ROCKin' ON  '99.2月号(2000.1.3UP)

 

P165;22名の写真入り告白インタビュー。Benの写真は96年来日公演のポスターの写真からカットされている。〈表紙;oasis〉

 DO YOU REMEMBER THE 1st TIME? 
ロッキング・オン年に一度のハメハズシ無謀企画 〜あなたの初体験を教えてください〜


これは、本紙通訳肉弾四勇士がインタヴューの度にイヤな顔をされながら集めたロック・ヒューマン・ドキュメンタリー企画である。なぜ初体験なのか。それは初体験にロック表現のすべてが詰まっているからだ。コトに及ぶまでの愛(欲)と夢(精)と見栄。いかに他者とつながるのかのコミュニケーション問題。初めて他者の前で我が身をさらけ出すときの不安、驚き、悦び、失望。人によってはその後の心の傷。初体験こそが表現衝動の原点であり、これを問わずしてロックは語れないのだぁ……。と自らに言い聞かせながら集めに集めた衝撃の告白22選。

ベック

ベック)しょ、体験?おっとっと……これ、とぼけちゃだめ?あっ、ベン(※うわぁーっ、どうしてこういうタイミングで現れるんだツアマネ)。ねえこの人、僕の初体験の話を聞き出そうとしてんだぜ

ベン)それはだね、まさに今これから。彼と僕。見たい?

●見たくない見たくない(笑)。いやー、みんなに聞いてんですよ。乗った船でぜひ。
ベック)ほんとにどのアーティストもちゃんと答えてるの?いや、別に話したっていいんだけどさ…

ベン)僕はこいつの一番最近の性体験について聞きたいね。そっちの方が絶対おもしろい

ベック)いやぁ、僕ってまだ第二次性徴期の途中だからさ、そこまでいってないんだよ……ははは……最初……最初のとき、と。それはだね。時刻はうしみつどき、新月の夜……えへへ……精神という名の帆船が思春期の暗い河を下り降りて、長い夜の凪の中で、4階の未婚の淑女のものに辿り着いたんだ……ともかく憶えてるのはね、僕、蝋燭を消そうとして手をやけどしてさ。蝋がそこら中に飛び散って指の上で凝固して……彼女は懐の広い女性だったよ。僕より経験があって、でも優しくて、礼をわきまえた人で……朝ごはんつくってくれたよ。あははは

●とってもラッキーなパターンじゃない?
ベック)うんうん。そう思ってる(笑)


 

ベン・フォールズ

ベン)……“アイ・ワナ・ビ-・ア・カウボーイ”って曲は日本でも流行ってた?

●えーっと……知らないんですけど……。
ベン)アメリカでは大ヒットしたんだけどさ、すっげえくだらない曲なんだ。♪アイ・ワナ・ビー・ア・カウボーイ&ユー・キャン・ビー・マイ・カウガール(俺は憧れのカウボーイ/そしておまえはカウガール)ってな調子でそれがコトの最中ずっと流れてたのを憶えてる

●あんまリロマンティックなものじやなかったみたいですね。
ベン)最初はロマンティックにことが運んでたんだ。だけど場所が大学の寮だったのがまずかったね。ホールからその力の抜けるような曲が流れてきてさ、思わず吹いちゃったんだよ(笑)

 

企画・構成=鈴木あかね、恥をかかせた人々(通訳)=高見展、鈴木あかね、児島由紀子、山下えりか

 

P180・181;モノクロ見開き2ページ。Benが眼鏡を持ち物思いに耽っている写真。〈表紙;oasis〉

みんなどうしてポップであることを恐れるんだろう?

ベン・フォールズ・ソロプロジェクトその名もフィアーオブポップ。お茶の間から宇宙まで突き抜けた、ベン船長の果てしないポップ航路


 パンキッシュで壊れたピアノを弾きまくり、めまいのするよなポップなメロディに「八の字眉の困った君」な物語で、今やお茶の間のサウンド・トラックにもなり得てしまったBF5。ピアノの、ポロロンとこぼれる郷愁、微妙な半音が紡ぐ哀愁。賢くもずる賢くもあり、カジュアルにも、おしゃべりにもなるその手さばきで、ガシャメシャ・ロックばかり聴いてるわたしまでも虜にするそのポップな世界。
 が、そのベン・フォールズにまんまとやられてしまった!フィアー・オブ・ポップ名義の彼のソロ・アルバム『Volume 1』では、そんなおセンチ・ピアノ・マンはどこにもいない。驚いて、テープを確認してしまったくらい、アルバム一枚がまるで映画の架空サウンド・トラックとでも言えそうな、チープでモンドでスペイシーな世界が、ツクツクと鳴るリズム・マシーンにのって繰り広げられているのだ。
 実験と遊びのアクシデントで、ポップの領域をその両手でぐわしっと広げた余裕顔のペン。その頭の中には、たくさんの可能性がつまっている。

●うわっ、やられた!の一言です。くるくるとテレビのチャンネルを替えてるような感じで、とにかく、とてもスリリングな作品です。
「そう? ありがとう」

●そもそも、このソロの計画はいつ頃からあったものなんでしょう。
「ぅ−ん……よくわからないなあ。ただこのアルバムを録った時って、なぜだかわかんないけどすごく気が大きくなっててさ。今の自分には何でもできる、って気がしたんだよね。今もそういうとこはかなりあるんじやないかと思うけど(笑)。とにかく、インストゥルメンタルは新たな可能性の扉を開けてくれるんじゃないかって気がしたんだ」

●BF5で優れたポップ・クリエイターであるあなたが、今回のソロ・プロジェクトを「FEAR OF POP(ポップヘの恐れ)」と名づけたのはどうしてなのですか。
「ん−……もともと“フィアー・オブ・ポップ”ってのは曲の題名として考えてたものなんだ。でも何となくその名前が気に入って、それでプロジェクトの名前にもそれを使うことにしたんだ。世間の人ってさ、ポップであること、ポピュラーであることを恐れる傾向があるじゃない? ポピュラーなものを好むのは低俗だ、みたいな。他人ょりいち早く情報を得たがって、他人にその情報が浸透し始めたら『そんなのダサいぜ』とか言ってみたり。そういうの、僕は大嫌いなんだ。それをバカバカしいって思う気持ちがどっかにあったから、そういう心理を皮肉るような名前がつけたくなったんじやないかな」

●っていうのは1曲目の“フィアー・オブ・ポップ”で、ダークなベースをリズムにハードロッカーばりの声で「フィアー・オプ・ポーーップ!」なんて絶叫しているから、てっきり、バンドに何か不満でもあるのかと……。
「アッハッハ、いや、ないない。あれは単に叫んでみたかっただけの話でさ。楽しいんだよ、思いっ切り叫ぶのって(笑)。別に欲求不満なわけじやないから安心して。BF5のアルバムじゃ僕は曲作りに専念してて、そういうことをする機会がないからね、すごいおもしろかったよ」

●それにしても、97年にBF5の2ndアルバム『ワットエヴァー・アンド・エヴァー・アーメン』が出て、その後ツアーや、『GODZILLA』のサントラに参加、この夏(98年)にはフジ・ロック出演と、これでもかってくらい忙しかったんじやないですか?
「いやー、実際なかったね、時間は(笑)。どうやってやりくりしたもんか、自分でも不思議だよ。基本的にはひと月休暇をとって、その間に録ったんだけど……とにかく時間が限られてたからさ、ガーツと一気に録り上げたんだ。仕上げの方は、その後のオフの時間を使って少しずつやってったんだけど」

●BF5ではピアノでメロディや曲を作っていくと思うのですが、この作品は全く違ったアプローチですよね。
「うん、全く逆にしてみたんだ。まず最初に演奏して、そこから曲を作り上げていくつて感じでね。その方が自由な部分が多いだろ?いつものように曲を先に書いてそれを演奏するっていう形だと、どうしてもそのプロセスの間にあれこれ手を入れる部分が多くなる。だけど先に何も考えずまず弾いてみて、そこから曲をまとめていけば、レコーディングしたものには自分が弾いたままの音、自分の耳で聴いた通りの音が残ることになるんだ。とにかく、曲よりもサウンドに意識を集中してみたかったんだ。いつもと正反対のプロセスを経験してみることで、また曲作りの新たな知識を得られたという気もする」

●なるはど。例えばどんな?
「う−ん、それは曲を聴いてもらうのが一番わかりやすいと思うんだけど……曲作りを何もかも自分の意志でコントロールしようとしないで、成り行きにまかせることも時には必要なんだ。ミュージシャンにはどうしても『こういうものを作りたい』っていうイメージや理想があるから、流れに身を任せてしまうことはなかなかできない。でもレコーディング中に起きたアクシデントが、アルバムの魅力の一部になることも往々にしてあるんだよ。『Volume 1』は、作品自体が一つの大きなアクシデントだと言える。音楽の魔法が生まれる瞬間をそのまま記録したのがこのアルバムなんだよ」

●では詞を「語る」という手法も?
「それもやっぱり、より自由な手法を求めた結果だよ。詩の朗読というのは、ただその言葉の持つエネルギーをそのまま放出することができるんだ。同じ言葉を使っていても、それを音にのせて歌詞にしてしまうと、その言葉の持つエネルギーが全くなくなってしまう場合もある。ものすご−く悲しい言葉に、思いっきりハッピーな音をつけちゃうことだってできるだろ?(笑)。すると本来言葉の持ってた悲しさはどっかへ飛んでっちゃうわけさ。そういうのもおもしろいと思うけど、言葉自体のエネルギーをそのまま出していくのもいいんじやないか、ってね」

●確かに。詞のおもしろさが際立ってます。
「うん、だろ? 実際、メロディが歌詞を殺しちゃうことってよくあるんだよね。今ちょうどスタジオでBF5の次のアルバムの曲作りをしてる最中なんだけど、時々歌詞が出てこなくって、歌詞の代わりに♪ラララララ〜って歌ってることがあるんだ。その時はいいメロディだなって思ってたのに、何とか歌詞をひねり出してつけてみたらこれがめちゃくちゃ合わなくて、メロディまでカスに思えてきちゃったりすることってあるんだよ(笑)。逆に、カスだと思ってたメロディにいい歌詞をつけたら、とたんに名曲に聞こえてきたり」

●(笑)。今回はちょっと耳馴染みのない楽器も使つていますよね。ダルシマー、メロトロン……。
「もともと僕は、子供の頃はティンパニみたいな打楽器をやってたんだ。だから、物を叩くのは大得意なわけよ(笑)。ギターもベースもピアノもみんなそういう要素があるけど、何かもっと違う音のするものが弾いてみたくなってね。それで2、3カ月かけて、ちょっと変わった音のする楽器を集め始めたんだ。でも、楽器のように聞こえるけど、実は単にテープ・エフェクトで作り出した音も結構あるんだよ。ディレイを通したり、テープを逆回しにしたり、ディストーションをかけたり……楽器みたいに聞こえるものの中には、実は楽器じゃないものもいっぱいまじってるんだ。一つの音をディレイにかけてスピードを変えていろんな高さの音を作り出して楽器みたいに使ったりとか。そうすれば余分な体力を使わなくてすむしね(笑)」

●なるはど(笑)。ディレイでね。
「そう。実に驚くべき機械だね。一声ワオ!って声を入れたら、何時問でもず−っとワオ!ワオ!ワオ!ってディレイし続けてるんだから(笑)。で、しばらくほっといてまたボリュームを上げたら、オートバイがうなる音みたいになってんの。おもしろいからそれも使っちゃえって入れたりして」

●“コップス”や“スロー・ジャム'98”、“インタールード”など、まるで60、70年代の刑事ドラマ、サスペンス、ロマンスというちょっとモンドで、スペイシーな雰囲気を持ってますが、子供の頃は結構テレビっ子だったとか?
「……テレビはあんまり観なかったな。でもテレビってアメリカでは文化的にすごく大きな力を持つものだから、どうしてもその影響からは逃れられないんだよな。だから確かに今度の作品にもテレビの影響は大きく表れていると思う。特に“コップス”は、刑事もののテレビ・シリーズのテーマみたいに聞こえるんだよね。作ってるうちにふと気づいて、じゃあもっと強調してやろうと思って、ついでに題名も“コップス”にしたんだ。たまたま作り始めたらそういう音が出てきて、後から『ああこれって刑事ものみたいじゃん』って気づいたんだ」

●でも“イン・ラヴ”では『スター・トレック』のキャプテン・カーク(ウィリアム・シャトナー)も参加していたりして。やはり映画やテレビのヒーローは大好きだったんじやないですか?
「うん、『スター・トレック』は大好きだった。シャトナーについては、子供の頃に、彼の出した『The Trancefirmed Man』っていうアルバムがすごく気に入ってたんだ。彼が音楽にのせて朗読をしてるんだけど、音楽をバックに流れてくる彼の声の響きがすごくよくてね。前からその声を使ってみたいと思ってたんだよ」

●それで熱いファンレターを書いたんですよね。
「そう。それが幸運にも彼の目にとまったんだ。一緒に入れて送った音のサンプルに彼が興味を持ってくれたらしくて。はんとにラッキーだったね

●憧れの人物との作業はいかがでした?
「興奮したよ!すごくいい人で、しかも仕事打に関してはプロフェッショナルでさ。一緒に仕事をしてみて、前ょりもっと尊敬するようになったね。ほんと、彼の仕事の仕方には感銘を受けたよ。自分の名声にかまけることなく、本当に真剣に仕事打に取り組むんだ。ほんとに気軽な感じで昔馴染みみたいにぶらっと入ってきて、素晴らしい曲を仕上げてくれちゃった、みたいな、そんな感じだったんだ(笑)」

●では、最後に。現在、春に予定されているBF5の新作レコーディング中とのことですが、これらはどんなものになりそうですか?
「ん−……今はまだ何とも。たぶん、フィアー・オブ・ポップを聴いて驚いたとしたら、今度のBF5の新作にはもっと驚くことになると思う。とにかく、前の2枚とは全く違ったものになることは確かだよ。2ndは、作ってる時も『しんどいなぁ』って感じでさ。曲調もバラードが多くて、かなりダウナーなアルバムだったような気がするんだ。でも今度のアルバムは、もっと複雑に入り組んだものになるはずだよ。一つのコンセプトを持った物語がアルバムの中を一本の糸のように貫いているんだけど、そこに無意識の部分から出てきたものがたくさん織り込まれているような感じ、っていうか。とにかく、イージー・リスニング爪のアルバムにはならないだろうと思うよ」

●う−、楽しみ。早く驚いてみたいです(笑)。
「まあ待ってろって(笑)」

 

吉羽さおり 通訳=松田京子

 

 


 

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