特別企画

007変身リスト 完全版




 今年もまた、四月一日がやって来たのであった。

 一年前、エイプリルフール特別企画などと調子に乗って『007変身リスト』なる一文を発表して読者の皆様に不愉快な思いをさせてしまったことは、今となっては痛恨の極み、我が人生最大の汚点と言っても過言ではない。
 こいつは突然何を言い出すのかと思われるかも知れないが、私もこの一年で、期待を裏切られることの辛さ寂しさを実感し、今更ではあるが、ささやかながら人の痛みのわかる人間になったのである。
 思い返せば、一年前の私は、他人(読者)の期待は裏切ってナンボ、をモットーに、いかにして引っかけるか、いかにして誤魔化すか、いかにしてはぐらかすか、いかにして裏切るか、そんなことばかりを考えていた。
 しかし、今や私も痛みを知る人間であり、いささか遅きに失した感はあるが、今後は、悔い改めて心を入れ替え、清く正しく美しく、全力を尽くして可能な限り読者の期待に応えることで罪を償いつつ余生を全うすることを堅く心に誓った次第である。そういうことをここに書く必然性は特にないような気もするが、別に減るものではないので、この場を借りて表明するものである。

 んで、心を入れ替えたってことで、私の過去の悪逆非道は入れ替えた心と一緒に水に流すことにするが、とは言え、一年前の『007変身リスト』だけは人間として許されざる行為であり、いやもちろん、皆様の「そんなことは気にしないで下さい」という温かいお言葉は(届いてないけど)ありがたくお受けするが、このサイトの記事の中でおそらくもっとも読者の期待に応えなかった企画であると思われる『007変身リスト』に関しては、やはりきちんと決着を付けたい、言い換えれば、読者の期待に沿う形で改めて発表したい、と決意したのである。(念のために書いておくが、今回の“特別企画”、“エイプリルフール特別企画”ではなく、“007ことグレート・ブリテン誕生日特別企画”である)


 さて、心を入れ替え、読者の期待に応えるという人生の新たな目標を見いだした私にとっては、三日三晩徹夜してビデオやらDVDやらを見返してホンモノの「007変身リスト」を作成するぐらいのことは朝メシ前であり(三日三番徹夜して四日目の朝に朝メシを食うのである)、実際、すでに三日三晩徹夜して(朝メシも食って)ビデオやらDVDやらを見返してホンモノの「007変身リスト」は作成済みであり、あとはサーバーにアップするのを待つだけという状態である。これで私も肩の荷を下ろして借りを返してようやく真人間としての第一歩を踏み出せるような気分であり、もう間もなく読者の期待に応えることができると思うと感慨もひとしおである。
 一年間も待たせた上に前置きが長くなってしまった。それでは、ホンモノの「007変身リスト」をこの場を借りて披露……












 ん?



 少々お待ち頂きたい。


 うかつにも失念していたが、よく考えてみると、“読者の期待に応える”ために一番重要なのは“読者の期待”を知ることであった。“読者の期待”を知らずして“読者の期待に応える”など笑止千万である。
 では、『007変身リスト 完全版』というタイトルを冠したこの記事に読者が期待するものとは何か。私は、読者の皆様が期待しているはホンモノの「007変身リスト」であると当然のことのように考えていたのが、本当に読者の皆様は、「007変身リスト」(ホンモノ)を期待しているのだろうか。もしかしてもしかすると、読者の皆様が本当に期待しているのは、やっぱり007変身リストはありませんでした、おしまい、という、そういうおなじみのオチなのではなかろうか。いや、そうに違いないのである。だとすれば、このままフツーに「007変身リスト」を公開することは、読者の期待に応えるどころか読者を失望させることになってしまうではないか。読者の期待に応えるためには、どんなことがあろうとも「007変身リスト」(ホンモノ)を公開するわけにはいかないのである。
 以前の私であれば、三日三番徹夜した(その上で朝メシを食った)労力を無駄にすることなど思いもよらないことであり、読者の期待などお構いなしに、とっと「007変身リスト」(ホンモノ)を公開してしまうところであるが、今の私には、雨が吹こうが風が降ろうが読者の期待に応える方が重要なのである。雨にも負けず風にも負けず夏の暑さにも負けず読者の期待に応える、そんな人に私はなりたいのである。
 この期に及んで「007変身リスト」(ホンモノ)を公開しないという決断は、私にとっても苦渋に満ちたものであり、どうか私のこの苦しい胸中を察していただきたい。
 この時点でこれを読んでいるほとんどの人が「やっぱり変身リストなんて作ってねーんじゃねえか」ともっともな疑惑を抱いていることとは思うが、正真正銘間違いなく「007変身リスト」(ホンモノ)は作成済みであり、嘘ではない証拠に「007変身リスト」(ホンモノ)を公開して、「どうだ!」と言いたいところではあるのだが、「007変身リスト」(ホンモノ)を公開などして読者を失望させるわけにはいかない。口惜しい限りではあるが、読者の期待に応えるためなら、涙を飲んで「嘘つき」という罵倒も甘受するしかないのである。
 “読者の期待に応える”というのは、辛く険しい道のりなのである。


 そのような事情ですので、今回も「007変身リスト」(ホンモノ)はありません。

おわり。



(2003/4/1)



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