共謀罪について(6月29日追記)
6月28日追記
6月29日追記
「恣意的に拡大解釈される恐れがある」ってのは左翼が法案に反対するときの常套句だったわけだが、人権擁護法反対運動で目新しかったのはこの論法が右の方々にも「伝染」したこと。逆に私なんかは「恣意的に拡大解釈される恐れがある」式の反対論の危うさを学ぶことができたわけだ。もちろん「さほど曖昧さのない法案」と「曖昧さの多い法案」の区別はちゃんとつけることができるし、技術的に可能な限り不必要な曖昧さは排除されるべきなのは言うまでもないが、「理屈と膏薬はどこにでもつく」でどんな法案にも「曖昧だ」って批判は可能だからだ。なんでも批判できる論法は眉に唾せねばならない。やはり肝心なのは有権者が権力を民主的にコントロールすることで、それができなければどんな法律でも悪用されちゃうわけだし。もっともひとつだけ左翼を弁護しておくと、戦後60年間ごく限られた期間をのぞけば左翼政党が政権をとったことがない社会では左翼が政府の法運用について疑心暗鬼になるのはある程度理解できることではある。ついでだから言っておくと55年の保守合同の結果事実上政権交代がないという事態になってしまったことが様々な場面で禍根を残したんじゃないか。統一社会党だって結局は「3分の1政党」だったんだからなにも合同することはなかったんだ。保守、中道、左翼の3政党の間で「保守・中道」「中道・左翼」という組み合わせが選択肢として実効的なものとなっていれば・政官の癒着・「政治に関わること=権力の犬」という左翼の小児病・「政府を批判すること=反日」という右翼の自動症などなども今よりずっとましになっていたように思う。歴史認識ないし戦争責任をめぐる混乱もその一因は自民党がイデオロギー的には寄り合い所帯で、それこそ極右から保守本流、さらには社会民主主義者に近い人間までがいるという点に存するんじゃないか。自民党が「大東亜戦争」を正当化するような勢力を別の政党として切断しておけば、国内的には「大東亜戦争」を正当化しようとするパッションを右翼政党によって吸収して飼いならし、対外的には「戦争責任を矮小化しない政府」をアピールすることも可能だったんじゃないだろうか。…まあこの辺は酔った勢いで書いているのでテキトーですが。はなしを戻すと、「共謀罪」についての議論も上で述べた教訓をふまえたうえでしなきゃならんな、ということで現在は情報収集中。反対論としては例えばこんなのがあるわけだが、要するに最大のポイントは「組織犯罪の国際的な活動」を取り締まるのが趣旨といいながら法案では単に「団体」としかなってないのはなぜか、ってところだろう。確かに、例えば暴対法では「暴力団」を「その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体」と規定し「指定暴力団」を都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、暴力団が次の各号のいずれにも該当すると認めるときは、当該暴力団を、その暴力団員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれが大きい暴力団として指定するものとする。1.名目上の目的のいかんを問わず、当該暴力団の暴力団員が当該暴力団の威力を利用して生計の維持、財産の形成又は事業の遂行のための資金を得ることができるようにするため、当該暴力団の威力をその暴力団員に利用させ、又は当該暴力団の威力をその暴力団員が利用することを容認することを実質上の目的とするものと認められること。2.国家公安委員会規則で定めるところにより算定した当該暴力団の幹部(主要な暴力団員として国家公安委員会規則で定める要件に該当する者をいう。)である暴力団員の人数のうちに占める犯罪経歴保有者(次のいずれかに該当する者をいう。以下この条において同じ。)の人数の比率又は当該暴力団の全暴力団員の人数のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率が、暴力団以外の集団一般におけるその集団の人数のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率を超えることが確実であるものとして政令で定める集団の人数の区分ごとに政令で定める比率(当該区分ごとに国民の中から任意に抽出したそれぞれの人数の集団において、その集団の人数のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率が当該政令で定める比率以上となる確率が10万分の1以下となるものに限る。)を超えるものであること。(以下略。第三条)と規定していることに比べると「あれ?」と思わせるところはある。ただ、ここで脊髄反射的に「反対」と言ってしまうと人権擁護法案反対派の轍を踏むことになるので(もう一つ付け加えるなら、政府がその気になれば器物破損とか住居不法侵入といった刑法罪を使って言論弾圧することが可能だということが明らかになった以上)、もうちっと政府の言い分を聞いてみなきゃいかんな、と。28日追記:bewaadさんに勝手なお願いをしたところ早速にとりあげていただきましたよ。例の「団体」云々については第2点として対象団体を国際的な犯罪集団に限定していないことを批判していますが、条約の第5条を読む限り対象団体を限定する場合は組織への参加自体を犯罪とすることを求めており、それについては法制審議会刑事法(国連国際組織犯罪条約関係)部会第1回会議(平成14年9月18日開催)において示された次の委員の見解同様、webmasterは結社の自由を広く制限しかねない参加罪(破防法を代替するより広範な団体規制法になりかねません)よりは共謀罪を導入すべきかと考えます。条約の第3条を持ってくるのは筋違いではないかと。とのこと(下線は引用者)。なお引用文中の「条約」とは「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」を指す。なにかと陰謀論的な見方がされやすい法案だが国際的な要請がきちんとある、というあたり人権擁護法と構図が似ているな。29日追記現在「共謀罪」でググルとトップにくるのがこちら。そこではこんな事例が共謀罪の適用対象となると「シミュレーション」されている。その1 マンション建設反対運動も ある町で緑の多い傾斜地を開発して地下4階地上3階の地下室マンションを建築する計画がもちあがりました。近隣は、高さ10メートルまでの住宅地域です。突然の計画発表に対し、住民の中に反対運動が広がりました。 一方、建築業者は、安全・安心街づくり条例に基づいて建築するマンションの防犯設備について所轄警察署に設計図を提出して相談しました。警察は、マンションの出入り口と四方に防犯カメラの設置を指導しました。 住民の反対運動にもかかわらず地下室マンション建築計画は進行し、工事着工予定が示されました。話し合いを拒否された住民と、建築を強行しようとする業者との間で対立は激化しました。住民は、反対運動の方法を相談しました。建築資材の搬入を阻止する実力行使も検討しました。業者から防犯設備について相談を受けていた警察は、住民の反対運動に注目していました。このため、住民の中にその動向を警察に通報してくれる協力者を作って情報を収集していました。 業者の資材搬入日が決まると住民らは、相談して、大量動員してピケットをはり、資材搬入を実力阻止することを決めました。これが住民の中の協力者によって警察に伝えられました。 資材搬入の当日早朝、住民がピケのために家を出ようとしたとき、全員が組織的威力業務妨害共謀罪(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律3条7号)で逮捕され、反対運動は挫折しました。そして、地下室マンションは、業者の計画通りに建築されました。その2 労働運動も ある会社では、リストラの一環として一つの工場を廃止して、別の遠方の工場へ縮小統合することになり、一部の労働者の配転と残りの労働者の解雇を決めて労働者の選別に入りました。 会社の一方的なリストラによる配転と解雇に反対して、労働組合は、他の労働者・労働組合の支援も受け、争議行為に入りました。こうした労働者の動きを警戒した会社は、密かに組合事務所に盗聴器をとりつけました。 団体交渉では、社長が出席しないことから交渉が進展せず、解決の道はなかなか見いだせませんでした。労働組合は、進展しない交渉の打開を図るため、社長の出席を強く求めたところ、ようやく社長の出席が決まりました。そこで労働組合の執行部は、社長が出席した団体交渉では、組合員を待機させ、長時間になろうとも交渉の目途がつくまで社長の退席を認めず、団体交渉を継続することを意思確認して団体交渉に臨むことを決めました。 会社の勤労担当は組合事務所での会話を盗聴することによって、この動きを知りました。そこで、日頃から防犯協会等でつきあいのある所轄警察署に相談しました。 警察は、組織的に社長を監禁することを共謀しているとして、組合執行部の役員を組織的監禁共謀罪(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律3条4号)で逮捕しました。 執行部が逮捕された労働組合では闘うことはできず、会社の提案をそのまま受け入れざるを得ませんでした。「その1」の場合、「団体」と見なされるためにどの程度の組織性が要求されるのかという疑問は残るが、とりあえず「こういうことも可能か?」と言われれば可能ではあろう。しかし、もし警察が本気で反対運動なり労組を弾圧しようとするなら、共謀罪を適用するなどというのはナンセンスだ。というのも、共謀罪の量刑は該当する犯罪を実際に行なった場合よりも(当然予想される通り)軽いんだから。「その1」の場合の「組織的威力業務妨害(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律 第3条7号)」は「六年以下の懲役または五十万円以下の罰金」なのに対して、「共謀罪」なら「二年以下の懲役」。「その2」にしても行為に着手してから検挙すれば「三月以上七年以下の懲役」を食らわすことができるのに共謀段階で検挙してしまうと「二年以下」になってしまう。どちらも事前に警察が情報を得ているという想定なのだから、行為に着手したタイミングを見計らって逮捕すればより重い罪を負わせることができるわけだ。通常の犯罪捜査であれば「被害が出る前に検挙できる」ことに大きな意味があるが、労働運動や住民運動の弾圧が目的なら(そしてスパイを送り込んでいたりするなら)行為に着手してから逮捕しても「被害」は実質的にはなく(たとえば団体交渉が始まって1時間ほどで社長に「帰りたい」と繰り返し叫ばせ、それを労組が拒否した時点で検挙すればよい)、より効果的に弾圧できるわけだ。どう考えても上の二つの「シミュレーション」の場合、問題なのは警察がマンション業者なり会社側に一方的に肩入れしていることの方であって、共謀罪そのものではない(だって、どうせやる気だったわけですから、共謀の段階で逮捕された分懲役が軽くて済むわけだ)。つまり、仮にこの法律改正案が「悪用」されうるとすれば、「ほんとは実行する気がなかったのに冗談で話し合った」ようなケースに対してのみであって、「ほんとにやる気で相談した」ケースについては(犯罪の防止ではなく市民活動の弾圧が目的なら)実行させてから検挙、という筋書きになるはず。というわけで、少なくとも上記「シミュレーション」に関する限り、為にする反対論という感想を抱かざるを得ない。ちょうど「北朝鮮批判が人権擁護法で人権侵害にされる」という「シミュレーション」に対して「どうせなら名誉毀損で起訴するんでないの?」と思ってしまうのと同じ。それから、bewaadさんの表現をお借りすると「法的なグローバライゼーション」が起こっている今日、右であろうと左であろうと法律に反対するには新たな戦略というか方法論が必要だろう。実際に政府に後ろ暗いところがあってそれを暴露できれば「ちぇ、ばれちゃったらしかたない」って感じで撤回させることができるかもしれんが、国際条約に沿って作成された法案に従来の手法で反対しても政府にしてみれば「だってあんたたち条約に加入するときには文句言わなかったじゃないか」ってかんじだろうし。おつきあいがある範囲で他にこのトピックをとりあげているのがトニオさん。基本的には同じスタンスですかな。
Posted: 日 - 6月 26, 2005 at 11:56 午後
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