統計の嘘、無意味な統計


嘘には3つある。普通の嘘、真っ赤な嘘、そして統計だ。(マーク・トゥエイン)

少し前のニュースになるが、内閣府の世論調査で「低い出生率が続くことで日本の将来に危機感を「感じる」と答えた人は76・7%に上った」との結果がでたとのこと。内閣府のホームページを見てみると新聞等で報道されたもの以外の設問もあり、例えば「日本の出生率は欧米諸国と比べると比較的低い数値となっているが、このことについてどう考えるか」という問いに対して「欧米諸国が進めている施策の効果があったと考えられることから、こうした国で行われている施策を日本でも取り入れるべきである」と「出生率は、各国の国民性や結婚・出産行動などによって違いがあると思うので、欧米諸国と同じ施策を日本で行っても効果があるとはいえない」がそれぞれ約3分の1、という結果がでている。いったいこのような意識調査をなんのためにやるというのか、まったく意味不明である。まさか「不安を感じる」と答えた人々のパーセンテージが低ければ少子化対策をネグるつもりだった、わけではあるまい。専門家(この場合なら人口学者、経済学者、社会学者、教育学者などが該当するだろう)の間での見解の分布を調べるというならともかく、国民の大半が「不安」だと答えたからといって実際に事態が深刻だということにはならないし、逆に大半が「不安ではない」と答えたからといって深刻でないということにはならない(もちろん、事柄によっては人々がそれについて持つ意識がその事柄へと反射的に影響することもあるが)。欧米諸国との比較に至っては、必要な情報をもっていない人間の意識を調査してもなんの意味もない。例えば、ここでは「欧米諸国」をひとくくりにしているが、実際には出生率が2を越えるアメリカのようなグループ、2を割ってはいるが比較的2に近い数字で安定しているフランスなどのグループ、そして日本のように1に近い数字へと低下し続けているグループとに分けることができる。そして日本と同じグループに属するのはイタリア、ドイツ、スペインといった、旧枢軸国ないしそれに似た政治体制を経験した国である。これを単なる偶然と考える専門家はまずいないのであり、こうした情報を抜きにして国際比較についての感想を尋ねても税金の無駄遣いというものであろう。こんなものを、なんのコメントもなく政府の発表そのままに報道する新聞の怠慢は許しがたい。勘ぐるならば、「体感治安」の悪化を口実にして監視カメラの設置を推進したように、なんらかの施策のてこにでもしようとしているということになるが…。

もう一つ。これはもともと「しろはた」で見かけたネタだが、結婚情報会社「オーエムエムジー」がおこなった三大都市圏の独身女性の意識調査、について。それによれば「結婚を焦る古風な大阪、自立心は強いが寂しい東京、親元で自由を楽しむ名古屋」という傾向が見られるとのこと。しかし統計調査の基本は母集団の統制である。もし三大都市圏間の比較をしたいのなら、それ以外の要因についてはそろえておかなければ調査として意味がない。いったいどのようなやり方でサンプリングをしたのかすら明らかにされていないわけだが、素人でもわかるのは東京に較べて大阪、名古屋では親元で暮らしている独身女性の割合が高いこと、住宅事情の違い、景気の善し悪しが回答に影響しているであろう、ということである。サンプリング数が少なく、もし地域間で平均年齢に有為な差があればそれもまた影響する。これまた、独自の裏付けに基づくコメント抜きでこうしたニュースを流すのは、デマゴギーに加担するようなものだ。




Posted: 土 - 10 月 16, 2004 at 12:29 午前          

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