「人権擁護法」は議論不足か?


コメント欄では「可読性が悪い」とのことなのでエントリをたてます
5月26日追記

「informal blog - IT,メンタル,思想,雑記」さんの「人権委員の罷免規定について」というエントリに対してトニオさんが「informalattractさんの疑問にお答えする。」「informalattractさんにさらにお答えする。」というエントリをたて、その間に私がコメントしている…というのがここまでの流れ。読者におかれては informalattract さんのエントリとそこへの私のコメントをご覧いただいたうえで以下をお読みいただけますよう。

つまり国会に上げるのが先だと。与野党合意済みの状況で国会に上げるのは成立とほぼ同義では? 成立してから政府による説明を拝聴せよという主張ですね。

まず共産党は人権擁護法案に反対していますね。また、「政府」と「与党」とは形式的には独立しているのであって、政府が提出した法案に与党議員が批判的な質問を行なうことだって可能です(し、必要なら行なうべきです)。したがって「与野党合意済み」という認識も間違っていますし、「与野党合意済みの状況で国会に上げるのは成立とほぼ同義では?」については同法案が過去に数回国会提出されていながら成立していないことをどうお考えなのか、お聞きしたいところです。

ネットで「デマ」「誤解」が広がって反対派議員が増えて推進派議員の邪魔をして困ってる、というのが今の状況なら、推進派議員がスポークスマン一人立てて、マスコミなりネットなりを通じて誤解を解けばすぐ「デマ」は収まり、ネット上の騒動は沈静化するはずですが、なぜその簡単な手順を踏まないのか? ということです。

デマをばらまくのは簡単だが、デマを訂正するのは大変なんですよね。一時に比べればさすがに減ってきたとはいえ、未だにネット上に「家宅捜索」「逮捕」「治安維持法並み」といった文言がみられるのがその証拠です。したがって「最も簡単かつ効率のいい方法」というのは「強硬突破」ということになるでしょう。もっとも、私は「最も簡単かつ効率のいい方法」を必ずしも支持するわけではなく、それゆえ貴重なプライベート時間を削って数多くのエントリおよびコメントを書いてきたわけですがね。
自民党の部会で議論が行なわれ、その内容が部分的にではあれ報道されている…というのは、「郵政民営化」という目玉を抱える国会にしては十分に情報が与えられている、という状況だと考えるべきでしょう。トニオさんも指摘している通り、“人知れず”成立してしまう法律はいっぱいあるのです。

推進派議員が「良い」法案だと確信して行動しているなら、胸を張って堂々と、懸念を感じてる人たちに説明すりゃいいじゃないですか。

そもそもこの法案の趣旨については、「人権擁護推進審議会」の答申でも過去の国会審議でも「胸を張って堂々と」説明されているんですね。いまになってそれがなかったかのような議論をされても困ってしまうわけです。

人権擁護法には問題点が多すぎる、という観点からは「推進派が強引に通過させようとしている」と見えるのかもしれませんが、人権擁護法案には(少なくとも国会審議を拒否すべきほどの)問題点はないという観点からみれば、「わけの分からん理由で難癖つけている議員が国会提出を阻み、政争の具にしようとしている」と見えるんですね。で、この法案に大きな問題点はないとする立場からすれば、反対派議員の行動は「この法律によって救済されるはずの被害者を見捨てる」ことにほかならないわけです。したがって、トニオさんもおっしゃる通り「古賀誠先生が押し切ろうとしたことは拙いやり方だとは思うものの理解できないものではありません」ってことになるわけです。だって、反対派が「この法律が成立すると北朝鮮への経済制裁を主張できなくなる」などという荒唐無稽なことを言っているわけですから。それに、自民党部会での「強行突破」が批判されるべきなら、国会での「強行採決」はなおさら批判されるべきですよね? そうであれば、人権擁護法反対派はまずもって例えばイラク特措法にいまからでも反対すべきでしょう。与党の強行採決をスルーした人々がこの法案に関してのみ自民党内の「手続き」論にこだわるのはダブルスタンダードではないのですか?(これは一般論で、informalattract さんがイラク特措法についてどのような意見をお持ちなのかは承知していないことをお断りしておきます)

反対表明が、様々な個人や団体、特に当の差別被害を受けておられる(であろう)方々からも出てきてるわけですから、議論不足なのは明らかです。「法案論議」をする必要がない、という意味ではありません。何はともあれ先走って動いてる賛成派議員を止めるのが先なんじゃないの、という話です。

一口に「反対」といっても、いろんな反対論があるんですわ。人権委員会の権限が弱すぎる、独立性が乏しすぎるという、自民党内の反対論とはまったく逆の反対論がある。また障害者団体などが「人権侵害の定義が曖昧」と批判する際には、定義が曖昧であるが故に「救済すべきものが救済されない」ことを問題にしていたりするわけです。これらの反対意見を取りいれれば自民党内の反対論者にとってはなおさら受けいれがたい案になるわけですが、それでもいいのですか? 自分たちとは180度異なる理由で反対している人々を引き合いに出して「いろんな反対論がある」と称するのは欺瞞的だとは思われませんか?

「一任」騒動などに見られるような、推進派議員の異論を無視したような態度から、「理屈としてはうまく言えないけどなんか怪しいから反対」というスタンスが生まれてきているわけで(後略)

これは明らかな歪曲ですね。そもそもわけの分からん反対さえなければ推進派が強硬姿勢を示す必要もないわけです。もともと人権擁護法の成立は与党の既定路線だったわけで、自民党内の反対論さえなければ粛々と通過したはずなのですよ。「北朝鮮への経済制裁を主張できなくなる」などとよりによって安倍晋三に言われたときの法務官僚や古賀議員の心中を思うと涙が出そうになってしまいます。私なら「あんたが首相になったら、北朝鮮への経済制裁に反対した人間をこそ弾圧するんじゃないのか」って言ってしまいそうです。ちなみに、人権擁護法なんかなくても「言論弾圧」なんて簡単なんですよ。刑法の「名誉毀損」を悪用するとか転び公妨で逮捕する、ってのは私にもすぐ思いつきましたが、「住居不法侵入」や「(東京都)迷惑防止条例」が使える* というのは盲点でしたね。

* 植草教授の事件については事情に詳しくないので、とりあえず当人がそうほのめかしているということと、「可能性」としてはあり得ないはなしではない、というだけのはなしだが。

5月26日追記
民主党が「人権侵害救済・予防法案」を「次の内閣」に提出するのが「正当な手続きすっ飛ばし」なんだそうだが(「informal blog - IT,メンタル,思想,雑記」、民主が手続きすっ飛ばして独自案を「ネクスト内閣」へ提出)、「法案解析派は例によってスルーなんでしょうな」などと言われてもどこに手続き上の問題があるというのか、さっぱりわかんないですから。2chのN速+のスレへのリンクが貼られており、スレの1では北日本新聞の記事にリンクが貼られているのだが、「次の内閣」に提出し国会提出を目指すのはどう「手続き」違反だというのか、なに一つ書かれてはいない。なにもないのにスルーもなんもないですわな。

Posted: 木 - 5 月 26, 2005 at 01:12 午前          

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