ミレトスの哲学者たちに続いて考えるのは、ピタゴラス学派と呼ばれる人たちです。
ピタゴラスという名前については、私たちは中学校の数学で教えられましたね。あの、ピタゴラスの定理(三平方の定理)を考えた人です。
もっとも、このピタゴラスの定理に関しては、彼自身が考えたのか、それとも彼の弟子によるものかは、はっきりしていません。ピタゴラスは一つの集団を作り、その人たちがピタゴラス派と呼ばれましたので、この名前があります。
ピタゴラスは、紀元前6世紀の終わりから前5世紀にかけて活躍した人で、ギリシャのサモス島の生まれだと言われています。
彼は、ギリシャ神話に登場してくるオルフェウスを信じる一種の宗教団体を作り、その集団を指導しました。
宗教団体といえば、私たちは「○○真理教」のようなものを思い浮かべるかもしれませんが、それとは全く異なります。古代ギリシャでは、ギリシャ神話に登場してくる神々を信じるのは自然な行為で、「○○真理教」のように、意図的に団体を形成したのではありません。
それにしても、何故、オルフェウスなのか、これは僕にはわかりません。神話のオルフェウスは、太陽の神アポロンから竪琴を習った詩と音楽の神です。
彼は愛する妻を亡くし、黄泉に下り、その悲しみの竪琴をかき鳴らし、これに感動した黄泉の王が、地上に帰るまで決して振り向かないとの条件で彼女を帰しますが、まさに出口で、その約束を守れなかったために、彼の妻は再び黄泉に帰った、という話で有名ですね。
この神話には言いしれぬ悲しみがあるように思うのですが、ピタゴラスがその悲しみのオルフェウスを信じたのかどうか、あるいは芸術の神を、何故信じたのか、タイムマシンでピタゴラスに会い、直接聞くしかないのかもしれません。
あるいは、神々を信じるのが自然な当たり前のことだとしたら、特別な理由などなかったのかもしれません。
ともあれ、彼はオルフェウス教の宗教思想を身につけ、特別な戒律を守る団体をつくり、その地方の政治勢力の中心になりました。
このピタゴラス教団(派)では、魂の浄化の手段として学問の研究をし、音楽を愛好しました。
音楽療法というのがすでにここにありますが、学問を魂の浄化手段と考えるのも、神話と科学が調和している感じがしますね。なぜなら、ここで言われている学問とは「数学」のことだからです。学問は、徳を見出し、徳は魂を浄化する、と位置づけたのです。
私たちの自然科学の知識は、私たちの魂を浄化させるような知識なのか、少し考えさせられるところです。
ピタゴラス派の人々は、宇宙にあるすべてのものは「数」で表すことができる、と考えました。見えるものはもちろん、見えないもの、たとえば音も、弦を弾くときの音の違いは、弦の長さで表される。すべては「数」で表されるから、この世界の根源は「数」であり、世界は数の組み合わせである、と主張したのです。
そして、これまでの算術的なものから理論数学を作り上げたのです。先のピタゴラスの定理はその産物でした。この派に属したテオドロスという人は、無理数の理論を発展させました。
私たちが習った、あのルート(√)の計算は、彼が生みだしたものなのです。「数」を音楽にも適用し、ピタゴラス音階と呼ばれる最初の音階も作りましたし、医学にも適用し、この派のアルクマイオンという人は解剖学の祖とも言われています。
今日の重要な基礎知識となっているピタゴラス派がもたらしたこれらの自然科学の知識の背後には、「世界は数である」という世界観が横たわっていたのです。
ピタゴラス派の人々は、世界は数で成り立っており、数ですべてを表現できると考えていました。そして、数字に特別な意味さえ与えようとしました。現代のピタゴラスたちも、コンピューターで世界を表現しようとします。
現代のコンピューターは、まさに「数の世界」ですね。基本的には0と1の組み合わせですべてを表しています。ただ、コンピューターが、すべての世界を表示することができたとしても、これを操作するのは「人間」です。
古代ギリシャの賢人たちは、まだそこまで向かいませんでした。彼らを支配したのは「なぞの合理的解き明かし」でした。近代の知識人たちもこれと同じ道を進みました。現代は、その一つの過程と結果でもあります。
ギリシャの賢人たちは、まだまだ思索を重ねます。次回は、その後の世界観の視点の変化を、その後の思想家を見ることによって、考えてみたいと思います。
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☆ピタゴラスの定理には、まだ驚かされることがあるのです。たとえば、三角形の辺の比が3:4:5の時に、この三編で囲まれる三角形が直角三角形となることについて、バビロニアでもエジプトでも、経験的によく知られていたことですが、ピタゴラス派が見出したこの定理を証明するために、これまで100以上もの方法が考えられています。
☆それにしても、ミレトスの哲学者たちからあまり時を経ないのに、ピタゴラス派の人々が「数学」を用いたことにより、自然科学の知識と方法はいっきに飛躍した観がありますね。
☆「世界は数である」。あなたはこの考えをどうおもわれますか。私たちは、時々、今でも、たとえば、金融や経済、あるいは政治の世界で生きている人の中に、これと同じ思考をする人に出会いますね。「お受験」もそうかもしれません。