郵政民営化の素朴な疑問


小泉純首相のかねてよりの目標であったものが、ついに実現しそうな動きになってきた。例に漏れず民営化が大好きな猪瀬直樹氏や民間企業が大好きな松原聡氏などが賛成を表明している。意外なことに森永卓郎氏や紺屋典子氏は安直な民営化論には反対だという。私には民営化のメリットがよく見えてこない。

猪瀬氏みたいな安直な民営論者の話は聞いていてもさっぱり良いところが見えてこない。愚かなことにJRやNTTを民営化の成功例と本気で思っておられるらしい。
結局JRは多くの赤字路線を第三セクターに押し付け、長期負債の多くを清算事業団に丸投げした。そして第三セクターのほとんどは赤字のままで、多くの税金が投入され続け、生産事業団はバブルと言う好機にも所有している土地を売却できず、債務の縮小どころかむしろ増大に貢献した。結局は11年もかかって、試算を食いつぶすこと以外何も出来なかった上に、返済不能となった長期負債の全てを国の会計に押し付けて清算事業団は解散した。結果として税金でばく大な赤字を補填する羽目になったのだ。これだけ見ても全くうまくは行ってない。もしも国鉄清算事業を民営企業にやらせれば遥かにうまくやったてのけたのかもしれない。
一方のNTTはといえば電電公社時代の余剰人員を延々と抱え続け、バブル崩壊後も頑張って余剰人員を養い続け、ついにせっぱ詰まるまでリストラをしなかった。余剰人員を抱え続けたツケは世界一高い通信費と研究開発費の圧迫、インフラ整備の遅延と言う形で私たち一般市民に押し付けられた。さらにISDNをお役所ばりの頭の固さで推し進めた結果、高速通信化はさらに遅延。日本のIT化は遅れに遅れた。このお役所並に愚鈍な企業のどこがうまく民営化したと言うのだろうか?ISDNの世帯に平気で「貴方の電話が2回線になって高速通信の出来るADSLに加入しませんか」と営業してくる顧客管理のなっていない会社のどこがうまく行っているのだろうか?ほぼ独占状態のまま民営化してしまったので、企業努力などする気がほとんど無く、サービス改善も分かりやすいところしかやる気が無い、リストラを迫られるとしぶしぶ地域で分けると言うアホな分割をし、その結果ますますインフラ整備がやりにくくなる。そんなNTTの民営化のどこがうまく行ったと言えるのか?合理的に答えてほしいものだ。
つまるところ民営化によって我々市民受けた恩恵は、猪瀬氏のような民営化マンセーで官が大ッ嫌いの人が言うほどのものとは思えない。

郵政民営化についてはそもそも順番が違う気がするのだ。民営化よりも財政投融資に無意味に流れていく資金の流入を止めるのが先なのではないか?独立行政法人となって延命が決定した特殊法人を再編し、リストラするのが先なのではないか?
郵政民営化を叫ぶ人は必ず財政投融資を引き合いに出して、民営化をすればそんな馬鹿げた投資はやめるはずだと言う。本当にそうなのだろうか。もしもバブル期に銀行など金融業界がバカな投融資を繰り返さなければ今の金融再編劇もこの長い不況も無かったはずだが?民間企業は時に「儲け主義」に走って道を見失うことがある。財政投融資は法律で律すれば止めることが出来るが、民間企業の謝った判断を押し留める法律は無い。民間企業になった郵便貯金が謝ったばく大な投融資をしない保証は無いのだ。また、先のNTTの例を考えてみても染みついたお役所体質はなかなか改善されない。もっと機敏に動くべき時に動けなかったり、大胆なリストラクチャーが必要な時に出来なかったりする。まして図体がでかくなればなるほどこの傾向が顕著になる。
穿った見方をすれば、小泉純首相の民営化は独立行政法人に延々と資金を流すためとも受け取れる。たとえ極赤字の企業であっても民間企業が自己の判断でその企業の将来性を信じて融資をし続けることを辞めさせる手だては無いのだ。そしてその資金か焦げ付いたところで、他で補填できれば問題にならない。我々預金者が経営に口を出せるわけではない。全体として問題にならない額の不良債権であればやり放題になる可能性が逆に生じてくる。特殊法人の中味にはいっさい手を付けずに独立行政法人としての延命を図った小泉純首相のことである。これぐらいのことはやりかねない(かもしれない)。この点に明快にそんなことは絶対に無いと答えてくれる人は今のところいない。

爆猫亭

Posted: 火 - 10月 19, 2004 at 10:56 午後