもちろんなく、これを政府が廃止したからといって政教分離の理念に反するとは言えない)、これに対して次のような考え方もあろう。事情はともかくとして、靖国を死んだ家族、友人との接点と考える人間はいた(いる)。青狐さん流に言えば靖国というのは「褒めてごまかす」メソッドであるけれども、だからといって「あんた方は騙されてたんです、騙される方が悪いんです」と社会がそうした人々を放り出すわけにもいかない(それは社会・文化の戦後処理を「心の」戦後処理へと心理学化、個人化してしまうことだ)。したがって、靖国というトポスは維持したまま、その意味あいを変えてゆくのが正解だった、と。この立場からすれば、確かに「A級戦犯合祀」は大きな問題である。戦前との「断絶」を意識するための場になることもあながち不可能ではなかった(もちろん、この社会にそのつもりがあれば、だが)靖国を、「そんな断絶なんていらん」とうそぶく場にしてしまったのがたしかに「A級戦犯合祀」ではあるから。
Posted: 月 - 10 月 8, 2007 at 11:12 午後
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