政民が足並みを揃えて少子化推進活動(追記)
育児休暇をとった高校教師、続報
文部科学省の託児所に関する『週刊現代』の報道
松浪健四郎議員が槍玉に挙げた5月26日付け朝日新聞「私の視点」を確認してきた(先週、古新聞を捨ててしまっていたので)。結局、件の教員が公務員なのか私立学校の教員なのかはわからなかったが、文末に「大分県宇佐市次世代育成支援対策推進協議会委員」という寿限無みたいな肩書きがついているのを確認できた。宇佐市の「次世代育成支援対策推進協議会委員」募集のおしらせはこちら(PDF)。協議会の名前から判断するに、「次世代育成支援対策推進法」をうけてのものであることはまちがいなかろう(まあ違っていたとしても論旨に影響はないのでこれ以上の調査はパス)。つまり育児休暇をとった件の男性高校教諭は国策にのっとって行動しておられるということがますます明らかになったわけである。それを批判する松浪健四郎は「反日」ではないのか? ネット右翼のみなさんはなぜ、与党議員でありながら政府の方針に反対する松浪健四郎を「反日」認定しないのであろうか? 不思議だ…。さて、今週号の『週刊現代』のグラビアでは「スクープ撮!!」というあおりつきで「文部科学省の中に「職員の“特権”保育所」があった!」と題する公務員叩きが展開されている。丸の内にある文部科学省の庁舎に、文部科学省共済組合が運営する保育園が設置されている、というのである。人事課福利厚生室共済第三係長のコメントは少子化対策のための「次世代育成支援対策推進法」で、301人以上の従業員がいる事業主や、役所は託児施設をつくるなどの行動計画を作成することになりました。文部科学省はその先駆けです。保育園の運営費も、家賃や光熱費以外は保育料で賄っていますというもの。これに対して「官僚の不正を糾(ただ)してきたジャーナリストの岩瀬達哉氏」(原文、( )内はルビ)は次のように言う。文科省内にある、ということは家賃や光熱費は税金で賄われているということ。税金を使う以上、国民が平等にサービスを受けられなければいけないのにこの保育所は文科省周辺に勤務する人しか利用できない。不公平ですいやなんともすさまじい「為にする議論」「結論先にありきの議論」である。本当なら、岩瀬達哉は(ないし『週刊現代』編集部は)「この保育所は文科省に勤務する人しか利用できない。不公平です」と書きたかったのだろう。ところが残念ながら、定員30名のこの保育所は定員に空きがあれば他省庁や民間からも受けいれることになっており、現状では文科省職員の子ども=9人、他省庁の職員の子ども=4人、民間人の子ども=10人となっているので、その論法が使えなかったわけである。だが、そもそも保育園(保育所)というのは自宅か(親の)勤務先に近くなければ意味がないものである。はたしてこの保育園に「丸の内近辺に勤務している者の子弟に限る」といった受け入れ条件があるのかどうか知らないが、丸の内に住んでいる人間なんて大していないのだから、この保育園が丸の内近辺に勤務する労働者の子どもを受けいれることになるのはごくあたりまえのことだ。町田に住んでいて横浜に通勤している人間が丸の内の保育所に子どもを預けようとは思わないだろう。この保育園が「文科省周辺に勤務する人しか利用できない」のは一つには所在地のせいであり、もう一つには保育園という施設の目的によるのであって、けっして官民差別のせいではない(その証拠に、半数近くは民間労働者の子どもである)。こじつけ批判もいいところだ。では保育料に関してどえらく優遇されているのか…といえば、「千代田区の公立保育園で最高5万7500」なのに対して、こちらは年齢により5万1450円から4万9350円と、たいして変わらない。「次世代育成支援対策推進法」にのっとって、雇用者としての文科省が設置した保育園なのだから、主たる利用者として文科省の職員を想定するのはむしろあたりまえのはなしであり、文科省の職員を後回しにして民間労働者の子弟を受け入れていたとすればその方が倒錯というものである。まったくもう、公務員たたきならどれほど不条理なものでも許されかつウケるだろうというさもしい根性の発露としか思えない。これが例えば、「少子化対策など必要なく、そんなものにまわすリソースがあるなら別のところにまわせ」という主張ならまだわかる。また「保育所などを充実させても少子化対策としては効果はなく、単なる公務員優遇策にすぎない」というのでも、効果がないとする論拠を示す姿勢があるのなら結構なことだ。要するに、「次世代育成支援対策推進法」そのものを批判するつもりがあるのなら、理解できるのである。しかし、そんな主張はみじんもみられない。民間の労働者が(も)利用できる保育所を充実させよ、と厚労省の尻を叩くのでもない。「待機児童がたくさんいるというのに、役人だけが子どもを保育園に入れることができるのは明らかに特権ではないでしょうか」とこの特集は結ばれている。民間人の子どもが10人も受け入れられていることは“なかったこと”にされているし、働きながら子どもを育てようとする親が保育所を見つけられないのが異常な事態なのであって、保育所に子どもを預けることができるのは「特権」どころか当然の権利にすぎない、という視点もない。国が「次世代育成支援対策推進法」なるものをつくっておいて、しかし官公庁が率先してそれを無視していたらかえってその方が問題ではないのか? 公務員叩きという快楽にふけっているうちに、「より悪い方、悪い方へと労働条件を揃えてゆく」ことに加担してどうする! それこそ「悪平等」ではないのか? 「俗情に媚びる」というのはまさにこういうことを言うんだ、と見本にしたいほどである。追記:なんということか! 私は霞ヶ関に「瞞着」されておりましたですよ。霞ヶ関の中の方がおっしゃるのだから間違いないのでしょう。しかしながら、このエントリの信頼性には影響ないのであります。なぜならば文部科学省は丸の内に移転済みだからであります。期待通り bewaad
さんのお目にとまりました。トラックバック送るにふさわしいエントリをすぐには思い出せなかったのでトラックバックは送りませんでしたが、書きながら「念」は送っていたのでそれが通じたものとみえます。後になってこのエントリのことを思い出したので、遅ればせながらトラバさせていただきます。それにしても、「民間が10名利用している」と書いてある次のページに「役人だけが子どもを保育園に入れることができるのは明らかに特権」と書いてあるのを見つけたときには仰天したなぁ。東京都で待機児童が5,221人いることを指摘しているけど、この保育園がなかったら民間人の子ども10人がさらに待機児童になってたわけですよ。さらに写真の一つに「上写真の園庭を拡大すると遊具が設置されていた。施設の経費は税金で賄われていると文科省は説明する」とキャプションがついています。このキャプションだけ読むとさぞかし豪華な園庭が用意されているように思えるけど、なんのことはない、ビルの屋上に野球の内野ほどもない(目測)運動スペースがあって、よくわからないけど三輪車ほかの遊具がちょこっとあるだけ。プールがあるとか立派なジャングル・ジムがあるってはなしじゃありません。また、「(…)税金に支えられ文科省の職員は子供とともに「ゆとり出勤」を享受しているわけだ」とも書かれているのだが、やっぱり特殊合計出生率1.25ってのはあたりまえの数字だよな。大学生の子どもを持つ職員が「ゆとり出勤」してるってはなしじゃないんだよ? しかも保育園の保育時間は夜10時までとなっていて、(現実にいるかどうかは知らないけれども)午後10時近くまで働くケースがあることも想定されているわけだ。保育園に通う年齢の子どもを持つ公務員に「ゆとり出勤」を認めるのがけしからん、というくらい日本は貧しいんですよ。日本は世界有数の経済大国だと私は思ってたんですが、どうやら間違ってたようです。
Posted: 火 - 6 月 6, 2006 at 08:46 午後
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