今回は、第一回目ですので、いわば、「序文と目次」に当たる部分から始めたいと思うのですが、初めに、なぜ「西洋」を取り上げるのか、を少し簡単に述べたいと思います。
何故、西洋を問題にするかと言えば、現代の私たちの生活が、その全般に渡って西洋の影響を受けてきたからです。
西欧の土壌で育まれてきた科学技術と文化は、およそ300年の長きに渡って世界を導き、支配してきました。
特に、日本社会と日本人は明治維新と第二次世界大戦後の社会復興という歴史的な二つの大きな大転換を、西洋文明との接触、あるいは支配によって経験しました。
法や社会の構造的基盤、教育、生活習慣やライフスタイルにまで、良きにつけ悪しきにつけ、「西洋的なもの」を受け入れ、浸透させてきたのです。かって、「文化的な生活」と言えば、「西洋的な生活スタイル」をさした時代さえありました。
それ故、意識的であれ、無意識的であれ、現代日本人のものの考え方や感じ方の底流には、たとえ「東洋的なもの」の土壌の上であったとしても、西洋のものの考え方が大きな河として流れているのです。
西洋の文化は、一時期、その社会的影響の衰退に伴って、没落したかのように見えました。多くの先見的な知識人たちは、西洋の没落を指摘しました。そして東洋的なものの見直しが図られました。
しかし、西洋文化とその思想は、かなり強大な基礎づけをもっており、21世紀を目前にして、再び、コンピューター技術と遺伝子工学の発達に伴って復興してきています。
ただ、今後は、西洋とか東洋とか、そうした古典的な区別ではなく、もっと混在とした姿で、人間の文化全体が進んでいくのかもしれません。「複合文化」という言葉を僕は使っています。
それだからこそ、現代の私たちの精神構造を探る時、その一つの源流としての西洋のものの考え方(西洋思想)を分析することは重要な意味を持っていると思います。
そして、日本人が持つ「東洋的なもの」の故に、自らの「西洋的なもの」をある程度客観的に位置づけ、その問題点も明白にすることが可能であり、それによって現代世界全体の問題点とその克服の道を示すことも可能となるように思われるのです。
その意味で、ここでは、自らの思想の源流を探るという視点で、それぞれの問題別に西洋思想を初めから検証し、新しい未来への思想の礎としたいと思います。
一応、僕が今ここで考えています項目を目次ふうに記せば、 以下のようになります。
第一は、宇宙(世界)と人間です。これは、人間の最初の思索的問いですが、私たちがこの世界と自分自身をどう理解するかは、未来にとっても重要な問題となります。
第二は、人間と倫理です。何が善で何が悪かの基準は、今日では曖昧なものになりました。日常生活のこともそうですが、特に臓器移植や遺伝子操作が可能となり、クローンの研究が進められるほどの科学技術を持った私たちにとって、この問題は「命を問う」問題です。結婚・死などの具体的ことがらもあります。人間関係のあり方を根本的に考えたいと思います。
第三は、人間と社会・国家・集団・組織の問題です。人間は社会的存在ですが、その人間が作る集団は、いったいどういう組織・社会であるべきなのか。また、人間集団の社会的最小単位としての家族、家庭の問題もあります。
第四は、人間と教育です。「教育とは何か」、「学校制度とは何か」、「何故学校に行くのか」など、今ではその根本的なことが忘れられ、混乱している現状を考える必要があります。
第五は、知識と言語です。人間にとって、そもそも知識とは何か、知識を支える言語はどういう構造をもっているか、精神と物質の問題も考えたいと思います。
そして最後が、人間の根本概念としての「愛」です。
これらについて、それらが歴史的にどのように考えられてきたのか、また、それを考えた人はどういう人であったのか、を見てみたいと思います。
ここでは、それらの項目別に、古代ギリシャ思想から現代思想に至までのそれぞれの考え方を検証していきたいと思っています。
☆今回は、少し堅い話ばかりになりましたが、たとえば、ソクラテスはあまりいい男ではなく、いつも奥さんに怒られていた恐妻家であったとか、サルトルはたくさんの女性と性関係をもったとか、そんなエピソードも紹介したいと思っています。
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第一章
宇宙(世界)と人間
第二章
人間とその位置づけ
第三章
人間と社会
第四章
人間と教育
第五章
知識と言語