『旧約聖書の誕生』


加藤隆、『旧約聖書の誕生』、筑摩書房

この数年、新書や講談社選書メチエで新約聖書学、初期キリスト教についての一般向け解説書をかなり書いている著者(本書と対になるタイトル、『新約聖書の誕生』も選書メチエ)著者による、旧約聖書への入門書。
最大の特徴は、文書ごとの解説ではなく古代イスラエルの歴史にそって(第二章「出エジプト」、第三章「イスラエル統一王国」…、第六章「バビロン捕囚」(…)、第八章「ギリシア・ローマ期のイスラエル」…、といった具合)関連する文書の関連する箇所を解説する、というスタイル。「あとがき」によればフランス留学時代の勉強会の経験が反映されているようだ。結果として、同じ文書についての記述があちこちに散らばることになるが、各文書がどのような文脈において成立したのかを知るには都合がよい。素人にはどこまで通説をきちんとふまえて書かれているのかを判断するのはなかなか難しいから、本来新約聖書学が専門の著者というのはちょっと不安にさせられる材料なのだが*、その点を差し引いてもメリットがあると思う次第。新約研究者らしく、新約の本歌となっている旧約の箇所がよくとりあげられているので、新約に関心があって旧約も押さえておこう、と思う人間には便利でもある。

* もっとも旧約学についての知識なしに新約研究はできない(逆ならまだ可能だが)し、専門ど真ん中でない方が肩入れ・思い入れを排して通説を押さえてゆきやすい、ということもあるかもしれない。

Posted: 月 - 5 月 5, 2008 at 04:33 午後          

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